説明

車両の給油管取付構造

【課題】車両の給油管7を外力による破壊から保護する。
【解決手段】給油管7は車体2にブラケット9を介して取り付けられている。給油管7とブラケット9とはろう付けされていて、そのろう付け強度は給油管7の強度よりも低くなっている。これにより、給油管7に外力が加わったとき、給油管7が破壊するに至る前にブラケット9から外れ、給油管7の破壊が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の給油管取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の燃料タンクに燃料を注入する給油管は、その先端が燃料タンクに接続され、給油口部がフェンダパネルの給油ボックス部に固定され、さらに中間部が車体フレーム等に取り付けられている。給油管の中間部とブラケットとは溶接又はろう付けによって接合され、このブラケットが車体フレーム等にねじ止めされている。かかる給油管取付構造において、車両の衝突時に、フェンダパネル又は燃料タンクの位置が車体フレームに対して相対的に変化すると、それに伴って、ブラケットを介して給油管に大きな外力が加わる。このような外力によって給油管のブラケットに対する接合部が破断すると、燃料洩れを招くことになる。
【0003】
これに対して、特許文献1には、ブラケットを第1支持部材と第2支持部材とによって構成し、第1支持部材と第2支持部材とを溶接し、第1支持部材を給油管に溶接する一方、第2支持部材を車体にボルトにて固定すること、第1支持部材と給油管との溶接強度を、第1支持部材と第2支持部材との溶接強度よりも大きくすることが記載されている。すなわち、車両衝突時に、第1支持部材と第2支持部材との溶接が先に外れるするようにして、給油管を保護するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−228664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の給油管取付構造では、ブラケットを第1支持部材及び第2両支持部材の2部材で構成することになるため、部品点数が増える。また、溶接箇所が2箇所になり、しかも、その2箇所の溶接強度を異ならせる必要があるから、生産性の向上に不利になる。
【0006】
そこで、本発明は、車両の衝突等に伴って給油管に外力が加わったときの給油管の破壊を防止すること、特に簡単な取付構造で給油管の保護を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題に対して、給油管に外力が加わったとき、給油管のブラケットに対する接合部が破断する前に、ブラケットが給油管又は車体から外れるようにした。
【0008】
すなわち、ここに提示する車両の給油管取付構造は、給油管が車体にブラケットを介して取り付けられていて、
上記給油管と上記ブラケットとの接合強度、又は上記車体と上記ブラケットとの接合強度が、上記給油管の強度よりも低いことを特徴とする。
【0009】
従って、車両の衝突等によって給油管に外力が加わると、給油管のブラケットに対する接合部が破断する前に、給油管がブラケットから外れ、或いは給油管がブラケットと共に車体から外れる。つまり、ブラケットによる給油管の車体への拘束が解除される。これにより、ブラケットを介して給油管に外力が加わることがなくなり、給油管の破断防止に有利になる。
【0010】
例えば、上記ブラケットを上記給油管又は上記車体に溶接又はろう付けによって接合する場合、その溶接強度又はろう付け強度を上記給油管の強度よりも低くすればよい。
【0011】
好ましいのは、上記ブラケットを上記給油管又は上記車体に、破断伸びが大きいろう材を用いて接合することである。これにより、車両の衝突等によって給油管に衝撃的に荷重が加わったときでも、ろう材の変形によって衝撃が吸収されるため、給油管の破壊防止に有利になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、給油管がブラケットによって車体に取り付けられている給油管取付構造において、給油管とブラケットとの接合強度、又は車体とブラケットとの接合強度を、給油管の強度よりも低くしたから、給油管に外力が加わったとき、給油管が破壊する前にブラケットが給油管又は車体から外れることになり、部品点数の増加を招くことなく、簡単な構造で給油管を外力による破壊から守ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】車両の給油管取付構造を示す上方からみた斜視図である。
【図2】車両の給油管取付構造を示す下方からみた斜視図である。
【図3】車両の給油管取付構造を示す断面図である。
【図4】図3のA−A線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0015】
図1及び図2において、1は車両のフロア下面を前後方向に延びる左右のフロアサイドフレーム、2はフロアサイドフレーム1のキックアップ部に続いて後方へ延びる左右のリヤサイドフレームである。左右のフロアサイドフレーム1は第1クロスメンバ3と第2クロスメンバ4とによって連結され、左右のリヤサイドフレーム2は第3クロスメンバ5によって連結されている。第1クロスメンバ3と第2クロスメンバ4との間に燃料タンク6が配置されている。この燃料タンク6に給油管7の先端が接続されている。
【0016】
給油管7は、第2クロスメンバ4の下側を通って後方へ延び、そして、片側のリヤサイドフレーム2の下側を通るように側方へ延び、そのリヤサイドフレーム2の外側で立ち上がっている。給油管7の給油口部7aはリヤフェンダパネルの給油ボックス部に固定されている。給油ボックス部は周知構造であるため図示を省略する。また、燃料タンク6と給油管7の上部とがブリーザチューブ8によって繋がれている。そうして、給油管7の中間部がリヤサイドフレーム2の下面にブラケット9によって取り付けられている。
【0017】
図3は給油管7のブラケット9による取付構造を示す。ブラケット9は逆L字状をなし、その水平部9aがリヤサイドフレーム2の下面にねじ10にて固定され、ブラケット9の垂直部9bに給油管7がろう材11によって接合されている(ろう付け)。
【0018】
給油管7及びブリーザチューブ8は、SUS436L等の引張強さτp=4.5×10Pa以上のフェライト系ステンレス鋼によって形成されている。これに対して、ろう材11のろう付け後の引張強さτbは5.5×10Pa以上1.0×10Pa以下であり、伸びは10%以上40%以下である。
【0019】
そのようなろう材としては、例えば、黄銅(Cu=60〜70%,Zn=30〜40%)又は青銅を主成分とし、さらにAlやSi等を含有する軟質ろう材を採用することができる。そのようなろう材としては、Pb=0.05%以下,Fe=0.05%以下,Al=8.0%以下,Si=3.0%以下,Sn=0.2%以下,Mn=1.0%以下,P=0.02%以下、残部黄銅の黄銅系ろう材がある。なお、以上の「%」はいずれも質量%である。
【0020】
そうして、本発明の重要な特徴は、ろう材11による給油管7とブラケット9との接合強度(ろう付け強度Fb)を、給油管7のブラケット9に対する接合部7bの破断強度Fp(せん断強度)よりも低くしたことにある。これにより、給油管7に外部荷重が加わったときに、先にろう付け部が破断し(ろう付けが外れ)、給油管7の接合部7bの破断が防止される。
【0021】
給油管7にブラケット9を介して外部荷重が加わったとき、給油管7の接合部7bが破断する前にろう付けが外れるようにするには、給油管7とブラケット9とをろう付けし、荷重試験に基いて、給油管7の保護に適したろう付け強度Fbを設定すればよい。
【0022】
一方、上記ろう付け強度Fb及び給油管7の破断強度Fpは便宜的に次式(1)及び(2)で表すことができる。よって、当該式に基いて適切なろう付け強度を設定し、給油管7が破壊する前にろう付けが外れることの確認試験(荷重試験)を行なうようにすればよい。
【0023】
ろう付け強度Fb =ろう材引張強さτb×ろう材断面積S1 ……(1)
給油管破断強度Fp=管材のせん断強さτp’×せん断面積S2 ……(2)
【0024】
ここに、式(1)のろう材断面積S1は、図3において、ブラケット9が給油管7に対して矢符Bの方向に引っ張られ、ろう材11に引張り力が加わるときときの引張り方向に垂直な断面積であり、便宜的にろう付け高さHと図4に示すろう付け幅Wとの積で表すことができる(S1=H×W)。例えば、ろう付け高さH=1×10−3m〜3.5×10−3m、ろう付け幅W=5×10−3m〜10×10−3mとすると、S1=5×10−6〜35×10−6となる。
【0025】
また、式(2)のせん断面積S2は、給油管7の接合部7bのせん断面の面積であり、接合部7b(ろう付け部)の周長Lと給油管7の肉厚Tとの積で表すことができる(S2=L×T)。例えば、周長L=15×10−3m〜30×10−3m、肉厚T=0.5×10−3m〜1.2×10−3mとすると、S2=7.5×10−6〜36×10−6となる。
【0026】
給油管7の接合部7bはろう付けによる熱影響で引張強さが8%程度低下すること、また、厳しく見積もった場合、せん断強さは引張強さの0.58倍程度になることが知られている。従って、給油管材の引張強さτp=4.5×10Paとすると、ろう付け後のせん断強さτp’=2.4×10Pa程度になる。
【0027】
よって、式(2)から、周長L=15×10−3m〜30×10−3m、肉厚T=0.5×10−3m〜1.2×10−3mであるとき、給油管7の破断強度Fpは、最小値が約1.8×10N、最大値が約8.6×10Nとなる。
【0028】
例えば、給油管7の肉厚T=0.5×10−3m、周長L=15×10−3(破断強度が約1.8×10N)、ろう材の引張強さτb=8×10Paであるときは、式(1)から、ろう材断面積S1を[(1.8×10N)/(8×10Pa)] (約23mm)未満にすれば、ろう付け強度が給油管7の破断強度よりも低くなることがわかる。
【0029】
また、給油管7の肉厚T=1.2×10−3m、周長L=30×10−3m(破断強度が約8.6×10N)、ろう材の引張強さτb=8×10Paであるときは、ろう付け面積を[(8.6×10N)/(8×10Pa)] (約108mm)未満にすれば、ろう付け強度が給油管7の破断強度よりも低くなる。
【0030】
よって、給油管7に大きな外部荷重が加わったときでも、先にろう付け部が破壊されて給油管7がブラケット9から外れるから、給油管7の破壊に至ることが避けられる。しかも、上述の如き黄銅系の軟質ろう材11であれば、車両の衝突等によって給油管7に外部荷重が衝撃的に加わったときでも、ろう材11の変形によってその衝撃が吸収されるから、給油管7の保護に有利になる。
【0031】
ところで、ステンレス製給油管7と黄銅系ろう材11との接触部では、電気的に卑であるろう材11の電食を生じ易い。そこで、本実施形態では、当該電食の抑制のために、給油管7にZn系合金メッキを施している。これにより、黄銅よりも電気的に卑であるZnが腐食し、上記電食が抑制される。これは、Znによる犠牲防食効果である。Zn系合金メッキに代えて、或いはZn系合金メッキと共に、ろう付け部分に亜鉛粉末塗料を施すようにしてもよい。また、それらの表面全体に更にカチオン電着塗装や粉体塗装などの有機皮膜処理を施すと、腐食促進効果をもった媒体(例えば塩化物など)の接触を防げて電食を予防でき、給油管7とブラケット9との接合部は元より給油管全体の防錆性能を向上させるのに有利な効果がある。
【0032】
なお、上記実施形態では、給油管7とブラケット9とをろう付けしたが、溶接によって接合するようにしてもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、給油管7とブラケット9との接合強度を給油管7の強度よりも低くしたが、ブラケット9と車体(リヤサイドフレーム2)との接合強度を給油管7の強度よりも低くしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
2 リヤサイドフレーム
6 燃料タンク
7 給油管
8 ブリーザチューブ
9 ブラケット
11 ろう材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給油管が車体にブラケットを介して取り付けられている車両の給油管取付構造において、
上記給油管と上記ブラケットとの接合強度、又は上記車体と上記ブラケットとの接合強度が、上記給油管の強度よりも低いことを特徴とする車両の給油管取付構造。
【請求項2】
請求項1において、
上記ブラケットは、上記給油管又は上記車体にろう付けによって接合されており、そのろう付け強度が上記給油管の強度よりも低いことを特徴とする車両の給油管取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−103626(P2013−103626A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249382(P2011−249382)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(590000721)株式会社キーレックス (20)
【Fターム(参考)】