説明

車両の間接視認装置

【課題】鏡面の定曲率部を通した視認であるのか徐変曲率部を通した視認であるのかを容易に判断できるようにして、鏡面を覗き込む乗員の判断を助けることのできる車両の間接視認装置を提供する。
【解決手段】ドアミラー10の反射鏡11に、鏡面の曲率半径がほぼ一定の定曲率部12と、この定曲率部12に連続し鏡面の曲率半径が端部に向かうにつれて徐々に小さくなる徐変曲率部13を設ける。定曲率部12に偏光膜17を設け、徐変曲率部13に色彩フィルタ18を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、反射鏡によって車両の後方や側方の視界を得るサイドミラー等の車両の間接視認装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のサイドミラー等の間接視認装置の鏡面は、通常、曲率半径がほぼ一定に形成されている。しかし、このような間接視認装置においては、鏡面で視認し得る範囲が限られてしまうため、鏡面の曲率半径を部分的に変化させ、視認範囲を拡大できるようにしたものが案出されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この間接視認装置の鏡面は、図6に示すように、曲率半径がほぼ一定の定曲率部101の端に、曲率半径が端部に向かうにつれて徐々に小さくなる徐変曲率部102が連続して設けられ、定曲率部101では視認の難しい広角範囲を徐変曲率部102で視認し得るようになっている。
【特許文献1】特開平8−108800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来の間接視認装置においては、定曲率部101と徐変曲率部102が連続しており両者の境界が視認上明確でないため、鏡面に映っている像が定曲率部101を通した像であるのか、徐変曲率部102を通した像であるのかを判断することが難しく、鏡面を通しての対象物の方向や距離を正確に判断しにくい状況が考えられる。
【0005】
そこで、この発明は、鏡面の定曲率部を通した視認であるのか徐変曲率部を通した視認であるのかを容易に判断できるようにして、鏡面を覗き込む乗員の判断を助けることのできる車両の間接視認装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、反射鏡(例えば、後述の実施形態における反射鏡11)を備え、この反射鏡が、鏡面の曲率半径がほぼ一定の定曲率部(例えば、後述の実施形態における定曲率部12)と、この定曲率部に連続し鏡面の曲率半径が端部に向かうにつれて徐々に小さくなる徐変曲率部(例えば、後述の実施形態における徐変曲率部13)を有する車両の間接視認装置(例えば、後述の実施形態におけるドアミラー10)において、前記鏡面の定曲率部と徐変曲率部の反射形態が異なっていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の間接視認装置において、前記定曲率部と徐変曲率部のいずれか一方に偏光膜(例えば、後述の実施形態における偏光膜17)が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両の間接視認装置において、前記偏光膜は前記定曲率部に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の車両の間接視認装置において、前記定曲率部と徐変曲率部のいずれか一方に色彩フィルタ(例えば、後述の実施形態における色彩フィルタ18)が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車両の間接視認装置において、前記色彩フィルタは前記徐変曲率部に設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の車両の間接視認装置において、前記定曲率部に偏光膜が設けられ、前記徐変曲率部に色彩フィルタが設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれか1項に記載の車両の間接視認装置において、前記色彩フィルタは、500nm〜560nmの波長を中心とした分光特性が得られるように設定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の車両の間接視認装置において、前記定曲率部と徐変曲率部のいずれか一方に、視認角度により可視状態と不可視状態に変化する視野角調整フィルム(例えば、後述の実施形態における視野角調整フィルタ30)が設けられ、この視野角調整フィルムは、車両に搭載した状態において、乗員の左右の一方の眼からは可視状態とされるとともに他方の眼からは不可視状態とされることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の車両の間接視認装置において、前記視野角調整フィルムは前記徐変曲率部に設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の車両の間接視認装置において、前記定曲率部に色彩フィルタが設けられ、前記徐変曲率部に視野角調整フィルムが設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項8〜10のいずれか1項に記載の車両の間接視認装置において、前記車両の間接視認装置は、車両の左右両側部に設置されるドアミラーであって、前記視野角調整フィルムは、前記右側ドアミラーが車両に設置された状態において、乗員の左眼からは可視状態とされるとともに右眼からは不可視状態とされ、前記左側ドアミラーが車両に設置された状態において、乗員の右眼からは可視状態とされるとともに左眼からは不可視状態とされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、鏡面の定曲率部と徐変曲率部の反射形態が異なるため、反射形態の相違から、現在の視認が鏡面の定曲率部を通した視認であるのか、徐変曲率部を通した視認であるのかを容易に判断することが可能になる。したがって、間接視認装置による乗員の視認判断をより正確なものとすることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、定曲率部と徐変曲率部のいずれか一方に偏光膜が設けられているため、偏光膜によって乱反射を除去して防眩効果を得ることができるとともに、乱反射の有無によって現在視認している反射鏡上の領域が定曲率部であるのか徐変曲率部であるのかを容易に把握することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、偏光膜が定曲率部に設けられているため、定曲率部を通した主要な間接視認を偏光膜によって乱反射のない明瞭なものとすることができるうえ、徐変曲率部と偏光膜の組み合わせによる視認のしにくさを無くすことができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、定曲率部と徐変曲率部のいずれか一方に色彩フィルタが設けられているため、色彩フィルタによって反射する光の波長を変換して視認のし易さを向上させることができるとともに、色彩の変化によって現在視認している反射鏡上の領域が定曲率部であるのか、徐変曲率部であるのかを容易に把握することが可能になる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、色彩フィルタが徐変曲率部に設けられているため、徐変曲率部に映し出される歪んだ周辺視界を色彩フィルタによって認知し易くすることができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、定曲率部に偏光膜が設けられ、徐変曲率部に色彩フィルタが設けられているため、偏光膜によって定曲率部の乱反射を除去することができるとともに、色彩フィルタによって徐変曲率部の反射光の波長を変換することができ、しかも、乱反射の有無と色彩の変化から、現在視認している反射鏡上の領域が定曲率部であるのか徐変曲率部であるかをより容易に把握することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、色彩フィルタとして、暗所視でも明所視でも比視感度の高くなる500nm〜560nmの波長を中心とした分光特性が得られるものを採用しているため、昼夜や天候等に拘わらず反射鏡に映る像を乗員に明るく明確に認識させることができる。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、定曲率部と徐変曲率部のいずれか一方に、乗員の左右の一方の眼からは可視状態となり、他方の眼からは不可視状態となる視野角調整フィルムが設けられているため、定曲率部と徐変曲率部の一方を左右の眼で見た場合に両目視差の関係で反射像が二重に見える状況においても、視野角調整フィルムによって一方の眼による視認を不可にすることにより、乗員に見える反射像を一重の明瞭な像にすることができる。
【0025】
請求項9に記載の発明によれば、定曲率部を通した主要な間接視認が両目で行われ、徐変曲率部を通した周辺視界のみが片目で行われることになるため、後方視界をより見易くすることができる。
【0026】
請求項10に記載の発明によれば、定曲率部に色彩フィルタが設けられ、徐変曲率部に視野角調整フィルムが設けられているため、視野角調整フィルムによって徐変曲率部での左右の眼による像のダブリを防止することができるとともに、色彩フィルタによって現在視認している反射鏡上の領域が定曲率部であるのか徐変曲率部であるのかをより容易に把握することができる。
【0027】
請求項11に記載の発明によれば、ドアミラーの反射鏡に設けられる視野角調整フィルムが、乗員に近い側の眼に対して不可視状態とされ、遠い側の眼に対しては可視状態とされるため、乗員が像をより容易に視認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、この発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、上下や前後等の方向は、特別に断らない限り車両の進行方向に対しての方向を指すものとする。
【0029】
最初に、図1〜図4に示す第1の実施形態について説明する。
図1は、この発明にかかる間接視認装置の一例であるドアミラー10を採用した車両の部分的な斜視図であり、図2は、ドアミラー10の正面図(A)と、ドアミラー10の反射鏡11部分を水平方向で切断したときの断面図(B)を併せて記載した図である。なお、同図中14は、ドアミラー10の反射鏡11と図示しないミラー支持機構を保持するハウジングである。
【0030】
ドアミラー10の反射鏡11は、図2に示すように、車幅方向内側の(車室寄りの)端部から逆側の端部に向かってほぼ3分の2の領域が、鏡面の曲率半径がほぼ一定の定曲率部12とされ、車幅方向外側の残余の領域が、外側の端部に向かうにつれて鏡面の曲率半径が徐々に小さくなる徐変曲率部13とされている。
また、反射鏡11は、図2(B)に示すように、定曲率部12と徐変曲率部13の主反射機能が最下層の金属膜15によって実現され、表層が一体のガラス板16によって覆われているが、金属膜15とガラス板16の間には、定曲率部12と徐変曲率部13に対応して夫々偏光膜17と色彩フィルタ18が設けられている。
【0031】
図3は、水溜り等の水膜19のある路面20を、定曲率部12の偏光膜17を通して見た場合のドアミラー10の機能を説明する概念図である。同図に示すように、定曲率部12の偏光膜17は、路面20の水膜19等で乱反射した光のS偏光をカットし、水膜19等での映り込みやギラツキを抑制する。定曲率部12の偏光膜17においては、このほか日中における強い太陽光や、夜間のヘッドライド、雪道の反射光等による乱反射を抑制し、視認性を向上させることができる。
【0032】
図4は、明所視での比視感度曲線Aと暗所視での比視感度曲線Bを示したものであり、同図に示すように、明所視では波長555nm付近での視感度が最大になり、暗所視では波長507付近での視感度が最大となる。
徐変曲率部13の色彩フィルタ18は、暗所視でも明所視でも比視感度の高くなる500nm〜560nmの波長を中心とした分光特性が得られるものを採用している。したがって、徐変曲率部13では昼夜や天候等に拘わらず、反射像を乗員に明るく明確に認識させることができる。
【0033】
以上の構成のドアミラー10は、車室に近接した大面積の定曲率部12において、遠近感のつかみ易い歪みの少ない明瞭な後方視界を得ることができるとともに、定曲率部12に偏光膜17が設けられていることから、乱反射が少なく、コントラストの高い後方視界を得ることができる。したがって、定曲率部12においては、反射鏡11を覗き込む乗員の眩しさを低減することができるとともに、路面のラインや文字、後続車のドライバーの状態(目線や動作)を認識し易くすることができる。
【0034】
また、このドアミラー10は、車幅方向外側の徐変曲率部13において、後方から側方にかけての広角範囲の視界を得ることができるとともに、徐変曲率部13に、500nm〜560nmの波長を中心とした分光特性の色彩フィルタ18が設けられていることから、明所、暗所のいずれにおいても、視感度の高い明るい視界を得ることができる。
【0035】
そして、さらにこのドアミラー10においては、定曲率部12に偏光膜17が設けられ、徐変曲率部13に色彩フィルタ18が設けられているため、乱反射の有無と色彩の変化から乗員が現在目視している領域が定曲率部12であるのか徐変曲率部13であるのかを、容易にかつ正確に判断することができる。
【0036】
ここで、図6(A),(B)に示す比較例は、定曲率部101と徐変曲率部102が設けられ、金属膜103の前面を覆うガラス板104に、定曲率部101と徐変曲率部102に跨るように色彩フィルタ105が設けられたものである。この色彩フィルタ105は、広い範囲の波長の光を一様に低減するものであり、防眩効果を高めるために色彩フィルタ105の着色濃度を濃くした場合には全体的に視界が暗くなってしまう。また、色彩フィルタ105は、定曲率部101と徐変曲率部102の前面に連続して設けられているため、両者の境界が不明確になってしまう。
これに対し、この実施形態のドアミラー10は、徐変曲率部13に色彩フィルタ18が設けられ、定曲率部12に偏光膜17が設けられているため、両部の境界が明確になるとともに、徐変曲率部13に設けられる色彩フィルタ18の分光特性が500nm〜560nmの波長を中心としたものであることから、徐変曲率部13において充分な防眩効果を得つつも、乗員にとって物体を明るく視認し易い視界を確保することができる。
【0037】
ところで、上記の実施形態の場合、反射鏡11は金属膜15上に偏光膜17と色彩フィルタ18を夫々配置し、これらの上面にガラス板16を配置したが、図5に示す変形例のように、金属膜15の上面にガラス板16を配置し、ガラス板16の上に偏光膜17や色彩フィルタ(図示せず)を配置するようにしても良い。
また、上記の実施形態においては、定曲率部12に偏光膜17を設け、徐変曲率部13に色彩フィルタ18を設けたが、定曲率部12と徐変曲率部13のいずれか一方に偏光膜17や色彩フィルタ18を設けるようにしても良く、さらに定曲率部12に色彩フィルタ18を設け、徐変曲率部13に偏光膜17を設けるようにしても良い。ただし、像に歪みが生じる徐変曲率部13に偏光膜を17設けずに、色彩フィルタ18を設ける上記の実施形態は、反射像の視認性においては最も好ましい。
【0038】
つづいて、図7,図8に示す第2の実施形態について説明する。この実施形態は第1の実施形態と同様に、この発明にかかる間接視認装置を車両のドアミラー10Aに適用したものである。
【0039】
図7は、ドアミラー10Aの反射鏡11の機能を説明するための概念図である。
同図に示すように、ドアミラー10Aの反射鏡11は、第1の実施形態と同様に、車幅方向内側の端部から逆側の端部に向かってほぼ3分の2の領域が定曲率部12とされ、車幅方向外側の残余の領域が、徐変曲率部13とされている。徐変曲率部13は外側の端部に向かうにつれて鏡面の曲率半径が徐々に小さくなっている。
【0040】
反射鏡11の定曲率部12には、500nm〜560nmの波長を中心とした分光特性の色彩フィルタ18が設けられ、徐変曲率部13には、視認角度によって可視状態と不可視状態に変化する視野角調整フィルム30が設けられている。視野角調整フィルム30は、所定角度に傾いた微細な光規制板をアクリルやPET(ポリエチレンテレフタレート)のフィルムに組み込んだものであり、この実施形態の場合、光規制板(図示せず)は車幅方向に傾斜している。
視野角調整フィルム30に組み込まれる光規制板は、運転席に着座した乗員のドアミラー10Aに対して離間する側の眼の視認角度にほぼ沿う角度に傾斜しており、ドアミラー10Aに近接する側の眼の視認角度に対しては傾斜角度を持つようになっている。したがって、例えば、図7に示すように運転席から見て右側のドアミラー10Aに対しては、運転者の左眼Elからは視野角調整フィルム30(光規制板)を通した反射鏡11の視認が可能であるが、右眼Erからは視野角調整フィルム30(光規制板)によって視認を遮られる。左側のドアミラー10Aの場合には、逆に、左眼Elからは視認が遮られ、右眼Erからの視認のみが許容される。
【0041】
図8は、車両の右側のドアミラー10Aを左眼で見たときの図(A)と、同ドアミラー10Aを右眼で見たときの図(B)と、両眼で実際に認識される像(C)を示す図を併せて記載したものである。視野角調整フィルム30が設けられた徐変曲率部13においては、同図(B)に影を入れて示すように右眼からの視認が遮られる。このため、図9の比較例のように、徐変曲率部13に視野角調整フィルム30が設けられていない場合には、両眼視差によって二重の像I1,I2として乗員に視認されることになるが、この実施形態においては、視野角調整フィルム30によって片側の眼からの徐変曲率部13の視認が遮られるため、常に一重の像Iとして乗員に視認されるようになる。
【0042】
この実施形態のドアミラー10Aは、車室に近接した大面積の定曲率部12において、遠近感のつかみ易い歪みの少ない明瞭な後方視界を得ることができるとともに、定曲率部12に500nm〜560nmの波長を中心とした分光特性の色彩フィルタ18が設けられていることから、明所、暗所のいずれにおいても、視感度の高い明るい視界を得ることができる。
【0043】
また、このドアミラー10Aは、車幅方向外側の徐変曲率部13において、後方から側方にかけての広角範囲の視界を得ることができるとともに、徐変曲率部13に、視野角調整フィルム30が設けられていることから、前述のように両眼視差による像のダブリのない明瞭な後方視界を得ることができる。
特に、徐変曲率部13は車幅方向の外側端部に向かって曲率が急激に変化するため、左右の眼で見た場合に同部位の写像が合致せず、ターゲットが二重に写る傾向が強くなるが、このドアミラー10Aにおいては、徐変曲率部13に視野角調整フィルム30を設けることでこの傾向を有効に改善することができる。
したがって、このドアミラー10Aを採用することにより、徐変曲率部13を視認することによる運転者の心的負荷や眼の疲れ等を確実に軽減することができる。
【0044】
そして、この実施形態の場合も、色彩フィルタ18と視野角調整フィルム30によって定曲率部12と徐変曲率部13の反射形態を異ならせているため、乗員が現在目視している領域が定曲率部12であるのか徐変曲率部13であるのかを、容易にかつ正確に判断することができる。
【0045】
また、この実施形態のドアミラー10Aにおいては、視野角調整フィルム30が乗員に近い側の眼に対して不可視状態となり、遠い側の眼に対しては可視状態となるため、乗員が像をより容易に視認することができる。
【0046】
ところで、この実施形態の場合、定曲率部12に色彩フィルタ18が設けられ、徐変曲率部13に視野角調整フィルム30が設けられているが、逆に定曲率部12に視野角調整フィルム30を設け、徐変曲率部13に色彩フィルタ18を設けることも可能である。
ただし、この実施形態のように定曲率部12に色彩フィルタ18を設け、徐変曲率部13に視野角調整フィルム30を設けるようにした場合、定曲率部12を通した主要な間接視認を両目で確実に行い、徐変曲率部13を通した周辺視界のみを片目で行うことになるため、ドアミラー10Aを通した後方視界をより見易くすることができる。
【0047】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の第1の実施形態の車両の間接視認装置の斜視図。
【図2】同実施形態の車両の間接視認装置の正面図(A)と断面図(B)を併せて記載した図。
【図3】同実施形態の偏光膜の機能を説明する概念図。
【図4】暗所視標準比視感度曲線と明所視標準比視感度曲線を示すグラフ。
【図5】この発明の第1の実施形態の変形例を示す断面図。
【図6】比較例の間接視認装置の正面図(A)と断面図(B)を併せて記載した図。
【図7】この発明の第2の実施形態の間接視認装置の機能を説明する概念図。
【図8】同実施形態の間接視認装置を左眼で見たときの図(A)と、右目で見たときの図(B)と、両眼で実際に見える像(C)を併せて記載した図。
【図9】比較例の間接視認装置を左眼で見たときの図(A)と、右目で見たときの図(B)と、両眼で実際に見える像(C)を併せて記載した図。
【符号の説明】
【0049】
10,10A…ドアミラー(間接視認装置)
11…反射鏡
12…定曲率部
13…徐変曲率部
17…偏光膜
18…色彩フィルタ
30視野角調整フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射鏡を備え、この反射鏡が、鏡面の曲率半径がほぼ一定の定曲率部と、この定曲率部に連続し鏡面の曲率半径が端部に向かうにつれて徐々に小さくなる徐変曲率部を有する車両の間接視認装置において、
前記鏡面の定曲率部と徐変曲率部の反射形態が異なっていることを特徴とする車両の間接視認装置。
【請求項2】
前記定曲率部と徐変曲率部のいずれか一方に偏光膜が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両の間接視認装置。
【請求項3】
前記偏光膜は前記定曲率部に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両の間接視認装置。
【請求項4】
前記定曲率部と徐変曲率部のいずれか一方に色彩フィルタが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両の間接視認装置。
【請求項5】
前記色彩フィルタは前記徐変曲率部に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の車両の間接視認装置。
【請求項6】
前記定曲率部に偏光膜が設けられ、前記徐変曲率部に色彩フィルタが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両の間接視認装置。
【請求項7】
前記色彩フィルタは、500nm〜560nmの波長を中心とした分光特性が得られるように設定されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の車両の間接視認装置。
【請求項8】
前記定曲率部と徐変曲率部のいずれか一方に、視認角度により可視状態と不可視状態に変化する視野角調整フィルムが設けられ、この視野角調整フィルムは、車両に搭載した状態において、乗員の左右の一方の眼からは可視状態とされるとともに他方の眼からは不可視状態とされることを特徴とする請求項1に記載の車両の間接視認装置。
【請求項9】
前記視野角調整フィルムは前記徐変曲率部に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の車両の間接視認装置。
【請求項10】
前記定曲率部に色彩フィルタが設けられ、前記徐変曲率部に視野角調整フィルムが設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の車両の間接視認装置。
【請求項11】
前記車両の間接視認装置は、車両の左右両側部に設置されるドアミラーであって、
前記視野角調整フィルムは、前記右側ドアミラーが車両に設置された状態において、乗員の左眼からは可視状態とされるとともに右眼からは不可視状態とされ、前記左側ドアミラーが車両に設置された状態において、乗員の右眼からは可視状態とされるとともに左眼からは不可視状態とされることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の車両の間接視認装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−174219(P2008−174219A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311353(P2007−311353)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】