説明

車両トイレ内異常検知システム

【課題】 車両トイレ内での異常状態を的確に検知し、適切な措置を講じることができる車両トイレ内異常検知システムを提供する。
【解決手段】 車両トイレ内異常検知システムにおいて、車両トイレ1の天井2に配置された、検知距離を制限できる第1のセンサー6及び床3までの検知距離を有する第2のセンサー7と、前記第1のセンサー6と前記第2のセンサー7からの出力信号に基づいて前記車両トイレ1の利用者の正常入室状態と利用者の異常入室状態とを検知する制御装置8と、この制御装置8に接続される報知装置9とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両トイレ内異常検知システムに係り、特に、車両多目的トイレに好適な異常検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両トイレ内は密室であるため、事故や事件等による利用者の転倒状態等が発見され難く、救助の遅れにつながる。
【0003】
このような事態に対応するために、トイレ使用者の異常検出(下記特許文献1参照)や、トイレ内の人の存在の有無の検出(下記特許文献2参照)や、トイレの誤操作又は悪戯によるドアの閉切りの防止(下記特許文献3,4参照)に対する提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平01−155585号公報
【特許文献2】特開2001−241263号公報
【特許文献3】特開平07−293111号公報
【特許文献4】特開平07−293110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術でもセンサーによる異常検知が可能であるが、特に、さまざまな障害を持つ人も利用する多目的トイレでは、必ずしも便器に着座せずに排せつする場合(立ったまま行う、車いすに座ったまま器具で排泄、介助者が一緒に入るなど)がある。このため、多様な利用形態を的確に感知する必要がある。
【0006】
また、車両多目的トイレでは体の不自由な人の操作し易さを向上するためにトイレ室内の閉ボタンを押すと自動的にドアにロックがかかるようになっている。
【0007】
このことを知らず、または知っていて故意に室内の閉ボタンを押してトイレを出る、所謂「押し逃げ」(上記特許文献3,4参照)により、室内に誰もいないにも関わらずトイレのドアがロック状態になり、他の人が利用できないといった問題がある。多くのトイレでは15分なり30分なりの時間経過で自動的にロックが外れるようになっているが、トイレ数の少ない列車内ではこのような事態は避けたい。
【0008】
本発明は、上記状況に鑑みて、車両トイレ内での異常状態を的確に検知し、適切な措置を講じることができる車両トイレ内異常検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕車両トイレ内異常検知システムにおいて、車両トイレの天井に配置され、検知距離を制限できる第1のセンサー及び床までの検知距離を有する第2のセンサーと、前記第1のセンサーと前記第2のセンサーからの出力信号に基づいて前記車両トイレの利用者の正常入室状態と利用者の異常入室状態とを検知する制御装置と、この制御装置に接続される報知装置とを具備することを特徴とする。
【0010】
〔2〕上記〔1〕記載の車両トイレ内異常検知システムにおいて、前記第1のセンサー及び第2のセンサーで共に利用者を検知できた場合は、前記制御装置で利用者の正常入室状態であると判別し、室内灯を点灯し、トイレ内のドア閉スイッチの操作によりトイレのドアの施錠・解錠装置を動作させロック装置の自動的施錠を行うことを特徴とする。
【0011】
〔3〕上記〔1〕記載の車両トイレ内異常検知システムにおいて、前記第1のセンサーでは利用者は検知されず、前記第2のセンサーでは利用者を検知できた場合、前記利用者が異常入室状態であると検知することを特徴とする。
【0012】
〔4〕上記〔3〕記載の車両トイレ内異常検知システムにおいて、前記利用者の異常入室状態が床に倒れている状態であることを特徴とする。
【0013】
〔5〕上記〔1〕記載の車両トイレ内異常検知システムにおいて、前記利用者の異常入室状態が判別された場合には、トイレの室内灯は点灯したまま、前記報知装置で警報を報知するとともに、自動的に乗務員に非常通報し、前記トイレのドアの施錠・解錠装置を動作させロック装置の自動解錠を行うようにしたことを特徴とする。
【0014】
〔6〕上記〔1〕記載の車両トイレ内異常検知システムにおいて、前記第1のセンサー及び前記第2のセンサーの両方とも利用者を検知できない場合は、前記制御装置でトイレ内には入室者なしと判別し、トイレの表示を「空き」にし、トイレの室内灯は消灯し、トイレのドアの施錠・解錠装置を動作させロック装置を解錠することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
【0016】
(1)車両トイレ内での利用者の異常入室状態を自動的に確実に検知することができる。
【0017】
(2)異常入室状態を検知すると報知装置で報知(表示灯の点灯や警報音の鳴動、音声による報知)が行われ、乗務員に非常通報するとともに、トイレのドアの鍵の自動解錠を行い、周囲の誰でもがトイレの救助すべき利用者の救助にあたることができる。
【0018】
(3)トイレの「空室状態での施錠」、所謂「押し逃げ」を検知すると、トイレのロック装置の解錠を行い、表示を「空き」にし、室内灯は消灯する。これにより、「押し逃げ」の防止対策になるとともに、消費電力の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例を示す車両トイレ内異常検知システムの基本的構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例を示す車両トイレ内異常検知システムのブロック図である。
【図3】本発明の実施例を示す車両トイレ内異常検知システムの第1の態様を示す模式図である。
【図4】本発明の実施例を示す車両トイレ内異常検知システムの第2の態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の車両トイレ内異常検知システムは、車両トイレの天井に配置され、検知距離を制限できる複数のセンサーと、この複数のセンサーからの出力信号に基づいて前記車両トイレの利用者の正常入室状態と利用者の異常入室状態とを検知する制御装置と、この制御装置に接続される報知装置とを具備する。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の実施例を示す車両トイレ内異常検知システムの基本的構成を示す模式図、図2はその車両トイレ内異常検知システムのブロック図、図3はその車両トイレ内異常検知システムの第1の態様を示す模式図、図4はその車両トイレ内異常検知システムの第2の態様を示す模式図である。
【0023】
これらの図において、1は車両トイレ(多目的トイレ)、2は多目的トイレ1の天井、3は多目的トイレ1の床、4は多目的トイレ1のドア、5は便器、6は天井2から一定の距離(例えば床3から40cm)の領域Aを検知できる第1のセンサー、7は天井2から床3までの距離の領域Bを検知できる第2のセンサー、8は制御装置、8Aは入力インターフェース、8Bはデータ処理部、8Cは出力インターフェース、9は報知装置、10はドア4のロック装置(鎖錠装置:鍵)、11はドア4のロック装置(鍵)10の施錠・解錠装置、12は室内灯、13はドア閉スイッチ、14はトイレの「入」・「空き」の表示装置である。
【0024】
そこで、図3に示すように、多目的トイレ1内に子供21や車椅子22を使用する身障者23や付添いの人24がいるような場合には、第1のセンサー6と第2のセンサー7の両方で子供21や車椅子22を使用する身障者23や付添いの人24を検知できるので、正常入室状態であると制御装置8で判別する。
【0025】
しかしながら、図4に示すように、領域Aに利用者がいないこと、例えば、付添いの人24が多目的トイレ1の床3に倒れているような場合には、第1のセンサー6では検知できないが、第2のセンサー7では検知できるので、このような場合には、制御装置8で異常入室状態であると判別し、報知装置9の表示灯(図示なし)が点灯する。またその表示灯の点灯とともに無線装置により、乗務員の携帯装置(図示なし)に非常通報する。同時に多目的トイレ1のドア4の施錠・解錠装置11でドア4のロック装置(鍵)10の解錠を行い、多目的トイレ1の周辺の乗客からの迅速な救助も期待できる。
【0026】
また、図1に示すように、多目的トイレ1内に誰も入室していない場合には、第1のセンサー6と第2のセンサー7の両方ともに検知されないので、誰もいない正常な状態であると制御装置8(図3,4参照)で判別し、正常であることを表示する。
【0027】
上記したように、多目的トイレ内の天井に設置された検知領域を制限できる複数のセンサーを利用して、前記多目的トイレ内で倒れた人がいる異常入室状態を検知することができる。
【0028】
また、図1に示すように、多目的トイレ内に利用者がいないことが検知できるので、かかる場合には、多目的トイレ内の室内灯12を消灯し省エネルギー化を図ることもできる。
【0029】
さらに、多目的トイレを使用しないのにトイレ室内の閉ボタンを押してドアを自動的にロックするようにした所謂押し逃げの場合にも、図1に示すように、多目的トイレ内に利用者がいないことが検知できるので、その場合には、多目的トイレ1のドア4の施錠・解錠装置11の解錠も行うことができる。
【0030】
また、図3に示すように正常入室状態では、入室時に室内灯12が点灯し、多目的トイレ内部のドア閉スイッチ13を利用者が操作することにより、自動的にドア4のドア4のロック装置(鍵)10の施錠が行われる。
【0031】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の車両トイレ内異常検知システムは、多目的トイレ内での異常入室状態にある利用者を的確に検知し、適切な措置を講じることができる車両トイレ内異常検知システムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 多目的トイレ
2 多目的トイレの天井
3 多目的トイレの床
4 多目的トイレのドア
5 便器
6 第1のセンサー(制限された検知領域)
7 第2のセンサー
8 制御装置
8A 入力インターフェース
8B データ処理部
8C 出力インターフェース
9 報知装置
10 ドアのロック装置(鍵)
11 ロック装置の施錠・解錠装置
12 室内灯
13 ドア閉スイッチ
14 表示装置
21 子供
22 車椅子
23 車椅子を使用する身障者
24 付添いの人

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)車両トイレの天井に配置された、検知距離を制限できる第1のセンサー及び床までの検知距離を有する第2のセンサーと、
(b)前記第1のセンサーと前記第2のセンサーからの出力信号に基づいて前記車両トイレの利用者の正常入室状態と利用者の異常入室状態とを検知する制御装置と、
(c)該制御装置に接続される報知装置とを具備することを特徴とする車両トイレ内異常検知システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両トイレ内異常検知システムにおいて、前記第1のセンサー及び第2のセンサーで共に利用者を検知できた場合は、前記制御装置で利用者の正常入室状態であると判別し、室内灯を点灯し、トイレ内のドア閉スイッチの操作によりトイレのドアの施錠・解錠装置を動作させロック装置の自動的施錠を行うことを特徴とする車両トイレ内異常検知システム。
【請求項3】
請求項1記載の車両トイレ内異常検知システムにおいて、前記第1のセンサーでは利用者は検知されず、前記第2のセンサーでは利用者を検知できた場合、前記利用者が異常入室状態であると検知することを特徴とする車両トイレ内異常検知システム。
【請求項4】
請求項3記載の車両トイレ内異常検知システムにおいて、前記前記利用者の異常入室状態が床に倒れている状態であることを特徴とする車両トイレ内異常検知システム。
【請求項5】
請求項1記載の車両トイレ内異常検知システムにおいて、前記利用者の異常入室状態が判別された場合には、トイレの室内灯は点灯したまま、前記報知装置で警報を報知するとともに、自動的に乗務員に非常通報し、前記トイレのドアの施錠・解錠装置を動作させロック装置の自動解錠を行うようにしたことを特徴とする。
【請求項6】
請求項1記載の車両トイレ内異常検知システムにおいて、前記第1のセンサー及び前記第2のセンサーの両方とも利用者を検知できない場合は、前記制御装置でトイレ内には入室者なしと判別し、トイレの表示を「空き」にし、トイレの室内灯は消灯し、トイレのドアの施錠・解錠装置を動作させロック装置を解錠することを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−237937(P2010−237937A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84840(P2009−84840)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】