説明

車両乗降用ステップ

【課題】車両ステップ奥行きを乗降時には旅客車両としての使用基準に適合させる。
【解決手段】既設の車両ステップS上に水平配置した固定踏板1と、車両ステップSより前端部2aが突出しない様に固定踏板1上でオーバーラップする格納位置Xと、車両ステップSより前端部2aが所定長さ突出する様に固定踏板1の前方でこれと同一平面上に連接する張出位置Yとの間を往復動自在に設けた進退踏板2とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗降時にバス、ワンボックスカー等の車両ステップ上にこれよりも面積拡張する様に展開される車両乗降用ステップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両においては、乗降用ステップが車内フロアの側部を一段低くして既設されているが、車内スペースを広く確保するためにそのステップの奥行き長さが充分に確保されていない(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−90910号公報(図1、2の車両乗降用ステップ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、乗降に際しては、ステップを踏み込む足元を気にしながら踏み外しのない様に乗降せねばならず、使い勝手が悪いといった課題を有している。
また、昨今の市バス等の利用者数の減少などの理由から、ワンボックスカーを小型バスに改良して運行することも考えられるが、この場合には、旅客車両としての使用基準に適合する様にステップの奥行きを長くせねばならなかった。
【0005】
そこで、本発明では、たとえ既設の車両ステップが旅客車両としての使用基準に不適合であっても、乗降時にはその基準に適合する様に、車両ステップ上でこれに代替する車内ステップをその前方の車外へ張り出させ、その奥行き長さを伸展する様にした車両乗降用ステップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明の車両乗降用ステップは、既設の車両ステップ上にこれより外方へ食み出ない様に水平配置した固定踏板と、車両ステップより前端部が車外前方へ突出しない様に固定踏板上でオーバーラップする格納位置と、車両ステップより前端部が車外前方へ所定長さ突出する様に固定踏板の前方でこれと同一平面上に連接する張出位置との間を往復動自在に設けた進退踏板とから成ることを特徴とする。
具体的には、車両ステップ上に前後に揺動可能なクランクを設け、該クランクと進退踏板との間に連杆を枢着連結し、該連杆における進退踏板との枢軸を進退踏板の軌道に沿って形成した案内溝に摺動自在に装着したことを特徴とするものであり、望ましくはクランクを駆動装置に連繋するのがより良い。
【発明の効果】
【0007】
要するに本発明は、既設の車両ステップ上に水平配置した固定踏板上でオーバラップ状に格納される進退踏板を、ドアによる車両乗降口の開放時において、車両ステップより前端部が所定長さ突出する様に固定踏板の前方でこれと同一平面上に連接することにより、車両ステップより奥行きが長く、乗降口より車外へ張り出した乗降用ステップを構成できる。
よって、乗降用ステップの奥行きを旅客車両としての使用基準に適合する様に長くすることができると共に、乗降用ステップの面積拡張できるため、乗降時の安全性を確保でき、従来の様にステップを踏み込む足元を気にすることもなく、安心して乗降できる。
【0008】
車両ステップ上に前後に揺動可能なクランクを設け、該クランクと進退踏板との間に連杆を枢着連結し、該連杆における進退踏板との枢軸を進退踏板の軌道に沿って形成した案内溝に摺動自在に装着したので、クランクを前後揺動させることで進退踏板を案内溝に沿った一定の軌道上を往復動する様に制御でき、これにより常に進退踏板の姿勢を規制でき、特に移動中では進退踏板のふらつきを防止でき、安全にして容易に進退踏板の往復操作を行うことができる。
【0009】
更に、上記クランクを駆動装置に連繋することにより、進退踏板の往復動を自動化でき乗降口付近で進退踏板を往復操作する様な煩わしさが解消される等その実用的効果甚だ大である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る車両乗降用ステップの張出状態を示す斜視図である。
【図2】同上張出状態を示す一部省略断面図である。
【図3】同上格納状態を示す一部省略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の実施の一形態例を図面に基づいて説明する。
本発明に係る車両乗降用ステップは、車内フロアFに段差を以て車両乗降口下部に既設された車両ステップS上で奥行き長さを伸縮可能に設けられる。
この乗降用ステップは、車両ステップS上にこれより外方へ食み出ない様に、図示例の如く車両ステップS上の奥行き方向後部に水平配置した固定踏板1と、車両ステップSより前端部2aが車外となる前方へ突出しない様に固定踏板1の前端部上で後端部がオーバーラップする格納位置Xと、車両ステップSより前端部2aが車外となる前方へ所定長さ突出する様に固定踏板1の前方でこれと同一平面上に連接する張出位置Yとの間を往復動自在に設けた進退踏板2とから成る。
【0012】
車両ステップS上には、その前後と左右の夫々で平行な前後左右壁3、3a、4、4aを対向立設し、後壁3aの中央上端に固定踏板1を水平に支持している。
固定踏板1は、前後壁3、3a間でこれらと平行な前端部3aと、左右壁4、4aの内側で平行な左右端部と、後壁3aの後方で車両ステップSの蹴込に沿って斜行する後端部とを有する平面視台形状の薄板から成り、前端部1aには前方降下状の傾斜壁1bを連続形成している。
【0013】
又、固定踏板1の左右側縁には前壁3から後壁3aの後方へ渡って側壁5、5aが形成されており、該側壁5、5aの前端部は前壁3に固着され、後端部は、後壁3aにおいて固定踏板1を支持する中央部に比し背丈が低く形成された左右側部を越えて後方へ突出して後壁3aに固着されている。
【0014】
進退踏板2は、固定踏板1より横幅が長く、前壁3と後壁3aの間隔に略等しい奥行きを有する横長矩形板と、該横長矩形板の前端縁及び左右側縁に連続して垂下固着したコ字状の補強枠とから成り、該補強枠は進退踏板2の前端部2aと側壁2bを構成している。
尚、側壁2bの後方は、その下端縁が後端へ向って下り傾斜する様に突出形成され、進退踏板2の側壁2b内側において、その下り傾斜状の後方下端縁における傾斜始端側と終端側の夫々に転子6、6aを設けている。
【0015】
そして、進退踏板2は、車両ステップS上に前後に揺動可能に設けた左右一対のクランク7を適宜進退機構を介して連繋している。
各クランク7は、基端(クランク)軸8を共有し、該基端軸8は側壁5、5aを貫通して左右壁4、4a間に回転自在に架設されている。
【0016】
進退機構は、クランク7と進退踏板2との間に連杆9を枢着連結するものにして、該連杆9における進退踏板2との枢軸10であって、これを支軸とする傾斜始端側の転子6(枢軸10)を、固定踏板1の側壁5、5aにおいて進退踏板2の軌道に沿って貫通形成した案内溝11に摺動自在に装着すると共に、側壁5、5aにおいて案内溝11の下側斜め後方へ平行移動した同形の案内溝11aに傾斜終端側の転子6a を摺動自在に装着することにより構成されている。
【0017】
上記構成の進退機構におけるクランク7と連杆9は、前端部1a及び傾斜壁1bの左右側縁に切欠した固定踏板1の側壁5、5a内側との空隙に配置されているため、クランク7と連杆9は何らの支障なく屈伸動作できる。
【0018】
そして、クランク7の前後揺動による連杆9との屈伸動作で転子6(枢軸10)が案内溝11内を前後へ移動することにより、進退踏板2は案内溝11に沿って格納位置Xと張出位置Yとの間を往復移動する。
尚、進退踏板2の張出状態では、後方は転子6、6aが案内溝11、11aの前端に係止され、前方は前壁3上端に装着したゴム製の緩衝材12が側壁2bの下端を支えることで進退踏板2の水平状態を保持している。
【0019】
そして、進退踏板2を自動操作するために、クランク7の基端軸8を正逆回転自在に駆動装置13に連繋している。
この駆動装置13は、左壁4の左側に対向立設したモータベース14左側に図示しない電動モータと減速装置を設置し、モータベース14を貫通して左壁4に向かって突出する駆動軸13aと、左壁4より外側(左側)へ突出する基端軸8とは、一対の同長クランク15、15aとこのクランク15、15a間に枢着連接される連杆16とから成る平行クランク機構を介して連繋されている。
【0020】
これにより、駆動装置13が作動し、その駆動軸13aが正逆回転することで、該駆動軸13aのクランク15が前後に揺動し、連杆16及びクランク15aを介して基端軸8が駆動軸13aと同一回転することにより、進退踏板2を変形移動させる。
尚、進退踏板2の張出状態と格納状態に対応するクランク15の各揺動位置には、該クランク15に触突するストッパー17、17aを設けている(図1参照)。
【0021】
次に、上記の様に構成された車両乗降用ステップの動作について説明する。
進退踏板2の室内格納状態では、駆動軸13aのクランク15は後方へ傾倒してストッパー17に触突し、連杆16、クランク15a及び基端軸8を介してクランク7は車両ステップS上に後倒している。
【0022】
これにより、クランク7とこれに連結している連杆9とは後方へ伸長し、転子6(枢軸10)、6aを案内溝11、11aの後端に位置させて、進退踏板2を固定踏板1上の格納位置Xに後退させ、その後端部を固定踏板1の前端部1a上でオーバーラップさせ、進退踏板2の前端部2aを車両ステップSより車外へ突出させずに、車両ステップS上に固定踏板1を介して格納配置している。よって、進退踏板2の格納状態では車両ドアの開閉に何らの支障を来すことがない。
【0023】
上記格納状態から進退踏板2を車外へ張り出すには、駆動装置13を作動し、クランク15、15a及び連接杆16を介して基端軸8を回動させることにより、後倒状態のクランク7を前方へ揺動させる。
これによりクランク7と連杆9が前方で屈曲し、転子6(枢軸10)、6aを案内溝11、11aの後端より下方に位置する前端へ位置させて、進退踏板2を固定踏板1前方の張出位置Yに配置させ、進退踏板2と固定踏板1を同一平面上の前後に連接させて乗降用ステップを車両ステップSよりも奥行きが長くなった状態で車両ステップSより乗降口前方の車外へ張り出させる。
【0024】
かかる状態では駆動装置13は停止し、クランク15は前方へ倒伏してストッパー17aに触突する。
この様に、車両ステップS上で乗降口前方へ展開された乗降用ステップ(踏板1、2)は車両ステップSより奥行きが長く面積が拡張された足継ぎとして利用される。
【0025】
上記張出状態の進退踏板2を格納するには、駆動装置13を作動して、基端軸8を上記と逆の後方へ揺動させることにより、進退踏板2を上記と逆の手順で動作させ、車両ステップS上の固定踏板1を介して重層格納させる。
【符号の説明】
【0026】
1 固定踏板
2 進退踏板
2a 前端部
7 クランク
9 連杆
10 枢軸
11 案内溝
13 駆動装置
S 車両ステップ
X 格納位置
Y 張出位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の車両ステップ上にこれより外方へ食み出ない様に水平配置した固定踏板と、車両ステップより前端部が車外前方へ突出しない様に固定踏板上でオーバーラップする格納位置と、車両ステップより前端部が車外前方へ所定長さ突出する様に固定踏板の前方でこれと同一平面上に連接する張出位置との間を往復動自在に設けた進退踏板とから成ることを特徴とする車両乗降用ステップ。
【請求項2】
車両ステップ上に前後に揺動可能なクランクを設け、該クランクと進退踏板との間に連杆を枢着連結し、該連杆における進退踏板との枢軸を進退踏板の軌道に沿って形成した案内溝に摺動自在に装着したことを特徴とする請求項1記載の車両乗降用ステップ。
【請求項3】
上記クランクを駆動装置に連繋したことを特徴とする請求項2記載の車両乗降用ステップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−121436(P2012−121436A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273333(P2010−273333)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(393020122)トーシンテック株式会社 (20)
【Fターム(参考)】