説明

車両内の複数の電気回路を切換えるスイッチ

【課題】低出力用のコスト的に有利なマイクロスイッチを使用した、車両の複数の電気回路を切り換えるスイッチを提供する。
【解決手段】ロータリ・ランプスイッチ1は、その上側に、オペレータにより操作可能なノブ3を有し、ノブ3は、ハウジングから突出する軸5に結合されている。軸5はハウジング2の上側および下側において、回転可能且つ縦方向に移動可能に支持されており、基板9の下側で、軸5上に、型ディスク7が一体回転可能且つ縦方向に移動可能に配置されている。型ディスク7は、その上側において、基板9の方向に突起および切欠部からなる型を有し、この型がマイクロスイッチ11ないし14を動作させる。ノブ3の切り替え位置がマイクロスイッチ11ないし14の動作として2進符号化され、論理装置に供給され、論理装置を介して車両内の複数の電気回路が切り替えられる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は車両の複数の電気回路を切換えるスイッチに関するものである。
【0002】
このようなスイッチは、車両技術において、複数の電気回路およびそれに付属の搭載消費機器の制御のために使用される。
従来の切換スイッチにおいては、多位置スイッチの切換接点が、切り換えられるべき電気回路と直接電気的に結合されている。
【0003】
したがって、種々のランプ点灯状態、即ち駐車ランプ(側面ランプ)、走行ランプ、フォグ・ランプ、フォグ・テールランプ等は、ただ1つの多位置スイッチを介して直接切り換えられる。
【0004】
例えば走行ランプのような一部出力の高い消費機器に対して、通常の12V電源における高い出力ないし高い電流の切換用の切換接点は、条件として、機能障害の原因となる摩耗を防止するように設計されていなければならない。
【0005】
このようなスイッチは、高出力の切換のために耐摩耗性接点の使用が必要なことにより、製造において製造費が高く製品は高価である。
したがって使用においてコスト的に有利で且つ製造が簡単なスイッチを可能にし且つ同時に確実な機能を保証する、車両の複数の電気回路を切換えるスイッチを提供することが本発明の課題である。
【0006】
この課題は本発明により請求項1の特徴により解決される。
本発明により、消費機器の電気回路の制御が、例えばマイクロ・スイッチのような切換要素による操作要素位置の2進符号によって間接的に行われるので、高い出力を切り換える必要はない。
【0007】
2進符号は、損失の少ないコスト的に有利な既知の電気的切換要素または制御要素(サイリスタ、トライアック等)を介して一方で電気回路を制御するゲート論理装置またはプロセッサ論理装置のようなコスト的に有利な論理要素の使用を可能にする。
【0008】
これにより、低出力用のコスト的に有利なスイッチの使用が可能となる。さらに、電気回路の特殊な切換機能は論理装置によりはじめて決定されるので、2進符号により、種々の適用に対してコスト的に有利な単一組立部品が使用されるだけでよい。
【0009】
このような論理装置は、例えば場合によりプログラミング可能なゲート(論理アレー)またはプロセッサ論理装置からなるものであってもよい。
この論理要素は少なくとも製造工程においてスイッチ上またはスイッチ内で容易に交換可能に組み込むことができる。
【0010】
しかしながら、スイッチの2進符号ないしスイッチの操作要素位置の2進符号を、バス系統を介して、他の搭載機能の制御のために追加的に使用されてもよい中央論理装置(搭載コンピュータ)に供給することもまた考えられる。
【0011】
本発明により、符号化可能性の数は操作要素位置の数ないし希望切換状態の数より大きい。この符号化可能性の余剰数は操作要素の位置または個々の所定の回路機能の検査(冗長性)のために使用される。
【0012】
例えば、他の切換要素を介して「走行ランプ点灯」のようなこの所定の状態(符号化されている)が予め設定されている位置において、それに追加して、1つの切換要素(冗長スイッチ)が操作要素により型ディスクを介して所定の状態の位置(“0”または“1”の位置)に作動される。特定の切換機能のこの二重作動は相互にOR結合されているので、冗長スイッチまたはその他のスイッチを介して、例えば「走行ランプ点灯」のような特定の状態の投入のために、1つの作動だけで十分である。
【0013】
これにより、例えば「走行ランプ点灯」のような安全に関係する機能が、エラーがあるにもかかわらず、この冗長性のためにそのまま実行されてしまうことが回避される。しかしながら、このような冗長スイッチの代わりに、他の冗長性原理が使用されてもよい。例えば、各符号の組み合わせが、隣接する符号の組み合わせ(例えば0000、0011、0101、1000等)または他の任意の符号の組み合わせ(例えば0000、1001、1110、0111等)と少なくとも2つのビットにおいて異なるように、型ディスクにより操作されてもよい。このとき、可能化されたそれぞれの組み合わせまたは変化は、論理装置により検査され、二重の冗長性が生ずるようなエラーが生じた場合、補正が行われおよび/またはアラームが発生される。
【0014】
本発明のその他の有利な実施態様が従属請求項から明らかである。
以下に本発明を図面に示す実施態様により説明する。
図1に示したロータリ・ランプ・スイッチ1は、その上側に、オペレータにより操作可能なノブ3を有し、ノブ3は、ハウジング2から突出する軸5の端部上に着脱可能に剛に結合されている。
【0015】
軸5は、ハウジング2の上側および下側において、回転可能且つ縦方向に移動可能に支持されている。ハウジング2の内部の中央領域において、基板9がハウジング内で位置固定に配置され、この場合、軸5は垂直方向に基板9内の中央切欠部を貫通して伸長している。この中央切欠部の内径寸法はその中を貫通する軸部分の外径寸法より大きく形成されている。基板9の下側で、軸5上に、型ディスク7が一体回転可能且つ縦方向に移動可能に配置されている。このために、型ディスク7は内側六角形の形の中央切欠部を有し、この内側六角形は軸5のこの部分の外側六角形領域に対応して、ないしはそれより僅かに大きく形成されている。
【0016】
型ディスク7の下側で、軸5は、ハウジング2ないしその下側により位置固定に配置されている、軸受スリーブ8の形の中空円筒本体内に、回転可能且つ縦方向に移動可能に支持されている。このスリーブ8の上側(正面側)は型ディスク7の下側に対する位置固定の下方限界ストッパとして働き、型ディスク7の上側に設けた凹凸形状カム部(図1及び図2にその一部を示す)はマイクロ・スイッチ11ないし14自体が夫々有する一組の固定及び可動接点のうち外側ばね性可動接点と接触をなし、この可動接点を押圧変位させて固定接点に接触せしめてスイッチの切換を行わせる。これにより、型ディスク7は、ハウジング内で、軸5が縦方向に移動可能であるにもかかわらず、縦方向に位置固定に支持されている。この所定位置を正確に保持するために、型ディスク7を例えば差込継手によりスリーブ8に回転可能に且つ軸5の縦方向に位置固定に配置することもまた考えられる。
【0017】
オペレータがノブ3を介して軸5を引き抜くときの制限は、詳細には図示されていないが、軸5上の切欠部および突起、およびこれと協働する、ハウジングに位置固定に配置されている要素により形成される。
【0018】
逆に、軸5は、ノブ3の下側がハウジング2の上側の外側に当接するまで挿入可能である。
このようにして、軸5の引出しおよび挿入は所定の値だけ保証され、これにより型ディスク7の縦方向に見た位置が変化されることはない。
【0019】
図2から明らかなように、型ディスク7は、その上側において、基板9の方向に突起および切欠部からなる型を有し、この型がマイクロ・スイッチ11ないし14を操作する。
【0020】
このために、マイクロ・スイッチ11ないし13は、図1および図2に示す接線方向に、または図3および図4に示す半径方向に配置されていてもよい。この場合、スイッチ11ないし14の配置は型ディスク7の型に対応し且つスイッチ11ないし14の希望の切換特性に対応する。
【0021】
型ディスク7の上側の型とばね付勢されたマイクロ・スイッチ11ないし14の接点との対応協働により、例えば次の表に示すような切換特性が得られる。
回転ノブ 機能 スイッチ スイッチ スイッチ スイッチ
の位置 11 12 13 14
I 駐車ランプ左 1 0 1 1
II 駐車ランプ右 1 1 0 1
III 自動走行ランプ 1 0 0 1
IV OFF 0 0 0 1
V 側面ランプ 0 1 0 1
VI 走行ランプ 0 1 1 0
自動走行ランプ:検出された周囲の明るさの関数として制御される走行ランプこの場合、図5から読取り可能な回転ノブ3の略示位置IないVIは、スイッチ11ないし14の所定の位置ないし組み合わせに対応する。切換位置のこのタイプの2進符号において、スイッチ14は、例えばここでは走行ランプないし下向きランプのような特に重要な機能を保証するために、機能障害にもかかわらず使用可能にする冗長スイッチとして機能する。
【0022】
機能「走行ランプ」は、スイッチ11ないし13の符号に追加して、さらにスイッチ14の「0」位置(即ち走行ランプ作動)により保証される。「0」位置(走行ランプ作動)は、ここでは特性「スイッチが作動されていない」ないし「電流が流れていない」ないし「導線が接地されている」に対応するので、論理回路を介して走行ランプに対する3ビット符号(例えば011)とのOR結合により点灯を継続する。これにより、潜在エラー機能はエラーとして検出され且つアラーム「エラー機能」として出力されてもよい。
【0023】
これは、例えば追加のフォグ・ランプのスイッチの投入(オン)または遮断(オフ)において個々のまたはすべてのスイッチ11ないし13の接地接続のようなエラー機能が走行ランプの意図しない危険な遮断(オフ状態)に導くことがないという利点を有している。
【0024】
しかしながら、冗長スイッチを「0」位置の代わりに「1」位置に形成することもまた考えられる。これにより、電流接続においては対応導線が「1」ポテンシャルに引き入れられるので、「接地接続」の代わりにエラー機能「電流接続」を検出することができる。
【0025】
しかしながら、このような冗長スイッチは相互間の組み合わせにおいても使用可能なので、両方のエラー機能が検出され、および/またはエラーを許容して投入されてもよい。
【0026】
多位置スイッチの切換位置の2進符号は、追加の冗長スイッチを有する3ビット符号に制限されず、多ビット符号としての必要な切換位置数に応じてそれぞれ、(例えば安全に関係する複数の切換機能に対して)1つまたは複数の冗長スイッチを用いて実行可能であることは明らかである。
【0027】
本発明において、低出力用および場合により冗長用マイクロ・スイッチにより、2進符号を用いてこのようなスイッチのコスト的に有利な簡単な構造が可能となる。例として挙げた冗長方式の代わりに、特定の符号の位数により、例えば位数ごとの少なくとも2つの状態の変化により、または各桁の和に対する冗長ビット等によっても冗長性を形成することができる。
【0028】
このとき、電気回路の制御は、制御電子装置を介して、論理ユニットおよび切換ユニットを用いて行われ、これらのユニットは、その一部または全部がスイッチ内またはスイッチ上に設けられていてもよい。この制御電子装置は、例えば搭載コンピュータのような中央制御装置の一部として形成されていてもよい。
【0029】
マイクロ・スイッチ11ないし14に追加して、図3および図4から明らかなように、基板9に他のマイクロ・スイッチ15および16が存在する。これらのマイクロ・スイッチは、型ディスクの方向に向けられているスイッチ11ないし14とは異なり、軸5に対して半径方向内方に向けられている。
【0030】
これにより、マイクロ・スイッチ15および16は、軸5の表面上の対応切欠部および突起により、この領域において操作することができる。この操作は、例えば軸5の回転によりまたは縦方向移動により行うことができる。図示の実施態様においては、これらのスイッチ15および16は軸5の2段階の引出移動ないし挿入移動の検出およびフォグ・ランプおよび/またはフォグ・テール・ランプのような対応する切換機能に使用される。
【0031】
オペレータが操作しやすいスイッチの切換を保証するために、スイッチ1内に詳細には図示されていない係止カムまたは係止要素が配置され、これらの係止カムまたは係止要素は、通常、回転方向および縦方向における係止位置を保証している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は本発明による回転ランプ・スイッチの斜視図を示す。
【図2】図2は図1に示した回転ランプ・スイッチの下部部分の拡大斜視図を示す。
【図3】図3は回転ランプ・スイッチの基板の平面図を示す。
【図4】図4は図3に示した基板の斜視図を示す。
【図5】図5は回転ランプ・スイッチの切換位置の概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の複数の電気回路特にランプ電気回路を切換えるスイッチにおいて、該スイッチは、
複数の切換要素(11〜14)と、
操作要素(3、5、7)であって、複数の切換位置(I〜VI)へ操作されるときに、各切換位置(I〜VI)において前記複数の切換要素(11〜14)の1組の切換状態(1011)を得つつ、複数の切換位置(I〜VI)において複数組の切換状態(1011、1101、・・・)を得る前記操作要素(3、5、7)と、
前記複数組の切換状態(1011、1101、・・・)からこれに対応する複数組の2進化符号(1011、1101、・・・)を得て、前記スイッチを制御する論理装置と、を具備し、
更に、操作要素(3、5、7)の所定切換位置(VI)において、少なくとも1つの切換要素(14)に対応する符号(0又は1)を、符号化可能性の余剰数として、前記スイッチの検査又は冗長性確保のために使用させる検査又は冗長性確保手段と、を具備する
ことを特徴とする車両内の複数の電気回路特にランプ電気回路のスイッチ。
【請求項2】
請求項1のスイッチにおいて、前記2進符号化された符号が前記論理装置によりバス系統を介して読み取られることを特徴とするスイッチ。
【請求項3】
請求項1または2のスイッチにおいて、前記論理装置前記電気回路を制御するための中央論理装置として形成されていることを特徴とするスイッチ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項のスイッチにおいて、前記切換要素(11〜14)が低出力切換用マイクロ・スイッチ(11〜14)として形成されていることを特徴とするスイッチ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項のスイッチにおいて、操作要素(3,5,7)が、回転方向及び軸方向に夫々一体的に移動する回転ノブ(3)及び軸(5)と、該軸(5)に少なくとも回転方向一体に結合され、切換要素(11〜14)を切換操作する型(プロフィル)ディスク(7)とから構成されることを特徴とするスイッチ。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項のスイッチにおいて、前記回転ノブ(3)及び軸(5)は、型ディスク(7)に対して一体回転可能且つ相対的に軸方向に移動可能に支持され、これにより、前記前記回転ノブ(3)及び軸(5)が、第1の軸方向位置にあるときは前記型ディスク(7)を介して前記切換要素(11〜14)の切換を行い、且つ第2の軸方向位置へ移動したときに、前記軸(5)により前記切換要素(11〜14)とは異なる他の切換要素(15、16)を切換操作させ得ることを特徴とするスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−318921(P2006−318921A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156028(P2006−156028)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【分割の表示】特願2000−599050(P2000−599050)の分割
【原出願日】平成12年2月10日(2000.2.10)
【出願人】(597013146)ティーアールダブリュー・オートモーティブ・エレクトロニクス・アンド・コンポーネンツ・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト (51)
【住所又は居所原語表記】Industriestr.2−8,78315 Radolfzell,Germany
【Fターム(参考)】