車両冷却システム
【課題】車両ユニットで発生した熱を冷却する車両冷却システムにおいて、熱交換器における熱衝撃の発生を防止する。
【解決手段】本発明の車両冷却システム1は、発熱源である車両ユニット2で暖められた冷却水を冷却する熱交換器4と、熱交換器4に冷却風を送風する冷却ファン5と、熱交換器4への冷却経路と熱交換器4をバイパスする冷却経路とを切り替える三方弁8と、冷却経路に冷却水を循環させる冷却水ポンプ3とを備え、コントローラ12が、熱交換器4における冷却水温度と車両ユニット2の冷却水出口温度とに基づいて、冷却ファン5、冷却水ポンプ3、三方弁8のうちの少なくとも1つを制御して熱衝撃の発生を防止するようにした。
【解決手段】本発明の車両冷却システム1は、発熱源である車両ユニット2で暖められた冷却水を冷却する熱交換器4と、熱交換器4に冷却風を送風する冷却ファン5と、熱交換器4への冷却経路と熱交換器4をバイパスする冷却経路とを切り替える三方弁8と、冷却経路に冷却水を循環させる冷却水ポンプ3とを備え、コントローラ12が、熱交換器4における冷却水温度と車両ユニット2の冷却水出口温度とに基づいて、冷却ファン5、冷却水ポンプ3、三方弁8のうちの少なくとも1つを制御して熱衝撃の発生を防止するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ユニットで発生した熱を冷却する車両冷却システムに係り、特に熱交換器における熱衝撃を防止する車両冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、開発が行われている燃料電池車では高効率の運転が行われ、ガソリン車に比べて水放熱量が多いため大型の熱交換器が用いられている。
【0003】
このような燃料電池車の冷却システムでは、燃料電池などの車両ユニットに冷却水を循環させて冷却しており、この冷却水は冷却水ポンプによって冷却水経路を循環し、車両ユニットで温度上昇した冷却水が熱交換器に送られて放熱されるように構成されている。このとき、車両ユニットにおける冷却水出口温度を検出して、この出口温度が規定値以上のときには冷却水経路に設けられた三方弁を熱交換器側に切り替えて冷却水を冷却するようにしている。また、冷却水の出口温度が規定値未満のときには三方弁をバイパス側に切り替えて冷却水が熱交換器をバイパスするようにしている。
【0004】
上記のような車両の冷却システムの従来例として、例えば特開2003−239745号公報(特許文献1)が開示されている。
【0005】
この従来例では、エンジン冷却水の温度変化によって自動的に開閉するサーモスタットを備え、このサーモスタットの開閉によってラジエータに流れる冷却水の流量を調節し、エンジン温度を制御している。
【0006】
また、上述したような車両の冷却システムで利用される熱交換器の従来例として、例えば特開2004−293982号公報(特許文献2)が開示されている。
【特許文献1】特開2003−239745号公報
【特許文献2】特開2004−293982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような車両の冷却システムでは、電子制御可能な三方弁や冷却水ポンプ、冷却ファンなどを用いており、水温を一定に保つためにそれぞれの回転数や開閉度を精度よく制御している。
【0008】
ところが、車両ユニットの冷却水出口温度が高くなった場合には三方弁は瞬時に熱交換器側に開くので、熱交換器内の冷却水温度と車両ユニットの冷却水出口温度の温度差が大きい場合には熱交換器に熱衝撃が発生してしまうという問題点があった。
【0009】
とくに、燃料電池車のように高効率の運転が行われると熱交換器が大型になるので、熱交換器内に温度差が発生しやすくなり、熱衝撃性が悪くなる。また、横流れ型の熱交換器では一般に熱交換器チューブ部分の長さが長くなるので、チューブの伸び量が大きくなり熱衝撃性が悪くなる。さらに、燃料電池車やハイブリット車では複数の冷却経路を持っているので、複数の熱交換器を一体にした熱交換器を用いる場合があり、この場合にはそれぞれの熱交換器を溶接した部分の熱衝撃性が悪くなってしまう。
【0010】
これに対して、上述した特許文献1に開示された従来例のシステムは、冷却効率を向上させることを目的としており、熱衝撃の影響を考慮していないので、熱衝撃性に対する熱交換器単体の耐熱温度差を超えるような温度差(例えば40°以上)の冷却水がラジエータに流れ込んでしまうおそれがあった。
【0011】
また、特許文献2に開示された従来例では、熱衝撃に耐えられるようにするために熱交換器の構造を強固にする必要があり、コスト高や重量増加などの別の問題が発生することになる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明の車両冷却システムは、車両ユニットで暖められた冷却水を冷却する熱交換器と、前記熱交換器に冷却風を送風する冷却ファンと、循環する冷却水を前記熱交換器へ流す冷却経路と前記熱交換器へ流さずにバイパスする冷却経路とを切り替える三方弁と、前記冷却経路に冷却水を循環させる冷却水ポンプと、前記熱交換器における冷却水温度および前記車両ユニットにおける冷却水出口温度に基づいて、前記冷却ファン、前記冷却水ポンプ、前記三方弁のうちの少なくとも1つを制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車両冷却システムでは、熱交換器における冷却水温度と車両ユニットの冷却水出口温度に基づいて、冷却ファン、冷却水ポンプ、三方弁のうちの少なくとも1つを制御するようにしたので、熱交換器の冷却水温度と車両ユニットの出口温度との温度差が大きく、熱交換器に熱衝撃が発生する可能性が高いときには冷却水の流量と冷却風の風量を制御することができ、これによって熱交換器内に急激な温度差を発生させずに熱衝撃による熱交換器の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係わる車両冷却システムの実施例を図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、実施例1に係る車両冷却システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施例の車両冷却システム1は、発熱源となる燃料電池やモータなどの車両ユニット2と、冷却水を循環させる冷却水ポンプ3と、冷却水の熱を放熱する熱交換器4と、熱交換器4に冷却風を送風する冷却ファン5と、冷却配管6を循環してきた冷却水の冷却経路を熱交換器4側とバイパス経路7側に切り替える三方弁8と、車両ユニット2の冷却水出口温度を検出する出口温度センサ9と、車両ユニット2の冷却水入口温度を検出する入口温度センサ10と、熱交換器4の冷却水温度を検出する熱交換器温度センサ11と、各温度センサによって検出された冷却水温度に基づいて冷却水ポンプ3や冷却ファン5、三方弁8を制御するコントローラ12とから構成されている。
【0016】
冷却水ポンプ3は、冷却水を循環させるウォーターポンプであり、コントローラ12によって回転数が電子制御されている。
【0017】
熱交換器4は、ラジエータなどの通常の放熱装置であって、冷却ファン5から送風される冷却風によって冷却水の熱を放熱させて温度を下げている。
【0018】
冷却ファン5は、コントローラ12によって回転数が電子制御され、熱交換器4に冷却風を送風している。
【0019】
三方弁8は、冷却配管6を循環してきた冷却水の冷却経路を熱交換器4側とバイパス経路7側とに切り替えており、コントローラ12によって弁の切り替え方向、及び弁の開速度が電子制御されている。この三方弁8は、内部の弁をいずれか一方の冷却経路側に開く(これと連動して他方の冷却経路側を閉じる)ことで経路の切り替えを行っており、とくに弁を熱交換器4側の冷却経路へ切り替える際の開速度は無段階に制御されている。
【0020】
出口温度センサ9は、車両ユニット2の冷却水出口温度TWOを検出し、検出信号をコントローラ12に出力している。
【0021】
入口温度センサ10は、車両ユニット2の冷却水入口温度TWIを検出し、検出信号をコントローラ12に出力している。
【0022】
熱交換器温度センサ11は、熱交換器4の冷却水温度TRWを検出し、検出信号をコントローラ12に出力している。
【0023】
コントローラ12は、CPU、ROM、RAMなどを含むマイクロコンピュータにより構成され、出口温度センサ9、入口温度センサ10、熱交換器温度センサ11、外気温度センサ92(図9)、および図示しない車速計などで検出された値に基づいて、冷却水ポンプ3の回転数、冷却ファン5の回転数、三方弁8の開閉/開速度のうちの少なくとも1つを制御している。
【0024】
なお、コントローラ12は通常の制御として、車両ユニット2における冷却水出口温度を検出して、この出口温度が規定値以上のときには冷却水経路に設けられた三方弁8を熱交換器4側に切り替えて冷却水を冷却するようにし、また、冷却水出口温度が規定値未満のときには三方弁8をバイパス側に切り替えて冷却水が熱交換器4へ流れないようにしている。
【0025】
次に、本実施例に係る車両冷却システム1による熱衝撃の発生防止処理を図2のフローチャート及び図3に基づいて説明する。
【0026】
図2に示すように、まずコントローラ12は熱交換器温度センサ11で検出された熱交換器4の冷却水温度TRWを読み込む(S201)。次に、出口温度センサ9で検出された車両ユニット2の冷却水出口温度TWOを読み込む(S202)。
【0027】
そして、コントローラ12は、車両ユニット2の冷却水出口温度TWOが所定値以上で、なお且つ冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が40℃より大きいか否かを判定する(S203)。
【0028】
ここで、ステップS203の条件を満たさないときには、冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が20℃未満の場合には熱衝撃への対策は不要と判断し、また冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が20℃よりも大きく40℃未満の場合には熱交換器4での対策で対応可能と判断して(S204)、本実施例の車両冷却システム1による熱衝撃の発生防止処理を終了する。
【0029】
一方、ステップS203において、車両ユニット2の冷却水出口温度TWOが所定値以上で、なお且つ冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が40℃より大きいときには、コントローラ12は三方弁8を熱交換器4側の冷却経路に切り替える際の開速度(%/s)を制限する(S205)。
【0030】
この三方弁8の開速度の制限方法としては、図3に示すように冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が40℃より大きい場合は、その値が大きくなるにしたがって、三方弁8を熱交換器4側の冷却経路へ切り替える際の開速度を遅くするように制御する。なお、三方弁8の開速度とは単位時間(s)当たりに開く弁の割合(%)であり、温度差が40℃に満たない場合は三方弁8を熱交換器4側の冷却経路へ切り替える際の開速度を制限せず、通常の開速度とする。
【0031】
こうして三方弁8の開速度を温度差に応じて制御することにより、本実施例の車両冷却システム1による熱衝撃の発生防止処理は終了する。
【0032】
このように、本実施例に係る車両冷却システム1では、熱交換器4の冷却水温度TRWと車両ユニット2の冷却水出口温度TWOとに基づいて熱交換器4に流入する冷却水の流量を制御するようにしたので、熱交換器4内に急激な温度差を発生させずに熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【0033】
また、本実施例に係る車両冷却システム1では、電子制御可能な三方弁8を用いているため、この三方弁8を熱交換器4側の冷却経路に切り替える際の開速度を制御することで熱交換器4に流入する冷却水の流量を制御することができ、熱交換器4内に急激な温度差を発生させずに熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【0034】
また、本実施例に係る車両冷却システム1では、熱交換器4における冷却水温度と車両ユニット2の冷却水出口温度との温度差が大きくなるにしたがって、三方弁8を熱交換器4側の冷却経路へ切り替える際の開速度を遅くするようにしたので、熱交換器4へ流入する冷却水の流量の低下を最低限に抑えつつ熱交換器4の熱衝撃による破損を防止することができる。
【実施例2】
【0035】
図4は、実施例2に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。ただし、図4は図2のフローチャートにおけるステップS205以降の処理を示すフローチャートであり、ステップS205以前の処理については説明を省略する。また、本実施例に係る車両冷却システムの構成は、実施例1と同様なので詳しい説明は省略する。
【0036】
本実施例による熱衝撃の発生防止処理では、まず図2のフローチャートで説明した処理が行われ、ステップS205において熱交換器4へ流れ込む冷却水の流量の制御が開始されると、続いて冷却水ポンプ3の回転数が制御される(S401)。
【0037】
このステップS401における冷却水ポンプ3の制御において、コントローラ12は、温度差のある冷却水が熱交換器4に流れ込んで熱衝撃が発生することがないように、冷却水ポンプ3の回転数を下げるように制御する。
【0038】
ここで、冷却水ポンプ3の回転数を下げると冷却水の流量が減るので、熱交換器4の放熱量が減少して車両ユニット2の冷却水出口温度TWOが上昇してしまう場合がある。そこで、冷却水出口温度TWOが上昇し続けるか否かを判定する(S402)。この判定方法としては、冷却水出口温度TWOに所定の閾値を設定しておき、この閾値を越えたか否かで判断する。また、冷却水出口温度TWOの変化率(℃/s)を監視して、この値が所定の変化率を上回るか否かによって判定してもよい。
【0039】
そしてコントローラ12は、ステップS402において、冷却水出口温度TWOが上昇していないと判定した場合には特別な対策は不要と判断して(S403)、本実施例の車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を終了する。
【0040】
また、冷却水出口温度TWOが上昇し続けていると判定した場合には、冷却ファン5を回転させ、入口温度センサ10で検出される車両ユニット2の冷却水入口温度TWIを低くする(S404)。
【0041】
ここで、ステップS404における冷却ファン5の駆動方法としては、図5に示すように、冷却水出口温度TWOが規定温度以上になったときに、冷却ファン5の駆動を開始し、この後は冷却水出口温度TWOが上昇するにしたがって冷却ファン5の回転数も上昇させる。
【0042】
これにより、冷却水入口温度TWIが、設定値に下がるまで冷却ファン5が駆動され、熱交換器4が過冷却となるので冷却液の温度上昇を抑制することができる。
【0043】
こうして冷却水入口温度TWIが設定値まで下がると、本実施例の車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理は終了する。また、本実施例では上述したように冷却ファン5によって冷却液の温度を調整できるので、三方弁8は電子制御式でなくワックス式であってもよい。
【0044】
このように、本実施例に係る車両冷却システムでは、冷却水ポンプ3が電子制御可能に構成され、熱交換器4の冷却水温度と車両ユニット2の冷却水出口温度に基づいて冷却水ポンプ3の回転数を制御するようにしたので、熱交換器4に流入する冷却水の流量を制御することができ、熱交換器4における急激な温度差の発生を防止し、熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【0045】
また、本実施例に係る車両冷却システム1では、冷却水ポンプ3の回転数と冷却ファン5の回転数を同時に制御するようにしたので、熱交換器4における放熱不足が発生する可能性が高い場合に冷却ファン5の回転数を制御して熱交換器4を過冷却にできるので、熱交換器4における急激な温度差の発生を防止し、熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【実施例3】
【0046】
図6は、実施例3に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。本実施例に係る車両冷却システムの構成は、実施例1と同様なので詳しい説明は省略する。
【0047】
図6に示すように、まずコントローラ12は熱交換器温度センサ11で検出された熱交換器4の冷却水温度TRWを読み込む(S601)。次に、出口温度センサ9で検出された車両ユニット2の冷却水出口温度TWOを読み込む(S602)。
【0048】
そして、コントローラ12は、車両ユニット2の冷却水出口温度TWOが所定値以上で、なお且つ冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が40℃より大きいか否かを判定し(S603)、この条件を満たさないときには次にステップS604へ進む。
【0049】
そして、ステップS604では、冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が20℃未満の場合には熱衝撃への対策は不要と判断し、また冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が20℃よりも大きく40℃未満の場合には熱交換器4での対策で対応可能と判断して(S604)、本実施例の車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を終了する。
【0050】
一方、ステップS603において、車両ユニット2の冷却水出口温度TWOが所定値以上で、なお且つ冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が40℃より大きいときには、コントローラ12は本システムが搭載された車両の車速を車速計で検出し、この車速が規定値より低いか否かを判定する(S605)。ここで、車速が規定値以上の場合には熱交換器4に必要な風量が供給されているので特別な制御は必要ないので、本実施例の車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を終了する。
【0051】
また、ステップS605において、車速が規定値より低い場合には、通常の制御が実施されている三方弁8が熱交換器4側に開き始めるより先に、冷却ファン5の回転数を上昇させる(S606)。これにより、冷却経路が熱交換器4側に切り替えられて熱交換器4に温度差のある熱い冷却水が流れ込む前に冷却ファン5の回転数を上昇させておくことができる。
【0052】
こうして、ステップS608において冷却ファン5の回転数が上昇されると、本実施例の車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理は終了する。また、本実施例では上述したように冷却ファン5によって冷却水の温度を調整できるので、三方弁8は電子制御式ではなくワックス式であってもよい。
【0053】
このように、本実施例に係る車両冷却システムでは、熱交換器4の冷却水温度と車両ユニット2の冷却水出口温度に基づいて熱交換器4を通過する冷却風の風量を制御するようにしているため、熱交換器4に供給される冷却風量が多くなればなるほど熱交換器4の効率が上がり、熱交換器4内における急激な温度差の発生を防止し、熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【0054】
また、本実施例に係る車両冷却システムでは、三方弁8が熱交換器4側に開くよりも先に冷却ファン5の回転数を上昇させるので、冷却水の流量が増加する前に予め熱交換器4の放熱効率を高めることができ、これによって熱交換器4内における急激な温度差の発生を防止し、熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【0055】
さらに、本実施例に係る車両冷却システムでは、当該車両冷却システムが搭載された車両の車速に基づいて冷却ファン5の回転数を制御するようにしているため、車速に応じて熱交換器4に必要な冷却風量が与えられているかどうかを判断することができ、これによって熱交換器4内に急激な温度差が発生する可能性がある場合にのみ冷却ファン5を駆動すればよいので、電力の消費を低下させつつ熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【実施例4】
【0056】
図7は、実施例4に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。本実施例に係る車両冷却システムの構成は、実施例1と同様なので詳しい説明は省略する。
【0057】
図7に示すように、まずコントローラ12は熱交換器温度センサ11で検出された熱交換器4の冷却水温度TRWを読み込む(S701)。次に、出口温度センサ9で検出された車両ユニット2の冷却水出口温度TWOを読み込む(S702)。
【0058】
そして、コントローラ12は、車両ユニット2の冷却水出口温度TWOが所定値以上で、なお且つ冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が40℃より大きいか否かを判定し(S703)、この条件を満たさないときには次にステップS704へ進む。
【0059】
そして、ステップS704では、冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が20℃未満の場合には熱衝撃への対策は不要と判断し、また冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が20℃よりも大きく40℃未満の場合には熱交換器4での対策で対応可能と判断して(S704)、本実施例の車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を終了する。
【0060】
一方、ステップS703において、車両ユニット2の冷却水出口温度TWOが所定値以上で、なお且つ冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が40℃より大きいときには、本システムが搭載されている車両の車速が規定値より低いか否かを判定する(S705)。そして、車速が規定値以上の場合には熱交換器4に流入する冷却水の流量を制御する(S706)。この冷却水の流量の制御としては、三方弁8を熱交換器4側の冷却経路へ切り替える際の開速度が遅くなるように制御するか、あるいは冷却水ポンプ3の回転数が低くなるように制御する。
【0061】
そして、コントローラ12は、この制御によって冷却水出口温度TWOが所定値以上に上昇したか否かを判定し(S707)、冷却水出口温度TWOが所定値以上に上昇していないときには特別な対策は必要ないので、本実施例の車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を終了する。
【0062】
また、ステップS707において、冷却水出口温度TWOが所定値以上に上昇しているときには、冷却ファン5を回転させる(S708)。このとき、冷却ファン5がまだ回転していない場合には冷却ファン5の駆動を開始し、後述するステップS711で冷却ファン5がすでに回転している場合には、回転数を上昇させて本実施例の車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を終了する。
【0063】
一方、ステップS705において、車速が規定値より低い場合には、コントローラ12は冷却水出口温度TWOの上昇率(℃/s)が所定値よりも大きいか否かを判定し(S709)、所定値よりも大きい場合には三方弁8が熱交換器4側に開き始めるよりも先に冷却ファン5の回転数を多く回転させ(S710)、冷却水出口温度TWOの上昇率(℃/s)が所定値以下の場合には三方弁8が熱交換器4側に開き始めるよりも先に冷却ファン5を少し回転させる(S711)。これにより、冷却経路が熱交換器4側に切り替えられて熱交換器4に温度差のある熱い冷却水が流れ込む前に冷却ファン5の回転数を上昇させておくことができる。
【0064】
ここで、ステップS711及びS712における冷却ファン5の回転方法としては、図8に示すように、車両ユニット2の冷却水出口温度TWOの上昇率が所定値Aより大きい場合には冷却ファン5を最高回転数で回転させ、所定値A以下で且つ規定値以上の場合には冷却ファン5を最高回転数の60%程度の回転数で回転させる。ただし、この回転数は条件に応じて変更されるものである。
【0065】
こうしてステップS711において冷却ファン5が少し回転した場合には、ステップS706へ進んで上述したステップS706〜S708の処理を行う。また、ステップS710において冷却ファン5が多く回転した場合には熱交換器4の効率を最大限高めて熱交換器4内の冷却水温度の変化を少なくして(S712)本実施例の車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理は終了する。
【0066】
このように、本実施例に係る車両冷却システムでは、熱交換器4における冷却水温度と車両ユニット2の冷却水出口温度に基づいて、冷却ファン5、冷却水ポンプ3、三方弁8のうちの少なくとも1つを制御するようにしたので、熱交換器4の冷却水温度と車両ユニット2の冷却水出口温度との温度差が大きく、熱交換器4に熱衝撃が発生する可能性が高いときには冷却水の流量、冷却風の風量を制御することができ、これによって熱交換器4内に急激な温度差を発生させずに熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【0067】
また、本実施例に係る車両冷却システムでは、熱交換器4の冷却水温度と車両ユニット2の冷却水出口温度に基づいて熱交換器4を通過する冷却風の風量を制御するようにしているため、熱交換器4に供給される冷却風量が多くなればなるほど熱交換器4の効率が上がり、熱交換器4内における急激な温度差の発生を防止し、熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【0068】
また、本実施例に係る車両冷却システムでは、三方弁8が熱交換器4側に開くよりも先に冷却ファン5の回転数を上昇させるので、冷却水の流量が増加する前に予め熱交換器4の放熱効率を高めることができ、これによって熱交換器4内における急激な温度差の発生を防止し、熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【0069】
さらに、本実施例に係る車両冷却システムでは、当該車両冷却システムが搭載された車両の車速に基づいて冷却ファン5の回転数を制御するようにしているため、車速に応じて熱交換器4に必要な冷却風量が与えられているかどうかを判断することができ、これによって熱交換器4内に急激な温度差が発生する可能性がある場合にのみ冷却ファン5を駆動すればよいので、電力の消費を低下させつつ熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【0070】
また、本実施例に係る車両冷却システムでは、熱交換器4に流入する冷却水流量と熱交換器4を通過する冷却風の風量とを同時に制御するようにしているため、より効果的に熱交換器4内に急激な温度差が発生することを防止し、熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【実施例5】
【0071】
図9は、実施例5に係る車両冷却システムの構成を示すブロック図である。図9に示すように、本実施例の車両冷却システム91は、外気温を検出する外気温度センサ92を備え、熱交換器4の冷却水温度を検出する熱交換器温度センサ11が設置されていないことが実施例1と異なっており、その他の構成については実施例1と同様なので詳しい説明は省略する。
【0072】
ここで、外気温度センサ92は、本車両冷却システムを制御するために特別に設置されたものでなくても、エアコンの制御等で使用される外気温センサや吸入空気量の制御に使用される吸気温センサなど、その他の制御のために予め設置されたものでよい。そして、この外気温度センサ92で検出された外気温はコントローラ12に出力される。
【0073】
次に、本実施例に係る車両冷却システム91による熱衝撃の発生防止処理を図10に基づいて説明する。図10は本実施例に係る車両冷却システム91による熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。
【0074】
図10に示すように、まずコントローラ12は外気温度センサ92で検出された外気温Tを読み込む(S1001)。そして、ステップS1002以下の処理では、外気温T≒熱交換器4の冷却水温度TRWと設定することにより、実施例4における図7のステップS702以下の処理と同様に処理する。ここでは、図7のステップS703〜S712が図10のステップS1003〜S1012に対応するため、詳しい説明は省略する。
【0075】
また、外気温T≒熱交換器4の冷却水温度TRWと設定する以外にも、例えば、外気温Tから変換式や変換テーブルを使って熱交換器4の冷却水温度TRWを算出するようにしてもよい。
【0076】
このように、本実施例に係る車両冷却システム91では、熱交換器4の冷却水温度の代わりに外気温を利用して制御するようにしたので、予め車両に設置されているセンサを代用して利用することができ、これによって部品点数を削減することができる。
【実施例6】
【0077】
図11は、実施例6に係る車両冷却システムの構成を示すブロック図である。図11に示す本実施例の車両冷却システム111では、ハイブリット車や燃料電池車のように2種類以上の異なった冷却系がある場合の車両冷却システムの構成を示している。
【0078】
そして、本実施例の車両冷却システム111は、実施例1で示した車両冷却システムに車両ユニット112を冷却するためのシステムがさらに設置されており、発熱源である車両ユニット112と、車両ユニット112へ冷却水を循環させる冷却水ポンプ113と、車両ユニット112を循環する冷却水を冷却する熱交換器114と、熱交換器114の冷却水温度を検出する熱交換器温度センサ115をさらに備えている。その他の構成については実施例1と同様なので詳しい説明は省略する。
【0079】
ここで、車両ユニット2と車両ユニット112は、例えば燃料電池車の場合には燃料電池とモータなどにそれぞれ相当し、ハイブリット車の場合にはエンジンとモータなどにそれぞれ相当する。
【0080】
冷却水ポンプ113は、車両ユニット112に冷却水を循環させるウォーターポンプであり、コントローラ12によって回転数が制御されている。
【0081】
熱交換器114は、熱交換器4と一体化された熱交換器であり、熱交換器4と熱交換器114にそれぞれ流れる冷却水の温度はほぼ近い温度となる。
【0082】
熱交換器温度センサ115は、熱交換器114の冷却水温度Trwを検出し、検出信号をコントローラ12に出力している。本実施例において、一体化された他方の熱交換器4には温度センサは設置されていない。
【0083】
次に、本実施例に係る車両冷却システム111による熱衝撃の発生防止処理を図12に基づいて説明する。図12は実施例6に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。
【0084】
図12に示すように、まずコントローラ12は熱交換器温度センサ115で検出された熱交換器114の冷却水温度Trwを読み込む(S1201)。そして、ステップS1202以下の処理では、熱交換器114の冷却水温度Trw≒熱交換器4の冷却水温度TRWとすることにより、実施例4における図7のステップS702以下の処理と同様に処理する。ここでは、図7のステップS703〜S712が図12のステップS1203〜S1212に対応するため、詳しい説明は省略する。
【0085】
また、熱交換器114の冷却水温度Trw≒熱交換器4の冷却水温度TRWとする以外にも、熱交換器114の冷却水温度Trwから変換式や変換テーブルを使って熱交換器4の冷却水温度TRWを算出するようにしてもよい。
【0086】
このように、本実施例に係る車両冷却システム111では、複数の熱交換器4、114を一体にした熱交換器の場合であっても、複数の熱交換器のうちのいずれか1つの熱交換器の冷却水温度と車両ユニット2の冷却水出口温度に基づいて、冷却ファン5、冷却水ポンプ3、113、三方弁8のうちの少なくとも1つを制御するようにしているため、いずれか1つの熱交換器の冷却水温度を利用して復数の熱交換器における熱衝撃の発生を防止でき、これによって部品点数を削減しつつ熱衝撃による熱交換器の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施例1に係る車両冷却システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。
【図3】実施例1に係る車両冷却システムによる三方弁の開速度の制限方法を説明するための図である。
【図4】実施例2に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。
【図5】実施例2に係る車両冷却システムによる冷却ファンの回転方法を説明するための図である。
【図6】実施例3に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。
【図7】実施例4に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。
【図8】実施例4に係る車両冷却システムによる冷却ファンの回転方法を説明するための図である。
【図9】実施例5に係る車両冷却システムの構成を示すブロック図である。
【図10】実施例5に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。
【図11】実施例6に係る車両冷却システムの構成を示すブロック図である。
【図12】実施例6に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0088】
1、111…車両冷却システム
2、112…車両ユニット
3、113…冷却水ポンプ
4、114…熱交換器
5…冷却ファン
6…冷却配管
7…バイパス経路
8…三方弁
9…出口温度センサ
10…入口温度センサ
11、115…熱交換器温度センサ
12…コントローラ(制御手段)
92…外気温度センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ユニットで発生した熱を冷却する車両冷却システムに係り、特に熱交換器における熱衝撃を防止する車両冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、開発が行われている燃料電池車では高効率の運転が行われ、ガソリン車に比べて水放熱量が多いため大型の熱交換器が用いられている。
【0003】
このような燃料電池車の冷却システムでは、燃料電池などの車両ユニットに冷却水を循環させて冷却しており、この冷却水は冷却水ポンプによって冷却水経路を循環し、車両ユニットで温度上昇した冷却水が熱交換器に送られて放熱されるように構成されている。このとき、車両ユニットにおける冷却水出口温度を検出して、この出口温度が規定値以上のときには冷却水経路に設けられた三方弁を熱交換器側に切り替えて冷却水を冷却するようにしている。また、冷却水の出口温度が規定値未満のときには三方弁をバイパス側に切り替えて冷却水が熱交換器をバイパスするようにしている。
【0004】
上記のような車両の冷却システムの従来例として、例えば特開2003−239745号公報(特許文献1)が開示されている。
【0005】
この従来例では、エンジン冷却水の温度変化によって自動的に開閉するサーモスタットを備え、このサーモスタットの開閉によってラジエータに流れる冷却水の流量を調節し、エンジン温度を制御している。
【0006】
また、上述したような車両の冷却システムで利用される熱交換器の従来例として、例えば特開2004−293982号公報(特許文献2)が開示されている。
【特許文献1】特開2003−239745号公報
【特許文献2】特開2004−293982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような車両の冷却システムでは、電子制御可能な三方弁や冷却水ポンプ、冷却ファンなどを用いており、水温を一定に保つためにそれぞれの回転数や開閉度を精度よく制御している。
【0008】
ところが、車両ユニットの冷却水出口温度が高くなった場合には三方弁は瞬時に熱交換器側に開くので、熱交換器内の冷却水温度と車両ユニットの冷却水出口温度の温度差が大きい場合には熱交換器に熱衝撃が発生してしまうという問題点があった。
【0009】
とくに、燃料電池車のように高効率の運転が行われると熱交換器が大型になるので、熱交換器内に温度差が発生しやすくなり、熱衝撃性が悪くなる。また、横流れ型の熱交換器では一般に熱交換器チューブ部分の長さが長くなるので、チューブの伸び量が大きくなり熱衝撃性が悪くなる。さらに、燃料電池車やハイブリット車では複数の冷却経路を持っているので、複数の熱交換器を一体にした熱交換器を用いる場合があり、この場合にはそれぞれの熱交換器を溶接した部分の熱衝撃性が悪くなってしまう。
【0010】
これに対して、上述した特許文献1に開示された従来例のシステムは、冷却効率を向上させることを目的としており、熱衝撃の影響を考慮していないので、熱衝撃性に対する熱交換器単体の耐熱温度差を超えるような温度差(例えば40°以上)の冷却水がラジエータに流れ込んでしまうおそれがあった。
【0011】
また、特許文献2に開示された従来例では、熱衝撃に耐えられるようにするために熱交換器の構造を強固にする必要があり、コスト高や重量増加などの別の問題が発生することになる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明の車両冷却システムは、車両ユニットで暖められた冷却水を冷却する熱交換器と、前記熱交換器に冷却風を送風する冷却ファンと、循環する冷却水を前記熱交換器へ流す冷却経路と前記熱交換器へ流さずにバイパスする冷却経路とを切り替える三方弁と、前記冷却経路に冷却水を循環させる冷却水ポンプと、前記熱交換器における冷却水温度および前記車両ユニットにおける冷却水出口温度に基づいて、前記冷却ファン、前記冷却水ポンプ、前記三方弁のうちの少なくとも1つを制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車両冷却システムでは、熱交換器における冷却水温度と車両ユニットの冷却水出口温度に基づいて、冷却ファン、冷却水ポンプ、三方弁のうちの少なくとも1つを制御するようにしたので、熱交換器の冷却水温度と車両ユニットの出口温度との温度差が大きく、熱交換器に熱衝撃が発生する可能性が高いときには冷却水の流量と冷却風の風量を制御することができ、これによって熱交換器内に急激な温度差を発生させずに熱衝撃による熱交換器の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係わる車両冷却システムの実施例を図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、実施例1に係る車両冷却システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施例の車両冷却システム1は、発熱源となる燃料電池やモータなどの車両ユニット2と、冷却水を循環させる冷却水ポンプ3と、冷却水の熱を放熱する熱交換器4と、熱交換器4に冷却風を送風する冷却ファン5と、冷却配管6を循環してきた冷却水の冷却経路を熱交換器4側とバイパス経路7側に切り替える三方弁8と、車両ユニット2の冷却水出口温度を検出する出口温度センサ9と、車両ユニット2の冷却水入口温度を検出する入口温度センサ10と、熱交換器4の冷却水温度を検出する熱交換器温度センサ11と、各温度センサによって検出された冷却水温度に基づいて冷却水ポンプ3や冷却ファン5、三方弁8を制御するコントローラ12とから構成されている。
【0016】
冷却水ポンプ3は、冷却水を循環させるウォーターポンプであり、コントローラ12によって回転数が電子制御されている。
【0017】
熱交換器4は、ラジエータなどの通常の放熱装置であって、冷却ファン5から送風される冷却風によって冷却水の熱を放熱させて温度を下げている。
【0018】
冷却ファン5は、コントローラ12によって回転数が電子制御され、熱交換器4に冷却風を送風している。
【0019】
三方弁8は、冷却配管6を循環してきた冷却水の冷却経路を熱交換器4側とバイパス経路7側とに切り替えており、コントローラ12によって弁の切り替え方向、及び弁の開速度が電子制御されている。この三方弁8は、内部の弁をいずれか一方の冷却経路側に開く(これと連動して他方の冷却経路側を閉じる)ことで経路の切り替えを行っており、とくに弁を熱交換器4側の冷却経路へ切り替える際の開速度は無段階に制御されている。
【0020】
出口温度センサ9は、車両ユニット2の冷却水出口温度TWOを検出し、検出信号をコントローラ12に出力している。
【0021】
入口温度センサ10は、車両ユニット2の冷却水入口温度TWIを検出し、検出信号をコントローラ12に出力している。
【0022】
熱交換器温度センサ11は、熱交換器4の冷却水温度TRWを検出し、検出信号をコントローラ12に出力している。
【0023】
コントローラ12は、CPU、ROM、RAMなどを含むマイクロコンピュータにより構成され、出口温度センサ9、入口温度センサ10、熱交換器温度センサ11、外気温度センサ92(図9)、および図示しない車速計などで検出された値に基づいて、冷却水ポンプ3の回転数、冷却ファン5の回転数、三方弁8の開閉/開速度のうちの少なくとも1つを制御している。
【0024】
なお、コントローラ12は通常の制御として、車両ユニット2における冷却水出口温度を検出して、この出口温度が規定値以上のときには冷却水経路に設けられた三方弁8を熱交換器4側に切り替えて冷却水を冷却するようにし、また、冷却水出口温度が規定値未満のときには三方弁8をバイパス側に切り替えて冷却水が熱交換器4へ流れないようにしている。
【0025】
次に、本実施例に係る車両冷却システム1による熱衝撃の発生防止処理を図2のフローチャート及び図3に基づいて説明する。
【0026】
図2に示すように、まずコントローラ12は熱交換器温度センサ11で検出された熱交換器4の冷却水温度TRWを読み込む(S201)。次に、出口温度センサ9で検出された車両ユニット2の冷却水出口温度TWOを読み込む(S202)。
【0027】
そして、コントローラ12は、車両ユニット2の冷却水出口温度TWOが所定値以上で、なお且つ冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が40℃より大きいか否かを判定する(S203)。
【0028】
ここで、ステップS203の条件を満たさないときには、冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が20℃未満の場合には熱衝撃への対策は不要と判断し、また冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が20℃よりも大きく40℃未満の場合には熱交換器4での対策で対応可能と判断して(S204)、本実施例の車両冷却システム1による熱衝撃の発生防止処理を終了する。
【0029】
一方、ステップS203において、車両ユニット2の冷却水出口温度TWOが所定値以上で、なお且つ冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が40℃より大きいときには、コントローラ12は三方弁8を熱交換器4側の冷却経路に切り替える際の開速度(%/s)を制限する(S205)。
【0030】
この三方弁8の開速度の制限方法としては、図3に示すように冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が40℃より大きい場合は、その値が大きくなるにしたがって、三方弁8を熱交換器4側の冷却経路へ切り替える際の開速度を遅くするように制御する。なお、三方弁8の開速度とは単位時間(s)当たりに開く弁の割合(%)であり、温度差が40℃に満たない場合は三方弁8を熱交換器4側の冷却経路へ切り替える際の開速度を制限せず、通常の開速度とする。
【0031】
こうして三方弁8の開速度を温度差に応じて制御することにより、本実施例の車両冷却システム1による熱衝撃の発生防止処理は終了する。
【0032】
このように、本実施例に係る車両冷却システム1では、熱交換器4の冷却水温度TRWと車両ユニット2の冷却水出口温度TWOとに基づいて熱交換器4に流入する冷却水の流量を制御するようにしたので、熱交換器4内に急激な温度差を発生させずに熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【0033】
また、本実施例に係る車両冷却システム1では、電子制御可能な三方弁8を用いているため、この三方弁8を熱交換器4側の冷却経路に切り替える際の開速度を制御することで熱交換器4に流入する冷却水の流量を制御することができ、熱交換器4内に急激な温度差を発生させずに熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【0034】
また、本実施例に係る車両冷却システム1では、熱交換器4における冷却水温度と車両ユニット2の冷却水出口温度との温度差が大きくなるにしたがって、三方弁8を熱交換器4側の冷却経路へ切り替える際の開速度を遅くするようにしたので、熱交換器4へ流入する冷却水の流量の低下を最低限に抑えつつ熱交換器4の熱衝撃による破損を防止することができる。
【実施例2】
【0035】
図4は、実施例2に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。ただし、図4は図2のフローチャートにおけるステップS205以降の処理を示すフローチャートであり、ステップS205以前の処理については説明を省略する。また、本実施例に係る車両冷却システムの構成は、実施例1と同様なので詳しい説明は省略する。
【0036】
本実施例による熱衝撃の発生防止処理では、まず図2のフローチャートで説明した処理が行われ、ステップS205において熱交換器4へ流れ込む冷却水の流量の制御が開始されると、続いて冷却水ポンプ3の回転数が制御される(S401)。
【0037】
このステップS401における冷却水ポンプ3の制御において、コントローラ12は、温度差のある冷却水が熱交換器4に流れ込んで熱衝撃が発生することがないように、冷却水ポンプ3の回転数を下げるように制御する。
【0038】
ここで、冷却水ポンプ3の回転数を下げると冷却水の流量が減るので、熱交換器4の放熱量が減少して車両ユニット2の冷却水出口温度TWOが上昇してしまう場合がある。そこで、冷却水出口温度TWOが上昇し続けるか否かを判定する(S402)。この判定方法としては、冷却水出口温度TWOに所定の閾値を設定しておき、この閾値を越えたか否かで判断する。また、冷却水出口温度TWOの変化率(℃/s)を監視して、この値が所定の変化率を上回るか否かによって判定してもよい。
【0039】
そしてコントローラ12は、ステップS402において、冷却水出口温度TWOが上昇していないと判定した場合には特別な対策は不要と判断して(S403)、本実施例の車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を終了する。
【0040】
また、冷却水出口温度TWOが上昇し続けていると判定した場合には、冷却ファン5を回転させ、入口温度センサ10で検出される車両ユニット2の冷却水入口温度TWIを低くする(S404)。
【0041】
ここで、ステップS404における冷却ファン5の駆動方法としては、図5に示すように、冷却水出口温度TWOが規定温度以上になったときに、冷却ファン5の駆動を開始し、この後は冷却水出口温度TWOが上昇するにしたがって冷却ファン5の回転数も上昇させる。
【0042】
これにより、冷却水入口温度TWIが、設定値に下がるまで冷却ファン5が駆動され、熱交換器4が過冷却となるので冷却液の温度上昇を抑制することができる。
【0043】
こうして冷却水入口温度TWIが設定値まで下がると、本実施例の車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理は終了する。また、本実施例では上述したように冷却ファン5によって冷却液の温度を調整できるので、三方弁8は電子制御式でなくワックス式であってもよい。
【0044】
このように、本実施例に係る車両冷却システムでは、冷却水ポンプ3が電子制御可能に構成され、熱交換器4の冷却水温度と車両ユニット2の冷却水出口温度に基づいて冷却水ポンプ3の回転数を制御するようにしたので、熱交換器4に流入する冷却水の流量を制御することができ、熱交換器4における急激な温度差の発生を防止し、熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【0045】
また、本実施例に係る車両冷却システム1では、冷却水ポンプ3の回転数と冷却ファン5の回転数を同時に制御するようにしたので、熱交換器4における放熱不足が発生する可能性が高い場合に冷却ファン5の回転数を制御して熱交換器4を過冷却にできるので、熱交換器4における急激な温度差の発生を防止し、熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【実施例3】
【0046】
図6は、実施例3に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。本実施例に係る車両冷却システムの構成は、実施例1と同様なので詳しい説明は省略する。
【0047】
図6に示すように、まずコントローラ12は熱交換器温度センサ11で検出された熱交換器4の冷却水温度TRWを読み込む(S601)。次に、出口温度センサ9で検出された車両ユニット2の冷却水出口温度TWOを読み込む(S602)。
【0048】
そして、コントローラ12は、車両ユニット2の冷却水出口温度TWOが所定値以上で、なお且つ冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が40℃より大きいか否かを判定し(S603)、この条件を満たさないときには次にステップS604へ進む。
【0049】
そして、ステップS604では、冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が20℃未満の場合には熱衝撃への対策は不要と判断し、また冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が20℃よりも大きく40℃未満の場合には熱交換器4での対策で対応可能と判断して(S604)、本実施例の車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を終了する。
【0050】
一方、ステップS603において、車両ユニット2の冷却水出口温度TWOが所定値以上で、なお且つ冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が40℃より大きいときには、コントローラ12は本システムが搭載された車両の車速を車速計で検出し、この車速が規定値より低いか否かを判定する(S605)。ここで、車速が規定値以上の場合には熱交換器4に必要な風量が供給されているので特別な制御は必要ないので、本実施例の車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を終了する。
【0051】
また、ステップS605において、車速が規定値より低い場合には、通常の制御が実施されている三方弁8が熱交換器4側に開き始めるより先に、冷却ファン5の回転数を上昇させる(S606)。これにより、冷却経路が熱交換器4側に切り替えられて熱交換器4に温度差のある熱い冷却水が流れ込む前に冷却ファン5の回転数を上昇させておくことができる。
【0052】
こうして、ステップS608において冷却ファン5の回転数が上昇されると、本実施例の車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理は終了する。また、本実施例では上述したように冷却ファン5によって冷却水の温度を調整できるので、三方弁8は電子制御式ではなくワックス式であってもよい。
【0053】
このように、本実施例に係る車両冷却システムでは、熱交換器4の冷却水温度と車両ユニット2の冷却水出口温度に基づいて熱交換器4を通過する冷却風の風量を制御するようにしているため、熱交換器4に供給される冷却風量が多くなればなるほど熱交換器4の効率が上がり、熱交換器4内における急激な温度差の発生を防止し、熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【0054】
また、本実施例に係る車両冷却システムでは、三方弁8が熱交換器4側に開くよりも先に冷却ファン5の回転数を上昇させるので、冷却水の流量が増加する前に予め熱交換器4の放熱効率を高めることができ、これによって熱交換器4内における急激な温度差の発生を防止し、熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【0055】
さらに、本実施例に係る車両冷却システムでは、当該車両冷却システムが搭載された車両の車速に基づいて冷却ファン5の回転数を制御するようにしているため、車速に応じて熱交換器4に必要な冷却風量が与えられているかどうかを判断することができ、これによって熱交換器4内に急激な温度差が発生する可能性がある場合にのみ冷却ファン5を駆動すればよいので、電力の消費を低下させつつ熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【実施例4】
【0056】
図7は、実施例4に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。本実施例に係る車両冷却システムの構成は、実施例1と同様なので詳しい説明は省略する。
【0057】
図7に示すように、まずコントローラ12は熱交換器温度センサ11で検出された熱交換器4の冷却水温度TRWを読み込む(S701)。次に、出口温度センサ9で検出された車両ユニット2の冷却水出口温度TWOを読み込む(S702)。
【0058】
そして、コントローラ12は、車両ユニット2の冷却水出口温度TWOが所定値以上で、なお且つ冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が40℃より大きいか否かを判定し(S703)、この条件を満たさないときには次にステップS704へ進む。
【0059】
そして、ステップS704では、冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が20℃未満の場合には熱衝撃への対策は不要と判断し、また冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が20℃よりも大きく40℃未満の場合には熱交換器4での対策で対応可能と判断して(S704)、本実施例の車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を終了する。
【0060】
一方、ステップS703において、車両ユニット2の冷却水出口温度TWOが所定値以上で、なお且つ冷却水出口温度TWOと熱交換器4の冷却水温度TRWとの温度差が40℃より大きいときには、本システムが搭載されている車両の車速が規定値より低いか否かを判定する(S705)。そして、車速が規定値以上の場合には熱交換器4に流入する冷却水の流量を制御する(S706)。この冷却水の流量の制御としては、三方弁8を熱交換器4側の冷却経路へ切り替える際の開速度が遅くなるように制御するか、あるいは冷却水ポンプ3の回転数が低くなるように制御する。
【0061】
そして、コントローラ12は、この制御によって冷却水出口温度TWOが所定値以上に上昇したか否かを判定し(S707)、冷却水出口温度TWOが所定値以上に上昇していないときには特別な対策は必要ないので、本実施例の車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を終了する。
【0062】
また、ステップS707において、冷却水出口温度TWOが所定値以上に上昇しているときには、冷却ファン5を回転させる(S708)。このとき、冷却ファン5がまだ回転していない場合には冷却ファン5の駆動を開始し、後述するステップS711で冷却ファン5がすでに回転している場合には、回転数を上昇させて本実施例の車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を終了する。
【0063】
一方、ステップS705において、車速が規定値より低い場合には、コントローラ12は冷却水出口温度TWOの上昇率(℃/s)が所定値よりも大きいか否かを判定し(S709)、所定値よりも大きい場合には三方弁8が熱交換器4側に開き始めるよりも先に冷却ファン5の回転数を多く回転させ(S710)、冷却水出口温度TWOの上昇率(℃/s)が所定値以下の場合には三方弁8が熱交換器4側に開き始めるよりも先に冷却ファン5を少し回転させる(S711)。これにより、冷却経路が熱交換器4側に切り替えられて熱交換器4に温度差のある熱い冷却水が流れ込む前に冷却ファン5の回転数を上昇させておくことができる。
【0064】
ここで、ステップS711及びS712における冷却ファン5の回転方法としては、図8に示すように、車両ユニット2の冷却水出口温度TWOの上昇率が所定値Aより大きい場合には冷却ファン5を最高回転数で回転させ、所定値A以下で且つ規定値以上の場合には冷却ファン5を最高回転数の60%程度の回転数で回転させる。ただし、この回転数は条件に応じて変更されるものである。
【0065】
こうしてステップS711において冷却ファン5が少し回転した場合には、ステップS706へ進んで上述したステップS706〜S708の処理を行う。また、ステップS710において冷却ファン5が多く回転した場合には熱交換器4の効率を最大限高めて熱交換器4内の冷却水温度の変化を少なくして(S712)本実施例の車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理は終了する。
【0066】
このように、本実施例に係る車両冷却システムでは、熱交換器4における冷却水温度と車両ユニット2の冷却水出口温度に基づいて、冷却ファン5、冷却水ポンプ3、三方弁8のうちの少なくとも1つを制御するようにしたので、熱交換器4の冷却水温度と車両ユニット2の冷却水出口温度との温度差が大きく、熱交換器4に熱衝撃が発生する可能性が高いときには冷却水の流量、冷却風の風量を制御することができ、これによって熱交換器4内に急激な温度差を発生させずに熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【0067】
また、本実施例に係る車両冷却システムでは、熱交換器4の冷却水温度と車両ユニット2の冷却水出口温度に基づいて熱交換器4を通過する冷却風の風量を制御するようにしているため、熱交換器4に供給される冷却風量が多くなればなるほど熱交換器4の効率が上がり、熱交換器4内における急激な温度差の発生を防止し、熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【0068】
また、本実施例に係る車両冷却システムでは、三方弁8が熱交換器4側に開くよりも先に冷却ファン5の回転数を上昇させるので、冷却水の流量が増加する前に予め熱交換器4の放熱効率を高めることができ、これによって熱交換器4内における急激な温度差の発生を防止し、熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【0069】
さらに、本実施例に係る車両冷却システムでは、当該車両冷却システムが搭載された車両の車速に基づいて冷却ファン5の回転数を制御するようにしているため、車速に応じて熱交換器4に必要な冷却風量が与えられているかどうかを判断することができ、これによって熱交換器4内に急激な温度差が発生する可能性がある場合にのみ冷却ファン5を駆動すればよいので、電力の消費を低下させつつ熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【0070】
また、本実施例に係る車両冷却システムでは、熱交換器4に流入する冷却水流量と熱交換器4を通過する冷却風の風量とを同時に制御するようにしているため、より効果的に熱交換器4内に急激な温度差が発生することを防止し、熱衝撃による熱交換器4の破損を防止することができる。
【実施例5】
【0071】
図9は、実施例5に係る車両冷却システムの構成を示すブロック図である。図9に示すように、本実施例の車両冷却システム91は、外気温を検出する外気温度センサ92を備え、熱交換器4の冷却水温度を検出する熱交換器温度センサ11が設置されていないことが実施例1と異なっており、その他の構成については実施例1と同様なので詳しい説明は省略する。
【0072】
ここで、外気温度センサ92は、本車両冷却システムを制御するために特別に設置されたものでなくても、エアコンの制御等で使用される外気温センサや吸入空気量の制御に使用される吸気温センサなど、その他の制御のために予め設置されたものでよい。そして、この外気温度センサ92で検出された外気温はコントローラ12に出力される。
【0073】
次に、本実施例に係る車両冷却システム91による熱衝撃の発生防止処理を図10に基づいて説明する。図10は本実施例に係る車両冷却システム91による熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。
【0074】
図10に示すように、まずコントローラ12は外気温度センサ92で検出された外気温Tを読み込む(S1001)。そして、ステップS1002以下の処理では、外気温T≒熱交換器4の冷却水温度TRWと設定することにより、実施例4における図7のステップS702以下の処理と同様に処理する。ここでは、図7のステップS703〜S712が図10のステップS1003〜S1012に対応するため、詳しい説明は省略する。
【0075】
また、外気温T≒熱交換器4の冷却水温度TRWと設定する以外にも、例えば、外気温Tから変換式や変換テーブルを使って熱交換器4の冷却水温度TRWを算出するようにしてもよい。
【0076】
このように、本実施例に係る車両冷却システム91では、熱交換器4の冷却水温度の代わりに外気温を利用して制御するようにしたので、予め車両に設置されているセンサを代用して利用することができ、これによって部品点数を削減することができる。
【実施例6】
【0077】
図11は、実施例6に係る車両冷却システムの構成を示すブロック図である。図11に示す本実施例の車両冷却システム111では、ハイブリット車や燃料電池車のように2種類以上の異なった冷却系がある場合の車両冷却システムの構成を示している。
【0078】
そして、本実施例の車両冷却システム111は、実施例1で示した車両冷却システムに車両ユニット112を冷却するためのシステムがさらに設置されており、発熱源である車両ユニット112と、車両ユニット112へ冷却水を循環させる冷却水ポンプ113と、車両ユニット112を循環する冷却水を冷却する熱交換器114と、熱交換器114の冷却水温度を検出する熱交換器温度センサ115をさらに備えている。その他の構成については実施例1と同様なので詳しい説明は省略する。
【0079】
ここで、車両ユニット2と車両ユニット112は、例えば燃料電池車の場合には燃料電池とモータなどにそれぞれ相当し、ハイブリット車の場合にはエンジンとモータなどにそれぞれ相当する。
【0080】
冷却水ポンプ113は、車両ユニット112に冷却水を循環させるウォーターポンプであり、コントローラ12によって回転数が制御されている。
【0081】
熱交換器114は、熱交換器4と一体化された熱交換器であり、熱交換器4と熱交換器114にそれぞれ流れる冷却水の温度はほぼ近い温度となる。
【0082】
熱交換器温度センサ115は、熱交換器114の冷却水温度Trwを検出し、検出信号をコントローラ12に出力している。本実施例において、一体化された他方の熱交換器4には温度センサは設置されていない。
【0083】
次に、本実施例に係る車両冷却システム111による熱衝撃の発生防止処理を図12に基づいて説明する。図12は実施例6に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。
【0084】
図12に示すように、まずコントローラ12は熱交換器温度センサ115で検出された熱交換器114の冷却水温度Trwを読み込む(S1201)。そして、ステップS1202以下の処理では、熱交換器114の冷却水温度Trw≒熱交換器4の冷却水温度TRWとすることにより、実施例4における図7のステップS702以下の処理と同様に処理する。ここでは、図7のステップS703〜S712が図12のステップS1203〜S1212に対応するため、詳しい説明は省略する。
【0085】
また、熱交換器114の冷却水温度Trw≒熱交換器4の冷却水温度TRWとする以外にも、熱交換器114の冷却水温度Trwから変換式や変換テーブルを使って熱交換器4の冷却水温度TRWを算出するようにしてもよい。
【0086】
このように、本実施例に係る車両冷却システム111では、複数の熱交換器4、114を一体にした熱交換器の場合であっても、複数の熱交換器のうちのいずれか1つの熱交換器の冷却水温度と車両ユニット2の冷却水出口温度に基づいて、冷却ファン5、冷却水ポンプ3、113、三方弁8のうちの少なくとも1つを制御するようにしているため、いずれか1つの熱交換器の冷却水温度を利用して復数の熱交換器における熱衝撃の発生を防止でき、これによって部品点数を削減しつつ熱衝撃による熱交換器の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施例1に係る車両冷却システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。
【図3】実施例1に係る車両冷却システムによる三方弁の開速度の制限方法を説明するための図である。
【図4】実施例2に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。
【図5】実施例2に係る車両冷却システムによる冷却ファンの回転方法を説明するための図である。
【図6】実施例3に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。
【図7】実施例4に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。
【図8】実施例4に係る車両冷却システムによる冷却ファンの回転方法を説明するための図である。
【図9】実施例5に係る車両冷却システムの構成を示すブロック図である。
【図10】実施例5に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。
【図11】実施例6に係る車両冷却システムの構成を示すブロック図である。
【図12】実施例6に係る車両冷却システムによる熱衝撃の発生防止処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0088】
1、111…車両冷却システム
2、112…車両ユニット
3、113…冷却水ポンプ
4、114…熱交換器
5…冷却ファン
6…冷却配管
7…バイパス経路
8…三方弁
9…出口温度センサ
10…入口温度センサ
11、115…熱交換器温度センサ
12…コントローラ(制御手段)
92…外気温度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ユニットで暖められた冷却水を冷却する熱交換器と、
前記熱交換器に冷却風を送風する冷却ファンと、
循環する冷却水を前記熱交換器へ流す冷却経路と前記熱交換器へ流さずにバイパスする冷却経路とを切り替える三方弁と、
前記冷却経路に冷却水を循環させる冷却水ポンプと、
前記熱交換器における冷却水温度および前記車両ユニットにおける冷却水出口温度に基づいて、前記冷却ファン、前記冷却水ポンプ、前記三方弁のうちの少なくとも1つを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする車両冷却システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記熱交換器における冷却水温度および前記車両ユニットにおける冷却水出口温度に基づいて、前記熱交換器に流入する冷却水の流量を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両冷却システム。
【請求項3】
前記三方弁は冷却経路の切り替えと開速度とが電子制御可能に構成され、
前記制御手段は、前記熱交換器における冷却水温度および前記車両ユニットにおける冷却水出口温度に基づいて、前記三方弁を前記熱交換器側の冷却経路へ切り替える際の開速度を制御することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の車両冷却システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記熱交換器における冷却水温度と前記車両ユニットにおける冷却水出口温度との温度差が大きくなるにしたがって、前記三方弁を前記熱交換器側の冷却経路へ切り替える際の開速度を遅くすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両冷却システム。
【請求項5】
前記冷却水ポンプは回転数が電子制御可能に構成され、
前記制御手段は、前記冷却水ポンプの回転数を制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両冷却システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記冷却水ポンプの回転数と前記冷却ファンの回転数を同時に制御することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両冷却システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記熱交換器を通過する冷却風の風量を制御することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両冷却システム。
【請求項8】
前記制御手段は、前記三方弁が前記熱交換器側に開くよりも先に前記冷却ファンの回転数を上昇させることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の車両冷却システム。
【請求項9】
前記制御手段は、当該車両冷却システムが搭載された車両の車速に基づいて前記冷却ファンの回転数を制御することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車両冷却システム。
【請求項10】
前記制御手段は、前記熱交換器に流入する冷却水の流量と前記熱交換器を通過する冷却風の風量とを同時に制御することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の車両冷却システム。
【請求項11】
前記制御手段は、前記熱交換器の冷却水温度の代わりに外気温に基づいて制御することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の車両冷却システム。
【請求項12】
前記熱交換器は複数の熱交換器を一体にした熱交換器であり、
前記制御手段は、前記複数の熱交換器のうちのいずれか1つの熱交換器の冷却水温度と前記車両ユニットにおける冷却水出口温度に基づいて、前記冷却ファン、前記冷却水ポンプ、前記三方弁のうちの少なくとも1つを制御することを特徴とする車両冷却システム。
【請求項1】
車両ユニットで暖められた冷却水を冷却する熱交換器と、
前記熱交換器に冷却風を送風する冷却ファンと、
循環する冷却水を前記熱交換器へ流す冷却経路と前記熱交換器へ流さずにバイパスする冷却経路とを切り替える三方弁と、
前記冷却経路に冷却水を循環させる冷却水ポンプと、
前記熱交換器における冷却水温度および前記車両ユニットにおける冷却水出口温度に基づいて、前記冷却ファン、前記冷却水ポンプ、前記三方弁のうちの少なくとも1つを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする車両冷却システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記熱交換器における冷却水温度および前記車両ユニットにおける冷却水出口温度に基づいて、前記熱交換器に流入する冷却水の流量を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両冷却システム。
【請求項3】
前記三方弁は冷却経路の切り替えと開速度とが電子制御可能に構成され、
前記制御手段は、前記熱交換器における冷却水温度および前記車両ユニットにおける冷却水出口温度に基づいて、前記三方弁を前記熱交換器側の冷却経路へ切り替える際の開速度を制御することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の車両冷却システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記熱交換器における冷却水温度と前記車両ユニットにおける冷却水出口温度との温度差が大きくなるにしたがって、前記三方弁を前記熱交換器側の冷却経路へ切り替える際の開速度を遅くすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両冷却システム。
【請求項5】
前記冷却水ポンプは回転数が電子制御可能に構成され、
前記制御手段は、前記冷却水ポンプの回転数を制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両冷却システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記冷却水ポンプの回転数と前記冷却ファンの回転数を同時に制御することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両冷却システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記熱交換器を通過する冷却風の風量を制御することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両冷却システム。
【請求項8】
前記制御手段は、前記三方弁が前記熱交換器側に開くよりも先に前記冷却ファンの回転数を上昇させることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の車両冷却システム。
【請求項9】
前記制御手段は、当該車両冷却システムが搭載された車両の車速に基づいて前記冷却ファンの回転数を制御することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車両冷却システム。
【請求項10】
前記制御手段は、前記熱交換器に流入する冷却水の流量と前記熱交換器を通過する冷却風の風量とを同時に制御することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の車両冷却システム。
【請求項11】
前記制御手段は、前記熱交換器の冷却水温度の代わりに外気温に基づいて制御することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の車両冷却システム。
【請求項12】
前記熱交換器は複数の熱交換器を一体にした熱交換器であり、
前記制御手段は、前記複数の熱交換器のうちのいずれか1つの熱交換器の冷却水温度と前記車両ユニットにおける冷却水出口温度に基づいて、前記冷却ファン、前記冷却水ポンプ、前記三方弁のうちの少なくとも1つを制御することを特徴とする車両冷却システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−224879(P2006−224879A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42963(P2005−42963)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
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