車両制御システム及び車両制御装置
【課題】クランク角センサの信号を入力する入力回路をエンジン制御に係る処理を実行する電子制御装置の夫々に設けなくても良くする。
【解決手段】エンジン制御を、通信を伴う複数の電子制御装置の協働により実現するシステムにおいて、メインの電子制御装置は、クランク信号の入力回路を備える一方、サブの電子制御装置は、当該入力回路に代替する回路として、通信線を通じてメインの電子制御装置から送信されてくる特殊な差動信号に基づきクランク信号の擬似信号である通信クランク信号を生成する回路を有する。メインの電子制御装置は、クランク信号がアクティブになる度、特殊な差動信号を通信線に入力する。サブの電子制御装置は、この特殊な差動信号の入力パターンに合わせて、信号レベルがハイ/ロウに変化する通信クランク信号を生成し、この信号に基づきクランク角の変化に合わせたエンジン制御に係る処理(NE同期処理)を実行する。
【解決手段】エンジン制御を、通信を伴う複数の電子制御装置の協働により実現するシステムにおいて、メインの電子制御装置は、クランク信号の入力回路を備える一方、サブの電子制御装置は、当該入力回路に代替する回路として、通信線を通じてメインの電子制御装置から送信されてくる特殊な差動信号に基づきクランク信号の擬似信号である通信クランク信号を生成する回路を有する。メインの電子制御装置は、クランク信号がアクティブになる度、特殊な差動信号を通信線に入力する。サブの電子制御装置は、この特殊な差動信号の入力パターンに合わせて、信号レベルがハイ/ロウに変化する通信クランク信号を生成し、この信号に基づきクランク角の変化に合わせたエンジン制御に係る処理(NE同期処理)を実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された内燃機関の制御を行うシステム及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の制御を行うシステムとしては、燃料圧力を測定する圧力センサからの出力に基づき、燃料噴射に関わる圧力変動態様を検出する技術が知られている(特許文献1参照)。また、各気筒に設置されたインジェクタと、燃料噴射制御を行う電子制御装置と、を通信可能に接続したシステムが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−144749号公報
【特許文献2】特開2010−144692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記圧力変動態様を検出するシステム等では、圧力変動態様に基づいた最適な燃料噴射制御を行うために、内燃機関を統括制御する主たる電子制御装置とは別に燃料噴射制御用の電子制御装置を設けたり、インジェクタ毎に当該電子制御装置を設けたりして、これら複数の電子制御装置の協働によって内燃機関の制御を行うことが考えられる。
【0005】
そして、このような複数の電子制御装置によって内燃機関の制御を行う場合には、内燃機関の制御に係る処理をクランク角に変化に応じて適切に行うために、各電子制御装置にクランク角センサを接続して、クランク角センサからクランク角の変化に応じて出力される信号を各電子制御装置に入力することが考えられる。
【0006】
しかしながら、各電子制御装置に対してクランク角センサを接続する場合には、これら電子制御装置の夫々に対して、クランク角センサの出力信号を入力するための入力回路を設ける必要が生じる。クランク角センサの出力信号は、センサの種類に応じて、正弦波や矩形波等の異なる波形を採る。このため、入力回路によって、クランク角センサからの出力信号を、規定の波形信号に整形し、整形後の信号を装置内部に入力する必要が生じる。
【0007】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、制御装置の夫々にクランク角センサの出力信号を入力するための入力回路を設けなくても、内燃機関の制御に係る処理を各制御装置で適切に実行可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた第一の発明(請求項1)は、差動通信用の通信線に接続された複数の車両制御装置を備え、車両に搭載された内燃機関の制御を、通信を伴うこれら複数の車両制御装置の協働によって実現する車両制御システムであって、複数の車両制御装置の一つである第一の車両制御装置と、第一の車両制御装置とは異なる第二の車両制御装置と、が次のように構成されていることを特徴とする。
【0009】
第一の車両制御装置は、クランク信号入力手段及び送信制御手段を備える。クランク信号入力手段は、内燃機関におけるクランク角の変化に応じてアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で信号レベルが変化するクランク信号を、送信制御手段に入力する手段である。例えば、クランク信号入力手段は、クランク角センサからの出力信号を整形等して、これを送信制御手段に入力する構成にすることができる。具体的に言えば、クランク信号入力手段は、例えば、正弦波や矩形波の形態で出力されるクランク角センサからの出力信号を、矩形信号等の規定の波形信号に整形して、これを送信制御手段に入力する構成にすることができる。
【0010】
一方、送信制御手段は、送信対象のデータを、データ伝送用の差動信号に変換して通信線に出力する手段である。但し、この送信制御手段は、クランク信号入力手段から入力されるクランク信号の信号レベルがアクティブレベルに変化した場合には、所定期間、データ伝送用の差動信号に代えて、データ伝送用の差動信号とは異なる差動信号である特殊な差動信号を通信線に出力する。ここで言う「所定期間」としては、例えば、クランク信号の信号レベルがインアクティブレベルに変化するまでの期間を挙げることができる。即ち、送信制御手段は、クランク信号入力手段から入力されるクランク信号の信号レベルがインアクティブレベルであるときには、内燃機関の制御に係る処理等によって生成された上記送信対象のデータを、データ伝送用の差動信号に変換して通信線に出力する一方、クランク信号入力手段から入力されるクランク信号の信号レベルがアクティブレベルであるときには、データ伝送用の差動信号とは異なる上記特殊な差動信号を通信線に出力する構成にすることができる。
【0011】
差動通信では、周知のように、二本の信号線を流れる信号(シングルエンド信号)の組合せによって、通信信号が表現されるが、ここで言う「差動信号」とは、これら二本の信号線を流れる信号によって情報が表現される信号のことを言う。換言すれば、ここで言う「差動信号」は、互いに逆位相の信号の組合せからなる信号に限定されない広義の差動信号を意味する。
【0012】
一方、第二の車両制御装置は、データ受信手段及び擬似信号生成手段を備える。データ受信手段は、上記通信線からの入力信号に基づき、上記データ伝送用の差動信号に変換されて上記通信線に出力された上記送信対象のデータを復元して、受信データを生成する手段である。一方、擬似信号生成手段は、上記通信線からの入力信号に基づき、クランク信号の擬似信号を生成する手段である。具体的に、擬似信号生成手段は、上記特殊な差動信号の入力パターンに応じて信号レベルがアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で変化する信号であって、特殊な差動信号が入力される度に信号レベルがアクティブレベルに変化する信号を、上記クランク信号の擬似信号として生成する構成にすることができる。
【0013】
この第二の車両制御装置は、内燃機関の制御に係る処理を、上記受信データ及び上記疑似信号に基づいて行う。例えば、第二の車両制御装置は、受信データに基づく内燃機関の制御に係る処理を上記疑似信号から特定されるクランク角の変化に合わせて実行する構成にすることができる。更に言えば、第二の車両制御装置は、疑似信号生成手段によって生成された疑似信号がアクティブレベルに切り替わる度に、内燃機関の制御に係る所定の処理を実行したり、上記疑似信号と同期して又は上記擬似信号とは非同期で、上記疑似信号から特定されるクランク角に基づく処理を実行したりする構成にすることができる。
【0014】
このように構成された本発明の車両制御システムによれば、第一の車両制御装置が、車両制御装置間のデータ送受信に用いられる通信線に、上記特殊な差動信号を入力することによって、他の車両制御装置(第二の車両制御装置)に対してクランク信号に相当する信号を伝送する。従って、本発明によれば、第二の車両制御装置にクランク信号の入力回路を設けなくても、第二の車両制御装置に、内燃機関に係る処理として、クランク角の変化に応じた適切な処理を実行させることができる。
【0015】
ところで、第一の車両制御装置は、内燃機関の制御に係る処理を、クランク信号入力手段から入力されるクランク信号に基づいて実行する構成にされてもよいが、好ましくは、第二の車両制御装置と同様に、上記通信線からの入力信号に基づき、クランク信号の擬似信号を生成する擬似信号生成手段を備え、内燃機関の制御に係る処理を、自装置が備える疑似信号生成手段によって生成された疑似信号に基づいて実行する構成にされるとよい(請求項2)。このように、第一及び第二の車両制御装置を構成すれば、複数の車両制御装置の協働による内燃機関の制御を、一層適切に実行することができる。
【0016】
また、上記送信制御手段によれば、クランク信号の信号レベルがアクティブレベルに変化すると、上記特殊な差動信号の通信線への出力動作が開始されることが原因で「送信対象のデータをデータ伝送用の差動信号に変換して通信線に出力する動作」が中断される可能性がある。従って、第一の車両制御装置が備える送信制御手段は、クランク信号の信号レベルがアクティブレベルに変化して特殊な差動信号の通信線への出力動作が開始されたことを原因として「データ伝送用の差動信号に変換して通信線に出力する動作」が中断された送信対象のデータを、上記特殊な差動信号の通信線への出力動作が終了した後、再度、データ伝送用の差動信号に変換して通信線に出力する構成にされるとよい(請求項3)。
【0017】
この他、第一の車両制御装置には、内燃機関におけるカム角の変化に応じて信号レベルがアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で変化するカム信号を入力するカム信号入力手段と、カム信号入力手段から入力されるカム信号の信号レベルがアクティブレベルに切り替わると、カム信号の信号レベルがアクティブレベルであることを示すカム状態データを、送信対象のデータとして生成するカム状態データ生成手段とを設けるとよい。更に、第一の車両制御装置が備える送信制御手段は、カム状態データ生成手段によって生成されたカム状態データを、他の送信対象のデータに優先して、データ伝送用の差動信号に変換し、通信線へ出力する構成にされるとよい(請求項4)。
【0018】
このような構成の第一の車両制御装置を用いて車両制御システムを構成すれば、カム信号についても車両制御装置毎に入力回路を設けなくて済み、差動通信用の通信線を用いて効率的にカム角の情報を各車両制御装置に伝達することができる。
【0019】
また、上述した車両制御システムは、具体的に次のように構成することができる。即ち、第一の車両制御装置は、送信回路と、内燃機関の制御に係る処理を行うと共に、送信対象のデータを送信回路に入力するマイクロコンピュータと、内燃機関におけるクランク角の変化に応じてアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で信号レベルが変化するクランク信号を送信回路に入力するクランク信号入力回路と、を備えた構成にすることができる。
【0020】
そして、送信回路は、マイクロコンピュータから入力される送信対象のデータを、データ伝送用の差動信号に変換して通信線に出力する一方、クランク信号入力回路から入力されるクランク信号の信号レベルがアクティブレベルに変化した場合には、所定期間、データ伝送用の差動信号に代えて、データ伝送用の差動信号とは異なる上記特殊な差動信号を通信線に出力する構成にすることができる。
【0021】
また、第二の車両制御装置は、通信線からの入力信号に基づき、データ伝送用の差動信号に変換されて通信線に出力された送信対象のデータを復元してなる受信データを生成するデータ受信回路と、通信線からの入力信号に基づき、特殊な差動信号の入力パターンに応じて信号レベルがアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で変化する信号であって、特殊な差動信号が入力される度に信号レベルがアクティブレベルに変化するクランク信号の擬似信号を生成する擬似信号生成回路と、を備えた構成にすることができる(請求項5)。更に言えば、第二の車両制御装置は、マイクロコンピュータを備え、マイクロコンピュータにより、内燃機関の制御に係る処理を、受信データ及び自装置が備える疑似信号生成回路によって生成された疑似信号に基づいて実行する構成にすることができる。
【0022】
このように、上記特殊な差動信号の出力及び上記特殊な差動信号に基づく上記擬似信号の生成を、マイクロコンピュータを介さずに行う車両制御システムによれば、クランク信号の信号レベルの変化に伴う上記特殊な差動信号の出力を高速に行うことができて、クランク信号からの遅延の少ない上記擬似信号を生成することができ、各車両制御装置にてクランク角の変化に応じた内燃機関の制御に係る処理を一層適切に行うことができる。
【0023】
但し、第一の車両制御装置が備えるクランク信号入力回路は、送信回路に代えて、第一の車両制御装置が備えるマイクロコンピュータにクランク信号を入力する構成にされてもよい。そして、第一の車両制御装置が備えるマイクロコンピュータは、クランク信号入力回路から入力されるクランク信号を、クランク角が規定量変化する度に信号レベルがアクティブレベルに変化するクランク信号に変換して、送信回路に入力し、送信回路は、マイクロコンピュータから入力されるクランク信号に基づいて、上記特殊な差動信号を通信線に出力する構成にされてもよい(請求項6)。
【0024】
このように車両制御システムを構成すれば、クランク角センサの種類の違い等を原因として、クランク信号1周期に対応するクランク角の変化量が異なるクランク信号がクランク信号入力回路から入力される場合であっても、マイクロコンピュータを用いて、このクランク信号を、各車両制御装置の構成に対応した規定のクランク信号に簡単に変換することができ、車両制御システムとクランク角センサとの組合せの自由度を高めることができる。
【0025】
また、第一の車両制御装置は、第二の車両制御装置と同様に、擬似信号生成回路を備えた構成にすることができ、第一の車両制御装置が備えるマイクロコンピュータは、内燃機関の制御に係る処理を、自装置が備える疑似信号生成回路から入力される疑似信号に基づいて(例えば、擬似信号から特定されるクランク角の変化に合わせて)実行する構成にすることができる(請求項7)。
【0026】
また、第一の車両制御装置が備えるマイクロコンピュータは、擬似信号生成回路から入力される擬似信号がアクティブレベルに変化したことを検知することによって、送信回路による上記特殊な差動信号の通信線への出力動作が開始されたことを検知する構成にすることができる。そして、第一の車両制御装置が備えるマイクロコンピュータは、送信回路による上記特殊な差動信号の通信線への出力動作が開始されたことを検知すると、上記特殊な差動信号の通信線への出力動作が開始されたことを原因として送信回路による上記データ伝送用の差動信号に変換して通信線に出力する動作が中断された上記送信対象のデータを、上記特殊な差動信号の通信線への出力動作が終了した後、再度、送信回路に入力することによって、上記送信対象のデータを再送信する構成にすることができる(請求項8)。
【0027】
また、第一の車両制御装置は、内燃機関におけるカム角の変化に応じて信号レベルがアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で変化するカム信号を入力するカム信号入力回路を備え、第一の車両制御装置が備えるマイクロコンピュータは、カム信号入力回路から入力されるカム信号の信号レベルがアクティブレベルに切り替わると、カム信号の信号レベルがアクティブレベルであることを示すカム状態データを、送信対象のデータとして生成し、当該カム状態データを、他の送信対象のデータに優先して、送信回路に入力する構成にすることができる(請求項9)。
【0028】
この他、上述した車両制御システムの発明は、車両制御装置の発明に適用することができる。第二の発明(請求項10)は、差動通信用の通信線に接続され、通信線を通じて他の車両制御装置と通信することによって、他の車両制御装置と協働して車両に搭載された内燃機関の制御を行う車両制御装置であって、上述のクランク信号入力手段と送信制御手段とを備え、上記特殊な差動信号によって、他の車両制御装置に対してクランク信号の信号レベルの変化を表す信号を伝送することを特徴とするものである。この車両制御装置によれば、上記車両制御システムと同様に、他の車両制御装置にクランク信号についての入力回路を設けなくても済むといった利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】車両制御システム1の構成を表すブロック図である。
【図2】メイン電子制御装置10が備える通信回路13の構成を表すブロック図(A)及びサブ電子制御装置30が備える通信回路33の構成を表すブロック図(B)である。
【図3】差動信号の波形を示した図である。
【図4】メイン電子制御装置10が備える送信回路14の構成を表すブロック図(A)並びにメイン及びサブ電子制御装置10,30が備える受信回路15,35の構成を表すブロック図(B)である。
【図5】メイン及びサブ電子制御装置10,30のマイコン11,31が実行するクランク信号監視処理を表すフローチャートである。
【図6】メイン及びサブ電子制御装置10,30のマイコン11,31が実行する車両制御処理を表すフローチャートである。
【図7】メイン及びサブ電子制御装置10,30のマイコン11,31が実行する送信制御処理を表すフローチャートである。
【図8】メイン及びサブ電子制御装置10,30のマイコン11,31が実行する受信制御処理を表すフローチャートである。
【図9】各信号の変化及び各処理の実行タイミングを示したタイムチャートである。
【図10】第一変形例の車両制御システム1’の構成を表すブロック図である。
【図11】第二変形例における送信回路40の構成を表すブロック図(A)及び受信回路50の構成を表すブロック図(B)である。
【図12】第二変形例における差動信号の波形を示した図である。
【図13】第三変形例における送信回路60の構成を表すブロック図(A)及び受信回路70の構成を表すブロック図(B)である。
【図14】第三変形例における差動信号の波形を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の実施例について、図面と共に説明する。
本実施例の車両制御システム1は、差動通信用の通信線LNに接続された複数の電子制御装置10,30を備え、車両に搭載された内燃機関としてのエンジンの制御を、通信を伴う複数の電子制御装置10,30の協働によって実現するシステムである。この車両制御システム1は、エンジンを統括制御する電子制御装置としてのメイン電子制御装置10と、その他の複数のサブ電子制御装置30とを、備える。サブ電子制御装置30としては、気筒毎に設けられる電子制御装置であって、対応する気筒の燃料噴射制御を行う電子制御装置を挙げることができる。サブ電子制御装置30が、このような燃料噴射制御を行う電子制御装置である場合、サブ電子制御装置30の夫々は、メイン電子制御装置10から通信線LNを通じて送信されてくる燃料噴射量及び噴射時期の情報に基づいて、該当するインジェクタを制御する構成にすることができる。また、サブ電子制御装置30は、燃料噴射制御の学習結果や圧力センサ等の検出結果を、通信線LNを通じてメイン電子制御装置10に送信する構成にすることができる。
【0031】
この車両制御システム1を構成するメイン電子制御装置10は、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」と表現する。)11と、通信線LNに接続された通信回路13と、クランク角センサ21の出力信号を通信回路13に入力する入力回路17と、カム角センサ23の出力信号をマイコン11に入力する入力回路19と、を備える。
【0032】
マイクロコンピュータ11は、各種プログラムやデータを記憶するメモリ11aを備え、メモリ11aに記録されたプログラムに従って、エンジンの制御に係る処理及び通信回路13を介した他の電子制御装置30との通信に係る処理を実行する。具体的に、マイクロコンピュータ11は、入力回路19を介して入力されるカム角センサ23の出力信号(カム信号)、及び、通信回路13から入力されるクランク信号の疑似信号(SYNCO:詳細後述)に基づき、エンジン制御に係る処理を、エンジンの回転(カム角及びクランク角の変化)に合わせて実行する。
【0033】
尚、クランク角センサ21は、クランク軸に取り付けられたロータリエンコーダにより構成されるものであり、クランク角の変化に応じて信号(電圧)レベルが変化するクランク信号を出力する周知のセンサである。また、カム角センサ23は、カム軸に取り付けられ、クランク角センサ21と同様に、カム角の変化に応じて信号レベルが変化するカム信号を出力するセンサである。
【0034】
クランク角センサ21としては、上記クランク信号として、正弦波や矩形波を出力するものが知られている。また、カム角センサ23としては、上記カム信号として、正弦波や矩形波を出力するものが知られている。
【0035】
入力回路17は、このクランク角センサ21から入力されるクランク信号を、増幅・整形等することによって、クランク角の変化に応じて信号(電圧)レベルがハイ(アクティブレベル)とロウ(インアクティブレベル)との間で変化する矩形信号に変換した後に、これを通信回路13に入力する。同様に、入力回路19は、上記カム角センサ23から入力されるカム信号を、増幅・整形等することによって、カム角の変化に応じて信号(電圧)レベルがハイ(アクティブレベル)とロウ(インアクティブレベル)との間で変化する矩形信号に変換した後に、これをマイコン11に入力する。
【0036】
一方、通信回路13は、マイコン11から入力される送信データ(TXD)を、差動信号に変換して、この差動信号を、二本の信号線L1,L2から構成される通信線LNに出力するものである。具体的に、メイン電子制御装置10が備える通信回路13は、図2(A)に示すように、通信線LNに接続された送信回路14及び受信回路15を備える。
【0037】
送信回路14は、マイコン11から入力される送信データ(TXD)と、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)とに基づいて動作し、通信線LNに対して差動信号を出力するものである。図1及び図2(A)に示すように、送信回路14は、差動信号を構成する第一のシングルエンド信号(COMH)を、通信線LNを構成する第一の信号線L1に出力し、差動信号を構成する第二のシングルエンド信号(COML)を、通信線LNを構成する第二の信号線L2に出力する。
【0038】
一方、受信回路15は、通信線LNを流れる差動信号に基づき、通信線LNに差動信号として出力された送信データ(TXD)に対応する受信データ(RXD)を生成するものである。受信回路15により生成された受信データ(RXD)は、マイコン11に入力され、マイコン11が備える図示しない受信バッファに格納される。また、受信回路15は、特徴的なことに、通信線LNを流れる差動信号に基づき、クランク信号の疑似信号(SYNCO)を生成して、これをマイコン11に入力する機能を有する。以下では、クランク信号の疑似信号(SYNCO)のことを、通信クランク信号(SYNCO)とも表現する。
【0039】
また、サブ電子制御装置30の夫々は、メイン電子制御装置10と同様に、マイコン31及び通信回路33を備える。但し、サブ電子制御装置30の夫々は、メイン電子制御装置10とは異なり、クランク角センサ21やカム角センサ23からの出力信号を装置内に入力する入力回路を備えない構成にされている。
【0040】
サブ電子制御装置30が備える通信回路33は、図2(B)に示すように、通信線LNに接続された送信回路34及び受信回路35を備える。送信回路34は、マイコン31から入力された送信データ(TXD)を差動信号に変換して通信線LNに出力するものである。一方、受信回路35は、メイン電子制御装置10の受信回路15と同一構成にされ、通信線LNを流れる差動信号から受信データを生成する一方、通信線LNを流れる差動信号に基づき、通信クランク信号(SYNCO)を生成して、これをマイコン31に入力するものである。
【0041】
サブ電子制御装置30のマイコン31は、メモリ31aに記録されたプログラムに従って、エンジン制御に係る処理及び他の電子制御装置との通信に係る処理等を実行するが、この際には、通信回路33が生成した通信クランク信号(SYNCO)に基づき、クランク角の変化に合わせてエンジン制御に係る処理を実行する。そして、このエンジン制御に係る処理等によって生成されたデータを、順次送信データ(TXD)として通信回路33に入力する。一方で、通信回路33により生成された受信データ(RXD)を、図示しない内蔵の受信バッファに格納して処理する。
【0042】
尚、メイン電子制御装置10の送信回路14による送信データ(TXD)を差動信号として通信線LNに出力する動作、及び、各サブ電子制御装置30の送信回路34による送信データ(TXD)を差動信号として通信線LNに出力する動作の夫々は、所定の通信プロトコルに従って、マイコン11,31による通信調停により、互いに重複しないように実行される。周知のように、車載ネットワークの通信プロトコルであるCAN方式では、CSMA(Carrier Sense Multiple Access)/CA(Collision Avoidance)方式による通信調停が行われる。
【0043】
続いて、本実施例の車両制御システム1で用いられる差動信号の種類と、通信回路13,33を構成する送信回路14,34及び受信回路15,35の詳細構成とを図3及び図4を用いて説明する。
【0044】
図3に示すように、本実施例の車両制御システム1では、差動信号として、三つの異なる信号が伝送される。具体的に、入力回路17から通信回路13に入力されるクランク信号(SYNCI)の信号レベルがロウ(インアクティブレベル)であり、且つ、送信データ(TXD)としてマイコン11,31から通信回路13,33に入力される値が「1」であるとき、通信線LNには、第一の差動信号として、3.5Vのシングルエンド信号(COMH)と1.5Vのシングルエンド信号(COML)との組合せからなる差動信号が伝送される。
【0045】
一方、入力回路17から通信回路13に入力されるクランク信号(SYNCI)の信号レベルがロウ(インアクティブレベル)であり、且つ、送信データ(TXD)としてマイコン11,31から通信回路13,33に入力される値が「0」であるとき、通信線LNには、第二の差動信号として、2.5Vのシングルエンド信号(COMH)と、2.5Vのシングルエンド信号(COML)との組合せからなる電位差0Vの差動信号が伝送される。
【0046】
また、入力回路17から通信回路13に入力されるクランク信号の信号レベルがハイ(アクティブレベル)であるときには、通信線LNには、第三の差動信号として、5Vのシングルエンド信号(COMH)と0Vのシングルエンド信号(COML)との組合せからなる差動信号が伝送される。尚、第三の差動信号は、通信調停の手続きについては行われることなく、クランク信号(SYNCI)の信号レベルがハイ(アクティブレベル)となった時点で、メイン電子制御装置10の送信回路14の機能により通信線LNに入力される。このとき、通信線LNでは、電子制御装置10,30によるデータ送信動作の実行の有無にかかわらず、第三の差動信号が伝送される。
【0047】
図4(A)には、このような第一〜第三の差動信号を通信線LNに入力可能なメイン電子制御装置10の送信回路14の構成を示す。図4(A)に示すように、送信回路14は、インバータIV1,IV2,IV3,IV4と、トランジスタTR1,TR2,TR3,TR4と、抵抗R11,R12と、を備える。
【0048】
この送信回路14によれば、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)がロウ且つマイコン11からの入力が値「1」(ハイ)であるとき、N型トランジスタTR1はオンとなり、P型トランジスタTR2はオンとなり、N型トランジスタTR3はオフとなり、P型トランジスタTR4はオフとなり、通信線LNには、上記第一の差動信号が伝送される。また、この送信回路14によれば、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)がロウ且つマイコン11からの入力(TXD)が値「0」であるとき、N型トランジスタTR1はオフとなり、P型トランジスタTR2はオフとなり、N型トランジスタTR3はオフとなり、P型トランジスタTR4はオフとなり、通信線LNには、上記第二の差動信号が伝送される。
【0049】
また、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)がハイ(アクティブレベル)であるとき、N型トランジスタTR3はオンとなって第二の信号線L2は接地され、P型トランジスタTR4はオンとなって第一の信号線L1には電源電圧(5V)が印加される。これによって、トランジスタTR1,TR2の状態によらず、通信線LNには、上記第三の差動信号が伝送される。このようにして送信回路14は、通信線LNに第一〜第三の差動信号を切り替えて出力する。一方、サブ電子制御装置30の送信回路34は、周知の差動通信用の送信回路と同様の構成にされる。
【0050】
この他、メイン電子制御装置10及びサブ電子制御装置30の受信回路15,35は、図4(B)に示す回路構成にされる。具体的に、受信回路15は、比較器CM0,CM1,CM2と、AND回路AGと、抵抗R31,R32,R33とを備える。入力端子に信号線L1,L2が接続された比較器CM0は、信号線L1の電位が信号線L2より高いとき、受信データ(RXD)として値「1」を出力し、信号線L1の電位が信号線L2の電位以下であるとき、受信データ(RXD)として値「0」を出力する。
【0051】
一方、比較器CM1のプラス入力端子には、信号線L1が接続され、比較器CM1のマイナス入力端子には、抵抗R31を介して5V電源が接続されている。このマイナス入力端子には、抵抗R31を介して3.5Vより大きく5V未満の固定電圧(例えば4V)が印加される。即ち、受信回路15,35を構成する比較器CM1は、第三の差動信号が通信線LNにおいて伝送されている場合には、値「1」を出力し、第一及び第二の差動信号のいずれかが通信線LNにおいて伝送されている場合には、値「0」を出力するように動作する。
【0052】
この他、比較器CM2のマイナス入力端子には、信号線L2が接続され、比較器CM2のプラス入力端子には、抵抗R31,R32を介して5V電源が接続されている。このプラス入力端子には、抵抗R31,R32を介して0Vより大きく1.5V未満の固定電圧(例えば1V)が印加される。即ち、受信回路15,35を構成する比較器CM2は、第三の差動信号が通信線LNにおいて伝送されている場合には、値「1」を出力し、第一及び第二の差動信号のいずれかが通信線LNにおいて伝送されている場合には、値「0」を出力する。
【0053】
そして、AND回路AGは、比較器CM1,CM2からの出力信号に基づき、第三の差動信号が通信線LNにおいて伝送されている場合には、値「1」を出力し、第一及び第二の差動信号のいずれかが通信線LNにおいて伝送されている場合には、値「0」を出力する。このAND回路AGの出力信号は、上述した通信クランク信号(SYNCO)に対応する。即ち、AND回路AGは、第三の差動信号の入力パターンに応じて信号レベルがハイ(アクティブレベル)とロウ(インアクティブレベル)のとの間で変化する信号であって、通信線LNの伝送信号が第三の差動信号に切り替わる度に、信号レベルがハイ(アクティブレベル)に変化し、通信線LNの伝送信号が第三の差動信号からデータ伝送用の差動信号である第一又は第二の差動信号に切り替わる度に、信号レベルがロウ(インアクティブレベル)に変化する通信クランク信号(SYNCO)を生成し、これを自装置のマイコン11,31に入力する。
【0054】
本実施例では、このような受信回路15,35の構成により、クランク信号の疑似信号(通信クランク信号)を生成し、これを自装置のマイコン11,31に入力する。
続いて、マイコン11,31の処理動作について説明する。メイン電子制御装置10のマイコン11及び各サブ電子制御装置30のマイコン31は、図5に示すクランク信号監視処理を繰返し実行することで、通信クランク信号(SYNCO)の信号レベルの変化に応じた処理を実行する。
【0055】
クランク信号監視処理を開始すると、マイコン11,31は、自装置の通信回路13,33から入力される通信クランク信号(SYNCO)がアクティブレベル(ハイ)に変化したか否かを判断する。即ち、通信クランク信号(SYNCO)のアクティブエッジ(立ち上がりエッジ)を検出したか否かを判断する(S110)。そして、アクティブエッジが検出されていないと判断すると(S110でNo)、S115に移行する。一方、S115では、通信クランク信号(SYNCO)がインアクティブレベル(ロウ)に変化したか否かを判断する。即ち、通信クランク信号(SYNCO)のインアクティブエッジ(立ち下がりエッジ)を検出したか否かを判断する。そして、通信クランク信号(SYNCO)のインアクティブエッジが検出されていないと判断すると(S115でNo)、当該クランク信号監視処理を一旦終了し、次の周期で、再度S110からクランク信号監視処理を開始する。尚、マイコン11,31は、通信クランク信号(SYNCO)のアクティブエッジ又はインアクティブエッジが検出される時間間隔よりも十分短い周期で、繰返しクランク信号監視処理を実行する。
【0056】
通信クランク信号(SYNCO)のアクティブエッジが検出されると(S110でYes)、マイコン11,31は、通信許可フラグをオフに設定し(S120)、クランクフラグをオンに設定する(S130)。通信許可フラグは、後述する送信制御処理に対して、データ送信可能な状態に通信線LNがあるか否かを通知するためのフラグである。通信許可フラグは、通信クランク信号(SYNCO)がアクティブレベルであるとき、換言すれば通信線LNにおいて第三の差動信号が伝送されているときオフに設定され、通信クランク信号(SYNCO)がインアクティブレベルであるとき、換言すれば通信線LNにおいて第三の差動信号が伝送されていないときオンに設定される。この他、クランクフラグは、後述する受信制御処理に対して、データ送信が中断された状態にあるか否かを通知するためのフラグであり、通信クランク信号(SYNCO)がアクティブレベルであるときオンに設定され、通信クランク信号(SYNCO)がインアクティブレベルであるときにオフに設定される。
【0057】
S130での処理を終えると、マイコン11,31は、S140に移行し、今回入力された通信クランク信号(SYNCO)に基づきクランク角を更新する。例えば、通信クランク信号(SYNCO)が、クランク角が10度進む度にアクティブレベルに変化する信号である場合、ここでは、クランク角を10度更新する。尚、クランク角の原点位置は、カム角センサの出力信号から特定される。
【0058】
S140での処理を終えると、マイコン11,31は、S150に移行し、エンジン制御に係る処理の内、クランク信号に同期して実行すべき処理(以下「クランク信号同期処理」と表現する。)を実行する。例えば、サブ電子制御装置30におけるマイコン31は、メイン電子制御装置10から通知された燃料噴射時期が到来したか否かを、S140で更新されたクランク角に基づき判断し、到来した場合には、インジェクタを駆動して燃料噴射を行う処理を、上記クランク信号同期処理として実行する。この他、サブ電子制御装置30は、インジェクタに設置された圧力センサ等の値を取得して、燃料噴射制御に関する学習結果を送信する処理を、上記クランク信号同期処理として実行する構成にすることができる。
【0059】
マイコン11,31は、このようなクランク信号同期処理の実行を終了すると、当該クランク信号監視処理を一旦終了し、次の周期で再度S110から処理を開始する。そして、通信クランク信号(SYNCO)のインアクティブエッジ(立ち下がりエッジ)を検出すると(S115でYes)、上述した通信許可フラグをオンに設定すると共に(S160)、上述したクランクフラグをオフに設定し(S170)、当該クランク信号同期処理を終了する。
【0060】
続いて、メイン電子制御装置10のマイコン11及び各サブ電子制御装置30のマイコン31が実行する車両制御処理について説明する。本実施例では、エンジン制御に係る処理を実行するに際しては、このエンジン制御に係る処理と、エンジン制御に係る処理にて生成された送信対象のデータをキューに登録する処理と、を含む車両制御処理を実行する。図6は、この車両制御処理の内容を表すフローチャートである。即ち、マイコン11,31は、通信クランク信号(SYNCO)と同期してS150でエンジン制御に係る処理を実行する際には、上記クランク信号同期処理として、S150で図6に示す車両制御処理を実行し、通信クランク信号(SYNCO)と非同期でエンジン制御に係る処理を実行する際には、このエンジン制御に係る処理の実行タイミングが到来すると、図6に示す車両制御処理を実行する。
【0061】
車両制御処理を開始すると、マイコン11,31は、該当するエンジン制御に係る処理を実行する(S210)。例えば、メイン電子制御装置10のマイコン11は、エンジン制御に係る処理として、各気筒における最適な燃料噴射量及び燃料噴射時期を計算し、この計算結果に基づき、各気筒への燃料噴射量及び燃料噴射時期の指令値を格納した送信対象のデータを生成する処理を実行する。サブ電子制御装置30のマイコン31が実行するエンジン制御に係る処理の例は、上述した通りである。
【0062】
そして、エンジン制御に係る処理を実行すると(S210)、マイコン11,31は、自装置において実行したエンジン制御に係る処理によって送信対象のデータが生成されたか否かを判断し(S220)、送信対象のデータが生成されていないと判断すると(S220でNo)、当該車両制御処理を終了する。
【0063】
一方、送信対象のデータが生成されたと判断すると(S220でYes)、マイコン11,31は、S230に移行し、送信対象データを、送信待ちデータとしてキューに登録する。この際には、送信待ちデータに対して、受付番号ReqNoを付与し、送信待ちデータを、受付番号ReqNoと関連付けて、キューに登録する。尚、受付番号ReqNoの初期値はゼロである。S230での処理を終えると、マイコン11,31は、受付番号ReqNoを1インクリメントして、次にキューに登録する送信待ちデータの受付番号ReqNoを更新する(S240)。その後、当該車両制御処理を終了する。
【0064】
続いて、メイン電子制御装置10のマイコン11及び各サブ電子制御装置30のマイコン31が繰返し実行する送信制御処理について説明する。図7は、送信制御処理の内容を表すフローチャートである。但し、図7に示す送信制御処理の一部のステップは、サブ電子制御装置30において実行されない。図7では、このようなサブ電子制御装置30では実行されないS330〜S350の処理を、破線で囲んで示す。以下では、送信制御処理としてマイコン11が実行する処理の内容を説明し、マイコン31が実行する処理の内容を省略するが、マイコン31においては、S320でYesと判断すると、次のステップであるS370に移行するものとして解釈されたい。言うまでもないが、この送信制御処理においてマイコン31が送信データ(TXD)を入力する対象は、自装置の通信回路33である。
【0065】
送信制御処理を開始すると、マイコン11は、まず、自装置の送信フラグがオンに設定されているか否かを判断する(S310)。送信フラグは、オンであるときには、自装置の通信回路13を介したデータ送信動作が行われていることを示し、オフであるときには、自装置の通信回路13を介したデータ送信動作が終了していることを示すフラグである。
【0066】
そして、送信フラグがオンに設定されていると判断すると(S310でYes)、当該送信制御処理を一旦終了して、再度、S310から処理を開始する。
一方、送信フラグがオフに設定されていると判断すると(S310でNo)、上述した通信許可フラグがオンに設定されているか否かを判断する(S320)。そして、通信許可フラグがオフに設定されていると判断すると(S320でNo)、当該送信制御処理を一旦終了し、通信許可フラグがオンに設定されるまで待機する。一方、通信許可フラグがオンに設定されていると判断すると(S320でYes)、次のステップに移行する。即ち、メイン電子制御装置10のマイコン11によれば、S330に移行する。
【0067】
S330に移行すると、マイコン11は、入力回路19から入力されるカム信号の信号レベルがハイからロウ又はロウからハイに変化したか否かを判断する(S330)。そして、変化していないと判断すると(S330でNo)、S370に移行する。一方、変化したと判断すると(S330でYes)、S340に移行する。尚、S330での判断は、カム信号の信号レベルが変化する度に、その変化後のカム信号の信号レベル(ハイ/ロウ)を記憶し、次回以降に実行する送信制御処理にて、上記記憶した信号レベルと、現在の信号レベルとを比較することにより実現することができる。
【0068】
S340に移行すると、マイコン11は、送信ポインタの値SndNoを、1デクリメントした値に更新する。尚、送信ポインタは、次に送信すべき送信待ちデータの受付番号を表すものである。また、この処理を終えると、マイコン11は、S350に移行し、上記変化後のカム信号のハイ/ロウを表すカム状態データを生成すると共に、このカム状態データに対し、送信ポインタが示す現在値と同一の受付番号を割り当てる。更には、このカム状態データを、送信待ちデータとして上記受付番号と共にキューに登録する。本実施例によれば、このようにカム状態データをキューに登録することによって、カム状態データが他の送信待ちデータに優先して送信されるようにする。尚、S340で送信ポインタの値SndNoを1デクリメントするのは、1デクリメントする前の送信ポインタの値SndNoに対応する送信待ちデータについては、まだ送信されていない一方、それより一つ前の受付番号を有するデータについては、既に送信されてキューから削除された状態にあるためである。マイコン11は、S350の処理を終えると、S370に移行する。
【0069】
S370に移行すると、マイコン11は、自装置のキューに、未処理の送信待ちデータが存在するかを判断する。具体的には、次に発生する送信待ちデータに対して割り当てるべき受付番号ReqNoと、送信ポインタが示す値SndNoとを比較して、送信ポインタが示す値SndNoが受付番号ReqNo未満であれば、未処理の送信待ちデータが存在すると判断し、送信ポインタが示す値SndNoが受付番号ReqNo以上であれば、未処理の送信待ちデータは存在しないと判断する。
【0070】
ここで、未処理の送信待ちデータが存在しないと判断すると(S370でNo)、マイコン11は、当該送信制御処理を終了し、未処理の送信待ちデータが存在すると判断すると(S370でYes)、送信ポインタSndNoが示す値に一致する受付番号ReqNoが割り当てられた送信待ちデータを、送信データ(TXD)として自装置の通信回路13に入力することによって、自装置の通信回路13を通じ、この送信データ(TXD)を他の電子制御装置に向けて送信する(S380)。マイコン11による通信回路13への送信データ(TXD)の入力によって、送信データは、差動信号に変換されて通信線LNに出力される。但し、送信待ちデータを、送信データ(TXD)として出力するデータ送信動作には、通信調停などの通信プロトコルに従う通信手順も含まれるものとする。
【0071】
また、このようなデータ送信動作の開始後には、送信フラグをオンに設定する(S390)。その後、マイコン11は、当該送信制御処理を一旦終了し、再度、S310から処理を開始する。
【0072】
尚、送信フラグは、次に説明する受信制御処理によってオフに設定される。メイン電子制御装置10のマイコン11及び各サブ電子制御装置30のマイコン31は、図8に示す受信制御処理を繰返し実行する。
【0073】
受信制御処理を開始すると、マイコン11,31は、自装置の受信バッファに受信データが登録されているか否かを判断することにより、バッファからのデータ取込動作の完了していない未処理の受信データが存在するか否かを判断する。そして、未処理の受信データが存在しないと判断すると(S410でNo)、当該受信制御処理を一旦終了する。
【0074】
一方、未処理の受信データが存在すると判断すると(S410でYes)、自装置のクランクフラグがオンに設定されているか否かを判断し(S420)、クランクフラグがオンに設定されていると判断すると(S420でYes)、受信バッファに登録されている受信データを破棄すると共に(S430)、送信フラグをオフに設定して(S440)、当該受信制御処理を終了する。
【0075】
尚、S440で送信フラグをオフに設定するのは、第三の差動信号が通信線LNに入力されることでデータ送信動作が中断された送信データを、再送信するためである。本実施例では、上述したように送信ポインタが示す値SndNoに対応する受付番号の送信待ちデータを送信データとして処理するので、送信ポインタの値SndNoを更新せずに、送信フラグをオフに設定すると、上述したS380の処理によって、再度、同じ送信待ちデータが送信データ(TXD)として通信回路13,33に出力されることになる。
【0076】
更に付言すると、S430,S440の処理については電子制御装置10,30間の差動通信に異常が生じている場合にも実行することができる。即ち、S420では、クランクフラグがオンに設定されているか、又は、電子制御装置10,30間の差動通信に異常が生じていると、肯定判断し、クランクフラグがオフに設定され、且つ、電子制御装置10,30間の差動通信に異常が生じていない場合に限って、否定判断する構成にすることができる。
【0077】
S420で否定判断すると(S420でNo)、マイコン11,31は、S460に移行し、受信バッファに登録されている受信データが自装置からの送信データであるか否かを判断する(S460)。そして、受信バッファに登録されている受信データが自装置からの送信データであると判断すると(S460でYes)、送信ポインタの値SndNoを、1インクリメントすることで、送信データ(TXD)として出力する送信待ちデータを受付番号が次のデータに変更する(S470)。
【0078】
その後、マイコン11,31は、受信バッファに登録されている上記受信データを破棄し、送信フラグをオフに設定した後(S480)、当該受信制御処理を一旦終了する。
一方、受信バッファに登録されている受信データが自装置からの送信データではないと判断すると(S460でNo)、マイコン11,31は、S490に移行して、当該受信データを自装置の受信バッファから取り込む。マイコン11,31は、このようにして取り込んだデータを更に分類して、各データを、このデータを必要としている自マイコン11,31内のタスクに引き渡す。
【0079】
例えば、サブ電子制御装置30のマイコン31は、メイン電子制御装置10から燃料噴射量及び燃料噴射時期の情報を含むデータを受信した場合、燃料噴射制御に係るタスクに、この受信データを引き渡す。燃料噴射制御に係るタスクは、この受信データが示す燃料噴射量及び噴射時期の情報に基づいて、該当する気筒の燃料噴射制御を行う。例えば、サブ電子制御装置30のマイコン31は、燃料噴射制御に係るタスクの一つとして実行するクランク信号同期処理(S150)において、上記受信データが示す燃料噴射量及び噴射時期の情報に基づいて、該当する気筒の燃料噴射制御を行う。
【0080】
そして、S490での処理を終えると、マイコン11,31は、当該受信制御処理を一旦終了する。
以上に本実施例の車両制御システム1の構成について説明したが、本実施例の車両制御システム1によれば、図9に示すように、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)がアクティブレベル(ハイ)に変化する度に、このクランク信号がインアクティブレベル(ロウ)に変化するまでの期間、特殊な差動信号である第三の差動信号が通信線LNに入力されて、クランク信号がアクティブレベルに変化したことがサブ電子制御装置30に伝達される。そして、サブ電子制御装置30では、この特殊な差動信号の入力パターンに合わせて、信号レベルがアクティブレベルとインアクティブレベルとの間で変化するクランク信号の擬似信号である通信クランク信号(SYNCO)を生成し、これをマイコン31に入力する。そしてマイコン31では、この通信クランク信号(SYNCO)に基づいて、クランク角の変化に応じたエンジン制御に係る処理(図9に示すクランク信号(NE)同期処理)を実行する。従って、本実施例によれば、サブ電子制御装置30にクランク角センサ21の出力信号を入力するための入力回路17を、メイン電子制御装置10と同様に設けなくとも、サブ電子制御装置30にクランク信号に同期した処理を適切に実行させることができる。
【0081】
また、本実施例によれば、メイン電子制御装置10においても、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)ではなく通信クランク信号(SYNCO)に基づいて、クランク角の変化に応じたエンジン制御に係る処理(図9に示すクランク信号(NE)同期処理)を実行する。従って、メイン電子制御装置10とサブ電子制御装置30との間での処理動作の時間的なズレを抑えて、エンジン制御に係る処理を複数の電子制御装置10,30による協働により適切に実行することができる。
【0082】
また、本実施例によれば、信号遅延やノイズによる影響の少ない通信線LNや通信回路13,33を通じてクランク信号に関する情報を伝達するので、サブ電子制御装置30を含めた各電子制御装置10,30に、入力回路17を設けて、クランク角センサ21の出力信号を直接各電子制御装置10,30に入力する場合よりも、高精度に各電子制御装置10,30においてクランク信号に同期した処理を実行することができる。
【0083】
また、本実施例によれば、マイコン11を介さずに通信回路13において、クランク信号がアクティブレベルに変化したことを示す上記特殊な差動信号(第三の差動信号)を生成するので、マイコン11を介してこのような差動信号を生成する場合よりも、上記特殊な差動信号の伝送遅延を抑えることができて、クランク信号(SYNCI)に同期した処理を各電子制御装置10,30において高精度に実行することができる。
【0084】
また、上記特殊な差動信号が伝送される期間においては、電子制御装置10,30間でのデータ通信が中断されるが、本実施例の電子制御装置10,30によれば、送信ポインタの値SndNoを変更せずに、一旦、送信フラグをオフに切り替えることにより、中断された送信データを、送信元から再送信するようにした。従って、本実施例によれば、クランク信号がアクティブレベルに変化したことを示す差動信号の通信線LNを用いた伝送と、通信線LNを用いたデータ通信を、適切に両立させることができる。
【0085】
また、本実施例によればカム角センサ23の出力信号に関する情報についても、データ通信により各サブ電子制御装置30に伝送するようにしたので、カム角センサ23に対応する入力回路19についてもサブ電子制御装置30に設けなくて済み、大変便利である。
【0086】
ところで、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、上記実施例においては、クランク信号(SYNCI)を、マイコン11を介さずに入力回路17から直接通信回路13に入力するように、メイン電子制御装置10を構成したが、メイン電子制御装置10は、図10に示すように、クランク信号(SYNCI)を、マイコン11’を介して入力回路17から通信回路13に入力する構成にされてもよい(第一変形例)。このようにクランク信号(SYNCI)を入力回路17からマイコン11’に入力する構成を採用した変形例の車両制御システム1’によれば、通信回路13に対するクランク信号(SYNCI)の入力周期を容易に変更することができて、クランク角センサの規格の違いを吸収し、一律なクランク信号(SYNCI)を通信回路13に入力することができる。例えば、マイコン11’には、クランク信号(SYNCI)の変換機能11bを設けることができ、マイコン11’は、この変換機能11bによって、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)を、クランク角が規定量変化する度に信号レベルがアクティブレベルに変化するクランク信号に変換して、通信回路13に入力する構成にすることができる。例えば、クランク角が5度や6度変化する毎に信号レベルがアクティブとなるクランク信号を出力するクランク角センサからの出力信号を、車両制御システム1’が要求するクランク角毎(例えば10度毎)に信号レベルがアクティブとなるクランク信号(SYNCI)に変換して、通信回路13に入力する処理をマイコン11’に実行させることができる。このような処理をマイコン11’に実行させれば、クランク角センサ毎の規格の違いをマイコン11’にて容易に吸収して通信回路13に適切なクランク信号を入力することができる。
【0087】
また、上記実施例によれば、第三の差動信号として、第一の信号線L1を5Vとし、第二の信号線L2を0Vとする差動信号を通信線LNに入力するようにしたが、第三の差動信号は、第一の信号線L1を5Vに切り替えただけの差動信号(図12参照)とされてもよい(第二変形例)。
【0088】
即ち、送信回路14は、図11(A)に示すような接続関係でインバータIV41,IV42,IV43及びトランジスタTR41,TR42,TR43を備えた送信回路40に変更されてもよい。この回路構成によれば、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)がロウ且つマイコン11からの入力(TXD)が値「1」(ハイ)であるとき、N型トランジスタTR41はオンとなり、P型トランジスタTR42はオンとなり、P型トランジスタTR43はオフとなるので、通信線LNには、図12に示すように上記第一の差動信号が伝送される。一方、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)がロウ且つマイコン11からの入力(TXD)が値「0」であるとき、N型トランジスタTR41はオフとなり、P型トランジスタTR42はオフとなり、P型トランジスタTR43はオフとなるので、通信線LNには、上記第二の差動信号が伝送される。
【0089】
また、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)がハイ(アクティブレベル)であるとき、P型トランジスタTR43はオンとなって、図12に示すように、トランジスタTR42の状態によらず、第一の信号線L1は電源電圧に対応する5Vに設定される。
【0090】
このような送信回路40によっても、適切にサブ電子制御装置30に対してクランク信号の情報を伝送することができる。但し、このような送信回路40を用いる場合には、メイン電子制御装置10及びサブ電子制御装置30の受信回路15,35を、図11(B)に示す受信回路50に変更する。
【0091】
即ち、通信クランク信号(SYNCO)を生成するための比較器CM51については、プラス入力端子に第一の信号線L1を接続し、マイナス入力端子には、3.5Vより大きく5V未満の固定電圧(例えば4V)を印加するための回路を接続した状態で受信回路50に設ける。このように構成された図11(B)に示す受信回路50によれば、第三の差動信号が通信線LNを伝送している期間においては、比較器CM51から出力される通信クランク信号(SYNCO)の信号レベルがアクティブレベルとなり、それ以外の期間においては、通信クランク信号(SYNCO)の信号レベルがインクアクティブレベルとなる。送信回路40の構成に合わせて、このように受信回路50を構成すれば、適切にサブ電子制御装置30に対してクランク信号の情報を伝送することができる。
【0092】
この他、上記第三の差動信号は、第一の信号線L2を0Vに切り替えただけの差動信号(図14参照)とされてもよい(第三変形例)。
即ち、送信回路14は、図13(A)に示すような接続関係でインバータIV61,IV62,IV63,IV64及びトランジスタTR61,TR62,TR63を備えた送信回路60に変更されてもよい。この回路構成によれば、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)がハイであるとき、N型トランジスタTR63はオンとなって、図14に示すように、トランジスタTR61の状態によらず、第一の信号線L2は0Vに設定され、第一の信号線L1は、マイコン11からの入力(TXD)に対応した電位に設定される。
【0093】
更に、この送信回路60の構成に合わせては、メイン電子制御装置10及びサブ電子制御装置30の受信回路15,35を、図13(B)に示す受信回路70に変更することができる。
【0094】
即ち、通信クランク信号(SYNCO)を生成するための比較器CM71については、マイナス入力端子に第二の信号線L2を接続し、プラス入力端子には、0Vより大きく1.5V未満の固定電圧(例えば1V)を印加するための回路を接続した状態で受信回路70に設けることができる。このような構成にされた図13(B)に示す受信回路70によれば、第三の差動信号が通信線LNを伝送している期間においては、比較器CM71から出力される通信クランク信号(SYNCO)の信号レベルがアクティブレベルとなり、それ以外の期間においては、通信クランク信号(SYNCO)の信号レベルがインクアクティブレベルとなる。従って、送信回路60及び受信回路70をこのように構成すれば、適切にサブ電子制御装置30に対してクランク信号の情報を伝送することができる。
【0095】
この他、上記実施例では、電子制御装置10,30にマイコンを設けたが、マイコンに代えて、専用のICを設けてもよいことは言うまでもない。
また、図6、図7では、キューイングした順番でデータが送信される例を用いて実施例の説明を行ったが、データを送信する順番はキューイングした順番に限定されない。例えばCANにおいてデータ毎に設定される優先順位に従い、データを送信する構成にしても良い。
【0096】
最後に、用語間に対応関係について説明する。入力回路17(及びマイコン11’が備えるクランク信号の変換機能11b)によって実現される処理は、クランク信号入力手段によって実現される処理の一例に対応し、入力回路17は、クランク信号入力回路の一例に対応する。また、送信回路14,40,60によって実現される処理及びマイコン11が実行するS310,S320,S340,S370,S380,S390,S440,S470,S480等の処理は、送信制御手段によって実現される処理の一例に対応する。また、受信回路15,35,50,70が備える比較器CM0は、データ受信手段(回路)の一例に対応し、受信回路15,35,50,70が備える比較器CM0以外の回路構成は、擬似信号生成手段(回路)の一例に対応する。この他、入力回路19は、カム信号入力手段(回路)の一例に対応し、マイコン11が実行するS330,S350の処理は、カム状態データ生成手段によって実現される処理の一例に対応する。
【符号の説明】
【0097】
1,1’…車両制御システム、10,30…電子制御装置、11,31,11’…マイクロコンピュータ(マイコン)、11a,31a…メモリ、11b…変換機能、13,33…通信回路、14,34,40,60…送信回路、15,35,50,70…受信回路、17,19…入力回路、21…クランク角センサ、23…カム角センサ、AG…AND回路、CM0,CM1,CM2,CM51,CM71…比較器、IV1〜4,IV41〜43,IV61〜64…インバータ、TR1〜4,TR41〜43,TR61〜63…トランジスタ、R11,R12,R31〜R33…抵抗、L1,L2…信号線、LN…通信線
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された内燃機関の制御を行うシステム及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の制御を行うシステムとしては、燃料圧力を測定する圧力センサからの出力に基づき、燃料噴射に関わる圧力変動態様を検出する技術が知られている(特許文献1参照)。また、各気筒に設置されたインジェクタと、燃料噴射制御を行う電子制御装置と、を通信可能に接続したシステムが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−144749号公報
【特許文献2】特開2010−144692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記圧力変動態様を検出するシステム等では、圧力変動態様に基づいた最適な燃料噴射制御を行うために、内燃機関を統括制御する主たる電子制御装置とは別に燃料噴射制御用の電子制御装置を設けたり、インジェクタ毎に当該電子制御装置を設けたりして、これら複数の電子制御装置の協働によって内燃機関の制御を行うことが考えられる。
【0005】
そして、このような複数の電子制御装置によって内燃機関の制御を行う場合には、内燃機関の制御に係る処理をクランク角に変化に応じて適切に行うために、各電子制御装置にクランク角センサを接続して、クランク角センサからクランク角の変化に応じて出力される信号を各電子制御装置に入力することが考えられる。
【0006】
しかしながら、各電子制御装置に対してクランク角センサを接続する場合には、これら電子制御装置の夫々に対して、クランク角センサの出力信号を入力するための入力回路を設ける必要が生じる。クランク角センサの出力信号は、センサの種類に応じて、正弦波や矩形波等の異なる波形を採る。このため、入力回路によって、クランク角センサからの出力信号を、規定の波形信号に整形し、整形後の信号を装置内部に入力する必要が生じる。
【0007】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、制御装置の夫々にクランク角センサの出力信号を入力するための入力回路を設けなくても、内燃機関の制御に係る処理を各制御装置で適切に実行可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた第一の発明(請求項1)は、差動通信用の通信線に接続された複数の車両制御装置を備え、車両に搭載された内燃機関の制御を、通信を伴うこれら複数の車両制御装置の協働によって実現する車両制御システムであって、複数の車両制御装置の一つである第一の車両制御装置と、第一の車両制御装置とは異なる第二の車両制御装置と、が次のように構成されていることを特徴とする。
【0009】
第一の車両制御装置は、クランク信号入力手段及び送信制御手段を備える。クランク信号入力手段は、内燃機関におけるクランク角の変化に応じてアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で信号レベルが変化するクランク信号を、送信制御手段に入力する手段である。例えば、クランク信号入力手段は、クランク角センサからの出力信号を整形等して、これを送信制御手段に入力する構成にすることができる。具体的に言えば、クランク信号入力手段は、例えば、正弦波や矩形波の形態で出力されるクランク角センサからの出力信号を、矩形信号等の規定の波形信号に整形して、これを送信制御手段に入力する構成にすることができる。
【0010】
一方、送信制御手段は、送信対象のデータを、データ伝送用の差動信号に変換して通信線に出力する手段である。但し、この送信制御手段は、クランク信号入力手段から入力されるクランク信号の信号レベルがアクティブレベルに変化した場合には、所定期間、データ伝送用の差動信号に代えて、データ伝送用の差動信号とは異なる差動信号である特殊な差動信号を通信線に出力する。ここで言う「所定期間」としては、例えば、クランク信号の信号レベルがインアクティブレベルに変化するまでの期間を挙げることができる。即ち、送信制御手段は、クランク信号入力手段から入力されるクランク信号の信号レベルがインアクティブレベルであるときには、内燃機関の制御に係る処理等によって生成された上記送信対象のデータを、データ伝送用の差動信号に変換して通信線に出力する一方、クランク信号入力手段から入力されるクランク信号の信号レベルがアクティブレベルであるときには、データ伝送用の差動信号とは異なる上記特殊な差動信号を通信線に出力する構成にすることができる。
【0011】
差動通信では、周知のように、二本の信号線を流れる信号(シングルエンド信号)の組合せによって、通信信号が表現されるが、ここで言う「差動信号」とは、これら二本の信号線を流れる信号によって情報が表現される信号のことを言う。換言すれば、ここで言う「差動信号」は、互いに逆位相の信号の組合せからなる信号に限定されない広義の差動信号を意味する。
【0012】
一方、第二の車両制御装置は、データ受信手段及び擬似信号生成手段を備える。データ受信手段は、上記通信線からの入力信号に基づき、上記データ伝送用の差動信号に変換されて上記通信線に出力された上記送信対象のデータを復元して、受信データを生成する手段である。一方、擬似信号生成手段は、上記通信線からの入力信号に基づき、クランク信号の擬似信号を生成する手段である。具体的に、擬似信号生成手段は、上記特殊な差動信号の入力パターンに応じて信号レベルがアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で変化する信号であって、特殊な差動信号が入力される度に信号レベルがアクティブレベルに変化する信号を、上記クランク信号の擬似信号として生成する構成にすることができる。
【0013】
この第二の車両制御装置は、内燃機関の制御に係る処理を、上記受信データ及び上記疑似信号に基づいて行う。例えば、第二の車両制御装置は、受信データに基づく内燃機関の制御に係る処理を上記疑似信号から特定されるクランク角の変化に合わせて実行する構成にすることができる。更に言えば、第二の車両制御装置は、疑似信号生成手段によって生成された疑似信号がアクティブレベルに切り替わる度に、内燃機関の制御に係る所定の処理を実行したり、上記疑似信号と同期して又は上記擬似信号とは非同期で、上記疑似信号から特定されるクランク角に基づく処理を実行したりする構成にすることができる。
【0014】
このように構成された本発明の車両制御システムによれば、第一の車両制御装置が、車両制御装置間のデータ送受信に用いられる通信線に、上記特殊な差動信号を入力することによって、他の車両制御装置(第二の車両制御装置)に対してクランク信号に相当する信号を伝送する。従って、本発明によれば、第二の車両制御装置にクランク信号の入力回路を設けなくても、第二の車両制御装置に、内燃機関に係る処理として、クランク角の変化に応じた適切な処理を実行させることができる。
【0015】
ところで、第一の車両制御装置は、内燃機関の制御に係る処理を、クランク信号入力手段から入力されるクランク信号に基づいて実行する構成にされてもよいが、好ましくは、第二の車両制御装置と同様に、上記通信線からの入力信号に基づき、クランク信号の擬似信号を生成する擬似信号生成手段を備え、内燃機関の制御に係る処理を、自装置が備える疑似信号生成手段によって生成された疑似信号に基づいて実行する構成にされるとよい(請求項2)。このように、第一及び第二の車両制御装置を構成すれば、複数の車両制御装置の協働による内燃機関の制御を、一層適切に実行することができる。
【0016】
また、上記送信制御手段によれば、クランク信号の信号レベルがアクティブレベルに変化すると、上記特殊な差動信号の通信線への出力動作が開始されることが原因で「送信対象のデータをデータ伝送用の差動信号に変換して通信線に出力する動作」が中断される可能性がある。従って、第一の車両制御装置が備える送信制御手段は、クランク信号の信号レベルがアクティブレベルに変化して特殊な差動信号の通信線への出力動作が開始されたことを原因として「データ伝送用の差動信号に変換して通信線に出力する動作」が中断された送信対象のデータを、上記特殊な差動信号の通信線への出力動作が終了した後、再度、データ伝送用の差動信号に変換して通信線に出力する構成にされるとよい(請求項3)。
【0017】
この他、第一の車両制御装置には、内燃機関におけるカム角の変化に応じて信号レベルがアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で変化するカム信号を入力するカム信号入力手段と、カム信号入力手段から入力されるカム信号の信号レベルがアクティブレベルに切り替わると、カム信号の信号レベルがアクティブレベルであることを示すカム状態データを、送信対象のデータとして生成するカム状態データ生成手段とを設けるとよい。更に、第一の車両制御装置が備える送信制御手段は、カム状態データ生成手段によって生成されたカム状態データを、他の送信対象のデータに優先して、データ伝送用の差動信号に変換し、通信線へ出力する構成にされるとよい(請求項4)。
【0018】
このような構成の第一の車両制御装置を用いて車両制御システムを構成すれば、カム信号についても車両制御装置毎に入力回路を設けなくて済み、差動通信用の通信線を用いて効率的にカム角の情報を各車両制御装置に伝達することができる。
【0019】
また、上述した車両制御システムは、具体的に次のように構成することができる。即ち、第一の車両制御装置は、送信回路と、内燃機関の制御に係る処理を行うと共に、送信対象のデータを送信回路に入力するマイクロコンピュータと、内燃機関におけるクランク角の変化に応じてアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で信号レベルが変化するクランク信号を送信回路に入力するクランク信号入力回路と、を備えた構成にすることができる。
【0020】
そして、送信回路は、マイクロコンピュータから入力される送信対象のデータを、データ伝送用の差動信号に変換して通信線に出力する一方、クランク信号入力回路から入力されるクランク信号の信号レベルがアクティブレベルに変化した場合には、所定期間、データ伝送用の差動信号に代えて、データ伝送用の差動信号とは異なる上記特殊な差動信号を通信線に出力する構成にすることができる。
【0021】
また、第二の車両制御装置は、通信線からの入力信号に基づき、データ伝送用の差動信号に変換されて通信線に出力された送信対象のデータを復元してなる受信データを生成するデータ受信回路と、通信線からの入力信号に基づき、特殊な差動信号の入力パターンに応じて信号レベルがアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で変化する信号であって、特殊な差動信号が入力される度に信号レベルがアクティブレベルに変化するクランク信号の擬似信号を生成する擬似信号生成回路と、を備えた構成にすることができる(請求項5)。更に言えば、第二の車両制御装置は、マイクロコンピュータを備え、マイクロコンピュータにより、内燃機関の制御に係る処理を、受信データ及び自装置が備える疑似信号生成回路によって生成された疑似信号に基づいて実行する構成にすることができる。
【0022】
このように、上記特殊な差動信号の出力及び上記特殊な差動信号に基づく上記擬似信号の生成を、マイクロコンピュータを介さずに行う車両制御システムによれば、クランク信号の信号レベルの変化に伴う上記特殊な差動信号の出力を高速に行うことができて、クランク信号からの遅延の少ない上記擬似信号を生成することができ、各車両制御装置にてクランク角の変化に応じた内燃機関の制御に係る処理を一層適切に行うことができる。
【0023】
但し、第一の車両制御装置が備えるクランク信号入力回路は、送信回路に代えて、第一の車両制御装置が備えるマイクロコンピュータにクランク信号を入力する構成にされてもよい。そして、第一の車両制御装置が備えるマイクロコンピュータは、クランク信号入力回路から入力されるクランク信号を、クランク角が規定量変化する度に信号レベルがアクティブレベルに変化するクランク信号に変換して、送信回路に入力し、送信回路は、マイクロコンピュータから入力されるクランク信号に基づいて、上記特殊な差動信号を通信線に出力する構成にされてもよい(請求項6)。
【0024】
このように車両制御システムを構成すれば、クランク角センサの種類の違い等を原因として、クランク信号1周期に対応するクランク角の変化量が異なるクランク信号がクランク信号入力回路から入力される場合であっても、マイクロコンピュータを用いて、このクランク信号を、各車両制御装置の構成に対応した規定のクランク信号に簡単に変換することができ、車両制御システムとクランク角センサとの組合せの自由度を高めることができる。
【0025】
また、第一の車両制御装置は、第二の車両制御装置と同様に、擬似信号生成回路を備えた構成にすることができ、第一の車両制御装置が備えるマイクロコンピュータは、内燃機関の制御に係る処理を、自装置が備える疑似信号生成回路から入力される疑似信号に基づいて(例えば、擬似信号から特定されるクランク角の変化に合わせて)実行する構成にすることができる(請求項7)。
【0026】
また、第一の車両制御装置が備えるマイクロコンピュータは、擬似信号生成回路から入力される擬似信号がアクティブレベルに変化したことを検知することによって、送信回路による上記特殊な差動信号の通信線への出力動作が開始されたことを検知する構成にすることができる。そして、第一の車両制御装置が備えるマイクロコンピュータは、送信回路による上記特殊な差動信号の通信線への出力動作が開始されたことを検知すると、上記特殊な差動信号の通信線への出力動作が開始されたことを原因として送信回路による上記データ伝送用の差動信号に変換して通信線に出力する動作が中断された上記送信対象のデータを、上記特殊な差動信号の通信線への出力動作が終了した後、再度、送信回路に入力することによって、上記送信対象のデータを再送信する構成にすることができる(請求項8)。
【0027】
また、第一の車両制御装置は、内燃機関におけるカム角の変化に応じて信号レベルがアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で変化するカム信号を入力するカム信号入力回路を備え、第一の車両制御装置が備えるマイクロコンピュータは、カム信号入力回路から入力されるカム信号の信号レベルがアクティブレベルに切り替わると、カム信号の信号レベルがアクティブレベルであることを示すカム状態データを、送信対象のデータとして生成し、当該カム状態データを、他の送信対象のデータに優先して、送信回路に入力する構成にすることができる(請求項9)。
【0028】
この他、上述した車両制御システムの発明は、車両制御装置の発明に適用することができる。第二の発明(請求項10)は、差動通信用の通信線に接続され、通信線を通じて他の車両制御装置と通信することによって、他の車両制御装置と協働して車両に搭載された内燃機関の制御を行う車両制御装置であって、上述のクランク信号入力手段と送信制御手段とを備え、上記特殊な差動信号によって、他の車両制御装置に対してクランク信号の信号レベルの変化を表す信号を伝送することを特徴とするものである。この車両制御装置によれば、上記車両制御システムと同様に、他の車両制御装置にクランク信号についての入力回路を設けなくても済むといった利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】車両制御システム1の構成を表すブロック図である。
【図2】メイン電子制御装置10が備える通信回路13の構成を表すブロック図(A)及びサブ電子制御装置30が備える通信回路33の構成を表すブロック図(B)である。
【図3】差動信号の波形を示した図である。
【図4】メイン電子制御装置10が備える送信回路14の構成を表すブロック図(A)並びにメイン及びサブ電子制御装置10,30が備える受信回路15,35の構成を表すブロック図(B)である。
【図5】メイン及びサブ電子制御装置10,30のマイコン11,31が実行するクランク信号監視処理を表すフローチャートである。
【図6】メイン及びサブ電子制御装置10,30のマイコン11,31が実行する車両制御処理を表すフローチャートである。
【図7】メイン及びサブ電子制御装置10,30のマイコン11,31が実行する送信制御処理を表すフローチャートである。
【図8】メイン及びサブ電子制御装置10,30のマイコン11,31が実行する受信制御処理を表すフローチャートである。
【図9】各信号の変化及び各処理の実行タイミングを示したタイムチャートである。
【図10】第一変形例の車両制御システム1’の構成を表すブロック図である。
【図11】第二変形例における送信回路40の構成を表すブロック図(A)及び受信回路50の構成を表すブロック図(B)である。
【図12】第二変形例における差動信号の波形を示した図である。
【図13】第三変形例における送信回路60の構成を表すブロック図(A)及び受信回路70の構成を表すブロック図(B)である。
【図14】第三変形例における差動信号の波形を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の実施例について、図面と共に説明する。
本実施例の車両制御システム1は、差動通信用の通信線LNに接続された複数の電子制御装置10,30を備え、車両に搭載された内燃機関としてのエンジンの制御を、通信を伴う複数の電子制御装置10,30の協働によって実現するシステムである。この車両制御システム1は、エンジンを統括制御する電子制御装置としてのメイン電子制御装置10と、その他の複数のサブ電子制御装置30とを、備える。サブ電子制御装置30としては、気筒毎に設けられる電子制御装置であって、対応する気筒の燃料噴射制御を行う電子制御装置を挙げることができる。サブ電子制御装置30が、このような燃料噴射制御を行う電子制御装置である場合、サブ電子制御装置30の夫々は、メイン電子制御装置10から通信線LNを通じて送信されてくる燃料噴射量及び噴射時期の情報に基づいて、該当するインジェクタを制御する構成にすることができる。また、サブ電子制御装置30は、燃料噴射制御の学習結果や圧力センサ等の検出結果を、通信線LNを通じてメイン電子制御装置10に送信する構成にすることができる。
【0031】
この車両制御システム1を構成するメイン電子制御装置10は、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」と表現する。)11と、通信線LNに接続された通信回路13と、クランク角センサ21の出力信号を通信回路13に入力する入力回路17と、カム角センサ23の出力信号をマイコン11に入力する入力回路19と、を備える。
【0032】
マイクロコンピュータ11は、各種プログラムやデータを記憶するメモリ11aを備え、メモリ11aに記録されたプログラムに従って、エンジンの制御に係る処理及び通信回路13を介した他の電子制御装置30との通信に係る処理を実行する。具体的に、マイクロコンピュータ11は、入力回路19を介して入力されるカム角センサ23の出力信号(カム信号)、及び、通信回路13から入力されるクランク信号の疑似信号(SYNCO:詳細後述)に基づき、エンジン制御に係る処理を、エンジンの回転(カム角及びクランク角の変化)に合わせて実行する。
【0033】
尚、クランク角センサ21は、クランク軸に取り付けられたロータリエンコーダにより構成されるものであり、クランク角の変化に応じて信号(電圧)レベルが変化するクランク信号を出力する周知のセンサである。また、カム角センサ23は、カム軸に取り付けられ、クランク角センサ21と同様に、カム角の変化に応じて信号レベルが変化するカム信号を出力するセンサである。
【0034】
クランク角センサ21としては、上記クランク信号として、正弦波や矩形波を出力するものが知られている。また、カム角センサ23としては、上記カム信号として、正弦波や矩形波を出力するものが知られている。
【0035】
入力回路17は、このクランク角センサ21から入力されるクランク信号を、増幅・整形等することによって、クランク角の変化に応じて信号(電圧)レベルがハイ(アクティブレベル)とロウ(インアクティブレベル)との間で変化する矩形信号に変換した後に、これを通信回路13に入力する。同様に、入力回路19は、上記カム角センサ23から入力されるカム信号を、増幅・整形等することによって、カム角の変化に応じて信号(電圧)レベルがハイ(アクティブレベル)とロウ(インアクティブレベル)との間で変化する矩形信号に変換した後に、これをマイコン11に入力する。
【0036】
一方、通信回路13は、マイコン11から入力される送信データ(TXD)を、差動信号に変換して、この差動信号を、二本の信号線L1,L2から構成される通信線LNに出力するものである。具体的に、メイン電子制御装置10が備える通信回路13は、図2(A)に示すように、通信線LNに接続された送信回路14及び受信回路15を備える。
【0037】
送信回路14は、マイコン11から入力される送信データ(TXD)と、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)とに基づいて動作し、通信線LNに対して差動信号を出力するものである。図1及び図2(A)に示すように、送信回路14は、差動信号を構成する第一のシングルエンド信号(COMH)を、通信線LNを構成する第一の信号線L1に出力し、差動信号を構成する第二のシングルエンド信号(COML)を、通信線LNを構成する第二の信号線L2に出力する。
【0038】
一方、受信回路15は、通信線LNを流れる差動信号に基づき、通信線LNに差動信号として出力された送信データ(TXD)に対応する受信データ(RXD)を生成するものである。受信回路15により生成された受信データ(RXD)は、マイコン11に入力され、マイコン11が備える図示しない受信バッファに格納される。また、受信回路15は、特徴的なことに、通信線LNを流れる差動信号に基づき、クランク信号の疑似信号(SYNCO)を生成して、これをマイコン11に入力する機能を有する。以下では、クランク信号の疑似信号(SYNCO)のことを、通信クランク信号(SYNCO)とも表現する。
【0039】
また、サブ電子制御装置30の夫々は、メイン電子制御装置10と同様に、マイコン31及び通信回路33を備える。但し、サブ電子制御装置30の夫々は、メイン電子制御装置10とは異なり、クランク角センサ21やカム角センサ23からの出力信号を装置内に入力する入力回路を備えない構成にされている。
【0040】
サブ電子制御装置30が備える通信回路33は、図2(B)に示すように、通信線LNに接続された送信回路34及び受信回路35を備える。送信回路34は、マイコン31から入力された送信データ(TXD)を差動信号に変換して通信線LNに出力するものである。一方、受信回路35は、メイン電子制御装置10の受信回路15と同一構成にされ、通信線LNを流れる差動信号から受信データを生成する一方、通信線LNを流れる差動信号に基づき、通信クランク信号(SYNCO)を生成して、これをマイコン31に入力するものである。
【0041】
サブ電子制御装置30のマイコン31は、メモリ31aに記録されたプログラムに従って、エンジン制御に係る処理及び他の電子制御装置との通信に係る処理等を実行するが、この際には、通信回路33が生成した通信クランク信号(SYNCO)に基づき、クランク角の変化に合わせてエンジン制御に係る処理を実行する。そして、このエンジン制御に係る処理等によって生成されたデータを、順次送信データ(TXD)として通信回路33に入力する。一方で、通信回路33により生成された受信データ(RXD)を、図示しない内蔵の受信バッファに格納して処理する。
【0042】
尚、メイン電子制御装置10の送信回路14による送信データ(TXD)を差動信号として通信線LNに出力する動作、及び、各サブ電子制御装置30の送信回路34による送信データ(TXD)を差動信号として通信線LNに出力する動作の夫々は、所定の通信プロトコルに従って、マイコン11,31による通信調停により、互いに重複しないように実行される。周知のように、車載ネットワークの通信プロトコルであるCAN方式では、CSMA(Carrier Sense Multiple Access)/CA(Collision Avoidance)方式による通信調停が行われる。
【0043】
続いて、本実施例の車両制御システム1で用いられる差動信号の種類と、通信回路13,33を構成する送信回路14,34及び受信回路15,35の詳細構成とを図3及び図4を用いて説明する。
【0044】
図3に示すように、本実施例の車両制御システム1では、差動信号として、三つの異なる信号が伝送される。具体的に、入力回路17から通信回路13に入力されるクランク信号(SYNCI)の信号レベルがロウ(インアクティブレベル)であり、且つ、送信データ(TXD)としてマイコン11,31から通信回路13,33に入力される値が「1」であるとき、通信線LNには、第一の差動信号として、3.5Vのシングルエンド信号(COMH)と1.5Vのシングルエンド信号(COML)との組合せからなる差動信号が伝送される。
【0045】
一方、入力回路17から通信回路13に入力されるクランク信号(SYNCI)の信号レベルがロウ(インアクティブレベル)であり、且つ、送信データ(TXD)としてマイコン11,31から通信回路13,33に入力される値が「0」であるとき、通信線LNには、第二の差動信号として、2.5Vのシングルエンド信号(COMH)と、2.5Vのシングルエンド信号(COML)との組合せからなる電位差0Vの差動信号が伝送される。
【0046】
また、入力回路17から通信回路13に入力されるクランク信号の信号レベルがハイ(アクティブレベル)であるときには、通信線LNには、第三の差動信号として、5Vのシングルエンド信号(COMH)と0Vのシングルエンド信号(COML)との組合せからなる差動信号が伝送される。尚、第三の差動信号は、通信調停の手続きについては行われることなく、クランク信号(SYNCI)の信号レベルがハイ(アクティブレベル)となった時点で、メイン電子制御装置10の送信回路14の機能により通信線LNに入力される。このとき、通信線LNでは、電子制御装置10,30によるデータ送信動作の実行の有無にかかわらず、第三の差動信号が伝送される。
【0047】
図4(A)には、このような第一〜第三の差動信号を通信線LNに入力可能なメイン電子制御装置10の送信回路14の構成を示す。図4(A)に示すように、送信回路14は、インバータIV1,IV2,IV3,IV4と、トランジスタTR1,TR2,TR3,TR4と、抵抗R11,R12と、を備える。
【0048】
この送信回路14によれば、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)がロウ且つマイコン11からの入力が値「1」(ハイ)であるとき、N型トランジスタTR1はオンとなり、P型トランジスタTR2はオンとなり、N型トランジスタTR3はオフとなり、P型トランジスタTR4はオフとなり、通信線LNには、上記第一の差動信号が伝送される。また、この送信回路14によれば、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)がロウ且つマイコン11からの入力(TXD)が値「0」であるとき、N型トランジスタTR1はオフとなり、P型トランジスタTR2はオフとなり、N型トランジスタTR3はオフとなり、P型トランジスタTR4はオフとなり、通信線LNには、上記第二の差動信号が伝送される。
【0049】
また、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)がハイ(アクティブレベル)であるとき、N型トランジスタTR3はオンとなって第二の信号線L2は接地され、P型トランジスタTR4はオンとなって第一の信号線L1には電源電圧(5V)が印加される。これによって、トランジスタTR1,TR2の状態によらず、通信線LNには、上記第三の差動信号が伝送される。このようにして送信回路14は、通信線LNに第一〜第三の差動信号を切り替えて出力する。一方、サブ電子制御装置30の送信回路34は、周知の差動通信用の送信回路と同様の構成にされる。
【0050】
この他、メイン電子制御装置10及びサブ電子制御装置30の受信回路15,35は、図4(B)に示す回路構成にされる。具体的に、受信回路15は、比較器CM0,CM1,CM2と、AND回路AGと、抵抗R31,R32,R33とを備える。入力端子に信号線L1,L2が接続された比較器CM0は、信号線L1の電位が信号線L2より高いとき、受信データ(RXD)として値「1」を出力し、信号線L1の電位が信号線L2の電位以下であるとき、受信データ(RXD)として値「0」を出力する。
【0051】
一方、比較器CM1のプラス入力端子には、信号線L1が接続され、比較器CM1のマイナス入力端子には、抵抗R31を介して5V電源が接続されている。このマイナス入力端子には、抵抗R31を介して3.5Vより大きく5V未満の固定電圧(例えば4V)が印加される。即ち、受信回路15,35を構成する比較器CM1は、第三の差動信号が通信線LNにおいて伝送されている場合には、値「1」を出力し、第一及び第二の差動信号のいずれかが通信線LNにおいて伝送されている場合には、値「0」を出力するように動作する。
【0052】
この他、比較器CM2のマイナス入力端子には、信号線L2が接続され、比較器CM2のプラス入力端子には、抵抗R31,R32を介して5V電源が接続されている。このプラス入力端子には、抵抗R31,R32を介して0Vより大きく1.5V未満の固定電圧(例えば1V)が印加される。即ち、受信回路15,35を構成する比較器CM2は、第三の差動信号が通信線LNにおいて伝送されている場合には、値「1」を出力し、第一及び第二の差動信号のいずれかが通信線LNにおいて伝送されている場合には、値「0」を出力する。
【0053】
そして、AND回路AGは、比較器CM1,CM2からの出力信号に基づき、第三の差動信号が通信線LNにおいて伝送されている場合には、値「1」を出力し、第一及び第二の差動信号のいずれかが通信線LNにおいて伝送されている場合には、値「0」を出力する。このAND回路AGの出力信号は、上述した通信クランク信号(SYNCO)に対応する。即ち、AND回路AGは、第三の差動信号の入力パターンに応じて信号レベルがハイ(アクティブレベル)とロウ(インアクティブレベル)のとの間で変化する信号であって、通信線LNの伝送信号が第三の差動信号に切り替わる度に、信号レベルがハイ(アクティブレベル)に変化し、通信線LNの伝送信号が第三の差動信号からデータ伝送用の差動信号である第一又は第二の差動信号に切り替わる度に、信号レベルがロウ(インアクティブレベル)に変化する通信クランク信号(SYNCO)を生成し、これを自装置のマイコン11,31に入力する。
【0054】
本実施例では、このような受信回路15,35の構成により、クランク信号の疑似信号(通信クランク信号)を生成し、これを自装置のマイコン11,31に入力する。
続いて、マイコン11,31の処理動作について説明する。メイン電子制御装置10のマイコン11及び各サブ電子制御装置30のマイコン31は、図5に示すクランク信号監視処理を繰返し実行することで、通信クランク信号(SYNCO)の信号レベルの変化に応じた処理を実行する。
【0055】
クランク信号監視処理を開始すると、マイコン11,31は、自装置の通信回路13,33から入力される通信クランク信号(SYNCO)がアクティブレベル(ハイ)に変化したか否かを判断する。即ち、通信クランク信号(SYNCO)のアクティブエッジ(立ち上がりエッジ)を検出したか否かを判断する(S110)。そして、アクティブエッジが検出されていないと判断すると(S110でNo)、S115に移行する。一方、S115では、通信クランク信号(SYNCO)がインアクティブレベル(ロウ)に変化したか否かを判断する。即ち、通信クランク信号(SYNCO)のインアクティブエッジ(立ち下がりエッジ)を検出したか否かを判断する。そして、通信クランク信号(SYNCO)のインアクティブエッジが検出されていないと判断すると(S115でNo)、当該クランク信号監視処理を一旦終了し、次の周期で、再度S110からクランク信号監視処理を開始する。尚、マイコン11,31は、通信クランク信号(SYNCO)のアクティブエッジ又はインアクティブエッジが検出される時間間隔よりも十分短い周期で、繰返しクランク信号監視処理を実行する。
【0056】
通信クランク信号(SYNCO)のアクティブエッジが検出されると(S110でYes)、マイコン11,31は、通信許可フラグをオフに設定し(S120)、クランクフラグをオンに設定する(S130)。通信許可フラグは、後述する送信制御処理に対して、データ送信可能な状態に通信線LNがあるか否かを通知するためのフラグである。通信許可フラグは、通信クランク信号(SYNCO)がアクティブレベルであるとき、換言すれば通信線LNにおいて第三の差動信号が伝送されているときオフに設定され、通信クランク信号(SYNCO)がインアクティブレベルであるとき、換言すれば通信線LNにおいて第三の差動信号が伝送されていないときオンに設定される。この他、クランクフラグは、後述する受信制御処理に対して、データ送信が中断された状態にあるか否かを通知するためのフラグであり、通信クランク信号(SYNCO)がアクティブレベルであるときオンに設定され、通信クランク信号(SYNCO)がインアクティブレベルであるときにオフに設定される。
【0057】
S130での処理を終えると、マイコン11,31は、S140に移行し、今回入力された通信クランク信号(SYNCO)に基づきクランク角を更新する。例えば、通信クランク信号(SYNCO)が、クランク角が10度進む度にアクティブレベルに変化する信号である場合、ここでは、クランク角を10度更新する。尚、クランク角の原点位置は、カム角センサの出力信号から特定される。
【0058】
S140での処理を終えると、マイコン11,31は、S150に移行し、エンジン制御に係る処理の内、クランク信号に同期して実行すべき処理(以下「クランク信号同期処理」と表現する。)を実行する。例えば、サブ電子制御装置30におけるマイコン31は、メイン電子制御装置10から通知された燃料噴射時期が到来したか否かを、S140で更新されたクランク角に基づき判断し、到来した場合には、インジェクタを駆動して燃料噴射を行う処理を、上記クランク信号同期処理として実行する。この他、サブ電子制御装置30は、インジェクタに設置された圧力センサ等の値を取得して、燃料噴射制御に関する学習結果を送信する処理を、上記クランク信号同期処理として実行する構成にすることができる。
【0059】
マイコン11,31は、このようなクランク信号同期処理の実行を終了すると、当該クランク信号監視処理を一旦終了し、次の周期で再度S110から処理を開始する。そして、通信クランク信号(SYNCO)のインアクティブエッジ(立ち下がりエッジ)を検出すると(S115でYes)、上述した通信許可フラグをオンに設定すると共に(S160)、上述したクランクフラグをオフに設定し(S170)、当該クランク信号同期処理を終了する。
【0060】
続いて、メイン電子制御装置10のマイコン11及び各サブ電子制御装置30のマイコン31が実行する車両制御処理について説明する。本実施例では、エンジン制御に係る処理を実行するに際しては、このエンジン制御に係る処理と、エンジン制御に係る処理にて生成された送信対象のデータをキューに登録する処理と、を含む車両制御処理を実行する。図6は、この車両制御処理の内容を表すフローチャートである。即ち、マイコン11,31は、通信クランク信号(SYNCO)と同期してS150でエンジン制御に係る処理を実行する際には、上記クランク信号同期処理として、S150で図6に示す車両制御処理を実行し、通信クランク信号(SYNCO)と非同期でエンジン制御に係る処理を実行する際には、このエンジン制御に係る処理の実行タイミングが到来すると、図6に示す車両制御処理を実行する。
【0061】
車両制御処理を開始すると、マイコン11,31は、該当するエンジン制御に係る処理を実行する(S210)。例えば、メイン電子制御装置10のマイコン11は、エンジン制御に係る処理として、各気筒における最適な燃料噴射量及び燃料噴射時期を計算し、この計算結果に基づき、各気筒への燃料噴射量及び燃料噴射時期の指令値を格納した送信対象のデータを生成する処理を実行する。サブ電子制御装置30のマイコン31が実行するエンジン制御に係る処理の例は、上述した通りである。
【0062】
そして、エンジン制御に係る処理を実行すると(S210)、マイコン11,31は、自装置において実行したエンジン制御に係る処理によって送信対象のデータが生成されたか否かを判断し(S220)、送信対象のデータが生成されていないと判断すると(S220でNo)、当該車両制御処理を終了する。
【0063】
一方、送信対象のデータが生成されたと判断すると(S220でYes)、マイコン11,31は、S230に移行し、送信対象データを、送信待ちデータとしてキューに登録する。この際には、送信待ちデータに対して、受付番号ReqNoを付与し、送信待ちデータを、受付番号ReqNoと関連付けて、キューに登録する。尚、受付番号ReqNoの初期値はゼロである。S230での処理を終えると、マイコン11,31は、受付番号ReqNoを1インクリメントして、次にキューに登録する送信待ちデータの受付番号ReqNoを更新する(S240)。その後、当該車両制御処理を終了する。
【0064】
続いて、メイン電子制御装置10のマイコン11及び各サブ電子制御装置30のマイコン31が繰返し実行する送信制御処理について説明する。図7は、送信制御処理の内容を表すフローチャートである。但し、図7に示す送信制御処理の一部のステップは、サブ電子制御装置30において実行されない。図7では、このようなサブ電子制御装置30では実行されないS330〜S350の処理を、破線で囲んで示す。以下では、送信制御処理としてマイコン11が実行する処理の内容を説明し、マイコン31が実行する処理の内容を省略するが、マイコン31においては、S320でYesと判断すると、次のステップであるS370に移行するものとして解釈されたい。言うまでもないが、この送信制御処理においてマイコン31が送信データ(TXD)を入力する対象は、自装置の通信回路33である。
【0065】
送信制御処理を開始すると、マイコン11は、まず、自装置の送信フラグがオンに設定されているか否かを判断する(S310)。送信フラグは、オンであるときには、自装置の通信回路13を介したデータ送信動作が行われていることを示し、オフであるときには、自装置の通信回路13を介したデータ送信動作が終了していることを示すフラグである。
【0066】
そして、送信フラグがオンに設定されていると判断すると(S310でYes)、当該送信制御処理を一旦終了して、再度、S310から処理を開始する。
一方、送信フラグがオフに設定されていると判断すると(S310でNo)、上述した通信許可フラグがオンに設定されているか否かを判断する(S320)。そして、通信許可フラグがオフに設定されていると判断すると(S320でNo)、当該送信制御処理を一旦終了し、通信許可フラグがオンに設定されるまで待機する。一方、通信許可フラグがオンに設定されていると判断すると(S320でYes)、次のステップに移行する。即ち、メイン電子制御装置10のマイコン11によれば、S330に移行する。
【0067】
S330に移行すると、マイコン11は、入力回路19から入力されるカム信号の信号レベルがハイからロウ又はロウからハイに変化したか否かを判断する(S330)。そして、変化していないと判断すると(S330でNo)、S370に移行する。一方、変化したと判断すると(S330でYes)、S340に移行する。尚、S330での判断は、カム信号の信号レベルが変化する度に、その変化後のカム信号の信号レベル(ハイ/ロウ)を記憶し、次回以降に実行する送信制御処理にて、上記記憶した信号レベルと、現在の信号レベルとを比較することにより実現することができる。
【0068】
S340に移行すると、マイコン11は、送信ポインタの値SndNoを、1デクリメントした値に更新する。尚、送信ポインタは、次に送信すべき送信待ちデータの受付番号を表すものである。また、この処理を終えると、マイコン11は、S350に移行し、上記変化後のカム信号のハイ/ロウを表すカム状態データを生成すると共に、このカム状態データに対し、送信ポインタが示す現在値と同一の受付番号を割り当てる。更には、このカム状態データを、送信待ちデータとして上記受付番号と共にキューに登録する。本実施例によれば、このようにカム状態データをキューに登録することによって、カム状態データが他の送信待ちデータに優先して送信されるようにする。尚、S340で送信ポインタの値SndNoを1デクリメントするのは、1デクリメントする前の送信ポインタの値SndNoに対応する送信待ちデータについては、まだ送信されていない一方、それより一つ前の受付番号を有するデータについては、既に送信されてキューから削除された状態にあるためである。マイコン11は、S350の処理を終えると、S370に移行する。
【0069】
S370に移行すると、マイコン11は、自装置のキューに、未処理の送信待ちデータが存在するかを判断する。具体的には、次に発生する送信待ちデータに対して割り当てるべき受付番号ReqNoと、送信ポインタが示す値SndNoとを比較して、送信ポインタが示す値SndNoが受付番号ReqNo未満であれば、未処理の送信待ちデータが存在すると判断し、送信ポインタが示す値SndNoが受付番号ReqNo以上であれば、未処理の送信待ちデータは存在しないと判断する。
【0070】
ここで、未処理の送信待ちデータが存在しないと判断すると(S370でNo)、マイコン11は、当該送信制御処理を終了し、未処理の送信待ちデータが存在すると判断すると(S370でYes)、送信ポインタSndNoが示す値に一致する受付番号ReqNoが割り当てられた送信待ちデータを、送信データ(TXD)として自装置の通信回路13に入力することによって、自装置の通信回路13を通じ、この送信データ(TXD)を他の電子制御装置に向けて送信する(S380)。マイコン11による通信回路13への送信データ(TXD)の入力によって、送信データは、差動信号に変換されて通信線LNに出力される。但し、送信待ちデータを、送信データ(TXD)として出力するデータ送信動作には、通信調停などの通信プロトコルに従う通信手順も含まれるものとする。
【0071】
また、このようなデータ送信動作の開始後には、送信フラグをオンに設定する(S390)。その後、マイコン11は、当該送信制御処理を一旦終了し、再度、S310から処理を開始する。
【0072】
尚、送信フラグは、次に説明する受信制御処理によってオフに設定される。メイン電子制御装置10のマイコン11及び各サブ電子制御装置30のマイコン31は、図8に示す受信制御処理を繰返し実行する。
【0073】
受信制御処理を開始すると、マイコン11,31は、自装置の受信バッファに受信データが登録されているか否かを判断することにより、バッファからのデータ取込動作の完了していない未処理の受信データが存在するか否かを判断する。そして、未処理の受信データが存在しないと判断すると(S410でNo)、当該受信制御処理を一旦終了する。
【0074】
一方、未処理の受信データが存在すると判断すると(S410でYes)、自装置のクランクフラグがオンに設定されているか否かを判断し(S420)、クランクフラグがオンに設定されていると判断すると(S420でYes)、受信バッファに登録されている受信データを破棄すると共に(S430)、送信フラグをオフに設定して(S440)、当該受信制御処理を終了する。
【0075】
尚、S440で送信フラグをオフに設定するのは、第三の差動信号が通信線LNに入力されることでデータ送信動作が中断された送信データを、再送信するためである。本実施例では、上述したように送信ポインタが示す値SndNoに対応する受付番号の送信待ちデータを送信データとして処理するので、送信ポインタの値SndNoを更新せずに、送信フラグをオフに設定すると、上述したS380の処理によって、再度、同じ送信待ちデータが送信データ(TXD)として通信回路13,33に出力されることになる。
【0076】
更に付言すると、S430,S440の処理については電子制御装置10,30間の差動通信に異常が生じている場合にも実行することができる。即ち、S420では、クランクフラグがオンに設定されているか、又は、電子制御装置10,30間の差動通信に異常が生じていると、肯定判断し、クランクフラグがオフに設定され、且つ、電子制御装置10,30間の差動通信に異常が生じていない場合に限って、否定判断する構成にすることができる。
【0077】
S420で否定判断すると(S420でNo)、マイコン11,31は、S460に移行し、受信バッファに登録されている受信データが自装置からの送信データであるか否かを判断する(S460)。そして、受信バッファに登録されている受信データが自装置からの送信データであると判断すると(S460でYes)、送信ポインタの値SndNoを、1インクリメントすることで、送信データ(TXD)として出力する送信待ちデータを受付番号が次のデータに変更する(S470)。
【0078】
その後、マイコン11,31は、受信バッファに登録されている上記受信データを破棄し、送信フラグをオフに設定した後(S480)、当該受信制御処理を一旦終了する。
一方、受信バッファに登録されている受信データが自装置からの送信データではないと判断すると(S460でNo)、マイコン11,31は、S490に移行して、当該受信データを自装置の受信バッファから取り込む。マイコン11,31は、このようにして取り込んだデータを更に分類して、各データを、このデータを必要としている自マイコン11,31内のタスクに引き渡す。
【0079】
例えば、サブ電子制御装置30のマイコン31は、メイン電子制御装置10から燃料噴射量及び燃料噴射時期の情報を含むデータを受信した場合、燃料噴射制御に係るタスクに、この受信データを引き渡す。燃料噴射制御に係るタスクは、この受信データが示す燃料噴射量及び噴射時期の情報に基づいて、該当する気筒の燃料噴射制御を行う。例えば、サブ電子制御装置30のマイコン31は、燃料噴射制御に係るタスクの一つとして実行するクランク信号同期処理(S150)において、上記受信データが示す燃料噴射量及び噴射時期の情報に基づいて、該当する気筒の燃料噴射制御を行う。
【0080】
そして、S490での処理を終えると、マイコン11,31は、当該受信制御処理を一旦終了する。
以上に本実施例の車両制御システム1の構成について説明したが、本実施例の車両制御システム1によれば、図9に示すように、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)がアクティブレベル(ハイ)に変化する度に、このクランク信号がインアクティブレベル(ロウ)に変化するまでの期間、特殊な差動信号である第三の差動信号が通信線LNに入力されて、クランク信号がアクティブレベルに変化したことがサブ電子制御装置30に伝達される。そして、サブ電子制御装置30では、この特殊な差動信号の入力パターンに合わせて、信号レベルがアクティブレベルとインアクティブレベルとの間で変化するクランク信号の擬似信号である通信クランク信号(SYNCO)を生成し、これをマイコン31に入力する。そしてマイコン31では、この通信クランク信号(SYNCO)に基づいて、クランク角の変化に応じたエンジン制御に係る処理(図9に示すクランク信号(NE)同期処理)を実行する。従って、本実施例によれば、サブ電子制御装置30にクランク角センサ21の出力信号を入力するための入力回路17を、メイン電子制御装置10と同様に設けなくとも、サブ電子制御装置30にクランク信号に同期した処理を適切に実行させることができる。
【0081】
また、本実施例によれば、メイン電子制御装置10においても、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)ではなく通信クランク信号(SYNCO)に基づいて、クランク角の変化に応じたエンジン制御に係る処理(図9に示すクランク信号(NE)同期処理)を実行する。従って、メイン電子制御装置10とサブ電子制御装置30との間での処理動作の時間的なズレを抑えて、エンジン制御に係る処理を複数の電子制御装置10,30による協働により適切に実行することができる。
【0082】
また、本実施例によれば、信号遅延やノイズによる影響の少ない通信線LNや通信回路13,33を通じてクランク信号に関する情報を伝達するので、サブ電子制御装置30を含めた各電子制御装置10,30に、入力回路17を設けて、クランク角センサ21の出力信号を直接各電子制御装置10,30に入力する場合よりも、高精度に各電子制御装置10,30においてクランク信号に同期した処理を実行することができる。
【0083】
また、本実施例によれば、マイコン11を介さずに通信回路13において、クランク信号がアクティブレベルに変化したことを示す上記特殊な差動信号(第三の差動信号)を生成するので、マイコン11を介してこのような差動信号を生成する場合よりも、上記特殊な差動信号の伝送遅延を抑えることができて、クランク信号(SYNCI)に同期した処理を各電子制御装置10,30において高精度に実行することができる。
【0084】
また、上記特殊な差動信号が伝送される期間においては、電子制御装置10,30間でのデータ通信が中断されるが、本実施例の電子制御装置10,30によれば、送信ポインタの値SndNoを変更せずに、一旦、送信フラグをオフに切り替えることにより、中断された送信データを、送信元から再送信するようにした。従って、本実施例によれば、クランク信号がアクティブレベルに変化したことを示す差動信号の通信線LNを用いた伝送と、通信線LNを用いたデータ通信を、適切に両立させることができる。
【0085】
また、本実施例によればカム角センサ23の出力信号に関する情報についても、データ通信により各サブ電子制御装置30に伝送するようにしたので、カム角センサ23に対応する入力回路19についてもサブ電子制御装置30に設けなくて済み、大変便利である。
【0086】
ところで、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、上記実施例においては、クランク信号(SYNCI)を、マイコン11を介さずに入力回路17から直接通信回路13に入力するように、メイン電子制御装置10を構成したが、メイン電子制御装置10は、図10に示すように、クランク信号(SYNCI)を、マイコン11’を介して入力回路17から通信回路13に入力する構成にされてもよい(第一変形例)。このようにクランク信号(SYNCI)を入力回路17からマイコン11’に入力する構成を採用した変形例の車両制御システム1’によれば、通信回路13に対するクランク信号(SYNCI)の入力周期を容易に変更することができて、クランク角センサの規格の違いを吸収し、一律なクランク信号(SYNCI)を通信回路13に入力することができる。例えば、マイコン11’には、クランク信号(SYNCI)の変換機能11bを設けることができ、マイコン11’は、この変換機能11bによって、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)を、クランク角が規定量変化する度に信号レベルがアクティブレベルに変化するクランク信号に変換して、通信回路13に入力する構成にすることができる。例えば、クランク角が5度や6度変化する毎に信号レベルがアクティブとなるクランク信号を出力するクランク角センサからの出力信号を、車両制御システム1’が要求するクランク角毎(例えば10度毎)に信号レベルがアクティブとなるクランク信号(SYNCI)に変換して、通信回路13に入力する処理をマイコン11’に実行させることができる。このような処理をマイコン11’に実行させれば、クランク角センサ毎の規格の違いをマイコン11’にて容易に吸収して通信回路13に適切なクランク信号を入力することができる。
【0087】
また、上記実施例によれば、第三の差動信号として、第一の信号線L1を5Vとし、第二の信号線L2を0Vとする差動信号を通信線LNに入力するようにしたが、第三の差動信号は、第一の信号線L1を5Vに切り替えただけの差動信号(図12参照)とされてもよい(第二変形例)。
【0088】
即ち、送信回路14は、図11(A)に示すような接続関係でインバータIV41,IV42,IV43及びトランジスタTR41,TR42,TR43を備えた送信回路40に変更されてもよい。この回路構成によれば、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)がロウ且つマイコン11からの入力(TXD)が値「1」(ハイ)であるとき、N型トランジスタTR41はオンとなり、P型トランジスタTR42はオンとなり、P型トランジスタTR43はオフとなるので、通信線LNには、図12に示すように上記第一の差動信号が伝送される。一方、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)がロウ且つマイコン11からの入力(TXD)が値「0」であるとき、N型トランジスタTR41はオフとなり、P型トランジスタTR42はオフとなり、P型トランジスタTR43はオフとなるので、通信線LNには、上記第二の差動信号が伝送される。
【0089】
また、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)がハイ(アクティブレベル)であるとき、P型トランジスタTR43はオンとなって、図12に示すように、トランジスタTR42の状態によらず、第一の信号線L1は電源電圧に対応する5Vに設定される。
【0090】
このような送信回路40によっても、適切にサブ電子制御装置30に対してクランク信号の情報を伝送することができる。但し、このような送信回路40を用いる場合には、メイン電子制御装置10及びサブ電子制御装置30の受信回路15,35を、図11(B)に示す受信回路50に変更する。
【0091】
即ち、通信クランク信号(SYNCO)を生成するための比較器CM51については、プラス入力端子に第一の信号線L1を接続し、マイナス入力端子には、3.5Vより大きく5V未満の固定電圧(例えば4V)を印加するための回路を接続した状態で受信回路50に設ける。このように構成された図11(B)に示す受信回路50によれば、第三の差動信号が通信線LNを伝送している期間においては、比較器CM51から出力される通信クランク信号(SYNCO)の信号レベルがアクティブレベルとなり、それ以外の期間においては、通信クランク信号(SYNCO)の信号レベルがインクアクティブレベルとなる。送信回路40の構成に合わせて、このように受信回路50を構成すれば、適切にサブ電子制御装置30に対してクランク信号の情報を伝送することができる。
【0092】
この他、上記第三の差動信号は、第一の信号線L2を0Vに切り替えただけの差動信号(図14参照)とされてもよい(第三変形例)。
即ち、送信回路14は、図13(A)に示すような接続関係でインバータIV61,IV62,IV63,IV64及びトランジスタTR61,TR62,TR63を備えた送信回路60に変更されてもよい。この回路構成によれば、入力回路17から入力されるクランク信号(SYNCI)がハイであるとき、N型トランジスタTR63はオンとなって、図14に示すように、トランジスタTR61の状態によらず、第一の信号線L2は0Vに設定され、第一の信号線L1は、マイコン11からの入力(TXD)に対応した電位に設定される。
【0093】
更に、この送信回路60の構成に合わせては、メイン電子制御装置10及びサブ電子制御装置30の受信回路15,35を、図13(B)に示す受信回路70に変更することができる。
【0094】
即ち、通信クランク信号(SYNCO)を生成するための比較器CM71については、マイナス入力端子に第二の信号線L2を接続し、プラス入力端子には、0Vより大きく1.5V未満の固定電圧(例えば1V)を印加するための回路を接続した状態で受信回路70に設けることができる。このような構成にされた図13(B)に示す受信回路70によれば、第三の差動信号が通信線LNを伝送している期間においては、比較器CM71から出力される通信クランク信号(SYNCO)の信号レベルがアクティブレベルとなり、それ以外の期間においては、通信クランク信号(SYNCO)の信号レベルがインクアクティブレベルとなる。従って、送信回路60及び受信回路70をこのように構成すれば、適切にサブ電子制御装置30に対してクランク信号の情報を伝送することができる。
【0095】
この他、上記実施例では、電子制御装置10,30にマイコンを設けたが、マイコンに代えて、専用のICを設けてもよいことは言うまでもない。
また、図6、図7では、キューイングした順番でデータが送信される例を用いて実施例の説明を行ったが、データを送信する順番はキューイングした順番に限定されない。例えばCANにおいてデータ毎に設定される優先順位に従い、データを送信する構成にしても良い。
【0096】
最後に、用語間に対応関係について説明する。入力回路17(及びマイコン11’が備えるクランク信号の変換機能11b)によって実現される処理は、クランク信号入力手段によって実現される処理の一例に対応し、入力回路17は、クランク信号入力回路の一例に対応する。また、送信回路14,40,60によって実現される処理及びマイコン11が実行するS310,S320,S340,S370,S380,S390,S440,S470,S480等の処理は、送信制御手段によって実現される処理の一例に対応する。また、受信回路15,35,50,70が備える比較器CM0は、データ受信手段(回路)の一例に対応し、受信回路15,35,50,70が備える比較器CM0以外の回路構成は、擬似信号生成手段(回路)の一例に対応する。この他、入力回路19は、カム信号入力手段(回路)の一例に対応し、マイコン11が実行するS330,S350の処理は、カム状態データ生成手段によって実現される処理の一例に対応する。
【符号の説明】
【0097】
1,1’…車両制御システム、10,30…電子制御装置、11,31,11’…マイクロコンピュータ(マイコン)、11a,31a…メモリ、11b…変換機能、13,33…通信回路、14,34,40,60…送信回路、15,35,50,70…受信回路、17,19…入力回路、21…クランク角センサ、23…カム角センサ、AG…AND回路、CM0,CM1,CM2,CM51,CM71…比較器、IV1〜4,IV41〜43,IV61〜64…インバータ、TR1〜4,TR41〜43,TR61〜63…トランジスタ、R11,R12,R31〜R33…抵抗、L1,L2…信号線、LN…通信線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動通信用の通信線に接続された複数の車両制御装置を備え、車両に搭載された内燃機関の制御を、通信を伴う前記複数の車両制御装置の協働によって実現する車両制御システムであって、
前記複数の車両制御装置の一つである第一の車両制御装置は、
前記内燃機関におけるクランク角の変化に応じてアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で信号レベルが変化するクランク信号を入力するクランク信号入力手段と、
送信対象のデータを、データ伝送用の差動信号に変換して前記通信線に出力する一方、前記クランク信号入力手段から入力される前記クランク信号の信号レベルが前記アクティブレベルに変化した場合には、所定期間、前記データ伝送用の差動信号に代えて、前記データ伝送用の差動信号とは異なる特殊な差動信号を前記通信線に出力する送信制御手段と、
を備え、
前記複数の車両制御装置の内、前記第一の車両制御装置とは異なる第二の車両制御装置は、
前記通信線からの入力信号に基づき、前記データ伝送用の差動信号に変換されて前記通信線に出力された前記送信対象のデータを復元してなる受信データを生成するデータ受信手段と、
前記通信線からの入力信号に基づき、前記特殊な差動信号の入力パターンに応じて信号レベルがアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で変化する信号であって、前記特殊な差動信号が入力される度に信号レベルがアクティブレベルに変化する前記クランク信号の擬似信号を生成する擬似信号生成手段と、
を備え、前記内燃機関の制御に係る処理を、前記受信データ及び自装置が備える前記疑似信号生成手段によって生成された前記疑似信号に基づいて実行すること
を特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
前記第一の車両制御装置は、前記第二の車両制御装置と同様に、前記通信線からの入力信号に基づき、前記クランク信号の前記擬似信号を生成する前記擬似信号生成手段を備え、前記内燃機関の制御に係る処理を、自装置が備える前記疑似信号生成手段によって生成された前記疑似信号に基づいて実行する構成にされていること
を特徴とする請求項1記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記第一の車両制御装置が備える前記送信制御手段は、前記クランク信号の信号レベルが前記アクティブレベルに変化して前記特殊な差動信号の前記通信線への出力動作が開始されたことを原因として前記データ伝送用の差動信号に変換して前記通信線に出力する動作が中断された前記送信対象のデータを、前記特殊な差動信号の前記通信線への出力動作が終了した後、再度、前記データ伝送用の差動信号に変換して前記通信線に出力することによって、前記送信対象のデータを再送信する構成にされていること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記第一の車両制御装置は、
前記内燃機関におけるカム角の変化に応じて信号レベルがアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で変化するカム信号を入力するカム信号入力手段と、
前記カム信号入力手段から入力される前記カム信号の信号レベルがアクティブレベルに切り替わると、前記カム信号の信号レベルがアクティブレベルであることを示すカム状態データを、前記送信対象のデータとして生成するカム状態データ生成手段と、
を備え、
前記第一の車両制御装置が備える前記送信制御手段は、前記カム状態データ生成手段によって生成された前記カム状態データを、他の前記送信対象のデータに優先して、前記データ伝送用の差動信号に変換し、前記通信線へ出力すること
を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項記載の車両制御システム。
【請求項5】
差動通信用の通信線に接続された複数の車両制御装置を備え、車両に搭載された内燃機関の制御を、通信を伴う前記複数の車両制御装置の協働によって実現する車両制御システムであって、
前記複数の車両制御装置の一つである第一の車両制御装置は、
送信回路と、
前記内燃機関の制御に係る処理を実行すると共に、送信対象のデータを前記送信回路に入力するマイクロコンピュータと、
前記内燃機関におけるクランク角の変化に応じてアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で信号レベルが変化するクランク信号を前記送信回路に入力するクランク信号入力回路と、
を備え、前記送信回路として、前記マイクロコンピュータから入力される前記送信対象のデータを、データ伝送用の差動信号に変換して前記通信線に出力する一方、前記クランク信号入力回路から入力される前記クランク信号の信号レベルが前記アクティブレベルに変化した場合には、所定期間、前記データ伝送用の差動信号に代えて、前記データ伝送用の差動信号とは異なる特殊な差動信号を前記通信線に出力する回路を備えた構成にされ、
前記複数の車両制御装置の内、前記第一の車両制御装置とは異なる第二の車両制御装置は、
前記通信線からの入力信号に基づき、前記データ伝送用の差動信号に変換されて前記通信線に出力された前記送信対象のデータを復元してなる受信データを生成するデータ受信回路と、
前記通信線からの入力信号に基づき、前記特殊な差動信号の入力パターンに応じて信号レベルがアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で変化する信号であって、前記特殊な差動信号が入力される度に信号レベルがアクティブレベルに変化する前記クランク信号の擬似信号を生成する擬似信号生成回路と、
を備え、前記内燃機関の制御に係る処理を、前記受信データ及び自装置が備える前記疑似信号生成回路によって生成された前記疑似信号に基づいて実行する構成にされていること
を特徴とする車両制御システム。
【請求項6】
前記第一の車両制御装置が備える前記クランク信号入力回路は、前記送信回路に代えて、前記第一の車両制御装置が備える前記マイクロコンピュータに前記クランク信号を入力し、
前記第一の車両制御装置が備える前記マイクロコンピュータは、前記クランク信号入力回路から入力される前記クランク信号を、前記クランク角が規定量変化する度に信号レベルがアクティブレベルに変化する規定のクランク信号に変換して、前記送信回路に入力し、
前記送信回路は、前記マイクロコンピュータから入力される前記クランク信号に基づいて、前記特殊な差動信号を前記通信線に出力すること
を特徴とする請求項5記載の車両制御システム。
【請求項7】
前記第一の車両制御装置は、前記第二の車両制御装置と同様に、前記通信線からの入力信号に基づき、前記クランク信号の前記擬似信号を生成する前記擬似信号生成回路を備え、
前記第一の車両制御装置が備える前記マイクロコンピュータは、前記内燃機関の制御に係る処理を、自装置が備える前記疑似信号生成回路から入力される前記疑似信号に基づいて実行すること
を特徴とする請求項5又は請求項6記載の車両制御システム。
【請求項8】
前記第一の車両制御装置が備える前記マイクロコンピュータは、前記擬似信号生成回路から入力される前記擬似信号が前記アクティブレベルに変化したことを検知することによって、前記送信回路による前記特殊な差動信号の前記通信線への出力動作が開始されたことを検知すると、前記特殊な差動信号の前記通信線への出力動作が開始されたことを原因として前記送信回路による前記データ伝送用の差動信号に変換して前記通信線に出力する動作が中断された前記送信対象のデータを、前記特殊な差動信号の前記通信線への出力動作が終了した後、再度、前記送信回路に入力し、これによって、前記送信対象のデータを再送信すること
を特徴とする請求項7記載の車両制御システム。
【請求項9】
前記第一の車両制御装置は、前記内燃機関におけるカム角の変化に応じて信号レベルがアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で変化するカム信号を入力するカム信号入力回路を備え、
前記第一の車両制御装置が備える前記マイクロコンピュータは、前記カム信号入力回路から入力される前記カム信号の信号レベルがアクティブレベルに切り替わると、前記カム信号の信号レベルがアクティブレベルであることを示すカム状態データを、前記送信対象のデータとして生成し、当該カム状態データを、他の前記送信対象のデータに優先して、前記送信回路に入力すること
を特徴とする請求項5〜請求項8のいずれか一項記載の車両制御システム。
【請求項10】
差動通信用の通信線に接続され、前記通信線を通じて他の車両制御装置と通信することによって、前記他の車両制御装置と協働して車両に搭載された内燃機関の制御を行う車両制御装置であって、
前記内燃機関におけるクランク角の変化に応じてアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で信号レベルが変化するクランク信号を入力するクランク信号入力手段と、
送信対象のデータを、データ伝送用の差動信号に変換して前記通信線に出力する一方、前記クランク信号入力手段から入力される前記クランク信号の信号レベルが前記アクティブレベルに変化した場合には、所定期間、前記データ伝送用の差動信号に代えて、前記データ伝送用の差動信号とは異なる特殊な差動信号を前記通信線に出力する送信制御手段と、
を備え、前記特殊な差動信号によって、前記他の車両制御装置に対して前記クランク信号の信号レベルの変化を表す信号を伝送する構成にされていること
を特徴とする車両制御装置。
【請求項1】
差動通信用の通信線に接続された複数の車両制御装置を備え、車両に搭載された内燃機関の制御を、通信を伴う前記複数の車両制御装置の協働によって実現する車両制御システムであって、
前記複数の車両制御装置の一つである第一の車両制御装置は、
前記内燃機関におけるクランク角の変化に応じてアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で信号レベルが変化するクランク信号を入力するクランク信号入力手段と、
送信対象のデータを、データ伝送用の差動信号に変換して前記通信線に出力する一方、前記クランク信号入力手段から入力される前記クランク信号の信号レベルが前記アクティブレベルに変化した場合には、所定期間、前記データ伝送用の差動信号に代えて、前記データ伝送用の差動信号とは異なる特殊な差動信号を前記通信線に出力する送信制御手段と、
を備え、
前記複数の車両制御装置の内、前記第一の車両制御装置とは異なる第二の車両制御装置は、
前記通信線からの入力信号に基づき、前記データ伝送用の差動信号に変換されて前記通信線に出力された前記送信対象のデータを復元してなる受信データを生成するデータ受信手段と、
前記通信線からの入力信号に基づき、前記特殊な差動信号の入力パターンに応じて信号レベルがアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で変化する信号であって、前記特殊な差動信号が入力される度に信号レベルがアクティブレベルに変化する前記クランク信号の擬似信号を生成する擬似信号生成手段と、
を備え、前記内燃機関の制御に係る処理を、前記受信データ及び自装置が備える前記疑似信号生成手段によって生成された前記疑似信号に基づいて実行すること
を特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
前記第一の車両制御装置は、前記第二の車両制御装置と同様に、前記通信線からの入力信号に基づき、前記クランク信号の前記擬似信号を生成する前記擬似信号生成手段を備え、前記内燃機関の制御に係る処理を、自装置が備える前記疑似信号生成手段によって生成された前記疑似信号に基づいて実行する構成にされていること
を特徴とする請求項1記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記第一の車両制御装置が備える前記送信制御手段は、前記クランク信号の信号レベルが前記アクティブレベルに変化して前記特殊な差動信号の前記通信線への出力動作が開始されたことを原因として前記データ伝送用の差動信号に変換して前記通信線に出力する動作が中断された前記送信対象のデータを、前記特殊な差動信号の前記通信線への出力動作が終了した後、再度、前記データ伝送用の差動信号に変換して前記通信線に出力することによって、前記送信対象のデータを再送信する構成にされていること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記第一の車両制御装置は、
前記内燃機関におけるカム角の変化に応じて信号レベルがアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で変化するカム信号を入力するカム信号入力手段と、
前記カム信号入力手段から入力される前記カム信号の信号レベルがアクティブレベルに切り替わると、前記カム信号の信号レベルがアクティブレベルであることを示すカム状態データを、前記送信対象のデータとして生成するカム状態データ生成手段と、
を備え、
前記第一の車両制御装置が備える前記送信制御手段は、前記カム状態データ生成手段によって生成された前記カム状態データを、他の前記送信対象のデータに優先して、前記データ伝送用の差動信号に変換し、前記通信線へ出力すること
を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項記載の車両制御システム。
【請求項5】
差動通信用の通信線に接続された複数の車両制御装置を備え、車両に搭載された内燃機関の制御を、通信を伴う前記複数の車両制御装置の協働によって実現する車両制御システムであって、
前記複数の車両制御装置の一つである第一の車両制御装置は、
送信回路と、
前記内燃機関の制御に係る処理を実行すると共に、送信対象のデータを前記送信回路に入力するマイクロコンピュータと、
前記内燃機関におけるクランク角の変化に応じてアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で信号レベルが変化するクランク信号を前記送信回路に入力するクランク信号入力回路と、
を備え、前記送信回路として、前記マイクロコンピュータから入力される前記送信対象のデータを、データ伝送用の差動信号に変換して前記通信線に出力する一方、前記クランク信号入力回路から入力される前記クランク信号の信号レベルが前記アクティブレベルに変化した場合には、所定期間、前記データ伝送用の差動信号に代えて、前記データ伝送用の差動信号とは異なる特殊な差動信号を前記通信線に出力する回路を備えた構成にされ、
前記複数の車両制御装置の内、前記第一の車両制御装置とは異なる第二の車両制御装置は、
前記通信線からの入力信号に基づき、前記データ伝送用の差動信号に変換されて前記通信線に出力された前記送信対象のデータを復元してなる受信データを生成するデータ受信回路と、
前記通信線からの入力信号に基づき、前記特殊な差動信号の入力パターンに応じて信号レベルがアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で変化する信号であって、前記特殊な差動信号が入力される度に信号レベルがアクティブレベルに変化する前記クランク信号の擬似信号を生成する擬似信号生成回路と、
を備え、前記内燃機関の制御に係る処理を、前記受信データ及び自装置が備える前記疑似信号生成回路によって生成された前記疑似信号に基づいて実行する構成にされていること
を特徴とする車両制御システム。
【請求項6】
前記第一の車両制御装置が備える前記クランク信号入力回路は、前記送信回路に代えて、前記第一の車両制御装置が備える前記マイクロコンピュータに前記クランク信号を入力し、
前記第一の車両制御装置が備える前記マイクロコンピュータは、前記クランク信号入力回路から入力される前記クランク信号を、前記クランク角が規定量変化する度に信号レベルがアクティブレベルに変化する規定のクランク信号に変換して、前記送信回路に入力し、
前記送信回路は、前記マイクロコンピュータから入力される前記クランク信号に基づいて、前記特殊な差動信号を前記通信線に出力すること
を特徴とする請求項5記載の車両制御システム。
【請求項7】
前記第一の車両制御装置は、前記第二の車両制御装置と同様に、前記通信線からの入力信号に基づき、前記クランク信号の前記擬似信号を生成する前記擬似信号生成回路を備え、
前記第一の車両制御装置が備える前記マイクロコンピュータは、前記内燃機関の制御に係る処理を、自装置が備える前記疑似信号生成回路から入力される前記疑似信号に基づいて実行すること
を特徴とする請求項5又は請求項6記載の車両制御システム。
【請求項8】
前記第一の車両制御装置が備える前記マイクロコンピュータは、前記擬似信号生成回路から入力される前記擬似信号が前記アクティブレベルに変化したことを検知することによって、前記送信回路による前記特殊な差動信号の前記通信線への出力動作が開始されたことを検知すると、前記特殊な差動信号の前記通信線への出力動作が開始されたことを原因として前記送信回路による前記データ伝送用の差動信号に変換して前記通信線に出力する動作が中断された前記送信対象のデータを、前記特殊な差動信号の前記通信線への出力動作が終了した後、再度、前記送信回路に入力し、これによって、前記送信対象のデータを再送信すること
を特徴とする請求項7記載の車両制御システム。
【請求項9】
前記第一の車両制御装置は、前記内燃機関におけるカム角の変化に応じて信号レベルがアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で変化するカム信号を入力するカム信号入力回路を備え、
前記第一の車両制御装置が備える前記マイクロコンピュータは、前記カム信号入力回路から入力される前記カム信号の信号レベルがアクティブレベルに切り替わると、前記カム信号の信号レベルがアクティブレベルであることを示すカム状態データを、前記送信対象のデータとして生成し、当該カム状態データを、他の前記送信対象のデータに優先して、前記送信回路に入力すること
を特徴とする請求項5〜請求項8のいずれか一項記載の車両制御システム。
【請求項10】
差動通信用の通信線に接続され、前記通信線を通じて他の車両制御装置と通信することによって、前記他の車両制御装置と協働して車両に搭載された内燃機関の制御を行う車両制御装置であって、
前記内燃機関におけるクランク角の変化に応じてアクティブレベルとインアクティブレベルのとの間で信号レベルが変化するクランク信号を入力するクランク信号入力手段と、
送信対象のデータを、データ伝送用の差動信号に変換して前記通信線に出力する一方、前記クランク信号入力手段から入力される前記クランク信号の信号レベルが前記アクティブレベルに変化した場合には、所定期間、前記データ伝送用の差動信号に代えて、前記データ伝送用の差動信号とは異なる特殊な差動信号を前記通信線に出力する送信制御手段と、
を備え、前記特殊な差動信号によって、前記他の車両制御装置に対して前記クランク信号の信号レベルの変化を表す信号を伝送する構成にされていること
を特徴とする車両制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−104358(P2013−104358A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248880(P2011−248880)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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