車両検知システム
【課題】 センサの取り付け角度調整を精密に行うことなく、検知精度に優れる車両検知システムを提供する。
【解決手段】 道路100上の監視範囲10を通過する車両200を検知する車両検知システム1であり、検知対象が発する赤外線を感知するセンサ2と、センサ2から得られた入力レベル値を用いて、車両の有無を判定する車両有無判定部とを具える。センサ2として、複数のサーモパイル素子を利用する。監視範囲100には、各素子に基づく感知エリア11が複数形成される。車両有無判定部は、入力レベル値のうち、車両以外の物体が発する赤外線の量に基づく値を背景レベルとし、入力レベル値と背景レベルとの差に基づく値を比較値とし、この比較値と閾値との比較を感知エリア11ごとに行い、比較値が閾値以上となる感知エリアの数に応じて車両の有無を判定する。
【解決手段】 道路100上の監視範囲10を通過する車両200を検知する車両検知システム1であり、検知対象が発する赤外線を感知するセンサ2と、センサ2から得られた入力レベル値を用いて、車両の有無を判定する車両有無判定部とを具える。センサ2として、複数のサーモパイル素子を利用する。監視範囲100には、各素子に基づく感知エリア11が複数形成される。車両有無判定部は、入力レベル値のうち、車両以外の物体が発する赤外線の量に基づく値を背景レベルとし、入力レベル値と背景レベルとの差に基づく値を比較値とし、この比較値と閾値との比較を感知エリア11ごとに行い、比較値が閾値以上となる感知エリアの数に応じて車両の有無を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路上の監視範囲を通過する車両を検知する車両検知システムに関するものである。特に、車両の走行位置が車幅方向にずれたり、センサの取り付け角度が変化するなどした場合であっても、高精度に車両を検知することができる車両検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
交通量や占有率などの交通流を調べるために車両を検知するシステムとして、赤外線感知センサを利用した車両検知システムが提案されている(特許文献1,2)。これらの車両検知システムは、サーモパイル素子といった赤外線を感知するセンサにより、車両が発する赤外線及び道路などの車両以外の物体が発する赤外線をそれぞれ検出し、これら赤外線の量に基づいて車両の有無を判定する構成である。特に、特許文献2に記載される車両検知システムでは、一車線に対し、二つのサーモパイル素子を用い、一車線の車幅方向又は車線方向に素子に基づく感知エリアが二つ設けられるように構成して、両エリアからの入力レベル値を組み合わせて出力を大きくすることで、検知精度を高めている。
【0003】
【特許文献1】特開2003-317186号公報
【特許文献2】特開2004-302699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術は、一車線内に対して感知エリアを設け、この感知エリアを通過する車両の検知を行うものである。そこで、上記技術では、車両の走行頻度が高い箇所、例えば、一車線内の中央部に感知エリアが配置されるように、センサとなるサーモパイル素子を収納した筐体を支柱に取り付けており、筐体の取り付け後、筐体(センサ)の取り付け角度が変化しない限り、感知エリアの配置が変化しない。そのため、感知エリアで道路工事が行われたり、感知エリアに駐車車両などの障害物が存在するなどして、走行する車両が走行位置を変えたり、或いは、筐体に何らかの物体が衝突するなどして取り付け角度が変化するなどした場合、車両からの赤外線をセンサが感知することができず、適切に車両の検知が行えない恐れがある。また、車線境界表示の変更などにより、車両の走行位置を変化させることも考えられる。更に、感知エリアを設けた車線(以下、当該車線と呼ぶ)に隣接する別の車線を走行する車両が当該車線にはみ出して走行した場合、この車両を、当該車線の走行車両として検知することも考えられる。
【0005】
上記のように車両の走行位置や筐体の取り付け角度などが変化した場合、適切な検知を行うためには、筐体の取り付け角度の調整などが必要となるが、角度の調整には、ある程度作業者のスキルが要求され、調整が正確に行われないと、検知精度を低下させる恐れがある。従って、角度調整の作業時間が長時間に亘ることもある。また、筐体の取り付け位置が5m程度の高所であることから、取り付け角度の調整には、バケット車などの特殊な作業車両や設備などを用いるため、場合によっては、交通規制なども必要となる。そこで、角度の調整は、取り付けの際のみとすることが最も好ましく、角度調整を行う場合は、できるだけ短時間で済むようにすることが望まれる。更に、取り付け角度の調整を行っても、上述した障害物などの回避により車両が走行位置を変えた場合のように突発的な走行位置の変化には、対応することが難しい。
【0006】
そこで、本発明の主目的は、車両の走行位置が変化するなどした場合であっても、精度よく車両の検知を行える車両検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、サーモパイル素子を複数用い、各素子に基づく感知エリアを複数形成したことで上記目的を達成する。本発明は、道路上の監視範囲を通過する車両を検知する車両検知システムであり、検知対象が発する赤外線を感知する複数のサーモパイル素子と、これらサーモパイル素子から得られた入力レベル値を用いて、車両の有無を判定する車両有無判定部とを具える。監視範囲には、各サーモパイル素子に基づく感知エリアが複数形成されるものとする。そして、本発明において車両有無判定部は、入力レベル値のうち、車両以外の物体が発する赤外線の量に基づく値を背景レベルとし、入力レベル値と背景レベルとの差に基づく値を比較値とし、この比較値と閾値との比較を感知エリアごとに行い、比較値が閾値以上となる感知エリアの数に応じて車両の有無を判定する。特に、監視範囲の車幅方向の大きさは、一車線を越える大きさとし、この一車線内及びこの車線の外側の双方に感知エリアが設けられて車幅方向に複数の感知エリアが配置されるようにサーモパイル素子を具えることが好ましい。更に、車幅方向だけでなく、監視範囲の車線方向にも複数の感知エリアが配置されるようにサーモパイル素子を具えることが好ましい。
【0008】
本発明は、突発的な場合も含めて車両の走行位置や筐体(センサ)の取り付け角度などが変化した場合であっても、筐体の取り付け角度などの調整を行うことなく、或いは簡単な調整で車両の検知を精度よく行うことができるように、監視範囲を大きめにする。特に、本発明システムは、車幅方向に監視範囲を大きくする。そして、この比較的大きな監視範囲内に複数の感知エリアを設けるべく、本発明システムは、複数のセンサ(サーモパイル素子)を具える。特に、本発明では、車幅方向に複数の感知エリアが設けられるようにセンサを具えることで、車両の走行位置が車幅方向にずれたり、筐体の取り付け角度が変化して感知エリアが車幅方向にずれても、車両は、複数ある素子のうち少なくとも一部の素子に基づく感知エリアを通過すると考えられる。従って、本発明システムは、複数具えるサーモパイル素子のうち一部の素子により、車両の検出を十分行うことができる。監視範囲を大きくしても、感知エリアが一つだけの場合、即ち、一つのサーモパイル素子で車両の検知を行う構成では、感知エリアを広くして、走行位置の変化や取り付け角度の変化に対応せざるを得ない。しかし、この場合、S/N比(シグナルとノイズの比)が低下して、適切な検知を行えない恐れがある。そこで、本発明システムでは、複数のセンサを用い、大きな監視範囲に対してセンサに基づく感知エリアを複数設ける、即ち、監視範囲を複数の感知エリアに分割する構成とすることで、車両の検知精度の向上を図る。このように一つの監視範囲を複数の感知エリアに分割することで、一つのセンサに基づく感知エリアを小さくできるため、本発明システムは、S/N比の低下を低減し、適切な検知を行うことができる。
【0009】
監視範囲の車幅方向の大きさとしては、一車線を超える大きさとすることが好ましい。一車線とは、車線境界線や中央分離帯を有する道路の場合、ある車線境界線とこの境界線に隣接する車線境界線(又は中央分離帯)との間の大きさ(通常、3〜3.5m程度)、車線境界線などを有していない道路の場合、一台の車両が走行可能な大きさとすることが挙げられる。そして、一車線を越える大きさとは、上記一車線分に余裕分を加えた大きさとする。余裕分としては、路側帯の少なくとも一部やこの車線に隣接する別の車線の少なくとも一部が挙げられる。路側帯の境界線がない場合、路肩近傍としてもよい。従って、具体的な監視範囲の車幅方向の大きさとしては、例えば、一車線と、この車線に接する路側帯(の一部)と、この車線に隣接する別の車線の一部を含む大きさが挙げられる。監視範囲は、複数車線に亘って設けてもよく、具体的には、二車線と、一方の車線に接する路側帯(の一部)と、路側帯側でない車線に隣接する別の車線の一部を含む大きさが挙げられる。このとき、二車線は、2台の車両が同方向に走行する片側二車線でもよいし、2台の車両が異なる方向に走行する片側一車線の合計二車線としてもよい。車線数が多い道路の場合、監視範囲の車幅方向の大きさとしては、二車線以上と、一端側の車線に隣接する別の車線の一部と、他端側の車線に隣接する車線の一部とを含む大きさが挙げられる。監視範囲の車幅方向の大きさを道路幅全域に及ぶようにしてもよい。路側帯や車線境界線、その他中央分離帯などがなく、明確に車線が区分けされていない道路の場合、監視範囲の車幅方向の大きさは、道路幅全域、即ち、一方の路肩から他方の路肩までとしてもよい。このように本発明システムでは、車幅方向において監視範囲を広くし、この監視範囲内に複数の感知エリアが車幅方向に設けられるようにすることで、障害物などを回避するために車両の走行位置が車幅方向にずれた場合や、車線境界の移動により車両の走行位置を車幅方向にずらす場合などにおいても、センサを収納した筐体の角度などの調整を行うことなく、或いは簡単な調整で車両の有無を精度よく検知することができる。
【0010】
上記監視範囲内における感知エリアの配置形態は、車幅方向に並べる形態、車線方向に並べる形態が挙げられる。本発明では、上記のように車幅方向に監視範囲をより大きくするため、感知エリアも車幅方向に複数設けられるようにすることが好ましい。車幅方向に感知エリアを複数具える場合、車両は、これら複数の感知エリアのうちいずれかの感知エリアを確実に通過する可能性が高くなる。また、車幅方向に感知エリアを複数具える場合、上記のように障害物などを回避するために車両の走行位置が車幅方向にずれた場合や、車線境界の移動などにより車両の走行位置が車幅方向に変わる場合などに対応し易い。一方、車線方向に複数の感知エリアが設けられるように構成する場合、本発明システムは、車両の有無に加えて、車両の進行方向や速度なども求めることができる。従って、感知エリアは、車幅方向及び車線方向の双方に並べる形態としてもよい。
【0011】
感知エリアを車幅方向に並べる個数としては、例えば、上記のように監視範囲の車幅方向の大きさを一車線を超える大きさとする場合、一車線に一つ、この車線の両側に一つずつの合計三つ以上とすることが好ましい。一車線内に配する感知エリアは、一車線の中央部に配することが挙げられる。感知エリアの大きさ、感知エリア間の間隔にもよるが、一車線内に三つ以上の感知エリアが車幅方向に連続して配置されるようにすることが好ましい。即ち、車幅方向に五つ以上の感知エリアを並べることが好ましい。一方、車線方向には、少なくとも二つの感知エリアを連続するように並べることで、進行方向や速度の検出を行うことができる。感知エリアを車幅方向、車線方向のいずれに配置する場合も、各感知エリアは、隣接する他の感知エリアの領域と一部が重複するように配置してもよいし、間隔をあけずに接するように設けてもよいし、適当な間隔、例えば、車幅方向:20〜60cm程度、車線方向:50〜120cm程度の間隔をあけて設けてもよい。一つの感知エリアの大きさは、上記のように大き過ぎると、S/N比の低下を招くため、比較的小さめにして、感知エリア数を多くする方が検知精度を向上できる。具体的な感知エリアの大きさとしては、例えば、20〜40cm×20〜40cm程度が挙げられる。感知エリアの大きさや配置間隔は、一台の車両が複数の感知エリアに亘って走行されるように調整することが好ましい。つまり、一台の車両における異なる部位(タイヤ、ルーフ、エンジン部など)から発せられる赤外線を異なるサーモパイル素子にて感知されるように感知エリアを設けることが好ましい。このように監視範囲に複数の感知エリアを設けることで、特に、車幅方向に複数の感知エリアを設けることで、本発明システムは、障害物などが存在して車幅方向に車両が走行位置を変えた場合や、ある車線を走行する車両が隣接する車線にはみ出してきた場合などでも、適切に車両の有無を判定することができる。
【0012】
そして、本発明車両検知システムでは、上記のように複数の感知エリアが監視範囲内に設けられるように、感知エリアに対応した個数のセンサを具える。特に、本発明車両検知システムでは、物体が発する赤外線の量を測定し、この赤外線の量を車両の有無の判定に利用する。ここで、物体が発する赤外線の量は、ステファン・ボルツマンの法則により、物体の絶対温度のほぼ4乗に比例すると共に、物体の放射率εに比例する。道路上の物体、例えば、道路面や道路を走行する車両の放射率εは、通常、ほぼ同等(通常0.9以上)であり大差がないことが多い。そのため、赤外線を感知するサーモパイル素子といったセンサを道路面の方向に向けて設置しておけば、道路(車両以外の物体)と温度が異なる車両が道路面を通過した際、センサが感知する赤外線の量が変化することで、車両の有無を検知することができる。そこで、本発明では、赤外線感知センサとして、赤外線により熱電対に発生した温度変化を熱起電力として出力するサーモパイル素子を利用する。特に、熱起電力の出力が大きいサーモパイル素子を用いると、焦電センサなどの他のセンサを用いることなく、サーモパイル素子のみでも十分に赤外線の感知を行って、車両を検知することができる。本発明では、所望の感知エリア数に応じた個数分のサーモパイル素子を用いる。これら複数のサーモパイル素子は、各素子がそれぞれ別個の基板に配置された個別形状のものを利用してもよいし、複数の素子が同一の基板に配置された一体化形状のものを利用してもよい。一体化形状の場合、筐体などへの配置、固定作業などを容易に行うことができる。これらサーモパイル素子は、上述した感知エリアの配置形態に応じて適宜並べて具えるとよく、例えば、車幅方向又は車線方向に複数の感知エリアを設ける場合、サーモパイル素子を一列に並べたり、車幅方向及び車線方向に複数の感知エリアを設ける場合、サーモパイル素子を横列及び縦列からなる格子状に並べることが挙げられる。このようなサーモパイル素子の配列形態に対応して、感知エリアの配置形態がつくられる。サーモパイル素子を配置した基板は、回路基板に搭載する。この回路基板には、各サーモパイル素子の起電力を増幅するアンプや、後述する車両有無判定部などを搭載してもよい。
【0013】
本発明システムは、上記のように所望の感知エリアが設けられるように、感知エリア数に応じたサーモパイル素子を具えておけばよいが、より多くのサーモパイル素子を具えておき、監視範囲の大きさに応じて使用する素子の個数を変更させてもよい。また、車線境界の変更などにより、サーモパイル素子を収納した筐体を設置後にサーモパイル素子の使用個数を変更させてもよい。つまり、複数のサーモパイル素子のうち、一部のサーモパイル素子で車両の検知を行い、残りのサーモパイル素子は検知を行っていない状態としてもよい。サーモパイル素子の使用個数の変更は、例えば、不使用のサーモパイル素子からの起電力を増幅するアンプに駆動電力を供給しなかったり、不使用のサーモパイル素子からの情報を利用しないように車両有無判定部を設定してもよい。
【0014】
上記複数のサーモパイル素子に加えて、本発明車両検知システムには、各素子から得られた入力レベル値を用いて車両の有無の判定を行う車両有無判定部を具える。車両有無判定部は、種々の判定、演算、記憶の他、入力レベル値などのデータの取得、判定結果の書き込みなどといった処理を行うことが可能なものを利用するとよい。従って、車両有無判定部には、判定手段、演算手段、記憶手段、データの取得手段、書き込み手段などを具えておく。判定、演算には、市販のCPUなどが利用できる。本発明において車両有無判定部は、感知エリアごとに入力レベル値の変化を調べ、その変化が一定値以上である感知エリアの個数により、車両の有無を判定する。
【0015】
本発明システムに具えるサーモパイル素子は、車両が発する赤外線と、車両以外の物体(代表的には道路面)が発する赤外線という二種類の赤外線を感知する。従って、入力レベル値としては、車両が発した赤外線に基づくものと、車両以外の物体が発した赤外線に基づくものとの二つが得られる。入力レベル値の変化は、上記入力レベル値のうち、車両以外の物体が発する赤外線の量に基づく値を背景レベルとし、入力レベル値と背景レベルとの差、或いはこの差を用いた演算値を求めることで調べられ、この変化が大きければ、車両が通過した可能性が高いと考えられる。そこで、本発明システムでは、入力レベル値と背景レベルとの差に基づく値を比較値とし、この比較値と閾値とを比較し、比較値が閾値以上となる感知エリアの数に応じて、車両の有無を判定する。比較値が閾値以上となった感知エリアは、上述のように車両が存在する可能性が高く、このような感知エリアが多く存在する場合、車両有りと判定することが妥当である。逆に、比較値が閾値未満となった感知エリアは、入力レベル値の変化が小さい、或いはほとんど変化していない状態であり、この感知エリアに対応するサーモパイル素子は、道路面といった車両以外の物体からの赤外線を感知したと考えられる。従って、この場合、車両が存在する可能性が低く、このような感知エリアが多く存在する場合、車両無しと判定することが妥当である。そこで、本発明システムでは、感知エリアごとに車両の有無の可能性を調べ、車両が有りそうな感知エリアの数によって、最終的に車両の有無を判定する。
【0016】
背景レベルとして用いる「車両以外の物体が発する赤外線の量に基づく値」は、車両以外の物体が発する赤外線の量をそのまま用いるよりも、この赤外線の量を利用した演算値を用いることが好ましい。特に、背景レベルは、サーモパイル素子により入力レベル値を随時検出しておき、得られた入力レベル値のうち、車両以外の物体が発する赤外線に基づくものを用いた演算値を利用すると、実際の環境に近似するため、より精密な検知を行うことができる。このような演算値として、例えば、車両以外からの赤外線を複数回検出したデータの平均値や、現在取得した車両以外からの赤外線による入力レベル値と過去の背景レベルとを用いた演算値が挙げられる。後者の場合、具体的には、指数平滑法による演算値が挙げられる。指数平滑法は、一般にf0=α×d-1+(1-α)f-1=f-1+α×(d-1-f-1)と表され(f0:次期予測値、α:平滑係数、d-1:前期の実績値、f-1:前期の予測値)、前期の予測値(ここでは、前回の背景レベル)に対して前期の実績値(ここでは、入力レベル値)を反映できるため、背景レベルを実際の環境(路面状況)に即したより的確な値となり得る。特に、平滑係数αは、過去の処理結果(比較値と閾値との比較結果)に応じて変化させると、車両の赤外線の量(温度)に左右されずに背景レベルをより確実に把握することができる。平滑係数αの変化は、直前(前回)の処理結果に応じて行ってもよいし、直前よりも少し前の処理結果に応じて行ってもよい。背景レベルの演算には、特許文献1,2に記載される演算手法を利用してもよい。なお、背景レベルの検出用のセンサと車両の検知用のセンサとを同一のものを用いると、背景レベルの検出用のセンサを別途設ける必要がない。
【0017】
比較値として用いる「背景レベルと入力レベル値との差に基づく値」は、背景レベルと入力レベル値との差をそのまま用いてもよいし、この差を利用した演算値を利用してもよい。演算値としては、例えば、上記差を一定時間内積算した値が挙げられる。比較値としてこの積算値を利用する場合、赤外線の放射量の変化における本質的な傾向を把握できる。また、背景レベルと入力レベル値との差(又はこの差を用いた演算値)に入力レベル値の単位時間当たりの変化量を加味した値を比較値としてもよい。この変化量は、背景レベルを加えていないことから、背景レベルによる影響を受けないため、入力レベル値が変化している間車両が存在している場合に、入力レベル値と背景レベルとの差が小さくとも比較値が閾値以上となる判定を得易く、車両が認識できない場合などを低減する。この変化量は、直前よりも、少し前の入力レベル値と現在の入力レベル値との差とする方がより有効である。比較値の演算には、特許文献1,2に記載される演算手法を利用してもよい。
【0018】
上記閾値は、固定値としてもよいが、実際の環境に応じて変化させることが好ましく、例えば、赤外線の量の変化(温度変化)が大きい(即ち、分散が大きい)とき、比較的大きな値とし、赤外線の量の変化が小さい(即ち、分散が小さい)とき、比較的小さな値としてもよい。これらの閾値は、演算により求めてもよく、例えば、閾値を設定値+補正値として、補正値を変化させることで閾値を変化させてもよい。特に、補正値は、過去の処理結果(比較値と閾値との比較結果)に応じて変化させると、実際の環境に即した閾値を得ることができて好ましい。補正値の変化は、直前(前回)の処理結果、或いは直前よりも少し前の処理結果に応じて行うとよい。閾値の演算には、特許文献1,2に記載される演算手法を利用してもよい。上述した背景レベルの演算、比較値の演算、閾値の演算は、車両有無判定部にそれぞれ演算手段を具えておき、これら演算手段により行うように構成するとよい。
【0019】
各サーモパイル素子に基づく感知エリアに対して車両有無判定部は、上記背景レベルや比較値、閾値を用いて、比較値が閾値以上となるか否かを判定し、比較値が閾値以上となる感知エリアの数に応じて、車両の有無を判定する。例えば、比較値が閾値以上となる感知エリア(以下、ONエリアと呼ぶ)の数が所定数以上の場合、車両有りと判定し、ONエリアの数が所定数未満の場合、車両無しと判定するように車両有無判定部を構成することが挙げられる。車幅方向に複数の感知エリアが形成されるように本発明システムを構成している場合、上述のようにONエリアが複数存在していても、車幅方向に並ぶONエリア間に比較値が閾値未満となる感知エリア(以下、OFFエリアと呼ぶ)が存在する場合は車両有りと判定することが妥当でないことが考えられる。本発明では、上記のように一つの感知エリアの大きさを比較的小さくし、一台の車両からの赤外線を複数のセンサで感知して、車両の検知を行う。従って、ONエリアが一つの場合や車幅方向に並ぶONエリア間にOFFエリアが少なくとも一つ存在してONエリアが分散されている場合、ONエリアとなった感知エリアは、車両が通過したのではなく、車両以外の物体が通過したりするなどして、比較値が閾値以上となったと考えられる。これらONエリアに存在した物体は、車両以外のノイズとして扱うことで、車両をより精度よく検知できる。そこで、本発明システムでは、車幅方向に連続してONエリアが存在する場合に車両有りと判定し、ONエリアが複数であっても、車幅方向に不連続に存在する場合、つまり、ONエリアが隣接して存在しない場合、車両無しと判定する構成を提案する。具体的な構成としては、感知エリアごとに入力レベル値を取得する取得手段と、感知エリアごとに上述した比較値(入力レベル値と背景レベルとの差に基づく値)を演算する第一演算手段と、感知エリアごとに得られた比較値と閾値とを比較し、比較値が閾値以上となる感知エリア(ONエリア)のうち、車幅方向に所定数以上連続するONエリアを一つのグループとし、このグループが存在する場合、車両有りと判定し、グループがない場合、車両無しと判定する第一判定手段とを車両有無判定部に具えることが挙げられる。
【0020】
上記車両有無判定部は、以下のステップを行うように構成しておくことで、車両の有無の判定を行うことができる。このとき、車両検知システムには、上記グループを形成するのに最小限必要な数以上の感知エリアが車幅方向に並んで設けられるようにセンサを具えておく。
1 取得手段が、感知エリアごとに入力レベル値を取得するステップ。
2 第一演算手段が、感知エリアごとに、入力レベルと背景レベルとの差に基づく比較値を演算するステップ。
3 第一判定手段が、感知エリアごとに、得られた比較値と閾値とを比較し、比較値が閾値以上となる感知エリアのうち、車幅方向に所定数以上連続する感知エリアを一つのグループとし、このグループの有無を判定し、グループが存在する場合、車両有りと判定し、グループがない場合、車両無しと判定するステップ。
【0021】
車両有無判定部を上記のように構成して、車両の有無を検知する場合、感知エリアは、車幅方向に複数設ける、具体的には少なくとも車幅方向に五つ以上設けておくことが好ましい。より具体的には、一車線内に三つ以上の感知エリア、この車線の両側(車線外)にそれぞれ一つ以上の感知エリアを設けることが好ましい。車線内外に設ける感知エリアの数は、感知エリアの大きさにより適宜変更するとよい。このように本発明システムでは、少なくとも車幅方向に複数の感知エリアを設け、ONエリアが車幅方向に連続的に存在するか否かを積極的に調べて車両の有無の判定を行う。
【0022】
なお、ノイズとして扱うONエリアの数は、感知エリアの大きさや配置数などに応じて適宜変更するとよい。例えば、一車線の幅が2〜3m程度の大きさの車線内に20〜40cm四方の感知エリアを50〜60cm程度の間隔をあけて車線内外に配置する場合、第一判定手段は、車幅方向に2つ以上連続するONエリア群を一グループとし、このグループがある場合、車両有りと判定し、グループがない場合、つまり、ONエリアが0又は1つの場合、或いは、ONエリアが複数あるが車幅方向に不連続に存在する場合、車両無しと判定することが挙げられる。
【0023】
車両有無判定部を上述のように構成することで、本発明システムは、ノイズの影響を低減し、車両の検知を精度よく行うことができる。ここで、本発明において監視範囲を車幅方向に大きく、例えば、一車線を超えた大きさとした場合、監視範囲内に二台の車両が通過することが考えられる。このとき、車両が一台であるのか、二台以上であるのか判別できることが好ましい。例えば、車幅方向に複数の感知エリアを設ける場合、グループが存在するとき、車両がグループ数と同数存在すると判定する車両数判定手段を車両有無判定部に具えることで、本発明システムは、車両の台数をも判定することができる。このシステムは、上記グループが複数存在するとき、車両が複数台(グループ数と同数)有ると判定し、グループが一つのみ存在するとき、車両が1台有ると判定する。このような構成は、例えば、車幅方向にのみ複数の感知エリアを設ける場合(以下、配列1と呼ぶ)や、車幅方向及び車線方向に横列(車幅方向の列)×縦列(車線方向の列)の格子状となるように複数の感知エリアを設け、横列のうちいずれか一列のみにグループを形成するのに必要な数の感知エリアが車幅方向に連続して存在し、残りの列はグループを形成するのに必要な数未満の感知エリア群が分散的に存在したり、感知エリアの合計数がグループを形成するのに必要な数未満である場合(以下、配列2と呼ぶ)などに利用することができる。
【0024】
感知エリアの配置によっては、グループが複数存在するとき、車両が複数台であると判定すると、不具合が生じる場合が考えられる。例えば、車幅方向及び車線方向に横列(車幅方向の列)×縦列(車線方向の列)の格子状となるように複数の感知エリアを具え、全ての横列にグループを形成するのに必要な数の感知エリアが車幅方向に連続して存在する場合(以下、配列3と呼ぶ)にグループが複数存在するときは、1.同一の横列に存在する、2.異なる横列に存在する場合が考えられる。1.の場合、各グループは車幅方向に離れて存在し、それぞれ異なる車両であると考えられる。一方、2.の場合、特に、異なる横列が車線方向に隣接した列であり、グループが車線方向に隣接して存在する場合と、車幅方向に離れて存在する場合とが考えられ、前者は、車線方向に隣接するグループ組が一つの車両であると考えられ、後者は、各グループがそれぞれ異なる車両であると考えられる。つまり、後者の場合、上記1.の場合と同様に車両が複数台(グループ数と同数台)存在する可能性が高いと考えられる。そこで、グループが複数存在する場合、車両有無判定部は、グループが車幅方向に離れて存在するか否かを判定するように構成してもよい。具体的には、例えば、グループが複数存在するとき、車幅方向に隣接するグループ間に比較値が閾値未満となる感知エリア(OFFエリア)が存在する場合、車両が複数台有ると判定する第二判定手段を車両有無判定部に具えることが挙げられる。「車幅方向に隣接するグループ」とは、同一の横列(車幅方向に並ぶ同一列)に存在するグループ同士、車線方向に隣接する横列(車幅方向に並ぶ列において車線方向に隣接する列)に存在するグループ同士とすることが挙げられる。このOFFエリアの有無を判定する構成は、上述した配列1,2の場合にももちろん利用することができる。
【0025】
上記車両有無判定部は、上記1〜3のステップに加えて、以下のステップを行うように構成しておくことで、車両の台数をも判定することができる。このとき、車両検知システムには、例えば、上記配列1〜3のいずれかの感知エリアが設けられるようにセンサを具えておく。
4-1 グループが複数存在するとき、第二判定手段が、車幅方向に隣接するグループ間に比較値が閾値未満となる感知エリア(OFFエリア)の有無を判定し、車幅方向に隣接するグループ間にOFFエリアが存在する場合、車両が複数台有ると判定するステップ。
なお、OFFエリアが存在しない場合、車両が一台有ると判定するように第二判定手段を構成してもよい。
【0026】
上記4-1のステップを含むアルゴリズムでは、ONエリアが車幅方向に連続して存在する場合、これら車幅方向に連続したONエリアを一まとまりのグループとし、このグループが複数存在するとき、車幅方向に隣接するグループとグループとの間にOFFエリアが存在する場合、即ち、異なるグループがOFFエリアを挟んで存在する場合、各グループは、異なる車両であるとして扱う。このように本発明は、少なくとも車幅方向に複数の感知エリアを設けることで、1台のみの検知に加えて、同時に2台以上の車両を検知することが可能である。
【0027】
車両有りと判定された際、本発明システムは、車両の走行位置を判定することもできる。例えば、監視範囲に複数の車線を含む場合、ONエリアの数がいずれの車線に多いかを判定するように車両有無判定部を構成することが挙げられる。
【0028】
車両検知システムでは、上述のように車両の有無に加えて台数も判定できることが望まれる。従って、上述した1〜3のステップを含むアルゴリズムにおいて、グループが一つ存在する場合、車両が1台有ると判定するように車両有無判定部を構成してもよい。しかし、一つのグループを構成するONエリアの数によっては、1台と判定することが妥当でないことが考えられる。このような場合、複数台(例えば、2台)と判定するように車両有無判定部を構成してもよい。具体的には、グループが存在するとき、一つのグループに含まれるONエリアの数が所定数以上であるか否かを判定し、ONエリアの数が所定数以上である場合、車両が複数台有ると判定する第三判定手段を車両有無判定部に具えることが挙げられる。ONエリアの数に応じて車両の台数を判定するように第三判定手段を構成してもよい。また、グループが一つだけ存在するとき、ONエリアの数が所定数未満である場合、車両が1台有ると判定するように第三判定手段を構成してもよい。
【0029】
一方、グループが複数存在するときは、グループごとにONエリアの数が所定数以上であるか否かを判定し、車両が1台であるか、複数台であるかをグループごとに判定するように第三判定手段を構成してもよい。具体的には、ONエリアの数が所定数未満であるグループは、車両が1台であると判定し、ONエリアの数が所定数以上であるグループは、車両が複数台であると判定するように第三判定手段を構成することが挙げられる。前者のグループは、グループの数と同数の車両が存在することになり、後者のグループは、一つのグループに多数の車両が存在することになる。
【0030】
なお、本発明システムにおいて感知エリアの配置形態が上述した配列3である場合に車線方向に隣接してグループが存在し、これらのグループに含まれるONエリアの数がいずれも所定数以上であるときを考える。このとき、上述のようにグループごとに車両の台数を判定し、一つのグループについて判定された車両の台数の合計を車両の台数と判定すると、実際の車両の台数よりも多く判定する恐れがある。そこで、このような場合、例えば、車線方向に隣接するグループ組が存在するか否かを判定し、グループ組が存在する場合、組の少なくとも一方のグループに含まれるONエリアの数が所定数以上のとき、この組は、ONエリア数の判定に用いた一つのグループに基づく台数の車両が存在すると判定するように車両有無判定部を構成してもよい。組をつくる各グループのONエリアの数が異なる場合は例えばONエリアの数が多いグループを判定に用いてもよい。また、組をつくるグループのいずれもONエリアの数が所定数未満の場合、この組は、1台の車両が存在すると判定するように車両有無判定部を構成してもよい。
【0031】
上述した配列3のように車線方向にも複数の感知エリアを設けておく場合、本発明システムは、各車両の進行方向をも判別することができる。具体的には、車両有りと判定されたとき、一つのグループから選択されたONエリアのうち、車線方向に隣接するONエリアの組の有無を判定する第四判定手段と、車線方向に隣接するONエリアの組がある場合、これら二つのONエリアのそれぞれに対して、比較値が閾値以上となった時刻を検出する第一検出手段と、第一検出手段から得られた時刻により車両の進行方向を判定する第五判定手段とを車両有無判定部に具えることが挙げられる。
【0032】
上記車両有無判定部は、上記1〜3のステップに加えて、以下のステップを行うように構成しておくことで、車両の進行方向の判定を行うことができる。このとき、車両検知システムには、例えば、上記配列3の感知エリアが設けられるようにセンサを具えておく。
4-2-1 車両有りと判定されたとき、第四判定手段が、一つのグループから選択された比較値が閾値以上となる感知エリア(ONエリア)のうち、車線方向に隣接するONエリアの組の有無を判定するステップ。
4-2-2 車線方向に隣接するONエリアの組がある場合、第一検出手段が、これらONエリアごとに比較値が閾値以上となった時刻を検出するステップ。
4-2-3 第五判定手段が、第一検出手段から得られた時刻により車両の進行方向を判定するステップ。
【0033】
車線方向に隣接して複数のONエリアが存在した場合、これらONエリアは、比較値が閾値以上となった時刻が異なるはずである。そこで、これらのONエリアについて比較値が閾値以上となった時刻の大小関係を調べることで、車両の進行方向を判別することができる。車線方向に三つ以上のONエリアが連続して存在する場合、隣接する二つのONエリアの組を任意に選択し、この組について時刻を検出するように第一検出手段を構成してもよい。この進行方向の判定を行う構成は、上述した車両の台数の判定を行う構成と合わせて車両有無判定部に具えてももちろんよく、例えば、車両が複数台あると判定されたとき(例えば、車幅方向に複数のグループが存在するとき)、車両ごとに進行方向の判定を行うように車両有無判定部を構成してもよい。
【0034】
また、車線方向に隣接する二つのグループに対して、車線方向に隣接するONエリアの組が複数存在する場合、いずれかの組を任意に選択し、この組について進行方向の判定を行うように車両有無判定部を構成してもよい。或いは、特定の組を選択するように車両有無判定部を構成してもよい。特定の組としては、例えば、センサの取り付け位置に最も近い位置にある組が挙げられる。一つのグループに対して複数台の車両が存在すると判定された場合は、例えば、一台の車両とみなすONエリアの数を予め設定しておき、グループをこの数に分割し、分割されたONエリア群において、センサの取り付け位置に最も近い位置にある組を選択するように車両有無判定部を構成してもよい。
【0035】
車両の進行方向の判定を行う場合、タイマなどの時刻計測手段を具えておき、時刻計測手段で計測した結果(時刻)が第一検出手段で検出されるように車両有無判定部を構成してもよい。タイマを内蔵した車両有無判定部を用いてもよい。また、比較値が閾値以上となった時刻がメモリといった記憶手段に記憶されるように車両有無判定部を構成しておくとよい。更に、時刻計測手段にて時刻を一定周期でカウントする場合、オーバーフローすることが考えられる。そこで、オーバーフローを是正して、時刻の大小を比較するように第五判定手段を構成してもよい。これらの点は、後述する速度の検出ステップを車両有無判定部に行わせる場合も同様である。
【0036】
一方、車両有無の判定時に車線方向に隣接したONエリアが存在しない場合に車両の進行方向を求めるときは、例えば、過去のデータを利用することが挙げられる。具体的には、第四判定手段にて車線方向に隣接するONエリアの組がないと判定された場合、グループが一つのときはそのグループから任意のONエリアを選択するように、グループが複数のときはグループごとに任意のONエリアを選択するように車両有無判定部を構成する。そして、選択されたONエリアにおいて、比較値が閾値以上となった時刻を検出するように第一検出手段を構成する。また、前回の処理結果(ON又はOFFの判定結果)からONエリアを抽出する抽出手段を車両有無判定部に具えておき、上記選択されたONエリアと車線方向に隣接するONエリアを抽出手段にて抽出し、抽出されたONエリアについて比較値が閾値以上となった時刻を検出するように第一検出手段を構成する。そして、第一検出手段により検出された二つの時刻により車両の進行方向を判定するように第五判定手段を構成することが挙げられる。このように過去のデータを利用することで、本発明システムは、任意の時刻において車両の進行方向を得ることができる。また、上記に選択するONエリアは、特定の位置にあるONエリアが選択されるように車両有無判定部を構成してもよく、例えば、センサの取り付け位置に最も近い位置にあるONエリアとしてもよい。
【0037】
車両の進行方向が判別されることで、その車両の走行車線を判別することもできる。例えば、車両の進行方向が異なる二車線、代表的には、片側一車線の合計二車線を含むように監視範囲を設ける場合、車両の進行方向により、いずれの車線を走行する車両であるかを判別できる。従って、車両の進行方向結果により、車両の走行車線を判定する第六判定手段を車両有無判定部に具えてもよい。
【0038】
更に、車線方向に複数の感知エリアを配置する場合、本発明システムは、上述した進行方向だけでなく、車両の速度も求めることができる。例えば、上記進行方向の判定を行う場合と同様に第四判定手段及び第一検出手段を具えると共に、第一検出手段から得られた二つの時刻の時刻差を演算し、得られた時刻差と、車線方向に隣接する感知エリア間の距離とから車両の速度を演算する第二演算手段を車両有無判定部に具えることが挙げられる。この速度の演算を行う構成は、上述した車両の台数の判定を行う構成や、車両の進行方向の判定を行う構成と合わせて車両有無判定部に具えてももちろんよく、例えば、車両が複数台あると判定されたとき、車両ごとに速度の演算を行うように車両有無判定部を構成してもよいし、進行方向の判定後、速度の演算を行うように車両有無判定部を構成してもよい。
【0039】
上記車両有無判定部は、以下のステップを行うように構成しておくことで、車両の速度を求めることができる。
4-3-1 車両有りと判定されたとき、第四判定手段が、一つのグループから選択された比較値が閾値以上となる感知エリア(ONエリア)のうち、車線方向に隣接するONエリアの組の有無を判定するステップ。
4-3-2 車線方向に隣接するONエリアの組がある場合、第一検出手段が、これらONエリアごとに比較値が閾値以上となった時刻を検出するステップ。
4-3-3 第二演算手段が、第一検出手段から得られた二つの時刻の時刻差を演算し、得られた時刻差と、車線方向に隣接する感知エリア間の距離とから車両の速度を演算するステップ。
【0040】
上記のように車線方向に隣接する二つのONエリアにおいて比較値が閾値以上となった時刻と、これら感知エリア間の距離とがわかれば、速度を求めることができる。感知エリア間の距離は、設定値としてメモリといった記憶手段に予め保存しておき、第二演算手段が呼び出せるように車両有無判定部を構成しておいてもよいし、後述するように測定手段を具えて同距離を求め、第二演算手段は、得られた距離を用いて速度の演算を行うように車両有無判定部を構成してもよい。
【0041】
本発明システムに用いるセンサ(サーモパイル素子)は、通常、支柱に取り付けられて利用される。そして、道路上に設けられる感知エリアは、センサが感知可能な赤外線領域を道路上に投影した領域となる。このため、センサの取り付け状態(角度や高さ)によって、道路上に設けられる感知エリア間の距離が変動する。センサの取り付けは、実際の支柱の状態などに応じて適宜調整されることがあり、この場合、取り付け角度や取り付け高さは、取り付け後でないと求められない。また、支柱に取り付けた後、上述したように何らかの原因でセンサの取り付け角度などが変化することも考えられる。従って、車両の速度を求める際、実際の感知エリア間の距離を測定し、或いは、センサの取り付け位置情報を測定し、この測定結果から同距離を演算し、この結果を用いると誤差を低減できて好ましい。特に、上記測定は、作業者が行ってもよいが、自動的に測定可能な測定手段を具えることで、本発明システムは、簡単に距離を求めることができて好ましい。そこで、本発明システムとして、センサ(サーモパイル素子)の取り付け位置情報を自動的に測定する測定手段を具え、この測定手段からの測定結果により、車線方向に隣接する感知エリア間の距離を演算する第四演算手段を車両有無測定部に具える構成を提案する。
【0042】
隣接する感知エリア間の距離を求めるために必要とされるセンサの取り付け位置情報としては、道路面からの高さHと、道路面に対する垂直方向の傾き(角度θ)とが挙げられる。図9は、センサの取り付け状態と感知エリアとの関係を示す模式図であり、(A)は、平面図、(B)は、斜視図である。道路面(図9(A)では、直線fg(又はfh)、図9(B)では、三角形fghがつくる面)からセンサ(図9において点e)までの高さをH、道路面に対する垂直方向の傾きをθ、車線方向に隣接する感知エリアF,B間の距離をd、感知エリアF,B間の水平方向の角度(図9(B)において∠geh)をβとすると、距離dは、d=2×(H/cosθ)×{tan(β/2)}で求められる。従って、高さH及び角度θを自動的に測定する測定手段を本発明システムに具えることで、距離dを簡単に求めることができる。或いは、高さH及び角度θのうちいずれか一方を自動的に測定する測定手段を本発明システムに具えておき、他方を手動で測定して、それらの結果から距離dを求めるように車両有無判定部を構成してもよい。なお、水平方向の角度βは、センサの配置状態で決まるものであり、メモリといった記憶手段に予め入力しておき、距離dを演算する際、第四演算手段が呼び出せるように構成しておくとよい。また、角度θは、例えば、センサの取り付け位置に最も近い位置に設けられる感知エリアに対応したセンサの角度を測定するとよい。このとき、この感知エリアと車幅方向に並ぶ感知エリアは、角度θxずつずれる。この角度θxは、センサの配置状態で決まるものであるため、メモリといった記憶手段に予め入力しておき、距離dを演算する際、第四演算手段が呼び出せるように構成しておくとよい。また、角度θの余角θ'を測定する角度測定手段を用いてももちろんよい。
【0043】
高さHを自動的に測定する測定手段としては、例えば、光を用いた測定装置が挙げられる。この装置は、光源と、出射光が対象に当たって反射された反射光を受光する受光部と、光源からの出射時間と受光部の受光時間との差を演算し、この差と光の速度とから光源から対象までの距離を演算する演算部とを具えるものが挙げられる。市販の測定装置を利用してもよい。角度θを自動的に測定する測定手段としては、例えば、液体を用いた水準器を具えるものが挙げられる。市販の角度計を利用してもよい。これら高さ測定手段、角度測定手段は、上述のようにいずれか一方のみ具えて、高さ又は角度のいずれかを作業者が測定するようにしてもよいし、双方とも具えてもよい。得られた測定結果は、第四演算手段に送られるように車両有無判定部を構成する。
【0044】
高さ測定手段、角度測定手段の双方を具える場合、車両有無判定部は、以下のステップを行うように構成しておくことで、車両の速度を求めることができる。
4-3-1 車両有りと判定されたとき、第四判定手段が、一つのグループから選択された比較値が閾値以上となる感知エリア(ONエリア)のうち、車線方向に隣接するONエリアの組の有無を判定するステップ。
4-3-2 車線方向に隣接するONエリアの組がある場合、第一検出手段が、これらONエリアごとに比較値が閾値以上となった時刻を検出するステップ。
4-4-1 高さ測定手段が、センサの取り付け高さHを測定するステップ。
4-4-2 角度測定手段が、センサの取り付け角度θを測定するステップ。
4-4-3 第四演算手段が、測定された高さH,角度θにより車線方向に隣接する感知エリア間の距離dを演算するステップ。
4-4-4 第二演算手段が、第一検出手段から得られた二つの時刻の時刻差を演算し、得られた時刻差と、第四演算手段により得られた距離dとから車両の速度を演算するステップ。
なお、高さの測定及び角度の測定はいずれを先に行ってもよい。また、時刻の検出及び距離dの演算は、いずれを先に行ってもよい。これらの点は、後述するピーク時刻を利用した場合についても同様である。
【0045】
速度を求める場合も上述した進行方向を判定する場合と同様に、車線方向に隣接するONエリアの組が複数存在する場合、任意の組、又は特定の組を選択するようにし、選択された組について速度を演算するように車両有無判定部を構成するとよい。特に、センサの取り付け位置に最も近い位置にある組について速度の演算を行うように車両有無判定部を構成することが好ましい。道路上に投影した感知エリアの大きさは、感知エリアを通過する車両の大きさ(高さや幅)によらず一定である。しかし、実際に車両が道路上を通過する際、図10に示すように車両の大きさによって車両200とセンサs間の距離が異なるため、車両から発せられた赤外線がセンサに感知されるまでの時間も異なることがある。例えば、車高が高い車両200hと車高が低い車両200lとを比較した場合、道路上の同じ感知エリアを通過しても、車両200hの方が車高が高い分、センサに近くなるため、車両200hが発する赤外線は、車両200lが発する赤外線よりも速くセンサsに感知される。つまり、車両の大きさによって、センサの感知に時間差が生じることがある。車両の有無の判定においては、この時間差がさほど問題にならないが、速度の検出の精度をより高める場合は、この時間差を低減することが望まれる。一方、車両のタイヤの取り付け位置は、車両の大きさによらず概ね一定であり、また、通常のタイヤの取り付け位置を考慮すると、一つのグループのONエリアのうち、センサの取り付け位置に最も近い位置にあるONエリアが、タイヤ及びその近傍の通過によりONエリアとなったと考えることが妥当である。そこで、車線方向に隣接するONエリアの組が複数存在する場合、サーモパイル素子の取り付け位置に最も近い位置にある組を選択する組選択手段を車両有無判定部に具え、第一検出手段は、組選択手段で選択された組について時刻の検出を行い、第二演算手段は、検出された時刻に基づき車両の速度を演算するように構成してもよい。この選択手段を具える構成は、上述したセンサの取り付け位置情報の測定手段を具える構成と合わせて具えていてももちろんよい。
【0046】
高さ測定手段、角度測定手段の双方及び組選択手段を具える車両有無判定部は、以下のステップを行うように構成しておくことで、車両の速度を求めることができる。
4-3-1 車両有りと判定されたとき、第四判定手段が、一つのグループから選択された比較値が閾値以上となる感知エリア(ONエリア)のうち、車線方向に隣接するONエリアの組の有無を判定するステップ。
4-5-1 車線方向に隣接するONエリアの組が複数存在する場合、組選択手段は、センサ(サーモパイル素子)の取り付け位置に最も近い位置にある組を選択するステップ。
4-5-2 第一検出手段が、選択された組のONエリアごとに比較値が閾値以上となった時刻を検出するステップ。
4-4-1 高さ測定手段が、センサの取り付け高さHを測定するステップ。
4-4-2 角度測定手段が、センサの取り付け角度θを測定するステップ。
4-4-3 第四演算手段が、測定された高さH,角度θにより車線方向に隣接する感知エリア間の距離dを演算するステップ。
4-4-4 第二演算手段が、第一検出手段から得られた二つの時刻の時刻差を演算し、得られた時刻差と、第四演算手段により得られた距離dとから車両の速度を演算するステップ。
【0047】
得られた車両の速度は、例えば、渋滞レベルの判断に利用したり、速度から車長を求め、車長から車種を判別するのに利用することができる。例えば、車両有無判定部に、車長を演算する第五演算手段と、得られた車長が所定値以上である場合、大型車であると判定する第七判定手段とを具えることで、車両が大型車か否かを判定することができる。車長lは、車両の速度vと、速度vの演算に用いたONエリアにおいて比較値が閾値以上となった時刻(以下、感知ON時刻と呼ぶ)から比較値が閾値未満となった時刻までの時間(端的に言うと、継続的に比較値が閾値以上となっている時間)tとを用いてl=v×tと近似できるため、上記第五演算手段は、この近似式から車長を求めるように構成するとよい。なお、車両の速度が得られる車両検知器としては、画像処理を利用した装置があるが、この装置は、画像処理機構といった複雑な構成を具える必要がある。これに対し、本発明システムでは、より簡単な構造でありながら、車両の速度も求めることができる。また、本発明システムは、上述のように車長をも求めることができる。
【0048】
速度の演算手法として、別の手法を用いてもよい。上述した手法は、ONエリアにおいて比較値が閾値以上となった時刻(感知ON時刻)の差を用いて速度の演算を行う。この感知ON時刻は、感知エリアの背景温度(路面温度)などが変動することで多少変化することが考えられ、この変化により、時刻差に誤差が生じる恐れがある。そこで、感知ON時刻ではなく、入力レベル値を用いる構成を提案する。具体的には、上述した感知ON時刻を利用する構成と同様に第四判定手段を具えると共に、車線方向に隣接する感知エリアの組がある場合、これら二つの感知エリアの入力レベル値からピーク時刻を検出する第二検出手段と、第二検出手段から得られた二つのピーク時刻の時刻差を演算し、得られた時刻差と、車線方向に隣接する感知エリア間の距離とから車両の速度を演算する第三演算手段とを車両有無判定部に具えることが挙げられる。感知ON時刻を速度の演算に用いないこのシステムは、時刻差の誤差を低減し、車両の速度をより精度よく求めることができる。
【0049】
入力レベル値は、検知対象からの赤外線の量を経時的に示すと時間的に変化する波形データとして取得することができる。この入力レベル値においてピーク(正負いずれのピークでもよい)が生じている場合、車両が存在すると考えられる。そこで、この手法では、ピーク時刻を検出し、この時刻差を速度の演算に利用する。ピーク時刻は、例えば、入力レベル値が増加から減少、或いは減少から増加に転じる時刻、つまり、入力レベル値が変位点をとる時刻が挙げられる。そして、第三演算手段は、このピーク時刻の時刻差により、車両の速度を演算する。或いは、車線方向に隣接する二つのONエリアの入力レベル値から相関関数を算出し、その最大値を時刻差としてもよい。なお、ピーク時刻の検出は、所定範囲において行う。所定範囲としては、例えば、上記二つのONエリアのそれぞれにおいて比較値が閾値以上となった時刻(感知ON時刻)から比較値が閾値未満となった時刻までの時間、つまり、比較値が連続して閾値以上となっている時間が挙げられる。また、所定範囲に複数のピークが存在する場合、第二検出手段は、上記二つのONエリアにおいてピークの時間的順番(事象の時間的な順番(後先))や時間的位置(事象の絶対時刻又は相対時刻)などにより車両の同じ部位に基づくピークであると考えられるピークについて時刻を検出するように構成する。即ち、上記二つのONエリアにおいて対応関係にあるピークの時刻を検出するように第二検出手段を構成する。対応関係にあるピーク同士について時刻を検出するのであれば、所定範囲に存在する複数のピークのうちいずれのピークについて時刻を検出してもよく、例えば、所定範囲において最初に現れたピークについて時刻を検出するるように第二検出手段を構成してもよい。
【0050】
上記車両有無判定部は、以下のステップを行うように構成しておくことで、車両の速度を求めることができる。
4-3-1 車両有りと判定されたとき、第四判定手段が、一つのグループから選択された比較値が閾値以上となる感知エリア(ONエリア)のうち、車線方向に隣接するONエリアの組の有無を判定するステップ。
4-6-1 車線方向に隣接するONエリアの組がある場合、第二検出手段が、これらONエリアごとに、入力レベル値のピーク時刻を検出するステップ。
4-6-2 第三演算手段が、第二検出手段から得られた二つのピーク時刻の時刻差を演算し、得られた時刻差と、車線方向に隣接する感知エリア間の距離とから車両の速度を演算するステップ。
【0051】
上記ピーク時刻を利用した構成の場合も、上述した感知ON時刻を利用する構成と同様に、車両の台数の判定を行う構成や、車両の進行方向の判定を行う構成と合わせて車両有無判定部に具えてもよい。また、上記ピーク時刻を利用した構成の場合も車線方向に隣接する感知エリア間の距離を設定値(固定値)としてもよいし、高さ測定手段や角度測定手段といったセンサの取り付け位置情報の測定手段と第四演算手段とを具えて、演算値としてもよい。同距離を演算値とする場合、より実際の距離に即しているため、演算誤差をより低減することができる。更に、ピーク時刻を利用した構成の場合も、上述した感知ON時刻を利用する構成と同様に組選択手段を具えて、車線方向に隣接するONエリアの組が複数存在する場合、センサの取り付け位置に最も近い位置にある組について速度を演算するように車両有無判定部を構成してもよい。ピーク時刻を利用する構成の場合も、車両の大きさによらず比較的安定した入力レベル値が得られるONエリアの組、つまり、センサの取り付け位置に最も近い組を利用することで、速度誤差を低減することができる。また、センサの取り付け位置に最も近い組を構成するONエリアは、比較的ピークが現れやすいタイヤ及びその近傍からの赤外線を感知するセンサに基づくエリアとなるため、ピーク時刻を求め易い。このように入力レベル値の利用及び組選択の双方を行うことで、本発明システムは、速度の計測誤差をより低減することができる。
【0052】
入力レベル値の利用に加え、高さ測定手段、角度測定手段の双方及び組選択手段を具えた車両有無判定部により車両の速度を求める手順例を以下に示す。
4-3-1 車両有りと判定されたとき、第四判定手段が、一つのグループから選択された比較値が閾値以上となる感知エリア(ONエリア)のうち、車線方向に隣接するONエリアの組の有無を判定するステップ。
4-5-1 車線方向に隣接するONエリアの組が複数存在する場合、組選択手段は、センサ(サーモパイル素子)の取り付け位置に最も近い位置にある組を選択するステップ。
4-7-1 第二検出手段が、選択された組のONエリアごとに、入力レベル値のピーク時刻を検出するステップ。
4-4-1 高さ測定手段が、センサの取り付け高さHを測定するステップ。
4-4-2 角度測定手段が、センサの取り付け角度θを測定するステップ。
4-4-3 第四演算手段が、測定された高さH,角度θにより車線方向に隣接する感知エリア間の距離dを演算するステップ。
4-7-2 第三演算手段が、第二検出手段から得られた二つのピーク時刻の時刻差を演算し、得られた時刻差と、第四演算手段により得られた距離dとから車両の速度を演算するステップ。
【0053】
上記サーモパイル素子(或いは素子を搭載させた回路基板)は、強度や耐性に優れる金属材料から形成された筐体、特に、アルミニウムなどの軽量な材料にて形成された筐体に収納するとよい。これらサーモパイル素子の検知方向前方には、各素子における赤外線感知範囲を適当な大きさに調整でき、かつ素子に効率よく赤外線を集光することができるように、赤外線透過レンズを配置することが好ましい。赤外線透過レンズは、形状、材料を特に限定しないが、例えば、一面が球面状でZnSから形成されるものが挙げられる。ZnS製レンズは、耐候性に優れ、レンズ自体を外部に露出させても十分使用に耐え得る。このレンズは、複数の素子に対して一つでもよいし、素子ごとに一つずつ設けてもよい。赤外線透過レンズの支持部も設けておく。この支持部は、筐体と一体の構成、例えば、筐体にレンズ孔を設けてレンズを装着する構成としてもよいし、筐体と別個に設けてもよい。前者の場合、筐体内には、赤外線透過レンズと焦点距離が合う位置にサーモパイル素子が固定されるように素子の固定部を設けることが好ましい。後者の場合、支持部は、サーモパイル素子(センサ)も配置できる形状とし、支持部にセンサ及びレンズを配置した際、センサ、レンズ、支持部が一体の部材となるようにすると、筐体への設置作業が容易にできて好ましい。また、この支持部は、センサ及び赤外線レンズを配置した際、適切な焦点距離となるように形成すると、筐体を所定の場所に配置するとき、焦点距離の調整を行う必要がなく好ましい。その他、筐体には、赤外線透過レンズの指向角を目的の方向に合わせるための照準部を具えていてもよい。照準部は、例えば、凹状突起と、凸状突起とを組み合わせた突起などの目印を設ける構成やレーザを用いた構成が挙げられる。このような筐体は、道路際に設けられている支柱に対し、いわゆるサイドファイア式に設置してもよい。本発明は、赤外線の感知を行うサーモパイル素子を利用しているため、サイドファイア式に設置して道路の側方からでも車両の検知を行うことができる。また、本発明システムにおいて、高さ測定手段や角度測定手段といったセンサの取り付け位置情報を測定する測定手段を具える場合、これらの測定手段は、センサの近傍に配置されることが好ましい。例えば、筐体内に収納させてもよいし、筐体近傍に取り付けてもよい。前者の場合、筐体の取り付けと同時に、測定手段の取り付けも行われるため、作業性がよい。
【0054】
車両有無判定部は、上記のように回路基板に搭載して、サーモパイル素子と共に上記筐体内に収納させてもよいし、別途設けた制御ボックス内に収納させてもよい。制御ボックスは、筐体を取り付ける支柱に固定するとよい。その他、本発明システムは、信号制御機や管理センターなどに有線や無線にて判定結果を送信可能な構成や、信号制御機などからの情報を受信可能な構成を具えていてもよい。この送受信構成は、筐体内や制御ボックスに収納させてもよいし、筐体を取り付ける支柱に別途取り付けてもよい。管理センターなどからの情報としては、上記のように不使用の素子からの情報を利用しないといった指令や、メンテナンス指令などが挙げられる。また、本発明システムには、サーモパイル素子、車両有無判定部や上述した測定手段、その他送受信部などの電源を必要とする部位に対して必要な動力を得るべく、太陽電池などの電源部を具えていてもよい。本発明システムでは、センサとして消費電力が小さいパッシブセンサを用いているため、太陽電池でも十分な動力を得ることができる。太陽電池を利用する場合、太陽電池のパネルは、筐体を取り付ける支柱に固定するとよい。
【発明の効果】
【0055】
上記構成を具える本発明車両検知システムは、監視範囲に複数の感知エリアを設けたことで、センサの取り付け位置精度がある程度低くても、高精度に車両の検知を行うことができる。特に、車幅方向の監視範囲を広めにして、車幅方向に複数の感知エリアを設けることで、本発明システムは、障害物の存在などにより車両の走行位置が変化したり、車線境界の変更などにより車両の走行位置が変化しても、車両の検知を行うことができるだけでなく、複数の車両を同時に検出することもできる。従って、本発明システムを利用すれば、センサの取り付け後、角度調整などの作業を不要としたり、調整時間を短縮させることができる。
【0056】
また、本発明システムは、車線方向に複数の感知エリアを設けることで、車両の走行方向を判別したり、車両の速度を求めたりすることができる。特に、車両の速度を求めるにあたり、本発明システムは、センサの取り付け位置情報を測定する測定手段を具えたり、演算に利用する感知エリアを適切に選択する選択手段を具えたり、入力レベル値を利用する構成としたりすることで、速度の誤差を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1(A)は、本発明車両検知システムを道路傍の支柱に取り付けた状態を示す概略図、(B)は、本発明システムに具えるセンサに基づく感知エリアの配置状態を説明する正面図である。本例に示す車両検知システム1は、道路100傍に配置される支柱300に取り付けられて、道路100の監視範囲10を通過する車両200を検知するものである。このシステム1は、車両200からの赤外線や、車両200以外の物体、主として道路100からの赤外線を感知して、これら赤外線の量に基づき車両の有無を調べるものであり、車両200や道路100などの検知対象が発する赤外線を感知するセンサ2と、センサ2から得られた入力レベル値を用いて車両の有無を判定する車両有無判定部とを具える。センサ2として、複数のサーモパイル素子(図示せず)を用いており、監視範囲10内には、各素子に基づく感知エリア11(1F〜8F,1B〜8B)が複数形成されている。そして、車両有無判定部は、感知エリア11ごとに入力レベル値の変化を調べ、その変化が一定値以上である感知エリア11の個数により、車両の有無を判定する。
【0058】
上記センサ2は、車両が通過していない場合、道路からの赤外線を感知し、車両が通過している場合、車両からの赤外線を感知する。これら二つの赤外線の量は、通常異なっているため、入力レベル値の変化を調べることで、車両の有無が判断できる。具体的には、車両有無判定部により、入力レベル値のうち、道路からの赤外線の量に基づく値を用いた演算値を背景レベルとし、入力レベル値と背景レベルとの差に基づく演算値を比較値とし、この比較値と閾値とを比較して、入力レベル値の変化を調べる。そして、本発明の最も特徴とするところは、一つの感知エリアにおいて入力レベル値の変化が一定値以上であるか否かで調べることで車両の有無を判定するのではなく、感知エリアごとに入力レベル値の変化を調べ、一定値以上の変化がある感知エリアの数により車両の有無を判定するところにある。
【0059】
本例に示す道路100は、片側二車線の合計四車線を有するものであり、二車線間に中央分離帯があり、道路100際に路側帯を有する。そして、本例では、監視範囲10を、片側二車線(第一車線,第二車線)及び路側帯、対向車線(中央分離帯よりも右側の車線)の一部を含む大きさとし、この監視範囲10に車幅方向に8つ、車線方向に2つ合計16個の感知エリア11を格子状に設けている。より具体的には、車幅方向において、各車線に3つずつ、路側帯に1つ、対向車線の一部に1つの感知エリア11を並べており、これら各感知エリア11についてそれぞれ車線方向に2つの感知エリア11を設けている。本例では、一つの感知エリアの大きさを約30cm四方、車幅方向における感知エリア間の間隔を約30cm、車線方向における感知エリア間の間隔を約1mとした。また、監視範囲を設けた第一車線及び第二車線の車両の走行方向は、手前(右側)から奥側(左側)に向かうものとする。
【0060】
上記16個の感知エリア11を設けるべく、本例では、センサ2として16個のサーモパイル素子を用いている。本例で用いたサーモパイル素子は、同一の基板に一体に配置されたものを利用した。この基板に、図1(A)で示すように横8列×縦2列の格子状に感知エリア11が設けられるようにサーモパイル素子を配置させている。この基板は、回路基板3に搭載させている。回路基板3には、素子からの入力レベル値に基づき車両の有無の判定を行う車両有無判定部の他、素子からの起電力を増幅するアンプ、起電力をデジタル信号に変換するA/D変換器なども搭載させている。車両有無判定部は、上記入力レベル値に基づき種々の演算、記憶、判定、その他起電力などのデータの取得、記憶の呼び出し、判定結果の書き込みなどの処理を行う。そこで、車両有無判定部は、演算手段や判定手段として市販のCPU、記憶手段としてメモリ、その他データ取得手段、記憶の呼び出し手段、判定結果の書き込み手段などを具える。これらサーモパイル素子や車両有無判定部を搭載させた回路基板3は、アルミニウム製の筐体4内に収納している。このとき、16個のサーモパイル素子がそれぞれ、図1に示すように感知エリア11を形成するように筐体4に固定している。筐体4においてサーモパイル素子の検知方向前方には、ZnS製の赤外線透過レンズ(図示せず)を配置している。この筐体4は、図1に示すようにサイドファイア式で支柱300に取り付けている。また、このシステム1は、車両有無判定部の判定結果を信号制御機や管理センターに送信したり、制御機などからの情報を受信する送受信部5、車両有無判定部や送受信部5などの電力供給を行う太陽電池を具えている。これら送受信部5や太陽電池のパネル6も支柱300に取り付けている。なお、図1では省略しているが、回路基板3や送受信部5と太陽電池との間は、太陽電池からの電力を供給できるように電力用配線にて接続される。また、回路基板3と送受信部5との間は、回路基板3の判定結果信号を伝送可能なように信号用配線にて接続される。送受信部5と信号制御機や管理センターとの間における信号の伝送は、無線にて行う。
【0061】
上記構成を具える本発明車両検知システムは、車両や道路といった検出対象が発する赤外線をサーモパイル素子で感知し、素子に生じた起電力をアンプにて増幅し、増幅された起電力をA/D変換器にてデジタル信号に変換して入力レベル値を得る。そして、本発明システムは、この入力レベル値と背景レベルとの差に基づく値(比較値)を演算し、この比較値が閾値以上である感知エリアの数を調べ、この数に応じて、車両の有無を判定する。なお、得られた判定結果は集計して、送受信部により信号制御機や交通管理センターなどに送る。送受信部は、メモリに集計結果が保存されているか否かを適宜確認して、保存されていた場合のみ制御機などに送信するように設定してもよい。
【0062】
上記本発明車両検知システムにおいて車両検知の手順を具体的に説明する。図2は、本発明車両検知システムにおいて車両有無判定部の処理手順の一例を示すフローチャート、図3(A)〜(L)は、感知エリアの処理結果例を示す説明図、図3(Z)は、感知エリアのON/OFFグラフである。この処理は、一定周期(例えば、5min周期)で一定間隔(例えば、10msec)のカウントアップを行うタイマを設けておき、一定間隔ごとに行うように設定してもよい。なお、本例では、図3に示すように各感知エリアの番号を車幅方向に路側帯側から順に1〜8と付し、車線方向にF又はBと付しており、車両有無判定部には、いずれの感知エリアにおける入力レベル値であるか、つまり、いずれのサーモパイル素子が取得した入力レベル値であるかを認識できるようにしている。
【0063】
車両有無判定部は、サーモパイル素子の作動に伴い処理が始まる(ステップS1)。本例では、16個のサーモパイル素子の全てを作動させる。処理開始直後は、背景レベルと閾値の初期学習を行ってもよい。これらの初期学習は特許文献1,2に記載される手法を利用してもよい。初期学習を行わせることで、背景レベル及び閾値を実際の環境に、より即した値とすることができる。初期学習を行う場合、各サーモパイル素子に基づく感知エリアごとに行う。具体的には、感知エリア1Bに対応するサーモパイル素子からの起電力(出力)を用いて、背景レベル、閾値の学習を行い、感知エリア1B独自の背景レベル、閾値を持つようにする。従って、16個の感知エリア1F〜8F,1B〜8Bのそれぞれに対して、背景レベル、閾値の学習がなされ、各エリアがそれぞれ独自の背景レベル、閾値を持つようになる。初期学習中は、車両の有無の判定を行わないように車両有無判定部を設定してもよい。初期学習により得られた背景レベル及び閾値は、メモリに保存するように車両有無判定部を設定する。
【0064】
次に、車両の有無の判定を始める。まず、車両有無判定部には、各サーモパイル素子から得られた起電力がそれぞれアンプで増幅されて送られ、車両有無判定部のデータ取得手段は、これら増幅されてA/D変換されたデータを入力レベル値として得る(ステップS2)。次に、車両有無判定部の第一演算手段は、各サーモパイル素子に基づく感知エリアごとに、入力レベル値と背景レベルとを用いて比較値を演算する(ステップS3)。具体的には、例えば、感知エリア1Fに対応するサーモパイル素子からの入力レベル値と、上述した感知エリア1F独自の背景レベルとを基にして、感知エリア1F独自の比較値を演算する。従って、16個の感知エリア1F〜8F,1B〜8Bのそれぞれに対して、比較値が演算され、それぞれ独自の比較値を持つようになる。比較値、背景レベル、閾値の演算は、後述する。
【0065】
次に、車両有無判定部の比較手段は、入力レベル値に基づき演算された比較値と閾値とを比較し、第一判定手段は、比較値が閾値以上となる感知エリアのうち、車幅方向に2個以上隣接する感知エリアを一つのグループとし、このグループの有無を判定する(ステップS4)。図3(A)〜(L)に示すように、16個の感知エリアにおいて、比較値が閾値以上となる感知エリア(以下、ONエリアと呼ぶ)が存在する場合は、種々考えられる。これら種々の場合のうち、本例では、車幅方向に2個以上連続してONエリアが存在する場合、車両が存在するとの判定を行う。そこで、車幅方向に2個以上隣接するONエリアをグループ化して取り扱う。なお、図3においてONエリアはハッチングを付した四角形、比較値が閾値未満である感知エリア(以下、OFFエリアと呼ぶ)は、白い四角形で示す。また、比較値が閾値以上となるときを「ON」、比較値が閾値未満となるときを「OFF」として集計して、図3(Z)に示すようにON/OFFのグラフを作製し、メモリに保存しておくように車両有無判定部を設定しておいてもよい。
【0066】
本例に示すシステムでは、上記グループが無い場合は、1.全ての感知エリアがOFFエリアとなっている場合、2.一つの感知エリアのみOFFエリアとなっている場合、3.図3(A)に示すように複数の感知エリアがONエリアとなっているが、車幅方向に隣接して存在しない場合、つまり、ONエリアが分散して存在する場合の上記1.〜3.のいずれかとなる。この場合、車両有無判定部の第一判定手段は、車両無しと判定し、書き込み手段は、集計結果に「車両無し」と書き込み、メモリ(記憶手段)に保存する。
【0067】
上記グループがある場合、グループは、一つの場合と、二つ以上の複数ある場合の二通りが考えられ、グループの数によって車両の台数が異なることが考えられる。そこで、本例では、車両有無判定部のグループ数判定手段が、図3(B),(I)に示すようにグループが1個であるか、図3(C)〜(F)などに示すようにグループが2個以上であるかを判定する(ステップS5)。本例に示すシステムでは、監視範囲の車幅方向の大きさを二車線及び余裕分としているため、図3(B)に示すようにグループが1個の場合、車両は1台存在すると考えられ、グループが2個以上の場合、車両は1台又は2台存在すると考えられる。そこで、本例では、グループが1個の場合、グループ数判定手段は、車両は1台であると判定し、車両有無判定部の第一走行位置判定手段は、車両の走行位置を判定する。つまり、第一走行位置判定手段は、第一車線を走行する車両であるのか、第二車線を走行する車両であるのかを判定する。また、グループが複数個ある場合、車両有無判定部の第二判定手段は、OFFエリアの配置状態から車両が複数台であるか否かを判定し、第二,第三走行位置判定手段により、これらの車両の走行位置を判定する。
【0068】
まず、グループが1個の場合について説明する。このとき、次に行う手順は、この車両が第一車線側の走行車両か、第二車線側の走行車両であるかの判定であり、車両有無判定部の第一走行位置判定手段は、ONエリアの数が第二車線側に少ないか否かを判定する(ステップS6)。図3(B)に示すように第二車線側にONエリアの数が少ない場合、つまり、第一車線側にONエリアが多い場合及び図3(G)に示すように第一車線側のONエリアの数と第二車線側のONエリアの数が等しい場合、本例では、第一走行位置判定手段は、第一車線に車両有りと判定し(ステップS7)、この判定結果を集計結果に書き込む。第二車線側にONエリアが多い場合、第一走行位置判定手段は、第二車線に車両有りと判定し(ステップS8)、この判定結果を集計結果に書き込む。このように本例では、車両の台数に加えて、車両の走行位置をも判定することができる。
【0069】
なお、図3(G)に示すように、グループをつくるONエリアの個数が第一車線側と第二車線側とで同数の場合、上述のようにいずれか一方の車線を走行する車両であると判定するように車両有無判定部を構成してもよいが、いずれの車線を走行する車両であるのかをより厳密に判定することが望まれる場合が考えられる。例えば、本例に示すように片側二車線の道路であって車両の走行方向が同じである二車線分に監視範囲を設けるのではなく、片側一車線の道路であって車両の走行方向が異なる二車線分に監視範囲を設ける場合などが挙げられる。このような場合、車両有無判定部は、前後の処理結果(ON又はOFFの判定結果)を利用することで走行方向を判定することができる。例えば、現在の処理のとき、ONエリアが図3(G)に示すように右側(F群)のみにあり、次の処理のとき、ONエリアが図3(H)に示すように車線方向に連続して(F群及びB群に)存在した場合、後述する進行方向の判定手段(第五判定手段)などを車両有無判定部に具えて進行方向を判定することで、この車両は、右側から左側に走行していることが判別できる。また、進行方向の判定手段に加えて後述する車線の判定手段(第六判定手段)を車両有無判定部に具えて車線を判定することで、車両が走行する車線を判別できる。例えば、第一車線が右側から左側に向かって車両が走行する車線であり、第二車線が左側から右側に向かって車両が走行する車線である場合、上記右側から左側に走行していると判定された車両は、本来第一車線を走行する車両であると判定できる。逆に、前回の処理のとき、図3(H)に示す状態であり、現在の処理のとき、図3(G)に示す状態となった場合、同様にして左側から右側に走行する車両であることが判別でき、本来第二車線を走行する車両であると判定できる。
【0070】
また、本例では、グループが1個の場合、車両の台数が1台であると判定するように車両有無判定部を構成しており、グループをつくるONエリアの個数が多い場合、車幅が大きな車両、或いは車高が大きな車両が存在すると考えられる。しかし、図3(I)に示すようにグループをつくるONエリアの個数が極端に多い場合、車両が1台であると判定することが不自然であると考えられる。そこで、このような場合、グループをつくるONエリアの個数が所定数以上であるとき、車両が複数台であると判定するように車両有無判定部を構成してもよい。具体的には、ONエリアの数がグループに所定数(例えば、6個)以上含まれる場合、車両が複数台(本例では2台)あると判定する第三判定手段を車両有無判定部に具えることが挙げられる。このとき、「第一車線、第二車線の双方に車両有り」と集計結果に書き込む。この手順は、例えば、ステップS6の判定の前に行うことが挙げられる。即ち、ステップS5においてグループが1個であると判定された後、第三判定手段がグループに含まれるONエリアの数が所定数以上であるか否かを判定し、所定数以上の場合、第一車線、第二車線の双方に車両有りと判定し、所定数未満の場合、第一走行位置判定手段により、走行車線を判定するとよい。
【0071】
一方、グループが2個以上ある場合、車両有無判定部は、車両が1台か2台かを判別する。車両が2台である場合、通常、2台の車両は、車幅方向に間隔を空けて走行すると考えられる。そのため、例えば、図3(C),(J),(K)に示すように車幅方向に隣接するグループ間にOFFエリアが存在する場合、2台であると考えられ、例えば、図3(D)に示すように同OFFエリアが存在しない場合、1台であると考えられる。そこで、車両有無判定部の第二判定手段は、車幅方向において隣接するグループ間にOFFエリアが存在するか否かを判定する(ステップS9)。そして、図3(C)に示すように車幅方向にOFFエリア(この例では、5B,5F)が存在する場合、第二判定手段は、第一車線、第二車線の双方に車両有りと判定し(ステップS13)、集計結果に書き込む。なお、隣接するグループとは、図3(K)に示すように車幅方向に並ぶ同一列(本例ではB群)に存在するグループ同士だけでなく、図3(C),(J)に示すように車幅方向に並ぶ例であって車線方向に隣接する列(本例ではB群及びF群)に存在するグループ同士とする。つまり、グループが存在する車幅方向に並ぶ列が車線方向に異なっていてもよい。
【0072】
図3(D)〜(F),(H),(L)に示すように車幅方向に隣接するグループ間にOFFエリアが存在しない場合、車両は1台であることも考えられる。そこで、本例では、いずれの車線にONエリアの数が多いかを調べることで、車両の台数及び走行位置を判定する。具体的には、車両有無判定部の第二走行位置判定手段は、ONエリアの個数が第一車線側と第二車線側とで同数か否かを判定する(ステップS10)。ONエリアの個数が同数で無い場合、例えば、図3(D)に示すようように第一車線側、第二車線側のいずれかにONエリア数が多くあり、このような場合は、ONエリア数が多い車線側に車両が1台存在すると考えられる。そこで、グループが1個存在したときと同様に、車両有無判定部は、ONエリアの数が第一車線側と第二車線側のいずれに多いかを調べ、車両の走行位置を判別する。
【0073】
なお、本例では、図3(L)に示す場合もいずれかの車線を走行する1台の車両であるとの判定を行うが、上述のように第三判定手段を車両有無判定部に具えておき、車幅方向に並ぶONエリアの数が多いグループが存在する場合、複数台(本例では2台)であると判定するようにしてもよい。例えば、グループごとにONエリアの数が所定数以上であるか否かを判定し、所定数以上であるグループが存在する場合、第一車線、第二車線の双方に車両有りと判定する(例えば、図3(L)の場合)ように第三判定手段を構成し、存在しない場合(例えば、図3(D)の場合)、グループが1個のときと同様に第一走行位置判定手段により、走行車線を判定するとよい。
【0074】
ONエリアの個数が同数の場合は、図3(E)のように車線方向に連続してONエリアが存在しない場合と、図3(F),(H)のように車線方向に連続してONエリアが存在する場合とが考えられる。そして、車線方向に連続してONエリアが存在する場合、車両は1台であると考えられ、存在しない場合、車両は2台であると考えられる。そこで、車両有無判定部の第三走行位置判定手段は、車線方向に隣接するONエリアが有るか否かを判定する(ステップS11)。車線方向に隣接するONエリアが有る場合、車両は、図3(F),(H)に示すように車線境界近傍を通過しており、このような走行をする車両は、本例の場合、本来第一車線を走行する車両であると考えられる。そこで、車両有無判定部の第三走行位置判定手段は、第一車線に車両有りと判定し(ステップS12)、集計結果に書き込む。一方、車両有無判定部の第三走行位置判定手段は、車線方向に隣接するONエリアが無い場合、車両が2台有ると判定する、即ち、第一車線、第二車線の双方に車両有りと判定し(ステップS13)、集計結果に書き込む。
【0075】
なお、本例では、車線方向に連続してONエリアが存在する場合、車両を1台として判定したが、上述した図3(L)の場合と同様に、車幅方向に並ぶONエリアの数が多いグループが存在する場合、複数台(本例では2台)であると判定するように車両有無判定部を構成してもよい。具体的には、第三走行位置判定手段が車線方向に隣接するONエリアが存在するとの判定を行った後、グループごとにONエリアの数が所定数以上であるか否か判定し、所定数以上であるグループが存在する場合、第一車線、第二車線の双方に車両有りと判定し、存在しない場合、第一車線に車両有りと判定するように車両有無判定部を構成してもよい。
【0076】
上記手順により、本発明車両検知システムでは、車両の有無を精度よく検知することができる。特に、車幅方向に複数の感知エリアを設けていることで、車両の走行位置も把握することができることに加えて、複数台の車両を同時に検知することができる。
【0077】
本例で用いた比較値を説明する。本例において比較値は、入力レベル値と背景レベルとの差に基づき演算した値を用いる。具体的には、入力レベル値bnと前回の背景レベルan-1との差分(背景差分と呼ぶ)を求め、この背景差分の一定時間における積算値を比較値とする。この積算値だけでなく、積算値と入力レベル値の単位時間当たりの変化量とを用いて演算される演算値を利用してもよい。具体的には、上記と同様に入力レベル値と前回の背景レベルとの差分(背景差分)を求め、この背景差分の一定時間における積算値を求める。次に、入力レベル値の変化量(現在の入力レベル値と過去の入力レベル値との差)を求め、更に、この変化量の平均値を求める。この平均値を定数倍したものと上記積算値とを加えた値を比較値としてもよい。このように積算値だけでなく、変化量をも用いて演算した値を比較値とすることで、車両の誤認や認識できない場合などを更に低減する。また、このように変化量をも考慮した値をアルゴリズムに用いることで、焦電センサなどの他のセンサを用いることなく、サーモパイル素子のみでも十分に赤外線の感知を行って、車両の有無を判定することができる。
【0078】
本例で用いた閾値を説明する。本例において閾値は、実際の環境に応じて、即ち、赤外線量の変化(温度変化の大小)に応じて変化させるべく、設定値と補正値との和という演算値を用いた。より具体的には、設定値を最低値とし、設定値に種々の補正値、具体的には、前回の処理結果(ON又はOFFの判定結果)に応じて変化させる補正値を加えることで、実際の環境に追従させた。
【0079】
次に、本例で用いた背景レベルを説明する。本例では、入力レベル値のうち、道路などの背景を検出した際の入力レベル値、即ち、比較値が閾値未満となった場合の入力レベル値をメモリに保存しておき、この値を用いた演算値を背景レベルとした。具体的には、指数平滑法による演算を行い、入力レベル値をbn、次回の判定に用いる背景レベルをan、平滑係数をαとするとき、an=an-1+α×(bn-an-1)を背景レベルとした(an-1は前回閾値と比較した比較値に用いた背景レベル)。特に、平滑係数αを上述した閾値と同様に前回の判定結果に応じて変化させることで、背景レベルを実際の環境により即した値とした。
【0080】
なお、本例では、監視範囲として片側二車線を含む例としたが、片側一車線の合計二車線としてもよい。このとき、互いに逆方向に走行する車両の有無の検知を行うことができる。また、監視範囲として、一車線(以下、当該車線と呼ぶ)と、路側帯(一部)、当該車線に隣接する別の車線の一部を含む範囲としてもよい。このとき、当該車線内に三つ、路側帯に一つ、隣接する別の車線の一部を含むように一つの合計五つの感知エリアを車幅方向に並んで設けるとよい。この場合、当該車線を走行する車両が隣接する別の車線側に走行位置がずれたり、同車両が路側帯側に走行位置がずれたりした場合であっても、別の車線側に設けた感知エリアや路側帯に設けた感知エリアにより、車両からの赤外線を感知することができるため、筐体の取り付け角度を変化させること無く、或いは簡単な角度調整により、車両の有無を検知することができる。
【0081】
(進行方向判定)
次に、車両が存在した場合、車両の進行方向を判別する手順を説明する。図3(F),(H)などに示すように車線方向に連続してONエリアが存在する場合、右側から左側に走行する車両では、右側のF群の感知エリアが左側のB群の感知エリアよりも先に比較値が閾値以上となる。即ち、図3(Z)に示すように現在時刻がt3とすると、F群の感知エリアは、時刻t1でONとなり、B群の感知エリアはそれから遅れて時刻t2でONとなる。このことから、F群の感知エリアが先にONとなること、即ち、車両が右側から左側に走行することが判別できる。
【0082】
具体的な手順を説明する。図4は、本発明システムにおいて車両の進行方向の判定手順を示すフローチャートである。まず、車両有無判定部の第四判定手段は、車線方向に連続してONエリアの組が存在するか否かを判定する(ステップS20)。車線方向に隣接するONエリアの組が存在する場合[進行方向判定I]、車両有無判定部に具える組選択手段により、このような組が1組か複数組存在するか判定し(ステップS21)、1組のときはこの組について、このような組が複数存在するときは任意の組を選択し(ステップS22)、この選択された組について、車両有無判定部の第一検出手段は、F群のグループに属するONエリアとB群のグループに属するONエリアのそれぞれに対して、ONとなった時刻TF,TBを検出する(ステップS23)。次に、第五判定手段は、得られた時刻TF,TBを比較し(ステップS24)、F群のグループの時刻TFがB群のグループの時刻TBよりも早い場合、右側から左側に向かう車両であると判定し(ステップS25)、B群のグループの時刻TBがF群のグループの時刻TFよりも早い場合、左側から右側に向かう車両であると判定する(ステップS26)。なお、ONとなった時刻もメモリに保存されるように設定しておく。このように本発明システムでは、車両の台数だけでなく、車両の進行方向をも判別することができる。そのため、例えば、2台の車両が検知された際、進行方向の判別により、追い越し車両のように同一方向に走行する車両なのか、異なる方向に走行する車両なのかを判別できる。このような判別を行うのは、走行方向が異なる車線を監視範囲に含む場合が好適である。なお、進行方向の判定終了後、メモリに保存した時刻は、クリアにしてもよい。また、時刻を一定周期でカウントする場合、オーバーフローを是正して、時刻の大小を比較するように第五判定手段を構成してもよい。
【0083】
[進行方向判定II]
次に、車線方向に隣接するONエリアが存在しない場合に進行方向を判定する手法を説明する。この手法は、過去の処理結果(ON又はOFFの判定結果)を利用するものである。図5は、本発明システムにおいて車両の進行方向の判定手順を示すフローチャートであり、車線方向に隣接するONエリアが存在しない場合を示す。上記第四判定手段が、車線方向に連続してONエリアが存在しないと判定した場合、車両有無判定部に具える第一グループ選択手段にて、グループが一つであるか複数であるかを判定し(ステップS30)、グループが複数である場合、任意のグループ(車両の進行方向を求めたいグループ)を選択する(ステップS31)。次に、第一グループ選択手段にて選択されたグループ、或いはグループが一つのときはそのグループについて、車両有無判定部に具えるグループ判定手段は、グループがF群,B群のいずれに存在するかを判定する(ステップS32)。グループがF群に存在する場合、車両有無判定部に具える第二グループ選択手段は、グループ内の任意のONエリアを選択し(ステップS33)、第一検出手段は、選択されたONエリアがONとなった時刻TFを検出する(ステップS34)。次に、車両有無判定部に具える抽出手段は、上記選択されたONエリアと車線方向に隣接するB群のONエリアを、メモリに記憶されている前回の処理結果から抽出し(ステップS35)、第一検出手段は、抽出されたB群のONエリアがONとなった時刻TBを検出する(ステップS36)。そして、第五判定手段は、第一検出手段より検出された二つの時刻TF,TBを比較して(ステップS37)、上記進行方向判定Iと同様に時刻TFが時刻TBよりも小さい場合、右側から左側に向かう車両であると判定し(ステップS38)、時刻TBが時刻TFよりも小さい場合、左側から右側に向かう車両であると判定する(ステップS39)。
【0084】
グループがB群に存在する場合、F群の場合と同様に第二グループ選択手段は、グループ内の任意のONエリアを選択し(ステップS33')、第一検出手段は、このONエリアに対してONとなった時刻TBを取得する(ステップS34')。次に、抽出手段は、選択されたONエリアと車線方向に隣接するF群のONエリアを前回の処理結果から抽出し(ステップS35')、第一検出手段は、このONエリアがONとなった時刻TFを検出する(ステップS36')。以下、上述したF群の場合と同様に、第五判定手段は、ステップS37〜S39を行い、車両の進行方向を判定する。このような判定を行う場合、車両有無判定部は、グループ選択手段、グループ判定手段、抽出手段を具えておく。
【0085】
(走行車線の判定)
更に、車両の進行方向から、車両が走行する車線の判別を行うこともできる。例えば、右側から左側に走行する車線を第一車線、左側から右側に走行する車線を第二車線とする場合、メモリに上記車線情報を予め入力しておき、車両の進行方向結果により、メモリから車線情報を呼び出して、車両の走行車線を判定する第六判定手段を車両有無判定部に具えておくことが挙げられる。
【0086】
(速度演算)
(1) 感知ON時刻を利用する場合
また、車線方向にも複数の感知エリアを具える場合、進行方向だけでなく、車両の速度を検出することも可能である。図6は、本発明システムにおいて車両の速度を演算する手順を示すフローチャートである。具体的には、上述した進行方向を求める場合と同様に、第四判定手段は、車線方向に隣接するONエリアの組の有無を判定し(ステップS40)、ONエリアの組がある場合[速度演算I]、組選択手段により組が1組か複数組かを判定し(ステップS41)、1組のときはこの組について、複数組のときは任意の組を選択し(ステップS42)、この選択された組について、車両有無判定部の第一検出手段は、F群のONエリアがONになった時刻TFと、このONエリアに車線方向に隣接する別のONエリアがONになった時刻TBを検出する(ステップS43)。この時刻は、上記のようにONとなった時刻をメモリから呼び出すことにより行うとよい。そして、車線方向に隣接する感知エリア間の距離dを予めメモリに入力しておき、メモリから間隔dを呼び出し、車両有無判定部の第二演算手段は、時刻差TB-TFを演算し、この時刻差を用いて速度V=d/(TB-TF)を演算することで、速度Vを求めることができる(ステップS44)。
【0087】
なお、一定間隔tでカウントアップするタイマを利用して感知処理を行っている場合、上記時刻差(TB-TF)×tで距離dを除するようにすれば速度を求めることができる。また、時刻差は、後にONとなった時刻から先にONとなった時刻を引くことで求めるようにすればよい。本例では、F群のONエリアが先にONとなり、B群のONエリアが後でONとなった場合を考えているため、時刻差をTB-TFとした。このとき、タイマが一定周期Tでカウントする場合、例えば、T=0〜99の100カウントとし、先にONとなったF群の感知エリアの時刻TFが98、後にONとなったB群の感知エリアの時刻TBが3の場合、(TB-TF)が-95となり、適正な速度を求められない。このような不具合を防ぐべく、時刻差を求める前に時刻TF、時刻TBの大小関係を求めておき、先にONとなった時刻が後にONとなった時刻よりも大きい場合、即ち、オーバーフローしている場合、周期数に後にONとなった時刻を足し合わせるなどの処理を行うとよい。この例の場合、後にONとなった時刻:3に周期数:100を足し合わせ、(3+100)-98=5が時刻差となる。なお、速度の演算終了後、メモリに保存した時刻は、クリアにしてもよい。
【0088】
[速度演算II]
一方、車線方向に隣接するONエリアがないと判定された場合、上述した進行方向の判定手順と同様に、過去のデータを用いて速度の演算を行ってもよい。具体的には、第一グループ選択手段にて、速度の演算を行うグループを選択し、選択されたグループ、或いはグループが一つのときはそのグループがF群,B群のいずれかをグループ判定手段にて判定し、第二グループ選択手段により、任意のONエリアを選択する。次に、第一検出手段は、選択されたONエリアがONとなった時刻と、抽出手段により抽出されたONエリア(上記選択されたONエリアと車線方向に隣接するONエリア)がONとなった時刻とを検出する。そして、第二演算手段は、得られた二つの時刻と、メモリから呼び出した距離dとにより速度Vを演算する。
【0089】
[速度演算III]
上述した速度演算手法では、車線方向に隣接する組が複数組存在する場合、組選択手段は、任意の組を選択するように構成した場合を説明したが、特定の組を選択するように構成してもよい。車両の大きさ(高さや幅)によっては、同一の感知エリアを通過する車両からの赤外線が、この感知エリアに対応したセンサに感知されるまでの時間が異なることがある。この時間のずれが、速度演算において誤差を生じさせる。誤差を低減するには、車両の大きさによらずセンサに感知されるまでの時間ができるだけ安定していることが望まれる。ここで、車両の各部位のうちタイヤの取り付け位置は、車両の大きさによらず安定していることから、タイヤ及びその近傍からの赤外線を感知する場合、上記センサに感知されるまでの時間が安定し易い。特に、タイヤ及びその近傍は、グループを構成するONエリアのうち、センサの取り付け位置に最も近いONエリアを通過した可能性が高い。従って、車線方向に隣接する組が複数存在する場合、センサの取り付け位置に最も近いONエリアを選択するように組選択手段を構成することで、本発明システムは、速度誤差を低減することができる。
【0090】
(2) ピーク時刻を利用する場合
上述した速度演算手法では、ONエリアがONになった時刻(感知ON時刻)を用いて速度を演算する例を説明した。ここでは、入力レベル値を用いて速度を演算する場合を説明する。感知ON時刻は、感知エリアが形成される路面状態などで多少変動することが考えられるため、感知ON時刻を利用して速度を演算する場合、時刻差に誤差が生じる恐れがある。一方、入力レベル値の経時的な波形は、車両が存在したときに変化が大きく、車両が存在しない場合、変化がほとんどない。従って、入力レベル値において大きな変化が起きている時刻を速度の演算に利用すると、誤差を低減することができる。そこで、本例では、上記時刻として入力レベル値が変位点をとった時刻(ピーク時刻)を利用する。
【0091】
図7は、本発明システムにおいて入力レベル値を用いて車両の速度を演算する手順を示すフローチャートである。まず、上述した感知ON時刻を用いて速度の演算を行う場合と同様に、第四判定手段は、車線方向に隣接するONエリアの組の有無を判定し(ステップS50)、ONエリアの組がある場合[速度演算IV]、組選択手段により組が1組か複数組かを判定し(ステップS51)、1組のときはこの組について、複数組のときは任意の組を選択し(ステップS52)、この選択された組について、車両有無判定部に具える第二検出手段が、これらONエリアごとに、ONが連続して検出されている時間(検出時間)における入力レベル値を呼び出し、図11(F群),(B群)に示すようにこの検出時間内においてピーク時刻TpF,TpBを検出する(ステップS53)。このとき、入力レベル値は、随時メモリに記憶されるように記憶手段を構成しておく。また、本例では、図11(F群),(B群)に示すように上記検出時間において複数のピークが存在する場合、この検出時間において最初に現れたピークの時刻を検出するように第二検出手段を構成している。更に本例では、上記速度演算IIIで説明したように、センサの取り付け位置から最も近い位置にあるONエリアの組を選択するように組選択手段を構成している。センサの取り付け位置から離れた位置にあるONエリアの入力レベル値には、車両においてタイヤ及びその近傍のようにピークが現れにくい箇所(例えば、車両ボディなど)からの赤外線に基づく値のものがあり、このような入力レベル値では、図11(A)に示すようにピークが存在しないことがある。そこで、本例では、上述のようにセンサの取り付け位置から最も近い位置にあるONエリアの組を選択するようにした。そして、車両有無判定部に具える第三演算手段は、時刻差TpB-TpFを演算し、メモリから呼び出した距離dとこの時刻差とを用いて速度V=d/(TpB-TpF)を演算することで、速度Vを求めることができる(ステップS54)。
【0092】
一方、車線方向に隣接するONエリアがないと判定された場合[速度演算II']、上述した進行方向の判定手順と同様に、過去のデータを用いて速度の演算を行ってもよい。具体的には、第一グループ選択手段にて、速度の演算を行うグループを選択し、選択されたグループ、或いはグループが一つのときはそのグループがF群,B群のいずれかをグループ判定手段にて判定し、第二グループ選択手段により、任意のONエリアを選択する。次に、第二検出手段は、選択されたONエリアの入力レベル値のピーク時刻と、抽出手段により抽出されたONエリア(上記選択されたONエリアと車線方向に隣接するONエリア)の入力レベル値のピーク時刻とを検出する。そして、第三演算手段は、得られた二つのピーク時刻と、メモリから呼び出した距離dとにより速度Vを演算する。このように入力レベル値を用いて速度の演算を行うことで、本発明システムは、速度誤差をより低減することができる。
【0093】
(3) 感知エリア間の距離を演算により求める場合
上述した速度演算手法では、車線方向に隣接する感知エリア間の距離dを固定値とし、車両有無判定部(メモリ)に予め入力しておく場合を説明した。ここでは、距離dを演算により求める場合を説明する。車線方向に隣接する感知エリア間の距離dは、筐体に収納したセンサを支柱に取り付けた高さや取り付け角度により変動する。従って、距離dを固定値とすると、上記取り付け高さや取り付け角度が変動して距離dが上記固定値と異なった際、そのまま利用すると速度に誤差が生じる。そのため、速度を演算する場合、車線方向に隣接する感知エリア間の実際の距離を用いることが好ましい。特に、作業者がセンサの取り付け位置情報(高さや角度)を実際に測定するのではなく、位置情報の測定手段を具えておき、車線方向に隣接する感知エリア間の距離が車両有無判定部に自動的に取得されるような構成とすると、誤差を低減できると共に、簡単に得ることができる。そこで、車線方向に隣接する感知エリア間の距離を自動的に取得可能な構成を具えるシステムを以下に説明する。
【0094】
車線方向に隣接する感知エリア間の距離dは、図9に示すようにセンサの取り付け角度(道路面に対する垂直方向の傾き)をθ、道路面からセンサまでの高さをH、車幅方向に隣接する感知エリア間の水平方向の角度をβとするとき、d=2×(H/cosθ)×{tan(β/2)}で求められる。水平方向の角度βは、センサの配置状態で決まるものであるため、本例に示すシステムでは、取り付け角度θを自動的に測定する角度測定手段、高さHを自動的に測定する高さ測定手段を筐体内に収納させている。角度測定手段、高さ測定手段は、市販の角度計及び距離計を用いており、測定された高さ及び角度が車両有無判定部に具える第四演算手段に送られるように構成している。また、角度βは、メモリに予め入力している。
【0095】
図8は、角度測定手段及び高さ測定手段を具える本発明システムにおいて車両の速度を演算する手順を示すフローチャートである。ステップS40〜S43までの手順は、上述した速度演算Iと同様にするとよく、ここでは、説明を省略する。ステップS43に引き続き、高さ測定手段は、センサの取り付け高さHを測定し(ステップS60)、第四演算手段に送る。また、角度測定手段がセンサの取り付け角度θを測定し(ステップS61)、第四演算手段に送る。そして、第四演算手段は、メモリから角度βを呼び出し、角度β、及び測定された高さH,角度θにより車線方向に隣接するONエリア間の距離dを演算する(ステップS62)。次に、第二演算手段は、第一検出手段から得られた二つの時刻TB,TFの時刻差TB-TFを演算し、得られた時刻差TB-TFと、第四演算手段により得られた距離dとから車両の速度Vを演算する(ステップS63)。このようにセンサの取り付け位置情報を実際に測定し、この測定結果に基づいて車線方向に隣接する感知エリア間の距離dを演算し、この距離dを用いて速度の算出を行うことで、誤差をより低減することができる。
【0096】
なお、本例では、時刻の検出ステップを距離演算ステップよりも先に行っているが、いずれのステップが先でもよい。また、角度θと高さHの取得もいずれが先でもよい。更に、本例では、速度演算Iの手順を基本として説明したが、車線方向に隣接するONエリアの組がない場合は、速度演算IIの手順を基本として過去のデータを用いて速度演算を行ってもよいし、同組が複数存在する場合は、速度演算IIIで説明したように組選択手段を具えて、特定の組を選択するようにしてもよい。また、感知ON時刻ではなく速度演算IVで説明したように入力レベル値のピーク時刻を用いてもよい。
【0097】
更に、上記では、速度演算機能を具えるシステムについて説明したが、この速度を用いて車長を演算する第五演算手段と、得られた車長から車種を判定する第七判定手段とを具えるシステムを構築してもよい。車長は、ONが連続して検出されている時間と速度との積により求めるように第五演算手段を構成するとよい。また、車長が所定値以上のとき、大型車であり、所定値未満のとき、大型車以外の車両であると判定するように第七判定手段を構成するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明車両検知システムは、交通量や占有率などの交通流を調べるのに好適である。特に、車両の走行位置がずれる可能性があるような大きさの道路、具体的には二台以上の車両が走行可能な大きさを有する道路を対象とした交通流調べに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】(A)は、本発明車両検知システムを道路傍の支柱に取り付けた状態を示す概略図、(B)は、本発明システムに具えるセンサの検出可能範囲を示す説明図である。
【図2】本発明車両検知システムの車両検知手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】(A)〜(L)は、本発明システムを利用した際、ONエリア及びOFFエリアがとりうる状態を説明する説明図であり、(A)は、車両無しの場合、(B)は、第一車線側を走行する車両が1台有る場合、(C),(E),(I)〜(L)は、第一車線側及び第二車線側を走行する車両がそれぞれ1台ずつ有る場合、(D)は、第二車線側を走行する車両が1台有る場合、(F)〜(H)は、車両が1台有る場合を示す。(Z)は、感知エリア4F〜6F,4B〜6Fの判定結果を説明するON/OFFグラフである。
【図4】本発明システムにおいて、車両の進行方向を判定する手順を示すフローチャートであり、判定時に車線方向に隣接するONエリアの組が存在する場合を示す。
【図5】本発明システムにおいて、車両の進行方向を判定する手順を示すフローチャートであり、判定時に車線方向に隣接するONエリアの組が存在しない場合を示す。
【図6】本発明システムにおいて、車両の速度を演算する手順を示すフローチャートであり、感知ON時刻を利用して速度を求める場合を示す。
【図7】本発明システムにおいて、車両の速度を演算する手順を示すフローチャートであり、入力レベル値のピーク時刻を利用して速度を求める場合を示す。
【図8】センサの取り付け位置情報を測定する測定手段を具える本発明システムにおいて、車両の速度を演算する手順を示すフローチャートである。
【図9】センサの取り付け状態と感知エリアとの関係を示す模式図であり、(A)は、平面図、(B)は、斜視図である。
【図10】センサが車両からの赤外線を感知するまでの時間が車両の大きさによって異なることを説明する説明図であり、(A)は、上面図、(B)は、正面図である。
【図11】入力レベル値の経時的変化波形と処理結果を示す模式図であり、(A)は、センサの取り付け位置から離れた位置にある感知エリアの入力レベル値と処理結果、(F群)、(B群)は、センサの取り付け位置に最も近い位置にある感知エリアの入力レベル値と処理結果を示す。
【符号の説明】
【0100】
1 車両検知システム 2 センサ 3 回路基板 4 筐体 5 送受信部
6 太陽電池のパネル
10 監視範囲 11 感知エリア
100 道路 200,200h,200l 車両 300 支柱
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路上の監視範囲を通過する車両を検知する車両検知システムに関するものである。特に、車両の走行位置が車幅方向にずれたり、センサの取り付け角度が変化するなどした場合であっても、高精度に車両を検知することができる車両検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
交通量や占有率などの交通流を調べるために車両を検知するシステムとして、赤外線感知センサを利用した車両検知システムが提案されている(特許文献1,2)。これらの車両検知システムは、サーモパイル素子といった赤外線を感知するセンサにより、車両が発する赤外線及び道路などの車両以外の物体が発する赤外線をそれぞれ検出し、これら赤外線の量に基づいて車両の有無を判定する構成である。特に、特許文献2に記載される車両検知システムでは、一車線に対し、二つのサーモパイル素子を用い、一車線の車幅方向又は車線方向に素子に基づく感知エリアが二つ設けられるように構成して、両エリアからの入力レベル値を組み合わせて出力を大きくすることで、検知精度を高めている。
【0003】
【特許文献1】特開2003-317186号公報
【特許文献2】特開2004-302699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術は、一車線内に対して感知エリアを設け、この感知エリアを通過する車両の検知を行うものである。そこで、上記技術では、車両の走行頻度が高い箇所、例えば、一車線内の中央部に感知エリアが配置されるように、センサとなるサーモパイル素子を収納した筐体を支柱に取り付けており、筐体の取り付け後、筐体(センサ)の取り付け角度が変化しない限り、感知エリアの配置が変化しない。そのため、感知エリアで道路工事が行われたり、感知エリアに駐車車両などの障害物が存在するなどして、走行する車両が走行位置を変えたり、或いは、筐体に何らかの物体が衝突するなどして取り付け角度が変化するなどした場合、車両からの赤外線をセンサが感知することができず、適切に車両の検知が行えない恐れがある。また、車線境界表示の変更などにより、車両の走行位置を変化させることも考えられる。更に、感知エリアを設けた車線(以下、当該車線と呼ぶ)に隣接する別の車線を走行する車両が当該車線にはみ出して走行した場合、この車両を、当該車線の走行車両として検知することも考えられる。
【0005】
上記のように車両の走行位置や筐体の取り付け角度などが変化した場合、適切な検知を行うためには、筐体の取り付け角度の調整などが必要となるが、角度の調整には、ある程度作業者のスキルが要求され、調整が正確に行われないと、検知精度を低下させる恐れがある。従って、角度調整の作業時間が長時間に亘ることもある。また、筐体の取り付け位置が5m程度の高所であることから、取り付け角度の調整には、バケット車などの特殊な作業車両や設備などを用いるため、場合によっては、交通規制なども必要となる。そこで、角度の調整は、取り付けの際のみとすることが最も好ましく、角度調整を行う場合は、できるだけ短時間で済むようにすることが望まれる。更に、取り付け角度の調整を行っても、上述した障害物などの回避により車両が走行位置を変えた場合のように突発的な走行位置の変化には、対応することが難しい。
【0006】
そこで、本発明の主目的は、車両の走行位置が変化するなどした場合であっても、精度よく車両の検知を行える車両検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、サーモパイル素子を複数用い、各素子に基づく感知エリアを複数形成したことで上記目的を達成する。本発明は、道路上の監視範囲を通過する車両を検知する車両検知システムであり、検知対象が発する赤外線を感知する複数のサーモパイル素子と、これらサーモパイル素子から得られた入力レベル値を用いて、車両の有無を判定する車両有無判定部とを具える。監視範囲には、各サーモパイル素子に基づく感知エリアが複数形成されるものとする。そして、本発明において車両有無判定部は、入力レベル値のうち、車両以外の物体が発する赤外線の量に基づく値を背景レベルとし、入力レベル値と背景レベルとの差に基づく値を比較値とし、この比較値と閾値との比較を感知エリアごとに行い、比較値が閾値以上となる感知エリアの数に応じて車両の有無を判定する。特に、監視範囲の車幅方向の大きさは、一車線を越える大きさとし、この一車線内及びこの車線の外側の双方に感知エリアが設けられて車幅方向に複数の感知エリアが配置されるようにサーモパイル素子を具えることが好ましい。更に、車幅方向だけでなく、監視範囲の車線方向にも複数の感知エリアが配置されるようにサーモパイル素子を具えることが好ましい。
【0008】
本発明は、突発的な場合も含めて車両の走行位置や筐体(センサ)の取り付け角度などが変化した場合であっても、筐体の取り付け角度などの調整を行うことなく、或いは簡単な調整で車両の検知を精度よく行うことができるように、監視範囲を大きめにする。特に、本発明システムは、車幅方向に監視範囲を大きくする。そして、この比較的大きな監視範囲内に複数の感知エリアを設けるべく、本発明システムは、複数のセンサ(サーモパイル素子)を具える。特に、本発明では、車幅方向に複数の感知エリアが設けられるようにセンサを具えることで、車両の走行位置が車幅方向にずれたり、筐体の取り付け角度が変化して感知エリアが車幅方向にずれても、車両は、複数ある素子のうち少なくとも一部の素子に基づく感知エリアを通過すると考えられる。従って、本発明システムは、複数具えるサーモパイル素子のうち一部の素子により、車両の検出を十分行うことができる。監視範囲を大きくしても、感知エリアが一つだけの場合、即ち、一つのサーモパイル素子で車両の検知を行う構成では、感知エリアを広くして、走行位置の変化や取り付け角度の変化に対応せざるを得ない。しかし、この場合、S/N比(シグナルとノイズの比)が低下して、適切な検知を行えない恐れがある。そこで、本発明システムでは、複数のセンサを用い、大きな監視範囲に対してセンサに基づく感知エリアを複数設ける、即ち、監視範囲を複数の感知エリアに分割する構成とすることで、車両の検知精度の向上を図る。このように一つの監視範囲を複数の感知エリアに分割することで、一つのセンサに基づく感知エリアを小さくできるため、本発明システムは、S/N比の低下を低減し、適切な検知を行うことができる。
【0009】
監視範囲の車幅方向の大きさとしては、一車線を超える大きさとすることが好ましい。一車線とは、車線境界線や中央分離帯を有する道路の場合、ある車線境界線とこの境界線に隣接する車線境界線(又は中央分離帯)との間の大きさ(通常、3〜3.5m程度)、車線境界線などを有していない道路の場合、一台の車両が走行可能な大きさとすることが挙げられる。そして、一車線を越える大きさとは、上記一車線分に余裕分を加えた大きさとする。余裕分としては、路側帯の少なくとも一部やこの車線に隣接する別の車線の少なくとも一部が挙げられる。路側帯の境界線がない場合、路肩近傍としてもよい。従って、具体的な監視範囲の車幅方向の大きさとしては、例えば、一車線と、この車線に接する路側帯(の一部)と、この車線に隣接する別の車線の一部を含む大きさが挙げられる。監視範囲は、複数車線に亘って設けてもよく、具体的には、二車線と、一方の車線に接する路側帯(の一部)と、路側帯側でない車線に隣接する別の車線の一部を含む大きさが挙げられる。このとき、二車線は、2台の車両が同方向に走行する片側二車線でもよいし、2台の車両が異なる方向に走行する片側一車線の合計二車線としてもよい。車線数が多い道路の場合、監視範囲の車幅方向の大きさとしては、二車線以上と、一端側の車線に隣接する別の車線の一部と、他端側の車線に隣接する車線の一部とを含む大きさが挙げられる。監視範囲の車幅方向の大きさを道路幅全域に及ぶようにしてもよい。路側帯や車線境界線、その他中央分離帯などがなく、明確に車線が区分けされていない道路の場合、監視範囲の車幅方向の大きさは、道路幅全域、即ち、一方の路肩から他方の路肩までとしてもよい。このように本発明システムでは、車幅方向において監視範囲を広くし、この監視範囲内に複数の感知エリアが車幅方向に設けられるようにすることで、障害物などを回避するために車両の走行位置が車幅方向にずれた場合や、車線境界の移動により車両の走行位置を車幅方向にずらす場合などにおいても、センサを収納した筐体の角度などの調整を行うことなく、或いは簡単な調整で車両の有無を精度よく検知することができる。
【0010】
上記監視範囲内における感知エリアの配置形態は、車幅方向に並べる形態、車線方向に並べる形態が挙げられる。本発明では、上記のように車幅方向に監視範囲をより大きくするため、感知エリアも車幅方向に複数設けられるようにすることが好ましい。車幅方向に感知エリアを複数具える場合、車両は、これら複数の感知エリアのうちいずれかの感知エリアを確実に通過する可能性が高くなる。また、車幅方向に感知エリアを複数具える場合、上記のように障害物などを回避するために車両の走行位置が車幅方向にずれた場合や、車線境界の移動などにより車両の走行位置が車幅方向に変わる場合などに対応し易い。一方、車線方向に複数の感知エリアが設けられるように構成する場合、本発明システムは、車両の有無に加えて、車両の進行方向や速度なども求めることができる。従って、感知エリアは、車幅方向及び車線方向の双方に並べる形態としてもよい。
【0011】
感知エリアを車幅方向に並べる個数としては、例えば、上記のように監視範囲の車幅方向の大きさを一車線を超える大きさとする場合、一車線に一つ、この車線の両側に一つずつの合計三つ以上とすることが好ましい。一車線内に配する感知エリアは、一車線の中央部に配することが挙げられる。感知エリアの大きさ、感知エリア間の間隔にもよるが、一車線内に三つ以上の感知エリアが車幅方向に連続して配置されるようにすることが好ましい。即ち、車幅方向に五つ以上の感知エリアを並べることが好ましい。一方、車線方向には、少なくとも二つの感知エリアを連続するように並べることで、進行方向や速度の検出を行うことができる。感知エリアを車幅方向、車線方向のいずれに配置する場合も、各感知エリアは、隣接する他の感知エリアの領域と一部が重複するように配置してもよいし、間隔をあけずに接するように設けてもよいし、適当な間隔、例えば、車幅方向:20〜60cm程度、車線方向:50〜120cm程度の間隔をあけて設けてもよい。一つの感知エリアの大きさは、上記のように大き過ぎると、S/N比の低下を招くため、比較的小さめにして、感知エリア数を多くする方が検知精度を向上できる。具体的な感知エリアの大きさとしては、例えば、20〜40cm×20〜40cm程度が挙げられる。感知エリアの大きさや配置間隔は、一台の車両が複数の感知エリアに亘って走行されるように調整することが好ましい。つまり、一台の車両における異なる部位(タイヤ、ルーフ、エンジン部など)から発せられる赤外線を異なるサーモパイル素子にて感知されるように感知エリアを設けることが好ましい。このように監視範囲に複数の感知エリアを設けることで、特に、車幅方向に複数の感知エリアを設けることで、本発明システムは、障害物などが存在して車幅方向に車両が走行位置を変えた場合や、ある車線を走行する車両が隣接する車線にはみ出してきた場合などでも、適切に車両の有無を判定することができる。
【0012】
そして、本発明車両検知システムでは、上記のように複数の感知エリアが監視範囲内に設けられるように、感知エリアに対応した個数のセンサを具える。特に、本発明車両検知システムでは、物体が発する赤外線の量を測定し、この赤外線の量を車両の有無の判定に利用する。ここで、物体が発する赤外線の量は、ステファン・ボルツマンの法則により、物体の絶対温度のほぼ4乗に比例すると共に、物体の放射率εに比例する。道路上の物体、例えば、道路面や道路を走行する車両の放射率εは、通常、ほぼ同等(通常0.9以上)であり大差がないことが多い。そのため、赤外線を感知するサーモパイル素子といったセンサを道路面の方向に向けて設置しておけば、道路(車両以外の物体)と温度が異なる車両が道路面を通過した際、センサが感知する赤外線の量が変化することで、車両の有無を検知することができる。そこで、本発明では、赤外線感知センサとして、赤外線により熱電対に発生した温度変化を熱起電力として出力するサーモパイル素子を利用する。特に、熱起電力の出力が大きいサーモパイル素子を用いると、焦電センサなどの他のセンサを用いることなく、サーモパイル素子のみでも十分に赤外線の感知を行って、車両を検知することができる。本発明では、所望の感知エリア数に応じた個数分のサーモパイル素子を用いる。これら複数のサーモパイル素子は、各素子がそれぞれ別個の基板に配置された個別形状のものを利用してもよいし、複数の素子が同一の基板に配置された一体化形状のものを利用してもよい。一体化形状の場合、筐体などへの配置、固定作業などを容易に行うことができる。これらサーモパイル素子は、上述した感知エリアの配置形態に応じて適宜並べて具えるとよく、例えば、車幅方向又は車線方向に複数の感知エリアを設ける場合、サーモパイル素子を一列に並べたり、車幅方向及び車線方向に複数の感知エリアを設ける場合、サーモパイル素子を横列及び縦列からなる格子状に並べることが挙げられる。このようなサーモパイル素子の配列形態に対応して、感知エリアの配置形態がつくられる。サーモパイル素子を配置した基板は、回路基板に搭載する。この回路基板には、各サーモパイル素子の起電力を増幅するアンプや、後述する車両有無判定部などを搭載してもよい。
【0013】
本発明システムは、上記のように所望の感知エリアが設けられるように、感知エリア数に応じたサーモパイル素子を具えておけばよいが、より多くのサーモパイル素子を具えておき、監視範囲の大きさに応じて使用する素子の個数を変更させてもよい。また、車線境界の変更などにより、サーモパイル素子を収納した筐体を設置後にサーモパイル素子の使用個数を変更させてもよい。つまり、複数のサーモパイル素子のうち、一部のサーモパイル素子で車両の検知を行い、残りのサーモパイル素子は検知を行っていない状態としてもよい。サーモパイル素子の使用個数の変更は、例えば、不使用のサーモパイル素子からの起電力を増幅するアンプに駆動電力を供給しなかったり、不使用のサーモパイル素子からの情報を利用しないように車両有無判定部を設定してもよい。
【0014】
上記複数のサーモパイル素子に加えて、本発明車両検知システムには、各素子から得られた入力レベル値を用いて車両の有無の判定を行う車両有無判定部を具える。車両有無判定部は、種々の判定、演算、記憶の他、入力レベル値などのデータの取得、判定結果の書き込みなどといった処理を行うことが可能なものを利用するとよい。従って、車両有無判定部には、判定手段、演算手段、記憶手段、データの取得手段、書き込み手段などを具えておく。判定、演算には、市販のCPUなどが利用できる。本発明において車両有無判定部は、感知エリアごとに入力レベル値の変化を調べ、その変化が一定値以上である感知エリアの個数により、車両の有無を判定する。
【0015】
本発明システムに具えるサーモパイル素子は、車両が発する赤外線と、車両以外の物体(代表的には道路面)が発する赤外線という二種類の赤外線を感知する。従って、入力レベル値としては、車両が発した赤外線に基づくものと、車両以外の物体が発した赤外線に基づくものとの二つが得られる。入力レベル値の変化は、上記入力レベル値のうち、車両以外の物体が発する赤外線の量に基づく値を背景レベルとし、入力レベル値と背景レベルとの差、或いはこの差を用いた演算値を求めることで調べられ、この変化が大きければ、車両が通過した可能性が高いと考えられる。そこで、本発明システムでは、入力レベル値と背景レベルとの差に基づく値を比較値とし、この比較値と閾値とを比較し、比較値が閾値以上となる感知エリアの数に応じて、車両の有無を判定する。比較値が閾値以上となった感知エリアは、上述のように車両が存在する可能性が高く、このような感知エリアが多く存在する場合、車両有りと判定することが妥当である。逆に、比較値が閾値未満となった感知エリアは、入力レベル値の変化が小さい、或いはほとんど変化していない状態であり、この感知エリアに対応するサーモパイル素子は、道路面といった車両以外の物体からの赤外線を感知したと考えられる。従って、この場合、車両が存在する可能性が低く、このような感知エリアが多く存在する場合、車両無しと判定することが妥当である。そこで、本発明システムでは、感知エリアごとに車両の有無の可能性を調べ、車両が有りそうな感知エリアの数によって、最終的に車両の有無を判定する。
【0016】
背景レベルとして用いる「車両以外の物体が発する赤外線の量に基づく値」は、車両以外の物体が発する赤外線の量をそのまま用いるよりも、この赤外線の量を利用した演算値を用いることが好ましい。特に、背景レベルは、サーモパイル素子により入力レベル値を随時検出しておき、得られた入力レベル値のうち、車両以外の物体が発する赤外線に基づくものを用いた演算値を利用すると、実際の環境に近似するため、より精密な検知を行うことができる。このような演算値として、例えば、車両以外からの赤外線を複数回検出したデータの平均値や、現在取得した車両以外からの赤外線による入力レベル値と過去の背景レベルとを用いた演算値が挙げられる。後者の場合、具体的には、指数平滑法による演算値が挙げられる。指数平滑法は、一般にf0=α×d-1+(1-α)f-1=f-1+α×(d-1-f-1)と表され(f0:次期予測値、α:平滑係数、d-1:前期の実績値、f-1:前期の予測値)、前期の予測値(ここでは、前回の背景レベル)に対して前期の実績値(ここでは、入力レベル値)を反映できるため、背景レベルを実際の環境(路面状況)に即したより的確な値となり得る。特に、平滑係数αは、過去の処理結果(比較値と閾値との比較結果)に応じて変化させると、車両の赤外線の量(温度)に左右されずに背景レベルをより確実に把握することができる。平滑係数αの変化は、直前(前回)の処理結果に応じて行ってもよいし、直前よりも少し前の処理結果に応じて行ってもよい。背景レベルの演算には、特許文献1,2に記載される演算手法を利用してもよい。なお、背景レベルの検出用のセンサと車両の検知用のセンサとを同一のものを用いると、背景レベルの検出用のセンサを別途設ける必要がない。
【0017】
比較値として用いる「背景レベルと入力レベル値との差に基づく値」は、背景レベルと入力レベル値との差をそのまま用いてもよいし、この差を利用した演算値を利用してもよい。演算値としては、例えば、上記差を一定時間内積算した値が挙げられる。比較値としてこの積算値を利用する場合、赤外線の放射量の変化における本質的な傾向を把握できる。また、背景レベルと入力レベル値との差(又はこの差を用いた演算値)に入力レベル値の単位時間当たりの変化量を加味した値を比較値としてもよい。この変化量は、背景レベルを加えていないことから、背景レベルによる影響を受けないため、入力レベル値が変化している間車両が存在している場合に、入力レベル値と背景レベルとの差が小さくとも比較値が閾値以上となる判定を得易く、車両が認識できない場合などを低減する。この変化量は、直前よりも、少し前の入力レベル値と現在の入力レベル値との差とする方がより有効である。比較値の演算には、特許文献1,2に記載される演算手法を利用してもよい。
【0018】
上記閾値は、固定値としてもよいが、実際の環境に応じて変化させることが好ましく、例えば、赤外線の量の変化(温度変化)が大きい(即ち、分散が大きい)とき、比較的大きな値とし、赤外線の量の変化が小さい(即ち、分散が小さい)とき、比較的小さな値としてもよい。これらの閾値は、演算により求めてもよく、例えば、閾値を設定値+補正値として、補正値を変化させることで閾値を変化させてもよい。特に、補正値は、過去の処理結果(比較値と閾値との比較結果)に応じて変化させると、実際の環境に即した閾値を得ることができて好ましい。補正値の変化は、直前(前回)の処理結果、或いは直前よりも少し前の処理結果に応じて行うとよい。閾値の演算には、特許文献1,2に記載される演算手法を利用してもよい。上述した背景レベルの演算、比較値の演算、閾値の演算は、車両有無判定部にそれぞれ演算手段を具えておき、これら演算手段により行うように構成するとよい。
【0019】
各サーモパイル素子に基づく感知エリアに対して車両有無判定部は、上記背景レベルや比較値、閾値を用いて、比較値が閾値以上となるか否かを判定し、比較値が閾値以上となる感知エリアの数に応じて、車両の有無を判定する。例えば、比較値が閾値以上となる感知エリア(以下、ONエリアと呼ぶ)の数が所定数以上の場合、車両有りと判定し、ONエリアの数が所定数未満の場合、車両無しと判定するように車両有無判定部を構成することが挙げられる。車幅方向に複数の感知エリアが形成されるように本発明システムを構成している場合、上述のようにONエリアが複数存在していても、車幅方向に並ぶONエリア間に比較値が閾値未満となる感知エリア(以下、OFFエリアと呼ぶ)が存在する場合は車両有りと判定することが妥当でないことが考えられる。本発明では、上記のように一つの感知エリアの大きさを比較的小さくし、一台の車両からの赤外線を複数のセンサで感知して、車両の検知を行う。従って、ONエリアが一つの場合や車幅方向に並ぶONエリア間にOFFエリアが少なくとも一つ存在してONエリアが分散されている場合、ONエリアとなった感知エリアは、車両が通過したのではなく、車両以外の物体が通過したりするなどして、比較値が閾値以上となったと考えられる。これらONエリアに存在した物体は、車両以外のノイズとして扱うことで、車両をより精度よく検知できる。そこで、本発明システムでは、車幅方向に連続してONエリアが存在する場合に車両有りと判定し、ONエリアが複数であっても、車幅方向に不連続に存在する場合、つまり、ONエリアが隣接して存在しない場合、車両無しと判定する構成を提案する。具体的な構成としては、感知エリアごとに入力レベル値を取得する取得手段と、感知エリアごとに上述した比較値(入力レベル値と背景レベルとの差に基づく値)を演算する第一演算手段と、感知エリアごとに得られた比較値と閾値とを比較し、比較値が閾値以上となる感知エリア(ONエリア)のうち、車幅方向に所定数以上連続するONエリアを一つのグループとし、このグループが存在する場合、車両有りと判定し、グループがない場合、車両無しと判定する第一判定手段とを車両有無判定部に具えることが挙げられる。
【0020】
上記車両有無判定部は、以下のステップを行うように構成しておくことで、車両の有無の判定を行うことができる。このとき、車両検知システムには、上記グループを形成するのに最小限必要な数以上の感知エリアが車幅方向に並んで設けられるようにセンサを具えておく。
1 取得手段が、感知エリアごとに入力レベル値を取得するステップ。
2 第一演算手段が、感知エリアごとに、入力レベルと背景レベルとの差に基づく比較値を演算するステップ。
3 第一判定手段が、感知エリアごとに、得られた比較値と閾値とを比較し、比較値が閾値以上となる感知エリアのうち、車幅方向に所定数以上連続する感知エリアを一つのグループとし、このグループの有無を判定し、グループが存在する場合、車両有りと判定し、グループがない場合、車両無しと判定するステップ。
【0021】
車両有無判定部を上記のように構成して、車両の有無を検知する場合、感知エリアは、車幅方向に複数設ける、具体的には少なくとも車幅方向に五つ以上設けておくことが好ましい。より具体的には、一車線内に三つ以上の感知エリア、この車線の両側(車線外)にそれぞれ一つ以上の感知エリアを設けることが好ましい。車線内外に設ける感知エリアの数は、感知エリアの大きさにより適宜変更するとよい。このように本発明システムでは、少なくとも車幅方向に複数の感知エリアを設け、ONエリアが車幅方向に連続的に存在するか否かを積極的に調べて車両の有無の判定を行う。
【0022】
なお、ノイズとして扱うONエリアの数は、感知エリアの大きさや配置数などに応じて適宜変更するとよい。例えば、一車線の幅が2〜3m程度の大きさの車線内に20〜40cm四方の感知エリアを50〜60cm程度の間隔をあけて車線内外に配置する場合、第一判定手段は、車幅方向に2つ以上連続するONエリア群を一グループとし、このグループがある場合、車両有りと判定し、グループがない場合、つまり、ONエリアが0又は1つの場合、或いは、ONエリアが複数あるが車幅方向に不連続に存在する場合、車両無しと判定することが挙げられる。
【0023】
車両有無判定部を上述のように構成することで、本発明システムは、ノイズの影響を低減し、車両の検知を精度よく行うことができる。ここで、本発明において監視範囲を車幅方向に大きく、例えば、一車線を超えた大きさとした場合、監視範囲内に二台の車両が通過することが考えられる。このとき、車両が一台であるのか、二台以上であるのか判別できることが好ましい。例えば、車幅方向に複数の感知エリアを設ける場合、グループが存在するとき、車両がグループ数と同数存在すると判定する車両数判定手段を車両有無判定部に具えることで、本発明システムは、車両の台数をも判定することができる。このシステムは、上記グループが複数存在するとき、車両が複数台(グループ数と同数)有ると判定し、グループが一つのみ存在するとき、車両が1台有ると判定する。このような構成は、例えば、車幅方向にのみ複数の感知エリアを設ける場合(以下、配列1と呼ぶ)や、車幅方向及び車線方向に横列(車幅方向の列)×縦列(車線方向の列)の格子状となるように複数の感知エリアを設け、横列のうちいずれか一列のみにグループを形成するのに必要な数の感知エリアが車幅方向に連続して存在し、残りの列はグループを形成するのに必要な数未満の感知エリア群が分散的に存在したり、感知エリアの合計数がグループを形成するのに必要な数未満である場合(以下、配列2と呼ぶ)などに利用することができる。
【0024】
感知エリアの配置によっては、グループが複数存在するとき、車両が複数台であると判定すると、不具合が生じる場合が考えられる。例えば、車幅方向及び車線方向に横列(車幅方向の列)×縦列(車線方向の列)の格子状となるように複数の感知エリアを具え、全ての横列にグループを形成するのに必要な数の感知エリアが車幅方向に連続して存在する場合(以下、配列3と呼ぶ)にグループが複数存在するときは、1.同一の横列に存在する、2.異なる横列に存在する場合が考えられる。1.の場合、各グループは車幅方向に離れて存在し、それぞれ異なる車両であると考えられる。一方、2.の場合、特に、異なる横列が車線方向に隣接した列であり、グループが車線方向に隣接して存在する場合と、車幅方向に離れて存在する場合とが考えられ、前者は、車線方向に隣接するグループ組が一つの車両であると考えられ、後者は、各グループがそれぞれ異なる車両であると考えられる。つまり、後者の場合、上記1.の場合と同様に車両が複数台(グループ数と同数台)存在する可能性が高いと考えられる。そこで、グループが複数存在する場合、車両有無判定部は、グループが車幅方向に離れて存在するか否かを判定するように構成してもよい。具体的には、例えば、グループが複数存在するとき、車幅方向に隣接するグループ間に比較値が閾値未満となる感知エリア(OFFエリア)が存在する場合、車両が複数台有ると判定する第二判定手段を車両有無判定部に具えることが挙げられる。「車幅方向に隣接するグループ」とは、同一の横列(車幅方向に並ぶ同一列)に存在するグループ同士、車線方向に隣接する横列(車幅方向に並ぶ列において車線方向に隣接する列)に存在するグループ同士とすることが挙げられる。このOFFエリアの有無を判定する構成は、上述した配列1,2の場合にももちろん利用することができる。
【0025】
上記車両有無判定部は、上記1〜3のステップに加えて、以下のステップを行うように構成しておくことで、車両の台数をも判定することができる。このとき、車両検知システムには、例えば、上記配列1〜3のいずれかの感知エリアが設けられるようにセンサを具えておく。
4-1 グループが複数存在するとき、第二判定手段が、車幅方向に隣接するグループ間に比較値が閾値未満となる感知エリア(OFFエリア)の有無を判定し、車幅方向に隣接するグループ間にOFFエリアが存在する場合、車両が複数台有ると判定するステップ。
なお、OFFエリアが存在しない場合、車両が一台有ると判定するように第二判定手段を構成してもよい。
【0026】
上記4-1のステップを含むアルゴリズムでは、ONエリアが車幅方向に連続して存在する場合、これら車幅方向に連続したONエリアを一まとまりのグループとし、このグループが複数存在するとき、車幅方向に隣接するグループとグループとの間にOFFエリアが存在する場合、即ち、異なるグループがOFFエリアを挟んで存在する場合、各グループは、異なる車両であるとして扱う。このように本発明は、少なくとも車幅方向に複数の感知エリアを設けることで、1台のみの検知に加えて、同時に2台以上の車両を検知することが可能である。
【0027】
車両有りと判定された際、本発明システムは、車両の走行位置を判定することもできる。例えば、監視範囲に複数の車線を含む場合、ONエリアの数がいずれの車線に多いかを判定するように車両有無判定部を構成することが挙げられる。
【0028】
車両検知システムでは、上述のように車両の有無に加えて台数も判定できることが望まれる。従って、上述した1〜3のステップを含むアルゴリズムにおいて、グループが一つ存在する場合、車両が1台有ると判定するように車両有無判定部を構成してもよい。しかし、一つのグループを構成するONエリアの数によっては、1台と判定することが妥当でないことが考えられる。このような場合、複数台(例えば、2台)と判定するように車両有無判定部を構成してもよい。具体的には、グループが存在するとき、一つのグループに含まれるONエリアの数が所定数以上であるか否かを判定し、ONエリアの数が所定数以上である場合、車両が複数台有ると判定する第三判定手段を車両有無判定部に具えることが挙げられる。ONエリアの数に応じて車両の台数を判定するように第三判定手段を構成してもよい。また、グループが一つだけ存在するとき、ONエリアの数が所定数未満である場合、車両が1台有ると判定するように第三判定手段を構成してもよい。
【0029】
一方、グループが複数存在するときは、グループごとにONエリアの数が所定数以上であるか否かを判定し、車両が1台であるか、複数台であるかをグループごとに判定するように第三判定手段を構成してもよい。具体的には、ONエリアの数が所定数未満であるグループは、車両が1台であると判定し、ONエリアの数が所定数以上であるグループは、車両が複数台であると判定するように第三判定手段を構成することが挙げられる。前者のグループは、グループの数と同数の車両が存在することになり、後者のグループは、一つのグループに多数の車両が存在することになる。
【0030】
なお、本発明システムにおいて感知エリアの配置形態が上述した配列3である場合に車線方向に隣接してグループが存在し、これらのグループに含まれるONエリアの数がいずれも所定数以上であるときを考える。このとき、上述のようにグループごとに車両の台数を判定し、一つのグループについて判定された車両の台数の合計を車両の台数と判定すると、実際の車両の台数よりも多く判定する恐れがある。そこで、このような場合、例えば、車線方向に隣接するグループ組が存在するか否かを判定し、グループ組が存在する場合、組の少なくとも一方のグループに含まれるONエリアの数が所定数以上のとき、この組は、ONエリア数の判定に用いた一つのグループに基づく台数の車両が存在すると判定するように車両有無判定部を構成してもよい。組をつくる各グループのONエリアの数が異なる場合は例えばONエリアの数が多いグループを判定に用いてもよい。また、組をつくるグループのいずれもONエリアの数が所定数未満の場合、この組は、1台の車両が存在すると判定するように車両有無判定部を構成してもよい。
【0031】
上述した配列3のように車線方向にも複数の感知エリアを設けておく場合、本発明システムは、各車両の進行方向をも判別することができる。具体的には、車両有りと判定されたとき、一つのグループから選択されたONエリアのうち、車線方向に隣接するONエリアの組の有無を判定する第四判定手段と、車線方向に隣接するONエリアの組がある場合、これら二つのONエリアのそれぞれに対して、比較値が閾値以上となった時刻を検出する第一検出手段と、第一検出手段から得られた時刻により車両の進行方向を判定する第五判定手段とを車両有無判定部に具えることが挙げられる。
【0032】
上記車両有無判定部は、上記1〜3のステップに加えて、以下のステップを行うように構成しておくことで、車両の進行方向の判定を行うことができる。このとき、車両検知システムには、例えば、上記配列3の感知エリアが設けられるようにセンサを具えておく。
4-2-1 車両有りと判定されたとき、第四判定手段が、一つのグループから選択された比較値が閾値以上となる感知エリア(ONエリア)のうち、車線方向に隣接するONエリアの組の有無を判定するステップ。
4-2-2 車線方向に隣接するONエリアの組がある場合、第一検出手段が、これらONエリアごとに比較値が閾値以上となった時刻を検出するステップ。
4-2-3 第五判定手段が、第一検出手段から得られた時刻により車両の進行方向を判定するステップ。
【0033】
車線方向に隣接して複数のONエリアが存在した場合、これらONエリアは、比較値が閾値以上となった時刻が異なるはずである。そこで、これらのONエリアについて比較値が閾値以上となった時刻の大小関係を調べることで、車両の進行方向を判別することができる。車線方向に三つ以上のONエリアが連続して存在する場合、隣接する二つのONエリアの組を任意に選択し、この組について時刻を検出するように第一検出手段を構成してもよい。この進行方向の判定を行う構成は、上述した車両の台数の判定を行う構成と合わせて車両有無判定部に具えてももちろんよく、例えば、車両が複数台あると判定されたとき(例えば、車幅方向に複数のグループが存在するとき)、車両ごとに進行方向の判定を行うように車両有無判定部を構成してもよい。
【0034】
また、車線方向に隣接する二つのグループに対して、車線方向に隣接するONエリアの組が複数存在する場合、いずれかの組を任意に選択し、この組について進行方向の判定を行うように車両有無判定部を構成してもよい。或いは、特定の組を選択するように車両有無判定部を構成してもよい。特定の組としては、例えば、センサの取り付け位置に最も近い位置にある組が挙げられる。一つのグループに対して複数台の車両が存在すると判定された場合は、例えば、一台の車両とみなすONエリアの数を予め設定しておき、グループをこの数に分割し、分割されたONエリア群において、センサの取り付け位置に最も近い位置にある組を選択するように車両有無判定部を構成してもよい。
【0035】
車両の進行方向の判定を行う場合、タイマなどの時刻計測手段を具えておき、時刻計測手段で計測した結果(時刻)が第一検出手段で検出されるように車両有無判定部を構成してもよい。タイマを内蔵した車両有無判定部を用いてもよい。また、比較値が閾値以上となった時刻がメモリといった記憶手段に記憶されるように車両有無判定部を構成しておくとよい。更に、時刻計測手段にて時刻を一定周期でカウントする場合、オーバーフローすることが考えられる。そこで、オーバーフローを是正して、時刻の大小を比較するように第五判定手段を構成してもよい。これらの点は、後述する速度の検出ステップを車両有無判定部に行わせる場合も同様である。
【0036】
一方、車両有無の判定時に車線方向に隣接したONエリアが存在しない場合に車両の進行方向を求めるときは、例えば、過去のデータを利用することが挙げられる。具体的には、第四判定手段にて車線方向に隣接するONエリアの組がないと判定された場合、グループが一つのときはそのグループから任意のONエリアを選択するように、グループが複数のときはグループごとに任意のONエリアを選択するように車両有無判定部を構成する。そして、選択されたONエリアにおいて、比較値が閾値以上となった時刻を検出するように第一検出手段を構成する。また、前回の処理結果(ON又はOFFの判定結果)からONエリアを抽出する抽出手段を車両有無判定部に具えておき、上記選択されたONエリアと車線方向に隣接するONエリアを抽出手段にて抽出し、抽出されたONエリアについて比較値が閾値以上となった時刻を検出するように第一検出手段を構成する。そして、第一検出手段により検出された二つの時刻により車両の進行方向を判定するように第五判定手段を構成することが挙げられる。このように過去のデータを利用することで、本発明システムは、任意の時刻において車両の進行方向を得ることができる。また、上記に選択するONエリアは、特定の位置にあるONエリアが選択されるように車両有無判定部を構成してもよく、例えば、センサの取り付け位置に最も近い位置にあるONエリアとしてもよい。
【0037】
車両の進行方向が判別されることで、その車両の走行車線を判別することもできる。例えば、車両の進行方向が異なる二車線、代表的には、片側一車線の合計二車線を含むように監視範囲を設ける場合、車両の進行方向により、いずれの車線を走行する車両であるかを判別できる。従って、車両の進行方向結果により、車両の走行車線を判定する第六判定手段を車両有無判定部に具えてもよい。
【0038】
更に、車線方向に複数の感知エリアを配置する場合、本発明システムは、上述した進行方向だけでなく、車両の速度も求めることができる。例えば、上記進行方向の判定を行う場合と同様に第四判定手段及び第一検出手段を具えると共に、第一検出手段から得られた二つの時刻の時刻差を演算し、得られた時刻差と、車線方向に隣接する感知エリア間の距離とから車両の速度を演算する第二演算手段を車両有無判定部に具えることが挙げられる。この速度の演算を行う構成は、上述した車両の台数の判定を行う構成や、車両の進行方向の判定を行う構成と合わせて車両有無判定部に具えてももちろんよく、例えば、車両が複数台あると判定されたとき、車両ごとに速度の演算を行うように車両有無判定部を構成してもよいし、進行方向の判定後、速度の演算を行うように車両有無判定部を構成してもよい。
【0039】
上記車両有無判定部は、以下のステップを行うように構成しておくことで、車両の速度を求めることができる。
4-3-1 車両有りと判定されたとき、第四判定手段が、一つのグループから選択された比較値が閾値以上となる感知エリア(ONエリア)のうち、車線方向に隣接するONエリアの組の有無を判定するステップ。
4-3-2 車線方向に隣接するONエリアの組がある場合、第一検出手段が、これらONエリアごとに比較値が閾値以上となった時刻を検出するステップ。
4-3-3 第二演算手段が、第一検出手段から得られた二つの時刻の時刻差を演算し、得られた時刻差と、車線方向に隣接する感知エリア間の距離とから車両の速度を演算するステップ。
【0040】
上記のように車線方向に隣接する二つのONエリアにおいて比較値が閾値以上となった時刻と、これら感知エリア間の距離とがわかれば、速度を求めることができる。感知エリア間の距離は、設定値としてメモリといった記憶手段に予め保存しておき、第二演算手段が呼び出せるように車両有無判定部を構成しておいてもよいし、後述するように測定手段を具えて同距離を求め、第二演算手段は、得られた距離を用いて速度の演算を行うように車両有無判定部を構成してもよい。
【0041】
本発明システムに用いるセンサ(サーモパイル素子)は、通常、支柱に取り付けられて利用される。そして、道路上に設けられる感知エリアは、センサが感知可能な赤外線領域を道路上に投影した領域となる。このため、センサの取り付け状態(角度や高さ)によって、道路上に設けられる感知エリア間の距離が変動する。センサの取り付けは、実際の支柱の状態などに応じて適宜調整されることがあり、この場合、取り付け角度や取り付け高さは、取り付け後でないと求められない。また、支柱に取り付けた後、上述したように何らかの原因でセンサの取り付け角度などが変化することも考えられる。従って、車両の速度を求める際、実際の感知エリア間の距離を測定し、或いは、センサの取り付け位置情報を測定し、この測定結果から同距離を演算し、この結果を用いると誤差を低減できて好ましい。特に、上記測定は、作業者が行ってもよいが、自動的に測定可能な測定手段を具えることで、本発明システムは、簡単に距離を求めることができて好ましい。そこで、本発明システムとして、センサ(サーモパイル素子)の取り付け位置情報を自動的に測定する測定手段を具え、この測定手段からの測定結果により、車線方向に隣接する感知エリア間の距離を演算する第四演算手段を車両有無測定部に具える構成を提案する。
【0042】
隣接する感知エリア間の距離を求めるために必要とされるセンサの取り付け位置情報としては、道路面からの高さHと、道路面に対する垂直方向の傾き(角度θ)とが挙げられる。図9は、センサの取り付け状態と感知エリアとの関係を示す模式図であり、(A)は、平面図、(B)は、斜視図である。道路面(図9(A)では、直線fg(又はfh)、図9(B)では、三角形fghがつくる面)からセンサ(図9において点e)までの高さをH、道路面に対する垂直方向の傾きをθ、車線方向に隣接する感知エリアF,B間の距離をd、感知エリアF,B間の水平方向の角度(図9(B)において∠geh)をβとすると、距離dは、d=2×(H/cosθ)×{tan(β/2)}で求められる。従って、高さH及び角度θを自動的に測定する測定手段を本発明システムに具えることで、距離dを簡単に求めることができる。或いは、高さH及び角度θのうちいずれか一方を自動的に測定する測定手段を本発明システムに具えておき、他方を手動で測定して、それらの結果から距離dを求めるように車両有無判定部を構成してもよい。なお、水平方向の角度βは、センサの配置状態で決まるものであり、メモリといった記憶手段に予め入力しておき、距離dを演算する際、第四演算手段が呼び出せるように構成しておくとよい。また、角度θは、例えば、センサの取り付け位置に最も近い位置に設けられる感知エリアに対応したセンサの角度を測定するとよい。このとき、この感知エリアと車幅方向に並ぶ感知エリアは、角度θxずつずれる。この角度θxは、センサの配置状態で決まるものであるため、メモリといった記憶手段に予め入力しておき、距離dを演算する際、第四演算手段が呼び出せるように構成しておくとよい。また、角度θの余角θ'を測定する角度測定手段を用いてももちろんよい。
【0043】
高さHを自動的に測定する測定手段としては、例えば、光を用いた測定装置が挙げられる。この装置は、光源と、出射光が対象に当たって反射された反射光を受光する受光部と、光源からの出射時間と受光部の受光時間との差を演算し、この差と光の速度とから光源から対象までの距離を演算する演算部とを具えるものが挙げられる。市販の測定装置を利用してもよい。角度θを自動的に測定する測定手段としては、例えば、液体を用いた水準器を具えるものが挙げられる。市販の角度計を利用してもよい。これら高さ測定手段、角度測定手段は、上述のようにいずれか一方のみ具えて、高さ又は角度のいずれかを作業者が測定するようにしてもよいし、双方とも具えてもよい。得られた測定結果は、第四演算手段に送られるように車両有無判定部を構成する。
【0044】
高さ測定手段、角度測定手段の双方を具える場合、車両有無判定部は、以下のステップを行うように構成しておくことで、車両の速度を求めることができる。
4-3-1 車両有りと判定されたとき、第四判定手段が、一つのグループから選択された比較値が閾値以上となる感知エリア(ONエリア)のうち、車線方向に隣接するONエリアの組の有無を判定するステップ。
4-3-2 車線方向に隣接するONエリアの組がある場合、第一検出手段が、これらONエリアごとに比較値が閾値以上となった時刻を検出するステップ。
4-4-1 高さ測定手段が、センサの取り付け高さHを測定するステップ。
4-4-2 角度測定手段が、センサの取り付け角度θを測定するステップ。
4-4-3 第四演算手段が、測定された高さH,角度θにより車線方向に隣接する感知エリア間の距離dを演算するステップ。
4-4-4 第二演算手段が、第一検出手段から得られた二つの時刻の時刻差を演算し、得られた時刻差と、第四演算手段により得られた距離dとから車両の速度を演算するステップ。
なお、高さの測定及び角度の測定はいずれを先に行ってもよい。また、時刻の検出及び距離dの演算は、いずれを先に行ってもよい。これらの点は、後述するピーク時刻を利用した場合についても同様である。
【0045】
速度を求める場合も上述した進行方向を判定する場合と同様に、車線方向に隣接するONエリアの組が複数存在する場合、任意の組、又は特定の組を選択するようにし、選択された組について速度を演算するように車両有無判定部を構成するとよい。特に、センサの取り付け位置に最も近い位置にある組について速度の演算を行うように車両有無判定部を構成することが好ましい。道路上に投影した感知エリアの大きさは、感知エリアを通過する車両の大きさ(高さや幅)によらず一定である。しかし、実際に車両が道路上を通過する際、図10に示すように車両の大きさによって車両200とセンサs間の距離が異なるため、車両から発せられた赤外線がセンサに感知されるまでの時間も異なることがある。例えば、車高が高い車両200hと車高が低い車両200lとを比較した場合、道路上の同じ感知エリアを通過しても、車両200hの方が車高が高い分、センサに近くなるため、車両200hが発する赤外線は、車両200lが発する赤外線よりも速くセンサsに感知される。つまり、車両の大きさによって、センサの感知に時間差が生じることがある。車両の有無の判定においては、この時間差がさほど問題にならないが、速度の検出の精度をより高める場合は、この時間差を低減することが望まれる。一方、車両のタイヤの取り付け位置は、車両の大きさによらず概ね一定であり、また、通常のタイヤの取り付け位置を考慮すると、一つのグループのONエリアのうち、センサの取り付け位置に最も近い位置にあるONエリアが、タイヤ及びその近傍の通過によりONエリアとなったと考えることが妥当である。そこで、車線方向に隣接するONエリアの組が複数存在する場合、サーモパイル素子の取り付け位置に最も近い位置にある組を選択する組選択手段を車両有無判定部に具え、第一検出手段は、組選択手段で選択された組について時刻の検出を行い、第二演算手段は、検出された時刻に基づき車両の速度を演算するように構成してもよい。この選択手段を具える構成は、上述したセンサの取り付け位置情報の測定手段を具える構成と合わせて具えていてももちろんよい。
【0046】
高さ測定手段、角度測定手段の双方及び組選択手段を具える車両有無判定部は、以下のステップを行うように構成しておくことで、車両の速度を求めることができる。
4-3-1 車両有りと判定されたとき、第四判定手段が、一つのグループから選択された比較値が閾値以上となる感知エリア(ONエリア)のうち、車線方向に隣接するONエリアの組の有無を判定するステップ。
4-5-1 車線方向に隣接するONエリアの組が複数存在する場合、組選択手段は、センサ(サーモパイル素子)の取り付け位置に最も近い位置にある組を選択するステップ。
4-5-2 第一検出手段が、選択された組のONエリアごとに比較値が閾値以上となった時刻を検出するステップ。
4-4-1 高さ測定手段が、センサの取り付け高さHを測定するステップ。
4-4-2 角度測定手段が、センサの取り付け角度θを測定するステップ。
4-4-3 第四演算手段が、測定された高さH,角度θにより車線方向に隣接する感知エリア間の距離dを演算するステップ。
4-4-4 第二演算手段が、第一検出手段から得られた二つの時刻の時刻差を演算し、得られた時刻差と、第四演算手段により得られた距離dとから車両の速度を演算するステップ。
【0047】
得られた車両の速度は、例えば、渋滞レベルの判断に利用したり、速度から車長を求め、車長から車種を判別するのに利用することができる。例えば、車両有無判定部に、車長を演算する第五演算手段と、得られた車長が所定値以上である場合、大型車であると判定する第七判定手段とを具えることで、車両が大型車か否かを判定することができる。車長lは、車両の速度vと、速度vの演算に用いたONエリアにおいて比較値が閾値以上となった時刻(以下、感知ON時刻と呼ぶ)から比較値が閾値未満となった時刻までの時間(端的に言うと、継続的に比較値が閾値以上となっている時間)tとを用いてl=v×tと近似できるため、上記第五演算手段は、この近似式から車長を求めるように構成するとよい。なお、車両の速度が得られる車両検知器としては、画像処理を利用した装置があるが、この装置は、画像処理機構といった複雑な構成を具える必要がある。これに対し、本発明システムでは、より簡単な構造でありながら、車両の速度も求めることができる。また、本発明システムは、上述のように車長をも求めることができる。
【0048】
速度の演算手法として、別の手法を用いてもよい。上述した手法は、ONエリアにおいて比較値が閾値以上となった時刻(感知ON時刻)の差を用いて速度の演算を行う。この感知ON時刻は、感知エリアの背景温度(路面温度)などが変動することで多少変化することが考えられ、この変化により、時刻差に誤差が生じる恐れがある。そこで、感知ON時刻ではなく、入力レベル値を用いる構成を提案する。具体的には、上述した感知ON時刻を利用する構成と同様に第四判定手段を具えると共に、車線方向に隣接する感知エリアの組がある場合、これら二つの感知エリアの入力レベル値からピーク時刻を検出する第二検出手段と、第二検出手段から得られた二つのピーク時刻の時刻差を演算し、得られた時刻差と、車線方向に隣接する感知エリア間の距離とから車両の速度を演算する第三演算手段とを車両有無判定部に具えることが挙げられる。感知ON時刻を速度の演算に用いないこのシステムは、時刻差の誤差を低減し、車両の速度をより精度よく求めることができる。
【0049】
入力レベル値は、検知対象からの赤外線の量を経時的に示すと時間的に変化する波形データとして取得することができる。この入力レベル値においてピーク(正負いずれのピークでもよい)が生じている場合、車両が存在すると考えられる。そこで、この手法では、ピーク時刻を検出し、この時刻差を速度の演算に利用する。ピーク時刻は、例えば、入力レベル値が増加から減少、或いは減少から増加に転じる時刻、つまり、入力レベル値が変位点をとる時刻が挙げられる。そして、第三演算手段は、このピーク時刻の時刻差により、車両の速度を演算する。或いは、車線方向に隣接する二つのONエリアの入力レベル値から相関関数を算出し、その最大値を時刻差としてもよい。なお、ピーク時刻の検出は、所定範囲において行う。所定範囲としては、例えば、上記二つのONエリアのそれぞれにおいて比較値が閾値以上となった時刻(感知ON時刻)から比較値が閾値未満となった時刻までの時間、つまり、比較値が連続して閾値以上となっている時間が挙げられる。また、所定範囲に複数のピークが存在する場合、第二検出手段は、上記二つのONエリアにおいてピークの時間的順番(事象の時間的な順番(後先))や時間的位置(事象の絶対時刻又は相対時刻)などにより車両の同じ部位に基づくピークであると考えられるピークについて時刻を検出するように構成する。即ち、上記二つのONエリアにおいて対応関係にあるピークの時刻を検出するように第二検出手段を構成する。対応関係にあるピーク同士について時刻を検出するのであれば、所定範囲に存在する複数のピークのうちいずれのピークについて時刻を検出してもよく、例えば、所定範囲において最初に現れたピークについて時刻を検出するるように第二検出手段を構成してもよい。
【0050】
上記車両有無判定部は、以下のステップを行うように構成しておくことで、車両の速度を求めることができる。
4-3-1 車両有りと判定されたとき、第四判定手段が、一つのグループから選択された比較値が閾値以上となる感知エリア(ONエリア)のうち、車線方向に隣接するONエリアの組の有無を判定するステップ。
4-6-1 車線方向に隣接するONエリアの組がある場合、第二検出手段が、これらONエリアごとに、入力レベル値のピーク時刻を検出するステップ。
4-6-2 第三演算手段が、第二検出手段から得られた二つのピーク時刻の時刻差を演算し、得られた時刻差と、車線方向に隣接する感知エリア間の距離とから車両の速度を演算するステップ。
【0051】
上記ピーク時刻を利用した構成の場合も、上述した感知ON時刻を利用する構成と同様に、車両の台数の判定を行う構成や、車両の進行方向の判定を行う構成と合わせて車両有無判定部に具えてもよい。また、上記ピーク時刻を利用した構成の場合も車線方向に隣接する感知エリア間の距離を設定値(固定値)としてもよいし、高さ測定手段や角度測定手段といったセンサの取り付け位置情報の測定手段と第四演算手段とを具えて、演算値としてもよい。同距離を演算値とする場合、より実際の距離に即しているため、演算誤差をより低減することができる。更に、ピーク時刻を利用した構成の場合も、上述した感知ON時刻を利用する構成と同様に組選択手段を具えて、車線方向に隣接するONエリアの組が複数存在する場合、センサの取り付け位置に最も近い位置にある組について速度を演算するように車両有無判定部を構成してもよい。ピーク時刻を利用する構成の場合も、車両の大きさによらず比較的安定した入力レベル値が得られるONエリアの組、つまり、センサの取り付け位置に最も近い組を利用することで、速度誤差を低減することができる。また、センサの取り付け位置に最も近い組を構成するONエリアは、比較的ピークが現れやすいタイヤ及びその近傍からの赤外線を感知するセンサに基づくエリアとなるため、ピーク時刻を求め易い。このように入力レベル値の利用及び組選択の双方を行うことで、本発明システムは、速度の計測誤差をより低減することができる。
【0052】
入力レベル値の利用に加え、高さ測定手段、角度測定手段の双方及び組選択手段を具えた車両有無判定部により車両の速度を求める手順例を以下に示す。
4-3-1 車両有りと判定されたとき、第四判定手段が、一つのグループから選択された比較値が閾値以上となる感知エリア(ONエリア)のうち、車線方向に隣接するONエリアの組の有無を判定するステップ。
4-5-1 車線方向に隣接するONエリアの組が複数存在する場合、組選択手段は、センサ(サーモパイル素子)の取り付け位置に最も近い位置にある組を選択するステップ。
4-7-1 第二検出手段が、選択された組のONエリアごとに、入力レベル値のピーク時刻を検出するステップ。
4-4-1 高さ測定手段が、センサの取り付け高さHを測定するステップ。
4-4-2 角度測定手段が、センサの取り付け角度θを測定するステップ。
4-4-3 第四演算手段が、測定された高さH,角度θにより車線方向に隣接する感知エリア間の距離dを演算するステップ。
4-7-2 第三演算手段が、第二検出手段から得られた二つのピーク時刻の時刻差を演算し、得られた時刻差と、第四演算手段により得られた距離dとから車両の速度を演算するステップ。
【0053】
上記サーモパイル素子(或いは素子を搭載させた回路基板)は、強度や耐性に優れる金属材料から形成された筐体、特に、アルミニウムなどの軽量な材料にて形成された筐体に収納するとよい。これらサーモパイル素子の検知方向前方には、各素子における赤外線感知範囲を適当な大きさに調整でき、かつ素子に効率よく赤外線を集光することができるように、赤外線透過レンズを配置することが好ましい。赤外線透過レンズは、形状、材料を特に限定しないが、例えば、一面が球面状でZnSから形成されるものが挙げられる。ZnS製レンズは、耐候性に優れ、レンズ自体を外部に露出させても十分使用に耐え得る。このレンズは、複数の素子に対して一つでもよいし、素子ごとに一つずつ設けてもよい。赤外線透過レンズの支持部も設けておく。この支持部は、筐体と一体の構成、例えば、筐体にレンズ孔を設けてレンズを装着する構成としてもよいし、筐体と別個に設けてもよい。前者の場合、筐体内には、赤外線透過レンズと焦点距離が合う位置にサーモパイル素子が固定されるように素子の固定部を設けることが好ましい。後者の場合、支持部は、サーモパイル素子(センサ)も配置できる形状とし、支持部にセンサ及びレンズを配置した際、センサ、レンズ、支持部が一体の部材となるようにすると、筐体への設置作業が容易にできて好ましい。また、この支持部は、センサ及び赤外線レンズを配置した際、適切な焦点距離となるように形成すると、筐体を所定の場所に配置するとき、焦点距離の調整を行う必要がなく好ましい。その他、筐体には、赤外線透過レンズの指向角を目的の方向に合わせるための照準部を具えていてもよい。照準部は、例えば、凹状突起と、凸状突起とを組み合わせた突起などの目印を設ける構成やレーザを用いた構成が挙げられる。このような筐体は、道路際に設けられている支柱に対し、いわゆるサイドファイア式に設置してもよい。本発明は、赤外線の感知を行うサーモパイル素子を利用しているため、サイドファイア式に設置して道路の側方からでも車両の検知を行うことができる。また、本発明システムにおいて、高さ測定手段や角度測定手段といったセンサの取り付け位置情報を測定する測定手段を具える場合、これらの測定手段は、センサの近傍に配置されることが好ましい。例えば、筐体内に収納させてもよいし、筐体近傍に取り付けてもよい。前者の場合、筐体の取り付けと同時に、測定手段の取り付けも行われるため、作業性がよい。
【0054】
車両有無判定部は、上記のように回路基板に搭載して、サーモパイル素子と共に上記筐体内に収納させてもよいし、別途設けた制御ボックス内に収納させてもよい。制御ボックスは、筐体を取り付ける支柱に固定するとよい。その他、本発明システムは、信号制御機や管理センターなどに有線や無線にて判定結果を送信可能な構成や、信号制御機などからの情報を受信可能な構成を具えていてもよい。この送受信構成は、筐体内や制御ボックスに収納させてもよいし、筐体を取り付ける支柱に別途取り付けてもよい。管理センターなどからの情報としては、上記のように不使用の素子からの情報を利用しないといった指令や、メンテナンス指令などが挙げられる。また、本発明システムには、サーモパイル素子、車両有無判定部や上述した測定手段、その他送受信部などの電源を必要とする部位に対して必要な動力を得るべく、太陽電池などの電源部を具えていてもよい。本発明システムでは、センサとして消費電力が小さいパッシブセンサを用いているため、太陽電池でも十分な動力を得ることができる。太陽電池を利用する場合、太陽電池のパネルは、筐体を取り付ける支柱に固定するとよい。
【発明の効果】
【0055】
上記構成を具える本発明車両検知システムは、監視範囲に複数の感知エリアを設けたことで、センサの取り付け位置精度がある程度低くても、高精度に車両の検知を行うことができる。特に、車幅方向の監視範囲を広めにして、車幅方向に複数の感知エリアを設けることで、本発明システムは、障害物の存在などにより車両の走行位置が変化したり、車線境界の変更などにより車両の走行位置が変化しても、車両の検知を行うことができるだけでなく、複数の車両を同時に検出することもできる。従って、本発明システムを利用すれば、センサの取り付け後、角度調整などの作業を不要としたり、調整時間を短縮させることができる。
【0056】
また、本発明システムは、車線方向に複数の感知エリアを設けることで、車両の走行方向を判別したり、車両の速度を求めたりすることができる。特に、車両の速度を求めるにあたり、本発明システムは、センサの取り付け位置情報を測定する測定手段を具えたり、演算に利用する感知エリアを適切に選択する選択手段を具えたり、入力レベル値を利用する構成としたりすることで、速度の誤差を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1(A)は、本発明車両検知システムを道路傍の支柱に取り付けた状態を示す概略図、(B)は、本発明システムに具えるセンサに基づく感知エリアの配置状態を説明する正面図である。本例に示す車両検知システム1は、道路100傍に配置される支柱300に取り付けられて、道路100の監視範囲10を通過する車両200を検知するものである。このシステム1は、車両200からの赤外線や、車両200以外の物体、主として道路100からの赤外線を感知して、これら赤外線の量に基づき車両の有無を調べるものであり、車両200や道路100などの検知対象が発する赤外線を感知するセンサ2と、センサ2から得られた入力レベル値を用いて車両の有無を判定する車両有無判定部とを具える。センサ2として、複数のサーモパイル素子(図示せず)を用いており、監視範囲10内には、各素子に基づく感知エリア11(1F〜8F,1B〜8B)が複数形成されている。そして、車両有無判定部は、感知エリア11ごとに入力レベル値の変化を調べ、その変化が一定値以上である感知エリア11の個数により、車両の有無を判定する。
【0058】
上記センサ2は、車両が通過していない場合、道路からの赤外線を感知し、車両が通過している場合、車両からの赤外線を感知する。これら二つの赤外線の量は、通常異なっているため、入力レベル値の変化を調べることで、車両の有無が判断できる。具体的には、車両有無判定部により、入力レベル値のうち、道路からの赤外線の量に基づく値を用いた演算値を背景レベルとし、入力レベル値と背景レベルとの差に基づく演算値を比較値とし、この比較値と閾値とを比較して、入力レベル値の変化を調べる。そして、本発明の最も特徴とするところは、一つの感知エリアにおいて入力レベル値の変化が一定値以上であるか否かで調べることで車両の有無を判定するのではなく、感知エリアごとに入力レベル値の変化を調べ、一定値以上の変化がある感知エリアの数により車両の有無を判定するところにある。
【0059】
本例に示す道路100は、片側二車線の合計四車線を有するものであり、二車線間に中央分離帯があり、道路100際に路側帯を有する。そして、本例では、監視範囲10を、片側二車線(第一車線,第二車線)及び路側帯、対向車線(中央分離帯よりも右側の車線)の一部を含む大きさとし、この監視範囲10に車幅方向に8つ、車線方向に2つ合計16個の感知エリア11を格子状に設けている。より具体的には、車幅方向において、各車線に3つずつ、路側帯に1つ、対向車線の一部に1つの感知エリア11を並べており、これら各感知エリア11についてそれぞれ車線方向に2つの感知エリア11を設けている。本例では、一つの感知エリアの大きさを約30cm四方、車幅方向における感知エリア間の間隔を約30cm、車線方向における感知エリア間の間隔を約1mとした。また、監視範囲を設けた第一車線及び第二車線の車両の走行方向は、手前(右側)から奥側(左側)に向かうものとする。
【0060】
上記16個の感知エリア11を設けるべく、本例では、センサ2として16個のサーモパイル素子を用いている。本例で用いたサーモパイル素子は、同一の基板に一体に配置されたものを利用した。この基板に、図1(A)で示すように横8列×縦2列の格子状に感知エリア11が設けられるようにサーモパイル素子を配置させている。この基板は、回路基板3に搭載させている。回路基板3には、素子からの入力レベル値に基づき車両の有無の判定を行う車両有無判定部の他、素子からの起電力を増幅するアンプ、起電力をデジタル信号に変換するA/D変換器なども搭載させている。車両有無判定部は、上記入力レベル値に基づき種々の演算、記憶、判定、その他起電力などのデータの取得、記憶の呼び出し、判定結果の書き込みなどの処理を行う。そこで、車両有無判定部は、演算手段や判定手段として市販のCPU、記憶手段としてメモリ、その他データ取得手段、記憶の呼び出し手段、判定結果の書き込み手段などを具える。これらサーモパイル素子や車両有無判定部を搭載させた回路基板3は、アルミニウム製の筐体4内に収納している。このとき、16個のサーモパイル素子がそれぞれ、図1に示すように感知エリア11を形成するように筐体4に固定している。筐体4においてサーモパイル素子の検知方向前方には、ZnS製の赤外線透過レンズ(図示せず)を配置している。この筐体4は、図1に示すようにサイドファイア式で支柱300に取り付けている。また、このシステム1は、車両有無判定部の判定結果を信号制御機や管理センターに送信したり、制御機などからの情報を受信する送受信部5、車両有無判定部や送受信部5などの電力供給を行う太陽電池を具えている。これら送受信部5や太陽電池のパネル6も支柱300に取り付けている。なお、図1では省略しているが、回路基板3や送受信部5と太陽電池との間は、太陽電池からの電力を供給できるように電力用配線にて接続される。また、回路基板3と送受信部5との間は、回路基板3の判定結果信号を伝送可能なように信号用配線にて接続される。送受信部5と信号制御機や管理センターとの間における信号の伝送は、無線にて行う。
【0061】
上記構成を具える本発明車両検知システムは、車両や道路といった検出対象が発する赤外線をサーモパイル素子で感知し、素子に生じた起電力をアンプにて増幅し、増幅された起電力をA/D変換器にてデジタル信号に変換して入力レベル値を得る。そして、本発明システムは、この入力レベル値と背景レベルとの差に基づく値(比較値)を演算し、この比較値が閾値以上である感知エリアの数を調べ、この数に応じて、車両の有無を判定する。なお、得られた判定結果は集計して、送受信部により信号制御機や交通管理センターなどに送る。送受信部は、メモリに集計結果が保存されているか否かを適宜確認して、保存されていた場合のみ制御機などに送信するように設定してもよい。
【0062】
上記本発明車両検知システムにおいて車両検知の手順を具体的に説明する。図2は、本発明車両検知システムにおいて車両有無判定部の処理手順の一例を示すフローチャート、図3(A)〜(L)は、感知エリアの処理結果例を示す説明図、図3(Z)は、感知エリアのON/OFFグラフである。この処理は、一定周期(例えば、5min周期)で一定間隔(例えば、10msec)のカウントアップを行うタイマを設けておき、一定間隔ごとに行うように設定してもよい。なお、本例では、図3に示すように各感知エリアの番号を車幅方向に路側帯側から順に1〜8と付し、車線方向にF又はBと付しており、車両有無判定部には、いずれの感知エリアにおける入力レベル値であるか、つまり、いずれのサーモパイル素子が取得した入力レベル値であるかを認識できるようにしている。
【0063】
車両有無判定部は、サーモパイル素子の作動に伴い処理が始まる(ステップS1)。本例では、16個のサーモパイル素子の全てを作動させる。処理開始直後は、背景レベルと閾値の初期学習を行ってもよい。これらの初期学習は特許文献1,2に記載される手法を利用してもよい。初期学習を行わせることで、背景レベル及び閾値を実際の環境に、より即した値とすることができる。初期学習を行う場合、各サーモパイル素子に基づく感知エリアごとに行う。具体的には、感知エリア1Bに対応するサーモパイル素子からの起電力(出力)を用いて、背景レベル、閾値の学習を行い、感知エリア1B独自の背景レベル、閾値を持つようにする。従って、16個の感知エリア1F〜8F,1B〜8Bのそれぞれに対して、背景レベル、閾値の学習がなされ、各エリアがそれぞれ独自の背景レベル、閾値を持つようになる。初期学習中は、車両の有無の判定を行わないように車両有無判定部を設定してもよい。初期学習により得られた背景レベル及び閾値は、メモリに保存するように車両有無判定部を設定する。
【0064】
次に、車両の有無の判定を始める。まず、車両有無判定部には、各サーモパイル素子から得られた起電力がそれぞれアンプで増幅されて送られ、車両有無判定部のデータ取得手段は、これら増幅されてA/D変換されたデータを入力レベル値として得る(ステップS2)。次に、車両有無判定部の第一演算手段は、各サーモパイル素子に基づく感知エリアごとに、入力レベル値と背景レベルとを用いて比較値を演算する(ステップS3)。具体的には、例えば、感知エリア1Fに対応するサーモパイル素子からの入力レベル値と、上述した感知エリア1F独自の背景レベルとを基にして、感知エリア1F独自の比較値を演算する。従って、16個の感知エリア1F〜8F,1B〜8Bのそれぞれに対して、比較値が演算され、それぞれ独自の比較値を持つようになる。比較値、背景レベル、閾値の演算は、後述する。
【0065】
次に、車両有無判定部の比較手段は、入力レベル値に基づき演算された比較値と閾値とを比較し、第一判定手段は、比較値が閾値以上となる感知エリアのうち、車幅方向に2個以上隣接する感知エリアを一つのグループとし、このグループの有無を判定する(ステップS4)。図3(A)〜(L)に示すように、16個の感知エリアにおいて、比較値が閾値以上となる感知エリア(以下、ONエリアと呼ぶ)が存在する場合は、種々考えられる。これら種々の場合のうち、本例では、車幅方向に2個以上連続してONエリアが存在する場合、車両が存在するとの判定を行う。そこで、車幅方向に2個以上隣接するONエリアをグループ化して取り扱う。なお、図3においてONエリアはハッチングを付した四角形、比較値が閾値未満である感知エリア(以下、OFFエリアと呼ぶ)は、白い四角形で示す。また、比較値が閾値以上となるときを「ON」、比較値が閾値未満となるときを「OFF」として集計して、図3(Z)に示すようにON/OFFのグラフを作製し、メモリに保存しておくように車両有無判定部を設定しておいてもよい。
【0066】
本例に示すシステムでは、上記グループが無い場合は、1.全ての感知エリアがOFFエリアとなっている場合、2.一つの感知エリアのみOFFエリアとなっている場合、3.図3(A)に示すように複数の感知エリアがONエリアとなっているが、車幅方向に隣接して存在しない場合、つまり、ONエリアが分散して存在する場合の上記1.〜3.のいずれかとなる。この場合、車両有無判定部の第一判定手段は、車両無しと判定し、書き込み手段は、集計結果に「車両無し」と書き込み、メモリ(記憶手段)に保存する。
【0067】
上記グループがある場合、グループは、一つの場合と、二つ以上の複数ある場合の二通りが考えられ、グループの数によって車両の台数が異なることが考えられる。そこで、本例では、車両有無判定部のグループ数判定手段が、図3(B),(I)に示すようにグループが1個であるか、図3(C)〜(F)などに示すようにグループが2個以上であるかを判定する(ステップS5)。本例に示すシステムでは、監視範囲の車幅方向の大きさを二車線及び余裕分としているため、図3(B)に示すようにグループが1個の場合、車両は1台存在すると考えられ、グループが2個以上の場合、車両は1台又は2台存在すると考えられる。そこで、本例では、グループが1個の場合、グループ数判定手段は、車両は1台であると判定し、車両有無判定部の第一走行位置判定手段は、車両の走行位置を判定する。つまり、第一走行位置判定手段は、第一車線を走行する車両であるのか、第二車線を走行する車両であるのかを判定する。また、グループが複数個ある場合、車両有無判定部の第二判定手段は、OFFエリアの配置状態から車両が複数台であるか否かを判定し、第二,第三走行位置判定手段により、これらの車両の走行位置を判定する。
【0068】
まず、グループが1個の場合について説明する。このとき、次に行う手順は、この車両が第一車線側の走行車両か、第二車線側の走行車両であるかの判定であり、車両有無判定部の第一走行位置判定手段は、ONエリアの数が第二車線側に少ないか否かを判定する(ステップS6)。図3(B)に示すように第二車線側にONエリアの数が少ない場合、つまり、第一車線側にONエリアが多い場合及び図3(G)に示すように第一車線側のONエリアの数と第二車線側のONエリアの数が等しい場合、本例では、第一走行位置判定手段は、第一車線に車両有りと判定し(ステップS7)、この判定結果を集計結果に書き込む。第二車線側にONエリアが多い場合、第一走行位置判定手段は、第二車線に車両有りと判定し(ステップS8)、この判定結果を集計結果に書き込む。このように本例では、車両の台数に加えて、車両の走行位置をも判定することができる。
【0069】
なお、図3(G)に示すように、グループをつくるONエリアの個数が第一車線側と第二車線側とで同数の場合、上述のようにいずれか一方の車線を走行する車両であると判定するように車両有無判定部を構成してもよいが、いずれの車線を走行する車両であるのかをより厳密に判定することが望まれる場合が考えられる。例えば、本例に示すように片側二車線の道路であって車両の走行方向が同じである二車線分に監視範囲を設けるのではなく、片側一車線の道路であって車両の走行方向が異なる二車線分に監視範囲を設ける場合などが挙げられる。このような場合、車両有無判定部は、前後の処理結果(ON又はOFFの判定結果)を利用することで走行方向を判定することができる。例えば、現在の処理のとき、ONエリアが図3(G)に示すように右側(F群)のみにあり、次の処理のとき、ONエリアが図3(H)に示すように車線方向に連続して(F群及びB群に)存在した場合、後述する進行方向の判定手段(第五判定手段)などを車両有無判定部に具えて進行方向を判定することで、この車両は、右側から左側に走行していることが判別できる。また、進行方向の判定手段に加えて後述する車線の判定手段(第六判定手段)を車両有無判定部に具えて車線を判定することで、車両が走行する車線を判別できる。例えば、第一車線が右側から左側に向かって車両が走行する車線であり、第二車線が左側から右側に向かって車両が走行する車線である場合、上記右側から左側に走行していると判定された車両は、本来第一車線を走行する車両であると判定できる。逆に、前回の処理のとき、図3(H)に示す状態であり、現在の処理のとき、図3(G)に示す状態となった場合、同様にして左側から右側に走行する車両であることが判別でき、本来第二車線を走行する車両であると判定できる。
【0070】
また、本例では、グループが1個の場合、車両の台数が1台であると判定するように車両有無判定部を構成しており、グループをつくるONエリアの個数が多い場合、車幅が大きな車両、或いは車高が大きな車両が存在すると考えられる。しかし、図3(I)に示すようにグループをつくるONエリアの個数が極端に多い場合、車両が1台であると判定することが不自然であると考えられる。そこで、このような場合、グループをつくるONエリアの個数が所定数以上であるとき、車両が複数台であると判定するように車両有無判定部を構成してもよい。具体的には、ONエリアの数がグループに所定数(例えば、6個)以上含まれる場合、車両が複数台(本例では2台)あると判定する第三判定手段を車両有無判定部に具えることが挙げられる。このとき、「第一車線、第二車線の双方に車両有り」と集計結果に書き込む。この手順は、例えば、ステップS6の判定の前に行うことが挙げられる。即ち、ステップS5においてグループが1個であると判定された後、第三判定手段がグループに含まれるONエリアの数が所定数以上であるか否かを判定し、所定数以上の場合、第一車線、第二車線の双方に車両有りと判定し、所定数未満の場合、第一走行位置判定手段により、走行車線を判定するとよい。
【0071】
一方、グループが2個以上ある場合、車両有無判定部は、車両が1台か2台かを判別する。車両が2台である場合、通常、2台の車両は、車幅方向に間隔を空けて走行すると考えられる。そのため、例えば、図3(C),(J),(K)に示すように車幅方向に隣接するグループ間にOFFエリアが存在する場合、2台であると考えられ、例えば、図3(D)に示すように同OFFエリアが存在しない場合、1台であると考えられる。そこで、車両有無判定部の第二判定手段は、車幅方向において隣接するグループ間にOFFエリアが存在するか否かを判定する(ステップS9)。そして、図3(C)に示すように車幅方向にOFFエリア(この例では、5B,5F)が存在する場合、第二判定手段は、第一車線、第二車線の双方に車両有りと判定し(ステップS13)、集計結果に書き込む。なお、隣接するグループとは、図3(K)に示すように車幅方向に並ぶ同一列(本例ではB群)に存在するグループ同士だけでなく、図3(C),(J)に示すように車幅方向に並ぶ例であって車線方向に隣接する列(本例ではB群及びF群)に存在するグループ同士とする。つまり、グループが存在する車幅方向に並ぶ列が車線方向に異なっていてもよい。
【0072】
図3(D)〜(F),(H),(L)に示すように車幅方向に隣接するグループ間にOFFエリアが存在しない場合、車両は1台であることも考えられる。そこで、本例では、いずれの車線にONエリアの数が多いかを調べることで、車両の台数及び走行位置を判定する。具体的には、車両有無判定部の第二走行位置判定手段は、ONエリアの個数が第一車線側と第二車線側とで同数か否かを判定する(ステップS10)。ONエリアの個数が同数で無い場合、例えば、図3(D)に示すようように第一車線側、第二車線側のいずれかにONエリア数が多くあり、このような場合は、ONエリア数が多い車線側に車両が1台存在すると考えられる。そこで、グループが1個存在したときと同様に、車両有無判定部は、ONエリアの数が第一車線側と第二車線側のいずれに多いかを調べ、車両の走行位置を判別する。
【0073】
なお、本例では、図3(L)に示す場合もいずれかの車線を走行する1台の車両であるとの判定を行うが、上述のように第三判定手段を車両有無判定部に具えておき、車幅方向に並ぶONエリアの数が多いグループが存在する場合、複数台(本例では2台)であると判定するようにしてもよい。例えば、グループごとにONエリアの数が所定数以上であるか否かを判定し、所定数以上であるグループが存在する場合、第一車線、第二車線の双方に車両有りと判定する(例えば、図3(L)の場合)ように第三判定手段を構成し、存在しない場合(例えば、図3(D)の場合)、グループが1個のときと同様に第一走行位置判定手段により、走行車線を判定するとよい。
【0074】
ONエリアの個数が同数の場合は、図3(E)のように車線方向に連続してONエリアが存在しない場合と、図3(F),(H)のように車線方向に連続してONエリアが存在する場合とが考えられる。そして、車線方向に連続してONエリアが存在する場合、車両は1台であると考えられ、存在しない場合、車両は2台であると考えられる。そこで、車両有無判定部の第三走行位置判定手段は、車線方向に隣接するONエリアが有るか否かを判定する(ステップS11)。車線方向に隣接するONエリアが有る場合、車両は、図3(F),(H)に示すように車線境界近傍を通過しており、このような走行をする車両は、本例の場合、本来第一車線を走行する車両であると考えられる。そこで、車両有無判定部の第三走行位置判定手段は、第一車線に車両有りと判定し(ステップS12)、集計結果に書き込む。一方、車両有無判定部の第三走行位置判定手段は、車線方向に隣接するONエリアが無い場合、車両が2台有ると判定する、即ち、第一車線、第二車線の双方に車両有りと判定し(ステップS13)、集計結果に書き込む。
【0075】
なお、本例では、車線方向に連続してONエリアが存在する場合、車両を1台として判定したが、上述した図3(L)の場合と同様に、車幅方向に並ぶONエリアの数が多いグループが存在する場合、複数台(本例では2台)であると判定するように車両有無判定部を構成してもよい。具体的には、第三走行位置判定手段が車線方向に隣接するONエリアが存在するとの判定を行った後、グループごとにONエリアの数が所定数以上であるか否か判定し、所定数以上であるグループが存在する場合、第一車線、第二車線の双方に車両有りと判定し、存在しない場合、第一車線に車両有りと判定するように車両有無判定部を構成してもよい。
【0076】
上記手順により、本発明車両検知システムでは、車両の有無を精度よく検知することができる。特に、車幅方向に複数の感知エリアを設けていることで、車両の走行位置も把握することができることに加えて、複数台の車両を同時に検知することができる。
【0077】
本例で用いた比較値を説明する。本例において比較値は、入力レベル値と背景レベルとの差に基づき演算した値を用いる。具体的には、入力レベル値bnと前回の背景レベルan-1との差分(背景差分と呼ぶ)を求め、この背景差分の一定時間における積算値を比較値とする。この積算値だけでなく、積算値と入力レベル値の単位時間当たりの変化量とを用いて演算される演算値を利用してもよい。具体的には、上記と同様に入力レベル値と前回の背景レベルとの差分(背景差分)を求め、この背景差分の一定時間における積算値を求める。次に、入力レベル値の変化量(現在の入力レベル値と過去の入力レベル値との差)を求め、更に、この変化量の平均値を求める。この平均値を定数倍したものと上記積算値とを加えた値を比較値としてもよい。このように積算値だけでなく、変化量をも用いて演算した値を比較値とすることで、車両の誤認や認識できない場合などを更に低減する。また、このように変化量をも考慮した値をアルゴリズムに用いることで、焦電センサなどの他のセンサを用いることなく、サーモパイル素子のみでも十分に赤外線の感知を行って、車両の有無を判定することができる。
【0078】
本例で用いた閾値を説明する。本例において閾値は、実際の環境に応じて、即ち、赤外線量の変化(温度変化の大小)に応じて変化させるべく、設定値と補正値との和という演算値を用いた。より具体的には、設定値を最低値とし、設定値に種々の補正値、具体的には、前回の処理結果(ON又はOFFの判定結果)に応じて変化させる補正値を加えることで、実際の環境に追従させた。
【0079】
次に、本例で用いた背景レベルを説明する。本例では、入力レベル値のうち、道路などの背景を検出した際の入力レベル値、即ち、比較値が閾値未満となった場合の入力レベル値をメモリに保存しておき、この値を用いた演算値を背景レベルとした。具体的には、指数平滑法による演算を行い、入力レベル値をbn、次回の判定に用いる背景レベルをan、平滑係数をαとするとき、an=an-1+α×(bn-an-1)を背景レベルとした(an-1は前回閾値と比較した比較値に用いた背景レベル)。特に、平滑係数αを上述した閾値と同様に前回の判定結果に応じて変化させることで、背景レベルを実際の環境により即した値とした。
【0080】
なお、本例では、監視範囲として片側二車線を含む例としたが、片側一車線の合計二車線としてもよい。このとき、互いに逆方向に走行する車両の有無の検知を行うことができる。また、監視範囲として、一車線(以下、当該車線と呼ぶ)と、路側帯(一部)、当該車線に隣接する別の車線の一部を含む範囲としてもよい。このとき、当該車線内に三つ、路側帯に一つ、隣接する別の車線の一部を含むように一つの合計五つの感知エリアを車幅方向に並んで設けるとよい。この場合、当該車線を走行する車両が隣接する別の車線側に走行位置がずれたり、同車両が路側帯側に走行位置がずれたりした場合であっても、別の車線側に設けた感知エリアや路側帯に設けた感知エリアにより、車両からの赤外線を感知することができるため、筐体の取り付け角度を変化させること無く、或いは簡単な角度調整により、車両の有無を検知することができる。
【0081】
(進行方向判定)
次に、車両が存在した場合、車両の進行方向を判別する手順を説明する。図3(F),(H)などに示すように車線方向に連続してONエリアが存在する場合、右側から左側に走行する車両では、右側のF群の感知エリアが左側のB群の感知エリアよりも先に比較値が閾値以上となる。即ち、図3(Z)に示すように現在時刻がt3とすると、F群の感知エリアは、時刻t1でONとなり、B群の感知エリアはそれから遅れて時刻t2でONとなる。このことから、F群の感知エリアが先にONとなること、即ち、車両が右側から左側に走行することが判別できる。
【0082】
具体的な手順を説明する。図4は、本発明システムにおいて車両の進行方向の判定手順を示すフローチャートである。まず、車両有無判定部の第四判定手段は、車線方向に連続してONエリアの組が存在するか否かを判定する(ステップS20)。車線方向に隣接するONエリアの組が存在する場合[進行方向判定I]、車両有無判定部に具える組選択手段により、このような組が1組か複数組存在するか判定し(ステップS21)、1組のときはこの組について、このような組が複数存在するときは任意の組を選択し(ステップS22)、この選択された組について、車両有無判定部の第一検出手段は、F群のグループに属するONエリアとB群のグループに属するONエリアのそれぞれに対して、ONとなった時刻TF,TBを検出する(ステップS23)。次に、第五判定手段は、得られた時刻TF,TBを比較し(ステップS24)、F群のグループの時刻TFがB群のグループの時刻TBよりも早い場合、右側から左側に向かう車両であると判定し(ステップS25)、B群のグループの時刻TBがF群のグループの時刻TFよりも早い場合、左側から右側に向かう車両であると判定する(ステップS26)。なお、ONとなった時刻もメモリに保存されるように設定しておく。このように本発明システムでは、車両の台数だけでなく、車両の進行方向をも判別することができる。そのため、例えば、2台の車両が検知された際、進行方向の判別により、追い越し車両のように同一方向に走行する車両なのか、異なる方向に走行する車両なのかを判別できる。このような判別を行うのは、走行方向が異なる車線を監視範囲に含む場合が好適である。なお、進行方向の判定終了後、メモリに保存した時刻は、クリアにしてもよい。また、時刻を一定周期でカウントする場合、オーバーフローを是正して、時刻の大小を比較するように第五判定手段を構成してもよい。
【0083】
[進行方向判定II]
次に、車線方向に隣接するONエリアが存在しない場合に進行方向を判定する手法を説明する。この手法は、過去の処理結果(ON又はOFFの判定結果)を利用するものである。図5は、本発明システムにおいて車両の進行方向の判定手順を示すフローチャートであり、車線方向に隣接するONエリアが存在しない場合を示す。上記第四判定手段が、車線方向に連続してONエリアが存在しないと判定した場合、車両有無判定部に具える第一グループ選択手段にて、グループが一つであるか複数であるかを判定し(ステップS30)、グループが複数である場合、任意のグループ(車両の進行方向を求めたいグループ)を選択する(ステップS31)。次に、第一グループ選択手段にて選択されたグループ、或いはグループが一つのときはそのグループについて、車両有無判定部に具えるグループ判定手段は、グループがF群,B群のいずれに存在するかを判定する(ステップS32)。グループがF群に存在する場合、車両有無判定部に具える第二グループ選択手段は、グループ内の任意のONエリアを選択し(ステップS33)、第一検出手段は、選択されたONエリアがONとなった時刻TFを検出する(ステップS34)。次に、車両有無判定部に具える抽出手段は、上記選択されたONエリアと車線方向に隣接するB群のONエリアを、メモリに記憶されている前回の処理結果から抽出し(ステップS35)、第一検出手段は、抽出されたB群のONエリアがONとなった時刻TBを検出する(ステップS36)。そして、第五判定手段は、第一検出手段より検出された二つの時刻TF,TBを比較して(ステップS37)、上記進行方向判定Iと同様に時刻TFが時刻TBよりも小さい場合、右側から左側に向かう車両であると判定し(ステップS38)、時刻TBが時刻TFよりも小さい場合、左側から右側に向かう車両であると判定する(ステップS39)。
【0084】
グループがB群に存在する場合、F群の場合と同様に第二グループ選択手段は、グループ内の任意のONエリアを選択し(ステップS33')、第一検出手段は、このONエリアに対してONとなった時刻TBを取得する(ステップS34')。次に、抽出手段は、選択されたONエリアと車線方向に隣接するF群のONエリアを前回の処理結果から抽出し(ステップS35')、第一検出手段は、このONエリアがONとなった時刻TFを検出する(ステップS36')。以下、上述したF群の場合と同様に、第五判定手段は、ステップS37〜S39を行い、車両の進行方向を判定する。このような判定を行う場合、車両有無判定部は、グループ選択手段、グループ判定手段、抽出手段を具えておく。
【0085】
(走行車線の判定)
更に、車両の進行方向から、車両が走行する車線の判別を行うこともできる。例えば、右側から左側に走行する車線を第一車線、左側から右側に走行する車線を第二車線とする場合、メモリに上記車線情報を予め入力しておき、車両の進行方向結果により、メモリから車線情報を呼び出して、車両の走行車線を判定する第六判定手段を車両有無判定部に具えておくことが挙げられる。
【0086】
(速度演算)
(1) 感知ON時刻を利用する場合
また、車線方向にも複数の感知エリアを具える場合、進行方向だけでなく、車両の速度を検出することも可能である。図6は、本発明システムにおいて車両の速度を演算する手順を示すフローチャートである。具体的には、上述した進行方向を求める場合と同様に、第四判定手段は、車線方向に隣接するONエリアの組の有無を判定し(ステップS40)、ONエリアの組がある場合[速度演算I]、組選択手段により組が1組か複数組かを判定し(ステップS41)、1組のときはこの組について、複数組のときは任意の組を選択し(ステップS42)、この選択された組について、車両有無判定部の第一検出手段は、F群のONエリアがONになった時刻TFと、このONエリアに車線方向に隣接する別のONエリアがONになった時刻TBを検出する(ステップS43)。この時刻は、上記のようにONとなった時刻をメモリから呼び出すことにより行うとよい。そして、車線方向に隣接する感知エリア間の距離dを予めメモリに入力しておき、メモリから間隔dを呼び出し、車両有無判定部の第二演算手段は、時刻差TB-TFを演算し、この時刻差を用いて速度V=d/(TB-TF)を演算することで、速度Vを求めることができる(ステップS44)。
【0087】
なお、一定間隔tでカウントアップするタイマを利用して感知処理を行っている場合、上記時刻差(TB-TF)×tで距離dを除するようにすれば速度を求めることができる。また、時刻差は、後にONとなった時刻から先にONとなった時刻を引くことで求めるようにすればよい。本例では、F群のONエリアが先にONとなり、B群のONエリアが後でONとなった場合を考えているため、時刻差をTB-TFとした。このとき、タイマが一定周期Tでカウントする場合、例えば、T=0〜99の100カウントとし、先にONとなったF群の感知エリアの時刻TFが98、後にONとなったB群の感知エリアの時刻TBが3の場合、(TB-TF)が-95となり、適正な速度を求められない。このような不具合を防ぐべく、時刻差を求める前に時刻TF、時刻TBの大小関係を求めておき、先にONとなった時刻が後にONとなった時刻よりも大きい場合、即ち、オーバーフローしている場合、周期数に後にONとなった時刻を足し合わせるなどの処理を行うとよい。この例の場合、後にONとなった時刻:3に周期数:100を足し合わせ、(3+100)-98=5が時刻差となる。なお、速度の演算終了後、メモリに保存した時刻は、クリアにしてもよい。
【0088】
[速度演算II]
一方、車線方向に隣接するONエリアがないと判定された場合、上述した進行方向の判定手順と同様に、過去のデータを用いて速度の演算を行ってもよい。具体的には、第一グループ選択手段にて、速度の演算を行うグループを選択し、選択されたグループ、或いはグループが一つのときはそのグループがF群,B群のいずれかをグループ判定手段にて判定し、第二グループ選択手段により、任意のONエリアを選択する。次に、第一検出手段は、選択されたONエリアがONとなった時刻と、抽出手段により抽出されたONエリア(上記選択されたONエリアと車線方向に隣接するONエリア)がONとなった時刻とを検出する。そして、第二演算手段は、得られた二つの時刻と、メモリから呼び出した距離dとにより速度Vを演算する。
【0089】
[速度演算III]
上述した速度演算手法では、車線方向に隣接する組が複数組存在する場合、組選択手段は、任意の組を選択するように構成した場合を説明したが、特定の組を選択するように構成してもよい。車両の大きさ(高さや幅)によっては、同一の感知エリアを通過する車両からの赤外線が、この感知エリアに対応したセンサに感知されるまでの時間が異なることがある。この時間のずれが、速度演算において誤差を生じさせる。誤差を低減するには、車両の大きさによらずセンサに感知されるまでの時間ができるだけ安定していることが望まれる。ここで、車両の各部位のうちタイヤの取り付け位置は、車両の大きさによらず安定していることから、タイヤ及びその近傍からの赤外線を感知する場合、上記センサに感知されるまでの時間が安定し易い。特に、タイヤ及びその近傍は、グループを構成するONエリアのうち、センサの取り付け位置に最も近いONエリアを通過した可能性が高い。従って、車線方向に隣接する組が複数存在する場合、センサの取り付け位置に最も近いONエリアを選択するように組選択手段を構成することで、本発明システムは、速度誤差を低減することができる。
【0090】
(2) ピーク時刻を利用する場合
上述した速度演算手法では、ONエリアがONになった時刻(感知ON時刻)を用いて速度を演算する例を説明した。ここでは、入力レベル値を用いて速度を演算する場合を説明する。感知ON時刻は、感知エリアが形成される路面状態などで多少変動することが考えられるため、感知ON時刻を利用して速度を演算する場合、時刻差に誤差が生じる恐れがある。一方、入力レベル値の経時的な波形は、車両が存在したときに変化が大きく、車両が存在しない場合、変化がほとんどない。従って、入力レベル値において大きな変化が起きている時刻を速度の演算に利用すると、誤差を低減することができる。そこで、本例では、上記時刻として入力レベル値が変位点をとった時刻(ピーク時刻)を利用する。
【0091】
図7は、本発明システムにおいて入力レベル値を用いて車両の速度を演算する手順を示すフローチャートである。まず、上述した感知ON時刻を用いて速度の演算を行う場合と同様に、第四判定手段は、車線方向に隣接するONエリアの組の有無を判定し(ステップS50)、ONエリアの組がある場合[速度演算IV]、組選択手段により組が1組か複数組かを判定し(ステップS51)、1組のときはこの組について、複数組のときは任意の組を選択し(ステップS52)、この選択された組について、車両有無判定部に具える第二検出手段が、これらONエリアごとに、ONが連続して検出されている時間(検出時間)における入力レベル値を呼び出し、図11(F群),(B群)に示すようにこの検出時間内においてピーク時刻TpF,TpBを検出する(ステップS53)。このとき、入力レベル値は、随時メモリに記憶されるように記憶手段を構成しておく。また、本例では、図11(F群),(B群)に示すように上記検出時間において複数のピークが存在する場合、この検出時間において最初に現れたピークの時刻を検出するように第二検出手段を構成している。更に本例では、上記速度演算IIIで説明したように、センサの取り付け位置から最も近い位置にあるONエリアの組を選択するように組選択手段を構成している。センサの取り付け位置から離れた位置にあるONエリアの入力レベル値には、車両においてタイヤ及びその近傍のようにピークが現れにくい箇所(例えば、車両ボディなど)からの赤外線に基づく値のものがあり、このような入力レベル値では、図11(A)に示すようにピークが存在しないことがある。そこで、本例では、上述のようにセンサの取り付け位置から最も近い位置にあるONエリアの組を選択するようにした。そして、車両有無判定部に具える第三演算手段は、時刻差TpB-TpFを演算し、メモリから呼び出した距離dとこの時刻差とを用いて速度V=d/(TpB-TpF)を演算することで、速度Vを求めることができる(ステップS54)。
【0092】
一方、車線方向に隣接するONエリアがないと判定された場合[速度演算II']、上述した進行方向の判定手順と同様に、過去のデータを用いて速度の演算を行ってもよい。具体的には、第一グループ選択手段にて、速度の演算を行うグループを選択し、選択されたグループ、或いはグループが一つのときはそのグループがF群,B群のいずれかをグループ判定手段にて判定し、第二グループ選択手段により、任意のONエリアを選択する。次に、第二検出手段は、選択されたONエリアの入力レベル値のピーク時刻と、抽出手段により抽出されたONエリア(上記選択されたONエリアと車線方向に隣接するONエリア)の入力レベル値のピーク時刻とを検出する。そして、第三演算手段は、得られた二つのピーク時刻と、メモリから呼び出した距離dとにより速度Vを演算する。このように入力レベル値を用いて速度の演算を行うことで、本発明システムは、速度誤差をより低減することができる。
【0093】
(3) 感知エリア間の距離を演算により求める場合
上述した速度演算手法では、車線方向に隣接する感知エリア間の距離dを固定値とし、車両有無判定部(メモリ)に予め入力しておく場合を説明した。ここでは、距離dを演算により求める場合を説明する。車線方向に隣接する感知エリア間の距離dは、筐体に収納したセンサを支柱に取り付けた高さや取り付け角度により変動する。従って、距離dを固定値とすると、上記取り付け高さや取り付け角度が変動して距離dが上記固定値と異なった際、そのまま利用すると速度に誤差が生じる。そのため、速度を演算する場合、車線方向に隣接する感知エリア間の実際の距離を用いることが好ましい。特に、作業者がセンサの取り付け位置情報(高さや角度)を実際に測定するのではなく、位置情報の測定手段を具えておき、車線方向に隣接する感知エリア間の距離が車両有無判定部に自動的に取得されるような構成とすると、誤差を低減できると共に、簡単に得ることができる。そこで、車線方向に隣接する感知エリア間の距離を自動的に取得可能な構成を具えるシステムを以下に説明する。
【0094】
車線方向に隣接する感知エリア間の距離dは、図9に示すようにセンサの取り付け角度(道路面に対する垂直方向の傾き)をθ、道路面からセンサまでの高さをH、車幅方向に隣接する感知エリア間の水平方向の角度をβとするとき、d=2×(H/cosθ)×{tan(β/2)}で求められる。水平方向の角度βは、センサの配置状態で決まるものであるため、本例に示すシステムでは、取り付け角度θを自動的に測定する角度測定手段、高さHを自動的に測定する高さ測定手段を筐体内に収納させている。角度測定手段、高さ測定手段は、市販の角度計及び距離計を用いており、測定された高さ及び角度が車両有無判定部に具える第四演算手段に送られるように構成している。また、角度βは、メモリに予め入力している。
【0095】
図8は、角度測定手段及び高さ測定手段を具える本発明システムにおいて車両の速度を演算する手順を示すフローチャートである。ステップS40〜S43までの手順は、上述した速度演算Iと同様にするとよく、ここでは、説明を省略する。ステップS43に引き続き、高さ測定手段は、センサの取り付け高さHを測定し(ステップS60)、第四演算手段に送る。また、角度測定手段がセンサの取り付け角度θを測定し(ステップS61)、第四演算手段に送る。そして、第四演算手段は、メモリから角度βを呼び出し、角度β、及び測定された高さH,角度θにより車線方向に隣接するONエリア間の距離dを演算する(ステップS62)。次に、第二演算手段は、第一検出手段から得られた二つの時刻TB,TFの時刻差TB-TFを演算し、得られた時刻差TB-TFと、第四演算手段により得られた距離dとから車両の速度Vを演算する(ステップS63)。このようにセンサの取り付け位置情報を実際に測定し、この測定結果に基づいて車線方向に隣接する感知エリア間の距離dを演算し、この距離dを用いて速度の算出を行うことで、誤差をより低減することができる。
【0096】
なお、本例では、時刻の検出ステップを距離演算ステップよりも先に行っているが、いずれのステップが先でもよい。また、角度θと高さHの取得もいずれが先でもよい。更に、本例では、速度演算Iの手順を基本として説明したが、車線方向に隣接するONエリアの組がない場合は、速度演算IIの手順を基本として過去のデータを用いて速度演算を行ってもよいし、同組が複数存在する場合は、速度演算IIIで説明したように組選択手段を具えて、特定の組を選択するようにしてもよい。また、感知ON時刻ではなく速度演算IVで説明したように入力レベル値のピーク時刻を用いてもよい。
【0097】
更に、上記では、速度演算機能を具えるシステムについて説明したが、この速度を用いて車長を演算する第五演算手段と、得られた車長から車種を判定する第七判定手段とを具えるシステムを構築してもよい。車長は、ONが連続して検出されている時間と速度との積により求めるように第五演算手段を構成するとよい。また、車長が所定値以上のとき、大型車であり、所定値未満のとき、大型車以外の車両であると判定するように第七判定手段を構成するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明車両検知システムは、交通量や占有率などの交通流を調べるのに好適である。特に、車両の走行位置がずれる可能性があるような大きさの道路、具体的には二台以上の車両が走行可能な大きさを有する道路を対象とした交通流調べに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】(A)は、本発明車両検知システムを道路傍の支柱に取り付けた状態を示す概略図、(B)は、本発明システムに具えるセンサの検出可能範囲を示す説明図である。
【図2】本発明車両検知システムの車両検知手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】(A)〜(L)は、本発明システムを利用した際、ONエリア及びOFFエリアがとりうる状態を説明する説明図であり、(A)は、車両無しの場合、(B)は、第一車線側を走行する車両が1台有る場合、(C),(E),(I)〜(L)は、第一車線側及び第二車線側を走行する車両がそれぞれ1台ずつ有る場合、(D)は、第二車線側を走行する車両が1台有る場合、(F)〜(H)は、車両が1台有る場合を示す。(Z)は、感知エリア4F〜6F,4B〜6Fの判定結果を説明するON/OFFグラフである。
【図4】本発明システムにおいて、車両の進行方向を判定する手順を示すフローチャートであり、判定時に車線方向に隣接するONエリアの組が存在する場合を示す。
【図5】本発明システムにおいて、車両の進行方向を判定する手順を示すフローチャートであり、判定時に車線方向に隣接するONエリアの組が存在しない場合を示す。
【図6】本発明システムにおいて、車両の速度を演算する手順を示すフローチャートであり、感知ON時刻を利用して速度を求める場合を示す。
【図7】本発明システムにおいて、車両の速度を演算する手順を示すフローチャートであり、入力レベル値のピーク時刻を利用して速度を求める場合を示す。
【図8】センサの取り付け位置情報を測定する測定手段を具える本発明システムにおいて、車両の速度を演算する手順を示すフローチャートである。
【図9】センサの取り付け状態と感知エリアとの関係を示す模式図であり、(A)は、平面図、(B)は、斜視図である。
【図10】センサが車両からの赤外線を感知するまでの時間が車両の大きさによって異なることを説明する説明図であり、(A)は、上面図、(B)は、正面図である。
【図11】入力レベル値の経時的変化波形と処理結果を示す模式図であり、(A)は、センサの取り付け位置から離れた位置にある感知エリアの入力レベル値と処理結果、(F群)、(B群)は、センサの取り付け位置に最も近い位置にある感知エリアの入力レベル値と処理結果を示す。
【符号の説明】
【0100】
1 車両検知システム 2 センサ 3 回路基板 4 筐体 5 送受信部
6 太陽電池のパネル
10 監視範囲 11 感知エリア
100 道路 200,200h,200l 車両 300 支柱
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上の監視範囲を通過する車両を検知する車両検知システムであって、
検知対象が発する赤外線を感知する複数のサーモパイル素子と、
前記サーモパイル素子から得られた入力レベル値を用いて、車両の有無を判定する車両有無判定部とを具え、
前記監視範囲には、各サーモパイル素子に基づく感知エリアが複数形成され、
前記車両有無判定部は、
感知エリアごとに、入力レベル値のうち、車両以外の物体が発する赤外線の量に基づく値を背景レベルとし、入力レベル値と背景レベルとの差に基づく値を比較値とし、この比較値と閾値との比較を行い、
前記比較値が閾値以上となる感知エリアの数に応じて車両の有無を判定することを特徴とする車両検知システム。
【請求項2】
監視範囲の車幅方向の大きさは、一車線を超える大きさであり、
感知エリアは、前記一車線内と、この車線の外側とに設けられて、車幅方向に複数形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両検知システム。
【請求項3】
感知エリアは、監視範囲の車線方向に複数設けられることを特徴とする請求項2に記載の車両検知システム。
【請求項4】
感知エリアは、少なくとも車幅方向に複数形成されており、
車両有無判定部は、
感知エリアごとに入力レベル値を取得する取得手段と、
感知エリアごとに、入力レベル値と背景レベルとの差に基づく比較値を演算する第一演算手段と、
感知エリアごとに比較値と閾値とを比較し、比較値が閾値以上となる感知エリアのうち、車幅方向に所定数以上連続する感知エリアを一つのグループとし、グループがある場合、車両有りと判定し、グループがない場合、車両無しと判定する第一判定手段とを具えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両検知システム。
【請求項5】
車両有無判定部は、更に、
グループが存在するとき、車両がグループの数と同数存在すると判定する車両数判定手段を具えることを特徴とする請求項4に記載の車両検知システム。
【請求項6】
車両有無判定部は、更に、
グループが複数存在するとき、車幅方向に隣接するグループ間に比較値が閾値未満となる感知エリアが存在する場合、車両が複数台有ると判定する第二判定手段を具えることを特徴とする請求項4に記載の車両検知システム。
【請求項7】
車両有無判定部は、更に、
グループが存在するとき、比較値が閾値以上となる感知エリアの数が一つのグループに所定数以上含まれる場合、車両が複数台あると判定する第三判定手段を具えることを特徴とする請求項4に記載の車両検知システム。
【請求項8】
感知エリアは、車線方向にも複数形成されており、
車両有無判定部は、更に、
車両有りと判定されたとき、一つのグループから選択された比較値が閾値以上となる感知エリアのうち、車線方向に隣接する感知エリアの組の有無を判定する第四判定手段と、
車線方向に隣接する感知エリアの組がある場合、これら両感知エリアのそれぞれに対して、比較値が閾値以上となった時刻を検出する第一検出手段と、
第一検出手段から得られた時刻により車両の進行方向を判定する第五判定手段とを具えることを特徴とする請求項4に記載の車両検知システム。
【請求項9】
車両有無判定部は、更に、
車両の進行方向の結果により、車両の走行車線を判定する第六判定手段を具えることを特徴とする請求項8に記載の車両検知システム。
【請求項10】
感知エリアは、車線方向にも複数形成されており、
車両有無判定部は、更に、
車両有りと判定されたとき、一つのグループから選択された比較値が閾値以上となる感知エリアのうち、車線方向に隣接する感知エリアの組の有無を判定する第四判定手段と、
車線方向に隣接する感知エリアの組がある場合、これら両感知エリアのそれぞれに対して、比較値が閾値以上となった時刻を検出する第一検出手段と、
第一検出手段から得られた二つの時刻の時刻差を演算し、得られた時刻差と、車線方向に隣接する感知エリア間の距離とから車両の速度を演算する第二演算手段とを具えることを特徴とする請求項4に記載の車両検知システム。
【請求項11】
感知エリアは、車線方向にも複数形成されており、
車両有無判定部は、更に、
車両有りと判定されたとき、一つのグループから選択された比較値が閾値以上となる感知エリアのうち、車線方向に隣接する感知エリアの組の有無を判定する第四判定手段と、
車線方向に隣接する感知エリアの組がある場合、これら両感知エリアのそれぞれに対して、入力レベル値からピーク時刻を検出する第二検出手段と、
第二検出手段から得られた二つのピーク時刻の時刻差を演算し、得られた時刻差と、車線方向に隣接する感知エリア間の距離とから車両の速度を演算する第三演算手段とを具えることを特徴とする請求項4に記載の車両検知システム。
【請求項12】
サーモパイル素子の取り付け位置情報を自動的に測定する測定手段を具え、
車両有無判定部は、更に、
測定手段からの測定結果により、車線方向に隣接する感知エリア間の距離を演算する第四演算手段を具えることを特徴とする請求項10又は11に記載の車両検知システム。
【請求項13】
車両有無判定部は、更に、
車線方向に隣接する感知エリアの組が複数存在する場合、サーモパイル素子の取り付け位置に最も近い位置にある組を選択する組選択手段を具え、
前記組選択手段で選択された組について車両の速度を演算することを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の車両検知システム。
【請求項14】
車両有無判定部は、更に、
演算された車両の速度と、速度の演算に用いた感知エリアにおいて比較値が閾値以上となった時刻から閾値未満となった時刻までの時間とから車長を演算する第五演算手段と、
得られた車長が所定値以上である場合、大型車であると判定する第七判定手段とを具えることを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の車両検知システム。
【請求項1】
道路上の監視範囲を通過する車両を検知する車両検知システムであって、
検知対象が発する赤外線を感知する複数のサーモパイル素子と、
前記サーモパイル素子から得られた入力レベル値を用いて、車両の有無を判定する車両有無判定部とを具え、
前記監視範囲には、各サーモパイル素子に基づく感知エリアが複数形成され、
前記車両有無判定部は、
感知エリアごとに、入力レベル値のうち、車両以外の物体が発する赤外線の量に基づく値を背景レベルとし、入力レベル値と背景レベルとの差に基づく値を比較値とし、この比較値と閾値との比較を行い、
前記比較値が閾値以上となる感知エリアの数に応じて車両の有無を判定することを特徴とする車両検知システム。
【請求項2】
監視範囲の車幅方向の大きさは、一車線を超える大きさであり、
感知エリアは、前記一車線内と、この車線の外側とに設けられて、車幅方向に複数形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両検知システム。
【請求項3】
感知エリアは、監視範囲の車線方向に複数設けられることを特徴とする請求項2に記載の車両検知システム。
【請求項4】
感知エリアは、少なくとも車幅方向に複数形成されており、
車両有無判定部は、
感知エリアごとに入力レベル値を取得する取得手段と、
感知エリアごとに、入力レベル値と背景レベルとの差に基づく比較値を演算する第一演算手段と、
感知エリアごとに比較値と閾値とを比較し、比較値が閾値以上となる感知エリアのうち、車幅方向に所定数以上連続する感知エリアを一つのグループとし、グループがある場合、車両有りと判定し、グループがない場合、車両無しと判定する第一判定手段とを具えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両検知システム。
【請求項5】
車両有無判定部は、更に、
グループが存在するとき、車両がグループの数と同数存在すると判定する車両数判定手段を具えることを特徴とする請求項4に記載の車両検知システム。
【請求項6】
車両有無判定部は、更に、
グループが複数存在するとき、車幅方向に隣接するグループ間に比較値が閾値未満となる感知エリアが存在する場合、車両が複数台有ると判定する第二判定手段を具えることを特徴とする請求項4に記載の車両検知システム。
【請求項7】
車両有無判定部は、更に、
グループが存在するとき、比較値が閾値以上となる感知エリアの数が一つのグループに所定数以上含まれる場合、車両が複数台あると判定する第三判定手段を具えることを特徴とする請求項4に記載の車両検知システム。
【請求項8】
感知エリアは、車線方向にも複数形成されており、
車両有無判定部は、更に、
車両有りと判定されたとき、一つのグループから選択された比較値が閾値以上となる感知エリアのうち、車線方向に隣接する感知エリアの組の有無を判定する第四判定手段と、
車線方向に隣接する感知エリアの組がある場合、これら両感知エリアのそれぞれに対して、比較値が閾値以上となった時刻を検出する第一検出手段と、
第一検出手段から得られた時刻により車両の進行方向を判定する第五判定手段とを具えることを特徴とする請求項4に記載の車両検知システム。
【請求項9】
車両有無判定部は、更に、
車両の進行方向の結果により、車両の走行車線を判定する第六判定手段を具えることを特徴とする請求項8に記載の車両検知システム。
【請求項10】
感知エリアは、車線方向にも複数形成されており、
車両有無判定部は、更に、
車両有りと判定されたとき、一つのグループから選択された比較値が閾値以上となる感知エリアのうち、車線方向に隣接する感知エリアの組の有無を判定する第四判定手段と、
車線方向に隣接する感知エリアの組がある場合、これら両感知エリアのそれぞれに対して、比較値が閾値以上となった時刻を検出する第一検出手段と、
第一検出手段から得られた二つの時刻の時刻差を演算し、得られた時刻差と、車線方向に隣接する感知エリア間の距離とから車両の速度を演算する第二演算手段とを具えることを特徴とする請求項4に記載の車両検知システム。
【請求項11】
感知エリアは、車線方向にも複数形成されており、
車両有無判定部は、更に、
車両有りと判定されたとき、一つのグループから選択された比較値が閾値以上となる感知エリアのうち、車線方向に隣接する感知エリアの組の有無を判定する第四判定手段と、
車線方向に隣接する感知エリアの組がある場合、これら両感知エリアのそれぞれに対して、入力レベル値からピーク時刻を検出する第二検出手段と、
第二検出手段から得られた二つのピーク時刻の時刻差を演算し、得られた時刻差と、車線方向に隣接する感知エリア間の距離とから車両の速度を演算する第三演算手段とを具えることを特徴とする請求項4に記載の車両検知システム。
【請求項12】
サーモパイル素子の取り付け位置情報を自動的に測定する測定手段を具え、
車両有無判定部は、更に、
測定手段からの測定結果により、車線方向に隣接する感知エリア間の距離を演算する第四演算手段を具えることを特徴とする請求項10又は11に記載の車両検知システム。
【請求項13】
車両有無判定部は、更に、
車線方向に隣接する感知エリアの組が複数存在する場合、サーモパイル素子の取り付け位置に最も近い位置にある組を選択する組選択手段を具え、
前記組選択手段で選択された組について車両の速度を演算することを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の車両検知システム。
【請求項14】
車両有無判定部は、更に、
演算された車両の速度と、速度の演算に用いた感知エリアにおいて比較値が閾値以上となった時刻から閾値未満となった時刻までの時間とから車長を演算する第五演算手段と、
得られた車長が所定値以上である場合、大型車であると判定する第七判定手段とを具えることを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の車両検知システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−190247(P2006−190247A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278799(P2005−278799)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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