説明

車両用の組電池

【課題】隣接する角形電池セルを絶縁しながら有効放熱面積を大きくして、理想的な状態で冷却または加温する。
【解決手段】車両用の組電池は、複数の角形電池セル1をセパレータ2を介して送風隙間3を設ける状態で積層している。セパレータ2は、隣接する角形電池セル1の対向面1Aの間に配設してなる絶縁シート10と、この絶縁シート10の両側にあって絶縁シート10を挟着してなる一対の分割セパレータ11とを備えている。分割セパレータ11は、角形電池セル1の外周に沿う枠部12を有し、この枠部12の内側を開口して、この開口部13において、絶縁シート10の両面と角形電池セル1の間に送風隙間3を設けている。さらに、分割セパレータ11は、送風隙間3に気体を送風する送風開口14を枠部12に有する。組電池は、セパレータ2の送風開口14から送風隙間3に強制送風して角形電池セル1を冷却し、または加温する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、ハイブリッドカーや電気自動車等の電動車両に搭載されて、車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の組電池に関し、とくに電池を強制冷却する車両用の組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の組電池は、多数の電池セルを直列に接続して出力電圧を高く、出力電力を大きくしている。また、体積に対する充電容量を大きくすることから、多数の角形電池セルを積層状態に配置する組電池が開発されている。この組電池は、大電流で充放電されて電池セルの温度が上昇する。また、極めて高温な環境でも使用されることから、角形電池セルを強制冷却する必要がある。さらに、角形電池セルは、外装缶をアルミニウムなどの金属製として、放熱特性と強度を向上できるが、この角形電池セルは絶縁して積層する必要がある。外装缶が電位を有するからである。
【0003】
積層される角形電池セルの間に、セパレータを挟着する組電池は開発されている(特許文献1及び2参照)。これらの特許文献に記載される組電池は、角形電池セルの間にセパレータを挟着して、送風隙間を設けている。また、セパレータを絶縁材として、隣接する角形電池セルを絶縁できる。
【特許文献1】特開平10−112301号公報
【特許文献2】特開2008−166191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の組電池は、角形電池セルの間に金属板のセパレータを配置する。このセパレータは、表面に凹凸を設けて、角形電池セルの表面に送風隙間を設けている。また、特許文献2の組電池は、絶縁材のプラスチックを成形しているセパレータとし、これを角形電池セルの間に挟着している。このセパレータは、両面に凸条と溝を交互に設ける形状に成形して送風隙間を設けている。
【0005】
特許文献の組電池は、セパレータで積層している角形電池セルの間に送風隙間を設けることはできるが、角形電池セルの対向面を広い面積で送風隙間に開口できない。このため、角形電池セルの対向面を広い面積で送風隙間に露出して、有効放熱面積を大きくできない。たとえば、特許文献1のセパレータは、金属板を、矩形波等の凹凸形状とするので、送風隙間に露出する有効放熱面積が対向面の半分以下となる。また、特許文献2のセパレータも、プラスチック板の断面形状を矩形波状に成形するので、有効放熱面積は対向面の半分以下と小さくなる。このため、角形電池セルを広い面積で送風隙間に露出して、有効放熱面積を広くして、強制送風される冷却空気などで効率よく冷却できない。
【0006】
さらに、特許文献1のセパレータは、金属板を凹凸形状に加工するので、薄くできるが隣接する角形電池セルを絶縁できない。このため、角形電池セルの外装缶を絶縁材のプラスチックなどで成形し、あるいは外装缶の表面を絶縁材で被覆する必要がある。絶縁材は熱伝導率が低く、内部の熱を効率よく表面に伝導できない。
【0007】
特許文献2のセパレータは、隣接する角形電池セルを絶縁して送風隙間を設けることはできるが、送風隙間が狭くなって、冷却気体の圧力損失が大きくなる。それは、セパレータの厚さが送風隙間を狭くするからである。圧力損失の大きい送風隙間は、ここに強制送風する冷却ファンの消費電力が大きく、強制送風する冷却気体の騒音レベルも高くなる。
【0008】
本発明は、以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、角形電池セルを絶縁しながら理想的な状態で冷却又は加温できる車両用の組電池を提供することにある。
また、本発明の他の大切な目的は、隣接する角形電池セルを絶縁しながら有効放熱面積を大きくし、また、送風隙間に強制送風する冷却気体の圧力損失を小さくできる車両用の組電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
本発明の車両用の組電池は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
車両用の組電池は、複数の角形電池セル1をセパレータ2を介して送風隙間3を設ける状態で積層している。セパレータ2は、隣接する角形電池セル1の対向面1Aの間に配設してなる絶縁シート10と、この絶縁シート10の両側にあって絶縁シート10を挟着してなる一対の分割セパレータ11とを備えている。分割セパレータ11は、角形電池セル1の外周に沿う枠部12を有し、この枠部12の内側を開口して、この開口部13において、絶縁シート10の両面と角形電池セル1の間に送風隙間3を設けている。さらに、分割セパレータ11は、送風隙間3に気体を送風する送風開口14を枠部12に有する。組電池は、セパレータ2の送風開口14から送風隙間3に強制送風して角形電池セル1を冷却し、又は加温する。
【0010】
以上の車両用の組電池は、角形電池セルを絶縁しながら理想的な状態で冷却又は加温できる特徴がある。さらに、本発明の車両用の組電池は、隣接する角形電池セルを絶縁しながら送風隙間に露出する有効放熱面積を大きくでき、また、送風隙間に強制送風する冷却気体の圧力損失を小さくできる特徴も実現する。有効放熱面積を広くできるのは、積層する角形電池セルの間に絶縁シートを配設し、この絶縁シートの両側を、角形電池セルの外周に沿う枠部の分割セパレータで挟着する独特の構造のセパレータを積層する角形電池セルの間に配設しているからである。とくに、絶縁シートの両側を枠部の分割セパレータで挟着する構造は、絶縁シートを薄くできるので、送風隙間の断面積を大きく、すなわち圧力損失を小さくできる。また、角形電池セルの対向面のほぼ全面を露出できることから、有効放熱面積を著しく大きくできる。
【0011】
ちなみに、本発明の組電池は、特許文献2の組電池に比較して、角形電池セルの有効放熱面積を2.7倍と極めて大きくし、また、送風隙間の断面積を約80%も大きくして、圧力損失を70%も低減できる。このことは、角形電池セルの冷却気体による効率的な冷却を実現し、さらに強制送風する強制送風機構を小さく省エネルギー化できる特徴を実現する。
【0012】
本発明の車両用の組電池は、一対の分割セパレータ11を、絶縁シート10との挟着面を嵌合構造として連結することができる。
この組電池は、一対の分割セパレータを位置ずれしないように連結して角形電池セルの間に配置できる。
【0013】
本発明の車両用の組電池は、一対の分割セパレータ11の挟着面に設けた嵌合構造を、一方の分割セパレータ11に設けた嵌着凸部16と、この嵌着凸部16を挿入する嵌着凹部17とすることができる。さらに、絶縁シート10に、嵌着凸部16を挿入する貫通孔10Aを設けて、嵌着凸部16を絶縁シート10の貫通孔10Aに貫通して嵌着凹部17に挿入して、一対の分割セパレータ11と絶縁シート10とを定位置に連結することができる。
この組電池は、一対の分割セパレータと絶縁シートとを位置ずれしないように連結して、角形電池セルの間に配設できる。
【0014】
本発明の車両用の組電池は、分割セパレータ11の枠部12を、両側の縦枠12Aと上下の横枠12Bとで構成し、両側の縦枠12Aに送風開口14を設けて、縦枠12Aの中間に両端を縦枠12Aに連結してなる支持ロッド15を設けて、この支持ロッド15で絶縁シート10を挟着すると共に、絶縁シート10を挟着する一対の支持ロッド15を隣接する角形電池セル1の対向面1Aに挟着することができる。
この組電池は、絶縁シートを隣接する角形電池セルの中間に正確に配置できると共に、支持ロッドで角形電池セルの膨張を防止できる特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための車両用の組電池を例示するものであって、本発明は車両用の組電池を以下のものに特定しない。
【0016】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0017】
図1に示す車両用の組電池は、主として、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッドカーや、モータのみで走行する電気自動車などの電動車両の電源に最適である。ただし、ハイブリッドカーや電気自動車以外の車両にも使用される。
【0018】
図1ないし図4に示す組電池は、複数の角形電池セル1をセパレータ2を介して送風隙間3を設ける状態で積層している。組電池の両端側には、エンドプレート4を配置して、エンドプレート4で組電池の両側を狭持した状態で、連結固定具5にて固定している。エンドプレート4は、角形電池セル1の外形と同じ形状と寸法の四角形として、組電池を両端面から挟着して固定している。この組電池は、図1と図3に示すように、対向位置に送風ダクト6を設けて、送風ダクト6から送風隙間3に冷却気体を強制送風して、角形電池セル1を冷却し、あるいは加温する。
【0019】
角形電池セル1は、幅よりも薄い薄型の角形電池で、互いに平行な姿勢としてセパレータ2を挟んで積層している。角形電池セル1は、図5に示すように、上面の両端部に正負の出力端子7を突出させて固定している。出力端子7を突出させる位置は、正極と負極が左右対称となる位置としている。これにより、角形電池セル1を裏返して重ねると、正極と負極とを重ね合わせることができ、直列接続を容易に行える。出力端子7は、それぞれ断面L字状に折曲され、さらに折曲部には連結穴を開口している。これらの出力端子7は、図4に示すように、連結穴に連結ボルト8を挿通して互いに積層される折曲部を連結している。とくに、正負の出力端子7は、図5に示すように互いに逆方向に折曲されると共に、互いに隣接する電池セル同士では、正負の出力端子7が交互に逆向きに折曲されている。これらの出力端子7は、隣接する角形電池セル1の間で、直接接続可能な大きさ及び形状に形成している。これにより、隣接する電池間で正極と負極を直接接続して、複数の電池を直列に接続している。ただ、出力端子は、金属板のバスバーを接続して、隣接する角形電池セルを直列に接続することもできる。以上のように、角形電池セル1を直列に接続する組電池は、出力電圧を高くして出力を大きくできる。ただし、組電池は、角形電池セルを並列と直列に接続することもできる。
【0020】
セパレータ2は、互いに隣接する角形電池セル1の間に挟着されて、隣接する角形電池セル1を一定の間隔に保持して絶縁すると共に、角形電池セル1の対向面1Aに送風隙間3を設ける。図6と図7のセパレータ2は、隣接する角形電池セル1の対向面1Aの間に配設される絶縁シート10と、この絶縁シート10の両側にあって絶縁シート10を挟着する一対の分割セパレータ11とを備える。
【0021】
絶縁シート10は、絶縁材のシートで、たとえば厚さを0.1mmないし0.5mmとしている。絶縁シート10は薄くして、送風隙間3の圧力損失をより小さくできる。ただ、絶縁シート10は、薄くなると強度が低下して、隣接する角形電池セル1を長期間にわたって安定して確実に絶縁するのが難しくなる。したがって、絶縁シート10の厚さは、材質や要求される強度と圧力損失とを考慮して最適値に特定される。絶縁シート10は、プラスチックシートである。絶縁シート10には、絶縁特性に加えて、優れた熱伝導特性のシート、たとえば熱伝導特性の優れた粉末を絶縁材のプラスチックに充填しているシートも使用できる。この絶縁シート10は、全体の温度を均一化することで、温度むらを少なくする効果がある。さらに、絶縁シート10には、不織布や絶縁紙も使用できる。また、マイカなどの無機質シートも使用できる。絶縁シート10は、隣接する角形電池セル1の対向面1Aを絶縁するので、その外形は、角形電池セル1の外形にほぼ等しく、あるいは角形電池セルの外形よもわずかに大きく、あるいは小さくする。角形電池セル1の外形よりも小さい絶縁シート10は、絶縁シート10で絶縁されない角形電池セルの対向面1Aを、分割セパレータ11の枠部12で絶縁する。
【0022】
分割セパレータ11は、角形電池セル1の外周に沿う枠部12を有し、この枠部12の内側を開口している。枠部12の内側にできる開口部13を送風隙間3として、有効放熱面積を大きくしている。すなわち、分割セパレータ11の開口部13において、絶縁シート10の表面と角形電池セル1の間に送風隙間3が形成される。この分割セパレータ11は、枠部12に送風開口14を設けて、この送風開口14から送風隙間3に冷却気体を強制送風するようにしている。また、組電池が極低温環境で使用される状態にあっては、送風開口14から送風隙間3に温風を強制送風して、角形電池セル1を加温することもできる。
【0023】
図の分割セパレータ11の枠部12は、角形電池セル1の両側に沿う縦枠12Aと、上下縁部に沿う横枠12Bとを連結した四角形としている。この図の分割セパレータ11は、縦枠12Aを角形電池セル1の外周面に沿う板状とし、横枠12Bの断面形状をL字状としている。縦枠12Aは、角形電池セル1に挟着される状態で、角形電池セル1の両側面の全体をカバーする幅としている。また、縦枠12Aは、絶縁シート10を挟着して一対の分割セパレータ11を連結する状態で、絶縁シート10の両側にスリット状に送風開口14を設けている。このセパレータ2は、冷却気体を水平方向に強制送風して、角形電池セル1を冷却する。L字状の横枠12Bは、角形電池セル1の上下面に沿う水平部12aと、隣接する角形電池セル1の間に挟着される垂直部12bとを連結する形状に成形している。角形電池セル1の上面に沿う水平部12aは、角形電池セル1の上面に設けている出力端子7や安全弁9の開口部を閉塞しないように、出力端子7や安全弁9の開口部を露出させる形状としている。角形電池セル1の下面に沿う水平部12aは、縦枠12Aと同じ幅として、角形電池セル1に挟着される状態で、角形電池セル1の下面全体をカバーするようにしている。このセパレータ2は、角形電池セル1の間に挟着されて、積層される角形電池セル1の両側面と下面をセパレータ2でカバーして絶縁できる。
【0024】
さらに、図の分割セパレータ11は、縦枠12Aの中間に位置して、両端を縦枠12Aに連結してする支持ロッド15を一体的に成形して設けている。図の分割セパレータ11は、縦枠12Aの上下の中央に1本の支持ロッド15を設けている。支持ロッド15は、絶縁シート10を挟着して、絶縁シート10を角形電池セル1の対向面1Aの中間に配置する。さらに、一対の支持ロッド15が絶縁シート10を挟着する状態で、その厚さ、すなわち2本の支持ロッド15と絶縁シート10の厚さが加算される厚さは、隣接して配設される角形電池セル1の対向面1Aの間隔としている。いいかえると、絶縁シート10を挟着する一対の支持ロッド15を、隣接する角形電池セル1の対向面1Aで挟着するようにしている。この構造のセパレータ2は、支持ロッド15で絶縁シート10を対向面1Aに中央に正確に配置して、絶縁シート10の両面に設けられる送風隙間3の隙間を正確に同じにできる。また、一対の支持ロッド15を対向面1Aに挟着する構造によって、角形電池セル1の対向面1Aが膨れるように変形するのを防止できる。図の分割セパレータ11は、中央に1本の支持ロッド15を設けている。この分割セパレータ11は、支持ロッド15を設けながら、有効放熱面積の減少を最も少なくできる。ただし、分割セパレータは、図示しないが、中間に複数の支持ロッドを設けることもできる。複数の支持ロッドを設ける分割セパレータは、各々の支持ロッドを細くして、有効放熱面積の減少を少なくできる。また、複数の支持ロッドを隣接する角形電池セルの対向面に挟着して、角形電池セルの対向面の膨れをより確実に阻止できる。
【0025】
支持ロッド15は、送風隙間3の送風方向に伸びるように設けられる。図の組電池は、組電池の両側に送風ダクト6を設けて、送風隙間3に水平方向に強制送風するので、支持ロッド15を水平姿勢に配設している。図示しないが、組電池は、角形電池セルの間で冷却空気を上下方向に強制送風することもできる。この組電池は、上下の横枠に送風開口を設けて、上下に送風ダクトを配置する。また、支持ロッドも上下に伸びるように設けて、支持ロッドが冷却空気の送風を阻害しないようにする。
【0026】
さらに、図のセパレータ2は、絶縁シート10の挟着面を嵌合構造としている。図のセパレータ2は、一対の分割セパレータ11の挟着面に設けた嵌合構造を、一方の分割セパレータ11に設けた嵌着凸部16と、この嵌着凸部16を挿入する嵌着凹部17とで構成する。図の分割セパレータ11は、上下の横枠12Bに、両側部と中間部とに嵌着凸部16と、嵌着凹部17を設けている。嵌着凸部16を嵌着凹部17に挿入して、一対の分割セパレータ11は定位置に連結される。いいかえると、嵌着凸部16を嵌着凹部17に挿入して、定位置に連結できる位置に、嵌着凸部16と嵌着凹部17を設けている。
【0027】
さらに、図のセパレータ2は、絶縁シート10にも、嵌着凸部16を挿入する貫通孔10Aを設けている。このセパレータは、嵌着凸部16を絶縁シート10の貫通孔10Aに貫通して嵌着凹部17に挿入することで、一対の分割セパレータ11と絶縁シート10とを定位置に連結できる。互いに定位置に連結された一対の分割セパレータ11は、互いに結合することなく、角形電池セル1の間に挟着され、あるいは超音波溶着や接着などの方法で結合して、角形電池セル1の間に挟着される。
【0028】
さらに、図に示すセパレータ2は、角形電池セル1の温度を検出する温度センサ(図示せず)を挿入する挿入口18を開口している。温度センサは、組電池を構成する角形電池セル1の温度を検出する。温度センサは、サーミスタ等の温度で電気抵抗が変化する素子である。図のセパレータは、上面から斜めに傾斜して挿入口18を開口している。セパレータ2は、角形電池セル1をより広い面積で冷却できるように、できる限り上部まで送風隙間3を設けている。したがって、セパレータ2の上縁部にあって、互いに接触して積層される横枠12Bの垂直部12bは、上下幅が狭くなる。この垂直部12bに傾斜して挿入口18を設けて挿入口18を長くできる。長い挿入口18に挿入される温度センサは、角形電池セル1の温度を正確に検出しながら、挿入口18にしっかりと確実に固定される。さらに、サーミスタなどの温度センサは、図示しないが、金属筒に入れて挿入口18に挿入される。この温度センサは、熱伝導に優れた金属筒を介して角形電池セル1の温度を速やかに検出する。挿入口18に挿入された金属筒は、絶縁材のセパレータ2で角形電池セル1から絶縁される。角形電池セル1の上部に熱結合して配設される温度センサは、冷却気体の影響を受けず、角形電池セル1の温度を正確に検出する。
【0029】
図1と図3の組電池は、左右の両側に一対の送風ダクト6を設けている。送風ダクト6は、流入ダクト6Aと排出ダクト6Bからなる。流入ダクト6Aと排出ダクト6Bは、互いに反対側に設けられて、冷却気体を流入ダクト6Aから送風隙間3に、送風隙間3から排出ダクト6Bに送風して、角形電池セル1を冷却する。流入ダクト6Aと排出ダクト6Bには複数の送風隙間3が並列に連結される。したがって、流入ダクト6Aに送風される冷却気体は、複数の送風隙間3に分岐して送風され、送風ダクト6から排出ダクト6Bに送風される。図の組電池は、流入ダクト6Aと排出ダクト6Bを両側に設けているので、送風隙間3を水平方向に伸びるように設けている。冷却気体は、送風隙間3に水平方向に送風されて、角形電池セル1を冷却する。ただし、組電池は、送風隙間を上下方向に伸びるように設けて、一対の送風ダクトを組電池の上下の対向面に設けることもできる。
【0030】
以上の組電池は、車両用の電源装置に組み込まれる。この組電池を備える電源装置は、図示しないが、角形電池セル1の温度を検出する複数の温度センサと、この温度センサで検出される角形電池セル1の温度で、送風ダクト6を介して各々の送風隙間3に分岐して冷却気体を送風する強制送風機と、温度センサで検出される角形電池セル1の温度で電池の電流を制御する制御回路とを備える。
【0031】
強制送風機は、送風ダクト6に連結される。電源装置は、たとえば、流入ダクト6Aに強制送風機を連結して、強制送風機から流入ダクト6Aに冷却気体を強制送風する。この電源装置は、強制送風機→流入ダクト6A→送風隙間3→排出ダクト6Bに冷却気体を送風して、角形電池セル1を冷却する。ただし、強制送風機は、排出ダクトに連結することもできる。この強制送風機は、排出ダクトから冷却気体を強制的に吸入して排気する。したがって、この電源装置は、冷却気体を、流入ダクト→送風隙間→排出ダクト→強制送風機に送風して、角形電池セルを冷却する。送風される冷却気体は空気であるが、空気に代わって窒素や炭酸ガスなどの不活性ガスを送風することもできる。冷却気体を不活性ガスとする電源装置は、冷却気体を循環して、角形電池セル1を冷却する。循環される不活性ガスは、流路の途中に配設している冷却用の熱交換器で冷却されて、流入ダクト→送風隙間3→排出ダクト→強制送風機に循環されて、角形電池セル1を冷却する。
【0032】
強制送風機は、モータで回転されるファンを備え、モータの運転は制御回路に制御される。制御回路は、温度センサの信号で強制送風機のモータの運転を制御する。制御回路は、温度センサが検出する最高温度が設定温度よりも高くなると、強制送風機のモータを運転して、送風隙間に冷却気体を強制送風する。最高温度が設定温度よりも低くなると、モータの運転を停止する。さらに、制御回路は、温度センサの検出温度によって、モータに供給する電力をコントロールして、角形電池セルを所定の温度範囲に制御することもできる。たとえば、温度センサの検出温度が高くなるとモータに供給する電力を次第に大きくして、強制送風機が送風する風量を多くし、検出温度が低くなるとモータの供給電力を小さくして、設定された温度範囲に制御することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施例にかかる車両用の組電池の斜視図である。
【図2】図1に示す車両用の組電池の分解斜視図である。
【図3】図1に示す車両用の組電池の拡大水平断面図である。
【図4】図1に示す車両用の組電池の拡大垂直断面図である。
【図5】角形電池セルとセパレータの積層状態を示す分解斜視図である。
【図6】セパレータの斜視図である。
【図7】図6に示すセパレータの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1…角形電池セル 1A…対向面
2…セパレータ
3…送風隙間
4…エンドプレート
5…連結固定具
6…送風ダクト 6A…流入ダクト
6B…排出ダクト
7…出力端子
8…連結ボルト
9…安全弁
10…絶縁シート 10A…貫通孔
11…分割セパレータ
12…枠部 12A…縦枠
12B…横枠
12a…水平部
12b…垂直部
13…開口部
14…送風開口
15…支持ロッド
16…嵌着凸部
17…嵌着凹部
18…挿入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の角形電池セル(1)をセパレータ(2)を介して送風隙間(3)を設ける状態で積層してなる車両用の組電池であって、
前記セパレータ(2)が、隣接する角形電池セル(1)の対向面(1A)の間に配設してなる絶縁シート(10)と、この絶縁シート(10)の両側にあって、絶縁シート(10)を挟着してなる一対の分割セパレータ(11)とを備え、
前記分割セパレータ(11)は、角形電池セル(1)の外周に沿う枠部(12)を有し、この枠部(12)の内側を開口して、この開口部(13)において、絶縁シート(10)の両面と角形電池セル(1)の間に送風隙間(3)を設けており、
さらに、前記分割セパレータ(11)は、送風隙間(3)に気体を送風する送風開口(14)を枠部(12)に有し、この送風開口(14)から送風隙間(3)に強制送風して角形電池セル(1)を冷却し、又は加温するようにしてなる車両用の組電池。
【請求項2】
一対の分割セパレータ(11)が、絶縁シート(10)の挟着面を嵌合構造としている請求項1に記載される車両用の組電池。
【請求項3】
一対の分割セパレータ(11)の挟着面に設けた嵌合構造が、一方の分割セパレータ(11)に設けた嵌着凸部(16)と、この嵌着凸部(16)を挿入する嵌着凹部(17)とからなり、前記絶縁シート(10)が嵌着凸部(16)を挿入する貫通孔(10A)を設けており、嵌着凸部(16)が絶縁シート(10)の貫通孔(10A)に貫通されて嵌着凹部(17)に挿入されて、一対の分割セパレータ(11)と絶縁シート(10)とを定位置に連結するようにしてなる請求項2に記載される車両用の組電池。
【請求項4】
前記分割セパレータ(11)の枠部(12)が、両側の縦枠(12A)と上下の横枠(12B)からなり、両側の縦枠(12A)に送風開口(14)を設けて、縦枠(12A)の中間に両端を縦枠(12A)に連結してなる支持ロッド(15)を設けており、この支持ロッド(15)で絶縁シート(10)を挟着すると共に、絶縁シート(10)を挟着する一対の支持ロッド(15)を隣接する角形電池セル(1)の対向面(1A)に挟着してなる請求項1に記載される車両用の組電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−49842(P2010−49842A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211197(P2008−211197)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】