説明

車両用の荷物固定機構

【課題】本発明は、ベルト巻回装置をローコストで簡単に配置可能とするとともに、使い勝手の良好な荷物固定機構及び荷物固定機構に用いられるベルト巻回装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、車両のラゲージルームに設けられており、荷物に掛け渡すベルトを巻取り方向へ付勢しながら引出自在としたベルト巻回装置と、前記ベルトに取付けたフックを係合する複数の係合部と、を備え、前記ベルト巻回装置を、車両後面に設けたリアコンビネーションランプのメンテナンス用開口部内に配設する一方、前記係合部は、前記メンテナンス用開口部の配設位置と同じ側の内側壁に設けられた第1の係合部と、前記メンテナンス用開口部の配設位置とは反対側の内側壁に、当該第1の係合部と対向するように設けられた第2の係合部とを備えることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内の荷物を固定するために用いられる車両用の荷物固定機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両内に搭載した荷物が車両の加速減速時に移動しないように固定するための荷物固定機構が種々提案されている。
【0003】
一例として、開口部をラゲージルームの内側に向けた状態のケースを車体内壁に設置し、該ケース内に巻き取り方向に回転付勢されたリールを設け、先端にフックを有するロープを前記リールに巻き取り自在に収納したものであって、前記フックは、ロープの引き出し時に車体の他の部位に設置されたストライカに係合される一方ロープの巻き取り時にケースの開口部の一端側に位置し、ケースの開口部の他端側には、ロックノブが支点を中心に回動自在に設けられ、前記リールの周端に所定ピッチごとに形成された複数のロック部に対して前記ロックノブが係合することにより、ロープの引き出し方向へのリールの回転が阻止される構造のものが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−6722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の荷物固定機構は、小型化されているとはいえ、車体の内壁に専用の空間を形成してケースを収納配設していた。したがって、荷物固定機構を設置しようとすると、ケース収容用の孔を、車体内壁を構成するボディパネルに設けなければならなかった。そうなると、孔を形成した際のパネルの強度計算が必要になったり、孔に合わせて内張りのデザインも変更になったりするなど、車体全体の設計に関わる大きな設計変更が必要となっていた。
【0006】
そこで、本発明では、車両のラゲージルームに予め形成されているリアコンビネーションランプのメンテナンス用開口部を利用して、ベルト巻回装置をローコストで簡単に配置可能とするとともに、使い勝手の良好な荷物固定機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明では、車両のラゲージルームに設けられ、当該ラゲージルームに収容した荷物を固定するための荷物固定機構であって、前記荷物に掛け渡すベルトを、巻取り方向へ付勢しながら引出自在としたベルト巻回装置と、前記ベルトに取付けたフックを係合する複数の係合部と、を備え、前記ベルト巻回装置を、車両後面に設けたリアコンビネーションランプのメンテナンス用開口部内に配設する一方、前記係合部は、前記メンテナンス用開口部の配設位置と同じ側の内側壁に設けられた第1の係合部と、前記メンテナンス用開口部の配設位置とは反対側の内側壁に、当該第1の係合部と対向するように設けられた第2の係合部とを備えることとした。
【0008】
(2)本発明は、上記(1)の荷物固定機構において、前記フックは、ベルト先端に固着した第1のフックと、前記ベルトの中途位置に移動自在に取付けた第2のフックとからなることを特徴とする。
【0009】
(3)本発明は、上記(1)又は(2)の荷物固定機構において、前記メンテナンス用開口部に開閉蓋部を設け、この開閉蓋部に前記ベルトを引き出すベルト挿通孔を形成したことを特徴とする。
【0010】
(4)本発明は、上記(3)の荷物固定機構において、前記開閉蓋部の前記ベルト挿通孔の近傍位置に、前記第2のフックを収納するフック収納部を形成したことを特徴とする。
【0011】
(5)本発明は、上記(1)〜(4)のいずれかの荷物固定機構において、前記第1の係合部は、前記ベルト巻回装置のベルト引出位置よりも高い位置に設けられていることを特徴とする。
【0012】
(6)本発明は、上記(1)〜(5)のいずれかの荷物固定機構において、前記ベルト巻回装置を、運転席と対角をなす位置のメンテナンス用開口部内に配設したことを特徴とする。
【0013】
(7)本発明は、上記(1)〜(6)のいずれかの荷物固定機構において、前記ベルト巻回装置は、前記ベルトを巻回可能なスプールと、前記スプールをベルト巻き取り方向に付勢する付勢部と、前記スプールの回転を規制するロック機構と、を備え、前記ロック機構は、前記スプールの回転軸の端部に一体的に取付けられ、周面に噛合歯が形成された回転板と、上下摺動自在に配設され、降下位置で前記回転板の噛合歯と噛合するロック歯が内周面に形成されたロック筒と、このロック筒の外方に設けられ、前記ロック筒が前記回転板と連れ回る際に当接してその回転を防止するロック片と、を備えることを特徴とする。
【0014】
(8)本発明は、上記(7)の荷物固定機構において、前記ベルト巻回装置は、前記スプールを軸周りに回転自在に保持する金属製のフレームにベルト挿通用のスリットを形成し、このスリットに樹脂製のベルト保護材を嵌着し、前記ベルトが前記フレームに直接摺接することを防止したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車両のラゲージルームに予め形成されているリアコンビネーションランプのメンテナンス用開口部を利用してベルト巻回装置を配設したため、ローコストで簡単に設置可能となり、さらに、第1の係合部と第2の係合部とを用いて、荷物をラゲージルームのサイド側とセンター側とで安定保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る荷物固定機構の使用状態の一例を示す説明図である。
【図2】同平面断面視による説明図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】本実施形態に係る荷物固定機構の使用状態の一例を示す縦断面視による説明図である。
【図5】本実施形態に係る荷物固定機構の配置状態を示す斜視図である。
【図6】ベルト巻回装置の配設状態を示す説明図である。
【図7】開閉蓋部の説明図である。
【図8】ベルト巻回装置の分解斜視図である。
【図9】同ベルト巻回装置の説明図である。
【図10】同ベルト巻回装置の取付フレームの説明図である。
【図11】同ベルト巻回装置の配設状態を示す平面断面図である。
【図12】同ベルト巻回装置の縦断面図である。
【図13】ベルトの説明図である。
【図14】他の実施形態に係る荷物固定機構の使用状態を示す説明図である。
【図15】他の実施形態に係るベルト巻回装置を示す説明図である。
【図16】同ベルト巻回装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
[荷物固定機構の概要]
図1〜図4に示すように、本実施形態に係る荷物固定機構1は、車両2のラゲージルーム20に設けられており、当該ラゲージルーム20に搭載した荷物3が車の加速および減速時に移動したり、倒れたりしないようにベルト41でしっかりと保持可能としている。なお、本実施形態においては、荷物3としての説明を、比較的大きなトランクのような荷物3aと、ペットボトルや水タンクなどのように比較的小さい荷物3bと区別して行う場合がある(図4参照)。
【0019】
荷物固定機構1は、荷物3に掛け渡すベルト41を、巻取り方向へ付勢しながら引出自在としたベルト巻回装置4と、前記ベルト41に取付けたフック42を係合する係合部5とを備えている。
【0020】
ベルト巻回装置4は、車両2の後面に設けたリアコンビネーションランプ21のメンテナンス用開口部22内に配設されている。
【0021】
そして、メンテナンス用開口部22に開閉蓋部6を着脱自在に取付け、この開閉蓋部6にベルト41を引き出すベルト挿通孔61を形成している。
【0022】
他方、係合部5は複数個所に設けられており、少なくとも第1の係合部51と第2の係合部52とを備えている。そして、第1の係合部51をメンテナンス用開口部22の配設位置と同じ側の内側壁23に設ける一方、第2の係合部52をメンテナンス用開口部22の配設位置とは反対側の内側壁24に、前記第1の係合部51と対向するように設けている。
【0023】
図1及び図2に示す各係合部51,52は、内側壁23,24に配設した皿状本体51a(図3)に、フック42と係合する略U字状のフック受51bを、倒伏方向に付勢した状態で回動自在に取付けている。図3に示すように、皿状本体51aは、内側壁23,24の奥に設けられている比較的剛性の高いパネル27にボルト51cにより連結固定されている。したがって、不使用時にはフック受51bは皿状本体51a内に収納されているため、内側壁23,24の無用な突起物とはならず、また使用時にベルト41を介して負荷が加わってもパネル27で力を受けるため、内側壁23,24が破損したりする虞もない。
【0024】
ベルト41に取付けたフック42は、ベルト41の先端に固着した第1のフック42aと、ベルト41の中途位置に移動自在に取付けた第2のフック42bとからなる。かかる構成により、図示するように、第1の係合部51に第2のフック42bを係止するとともに、ここを中継位置としてベルト41を第2の係合部52側に伸延して、当該第2の係合部52に第1のフック42aを係止することができる。
【0025】
こうして、図1及び図2に示すように、トランクのような大きい荷物3aはラゲージルーム20の略中央位置に置いてシート25の背面に当接させた状態で保持することができる。また、図3に示すように、さらに、ベルト巻回装置4に近い左の内側壁23側では、比較的小さい荷物3bを保持することができる。なお、本実施形態に係る車両2では、図示するように、ラゲージルーム20における左右の内側壁23,24には、タイヤハウス28の後方部に車両2の幅方向へ凹んだ窪み部が形成されており、この窪み部内に荷物3bを置くことができるようになっている。
【0026】
ところで、本実施形態に係る車両2は、右ハンドルタイプであって、ベルト巻回装置4は、ハンドル(図示せず)とは反対側の左の内側壁23に設けたメンテナンス用開口部22内に配設するようにしている。すなわち、運転席と対角をなす位置のメンテナンス用開口部22内にベルト巻回装置4を配設している。
【0027】
このように、ベルト巻回装置4が左の内側壁23側に設けられているため、車両2の後方からベルト41などを操作する場合、右手が利き手である人の多い日本国内では、多数の者が操作を行いやすくなる。また、体積的には小さくても、比較的重量物であったりする荷物3bのみを保持する場合、例えばラゲージルーム20の一側で保持するときに、その荷物3bを運転者とは反対側の内側壁23に当接させて保持すれば、乗員が運転者のみの場合などにおいては車両2の重量バランスを取る上で好ましいと言える。
【0028】
なお、図4においては、転がりやすいペットボトルを荷物3bとしているが、内側壁23に当接させた状態でラゲージルーム20内に収容できるものであればどのような荷物3であってもよい。また、比較的小さい荷物3bは、必ずしも図示したように内側壁23に当接させて保持する必要はなく、ラゲージルーム20の略中央位置で保持する荷物3aなどが他にない場合はシート25の背面に当接させた状態で保持してもよい。
【0029】
また、図4に示すように、本実施形態における第1の係合部51は、ベルト巻回装置4のベルト引出位置よりも高い位置に設けられている。
【0030】
すなわち、詳しくは後述するが、ベルト巻回装置4は、ベルト41を巻回したスプール44を備えている(図8〜図12を参照)。そして、メンテナンス用開口部22内に配設されたベルト巻回装置4のスプール44よりも高く、当然ながら、開閉蓋部6に設けられたベルト挿通孔61よりも高い位置に第1の係合部51は配設されている。
【0031】
したがって、図4に示すように、第1の係合部51に向かって伸延するベルト41は、斜め上方に伸延することになる。そのため、例えば、背の低い荷物3bであれば、よりベルト巻回装置4側に置き、背が高くなればなるほど第1の係合部51側に置くなど、荷物3bの上背に応じて配置を決めることができる。そのため、ベルト41による荷物3bへの当接位置が低すぎて、ベルト41により保持しているにも拘わらず荷物3bが転倒するなどの不具合を確実に防止することができる。なお、図4中、符号26は工具やタイヤなどを収納する空間とラゲージルーム20とを仕切るフロア形成板を示す。
【0032】
[荷物固定機構の具体的な構成]
ここで、ベルト巻回装置4について、より具体的に説明する。
【0033】
図5に示すように、車両2のラゲージルーム20における左側の内側壁23の後面にはリアコンビネーションランプ21のメンテナンス用開口部22が形成され、このメンテナンス用開口部22内にベルト巻回装置4は配設されている。メンテナンス用開口部22には、開閉蓋部6が取付けられてベルト巻回装置4を直接的に視認することができないようにしているが、開閉蓋部6に形成された種々の孔部から、後述するロック機構46のロック操作用摘み481やフック42がラゲージルーム20に突出した状態で露呈している。
【0034】
開閉蓋部6には、フック42のうち、第2のフック42bを収納するフック収納部62が形成されている。すなわち、開閉蓋部6は樹脂により略箱状に形成されており、図6及び図7に示すように、前面部の正面視左側に略矩形形状のロック操作孔63aが形成され、このロック操作孔63aの右下に、このロック操作孔63aよりも大きな略矩形形状のフック収納ピース取付孔63bが形成されている。
【0035】
本実施形態では、このフック収納ピース取付孔63bに、樹脂成型されたフック収納ピース64を取付けることで、ベルト挿通孔61とフック収納部62とが形成される。
【0036】
すなわち、フック収納ピース64は、これも樹脂成型されたもので、図7(a)に示すように、第2のフック42bをその先端から挿入した状態で保持可能な袋部64aが突出形成されており、この袋部64aの入口両端部に、フック42に形成された、後述するベルト連結具420を係止するための一対の突起部64cを設けている。そして、フック収納ピース取付孔63bに取付けた状態では、図7(b)に示すように、当該フック収納ピース取付孔63bの一側にベルト挿通孔61が形成されることになる。
【0037】
なお、図7中、符号65は開閉蓋部6に形成された係合爪を示し、この係合爪65をメンテナンス用開口部22の開口縁に係合させることにより開閉蓋部6は内側壁23に取付けられる(図11参照)。
【0038】
ここで、図8〜図13を参照しながら、ベルト巻回装置4について詳述する。図8に示すように、ベルト巻回装置4は、ベルト41を巻回可能なスプール44と、このスプール44をベルト巻き取り方向に付勢する付勢部45と、スプール44の回転を規制するロック機構46と、これらを一体的に組み付けた状態で保持する取付フレーム40とを備えている。
【0039】
スプール44は、ベルト41の基端部を掛止するスリット44aと上下一対の鍔部44b,44bを形成した回転軸となる中空芯材441を有し、この中空芯材441の下端部441aに付勢部45を連動連結するとともに、上端部441bにロック機構46を連結している。なお、図8中、符号461はスプール44の中空芯材441の上端部441bと回転板47との間に嵌装されるブッシュ、符号462は回転板47の抜止材を示している。
【0040】
図8、図9及び図12に示すように、付勢部45は、円形ケーシング45a内にシートベルトリトラクタなどに用いられるゼンマイバネ45bを収納したもので、その回転軸体45cを中空芯材441の下端部441aに連結している。
【0041】
ロック機構46は、スプール44の中空芯材441の上端部441bに一体的に取付けられており、周面に噛合歯47aが形成されたギヤ状の回転板47と、上下摺動自在に配設され、降下位置で前記回転板47の噛合歯47aと噛合するロック歯48aが内周面に形成されたロック筒48と、このロック筒48の外方に設けられ、前記ロック筒48が前記回転板47と連れ回る際に当接してその回転を防止するロック片49,49とを備えている。
【0042】
ロック筒48は、外形的には略四角形に形成され、一側面にロック操作用摘み481が突設されている。ロック筒48は、例えば指によってロック操作用摘み481を介して上下動することができ、降下位置において回転板47の噛合歯47aとロック歯48aが噛合して回転しようとすると、外側面がロック片49,49に当接して回転が規制される。
【0043】
このロック片49,49は、金属製の取付フレーム40に一体成形されている。取付フレーム40は、車両2の内側壁23を構成する中で比較的剛性の高いパネルにボルトなどを介して連結可能としており、図8〜図10に示すように、略コ字状に形成したベースプレート40aに、ロック片49,49を折曲形成し、スプール44を軸周りに回転自在に保持するとともに、後述するベルト挿通用スリット401を形成したスプール抱持部40cが形成された機能フレーム40bをスポット溶接して構成している。そして、取付フレーム40の上下端近傍にベースプレート40a及び機能フレーム40bを貫通してボルト孔402,403を穿設している。符号404はリブ部を示す。
【0044】
上述した金属製の取付フレーム40におけるスプール抱持部40cに形成されたベルト挿通用スリット401は、図10に示すように、ベルト挿通部401aと連通しており、このベルト挿通部401aからベルト41をベルト挿通用スリット401内に通した後、ベルト41の第2のフック42bよりも基部側に嵌装されたベルト保護材42c(図8参照)を嵌合して固定するようにしている(図9参照)。
【0045】
すなわち、ベルト41が直接金属製の取付フレーム40(機能フレーム40b)に摺接することを防止して、ベルト41が劣化することを防止している。
【0046】
また、ベルト巻回装置4におけるスプール44の上部には、ロック筒48及びその外方のロック片49,49を覆い、ロック筒48の上方への抜け止め機能を有するキャップ43が配設されている。キャップ43には、ロック操作用摘み481を臨ませる矩形開口部43aが形成されている。
【0047】
ところで、ベルト41は、図13に示すように、例えば車両用シートベルト(図示せず)と同素材からなるベルト本体41aの先端に第1のフック42aを取付け、前述したように、その後方に第2のフック42bを移動自在に取付け、さらに、その後方にベルト保護材42cを装着している。また、ベルト本体41aの基端には、スプール44の中空芯材441に連結する連結ピン425が取付けられている。
【0048】
フック42a,42bは樹脂成型品であり、略ベルト幅の長さとした取付体422の略中央位置にフック本体421を軸周りに回動自在に取付けるとともに、取付体422の左右端部から突出したピン体423に略コ字状に形成したハンガー体424を連結している。そして、このハンガー体424を、第1のフック42aはベルト本体41aの先端折返部に掛止して連結する一方、第2のフック42bではハンガー体424をベルト本体41aに挿通して移動自在に取付けている。
【0049】
[荷物の固定方法]
上述してきた荷物固定機構1を用いた荷物の固定方法について、簡単に説明する。
【0050】
例えば、前述したように、小さい荷物3bとして例えばペットボトル、あるいは米国などであれば1ガロンボトルを固定する場合、車内後部左側の内側壁23に当接させた状態で荷物3bを置く(図4参照)。
【0051】
そして、ロック操作用摘み481を操作してロック機構46によるロックを解除して、ベルト挿通孔61からベルト41を引き出し、このベルト41で荷物3bの上側部を斜めに横切るように伸延して第1の係合部51に第1のフック42aを係合し、ロック操作用摘み481を降下させる操作を行いロック機構46によりロックする。こうして、ベルト41で荷物3bは内側壁23の方に押さえられ、その起立姿勢が保持されることになる。このとき、ベルト41は荷物3bの上側部を保持するため、荷物3bが転倒することを効果的に防止することができる。また、荷物3bがペットボトルや1ガロンボトルよりも背高であれば、荷物3bをベルト巻回装置4側ではなく第1の係合部51側に位置させれば、荷物3bに対する相対的なベルト41の横断位置を上側にすることができ、ベルト41による荷物3bへの当接位置が低すぎて当該荷物3bが転倒してしまうなどの不都合を回避することができる。
【0052】
次に、スーツケースなどの大きな荷物3aを固定する方法について説明すると、この場合、荷物3aを後部のシート25の背部に当接するよう置く。そして、ロック操作用摘み481を操作してロック機構46によるロックを解除して、ベルト挿通孔61からベルト41を引き出し、先ず、第2のフック42bを第1の係合部51に係合し、さらに、ベルト41を繰出して、荷物3aに当接しながら当該荷物3aを横断させて伸延させ、第1のフック42aを第2の係合部52に係合し、ロック操作用摘み481を降下させる操作を行いロック機構46によりロックする。こうして、荷物3aはベルト41でシート25側に押さえられた状態でその起立姿勢が保持されることになる。
【0053】
ところで、本実施形態では、荷物3a,3bをラゲージルーム20内で保持する場合について説明したが、例えば、車両2が3列シートを備えるものであって、3列目のシートを畳むことなく使用している場合、この3列目のシート座面に荷物3a,3bを載置した状態で保持することもできる。
【0054】
すなわち、3列目の左側のシート座面に荷物3a,3bを載置し、ロック操作用摘み481を操作してロック機構46によるロックを解除して、ベルト挿通孔61からベルト41を引き出し、このベルト41をシート右側から回して荷物3a,3bをシートに押圧した状態で第1のフック42aを第1の係合部51に係合し、ロック操作用摘み481を降下させる操作を行いロック機構46によりロックするのである。
【0055】
以上説明してきたように、本実施形態に係る荷物固定機構1を用いれば、大小様々な形態の荷物3a,3bを安定保持することが可能となり、走行中に荷物3a,3bが転倒したり、移動したりすることを防止することができる。
【0056】
ところで、本実施形態における第1の係合部51は、ベルト巻回装置4のベルト引出位置よりも高い位置に設けたが(図4参照)、必ずしもかかるレイアウトに限定するものではなく、適宜設定することができる。
【0057】
また、本実施形態では、係合部5を第1の係合部51と第2の係合部52とを備えた構成としたが、他の実施形態として、図14に示すように、第3の係合部53をラゲージルーム20の右側後部に設け、荷物3a,3bを、シート25の背面側、左右の内側壁23,24側で保持するように構成することもできる。
【0058】
ここで、図15及び図16を参照しながら、他の実施形態に係る荷物固定機構について説明する。本実施形態が上述してきた実施形態と異なるのは、ベルト巻回装置4の構成と開閉蓋部6の形状と、第1のフック42aに増し締め機構426を設けたことにある。なお、以下に説明する構成において、上述してきた実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付してその説明については省略する。
【0059】
本実施形態に係る荷物固定機構では、ロック操作用摘み481の操作性を向上させるために、図15に示すように、開閉蓋部6に形成したロック操作孔63aの向きが上述してきた実施形態に対して90度異ならせている。
【0060】
上述してきた先の実施形態では、図7に示すように、前面部の正面視右下側に略矩形形状のフック収納ピース取付孔63bが形成され、同じく前面であって、フック収納ピース取付孔63bの左上にロック操作孔63aが形成されていた。かかる構成に対し、本実施形態では、図15に示すように、フック収納ピース取付孔63bが形成されている前面部に連続する起立面部600にロック操作孔63aを形成している。
【0061】
そして、かかるロック操作孔63aにロック操作用摘み481を臨ませるために、ベルト巻回装置4を図16に示すような構成としている。
【0062】
すなわち、図16に示すように、本実施形態におけるベルト巻回装置4についても、ベルト41を巻回するスプール44と、このスプール44をベルト巻き取り方向に付勢する付勢部45と、スプール44の回転を規制するロック機構46と、これらを一体的に組み付けた状態で保持する取付フレーム40とを備えている。そして、本実施形態に係るベルト巻回装置4では、スプール44の上部に配設されるロック筒48と、このロック筒48が上方へ抜けることを防止するキャップ43の構成を先の実施形態に対して異ならせている。
【0063】
すなわち、図示するように、ロック筒48は、先の実施形態同様に外形的には略四角形に形成されているが、取付フレーム40に形成された一対のロック片49,49のうちの一方のロック片49側に面した外側面にロック操作用摘み481を突設している。そして、このロック操作用摘み481に対応するように、キャップ43の所定位置に矩形開口部43aを形成している。
【0064】
このように、本実施形態では、ラゲージルーム20を開放したときに(図1及び図2を参照)、開放した側、すなわち開放面側にロック操作用摘み481が臨むことになる。したがって、自然な姿勢で指をロック操作用摘み481に掛けることができるため、操作性が著しく向上する。
【0065】
また、図15に示すように、ベルト41の長さを調整する増し締め機構426を設けている。この増し締め機構426は、先の実施形態における第1のフック42aの取付体422(図8参照)を変形し、2つのベルト挿通スリットを設け、先ずフック側の一方のスリットにベルト41を通し、折り返して他方のスリットに挿通してスリット間の摩擦によりベルト41を固定する構成である。かかる増し締め機構426の基本構成は、例えば、一般的なバッグなどのベルト長さ調整具と同じ構造もので構わない。
【0066】
かかる増し締め具426を設けたことで、例えば、ベルト巻回装置4がベルト41をきつく巻き取ることができず、ロックした後にベルト41が緩み出てしまい、荷物3の固定が弱くなることを未然に防止することが可能となる。また、荷物3を固定しても、かかる荷物3が自由な位置にずれてしまうと固定が緩んでしまう。そこで、荷物3を固定してロックした後、増し締め具426を介して増し締めすることにより、荷物3をきつく固定することができる。なお、ベルト41を緩める場合は、増し締め機構426の先端部を引き起こせばよく、摩擦力が軽減されてベルト41を緩めることができる。
【0067】
上述してきた実施形態から、以下のような効果を奏する荷物固定機構1及びこれに用いられるベルト巻回装置4が実現できる。
【0068】
車両2のラゲージルーム20に設けられ、当該ラゲージルーム20に収容した荷物3a(3b)を固定するための荷物固定機構1であって、荷物3a(3b)に掛け渡すベルト41を、巻取り方向へ付勢しながら引出自在としたベルト巻回装置4と、ベルト41に取付けたフック42を係合する複数の係合部5とを備え、ベルト巻回装置4を、車両後面に設けたリアコンビネーションランプ21のメンテナンス用開口部22内に配設する一方、係合部5は、メンテナンス用開口部22の配設位置と同じ側の内側壁23に設けられた第1の係合部51と、メンテナンス用開口部22の配設位置とは反対側の内側壁24に、当該第1の係合部51と対向するように設けられた第2の係合部52とを備えることとした。
【0069】
したがって、車体内壁を構成するボディパネルに、荷物固定機構を設置するための孔などを設けることなく、ベルト巻回装置4をローコストで簡単に車両2内に組み込むことが可能となり、また、使用者にとっても極めて使い勝手が良好となる。また、ベルト巻回装置4はラゲージルーム20内に突出状態に露出することがないので荷物3a,3bなどがぶつかって破損するおそれもない。
【0070】
また、前記フック42は、ベルト41の先端に固着した第1のフック42aと、ベルト41の中途位置に移動自在に取付けた第2のフック42bとからなる荷物固定機構1とした。
【0071】
したがって、一方の荷物3aはシート25の背面側にて、もう一方の荷物3bは左側の内側壁23側にて保持するというように、ラゲージルーム20内の複数個所で保持することができる。
【0072】
また、前記開閉蓋部6のベルト挿通孔61の近傍位置に、第2のフック42bを収納するフック収納部62を形成した荷物固定機構1とした。
【0073】
したがって、不使用時に第2のフック42bがラゲージルーム20内にだらしなく垂れ下がるようなことがなく、それによりこれが邪魔になることもない。
【0074】
また、前記第1の係合部51は、ベルト巻回装置4のベルト引出位置よりも高い位置に設けられている荷物固定機構1とした。すなわち、前記リアコンビネーションランプ21の前記メンテナンス用開口部22に開閉蓋部6を設け、この開閉蓋部6にベルト41を引き出すベルト挿通孔61を形成したとき、このベルト挿通孔61よりも高い位置に第1の係合部51を設けている。
【0075】
したがって、荷物3a,3bを置く位置により、荷物3a,3bへのベルト41の当接位置が下側になり過ぎないように調整することができるため、荷物3a,3bの背の高さによってベルト41の当接位置が低すぎて荷物3a,3bが転倒してしまうなどの不都合を防止することができる。また、開閉蓋部6により、ベルト巻回装置4はラゲージルーム20から直接見えることがなく、ラゲージルーム20内をすっきりとした外観にすることができる。
【0076】
また、前記ベルト巻回装置4を、運転席と対角をなす位置のメンテナンス用開口部22内に配設した荷物固定機構1とした。
【0077】
したがって、特に乗員が運転者のみの場合、運転者と荷物3bとによって車両2の重量バランスが取れる。また、右側ハンドルの場合であれば、ベルト巻回装置4のベルト41などを操作を右手で行い易く、利き手が右手の者が多い国内では操作性が極めて良好となる。
【0078】
また、ベルト巻回装置4は、ベルト41を巻回可能なスプール44と、スプール44をベルト巻き取り方向に付勢する付勢部45と、スプール44の回転を規制するロック機構46とを備え、ロック機構46は、スプール44の中空芯材441(回転軸)の端部に一体的に取付けられ、周面に噛合歯47aが形成された回転板47と、上下摺動自在に配設され、降下位置で回転板47の噛合歯47aと噛合するロック歯48aが内周面に形成されたロック筒48と、このロック筒48の外方に設けられ、ロック筒48が回転板47と連れ回る際に当接してその回転を防止するロック片49,49とを備える荷物固定機構1とした。
【0079】
したがって、ベルト41の引き出し、巻取りが容易となり、しかも、ベルト巻回装置4の構成を簡単な構成としつつ小型軽量化を図ることができる。
【0080】
前記ベルト巻回装置4は、前記ロック筒48にロック操作用摘み481が突設されており、このロック操作用摘み481は、前記ラゲージルーム20の開放面側に臨むように設けられている荷物固定機構1とした。
【0081】
したがって、荷物を固定する際に、作業者は自然な姿勢で指をロック操作用摘み481に掛けることができるため、操作性が著しく向上する。
【0082】
前記ベルト巻回装置4は、スプール44を軸周りに回転自在に保持する金属製の取付フレーム40にベルト挿通用スリット401を形成し、このスリット401に樹脂製のベルト保護材42cを嵌着し、ベルト41が直接前記フレーム40に摺接することを防止した荷物固定機構1とした。
【0083】
したがって、ベルト41が金属製の取付フレーム40に直接摺接することがなく、ベルト41が劣化することを防止することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 荷物固定機構
2 車両
3a,3b 荷物
4 ベルト巻回装置
5 係合部
6 開閉蓋部
20 ラゲージルーム
21 リアコンビネーションランプ
22 メンテナンス用開口部
23,24 内側壁
41 ベルト
42 フック
42a 第1のフック
42b 第2のフック
42c ベルト保護材
44 スプール
45 付勢部
46 ロック機構
47 回転板
47a 噛合歯
48 ロック筒
48a ロック歯
49 ロック片
51 第1の係合部
52 第2の係合部
61 ベルト挿通孔
62 フック収納部
401 ベルト挿通用スリット
441 中空芯材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のラゲージルームに設けられ、当該ラゲージルームに収容した荷物を固定するための荷物固定機構であって、
前記荷物に掛け渡すベルトを、巻取り方向へ付勢しながら引出自在としたベルト巻回装置と、
前記ベルトに取付けたフックを係合する複数の係合部と、
を備え、
前記ベルト巻回装置を、車両後面に設けたリアコンビネーションランプのメンテナンス用開口部内に配設する一方、
前記係合部は、前記メンテナンス用開口部の配設位置と同じ側の内側壁に設けられた第1の係合部と、前記メンテナンス用開口部の配設位置とは反対側の内側壁に、当該第1の係合部と対向するように設けられた第2の係合部とを備えることを特徴とする荷物固定機構。
【請求項2】
前記フックは、ベルト先端に固着した第1のフックと、前記ベルトの中途位置に移動自在に取付けた第2のフックとからなることを特徴とする請求項1に記載の荷物固定機構。
【請求項3】
前記メンテナンス用開口部に開閉蓋部を設け、この開閉蓋部に前記ベルトを引き出すベルト挿通孔を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の荷物固定機構。
【請求項4】
前記開閉蓋部の前記ベルト挿通孔の近傍位置に、前記第2のフックを収納するフック収納部を形成したことを特徴とする請求項3に記載の荷物固定機構。
【請求項5】
前記第1の係合部は、前記ベルト巻回装置のベルト引出位置よりも高い位置に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の荷物固定機構。
【請求項6】
前記ベルト巻回装置を、運転席と対角をなす位置のメンテナンス用開口部内に配設したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の荷物固定機構。
【請求項7】
前記ベルト巻回装置は、
前記ベルトを巻回可能なスプールと、
前記スプールをベルト巻き取り方向に付勢する付勢部と、
前記スプールの回転を規制するロック機構と、
を備え、
前記ロック機構は、
前記スプールの回転軸の端部に一体的に取付けられ、周面に噛合歯が形成された回転板と、上下摺動自在に配設され、降下位置で前記回転板の噛合歯と噛合するロック歯が内周面に形成されたロック筒と、このロック筒の外方に設けられ、前記ロック筒が前記回転板と連れ回る際に当接してその回転を防止するロック片と、
を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の荷物固定機構。
【請求項8】
前記ベルト巻回装置は、前記スプールを軸周りに回転自在に保持する金属製のフレームにベルト挿通用のスリットを形成し、このスリットに樹脂製のベルト保護材を嵌着し、前記ベルトが前記フレームに直接摺接することを防止したことを特徴とする請求項7に記載の荷物固定機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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