説明

車両用の電源装置

【課題】各々の電池を効率よく均一な温度に冷却する。電池の熱暴走を有効に防止し、仮に熱暴走しても、その誘発を確実に阻止する。
【解決手段】車両用の電源装置は、絶縁オイル9を充填している冷却ケース2と、冷却ケース2の絶縁オイル9中に配置している複数の電池12からなるバッテリ1と、冷却ケース2に設けられて絶縁オイル9を冷却するエバポレータ3と、エバポレータ3から排出される気化された冷媒を加圧するコンプレッサ4と、コンプレッサ4から排出される冷媒を冷却して液化させるコンデンサー5と、コンデンサー5で液化された冷媒をエバポレータ3に供給する膨張装置6とを備える。電源装置は、コンプレッサ4で加圧された冷媒を、コンデンサー5と膨張装置6を介してエバポレータ3に供給し、エバポレータ3に供給された冷媒の気化熱でエバポレータ3を冷却し、冷却されたエバポレータ3が絶縁オイル9を介してバッテリ1を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて車両を走行させるモータに電力をする車両用の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の電源装置は、車両を走行させるためにモータに大電力を供給する。たとえば、ハイブリッドカー等では、スタートするときや加速するときに、電池の出力で自動車を加速するので、100A以上と極めて大きな電流が流れる。さらに、急制動するときにも大きな充電電流が流れる。
【0003】
大電流を流して使用される電源装置は、電池の温度が上昇するので強制的に冷却する必要がある。とくに、多数の電池を直列に接続しているバッテリを備える車両用の電源装置は、各々の電池をできるかぎり速やかに冷却することが大切である。電池の温度が高くなると、電池の性能が低下するからである。電池の温度が高くなると、空気を強制送風して冷却できる。しかしながら、この構造は、空気の温度が高くなると、電池を速やかに冷却できない。
【0004】
この弊害を防止する冷却機構を備える車両用の電源装置は開発されている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2002−313441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この公報に記載される電源装置は、車両の空調用の冷凍サイクルから供給される冷媒を気化させて強制冷却される熱交換器である空気冷却用のエバポレータを備える。空気冷却用のエバポレータは空気を強制冷却し、冷却された空気で電池を冷却する。この冷却機構は、低温に強制冷却された空気を電池に送風して、電池を速やかに冷却できる。しかしながら、この構造の冷却機構は、エバポレータで冷却された空気を介して電池を冷却するので、冷却される電池に温度差ができる。多数の電池を備える電源装置は、各々の電池を均一な温度に冷却することが大切である。温度差が電源モジュールを劣化させる原因となって、特定の電源モジュールの寿命を著しく短くするからである。出力を大きくするために、多数の電池を直列に接続している電源装置は、直列に接続している電池を同じ電流で充放電するが、残容量は等しくならない。電池温度が充電効率と放電効率を変化させるからである。電池の温度が異常に高くなった電池は、充電効率が低くなって残容量が小さくなる。残容量の小さくなった電池は、過放電される傾向が強くなる。電池の過放電は、電池性能を相当に低下させて寿命を短くする。また、電池が劣化すると最大充電容量も小さくなる。最大充電容量が小さくなると、過充電される傾向も強くなる。このため、同じ電流で充電しても、残容量が大きくなって過充電される傾向も強くなる。この状態になると、ますます過充電や過放電を起こす確率が高くなるので、劣化した電池は加速度的に性能が低下して寿命が短くなってしまう。このため、多数の電池を直列に接続している電源装置は、全ての電池をできるかぎり均一な温度として、アンバランスな劣化を極力少なくすることが大切である。さらに、多数の電池を直列に接続している電源装置は、全体のコストも極めて高価になるので、極めて長い寿命が要求される。
【0006】
さらにまた、多数の電池を直列に接続しているバッテリは、特定の電池が異常に高温になって熱暴走することがある。とくに、電池をリチウムイオン二次電池とする電源装置は、電池が異常な高温になることがある。このため、熱暴走して高温になった電池が隣の電池の熱暴走を誘発するのを阻止することも大切である。空気を介して冷却する構造は、熱暴走して異常に高温になった電池を速やかに冷却するのが難しい。また、熱暴走の誘発を阻止するために、電池の間に隔壁を設けると、これが電池の冷却を難しくし、あるいは隔壁によって電源装置が大きくなる欠点がある。
【0007】
さらに、従来の車両用の電源装置は、表面に付着するゴミが堆積し、これが吸湿して漏れ電流が大きくなる欠点があった。とくに、電池を冷却する空気の湿度が高く、またゴミが多くなるとこの弊害が大きくなる。それは、冷却用の空気に含まれるゴミが電池やバスバーの表面に付着し、このゴミが吸湿して電気抵抗が小さくなることで発生する。とくに、車両用の電源装置は、多数の電池を閉鎖されたケースに収納しているので、電池の表面に付着するゴミを除去することが現実には極めて難しく、空気中の湿度が高くなると漏れ電流が大きくなる。冷却用の空気は、これを清澄にろ過するフィルターの網目を小さくして少なくできる。ただ、網目の小さいフィルターは、空気の通過抵抗が大きく、電池に送風する空気量が減少して効果的に冷却できなくなる。また、微細なフィルターも空気中の全てのゴミを除去できない。このため、経時的に電池やバスバーの表面にゴミが付着して漏電の原因となる。ゴミによる漏電は、電池を無駄に放電することに加えて、安全性も低下させる。
【0008】
本発明は、従来の車両用の電源装置が有するこれ等の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、各々の電池を効率よく均一な温度に冷却できる車両用の電源装置を提供することにある。
また、本発明の他の大切な目的は、熱暴走する電池においては、電池の熱暴走を有効に防止できると共に、仮に熱暴走しても、その誘発を確実に阻止して安全性を向上できる車両用の電源装置を提供することにある。
さらにまた、本発明の他の大切な目的は、電池の漏電を防止して、漏電による電池の無駄な放電を防止しながら安全性を向上できる車両用の電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両用の電源装置は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
車両用の電源装置は、絶縁オイル9を充填している冷却ケース2、22と、この冷却ケース2、22の絶縁オイル9中に配置している複数の電池12、32からなるバッテリ1、31と、冷却ケース2、22に設けられて絶縁オイル9を冷却するエバポレータ3、23と、このエバポレータ3、23から排出される気化された冷媒を加圧するコンプレッサ4と、このコンプレッサ4から排出される冷媒を冷却して液化させるコンデンサー5と、このコンデンサー5で液化された冷媒をエバポレータ3、23に供給する膨張装置6とを備える。さらに、電源装置は、コンプレッサ4で加圧された冷媒を、コンデンサー5と膨張装置6を介してエバポレータ3、23に供給し、エバポレータ3、23に供給された冷媒の気化熱でエバポレータ3、23を冷却し、冷却されたエバポレータ3、23が絶縁オイル9を介してバッテリ1、31を冷却する。
【0010】
本発明の請求項2の車両用の電源装置は、コンプレッサ4が、流入側と排出側を、切換弁7を介してコンデンサー5とエバポレータ3、23に連結しており、この切換弁7が切り換えられて、コンプレッサ4がコンデンサー5から冷媒を吸入してエバポレータ3、23に供給し、エバポレータ3、23がコンプレッサ4から供給される冷媒の凝縮熱で発熱して絶縁オイル9を加温し、加温された絶縁オイル9がバッテリ1、31を加温する。
【0011】
本発明の請求項3の車両用の電源装置は、エバポレータ3が絶縁オイル9中にあって、エバポレータ3が直接に絶縁オイル9を冷却又は加温する。
【0012】
本発明の請求項4の車両用の電源装置は、エバポレータ23が冷却ケース22に固定され、エバポレータ23が冷却ケース22を介して絶縁オイル9を冷却又は加温する。
【0013】
本発明の請求項5の車両用の電源装置は、絶縁オイル9を植物油としている。
【0014】
本発明の請求項6の車両用の電源装置は、バッテリ1、31が複数の電池12、32を、電極端子14またはバスバー35で連結しており、この電池12、32の上方に位置して絶縁オイル9中にエバポレータ3を配置している。
【0015】
本発明の請求項7の車両用の電源装置は、電池12、32をリチウムイオン二次電池としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、各々の電池を効率よく均一な温度に冷却できる特徴がある。それは、本発明の電源装置が、冷却ケースに入れた絶縁オイル中に電池を配置して、絶縁オイルを冷媒の気化熱で冷却されるエバポレータで冷却するからである。絶縁オイルは、空気に比較して熱容量が極めて大きく、電池の表面に直接に接触して各々の電池を効率よく均一な温度に冷却する。このため、大電流で充放電されて電池の発熱量が大きくなっても、表面から効率よく冷却して温度上昇を少なくできる。また、各々の電池の温度差を少なくして、均一な温度にできることから、温度差に起因する電気特性のアンバランスを解消して電池の寿命を長くできる。また、絶縁オイルが冷媒の気化熱で冷却されることから、絶縁オイルが外気温度に左右されることなく低温に冷却される。このため、外気温度が高温になる夏季においても、絶縁オイルの温度を低くして、各々の電池を効率よく最適な温度に冷却できる特徴もある。
【0017】
また、本発明は、熱暴走する電池においは、電池の熱暴走を有効に防止できると共に、仮に熱暴走してもその誘発を確実に阻止して安全性を向上できる特徴がある。それは、電池を絶縁オイル中に配設して冷却するからである。絶縁オイル中にある電池は、表面からの放熱量を空気に比較して極めて大きくできる。それは、電池の表面を熱容量の大きい絶縁オイルに直接に接触しているからである。また、絶縁オイルの温度を低くできることも、電池の熱暴走を防止することに効果がある。電池の表面が、熱容量が大きくて低温の絶縁オイルに接触して、放熱量を大きくできるからである。さらに、電池を絶縁オイル中に配設することから、電池の間の絶縁オイルは熱暴走の誘発を効果的に阻止する。
【0018】
さらに、本発明は、長期間にわたって電池の漏電を極めて少なくできる特徴がある。それは、電池を絶縁オイル中に配設して、絶縁オイルで冷却するからである。この構造は、空気で冷却するように外気を吸入する必要がない。冷却ケースは、外気から遮断して絶縁オイルを充填し、この絶縁オイルで電池を冷却する。絶縁オイルは絶縁抵抗が大きく、しかも閉鎖された冷却ケースに充填されることから、長期間にわたって絶縁抵抗が低下しない。
【0019】
本発明の請求項2の電源装置は、コンプレッサの流入側と排出側を、切換弁を介してコンデンサーとエバポレータに連結している。この電源装置は、切換弁が切り換えられて、コンプレッサがコンデンサーから冷媒を吸入してエバポレータに供給し、エバポレータがコンプレッサから供給される冷媒の凝縮熱で発熱して絶縁オイルを加温し、加温された絶縁オイルがバッテリを加温する。この電源装置は、切換弁を切り換えて、電池の加温と冷却の両方に利用できる。このため、電池の温度が低いときに加温し、温度が高いときに冷却できる。
【0020】
また、本発明の請求項3の電源装置は、エバポレータを絶縁オイル中に配置して、エバポレータで直接に絶縁オイルを冷却又は加温する。この構造は、エバポレータで効率よく絶縁オイルを冷却又は加温できる。
【0021】
さらに、本発明の請求項4の電源装置は、エバポレータを冷却ケースに固定している。このエバポレータは、冷却ケースを介して絶縁オイルを冷却又は加温する。この構造は、冷却ケースとエバポレータを一体構造として全体をコンパクトにできる。
【0022】
さらにまた、本発明の請求項5の電源装置は、絶縁オイルを植物油とするので、長期間にわたって絶縁オイルの酸化を防止できる。
【0023】
また、本発明の請求項6の電源装置は、複数の電池を電極端子またはバスバーで連結してバッテリとして、電池の上方であって絶縁オイル中にエバポレータを配置している。この構造は、エバポレータが電池の発熱部を効率よく冷却できる。
【0024】
さらに、本発明の請求項7の電源装置は、電池をリチウムイオン二次電池とするので、バッテリの容量を大きくしながら、電池の熱暴走とその誘発を確実に阻止して安全性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための車両用の電源装置を例示するものであって、本発明は電源装置を以下のものに特定しない。
【0026】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0027】
図1と図2に示す車両用の電源装置は、絶縁オイル9を充填している冷却ケース2、22と、この冷却ケース2、22の絶縁オイル9中に配置されて、車両の走行用モータに電力を供給する複数の電池12からなるバッテリ1と、冷却ケース2、22に設けられて絶縁オイル9を冷却するエバポレータ3、23と、このエバポレータ3、23から排出される気化された冷媒を加圧するコンプレッサ4と、このコンプレッサ4から排出される冷媒を冷却して液化させるコンデンサー5と、このコンデンサー5で液化された冷媒をエバポレータ3、23に供給する膨張装置6とを備える。
【0028】
冷却ケース2、22は、絶縁オイル9を漏れないように充填している密閉されたケース10、20で、外側の表面を断熱材11、21で被覆している。図1の冷却ケース2は、内部に複数の電池12を収納して、電池12の上方にエバポレータ3を配置している。この冷却ケース2は、エバポレータ3と電池12の両方を絶縁オイル9中に浸漬している。このケース10は、金属製又はプラスチック製で密閉構造としている。図2の冷却ケース22は、ケース20を構成する金属板の外側にエバポレータ23の配管を固定している。この冷却ケース22は、エバポレータ23の配管内で気化する冷媒の気化熱でケース20の金属板を冷却又は加温する。エバポレータ23で冷却又は加温されるケース20の金属板は絶縁オイル9を冷却又は加温して、電池12を冷却又は加温する。図1と図2の冷却ケース2、22は、内部で対流する絶縁オイル9で電池12を冷却又は加温する。冷却ケースは、図示しないが、内部に絶縁オイルを強制的に循環させる循環モータを設けることができる。
【0029】
図3と図4は、冷却ケース2の内部にエバポレータ3を配置する冷却ケース2を示している。図3の冷却ケースは、複数の角型電池12からなるバッテリ1を収納し、図4の冷却ケース2は、複数の円筒型電池32を直線状に連結した複数の電池モジュール33からなるバッテリ31を冷却ケース2に収納している。これ等の図に示す冷却ケース2は、各々の電池12、32の間に隙間を設けて、多数の電池12、32を互いに分離して収納している。バッテリ1、31は絶縁オイル9中に浸漬して配置されるので、電池12、32の間の隙間には絶縁オイル9が侵入される。電池12、32の間に侵入する絶縁オイル9は、電池21、32の表面に接触して冷却又は加温する。全ての電池12、32を分離して配置する構造は、全ての電池12、32を効率よく冷却できる。図3の角型電池12を収納する冷却ケース2は、角型電池12の間に隙間を設けて各々の角型電池12を絶縁オイル9で冷却する。図4に示す冷却ケース2は、電池モジュール33の間に広い隙間を設けて電池32を効果的に冷却できる。
【0030】
本発明の電源装置は、必ずしも全ての電池を分離して配置する必要はなく、たとえば複数の電池を連結して電池ブロックとし、各々の電池ブロックの間に隙間を設ける構造とすることもできる。
【0031】
互いに分離して配設される電池12、32は、電極端子14を直接に連結して、あるいはバスバー35を介して、互いに直列に接続される。各々の電池12、32は、直列に接続されると共に、互いに分離して配置される。図3のバッテリ1は、互いに隣接する角型電池12の電極端子14を直接にボルト15で連結して、各々の角型電池12を直列に接続している。このバッテリ1は、複数の角型電池12を隙間ができるように積層して固定している。角型電池12の間には隙間を設けるためのスペーサ16を挟着している。積層された角型電池12の両端に連結プレート17を配設し、一対の連結プレート17を連結ボルト18で連結して、角型電池12を固定している。角型電池12は、リチウムイオン二次電池である。ただ、角型電池は、ニッケル水素電池等の充電できる全ての電池とすることができる。
【0032】
図4のバッテリ31は、円筒形の電池モジュール33をバスバー35で連結している。円筒形の電池32は、リチウムイオン二次電池である。ただし、円筒形の電池は、リチウムイオン二次電池等の充電できる全ての電池とすることができる。この図の冷却ケース2は、電池モジュール33を多段多列に並べて収納している。電池モジュール33は、所定の間隔で複数の絶縁リング36を設けている。絶縁リング36は、円筒型電池32の外径よりも大きく、電池モジュール33の表面から突出している。この電池モジュール33は、絶縁リング36を互いに接触させて、多段多列に配列して、互いに隣接する電池モジュール33を絶縁できる。多段多列に配列される電池モジュール33は、連結具(図示せず)を介して互いに連結されて冷却ケース2に収納される。
【0033】
図1の冷却ケース2は、ケース10に絶縁オイル9を満たして、絶縁オイル9中にエバポレータ3とバッテリ1を浸漬している。図2の冷却ケース22は、絶縁オイル9中にバッテリ1を浸漬して、エバポレータ23をケース20に固定している。この冷却ケース22は、絶縁オイル9中にバッテリ1のみを浸漬するので、ケース20内に絶縁オイル9を充満する必要はなく、たとえば、電池の一部、具体的には、安全弁を設けている部分を絶縁オイルの上に配置することもできる。
【0034】
絶縁オイル9は、粘度が低く、使用環境における温度帯で流動性のある絶縁性のオイル、好ましくは植物油を使用する。植物油は耐酸化特性に優れることから、優れた耐久性がある。ただし、絶縁オイルには、粘度が低く、引火点が高く、凝固点が低く、絶縁耐力に優れ、機器を腐食させず、電気・化学的に安定しているものが使用される。たとえば、絶縁オイル9には、植物油のみでなく、鉱物油、アルキルベンゼン、ポリブテン、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルアルカン、シリコーン油などを主成分とする絶縁油が使用できる。
【0035】
絶縁オイル9は、エバポレータ3、23で冷却される。エバポレータ3、23は、冷媒の気化熱で冷却される。図1と図2の電源装置は、以下の構造でエバポレータ3、23を冷却する。冷却された冷媒がコンプレッサ4に加圧されてコンデンサー5に供給される。コンプレッサ4は、エバポレータ3、23で気化された冷媒を加圧してコンデンサー5に供給する。コンデンサー5は、供給される加圧気体の冷媒を冷却して液化させる。冷媒が液化すると凝縮熱が発生する。凝縮熱を放熱するために、コンデンサー5は強制送風されて冷却される。コンデンサー5は、加圧された冷媒を液化できる温度以下に冷却される。このコンデンサー5は、金属管5Aの表面に金属板からなる多数の冷却フィン5Bを固定して、この冷却フィン5Bに強制送風して冷却される。コンデンサー5で冷却して液化された冷媒は、膨張装置6を介してエバポレータ3、23に供給される。膨張装置6は、例えば、膨張弁もしくはキャピラリーチューブ等である。膨張装置6は、液化された冷媒を断熱膨張させて、エバポレータ3、23で気化させる。エバポレータ3、23で気化する冷媒は、大きな気化熱でエバポレータ3、23を冷媒し、エバポレータ3、23が絶縁オイル9を冷却して電池12を冷却する。
【0036】
エバポレータ3、23は、銅などの金属管3A、23Aを連結したもので、内部で冷媒を気化させて、冷媒の気化熱で冷却される。図3と図4のエバポレータ3は、複数の金属管3Aを並列に連結している。エバポレータ3、23は、液化された冷媒を内部で気化させて排出する。エバポレータ3、23は、供給される冷媒量が膨張装置6でコントロールされる。膨張装置6は、エバポレータ3、23に供給する冷媒量をコントロールする。すなわち、エバポレータ3、23に供給される冷媒が内部で全て気化されて排出されるように、供給する冷媒量を膨張装置6でコントロールする。図2の冷却ケース22は、金属管23Aからなるエバポレータ23をケース20の外側に固定している。このエバポレータ23も供給される冷媒を気化させてケース20を冷却し、冷却されるケース20を介して、ケース20内の絶縁オイル9を冷却する。
【0037】
さらに、図1と図2の電源装置は、冷却ケース2、22に設けているエバポレータ3、23をコンデンサー5に使用して、電池12を加温する。このことを実現するために、コンプレッサ4は、流入側と排出側を、切換弁7を介してコンデンサー5とエバポレータ3、23に連結している。この切換弁7が切り換えられると、コンプレッサ4はコンデンサー5から冷媒を吸入してエバポレータ3、23に供給する。この状態に冷媒が循環されると、コンプレッサ4は、加圧した気体状の冷媒をエバポレータ3、23に供給する。エバポレータ3、23は、供給される冷媒を液化させる。このため、エバポレータ3、23は、冷媒の凝縮熱で発熱する。発熱するエバポレータ3、23は、絶縁オイル9を加温し、加温された絶縁オイル9がバッテリ1を加温する。エバポレータ3、23で液化された冷媒は、コンデンサー5に供給される。コンデンサー5は、液化された冷媒を気化させて気化熱で冷却される。したがって、電池12を加温する状態において、コンデンサー5は強制送風して冷媒を気化できる温度まで熱エネルギーを供給する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例にかかる車両用の電源装置の概略構成図である。
【図2】本発明の他の実施例にかかる車両用の電源装置の概略構成図である。
【図3】図1に示す車両用の電源装置の斜視図である。
【図4】他の構造のバッテリを内蔵する車両用の電源装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1…バッテリ
2…冷却ケース
3…エバポレータ 3A…金属管
4…コンプレッサ
5…コンデンサー 5A…金属管
5B…冷却フィン
6…膨張装置
7…切換弁
9…絶縁オイル
10…ケース
11…断熱材
12…電池
14…電極端子
15…ボルト
16…スペーサ
17…連結プレート
18…連結ボルト
20…ケース
21…断熱材
22…冷却ケース
23…エバポレータ 23A…金属管
31…バッテリ
32…電池
33…電池モジュール
35…バスバー
36…絶縁リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁オイル(9)を充填している冷却ケース(2)、(22)と、この冷却ケース(2)、(22)の絶縁オイル(9)中に配置している複数の電池(12)、(32)からなるバッテリ(1)、(31)と、前記冷却ケース(2)、(22)に設けられて絶縁オイル(9)を冷却するエバポレータ(3)、(23)と、このエバポレータ(3)、(23)から排出される気化された冷媒を加圧するコンプレッサ(4)と、このコンプレッサ(4)から排出される冷媒を冷却して液化させるコンデンサー(5)と、このコンデンサー(5)で液化された冷媒をエバポレータ(3)、(23)に供給する膨張装置(6)とを備え、
前記コンプレッサ(4)で加圧された冷媒がコンデンサー(5)と膨張装置(6)を介してエバポレータ(3)、(23)に供給され、エバポレータ(3)、(23)に供給された冷媒の気化熱でエバポレータ(3)、(23)が冷却され、冷却されたエバポレータ(3)、(23)が絶縁オイル(9)を介してバッテリ(1)、(31)を冷却するようにしてなる車両用の電源装置。
【請求項2】
前記コンプレッサ(4)が、流入側と排出側を、切換弁(7)を介してコンデンサー(5)とエバポレータ(3)、(23)に連結しており、この切換弁(7)が切り換えられて、コンプレッサ(4)がコンデンサー(5)から冷媒を吸入してエバポレータ(3)、(23)に供給し、エバポレータ(3)、(23)がコンプレッサ(4)から供給される冷媒の凝縮熱で発熱して絶縁オイル(9)を加温し、加温された絶縁オイル(9)がバッテリ(1)、(31)を加温するようにしてなる請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項3】
前記エバポレータ(3)が絶縁オイル(9)中にあって、エバポレータ(3)が直接に絶縁オイル(9)を冷却又は加温する請求項1又は2に記載される車両用の電源装置。
【請求項4】
前記エバポレータ(23)が冷却ケース(22)に固定され、エバポレータ(23)が冷却ケース(22)を介して絶縁オイル(9)を冷却又は加温する請求項1又は2に記載される車両用の電源装置。
【請求項5】
前記絶縁オイル(9)が植物油である請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項6】
バッテリ(1)、(31)が複数の電池(12)、(32)を電極端子(14)またはバスバー(35)で連結しており、この電池(12)、(32)の上方に位置して絶縁オイル(9)中にエバポレータ(3)を配置している請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項7】
前記電池(12)、(32)がリチウムイオン二次電池である請求項1に記載される車両用の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−37934(P2009−37934A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202389(P2007−202389)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】