説明

車両用アシストグリップ照明装置

【課題】構造を複雑化したり見栄えを低下させることなく、アシストグリップを照明してその位置を乗員に示すことができる車両用アシストグリップ照明装置を提供する。
【解決手段】本車両用アシストグリップ照明装置1は、車両のアシストグリップ2の周辺に位置するルーフライナ4に形成された薄肉部6と、該薄肉部の裏側に設置された光源7(導光管及びその端部に配置されたLED)と、を備え、上記光源からの光線が上記薄肉部を透過して上記アシストグリップを照明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車等の車両の天井に設けられたアシストグリップを照明する車両用アシストグリップ照明装置に関し、さらに詳しくは、ルーフライナの内部に設けられた光源からの光線が該ルーフライナを透過してアシストグリップを照明する車両用アシストグリップ照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車室内において、窓の上側に位置するルーフライナにアシストグリップが設けられている。夜間の走行時には、乗員がアシストグリップを把時しようとしても車室内が暗いためすぐには見つからず、目を凝らしたり、場合によっては手探りで探さなければならず使用性がよくない。このため、アシストグリップの位置が分かるような照明装置を設置することが望まれていた。
車室内の各種装置を照明する装置100としては、例えば、図6に示すように、インサイドドアハンドルベゼル101に薄肉部102を形成し、その内部にLEDを設置したものが知られている(特許文献1参照)。この照明装置100では、LEDからの光線が薄肉部102を透過することにより、乗員はインサイドドアハンドルベゼル101の位置を知ることができる。
また、車室内をぼんやりと照明する装置103としては、例えば、図7に示すように、ルーフライナ104の一部に板状の光ガイド105を設け、その端面に導光管106を設置したものが知られている(特許文献2参照)。この照明装置103では、導光管106からの光線が光ガイド105の全体から車室内に拡散され、車室内はぼんやりと明るくなる。
【0003】
しかし、上述した薄肉部102を備えた照明装置100をアシストグリップに適用した場合、アシストグリップにLEDを内蔵することになり内部構造が複雑化してしまい、また強度等の観点からアシストグリップ自体が大型化してしまう。
また、上述した板状の光ガイド105を備えた照明装置103によりアシストグリップを照明するようにした場合、ルーフライナの一部にルーフライナとは異なる材質の光ガイドが露出することになるので別体感が強く感じられ見栄えが悪い。しかもルーフライナに光ガイドをはめ込んでいるので構造が複雑化してしまう。
【0004】
【特許文献1】特開2001−191845号公報
【特許文献2】特表2007−504039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、構造を複雑化したり見栄えを低下させることなく、アシストグリップを照明してその位置を乗員に示すことができる車両用アシストグリップ照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.車両のアシストグリップの周辺に位置するルーフライナに形成された薄肉部と、該薄肉部の裏側に設置された光源と、を備え、
上記光源からの光線が上記薄肉部を透過して上記アシストグリップを照明することを特徴とする車両用アシストグリップ照明装置。
2.上記ルーフライナは上記アシストグリップを収容する収容部を備えると共に、上記薄肉部は上記収容部の車室内側に突出している部位に形成されている上記1.記載の車両用アシストグリップ照明装置。
3.上記薄肉部を形成する上記突出している部位は上記アシストグリップの上側に位置する部位である上記2.記載の車両用アシストグリップ照明装置。
4.上記アシストグリップは、ルーフライナ側と車室内側とに回転可能に支持する支持軸と、上記ルーフライナ側に付勢する付勢手段と、を備え、
使用時には使用者が車室内側に回転させて使用すると共に、不使用時には付勢手段によりルーフライナ側に回転して収容される上記1.乃至3.のいずれか1項に記載の車両用アシストグリップ照明装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用アシストグリップ照明装置によると、ルーフライナに薄肉部を形成し、その薄肉部の裏側に光源が設置されているので、消灯時には通常のルーフライナと変わらず、従来のように別部材である光ガイドを設ける場合に比べて見栄えの低下を防止することができる。また、必要な別部材としては光源だけで足りると共にルーフライナの裏面は簡易な構造であるので、従来のように別部材の光ガイドを設けたりアシストグリップの内部に光源を設ける場合に比べて、部品点数の増加を最低限に抑えて機構の複雑化を防止することができる。
【0008】
また、薄肉部が収容部の車室内側に突出している部位に形成されている場合は、当該部位の裏側にある空きスペースを利用して光源を設置することができるので、光源設置のための空間を特別に作り出す必要が無く、しかもデッドスペースの有効利用を図ることができる。更に、そのように突出している部位では、ルーフライナを製造する工程におけるプレス加工時に当該部位の引き延ばし加工を同時に行うことができ、容易に薄肉化を施すことができるので、薄肉部を形成するための特別な工程が不要となり、ルーフライナの加工コストの増大を抑えることができる。しかも、ルーフライナに収容部が形成されることで凹凸形状により剛性が高くなっているため、そこに薄肉部を形成してもルーフライナとして必要な剛性を維持することができる。
【0009】
また、薄肉部を形成する部位がアシストグリップの上側に位置する場合は、薄肉部からの光線はアシストグリップの把手を照明することができるので、乗員はアシストグリップの把手を容易に認識することができるようになる。
また、アシストグリップの不使用時には付勢手段によりルーフライナ側に回転して収容される格納式である場合は、不使用時に格納されて夜間は乗員から視認し難くなるが車両用アシストグリップ照明装置により位置を容易に認識できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本実施形態に係る車両用アシストグリップ照明装置は、車両のアシストグリップの周辺に位置するルーフライナに形成された薄肉部と、該薄肉部の裏側に設置された光源と、を備えたものである。
上記「アシストグリップ」は、車両の天井に取り付けられて乗員が把持して姿勢を維持できるものである限り、その構造、大きさ、形状、材質、数量などは特に問わない。このアシストグリップは、ルーフライナ側と車室内側とに回転可能に支持する支持軸と、ルーフライナ側に付勢する付勢手段と、を備えた格納式とすることができる。
【0011】
上記「ルーフライナ」は、天井材として車室内に露出すると共に光源からの光線を透過する薄肉部を形成可能である限り、その構造、大きさ、形状、材質、数量などは特に問わない。このルーフライナは、アシストグリップの周囲を車室内側へ突出させることにより、車室内側から見て凹み状となるように形成されたアシストグリップを収容するための収容部(図1等参照)を備えるようにできる。
ルーフライナとしては、車室内側に露出する表皮と、クッション性を担保する基材と、を少なくとも有するものとできる。表皮としては、不織布、織布、ニット等を採用することができ、これらを組み合わせた複合材や、ポリウレタンフォームシート等の樹脂フォームシートの表面に不織布、織布、ニット等を積層接着した複合材なども採用することができる。基材としてはポリウレタンフォーム等の樹脂フォーム材、繊維成形体等を採用することができる。このルーフライナは、表皮と、基材と、不織布から成る裏打ち材と、を熱硬化性のガラスマットにより張り合わせてプレス成型により成型加工して得ることができる。
【0012】
上記「薄肉部」は、光源からの光線が透過してアシストグリップを照明するものである限り、その構造、大きさ、形状、数量などは特に問わない。ルーフライナが表皮と基材と裏打ち材とを重ねてプレス成型される場合、薄肉部ではこれら表皮と基材と裏打ち材のいずれもが薄肉化したものとすることができる。また、ルーフライナに収容部が形成されている場合は、薄肉部は収容部の車室内側に突出している部位に形成するようにできる。この場合、薄肉部はアシストグリップの上側に位置する部位にできる。
上記「光源」は、発した光線が薄肉部を透過するものである限り、その構造、大きさ、形状、材質、数量などは特に問わない。光源としては、端部にLEDが配置された導光管や単独のLED、電球、蛍光灯等とすることができる。この光源は、車両のライト点灯時に点灯するようにできる。
【実施例】
【0013】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。本実施例では、車両用アシストグリップ照明装置1を自動車のアシストグリップ2に適用した場合について説明している。即ち、本実施例では、図1及び図2に示すように、自動車の天井を構成する金属製の車体3の車室内側にルーフライナ4が取り付けられており、また各ドアガラス5の上側にそれぞれアシストグリップ2が設けられている。そして、各アシストグリップ2に対して車両用アシストグリップ照明装置1が設置されている。
【0014】
(1)実施例の構成
本実施例に係る車両用アシストグリップ照明装置1は、図1及び図2に示すように、アシストグリップ2の周辺に位置するルーフライナ4に形成された薄肉部6と、該薄肉部6の裏側に設置された光源7と、を備えている。そして、光源7からの光線が薄肉部6を透過してアシストグリップ2を照明するようにしている。
ルーフライナ4のアシストグリップ2の設置箇所は凹んだ形状でありアシストグリップ2を収容する収容部8が形成されている。この収容部8のアシストグリップ2の上側に位置する車室内側に突出している直線状の部位に薄肉部6が形成されている。尚、収容部8の下側の車内に突出した部位の裏側にはルーフサイドエアバッグ9が収容されている。
光源7は薄肉部6の裏側に沿って設けられた導光管及びその端部に配置されたLEDとしている。この光源7は車両のライト点灯時に点灯する。
【0015】
アシストグリップ2は、ルーフライナ4側と車室内側とに回転可能に支持する支持軸10と、ルーフライナ4側に付勢する付勢手段(図示せず)と、を備えている。支持軸10は支持部材16により車体3に固定されて支持されている。即ち、このアシストグリップ2は、使用時には使用者が車室内側に回転させて使用すると共に(図1中、想像線で示す)、不使用時には付勢手段により把手11が上になるようにルーフライナ4側に回転して収容される格納式とされている。アシストグリップ2の不使用時にはアシストグリップ2の把手11が薄肉部6に近接し、薄肉部6からの光線が把手11を直接照らすことができるようになる。
【0016】
(2)実施例の作用
上述した実施例のルーフライナ4の製造方法について図3に基づいて説明する。
ここでのルーフライナ4は、車室内側に露出する不織布から成る表皮12と、クッション性を担保するポリウレタンフォーム材から成る基材13と、不織布から成る裏打ち材14と、を熱硬化性のガラスマット15,15により張り合わせてプレス成型により成型加工したものとしている。そして、プレス時に薄肉部6では他の部位よりも各構成材12,13,14を引き延ばすことにより薄くするようにしている。これにより、基材13だけでなく表皮12も裏打ち材14も薄肉化される。
【0017】
次に、上述した実施例の動作について図1に基づいて説明する。
アシストグリップ2の不使用時にはアシストグリップ2は収容部8に収容されている。そして、夜間等に自動車のライトを点灯させるのと連動して光源7も点灯される。光源7から発せられた光線は薄肉部6を透過してアシストグリップ2の把手11を照明する。また一部の透過光は車室内側を照明する。いずれの透過光も薄肉部6を透過しているのでぼんやりとした弱い光線となっている。
乗員がアシストグリップ2を把持しようとしてドアガラス5の上側を見た際には、把手11がぼんやりと照明されているので把手11の位置を容易に認識することができる。
【0018】
(3)実施例の効果
本実施例によれば、ルーフライナ4と同一部材である薄肉部6の裏側に光源7が設置されているので、消灯時には通常のルーフライナ4と見栄えが変わらない。このため、従来のように別部材である光ガイドを設ける場合に比べて見栄えの低下を防止することができる。また、追加する部材としては光源7だけで足りると共にルーフライナ4の裏側は簡易な構造であるので、従来のように別部材の光ガイドを設けたり、アシストグリップ2の内部に光源7を設けたりする場合に比べて機構の複雑化を抑えることができる。しかも、アシストグリップ2がぼんやりと照明されて浮かび上がり、また一部の光線は車室内をぼんやりと照明することにより、車内照明の意匠性を高めることができる。
【0019】
また、薄肉部6が収容部8の車室内側に突出している部位に形成されているので、空きスペースを利用して光源7を設置することができる。このため、光源7設置のための空間を特別に作り出す必要が無く、しかもデッドスペースの有効利用を図ることができる。更に、そのように突出している部位では、プレス加工時に引き延ばすだけで容易に薄肉化を施すことができるので、薄肉部6を形成するための別工程が不要となり、ルーフライナ4の加工コストの増大を抑えることができる。しかも、ルーフライナ4に収容部8が形成されることで凹凸形状により剛性が高くなっているため、そこに薄肉部6を形成してもルーフライナ4として必要な剛性を維持することができる。
【0020】
更に、薄肉部6を形成する部位がアシストグリップ2の上側に位置すると共にアシストグリップ2が格納式であるため、アシストグリップ2の不使用時に薄肉部6と把手11が極めて近接するようにできる。このため、薄肉部6からの光線はアシストグリップ2の把手11を確実に照明することができ、乗員は把手11の位置を容易に認識することができるようになる。
また、ルーフライナ4のプレス成型時に薄肉部6では他の部位よりも各構成材12,13,14を引き延ばすことにより薄くするようにしているので、基材13だけでなく表皮12も裏打ち材14も薄肉化して光透過性を高めることができる。しかも、基材13を押し潰すことは無いので、基材13の高密度化による光透過性の低下を防止することができる。
【0021】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、各車両用アシストグリップ照明装置1に別個に光源7を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、図4に示すように、光源7として前後に位置する車両用アシストグリップ照明装置1,1で1本の導光管を使用するようにしてもよい。また、この場合、前後に位置するアシストグリップ2,2の間のルーフライナ4にも薄肉部6を形成して車両の前後に亘って直線状に発光させることにより、意匠性を高めるようにしてもよい。
【0022】
また、上記実施例では、光源7として導光管及びその端部に配置されたLEDを使用するようにしたが、これに限定されず、例えば、単独のLED、電球、蛍光灯等を使用するようにしてもよい。
更に、上記実施例では、ルーフライナ4の表皮12として不織布を採用したが、これに限定されず、例えば織布としたりニットとしたりしてもよい。
【0023】
また、上記実施例では、アシストグリップ2を格納式としたが、これに限定されず、図5に示すように固定式としてもよい。この場合も、アシストグリップ2の上側に設けられた薄肉部6からの光線がアシストグリップ2を照射することができる。
更に、上記実施例では、薄肉部6はアシストグリップ2の上側に形成されているが、これに限定されず、下側であってもよい。あるいは、上記実施例では、ルーフライナ4は収容部8を備えているが、これに限定されず、収容部8を備えていなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
車両用アシストグリップ照明装置として広く適用可能であり、特に、格納式アシストグリップでの車両用アシストグリップ照明装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施例に係る車両用アシストグリップ照明装置を示す図2中I−I線で切断した断面図である。
【図2】ルーフライナを示す平面図である。
【図3】ルーフライナの構成材を示す図である。
【図4】他の実施例に係る車両用アシストグリップ照明装置及びルーフライナを示す平面図である。
【図5】他の実施例に係る車両用アシストグリップ照明装置を示す断面図である。
【図6】従来の照明装置を示す図である。
【図7】従来の他の照明装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1;車両用アシストグリップ照明装置、2;アシストグリップ、4;ルーフライナ、6;薄肉部、7;光源、8;収容部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のアシストグリップの周辺に位置するルーフライナに形成された薄肉部と、該薄肉部の裏側に設置された光源と、を備え、
上記光源からの光線が上記薄肉部を透過して上記アシストグリップを照明することを特徴とする車両用アシストグリップ照明装置。
【請求項2】
上記ルーフライナは上記アシストグリップを収容する収容部を備えると共に、上記薄肉部は上記収容部の車室内側に突出している部位に形成されている請求項1記載の車両用アシストグリップ照明装置。
【請求項3】
上記薄肉部を形成する上記突出している部位は上記アシストグリップの上側に位置する部位である請求項2記載の車両用アシストグリップ照明装置。
【請求項4】
上記アシストグリップは、ルーフライナ側と車室内側とに回転可能に支持する支持軸と、上記ルーフライナ側に付勢する付勢手段と、を備え、
使用時には使用者が車室内側に回転させて使用すると共に、不使用時には付勢手段によりルーフライナ側に回転して収容される請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用アシストグリップ照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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