説明

車両用ウォッシャノズル及び車両用ウォッシャ装置

【課題】噴射された洗浄液の液粒が走行風の影響を受け難く、高速走行時にもほぼ目標の着水点へ着水させることができ所望の洗浄性能を得ることができる車両用ウォッシャノズルを得る。
【解決手段】 ウォッシャノズルのノズルチップ14は、「フルイディクス式ノズル」の構成とされており、拡散流の拡散角度βは、一対の噴射側壁の所定の角度Wよりも大きな角度に設定されている。すなわち、断面積の比Eで決定される拡散角度βにて拡散噴射口から噴射される拡散流は、拡散噴射口の下流に設けた一対の噴射側壁(角度W)によってその散開(拡散限度)を規制されて噴射される。これにより、その散開(拡散限度)が規制されて噴射された拡散流(噴射流)は、その噴射幅の両端部において洗浄液の滞留が生じ、液粒が密集することになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のウインドシールドガラス等の洗浄を行うために洗浄液を噴射するための車両用ウォッシャノズル及び車両用ウォッシャ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のウインドシールドガラス等の洗浄を行うためのウォッシャ装置では、ウォッシャノズルを備えている。このウォッシャノズルのうち、洗浄液を車両幅方向に散開させてウインドシールドガラス面に噴射する拡散噴射ノズルとして、所謂「フルイディクス式ノズル」が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献1に示すようなフルイディクス式ノズルは、ノズルの内部に、フィードバック制御流を適用したノズルチップ(拡散流体素子)を有している。このノズルチップには、洗浄液が自励発振する自励発振室や制御流路を含む流体回路が形成されており、洗浄液を車両幅方向に拡散させて噴射することができる。
【0004】
また、前記特許文献1に示す如き従来のこの種のフルイディクス式ノズル(拡散噴射ノズル)では、自励発振室の入口部分(前記特許文献1においては「パワーノズル」と称されている)の断面積と自励発振室の出口部分(前記特許文献1においては「のど」と称されている)の断面積との比が、扇状の拡散噴射流の拡散角度を決定することが知られている。
【0005】
ところで、このようなフルイディクス式ノズル(拡散噴射ノズル)を、例えば自動車のウインドガラス面へ洗浄液を噴射してワイパ装置によって払拭させる洗浄液供給に適用する場合において、払拭範囲(ガラス面)の隅々にまで洗浄液を供給しようとして拡散角度を大きくすれば、より広い角度範囲に洗浄液を供給できるものの、反面、噴射流の拡散方向における速度ベクトル成分が大きくなり噴射流の噴射方向(車両進行方向)における速度ベクトル成分が小さくなってしまう。すなわち、噴射流の拡散角度を大きくすれば、噴射された洗浄液は拡散方向への推進力(噴射力の分力)が大きくなるためガラス面に向けての推進力(噴射力の分力)は小さくなってしまう。そのため、車両の高速走行時には噴射された洗浄液の液粒は気流の影響を受け易くなり、目標の着水点よりも下方に着水してしまい、所望の洗浄性能(適切な洗浄液供給)が得られないという問題があった。
【特許文献1】特表昭55−500853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、従来のフルイディクス式ノズル(拡散噴射ノズル)の欠点を解消し、噴射された洗浄液の液粒が走行風の影響を受け難く、高速走行時にもほぼ目標の着水点へ着水させることができ所望の洗浄性能を得ることができる車両用ウォッシャノズルを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明の車両用ウォッシャノズルは、圧送された洗浄液を自励発振させる発振室と、前記発振室入口部分に設けられ前記圧送された洗浄液を前記発振室内へ案内する入液口と、前記発振室出口部分に前記入液口と同一軸線上に設けられ前記発振室にて自励発振された前記洗浄液を拡散噴射する拡散噴射口と、を有し、前記洗浄液を車両の幅方向に拡散された拡散流として前記拡散噴射口からガラス面に向けて噴射する車両用ウォッシャノズルであって、前記拡散噴射口から噴射方向に向けて連続し互いに対向し合い前記車両幅方向に所定の角度Wで扇状に広がる一対の噴射側壁を備え、かつ、前記入液口の断面積と前記拡散噴射口の断面積との比Eで決定される前記拡散噴射口からの前記拡散流の拡散角度βを、前記一対の噴射側壁の前記所定の角度Wよりも大きな角度に設定した、ことを特徴としている。
【0008】
請求項2に係る発明の車両用ウォッシャノズルは、請求項1記載の車両用ウォッシャノズルにおいて、前記入液口に連通し前記圧送された洗浄液を前記入液口へ送給する送給路と、前記発振室の前記拡散噴射口よりも上流の左右両側にそれぞれ前記発振室に開口する入口が形成されると共に、前記発振室の前記入液口よりも下流の左右両側にそれぞれ前記発振室に開口しかつ前記入口にそれぞれ連通する出口が形成され、前記発振室へ送給された前記洗浄液の一部を前記各入口から前記各出口へとそれぞれフィードバックする左右一対のフィードバック流路と、を有することを特徴としている。
【0009】
請求項3に係る発明の車両用ウォッシャノズルは、請求項1または請求項2記載の車両用ウォッシャノズルにおいて、前記一対の噴射側壁の前記所定の角度Wは、前記比Eで決定される前記拡散角度βの75%〜85%の角度を成している、ことを特徴としている。
【0010】
請求項4に係る発明の車両用ウォッシャノズルは、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の車両用ウォッシャノズルにおいて、前記一対の噴射側壁の前記所定の角度Wを、42度〜65度の範囲とすると共に、前記比Eを、(0.0291W−0.205)≦E≦(0.0329W−0.1397)の範囲とした、ことを特徴としている。
【0011】
請求項5に係る発明の車両用ウォッシャ装置は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の車両用ウォッシャノズルを適用したことを特徴としている。
【0012】
請求項1記載の車両用ウォッシャノズル及び請求項5記載の車両用ウォッシャ装置では、圧送された洗浄液は入液口から発振室に案内され、この発振室において自励発振され、さらに、自励発振された洗浄液が拡散噴射口から拡散噴射される。
【0013】
ここで、この車両用ウォッシャノズル及び車両用ウォッシャ装置では、拡散噴射口から拡散噴射される拡散流の拡散角度β(幅方向噴射角度)は、入液口の断面積と拡散噴射口の断面積との比Eで決定されるが、当該拡散流の拡散角度βは、一対の噴射側壁の所定の角度Wよりも大きな角度に設定されている。すなわち、断面積の比Eで決定される拡散角度βにて拡散噴射口から噴射される拡散流は、拡散噴射口の下流に設けた一対の噴射側壁(角度W)によってその散開(拡散限度)を規制されて噴射される。
【0014】
これにより、その散開(拡散限度)が規制されて噴射された拡散流(噴射流)は、その噴射幅の両端部において洗浄液の滞留が生じ、液粒が密集することになる。したがって、当該噴射幅の両端部においては、洗浄液の液粒が密集することで個々の液粒径が大きくなってその1液粒当たりの運動エネルギーが増し、結果的に、当該液粒が走行風の影響を受け難くなる。これにより、高速走行時にも洗浄液をほぼ目標の着水点へ着水させることができ、所望の洗浄性能を得ることができる。
【0015】
請求項2記載の車両用ウォッシャノズル及び請求項5記載の車両用ウォッシャ装置では、洗浄液は送給路から入液口を介して発振室へ送給される。洗浄液が発振室へ送給されると、その一部が左右一対のフィードバック流路の各入口から各出口へとそれぞれフィードバックして流通される(フィードバック制御流)。これにより、発振室へ送給された洗浄液(主流)がこの発振室の左右側壁に交互に付着し渦が生じて当該洗浄液が自励発振され、この自励発振された洗浄液が拡散噴射口から拡散噴射される。
【0016】
このように、送給された洗浄液を発振室内で好適に自励発振させることができ、構造も簡単になる。
【0017】
請求項3記載の車両用ウォッシャノズル及び請求項5記載の車両用ウォッシャ装置では、一対の噴射側壁による所定の角度Wは、拡散流の拡散角度βの75%〜85%の角度に設定されている。換言すれば、噴射される拡散流(噴射流)の散開(拡散限度)の規制率が25%〜15%となっている。
【0018】
ここで、前述の如く洗浄液の液粒が走行風の影響を受け難くするためには、1液粒当たりの運動エネルギーが大きい方がよく、したがって、個々の液粒径が大きくしかもその流速が速いほうが好ましい。
【0019】
この点、請求項3記載の車両用ウォッシャノズル及び請求項5記載の車両用ウォッシャ装置では、噴射される拡散流(噴射流)の散開(拡散限度)を規制することによる(洗浄液の滞留が生じることによる)液粒の流速の低下を最小限にしながらも(殆ど低下させることなく)当該液粒の径を最大とすることができる(液粒径と当該液粒の流速とを共に満足できる)角度Wの範囲を特定したものである。
【0020】
このように、噴射された拡散流(噴射流)の噴射幅の両端部において洗浄液の滞留を生じさせない場合と同等の流速で噴射させながらも液粒の粒径を最も大きくできるので、液粒の運動エネルギーを大きくしたままで噴射することができ、走行風の影響を最大限に受け難くすることができる。
【0021】
またここで、通常は、車両用として好適なこの種の拡散噴射ノズルの拡散方向(幅方向)噴射角度は、42度〜65度の範囲である。すなわち、前記噴射角度が大きいと、洗浄液がスプレイアウトしてしまう恐れがあり、反面、前記噴射角度が小さいと、広い好適な着水エリアを得ることができない。またしかも、本発明におけるウォッシャノズルの一対の噴射側壁による所定の角度Wは、拡散流の拡散角度β(幅方向噴射角度)の75%〜85%の角度に設定すると好ましく、しかも、当該拡散角度βは比Eで決定される。
【0022】
この点、請求項4記載の車両用ウォッシャノズル及び請求項5記載の車両用ウォッシャ装置では、一対の噴射側壁による所定の角度Wは、42度〜65度の範囲に設定されており、しかも、比Eを、(0.0291W−0.205)≦E≦(0.0329W−0.1397)の範囲として特定したものである。すなわち、角度Wを拡散角度βの75%とした場合の上限値として、E≦(0.0329W−0.1397)を規定し、また、角度Wを拡散角度βの85%とした場合の下限値として、E≧(0.0291W−0.205)を規定したものである。
【0023】
したがって、前記請求項3記載の車両用ウォッシャノズルと同様に、噴射される拡散流(噴射流)の散開(拡散限度)を規制することによる(洗浄液の滞留が生じることによる)液粒の流速の低下を最小限にしながらも(殆ど低下させることなく)当該液粒の径を最大とすることができる(液粒径と当該液粒の流速とを共に満足できる)。すなわち、噴射された拡散流(噴射流)の噴射幅の両端部において洗浄液の滞留を生じさせない場合と同等の流速で噴射させながらも液粒の粒径を最も大きくできるので、液粒の運動エネルギーを大きくしたままで噴射することができ、走行風の影響を最大限に受け難くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図4には本発明の実施の形態に係るウォッシャノズル10の全体構成が斜視図にて示されている。
【0025】
ウォッシャノズル10は、ノズルボディ12とノズルチップ14によって構成されている。
【0026】
ノズルボディ12は樹脂製とされており、ノズルボディ12の基部12Aの側壁には一対の係止爪13が頭部12Bへ向かって延出されており、図示しない車両のボディーパネルに頭部12Bが露出した状態で係止される。また、ノズルボディ12の下端部には円筒形のホース連結部16が形成されており、洗浄液収容タンクに接続された図示しないホースが連結される。
【0027】
また、ノズルボディ12には、前面側へと開口するチップ収容部18が形成されると共に、このチップ収容部18に連続して送給路20が形成されている。この送給路20は、その一端部が前記ホース連結部16に達している。
【0028】
チップ収容部18には、樹脂成形によって形成されたノズルチップ14が一体的にかつ液密に嵌め込まれている。
【0029】
ここで、図1にはこのノズルチップ14の構成が裏面図にて示されており、図2には、図1の2−2線に沿ったノズルチップ14の断面図が示されている。さらに、図3にはノズルチップ14の構成が斜視図にて示されている。
【0030】
ノズルチップ14は、全体として箱状に形成されており、チップ収容部18に嵌め込まれた状態において送給路20に連通する(送給路20の一部を構成する)流路22が形成されている。またさらに、ノズルチップ14の下面側には、発振室24、及び一対のフィードバック流路26、28が形成されている。
【0031】
図1に詳細に示す如く、発振室24は流路22に連続して形成されており、その入口部分には、送給路20(流路22)に連通し洗浄液を発振室24内へ案内する入液口32が設けられている。流路22から圧送された洗浄液は、入液口32を介して発振室24内に送給されるようになっている。
【0032】
また、発振室24の出口部分には、入液口32と同一軸線上に拡散噴射口30が設けられている。さらに、拡散噴射口30の下流側(図1において右側)には、一対の噴射側壁34が設けられている。各噴射側壁34は、拡散噴射口30から噴射方向に向けて連続し互いに対向し合って形成されており、しかも、車両幅方向に所定の角度Wで扇状に広がって形成されている。
【0033】
ここで、本実施の形態においては、図1及び図2並びに図5に示す如く、
a:入液口32の幅
b:入液口32の高さ
c:拡散噴射口30の幅
d:拡散噴射口30の高さ
E:入液口32の断面積と拡散噴射口30の断面積との比
すなわち(c×d)/(a×b)
β:比Eで決定される拡散噴射口30からの拡散流の本来的な拡散角度
W:一対の噴射側壁34の広がり角度
とすると、
1)図5に示す如く、拡散角度βは、広がり角度Wよりも大きな角度に設定されている(すなわち、「β>W」)。
【0034】
2)広がり角度Wは、拡散角度βの75%〜85%の範囲に設定されている(すなわち、「0.75β<W<0.85β」)。
【0035】
3)広がり角度Wは、42度〜65度の範囲に設定されている(すなわち、「42度<W<65度」)。
【0036】
4)比Eは、(0.0291W−0.205)≦E≦(0.0329W−0.1397)の範囲に設定されている。
【0037】
一方、一対のフィードバック流路26、28は、発振室24から左右にそれぞれ分岐して設けられている。このフィードバック流路26、28は、発振室24の拡散噴射口30よりも上流の左右両側にそれぞれこの発振室24に開口する入口26A、28Aが形成されており、一方、発振室24の入液口32よりも下流の左右両側にそれぞれこの発振室24に開口しかつ入口26A、28Aにそれぞれ連通する出口26B、28Bが形成されている。これにより、フィードバック流路26、28は、流路22から発振室24へ送給された洗浄液の一部を各入口26A、28Aから各出口26B、28Bへとそれぞれ分岐して案内し再び発振室24へ戻すように構成されている。これにより、フィードバック流路26、28に案内された洗浄液が所謂「制御流」となって発振室24を流れる洗浄液を自励発振させることができる構成である。
【0038】
以上の如く、このウォッシャノズル10は、ノズルチップ14が所謂「フルイディクス式ノズル」の構成とされており、発振室24にて自励発振した洗浄液を扇状の拡散流として拡散噴射口30から車両幅方向に比較的広い範囲に拡散噴射することができ、洗浄面積を増大することが可能な構成となっている。
【0039】
次の本実施の形態の作用を説明する。
【0040】
上記構成のウォッシャノズル10では、図示しないタンクからウォッシャポンプにより圧送されノズルボディ12のホース連結部16から送り込まれた洗浄液は、送給路20及び流路22に案内され、更に入液口32を介してノズルチップ14の発振室24へ送り込まれる。洗浄液が発振室24へ送給されると、発振室24内に送給された洗浄液の一部がフィードバック流路26、28の各入口26A、28Aから各出口26B、28Bへとそれぞれ分岐されて案内され再び発振室24へ戻される。これにより、フィードバック流路26、28に案内された洗浄液が所謂制御流となって発振室24を流れる洗浄液がこの発振室24の左右側壁に交互に付着し渦が生じて当該洗浄液が自励発振され、この自励発振された洗浄液が、扇状の拡散流として拡散噴射口30から噴射される。したがって、このウォッシャノズル10では、拡散噴射口30からの扇状の拡散流で広域に洗浄液を噴射して着水できる。
【0041】
ここで、拡散噴射口30から車両幅方向に拡散噴射される拡散流の拡散角度β(幅方向噴射角度)は、入液口32の断面積と拡散噴射口30の断面積との比Eで決定されるが(前述した特許文献1参照)、本実施の形態に係るウォッシャノズル10では、当該拡散流の拡散角度βは、図5に示す如く一対の噴射側壁34の所定の角度Wよりも大きな角度に設定されている。すなわち、断面積の比Eで決定される拡散角度βにて拡散噴射口30から噴射される拡散流は、拡散噴射口30の下流に設けた一対の噴射側壁34(角度W)によってその散開(拡散限度)を規制されて噴射される。
【0042】
これにより、その散開(拡散限度)が規制されて噴射された拡散流(噴射流)は、その噴射幅の両端部において洗浄液の滞留が生じ、液粒が密集することになる。したがって、当該噴射幅の両端部においては、洗浄液の液粒が密集することで個々の液粒径が大きくなってその1液粒当たりの運動エネルギーが増し、結果的に、当該液粒が走行風の影響を受け難くなる。これにより、高速走行時にも洗浄液をほぼ目標の着水点へ着水させることができ、所望の洗浄性能を得ることができる。
【0043】
またここで、前述の如く洗浄液の液粒が走行風の影響を受け難くするためには、1液粒当たりの運動エネルギーが大きい方がよく、したがって、個々の液粒径が大きくしかもその流速が速いほうが好ましい。また、通常は、車両用として好適なこの種の拡散噴射ノズルの拡散方向(幅方向)噴射角度は、42度〜65度の範囲である。すなわち、前記噴射角度が大きいと、洗浄液がスプレイアウトしてしまう恐れがあり、反面、前記噴射角度が小さいと、広い好適な着水エリアを得ることができない。またしかも、本発明におけるウォッシャノズル10の一対の噴射側壁34による所定の角度Wは、前述の如く断面積の比Eで決定される拡散流の拡散角度β(幅方向噴射角度)の75%〜85%の角度に設定すると好ましい。
【0044】
すなわち、図7には、一対の噴射側壁34による広がり角度Wを50度に設定した場合の、噴射される拡散流(噴射流)の散開(拡散限度)の規制率に対する拡散流の液粒径を計測した実験結果が示されている。この図7において明らかなように、当該液粒の径を殆ど低下させることがない範囲は、前記規制率が15%以上の範囲である。一方、図8には、同様に一対の噴射側壁34による広がり角度Wを50度に設定した場合の、噴射される拡散流(噴射流)の散開(拡散限度)の規制率に対する拡散流の流速を計測した実験結果が示されている。図8において明らかなように、噴射される拡散流(噴射流)の散開(拡散限度)を規制することによる(洗浄液の滞留が生じることによる)液粒の流速を殆ど低下させることがない範囲は、前記規制率が25%以下の範囲である。このように、個々の液粒径を大きくすべく散開の規制(洗浄液の滞留)を行いつつも、その液粒の流速を散開規制していないものと同等とすることができる前記規制率は、本来の(断面積比Eにて決定される)拡散角度βの25%〜15%の範囲であることを発見した。
【0045】
この点、本実施の形態に係るウォッシャノズル10では、一対の噴射側壁34による広がり角度Wは、拡散流の拡散角度βの75%〜85%の角度に設定されている。換言すれば、噴射される拡散流(噴射流)の散開(拡散限度)の規制率が25%〜15%となっている。しかも、図6に示す如く、この広がり角度Wは、42度〜65度の範囲に設定されると共に、前記比Eは、(0.0291W−0.205)≦E≦(0.0329W−0.1397)の範囲に設定されている。
【0046】
すなわち、角度Wを拡散角度βの75%とした場合の上限値として、図6の点A(42度、1.2421)及び点B(65度、1.9988)による線Xに基づいて、E≦(0.0329W−0.1397)を規定したものである。また、角度Wを拡散角度βの85%とした場合の下限値として、図6の点C(42度、1.0172)及び点D(65度、1.6865)による線Yに基づいて、E≧(0.0291W−0.205)を規定したものである。
【0047】
これにより、噴射される拡散流(噴射流)の散開(拡散限度)を規制することによる(洗浄液の滞留が生じることによる)液粒の流速の低下を最小限にしながらも(殆ど低下させることなく)当該液粒の径を拡大することができる(液粒径と当該液粒の流速とを共に満足できる)角度Wの範囲が特定されている。
【0048】
したがって、噴射された拡散流(噴射流)の噴射幅の両端部において洗浄液の滞留を生じさせない場合と同等の流速で噴射させながらも液粒の粒径を大きくできるので、液粒の運動エネルギーを大きくしたままで噴射することができ、走行風の影響を最大限に受け難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態に係るウォッシャノズルのノズルチップの構成を示す裏面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るウォッシャノズルのノズルチップの構成を示す図1の2−2線に沿った断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るウォッシャノズルのノズルチップの構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るウォッシャノズルの構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るウォッシャノズルによって噴射される洗浄液の噴射拡散状態を示す概略的な平面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るウォッシャノズルの噴射側壁による広がり角度Wと断面積比Eの設定範囲を示す線図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るウォッシャノズルの噴射側壁による広がり角度Wを50度に設定した場合の、噴射される拡散流の拡散限度の規制率に対する拡散流の液粒径を計測した実験結果を示す線図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るウォッシャノズルの噴射側壁による広がり角度Wを50度に設定した場合の、噴射される拡散流の拡散限度の規制率に対する拡散流の流速を計測した実験結果を示す線図である。
【符号の説明】
【0050】
10・・ウォッシャノズル、12・・ノズルボディ、14・・ノズルチップ、20・・送給路、22・・流路(送給路)、24・・発振室、26・・フィードバック流路、26A・・入口、26B・・出口、28・・フィードバック流路、28A・・入口、28B・・出口、30・・拡散噴射口、32・・入液口、34・・噴射側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧送された洗浄液を自励発振させる発振室と、前記発振室入口部分に設けられ前記圧送された洗浄液を前記発振室内へ案内する入液口と、前記発振室出口部分に前記入液口と同一軸線上に設けられ前記発振室にて自励発振された前記洗浄液を拡散噴射する拡散噴射口と、を有し、前記洗浄液を車両の幅方向に拡散された拡散流として前記拡散噴射口からガラス面に向けて噴射する車両用ウォッシャノズルであって、
前記拡散噴射口から噴射方向に向けて連続し互いに対向し合い前記車両幅方向に所定の角度Wで扇状に広がる一対の噴射側壁を備え、かつ、
前記入液口の断面積と前記拡散噴射口の断面積との比Eで決定される前記拡散噴射口からの前記拡散流の拡散角度βを、前記一対の噴射側壁の前記所定の角度Wよりも大きな角度に設定した、
ことを特徴とする車両用ウォッシャノズル。
【請求項2】
前記入液口に連通し前記圧送された洗浄液を前記入液口へ送給する送給路と、
前記発振室の前記拡散噴射口よりも上流の左右両側にそれぞれ前記発振室に開口する入口が形成されると共に、前記発振室の前記入液口よりも下流の左右両側にそれぞれ前記発振室に開口しかつ前記入口にそれぞれ連通する出口が形成され、前記発振室へ送給された前記洗浄液の一部を前記各入口から前記各出口へとそれぞれフィードバックする左右一対のフィードバック流路と、
を有することを特徴とする請求項1記載の車両用ウォッシャノズル。
【請求項3】
前記一対の噴射側壁の前記所定の角度Wは、前記比Eで決定される前記拡散角度βの75%〜85%の角度を成している、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用ウォッシャノズル。
【請求項4】
前記一対の噴射側壁の前記所定の角度Wを、42度〜65度の範囲とすると共に、
前記比Eを、(0.0291W−0.205)≦E≦(0.0329W−0.1397)の範囲とした、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の車両用ウォッシャノズル。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の車両用ウォッシャノズルを適用したことを特徴とする車両用ウォッシャ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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