説明

車両用エアガイド構造

【課題】 熱交換器の搬送性と車両への搭載性を向上できる車両用エアガイド構造の提供。
【解決手段】 熱交換器2の周囲から車両前方側へ張り出した状態で設けられたエアガイド3を備える車両用エアガイド構造において、エアガイド3(エアガイドサイド11(12)とエアガイドロア13)を熱交換器2に沿わせた状態で収納可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エアガイド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱交換器の周囲から車両前方側へ張り出した状態で設けられたエアガイドを備える車両用エアガイド構造の技術が公知になっている(特許文献1参照)。
また、近年、車体組立ラインにおける組み付け工程の削減や自動化を目的として、熱交換器はエアガイドやその他の周辺部材と共にモジュール化したフロントエンドモジュールとして車両に搭載している。
【特許文献1】特開2006−321317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の発明にあっては、エアガイドを熱交換器の周囲から車両前方側へ張り出した状態のままモジュール化していたため、フロントエンドモジュール全体の外形が大型化して搬送性が悪化する上、搬送時に損傷する虞があった。
加えて、熱交換器を車両のエンジンルームに上方(または下方)から搭載する際に、エアガイドが車体の一部に接触して搭載性が悪化するという問題点があった。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、熱交換器の搬送性と車両への搭載性を向上できる車両用エアガイド構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明では、熱交換器の周囲から車両前方側へ張り出した状態で設けられたエアガイドを備える車両用エアガイド構造において、上記エアガイドを熱交換器に沿わせた状態で収納可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明にあっては、エアガイドを熱交換器に沿わせた状態で収納可能としたため、エアガイドをコンパクトに収納でき、これにより、熱交換器の搬送性と車両への搭載性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
以下、実施例1を説明する。
なお、車両前後方向及び車幅方向を前後方向及び左右方向と称して説明する。
図1は実施例1のフロントエンドモジュールのエアガイドが前方へ張り出した状態を示す斜視図、図2は実施例1のフロントエンドモジュールの斜視図(エアガイドを除く)、図3は実施例1の要部拡大図、図4は図3のS4−A4線における断面図、図5は実施例1のエアガイドロアの収納時を示す斜視図、図6は実施例1のエアガイドサイドの収納時を示す斜視図である。
【0009】
図7は実施例1のフロントエンドモジュールのエアガイドが収納された状態を示す斜視図、図8は実施例1のエアガイドの収納前後の状態を示す斜視図、図9は実施例1のフロントエンドモジュールの車両への搭載を説明する図である。
【0010】
先ず、全体構成を説明する。
図1に示すように、実施例1では、ラジエータコアサポート1と、熱交換器2と、エアガイド3等が備えられている。
図2に示すように、ラジエータコアサポート1は、熱交換器2を固定支持する樹脂製のサイドサポート4,5と、両サイドサポート4,5の上端部に結合された状態で左右方向に延在する金属製のラジエータコアサポートアッパ6で構成されている。
なお、実施例1のラジエータコアサポートアッパ6は、その両端部後面に溶接固定された連結部材6aを介してそれぞれ対応するサイドサポート4,5の上端部に図外の固定部材で固定されているが、この限りではない。
【0011】
また、ラジエータコアサポート1には、図外の車体側との固定部位として、各サイドサポート4,5の中途部に下方へ突出したピン7が形成され、さらに、ラジエータコアサポートアッパ6の端部に複数の固定穴6bが形成されている。
また、ラジエータコアサポートアッパ6の中央付近には図外のフードロックとの固定部位として複数の固定穴6cが形成されている。
【0012】
熱交換器2は、ラジエータ8と、このラジエータ8の前方に配置されたコンデンサ9で構成されている。
ラジエータ8は、上下に所定間隔を置いて配置された一対の樹脂製のタンク8a,8bと、これら一対のタンク8a,8bの間に配置された垂直な面を有するアルミ製のコア部8cで構成されている。
ラジエータ8のコア部8cは、両端部がそれぞれ対応するタンク8a,8bに挿通し固定された複数のチューブ(図示せず)と、隣接するチューブ同士間に配置されたフィン(図示せず)で構成されている。
また、ラジエータ8は、タンク8bの左右両端部がそれぞれ対応するサイドサポート4,5の略L字状に屈折した支持部に載置された状態で固定支持される一方、タンク8aの左右両端部がそれぞれ対応するサイドサポート4,5の上部に図示を省略する固定部材で固定支持されている。
【0013】
コンデンサ9は、左右に所定間隔を置いて配置された一対のアルミ製のタンク9a,9bと、これら一対のタンク9a,9bの間に配置された垂直な面を有するアルミ製のコア部9cで構成されている。
コンデンサ9のコア部9cは、両端部がそれぞれ対応するタンク9a,9bに挿通し固定された複数のチューブ(図示せず)と、隣接するチューブ同士間に配置されたフィン(図示せず)で構成されている。
【0014】
また、コンデンサ9は、両タンク9a,9bの下端部に設けられたピン(図示せず)がそれぞれ対応するサイドサポート4,5の下部に形成された固定穴(図示せず)に上方から挿入された状態で固定支持される一方、両タンク9a,9bの上端部がそれぞれ対応するサイドサポート4,5の上部に図示を省略するブラケットを介して固定支持されている。
【0015】
その他、ラジエータ8の後方には、コア部8c,9cと対面した状態で配置された図外のファンを有するファンシュラウド10が設けられている(図9参照)。
【0016】
図1に示すように、エアガイド3は、熱交換器2の左右両側から車両前方側へ張り出した状態で車両上下方向に延設され、略垂直な面を有する略板状のエアガイドサイド11,12と、熱交換器2の下方から車両前方側へ張り出した状態で車幅方向に延設され、略水平な面を有する略板状のエアガイドロア13から構成され、これらはそれぞれ樹脂製となっている。
エアガイドサイド11,12の後部は、それぞれ対応するサイドサポート4,5に対して複数の箇所で図示を省略する固定部材により固定される一方、エアガイドロア13の後部はラジエータ8のタンク(またはサイドサポート4,5)に対して複数の箇所で図示を省略する固定部材により固定されている。
なお、両エアガイドサイド11,12及びエアガイドロア13の左右両端部は、それぞれ左右対称形状であるため、以下、一方側のみ図示説明する。
【0017】
図3に示すように、エアガイドサイド11(12)の下部には一対の爪部14(図4参照)が上方へ突設されると共に、これら一対の爪部14がエアガイドロア13の対応する位置に開口形成された固定穴15に下方から挿入係止され、これによって、エアガイドサイド11(12)とエアガイドロア13が固定されている。
【0018】
図4に示すように、エアガイドロア13の前部17の後端部は薄肉の脆弱部で構成されるヒンジ部16を介してタンク8bに固定された固定部17aに接続されており、これにより、図3、5に示すように、エアガイドロア13の前部17をヒンジ部16で上方へ90度回動して、コンデンサ9のコア部9cに沿わせた状態で収容可能となっている。
【0019】
さらに、図5に示すように、エアガイドサイド11(12)の後端部には薄肉の脆弱部で構成されるヒンジ部18が該エアガイドサイド11(12)の上下の全長に亘って形成され、これにより、図5、6に示すように、エアガイドサイド11(12)の前部19をヒンジ部18で内側へ90度回動して、エアガイドロア13の前部17に重ねてコンデンサ9のコア部9cに沿わせた状態で収容可能となっている。
【0020】
この際、エアガイドロア13の下面から前方へ突設された爪部20がエアガイドサイド11(12)の対応する位置に開口形成された固定穴21に挿入係止され、これによって、エアガイドサイド11(12)とエアガイドロア13が固定される。
【0021】
従って、図7に示すように、実施例1では、エアガイドロア13の前部17及びエアガイドサイド11(12)の前部19をコンデンサ9のコア部9cに沿わせた状態で収容できるようになっている。
また、図8に示すエアガイドサイド11(12)の前部19とエアガイドロア13の前部17の収納(以下エアガイド3の収納と称す)における前後状態において、爪部14,20と固定穴15,21の係止により、エアガイドサイド11(12)の前部19とエアガイドロア13の前部17を互いに固定できるようになっている。
【0022】
なお、前述したラジエータコアサポート1、熱交換器2、エアガイド3、サイドサポート4,5の各部の材質、詳細な部位の形状、固定構造等は、適宜設定できる。
例えば、実施例1ではエアガイドサイド11(12)の上端部はサイドサポート4,5の上部まで延長させても良いし、エアガイドサイド11(12)に別体のエアガイドを結合して延長しても良い。
また、ラジエータ8はタンク8a,8bがコア部8cの左右に配置されたものでも良いし、サイドサポート4,5を介さずエアガイド3を固定しても良い。
その他、実施例1ではラジエータ8のタンク8aにエアガイドを兼ねる樹脂製のカバー部材22が装着されているが、この限りではない。
【0023】
次に、作用を説明する。
このように構成された車両用エアガイド構造では、ラジエータコアサポート1に前述した熱交換器2、エアガイド3、ファンシュラウド10、及びその他の周辺部材を組み付けたフロントエンドモジュール23を構成して車両組立ラインへ搬送する。
この際、前述したように、エアガイド3を収納した状態とすることで、フロントエンドモジュール23をコンパクトにでき、搬送性が良い。
また、爪部14と固定穴15の係止により、エアガイドサイド11(12)とエアガイドロア13を固定でき、これにより、これら両者を適正に位置決めした状態で収納できると共に、搬送時の振動や外部衝撃などによる損傷を防止できる。
【0024】
次に、車両組立ラインでは、図9(a)、(b)に示すように、図示を省略する車体前部のエンジンルームの上方にフロントエンドモジュール23を配置した後、下方へ移動させてエンジン前方の所定位置に配置する。
この際、前述したように、エアガイド3を収納した状態としているため、車体側の一部24(例えば、フードリッジロア同士を車幅方向に結合する結合部材)とエアガイド3が接触するのを回避できる。
【0025】
次に、各サイドサポート4,5のピン7を車体側に形成された固定穴に上方から挿入して固定支持すると共に、各固定穴6bと車体側に形成された固定穴を一致させて、ここにボルトなどの締結部材を挿入して固定することにより、ラジエータコアサポート1を車体に組み付ける。
【0026】
最後に、図9(c)に示すように、エアガイド3を収納時とは逆の手順で元に戻して、即ち、エアガイドロア13の前部17とエアガイドサイド11(12)の前部19をそれぞれ前方へ張り出した状態として終了する。
この際、爪部14と固定穴15の係止により、エアガイドサイド11(12)とエアガイドロア13を固定でき、これにより、これら両者を適正に位置決めした状態で設けることができると共に、車両走行時の振動による損傷を防止できる。
【0027】
このように構成されたエアガイド3は、車両走行中において、前方からの車両走行風を熱交換器2のコア部へ導く一方、車両停車中において、後方のエンジンルームの熱気が熱交換器2の側方から前方に吹き返すのを防止し、エアガイド3として機能する。
【0028】
最後に、効果を列記する。
以上、説明したように、実施例1では、エアガイド3(エアガイドサイド11(12)とエアガイドロア13)を熱交換器2に沿わせた状態で収納可能としたため、エアガイド3をコンパクトに収納でき、これにより、熱交換器2の搬送性と車両への搭載性を向上できる。
【0029】
また、エアガイドロア13を熱交換器2のコア部9cに沿わせた状態で収納したため、更なるコンパクト化を実現できる。
【0030】
また、エアガイドサイド11(12)とエアガイドロア13を収納時に互いに固定可能としたため、これらを別々に固定した場合に比べて固定作業を簡略化できる。
加えて、エアガイドサイド11(12)とエアガイドロア13の収納時における位置決めをでき、適正な状態でエアガイドサイド11(12)とエアガイドロア13を収納できる。
【0031】
また、エアガイドサイド11(12)とエアガイドロア13を前方へ張り出した状態で互いに固定可能としたため、これらを別々に固定した場合に比べて固定作業を簡略化できる。
加えて、エアガイドサイド11(12)とエアガイドロア13を前方へ張り出した状態としたときの位置決めをでき、適正な状態でエアガイドサイド11(12)とエアガイドロア13を設けることができる。
【0032】
以上、実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、エアガイドサイド11,12の一方を省略する場合もあり得る。
【0033】
また、ヒンジ部16,18のその他の構造例としては、図10〜12に示すように、固定側30に支持軸31を設ける一方、回動側32に支持軸31に軸周り方向に回転可能な係止部33を係止させる構造としても良い。
この際、回動側32の回動前の状態を維持するために、係止部33の一部34を固定側30の一部に係止し、固定側30の一部35を回動側32の一部に係止させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1のフロントエンドモジュールのエアガイドを前方へ張り出した状態を示す斜視図である。
【図2】実施例1のフロントエンドモジュールを示す斜視図(エアガイドを除く)である。
【図3】実施例1の要部拡大図である。
【図4】図3のS4−A4線における断面図である。
【図5】実施例1のエアガイドロアの収納時を示す斜視図である。
【図6】実施例1のエアガイドサイドの収納時を示す斜視図である。
【図7】実施例1のフロントエンドモジュールのエアガイドの収納時を示す斜視図である。
【図8】実施例1のエアガイドの収納前後の状態を示す斜視図である。
【図9】実施例1のフロントエンドモジュールの車両への搭載を説明する図である。
【図10】その他の実施例のヒンジ部を説明する組み付け前の分解図(a)と組み付け後の斜視図(b)である。
【図11】図9のS11−S11線における断面図である。
【図12】図9のS11−S12線における断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 ラジエータコアサポート
2 熱交換器
3 エアガイド
4、5 サイドサポート
6 ラジエータコアサポートアッパ
6a 連結部材
6b 固定穴
6c 固定穴
7 ピン
8 ラジエータ
8a、8b タンク
8c コア部
9 コンデンサ
9a、9b タンク
9c コア部
10 ファンシュラウド
11、12 エアガイドサイド
13 エアガイドロア
14 爪部
15 固定穴
16 ヒンジ部
17 エアガイドロアの前部
17a 固定部
18 ヒンジ部
19 エアガイドサイドの前部
20 爪部
21 固定穴
22 カバー部材
23 フロントエンドモジュール
24 車体の一部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器の周囲から車両前方側へ張り出した状態で設けられたエアガイドを備える車両用エアガイド構造において、
前記エアガイドを熱交換器に沿わせた状態で収納可能としたことを特徴とする車両用エアガイド構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両用エアガイド構造において、
前記エアガイドを、熱交換器の側方から車両前方側へ張り出した状態で車両上下方向に延設されたエアガイドサイドとしたことを特徴とする車両用エアガイド構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両用エアガイド構造において、
前記エアガイドを、熱交換器の下方から車両前方側へ張り出した状態で車幅方向に延設されたエアガイドロアとしたことを特徴とする車両用エアガイド構造。
【請求項4】
請求項3記載の車両用エアガイド構造において、
前記エアガイドサイドとエアガイドロアを前記収納時に互いに固定可能としたことを特徴とする車両用エアガイド構造。
【請求項5】
請求項3または4記載の車両用エアガイド構造において、
前記エアガイドサイドとエアガイドロアを前方へ張り出した状態で互いに固定可能としたことを特徴とする車両用エアガイド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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