説明

車両用オイルクーラの冷却装置

【課題】本発明は、配管のレイアウトを簡素化しつつ、オイルクーラを冷却する冷却水の水温を低下させてオイルクーラの冷却性能を向上させることを目的とする。
【解決手段】このため、エンジンルーム前面部に配置したラジエータ後方に横置きにエンジンを搭載し、エンジンの車両前側の側面に排気マニホルドとオイルクーラとを取り付け、エンジンの車両幅方向端部に設けた冷却水出口からオイルクーラインレット配管を介してオイルクーラに冷却水を供給する車両用オイルクーラの冷却装置において、ラジエータで冷却された冷却水をエンジンへ戻すラジエータアウトレット配管を冷却水出口の近傍に車両前後方向へ延びる状態で配置し、オイルクーラインレット配管をラジエータアウトレット配管の外周面に沿って車両前後方向に延ばし、オイルクーラインレット配管をラジエータアウトレット配管に対して排気マニホルドと反対側に配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両用オイルクーラの冷却装置に係り、特に車両用の水冷式オイルクーラの冷却水配管に関し、配管のレイアウトの簡素化、及びオイルクーラの冷却性能の向上を図る車両用オイルクーラの冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水冷式のオイルクーラを設定する場合に、エンジンの冷却回路から配管を分岐させて、冷却水をオイルクーラに回す必要がある。
そして、オイルクーラの性能を満足するのに必要な冷却水流量を確保するためには、冷却回路内の圧力が高い所から配管を取る必要があり、ヒータ前やラジエータ前などのエンジン出口直後の位置から配管を取ることが多い。
しかし、冷却水温度という点では、上述したエンジン出口直後の位置は配管内で最も冷却水温度が高い箇所であり、エンジン負荷が高い時などは、冷却水温度の上昇によりオイルクーラの性能が悪化する不具合があり、改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平01−162031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、上述の特許文献1に記載の構造では、オイルクーラに対して下流側に位置するオイルクーラアウトレット配管(11)をラジエータのロアタンク(3)に接続して、オイルクーラアウトレット配管(11)内を流れる冷却水を冷却するものがあった。
しかし、この特許文献1に開示される構造では、冷却水がオイルクーラに供給(あるいは「導入」とも換言できる。)される前に冷却されて、オイルクーラ内のオイルの温度を冷却水によって低下させるという効果はなかった。
この結果、エンジンルームの熱気によってオイルクーラに供給される冷却水の温度が過熱されて、オイルクーラ内を流れるオイルが劣化して、オイル交換を行う頻度が高まる虞があるという不都合がある。
また、たとえ、エンジンからオイルクーラに向かう冷却水が流れるオイルクーラインレット配管をラジエータのロアタンクに接続したとしても、前記オイルクーラインレット配管の長さが長くなって配管のレイアウトが煩雑になるという問題があるとともに、車両前方から導入される走行風がラジエータのロアタンクに遮断されて、ロアタンクの後方で溜まった熱気によってオイルクーラインレット配管を加熱する虞がある
という不都合がある。
【0005】
この発明は、車両用オイルクーラの冷却装置において、配管のレイアウトを簡素化しつつ、オイルクーラを冷却する冷却水の水温を低下させてオイルクーラの冷却性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、エンジンルームの前面部にラジエータを配置し、このラジエータの後方にその軸線を車両幅方向に向けてエンジンを搭載し、このエンジンの車両前側の側面に排気マニホルドとオイルクーラとを取り付けるとともに、前記エンジンの車両幅方向端部に冷却水出口を設け、この冷却水出口からオイルクーラインレット配管を介して前記オイルクーラに冷却水を供給する車両用オイルクーラの冷却装置において、前記ラジエータで冷却された冷却水を前記エンジンへ戻すラジエータアウトレット配管を前記冷却水出口の近傍に車両前後方向へ延びる状態で配置し、前記オイルクーラインレット配管を前記ラジエータアウトレット配管の外周面に沿って車両前後方向に延ばし、このオイルクーラインレット配管を前記ラジエータアウトレット配管に対して前記排気マニホルドと反対側に配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上詳細に説明した如くこの発明によれば、エンジンルームの前面部にラジエータを配置し、ラジエータの後方にその軸線を車両幅方向に向けてエンジンを搭載し、エンジンの車両前側の側面に排気マニホルドとオイルクーラとを取り付けるとともに、エンジンの車両幅方向端部に冷却水出口を設け、冷却水出口からオイルクーラインレット配管を介してオイルクーラに冷却水を供給する車両用オイルクーラの冷却装置において、ラジエータで冷却された冷却水をエンジンへ戻すラジエータアウトレット配管を冷却水出口の近傍に車両前後方向へ延びる状態で配置し、オイルクーラインレット配管をラジエータアウトレット配管の外周面に沿って車両前後方向に延ばし、オイルクーラインレット配管をラジエータアウトレット配管に対して排気マニホルドと反対側に配設した。
従って、この発明の特徴部分の構造によって、ラジエータで冷却された低温の冷却水が流れるラジエータアウトレット配管の外周面にオイルクーラに向かう冷却水が流れるオイルクーラインレット配管を沿わせて、ラジエータアウトレット配管とオイルクーラインレット配管との間で熱交換でき、ラジエータアウトレット配管の熱によってオイルクーラインレット配管内を流れる冷却水を冷却することができる。
また、このオイルクーラインレット配管を前記ラジエータアウトレット配管に対して排気マニホルドと反対側に配設したことで、オイルクーラインレット配管を排気マニホルドの熱気から遠ざけることができ、オイルクーラインレット配管内の冷却水の温度上昇を抑制できるとともに、ラジエータを通過してエンジンの側方に沿って流れる冷却風をオイルクーラインレット配管に導いてオイルクーラインレット配管を冷却することができる。
更に、上述した構造では、前記オイルクーラインレット配管を前記ラジエータアウトレット配管に沿わせて配設して、オイルクーラに向かう冷却水を冷却するため、従来構造のように、オイルクーラに連絡する配管をラジエータまで延出する必要が無くなる(上述の特許文献1の図1参照。)ため、オイルクーラインレット配管の配管長を短縮でき、配管のレイアウトを簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1はエンジンを車両左側後方から視た状態の斜視図である。(実施例1)
【図2】図2は車両前部の平面図である。(実施例1)
【図3】図3は車両前部の左側面図である。(実施例1)
【図4】図4はラジエータを取り外した状態の車両前部の正面図である。(実施例1)
【図5】図5は車両前部の背面図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0010】
図1〜図5はこの発明の実施例を示すものである。
図1〜図5において、1は車両、2は車両1の車両前部1Aに区画形成されるエンジンルーム、3はエンジンルーム2内に搭載されるエンジンである。
前記車両1は、車両前部1Aにおいて、この車両前部1Aと図示しない車室側とをダッシュパネル4によって区画し、左右の前輪5、6間に前記エンジンルーム2を形成している。
そして、前記エンジン3には、図1〜図5に示す如く、変速機7を接続し、前記エンジンルーム2内にその軸線を車両幅方向に向けて、つまり横置き状態に搭載している。
また、前記エンジン3は、車両後側の側面に吸気マニホルド8を取り付けるとともに、車両前側の側面に排気マニホルド9を取り付け、上部には前記吸気マニホルド8に連絡するスロットルボディ10を配設している。
更に、車室側の前記ダッシュパネル4の近傍にはヒータコア(「HVAC」ともいう。)11を配設している。
【0011】
また、前記エンジンルーム2の前面部にラジエータ12を配置し、このラジエータ12の後方にその軸線を車両幅方向に向けて前記エンジン3を搭載し、このエンジン3の車両前側の側面に前記排気マニホルド9とオイルクーラ13とを取り付けるとともに、前記エンジン3の車両幅方向端部に冷却水出口14を設け、この冷却水出口15からオイルクーラインレット配管15を介して前記オイルクーラ10に冷却水を供給する車両用オイルクーラの冷却装置16を構成している。
そして、この車両用オイルクーラの冷却装置16において、前記ラジエータ12で冷却された冷却水を前記エンジン3へ戻すラジエータアウトレット配管17を前記冷却水出口11の近傍に車両前後方向へ延びる状態で配置し、前記オイルクーラインレット配管15を前記ラジエータアウトレット配管17の外周面に沿って車両前後方向に延ばし、このオイルクーラインレット配管15を前記ラジエータアウトレット配管17に対して前記排気マニホルド9と反対側に配設する構成とする。
詳述すれば、前記エンジンルーム2の前面部に配置したラジエータ12が図2及び図3に白抜き矢印で示す走行風によって冷却水を冷却し、このラジエータ12の後方にその軸線を車両幅方向に向けて前記エンジン3を搭載し、このエンジン3の車両前側の側面に前記排気マニホルド9とオイルクーラ13とを夫々取り付けた際に、図2に示す如く、エンジン3の右側部にウォータポンプ18を配設し、このウォータポンプ18に前記ラジエータ12で冷却された冷却水を前記エンジン3へ戻すための冷却水入口19を設ける。
そして、図1〜図5に示す如く、前記エンジン3のウォータジャケット(図示せず)からの冷却水を前記冷却水出口14から前記ラジエータ12へ流すラジエータインレット配管20を配置するとともに、前記ラジエータ12で冷却された冷却水を前記エンジン3へ戻す前記ラジエータアウトレット配管17を前記冷却水入口19に接続し、前記冷却水出口14の近傍に車両前後方向へ延びる状態で配置する。
また、前記オイルクーラ13は、図1〜図5に示す如く、前記エンジン3の冷却水出口14からオイルクーラ13に冷却水を供給する前記オイルクーラインレット配管15を設けるとともに、オイルクーラ13から前記ウォータポンプ18の冷却水入口19に冷却水を戻すオイルクーラアウトレット配管21を設ける。
このとき、前記オイルクーラインレット配管15を前記ラジエータアウトレット配管17の外周面に沿って車両前後方向に延ばし、このオイルクーラインレット配管15を前記ラジエータアウトレット配管17に対して前記排気マニホルド9と反対側に配設するものである。
【0012】
これにより、この発明の特徴部分の構造によって、図1〜図4に示す如く、前記ラジエータ12で冷却された低温の冷却水が流れるラジエータアウトレット配管17の外周面にラジエータ12に向かう冷却水が流れるオイルクーラインレット配管15を沿わせて、ラジエータアウトレット配管17とオイルクーラインレット配管15との間で熱交換を行うことができ、ラジエータアウトレット配管17の熱によってオイルクーラインレット配管15内を流れる冷却水を冷却することができる。
また、このオイルクーラインレット配管15を前記ラジエータアウトレット配管17に対して排気マニホルド9と反対側に配設したことで、図2に示す如く、オイルクーラインレット配管15を排気マニホルド9の熱気から遠ざけることができ、オイルクーラインレット配管15内の冷却水の温度上昇を抑制できるとともに、ラジエータ12を通過してエンジン3の側方に沿って流れる走行風である冷却風をオイルクーラインレット配管15に導いてオイルクーラインレット配管15を冷却することができる。
更に、上述した構造では、前記オイルクーラインレット配管15を前記ラジエータアウトレット配管17に沿わせて配設して、オイルクーラ13に向かう冷却水を冷却するため、従来構造のように、オイルクーラに連絡する配管をラジエータまで延出する必要が無くなる(上述の特許文献1の図1参照。)ため、オイルクーラインレット配管15の配管長を短縮でき、配管のレイアウトを簡素化できる。
【0013】
また、図1及び図2に示す如く、前記オイルクーラインレット配管15を前記冷却水出口14より車両後方に延びる冷却水配管22から分岐させ、前記冷却水出口14より後方から前記ラジエータアウトレット配管17の外周面に沿わせる。
従って、この発明の特徴部分の構造によって、前記オイルクーラインレット配管15と前記ラジエータアウトレット配管17との接触する長さ(「領域」とも換言できる。)を長くできる。
これによって、オイルクーラインレット配管15とラジエータアウトレット配管17との間の熱交換を高めることができ、オイルクーラインレット配管15を冷却することができる。
【0014】
更に、前記ラジエータアウトレット配管17には、図1〜図4に示す如く、前記オイルクーラ13を冷却した冷却水の合流する合流部23を備え、この合流部23を前記ラジエータアウトレット配管17の上部に合流させるとともに、前記オイルクーラインレット配管15を前記ラジエータアウトレット配管17の下部に接合する。
従って、この発明の特徴部分の構造によって、前記ラジエータアウトレット配管17内の下部に温度の低い冷却水を流すことができる。
つまり、前記ラジエータアウトレット配管17内の下部を温度の低い冷却水によって冷却でき、その下部に前記オイルクーラインレット配管15を接合したことで、このオイルクーラインレット配管15を冷却し、オイルクーラインレット配管15の冷却効果を高めることができる。
【0015】
なお、この発明は上述実施例に限定されるものではなく、種々の応用改変が可能である。
【0016】
例えば、この発明の実施例においては、エンジンのオイルクーラについて説明したが、変速機のミッションオイルクーラや排気ガス還流装置(「EGR」ともいう。)のEGRクーラなども同様の方策によって冷却性能を向上させる特別構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0017】
1 車両
1A 車両前部
2 エンジンルーム
3 エンジン
4 ダッシュパネル
5、6 左右の前輪
7 変速機
8 吸気マニホルド
9 排気マニホルド
10 スロットルボディ
11 ヒータコア(「HVAC」ともいう。)
12 オイルクーラ
13 冷却水出口
14 ラジエータ
15 オイルクーラインレット配管
16 車両用オイルクーラの冷却装置
17 ラジエータアウトレット配管
18 ウォータポンプ
19 冷却水入口
20 ラジエータインレット配管
21 オイルクーラアウトレット配管
22 冷却水配管
23 合流部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームの前面部にラジエータを配置し、このラジエータの後方にその軸線を車両幅方向に向けてエンジンを搭載し、このエンジンの車両前側の側面に排気マニホルドとオイルクーラとを取り付けるとともに、前記エンジンの車両幅方向端部に冷却水出口を設け、この冷却水出口からオイルクーラインレット配管を介して前記オイルクーラに冷却水を供給する車両用オイルクーラの冷却装置において、前記ラジエータで冷却された冷却水を前記エンジンへ戻すラジエータアウトレット配管を前記冷却水出口の近傍に車両前後方向へ延びる状態で配置し、前記オイルクーラインレット配管を前記ラジエータアウトレット配管の外周面に沿って車両前後方向に延ばし、このオイルクーラインレット配管を前記ラジエータアウトレット配管に対して前記排気マニホルドと反対側に配設したことを特徴とする車両用オイルクーラの冷却装置。
【請求項2】
前記オイルクーラインレット配管を前記冷却水出口より車両後方に延びる冷却水配管から分岐させ、前記冷却水出口より後方から前記ラジエータアウトレット配管の外周面に沿わせたことを特徴とする請求項1に記載の車両用オイルクーラの冷却装置。
【請求項3】
前記ラジエータアウトレット配管には、前記オイルクーラを冷却した冷却水の合流する合流部を備え、この合流部を前記ラジエータアウトレット配管の上部に合流させるとともに、前記オイルクーラインレット配管を前記ラジエータアウトレット配管の下部に接合することを特徴とする請求項2に記載の車両用オイルクーラの冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−13039(P2012−13039A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152048(P2010−152048)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】