説明

車両用ガラスアンテナ

【課題】自動車用リアガラスのデフォッガ上部に1本のアンテナを備えるのみで十分な受信性能が得られる車両用ガラスアンテナを提供する。
【解決手段】
リアガラスの前記デフォッガ上部余白部に配設されており、水平線条に垂直線条の上端を接続したT型のエレメントからなる第1のエレメントと、前記垂直線条から水平に延伸される水平線条を少なくとも1本備える位相調整用の第2のエレメントと、前記垂直線条の下端に接続され、前記第2のエレメントの水平線条とは反対方向に備えられたインピーダンス整合用の第3のエレメントとからなり、前記第3のエレメントから引出された引き出し線条と、前記引き出し線条の先端に接続された給電点とからなる車両用ガラスアンテナにおいて、前記引き出し線条の任意の一箇所又は二箇所に、指向性調整用線条の先端を接続し、前記引き出し線条と前記指向性調整用線条とを合わせて指向性調整用の第4のエレメントとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用リアガラスのデフォッガ上部余白部に設けるVICS(道路交通情報システム Vehicle Information and Communication System)、RDS−TMC(FM多重放送による交通情報サービス Radio Data System Traffic Message Channel)などのITS(高度交通システム Intelligent Transport Systems)用又はFMラジオ放送用などのFM帯域の電波を受信するのに好適なガラスアンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
FM放送用の周波数帯域は日本国内では76MHz〜90MHz、日本国以外では88MHz〜108MHzであり、従来からラジオ放送やVICSなどのITS用に用いられてきた。
【0003】
FM放送用の周波数帯域の受信用アンテナとしては、例えば特開昭59−198006号公報には、デフォッガを備えたリアガラスの前記デフォッガの上部余白部に設けられたアンテナが提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたアンテナは、前記アンテナが搭載される車輌によってはアンテナ感度の指向性を描いたときに、ある方向でアンテナ感度の値が大きく落ち込む現象が生じてしまうことがある。このようにアンテナ感度の値が大きく落ち込んでいる箇所をディップと呼んでいる。このディップを改善するために、例えば、特開平5−267917号公報には、特許文献1に記載されているアンテナをメインアンテナとし、前記メインアンテナに加えて前記メインアンテナと指向特性の異なるサブアンテナを前記リアガラスに配設し、前記メインアンテナと前記サブアンテナとをダイバーさせることが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−198006号公報
【特許文献2】特開平5−267917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたFM帯域用ガラスアンテナは、前述したとおり、前記アンテナが搭載される車輌によっては、ディップが生じてしまい、例えば前記アンテナを備えた車輌の進行方向によっては、前記ディップがFM放送波の到来方向に向いてしまうことがあり、そのような場合にFM放送波を受信できなくなるという問題が生じることがあった。
【0007】
また、特許文献2に記載された発明は、前記メインアンテナと前記サブアンテナとで、それぞれ別々に異なる場所に給電点を有するため、それぞれの給電点に給電線を接続しなければならないため、これらのアンテナを有するリアガラスを車体に取付けるときに車体に取付ける工数が増大してしまうという問題があった。更にまた、2つのアンテナを必要とするため、コストが増大してしまうという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこれらの問題点を解決して、FM帯域において、ディップを生じにくいガラスアンテナを提供し、1本のガラスアンテナでどのような方向から到来するFM放送波でも十分に受信できるようにすることを目的としている。
【0009】
すなわち本発明は、デフォッガを備えたリアガラスの前記デフォッガ上部余白部に配設された車両用ガラスアンテナである。このガラスアンテナは、水平線条に垂直線条の上端を接続したT型のエレメントからなる第1のエレメントと、前記垂直線条の任意の位置に接続され水平に延伸される第2の水平線条を少なくとも1本備える位相調整用の第2のエレメントと、前記垂直線条の下端に接続され、前記第2のエレメントの水平線条の延伸される方向とは反対側に備えられたインピーダンス整合用の第3のエレメントと、前記第3のエレメントから引き出された引き出し線条と、前記引き出し線条の先端に接続された給電点とからなる。
【0010】
前記第3のエレメントは、前記垂直線条の下端に接続される第3の水平線条と前記第3の水平線条に接続線条を介して接続されるスタブとからなる。そして、前記スタブは、少なくとも1本のスタブ用水平線条からなり、前記引き出し線条の一端は、前記スタブ用水平線条のうちの最上部の線条に接続されている。
【0011】
そして、前記引き出し線条の一箇所又は二箇所に、指向性調整用線条の先端を接続し、前記引き出し線条と前記指向性調整用線条とを合わせて指向性調整用の第4のエレメントとする。
【0012】
前記第4のエレメントは、前記引き出し線条の2箇所に、前記指向性調整用線条の両端を接続し、ループエレメントを備えるようにすることが好ましい。
【0013】
また、前記引き出し線条の任意の位置に、指向性調整用線条を複数本接続し、第4のエレメントとしてもよい。
【0014】
前記デフォッガは、複数本の互いに平行な加熱水平線条から構成されており、前記複数本の加熱水平線条に垂直となる直交線条を接続することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のFM帯域用の車両用ガラスアンテナは、特定方向においてアンテナ感度が大きく落ち込むディップが生じることがないため、本発明のアンテナ一本だけで、良好にFM放送波を受信できるようになった。そのため、車両用アンテナを複数組み合わせてFM放送波をダイバー受信する必要がなく、大幅な工数削減が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1のアンテナパターンの正面図。
【図2】本発明の実施例2のアンテナパターンの正面図。
【図3】本発明の実施例3のアンテナパターンの正面図。
【図4】本発明の実施例4のアンテナパターンの正面図。
【図5】本発明の実施例5のアンテナパターンの正面図。
【図6】本発明の実施例6のアンテナパターンの正面図。
【図7】本発明の実施例7のアンテナパターンの正面図。
【図8】比較例のアンテナパターンの正面図。
【図9】本発明の実施例1と比較例1との各周波数での平均感度を比較した周波数特性図。
【図10】本発明の実施例1と比較例1との各周波数での最小感度を比較した周波数特性図。
【図11】本発明の実施例1と比較例1との95MHzでの指向性特性を比較した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、本発明のアンテナは、自動車のリアガラス1に設けたデフォッガ2の上部に設けられたFM帯域用の車両用ガラスアンテナであって、第1のエレメント31と、第2のエレメント32と、第3のエレメント33と、第4のエレメント34と、から構成されるガラスアンテナである。
【0018】
<第1のエレメントについて>
第1のエレメント31は、第1の水平線条311と第1の垂直線条312とからなり、第1の水平線条311に第1の垂直線条312の上端が接続されることでT型のエレメントとなっている。第1の水平線条311上の第1の垂直線条312の上端の接続位置は、本発明のアンテナ感度の平均値が日本国内又は日本国外のいずれかの所望のFM帯域において大きくなるように調整する。
【0019】
<第2のエレメントについて>
第2のエレメント32は、第1の垂直線条312に、その一端が接続される第2の水平線条321と、第2の水平線条321のもう一端に接続され、折り返す折り返し線条322とからなる。第2のエレメント32は、本発明のアンテナでは、位相調整用のエレメントとして作用している。図1においては、折り返し線条322は、第2の水平線条321の下方に配置されているが、図4に示されているように、第2の水平線条321の上方に折り返されていてもよい。また、折り返し線条322を設けず、第2の水平線条のみで第2のエレメント32が構成することもできる。
【0020】
第2の水平線条321は、図1〜図7において、第1の垂直線条312の下端に接続されているが、第1の垂直線条312の途中部に接続することもできる。第2のエレメント32は、第2の水平線条321の長さ、第2の水平線条321と第1の垂直線条との接続位置並びに、折り返し線条322の長さと折り返し方向を調整することにより、本発明のアンテナで受信される放送波の直接波成分と、車体によって反射される反射波成分とによって前記アンテナ上に誘起される電流の位相を調整し、所望のFM帯域においてアンテナ感度の指向特性にディップが生じないように調整をおこなう。
【0021】
<第3のエレメントについて>
第3のエレメント33は、図1に示されるように、第1の垂直線条312の下端に接続され、第1の垂直線条から第2の水平線条321が延伸される方向とは反対の方向に延伸される第3の水平線条331と、第1の垂直線条312に対して第3の水平線条331が延伸される側に設けられるスタブ333と、第3の水平線条331と、スタブ333とを接続する接続線条332とから構成される。
【0022】
スタブ333は、複数の線条で構成されるエレメントであり、例えば図1のように、スタブ用水平線条を上下に平行になるように配設し、その上側の線条をスタブ用上部水平線条333aとし、その下側の線条をスタブ用下部水平線条とし、上下2本のスタブ用水平線条の間を、スタブ用垂直線条333cで接続してコの字状エレメントとして構成することができる。
【0023】
スタブ333の形状は、必ずしも図1のような逆コ字状の形状に限らず、例えば、図3、図4のようにスタブ垂直線条333cを2本備え、それぞれスタブ用上部水平線条333a及びスタブ用下部水平線条333bの左右両端に接続し、ループエレメントして構成してもよい。また、コ字状、「日」字状、「己」字状、S字状、「巳」字状にスタブ333を構成してもよい。また、スタブ用水平線条は必ずしも複数本存在している必要はなく、スタブ用水平線条は1本のみであってもよい。スタブ用水平線条が1本しか配設されていない場合でも、スタブ用垂直線条333cを備えることがインピーダンスの整合を行う上では好ましい。
【0024】
第3の水平線条331とスタブ333とを接続する接続線条332は、図1〜図7のようにスタブ用水平線条が2本備えられているときには、スタブ用下部水平線条333bに接続される。
【0025】
第3のエレメント33は、インピーダンス整合用のエレメントであるため、スタブ333を構成する各線状の長さ、第3の水平線条331の長さ及び第3の水平線条331とスタブ333を構成するスタブ用水平線条とを接続する接続線条332の両端の接続位置を調整することによって、所望のFM帯域において給電点35に接続される給電線とのインピーダンスとマッチングがとれるように整合をおこなう。
【0026】
<第4のエレメントについて>
第4のエレメント34は、例えば図1に示されるように、スタブ333のスタブ用上部水平線条333aに接続される引き出し線条341と、引き出し線条341の2点でその先端が接続される指向性調整用線条342とから構成され、引き出し線条341の一端は、給電点35に接続されている。
【0027】
図1〜図7においては、引き出し線条341の一端は、スタブ333のスタブ用上部水平線条333aに接続されているが、スタブ用水平線条が1本しかない場合には、そのスタブ用水平線条に接続される。
【0028】
引き出し線条341は、図1〜図7に示すようにその両端を下方に折り曲げ、スタブ333と接続している側の端部を引き出し線条のスタブとの接続部分341bとし、給電点35と接続している側の端部を引き出し線条の給電点35との接続部分341cとし、両端部に挟まれる水平部分を引き出し線条の水平部分341aとすることができる。しかし、必ずしも、引き出し線条341は両端を下方に折り曲げる必要はなく、給電点側は折り曲げる必要はないし、給電点側を上側に折り曲げることもできる。
【0029】
図1〜図4においては、指向性調整用線条342は一本のみであり、その一端を引き出し線条のスタブとの接続部分341bに接続、もう一端を引き出し線条の給電点との接続部分341cに接続することで、引き出し線条341と指向性調整用線条342とで、ループエレメントを構成している。ただし、図1〜図4のようにループエレメントを構成する場合には、必ずしも図1〜図4と同じ構成で最適な形態となるとは限らず、引き出し線条341と、指向性調整用線条342との接続位置を調整したり、指向性調整用線条342の長さを調整したりすることで、ディップを小さくする。ループエレメントを構成する場合は、図1〜図4のように指向性調整用線条342の両端を接続する必要はなく、例えば、両端を折り曲げて引き出し線状の水平部分341aに接続してもよいし、いずれか一端部を折り曲げてその一端のみを引き出し線状の水平部分341aに接続するようにしてもよい。
【0030】
また、第4のエレメント34は、図1〜図4に示されているように、指向性調整用線条342の両端を引き出し線条341の任意の2点に接続してループエレメントを設ける必要はなく、例えば、図5に示されるように、指向性調整用線条342の一端だけを引き出し線条341に接続し、もう一端は開放しておいてもよいし、図6や図7に示されるように、複数本の指向性調整用線条342を引き出し線条341に設けるようにしてもよい。図5〜図7に示されるように、指向性調整用線条342の一端を開放しているときも、両端を引き出し線条341に接続しているときと同様に、引き出し線条342との接続位置を調整したり、指向性調整用線条の長さを調整したりすることで、ディップを小さくすることができる。
【0031】
図1〜図7において、第1のエレメント31の第1の垂直線条312に対して、第2のエレメント32は左側、第3のエレメント33及び第4のエレメント34は右側に設けられているが、必ずしも、この位置は固定的ではなく、第2のエレメント32を右側、第3のエレメント33及び第4のエレメント34を左側に設けるようにしてもよい。
【0032】
<指向性調整用線条の効果について>
車両に取付けられたガラスアンテナは、放送波を受信する際に、直接波だけではなく、前記ガラスアンテナが取付けられている車両で反射された反射波も受信する。直接波と反射波の位相は、放送波の到来方向によって変化し、両者の位相差がほとんどない場合には、両者によってそれぞれ前記ガラスアンテナに誘起される電流は強めあい、給電点35にて大きな受信信号を得ることができる。しかしながら、両者の位相差が大きくなっていくと、両者によってそれぞれ前記ガラスアンテナに誘起される電流は弱め合うようになり、例えば、両者の位相差が180度となる場合に、両者によってそれぞれ前記ガラスアンテナに誘起される電流はもっとも強く弱め合うこととなる。
【0033】
車両で反射されて前記ガラスアンテナに入射する反射波は一つとは限らず、前記ガラスアンテナが搭載される車両の形状や、放送波の到来方向によって、複数の反射波が入射することがあり、前記ガラスアンテナは複雑な電波環境に曝されている。
【0034】
本発明のガラスアンテナを搭載される車両に合わせて調整を行う場合、アンテナ感度が高く等方的な指向性となるように第1のエレメント31と第2のエレメント32と第3のエレメント33とを調整するが、ディップが生じてしまい、そのディップを小さくできない場合がある。
【0035】
そのような場合に、引き出し線条341の任意の位置に指向性調整用線条342を接続しループエレメントを形成したり、指向性調整用線条342の長さを調整することによってディップが生じる放送波の到来方向において、直接波と車両で反射される反射波との位相差を小さくし、前記ディップが小さくなるように指向特性を改善することができる。
【0036】
<直交線条について>
図1〜図7において、デフォッガ2を構成する複数の加熱水平線条22に対して垂直に直交線条23を配設して、各加熱水平線条22と接続することが好ましい。そして、直交線条23は、本発明のアンテナの第1のエレメント31を構成する第1の垂直線条の延長線上となるデフォッガ上に配設させることがより好ましい。
【0037】
このような直交線条を設けることによって、FM放送波に対するアンテナ感度を高めることができる。
【0038】
<本発明のガラスアンテナの給電点>
本発明のガラスアンテナは、給電点35近傍の車体上に図示しない接地点を設けており、図示しない受信機から接地点までを図示しない同軸ケーブルで接続し、前記同軸ケーブルの外皮側は接地し、前記同軸ケーブルの芯線側は、図示しないAV線に接続し、接地点から給電点35までを接続している。
【0039】
給電点35は、なるべく目立たないことが求められるとともに、給電点35と接地点間をつなぐAV線の長さをなるべく短くすることが求められているため、リアガラスの周辺部の車内面側に設けられている図示しない黒枠上に設けられている。
【0040】
本発明のアンテナは、デフォッガ2を形成するのと同じ導電性セラミックペーストを用いることができ、デフォッガ2と同じ方法で印刷し、加熱炉によって焼付けることができるため、デフォッガ2の形成と同時に形成することができる。または、本発明のアンテナは、透明フィルム上に導電性塗料によってプリントしたものを、リアガラス1のデフォッガ2の上部に貼り付けて使用することもできる。
【実施例】
【0041】
以下に本発明の各実施例について説明する。
【0042】
<実施例1>
図1は本発明の実施例1に係るアンテナパターンの車内側から見た正面図である。実施例1のアンテナパターンは、T型に配設した第1のエレメント31と、第1のエレメント31の第1の垂直線条312の下端に接続され、第1の垂直線条312の左側に設けられる第2のエレメント32と、第1の垂直線条312の右側に設けられる第3のエレメント33と、第3のエレメント33のスタブ333を構成するスタブ上辺線条333aに接続される第4のエレメント34と、第4のエレメント34に接続され、リアガラス1の周辺部に設けられた給電点35とから構成されている。
【0043】
第1のエレメント31は、第1の垂直線条312をリアガラスの中心線上に配設し、第1の垂直線条312の上端に第1の水平線条311を接続させている。
【0044】
第2のエレメント32は、第1の垂直線条312の下端に接続され、左側に延伸される第2の水平線条321と、第2の水平線条321の他端に接続され、下方に折り返される折り返し線条322とから構成されている。
【0045】
第3のエレメント33は、第1の垂直線条312の下端に接続され、右側に延伸される第3の水平線条331と、第3の水平線条上部に設けられるスタブ333と、第3の水平線条331とスタブ333とを接続する接続線条332とから構成される。
【0046】
スタブ333は、コの字状に線条を配設したエレメントであり、スタブ下辺水平線条333bと、その上部に平行かつ同じ長さになるように設けられたスタブ上辺水平線条333aと、それぞれの水平線条の右端部同士を接続しているスタブ垂直線条333cとで構成されている。
【0047】
そして、接続線条332は、第3の水平線条331の先端とスタブ下辺水平線条333cの先端とを接続している。
【0048】
第4のエレメント34は、スタブ333のスタブ上辺水平線条333aの上部に設けられ、左右の端部を下方向に折り曲げた引き出し線条341と、引き出し線条341の2点に、両端を接続させた指向性調整用線条342とから構成されており、指向性調整用線条342を引き出し線条341の2点で接続させたことで、ループエレメントを形成している。
【0049】
引き出し線条341は、その両端が下方向に折り曲げられており、左端部は、引き出し線条のスタブとの接続部分341bとして、その先端はスタブ上辺水平線条333aの任意の位置で接続されており、右端部は、引き出し線条34の給電点35との接続部分341cとして、その先端は給電点35と接続しており、引き出し線条341の折り曲げられていない部分は、引き出し線条の水平部分341aとしている。
【0050】
また、デフォッガ2を構成する各加熱水平線条22と垂直で、リアガラス1の中心線上に沿うように最上部の加熱水平線条22から最下部の加熱水平線条22まで直交線条23を配設して、各加熱水平線条22と接続している。
【0051】
本実施例のアンテナの各線状長さを以下の通りにした。
【0052】
第1のエレメント31について
第1の垂直線条312の長さ=116mm
第1の水平線条311の長さ=650mm(第1の垂直線条の右側の長さ=300mm、第1の垂直線条の左側の長さ=350mm)
第2のエレメント32について
第2の水平線条321の長さ=510mm
折り返し線条322の長さ=830mm
折り返し線条の第2の水平線条との接続部322a=20mm
第3のエレメント33について
第3の水平線条331の長さ=300mm
接続線条332の長さ=20mm
スタブ上辺水平線条333aの長さ=255mm
スタブ下辺水平線条333bの長さ=255mm
スタブ垂直線条333cの長さ=60mm
第4のエレメント34について
引き出し線条341の長さ=365mm
引き出し線条の水平部分341aの長さ=325mm
引き出し線条のスタブとの接続部分341bの長さ=20mm
引き出し線条の給電点との接続部分341cの長さ=20mm
引き出し線条341のスタブ333との接続部分の位置=スタブ上辺水平線条333a上のスタブ垂直線条333cとの接続部から155mmの位置
指向性調整用線条342=325mm
指向性調整用線条342と引き出し線条の水平部分341aとの間隔=10mm
本実施例のアンテナを、リアガラス1に導電性セラミックペーストによって、各線状の幅を0.7mmとなるように印刷し、乾燥後、加熱炉によって焼付けして、給電点35にAV線を取り付けた上で、車体に取り付ける。そして、図示しないチューナーから延ばした同軸ケーブルを給電点35近傍の車体に設けた接地点において、前記同軸ケーブルの外皮導体を接地し、前記同軸ケーブルの芯線側を前記AV線と接続した。
【0053】
このようにして作成した本実施例のアンテナで日本国外のFM帯域の周波数88〜108MHzにおける放送波を受信したところ、図9〜図11の黒色の実線部分のような結果が得られた。
【0054】
それぞれの図は後述の比較例のアンテナ(実施例1のアンテナで、指向性調整用線条342を備えていないアンテナ)の測定結果との比較を示すものであり、図9は、実施例1(実線)と比較例(破線)のそれぞれの88MHz〜108MHzの各周波数におけるアンテナ感度の全方位での平均値を示すものである。図10は、実施例1(実線)と比較例(破線)とのそれぞれの88MHz〜108MHzの各周波数におけるアンテナ感度の最小値を示したものである。そして、図11は、95MHzにおけるアンテナ感度に関して実施例1と比較例との指向特性図を示したものである。
【0055】
図9を見ると、各周波数において、実施例1と比較例との間で平均感度の差がほとんどないが、図10を見ると、比較例においては、95MHz前後でアンテナ感度の最小値が極めて小さくなっている。それに対して、実施例1のアンテナ感度の最小値は、95MHz前後において、比較例に対して大幅に改善していることがわかる。
【0056】
図11の95MHzにおける指向特性図を見ると、比較例で右斜め下に生じている深いディップが、実施例1において大幅に改善されていることがわかる。
【0057】
以上、実施例1において、日本国外のFM帯域の周波数88〜108MHzにおける本発明のアンテナの受信特性について説明したが、本発明を日本国内の76〜90MHzで使用する場合には、各エレメントの長さや構成を調整する必要がある。
【0058】
<実施例2>
図2は本発明の実施例2に係るアンテナパターンの車内側から見た正面図である。実施例2においては、第3のエレメント33を構成する第3の水平線条331とスタブ333のスタブ下辺水平線条333bとを接続する接続線条332が、スタブ下辺水平線条333bの途中部に接続されている点を除き、実施例1と同じ構成となっている。
【0059】
本実施例のアンテナを、リアガラス1に導電性セラミックペーストによって、各線状の幅を0.7mmとなるように印刷し、乾燥後、加熱炉によって焼付けして、給電点35にAV線を取り付けた上で、車体に取り付ける。そして、図示しないチューナーから延ばした同軸ケーブルを給電点35近傍の車体に設けた接地点において、前記同軸ケーブルの外皮導体を接地し、前記同軸ケーブルの芯線側を前記AV線と接続した。
【0060】
このようにして作成した本実施例のアンテナで日本国外のFM帯域の周波数88〜108MHzにおける放送波を受信したところ、実施例1と同様に深いディップのない、指向特性得られ、十分実用レベルにあることがわかった。
【0061】
<実施例3>
図3は本発明の実施例3に係るアンテナパターンの車内側から見た正面図である。実施例3においては、第3のエレメント33を構成するスタブ333のスタブ上辺水平線条333aとスタブ下辺水平線条333bとが、それぞれ左端だけではなく、右端もスタブ垂直線条333cによって接続されている点を除き、実施例2と同じ構成となっている。
【0062】
本実施例のアンテナを、リアガラス1に導電性セラミックペーストによって、各線状の幅を0.7mmとなるように印刷し、乾燥後、加熱炉によって焼付けして、給電点35にAV線を取り付けた上で、車体に取り付ける。そして、図示しないチューナーから延ばした同軸ケーブルを給電点35近傍の車体に設けた接地点において、前記同軸ケーブルの外皮導体を接地し、前記同軸ケーブルの芯線側を前記AV線と接続した。
【0063】
このようにして作成した本実施例のアンテナで日本国外のFM帯域の周波数88〜108MHzにおける放送波を受信したところ、実施例1と同様に深いディップのない、指向特性が得られ、十分実用レベルにあることがわかった。
【0064】
<実施例4>
図4は本発明の実施例4に係るアンテナパターンの車内側から見た正面図である。実施例4においては、第2のエレメント32を構成する折り返し線条322が、第2の水平線条321の上部に折り返している点を除き、実施例3と同じ構成となっている。
【0065】
本実施例のアンテナを、リアガラス1に導電性セラミックペーストによって、各線状の幅を0.7mmとなるように印刷し、乾燥後、加熱炉によって焼付けして、給電点35にAV線を取り付けた上で、車体に取り付ける。そして、図示しないチューナーから延ばした同軸ケーブルを給電点35近傍の車体に設けた接地点において、前記同軸ケーブルの外皮導体を接地し、前記同軸ケーブルの芯線側を前記AV線と接続した。
【0066】
このようにして作成した本実施例のアンテナで日本国外のFM帯域の周波数88〜108MHzにおける放送波を受信したところ、実施例1と同様に深いディップのない、指向特性が得られ、十分実用レベルにあることがわかった。
【0067】
<実施例5>
図5は本発明の実施例5に係るアンテナパターンの車内側から見た正面図である。実施例5においては、指向性調整用線条342の一端が開放されている点を除き、実施例1と同じ構成となっている。
【0068】
本実施例のアンテナを、リアガラス1に導電性セラミックペーストによって、各線状の幅を0.7mmとなるように印刷し、乾燥後、加熱炉によって焼付けして、給電点35にAV線を取り付けた上で、車体に取り付ける。そして、図示しないチューナーから延ばした同軸ケーブルを給電点35近傍の車体に設けた接地点において、前記同軸ケーブルの外皮導体を接地し、前記同軸ケーブルの芯線側を前記AV線と接続した。
【0069】
このようにして作成した本実施例のアンテナで日本国外のFM帯域の周波数88〜108MHzにおける放送波を受信したところ、実施例1と同様に深いディップのない、指向特性が得られ、十分実用レベルにあることがわかった。
【0070】
<実施例6>
図6は本発明の実施例6に係るアンテナパターンの車内側から見た正面図である。実施例6においては、指向性調整用線条342が2本備え、それぞれの指向性調整用線条342を引き出し線条のスタブとの接続部分341bと、引き出し線条34の給電点35との接続部分341cとに接続し、一端は開放している点を除き、実施例1と同じ構成となっている。
【0071】
本実施例のアンテナを、リアガラス1に導電性セラミックペーストによって、各線状の幅を0.7mmとなるように印刷し、乾燥後、加熱炉によって焼付けして、給電点35にAV線を取り付けた上で、車体に取り付ける。そして、図示しないチューナーから延ばした同軸ケーブルを給電点35近傍の車体に設けた接地点において、前記同軸ケーブルの外皮導体を接地し、前記同軸ケーブルの芯線側を前記AV線と接続した。
【0072】
このようにして作成した本実施例のアンテナで日本国外のFM帯域の周波数88〜108MHzにおける放送波を受信したところ、実施例1と同様に深いディップのない、指向特性が得られ、十分実用レベルにあることがわかった。
【0073】
<実施例7>
図7は本発明の実施例7に係るアンテナパターンの車内側から見た正面図である。実施例7においては、2本備えられている指向性調整用線条342のうちの引き出し線条のスタブとの接続部分341bに接続されていた線条が、引き出し線条の水平部分341aの上部に位置するように引き出し線条の水平部分341aに接続されている点を除き、実施例6と同じ構成となっている。
【0074】
本実施例のアンテナを、リアガラス1に導電性セラミックペーストによって、各線状の幅を0.7mmとなるように印刷し、乾燥後、加熱炉によって焼付けして、給電点35にAV線を取り付けた上で、車体に取り付ける。そして、図示しないチューナーから延ばした同軸ケーブルを給電点35近傍の車体に設けた接地点において、前記同軸ケーブルの外皮導体を接地し、前記同軸ケーブルの芯線側を前記AV線と接続した。
【0075】
このようにして作成した本実施例のアンテナで日本国外のFM帯域の周波数88〜108MHzにおける放送波を受信したところ、実施例1と同様に深いディップのない、指向特性が得られ、十分実用レベルにあることがわかった。
【0076】
以上好適な実施の形態について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の応用が考えられるものである。
【0077】
<比較例>
図8は、比較例に係るアンテナパターンの車内側から見た正面図である。本比較例においては、指向性調整用線条342が設けられていない点を除いて、実施例1のアンテナと構成と各線状の長さを同一としている。
【0078】
本比較例のアンテナを、リアガラス1に導電性セラミックペーストによって、各線状の幅を0.7mmとなるように印刷し、乾燥後、加熱炉によって焼付けして、給電点35にAV線を取り付けた上で、車体に取り付ける。そして、図示しないチューナーから延ばした同軸ケーブルを給電点35近傍の車体に設けた接地点において、前記同軸ケーブルの外皮導体を接地し、前記同軸ケーブルの芯線側を前記AV線と接続した。
【0079】
このようにして作成した本比較例のアンテナで日本国外のFM帯域の周波数88〜108MHzにおける放送波を受信したところ、図9の破線に示すような各周波数におけるアンテナ感度の全方位での平均値が得られ、図10の破線に示すような各周波数におけるアンテナ感度の最小値が得られ、そして図11に矢印で比較例と示した95MHzにおけるアンテナ感度に関する試行特性図が得られた。
【0080】
本比較例においては、図9においては、本発明の実施例1と比較して測定した周波数帯域においてほぼ同じ程度の値が得られているが、図10において、95MHzにおいてアンテナ感度の最小値が大幅に小さくなっている。これは、図11で示した本比較例の指向特性図において、右斜め下で大きなディップが生じていることによる。
【符号の説明】
【0081】
1 リアガラス
2 デフォッガ
21 バスバ
22 加熱水平線条
23 直交線条
3 アンテナ
31 第1のエレメント
311 第1の水平線条
312 第1の垂直線条
32 第2のエレメント
321 第2の水平線条
322 折り返し線条
322a 折り返し線条の第2の水平線条との接続部
33 第3のエレメント
331 第3の水平線条
332 接続線条
333 スタブ
333a スタブ用上部水平線条
333b スタブ用下部水平線条
333c スタブの垂直線条
34 第4のエレメント
341 引き出し線条
341a 引き出し線条の水平部分
341b 引き出し線条のスタブとの接続部分
341c 引き出し線条の給電点との接続部分
342 指向性調整用線条
35 給電点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デフォッガを備えたリアガラスの前記デフォッガ上部余白部に配設された車両用ガラスアンテナであり、
水平線条に垂直線条の上端を接続したT型のエレメントからなる第1のエレメント(31)と、
前記垂直線条に接続され水平に延伸される第2の水平線条を少なくとも1本備える位相調整用の第2のエレメント(32)と、
前記垂直線条の下端に接続され、前記第2のエレメントの水平線条の延伸される方向とは反対側に備えられたインピーダンス整合用の第3のエレメント(33)と、
前記第3のエレメントから引出された引き出し線条(341)と、
前記引き出し線条の先端に接続された給電点(35)とからなり、
前記第3のエレメント(33)は、前記垂直線条の下端に接続される第3の水平線条と前記第3の水平線条に接続線条を介して接続されるスタブ(333)とからなり、
前記スタブ(333)は、少なくとも1本のスタブ用水平線条からなり、
前記引き出し線条の一端は、前記スタブ用水平線条のうちの最上部の線条に接続されている車両用ガラスアンテナにおいて、
前記引き出し線条(341)の一箇所又は二箇所に、指向性調整用線条(342)の先端を接続し、前記引き出し線条と前記指向性調整用線条とを合わせて指向性調整用の第4のエレメント(34)としたことを特徴とする車両用ガラスアンテナ。
【請求項2】
前記第4のエレメント(34)は、前記引き出し線条(341)の2箇所に、前記指向性調整用線条(342)の両端を接続し、ループエレメントを備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項3】
前記引き出し線条(341)に、指向性調整用線条(342)を複数本接続し、第4のエレメント(34)としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項4】
複数本の互いに平行な加熱水平線条から構成されており、前記複数本の加熱水平線条に垂直となる直交線条を接続したデフォッガに、請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用ガラスアンテナを配設させたことを特徴とするリアガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−222539(P2012−222539A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85218(P2011−85218)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】