説明

車両用サイドマッドガード

【課題】意匠面となる外面にヒケによる波打ちが無く、しかも意匠面における塗装の境界ライン(見切りライン)を良好にすることができる外観の良好な車両用サイドマッドガードの提供を目的とする。
【解決手段】アウター部材11と前記アウター部材11に連結されて主にアウター部材11の裏面側に配置されるインナー部材31とからなり、前記アウター部材11は、下部に連結用係合部14を有する意匠部12と、前記意匠部12の上部から前記意匠部12の裏側下方へ形成されたアウター側取付部18とからなると共に、前記アウター側取付部18にはクリップ保持孔21を有し、前記インナー部材31は、下部に連結用係合部40を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サイドマッドガードに関する。
【背景技術】
【0002】
図8に示すように、サイドマッドガード50は車両の側部ドアの下方において前輪と後輪間の車両パネルに取り付けられるものであり、車両の前後方向に長い形状からなる。従来のサイドマッドガード50は、合成樹脂製からなり、図9乃至図12に示すように、アウター部51とインナー部55がヒンジ部57で連結されてインナー部55がアウター部51の裏面側へ折り曲げ可能とされている。前記アウター部51の裏面にはクリップ座52が形成され、一方、前記インナー部55には車両への取付用係止爪56が形成されている。
【0003】
前記サイドマッドガード50は、前記インナー部55の取付用係止爪56が車体パネル61の係止孔63に係止され、一方、前記アウター部51のクリップ座52に取り付けたクリップ58が車体パネル61の係合孔66に挿入されて車両に取り付けられる。
【0004】
従来のサイドマッドガード50にあっては、前記アウター部51の裏面にクリップ座52を一体に有することから、成形金型に前記クリップ座52を形成するための傾斜スライド駒を設けて、前記傾斜スライド駒のスライドによってサイドマッドガードの脱型を可能にしている。しかし、前記サイドマットガードのアウター部51は、前記傾斜スライド駒のスライド範囲にわたって裏面と外面(意匠面)の収縮が異なることになるため、外面(意匠面)にヒケが発生する問題がある。しかも前記クリップ座52は、サイドマッドガードの長さ方向に沿って所定間隔で複数設けられるため、前記ヒケが所定間隔で発生し、アウター部51の外面(意匠面)に見苦しい波打ちを生じ、美観の低下が大きくなる問題がある。
【0005】
さらに、前記サイドマットガードは、アウター部51の外面(意匠面)のみに塗装が施されることがあり、その場合には前記インナー部55にマスキングを施している。しかし、前記アウター部51とインナー部55がヒンジ部(インテグラルヒンジ部)57を介して一体に形成され、前記ヒンジ部57の外面が溝状に窪んでいるため、ヒンジ部57の中心位置をマスキングの境界とするのが難しく、塗装の境界ライン(見切りライン)が見苦しくなり易かった。
【0006】
【特許文献1】特開2006−35947号公報
【特許文献2】実開2006−103418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、意匠面となる外面にヒケによる波打ちが生じにくく、しかも意匠面における塗装の境界ライン(見切りライン)を良好にすることができる外観の良好な車両用サイドマッドガードの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、アウター部材と前記アウター部材に連結されるインナー部材とよりなり、前記アウター部材は、下部に連結用係合部を有する意匠部と前記意匠部の上部から前記意匠部の裏側下方へ形成されたアウター側取付部とからなると共に、前記アウター側取付部にはクリップ保持孔を有し、前記インナー部材は、下部のヒンジ部を介して一体形成された本体部とインナー側取付部とよりなり、前記本体部には車両への取付用係止部を有し、前記インナー側取付部には下部に連結用係合部を有し、上部に前記アウター側取付部との重ね合わせ部を有すると共に前記重ね合わせ部に前記アウター部材のクリップ保持孔と位置を合わせてクリップ保持孔を有し、前記アウター部材の連結用係合部と前記インナー部材の連結用係合部が係合して前記アウター部材と前記インナー部材が連結されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記アウター側取付部と前記インナー側取付部の何れか一方には突部を有し、他方には突部挿入孔を有し、前記突部が前記突部挿入孔に挿入されて前記突部挿入孔に溶着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用サイドマッドガードによれば、アウター部材とインナー部材の二部材からなり、アウター部材には意匠部の上部から意匠部の裏側下方へ形成されたアウター側取付部を有し、アウター側取付部にクリップ保持孔を有するため、意匠部の裏面にはクリップ座が存在せず、クリップ座の存在に起因する意匠面のヒケおよび波打ちが無く、美観が良好となる。さらに、本発明の車両用サイドマッドガードはアウター部材とインナー部材の二部材からなるため、アウター部材とインナー部材を連結する前にアウター部材の外面(意匠面)に塗装を施すことができ、インナー部材にマスキングが不要となると共に意匠面における塗装の境界ライン(見切りライン)を良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の一実施例に係る車両用サイドマッドガードにおけるアウター部材とインナー部材の裏面図、図2は図1のA−A断面図、図3は図1のB−B断面図、図4は同実施例のアウター部材とインナー部材の連結状態において図1のA−Aと同一位置の断面図、図5同実施例のアウター部材とインナー部材の連結状態において図1のB−Bと同一位置の断面図、図6は同実施例のサイドマッドガードの車両への取付状態において図1のA−Aと同一位置の断面図、図7は同実施例のサイドマッドガードの車両への取付状態において図1のB−Bと同一位置の断面図である。
【0012】
図1〜図7に示す車両用サイドマッドガード10は、図8に示した車両用サイドマッドガード50と同様に車両側部のドア下の前輪と後輪間の車体パネルに装着されるものであり、アウター部材11とインナー部材31とで構成される。
【0013】
前記アウター部材11は、射出成形によって成形されたものであって、意匠部12と前記意匠部12の上部から意匠部12の裏側下方へ形成されたアウター側取付部18とよりなる。
【0014】
前記意匠部12は、車両パネルの外面側に配置される部分であり、外面13が意匠面を構成する。前記意匠部12は下部に連結用係合部14を有する。前記連結用係合部14は、前記アウター部材11の長さ方向に沿って所定間隔で形成されている。本実施例の連結用係合部14は係合爪で構成されている。前記意匠部の外面(意匠面)13は、必要に応じ、車体の色に合わせて塗装されている。
【0015】
前記アウター側取付部18は、ヒンジ部(インテグラルヒンジ部)19を介して前記意匠部12と一体に形成されている。前記アウター側取付部18は、上下長さが前記意匠部12の下端よりも短くされ、本実施例では前記アウター側取付部18の下端が前記意匠部12の上下中間位置よりも上側の位置となるように構成されている。前記アウター側取付部18には、アウター部材11の長さ方向に沿って所定間隔でクリップ保持孔21が形成されている。前記クリップ保持孔21は、クリップ座に相当するものであり、本実施例ではクリップ保持孔21の横方向一側が、クリップ基部の挿入可能な大径とされ、他側がクリップの抜けない小径とされた長孔形状で構成されている。なお、前記クリップ保持孔21は、図示のような周囲が閉じた長孔形状に限られず、周囲の一部が切り欠かれてクリップ挿入口として開口したものでもよい。また、前記クリップ保持孔21の左右両側に突部挿入孔23が形成されている。
【0016】
インナー部材31は、射出成形によって成形されたものであって、前記アウター部材11に連結され、主に前記アウター部材11の裏面側に配置される部材である。前記インナー部材31は、下部のヒンジ部(インテグラルヒンジ部)33を介して上向きに一体形成された本体部35とインナー側取付部39とよりなる。
【0017】
前記本体部35は、車両パネルの裏側に固定される部分であり、内面には車両への取付用係止部36を有する。前記取付用係止部36は、インナー部材31の長さ方向に沿って所定間隔で形成されている。本実施例では、前記取付用係止部36は係止爪で構成されている。また、前記本体部35の内面には、所定間隔で補強用リブ37が立設されている。
【0018】
前記インナー側取付部39は、前記本体部35よりも前記アウター部材11における意匠部12の裏面寄りに配置される部分である。すなわち、前記インナー側取付部39はアウター部材11の意匠部12と前記インナー部材31の本体部35間に配置される。本実施例では前記アウター部材11に前記インナー部材31を連結した際に、前記インナー側取付部39の上端が前記アウター部材11の意匠部12の上端よりも下方に位置するように設定されている。
【0019】
前記インナー側取付部39は、下部に連結用係合部40を有する。前記インナー側取付部39の連結用係合部40は、前記アウター部材11の連結用係合部14と係合するものであり、本実施例では前記アウター部材11の連結用係合部14を構成する係合爪が挿入係合する係合孔で構成されている。前記インナー側取付部39の連結用係合部40は、前記アウター部材11の連結用係合部14と位置を合わせて、前記インナー側取付部39の長さ方向に所定間隔で形成されている。前記インナー側取付部39の上部は、前記アウター側取付部18との重ね合わせ部41となっている。前記重ね合わせ部41には前記アウター部材11のクリップ保持孔21と位置を合わせてクリップ保持孔42を有する。前記インナー側取付部39のクリップ保持孔42は、前記アウター部材11のクリップ保持孔21と形状を一致させて形成されている。また、前記インナー側取付部39には、前記クリップ保持孔42の左右両側に突部43が形成されている。前記突部43は、前記インナー側取付部39を前記アウター側取付部18に重ね合わせた際に、前記アウター側取付部18の突部挿入孔23に挿入されるものであり、前記突部挿入孔23に位置を合わせて前記インナー側取付部39の長さ方向に沿って所定間隔で形成されている。前記突部43を前記アウター側取付部18の突部挿入孔23に挿入することにより、前記インナー側取付部39と前記アウター側取付部18の位置決めを正しく行うことができ、前記インナー部材側のクリップ保持孔42とアウター部材のクリップ保持孔21の位置合わせが容易、正確に行うことができる。前記突部43は、前記突部挿入孔23に挿入可能な大きさとされると共に、前記突部挿入孔23に挿入された際に突部挿入孔23から先端が突出する高さとされている。
【0020】
前記アウター部材11と前記インナー部材31は、図4に示すように、前記アウター部材11の連結用係合部(係合爪)14を前記インナー部材31の連結用係合部(係合孔)40に挿入して係合させることにより下部で連結され、車両用サイドマッドガード10とされる。その際、前記インナー部材31のインナー側取付部39は、前記アウター部材11における意匠部12の裏面側とされ、前記アウター側取付部18と前記意匠部12の裏面間に配置される。また、本実施例では、図5のように、前記アウター側取付部18とインナー側取付部39を重ね合わせ、前記インナー側取付部39の突部43を前記アウター側取付部18の突部挿入孔23に挿入し、前記突部43をウェルダーによって突部挿入孔23に溶着して前記アウター側取付部18とインナー側取付部39が固着されている。
【0021】
前記アウター部材11と前記インナー部材31が連結された車両用サイドマッドガード10を車体パネルに取り付けるには、図6に示すように、まず、前記アウター側取付部18と前記インナー側取付部39の重ね合わせにより位置が一致した前記アウター部材11のクリップ保持孔21と前記インナー部材31のクリップ保持孔42にクリップKの基部を挿入保持する。次に、前記車体パネル61の下端を前記インナー部材31の本体部35と前記インナー側取付部39及びアウター側取付部18間に挿入し、前記インナー側取付部39及びアウター側取付部18に保持されているクリップKを車体パネル61の外面側に形成されている係合孔66に挿入すると共に、前記インナー部材31の本体部35に形成されている取付用係止部(係止爪)36を前記車体パネル61の裏側に形成されている係止孔63に挿入係止することにより、前記車両用サイドマッドガード10をドア下に取り付けることができる。
【0022】
なお、前記アウター部材11のクリップ保持孔21と前記インナー部材31のクリップ保持孔42に保持したクリップKを車体パネルの係合孔66に挿入係止することにより、前記インナー側取付部39と前記アウター側取付部18を互いに固着できるため、前記突部43の溶着は必ずしも必要ではないが、本実施例のように、前記突部43を前記突部挿入孔23に溶着すれば、前記インナー側取付部39と前記アウター側取付部18を強固に固着することができる。
【0023】
上記の構成からなる本発明の車両用サイドマッドガードは、意匠部の裏面にクリップ座が存在しないため、クリップ座の存在に起因する意匠面のヒケおよび波打ちが無く、美観が良好となる。さらに、本発明の車両用サイドマッドガードは、アウター部材とインナー部材の二部材からなるため、アウター部材とインナー部材を連結する前にアウター部材の外面に塗装を施すことができ、塗装時のマスキングがインナー部材に対して不要になると共に意匠面における塗装の境界ライン(見切りライン)を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例に係る車両用サイドマッドガードにおけるアウター部材とインナー部材の裏面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】同実施例のアウター部材とインナー部材の連結状態において図1のA−Aと同一位置の断面図である。
【図5】同実施例のアウター部材とインナー部材の連結状態において図1のB−Bと同一位置の断面図である。
【図6】同実施例の車両用サイドマッドガードの車両への取付状態において図1のA−Aと同一位置の断面図である。
【図7】同実施例の車両用サイドマッドガードの車両への取付状態において図1のB−Bと同一位置の断面図である。
【図8】従来の車両用サイドマッドガードが装着された車両の側面図である。
【図9】従来の車両用サイドマッドガードの斜視図である。
【図10】従来の車両用サイドマッドガードの裏面図である。
【図11】図10のC−C断面図である。
【図12】従来の車両用サイドマッドガードの取付状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 車両用サイドマッドガード
11 アウター部材
12 意匠部
18 アウター側取付部
21 アウター部材のクリップ保持孔
23 突部挿入孔
31 インナー部材
33 ヒンジ部
35 本体部
39 インナー側取付部
40 連結用係合部
42 インナー部材のクリップ保持孔
43 突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウター部材と前記アウター部材に連結されるインナー部材とよりなり、
前記アウター部材は、下部に連結用係合部を有する意匠部と前記意匠部の上部から前記意匠部の裏側下方へ形成されたアウター側取付部とからなると共に、前記アウター側取付部にはクリップ保持孔を有し、
前記インナー部材は、下部のヒンジ部を介して一体形成された本体部とインナー側取付部とよりなり、
前記本体部には車両への取付用係止部を有し、
前記インナー側取付部には下部に連結用係合部を有し、上部に前記アウター側取付部との重ね合わせ部を有すると共に前記重ね合わせ部に前記アウター部材のクリップ保持孔と位置を合わせてクリップ保持孔を有し、
前記アウター部材の連結用係合部と前記インナー部材の連結用係合部が係合して前記アウター部材と前記インナー部材が連結されていることを特徴とする車両用サイドマッドガード。
【請求項2】
前記アウター側取付部と前記インナー側取付部の何れか一方には突部を有し、他方には突部挿入孔を有し、
前記突部が前記突部挿入孔に挿入されて前記突部挿入孔に溶着されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用サイドマッドガード。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate