説明

車両用シートの収納構造

【課題】車室内後部に設けられた荷室の上下方向のスペースを縮小することなく、リヤシートを折り畳んで収納することができる車両用シートの収納構造を提供する。
【解決手段】第1シート3におけるシートバック11を折り畳み前側脚部13を中心にして前側に倒立させ、前記第2シート5におけるシートバック35を折り畳んで倒立させることにより、第2シート5のシートクッション31の裏面31aを第1シート3のシートクッション7の裏面7aに近接して対面させると共に、前記第2シート5を第1シート3の前側脚部13の上方に配置させるように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車の室内に設けられたリヤシートを折り畳んで収納することにより、車室内の後部の荷室スペースを大きくする構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載された車両用シートでは、リヤシートを前後に2列配置すると共に、床面に下方に凹んだ凹部を形成している。そして、リヤシートのうち前側シートを折り畳んで倒立させたのち、後側シートを折り畳んで略水平状にした状態で前記凹部内に収納する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−118451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載の構造では、床面に凹部を形成して該凹部内に後側シートを収納するため、荷室の上下方向のスペースが小さくなるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、車室内後部に設けられた荷室の上下方向のスペースを縮小することなく、リヤシートを折り畳んで収納することができる車両用シートの収納構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用シートの収納構造は、車両前後方向に沿って複数のシートを配置し、これら複数のシートのうち、前後に隣接する一対の第1シートおよび第2シートを倒立させた状態で収納する車両用シートの収納構造である。前記第1シートは、シートクッションとシートバックと前記シートクッションの前部から下方に延びて床面側に回動可能に支持された前側脚部とを備え、前記シートバックは折り畳み可能に構成されている。前記第2シートは、シートクッションとシートバックとを備え、前記シートバックは折り畳み可能に構成されている。前記第1シートにおけるシートバックを折り畳んで前側脚部を中心にして前側に倒立させ、前記第2シートにおけるシートバックを折り畳んで倒立させることにより、第2シートのシートクッションの裏面を第1シートのシートクッションの裏面に近接して対面させると共に、前記第2シートを第1シートの前側脚部の上方に配置させるように構成している。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両用シートの収納構造によれば、第1シートと第2シートを折り畳んだ状態で、第2シートのシートクッションを第1シートのシートクッションに近接して対面させる。このため、車室内後部に設けられた荷室の上下方向のスペースを縮小することなく、リヤシートを折り畳んで収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態による通常状態におけるリヤシートを示す斜視図である。
【図2】折り畳んで収納した状態におけるリヤシートの斜視図である。
【図3】図1の側面図である。
【図4】第1シートにおけるシートバックを折り畳んだ状態を示す側面図である。
【図5】第1シートを倒立させた状態を示す側面図である。
【図6】第2シートにおけるシートバックを折り畳んだ状態を示す側面図である。
【図7】第2シートを回動させて支持部材上に載置した状態を示す側面図である。
【図8】第2シートを載置した支持部材を前側に倒立させた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。なお、本実施形態では、リヤシート1が2つの場合について説明するが、3つ以上ある場合も本発明に含まれる。
【0011】
図1〜図3に示すように、本実施形態によるリヤシート1は、前側の第1シート3と、後側の第2シート5を有し、これらの第1シート3と第2シート5は前後に隣接している。
【0012】
第1シート3は、シートクッション7と、該シートクッション7の後端部に配設されたヒンジ9を介して前後に回動可能に支持されたシートバック11と、前記シートクッション7の前部の裏面7a(下面)から下方に延びる前側脚部13と、前記シートクッション7の後部の裏面7a(下面)から下方に延びる後側脚部15と、を備えている。前記ヒンジ9には回動レバー17が設けられ、該回動レバー17を操作することによってシートバック11を前側に回動して倒すことができる。
【0013】
また、床面19(図3参照)には、左右一対の固定ブラケット21が設けられており、該固定ブラケット21の上端が前側脚部13の下端に回動可能に支持されている。前記後側脚部15は、シートクッション7の後部の裏面7aにおける左右両側を橋渡しする正面視コ字状の部材であり、床面19のロック孔に係合可能なロック部23が左右一対に配設されている。このロック部23は、左右にスライド可能なスライドレバー25を操作することによって床面19に結合および結合解除が可能に構成されている。また、後側脚部15は前側に回動可能に構成され、折り畳んだときにはシートクッション7の裏面7aに当接される。
【0014】
第2シート5は、シートクッション31と、該シートクッション31の後端部に配設されたヒンジ33を介して前後に回動可能に支持されたシートバック35と、前記シートクッション31の後部の裏面31a(下面)から下方に延びる後側脚部37と、を備えている。前記ヒンジ33には回動レバー34が設けられている。前記後側脚部37は、シートクッション31の後部の裏面31aにおける左右両側を橋渡しする正面視コ字状の部材であり、床面19のロック孔に係合可能なロック部39が左右一対に配設されている。このロック部39は、左右方向にスライド可能なスライドレバー41によって床面19に結合および結合解除が可能に構成されている。また、後側脚部37は前側に回動可能に構成され、折り畳んだときにはシートクッション31の裏面31aに当接される。
【0015】
そして、第1シート3の前部の下方に位置する床面19には、左右一対の取付ブラケット51が固定されている。第2シート5のシートクッション31の前部における裏面(下面)31aと前記取付ブラケット51とは、側面視L字状の支持部材53を介して回動可能に支持されている。具体的には、支持部材53は、前記取付ブラケット51から後方に向けて直線状に延びる本体部55と、該本体部55の後端から屈曲して上方に延びる延設部57とから一体形成されている。前記本体部55の前端は、取付ブラケット51に回動可能に支持されている。延設部57の上端は、第2シート5のシートクッション31における前部の裏面31aに回動可能に支持されている。ここで、延設部57は、第2シート5の前側の脚部を構成している。また、支持部材53の左右の本体部55における前部同士は前側連結体59を介して連結され、左右の延設部57の下端同士は後側連結体61を介して連結されている。後側連結体61には、床面19のロック孔に係合可能なロック部63が設けられている。なお、図3に示すように、第1シート3の前側には、フロントシート65が配設されている。
【0016】
次に、リヤシート1を折り畳んで収納する手順を説明する。
【0017】
図3,4に示すように、第1シート3の回動レバー17を操作するとシートバック11が前側に折り畳まれてシートバック11の前面11aがシートクッション7の表面(上面)7bに当接される。
【0018】
次いで、図4に示すように、第1シート3のスライドレバー25を操作すると、後側脚部15のロック部23と床面19との係合が解除されるため、この状態で、第1シート3を前側脚部13を中心にして前側に回動させる。すると、図5に示すように、第1シート3がシートクッション7の裏面7aが車両後方側に配置された状態で倒立する。
【0019】
そして、図5に示すように、第1シート3の後側脚部15を下方(前側)に回動させて格納する。これと共に、第2シート5の回動レバー34を操作して、シートバック35を前側に折り畳むと図6の状態になる。
【0020】
図6に示すように、第2シート5の後側脚部37に設けられたスライドレバー41を操作すると、ロック部39と床面19との係合が解除されるため、この状態で第2シート5を前側に回動させて第2シート5を支持部材53上に載置すると図7の状態となる。
【0021】
さらに、図7に示すように、第2シート5の後側脚部37を車両後方に向けて回動させて格納する。こののち、第2シート5および支持部材53を前端を中心として前側に回動させると図8の状態となる。これによって、第1および第2シート3,5ともに収納される。
【0022】
ここで、図8に示すように、収納が終了した段階では、第1シート3の前側脚部13の上方に第2シート5が配置されている。また、第1シート3のシートクッション7の裏面7aと第2シート5のシートクッション31の裏面31aとは近接して配置されている。
【0023】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0024】
(1)前記第1シート3におけるシートバック11を折り畳み前側脚部13を中心にして前側に倒立させ、前記第2シート5におけるシートバック35を折り畳んで倒立させることにより、第2シート5のシートクッション31の裏面31aを第1シート3のシートクッション7の裏面7aに近接して対面させると共に、前記第2シート5を第1シート3の前側脚部13の上方に配置させるように構成している。
【0025】
従って、第1シート3と第2シート5を収納した状態においては、第2シート5の後方側の床面19上にシート等の車両部品がないため、第2シート5の後方側を荷室として活用した場合、上下方向のスペースを大きくすることができる。
【0026】
また、第2シート5を第1シート3の前側脚部13の上方に配置させるため、折り畳んだ第2シート5と第1シート3との前後方向の間隔を極力小さくすることができる。これによって、荷室の前後方向のスペースを大きく設定することができる。即ち、前側脚部13と同じ高さに第2シート5を配置すると、前側脚部13の分だけ第2シート5を後方側に配置する必要があり、荷室における前後方向のスペースが小さくなるが本実施形態では前側脚部13が邪魔にならない。
【0027】
さらに、第2シート5のシートクッション31の裏面31aを第1シート3のシートクッション7の裏面7aに近接して対面させるため、それぞれのシートクッション7,31の表面側を汚すことがない。即ち、シートクッションの裏面は汚れやすいため、例えば、第1シート3のシートクッション7の裏面7aを第2シート5のシートクッション31の表面31bに近接させると、第2シート5のシートクッション31の表面31bが汚れる。しかし、本実施形態ではそのようなことがなくなる。
【0028】
(2)前記第2シート5におけるシートバック35を折り畳んだのち、シートクッション31の前部を中心に回動させて前記支持部材53上に載置したのち、この支持部材53の前端を中心にして前記第2シート5を載置した支持部材53を前側に倒立させるように構成している。
【0029】
このように、支持部材53を用いて第2シート5を収納することにより、効率的に第1および第2シート3,5をそれぞれ倒立させた状態で収納させることができる。
【符号の説明】
【0030】
1…リヤシート
3…第1シート
5…第2シート
7,31…シートクッション
7a,31a…裏面
11,35…シートバック
13…前側脚部
19…床面
53…支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に沿って並設された複数のシートのうち、前後に隣接する一対の第1シートおよび第2シートを倒立させた状態で収納する車両用シートの収納構造であって、
前記第1シートは、シートクッションと該シートクッションに対して回動可能に支持されたシートバックと前記シートクッションの前部から下方に延びて床面側に回動可能に支持された前側脚部とを備え、
前記第2シートは、シートクッションと該シートクッションに対して回動可能に支持されたシートバックとを備え、
前記第1シートにおけるシートバックを折り畳んで前側脚部を中心にして前側に倒立させ、前記第2シートにおけるシートバックを折り畳んで倒立させることにより、
第2シートのシートクッションの裏面を第1シートのシートクッションの裏面に近接して対面させると共に、前記第2シートを第1シートの前側脚部の上方に配置させるように構成したことを特徴とする車両用シートの収納構造。
【請求項2】
前記第2シートにおけるシートクッションの前部は、第1シート下部の床面から後方に延びて後端部が屈曲して上方に延びる側面視L字状の支持部材を介して床面側に回動可能に支持されており、
前記第2シートにおけるシートバックを折り畳んだのち、シートクッションの前部を中心に回動させて前記支持部材上に載置したのち、この支持部材の前端を中心にして前記第2シートを載置した支持部材を前側に倒立させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用シートの収納構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−240596(P2012−240596A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114469(P2011−114469)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】