説明

車両用シートの荷重検出装置

【課題】起歪体に、軸部材の圧入による内部応力が生じることを抑制することができる車両用シートの荷重検出装置を提供する。
【解決手段】歪ゲージG1、G2が貼付された起歪体20の穴21〜23に、軸部材30、40を圧入する。この軸部材30、40は、穴21〜23の一方開口側から穴21〜23に圧入される軸本体32、42と、軸本体32、42の一端側に一体的に設けられ穴21〜23に係合する頭部31、41とを備える。軸本体32、42は、起歪体20の穴21〜23より表面硬さが低く、穴21〜23により削り取られる削れ突起部32b、42bと、削れ突起部32b、42bの周方向に隣接して設けられ穴21〜23との間で相互に圧力を付与しない非圧入部32a、42aとを備える。起歪体20と軸部材32、42の間であって穴21〜23の一方開口側に設けられ、削れ突起部32b、42bの削れた部分を収容する逃がし空間が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートに着座している乗員の荷重を測定する荷重検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、中央部に検出穴を形成し、検出穴の両端に第1、第2の固定穴を形成した起歪体(センサ基板)が記載されている。この起歪体の検出穴には、軸状の検出部材が圧入され、外力が作用する。一方、起歪体の第1、第2の固定穴には、軸状の第1、第2の固定部材が圧入され、反力が作用する。そして、起歪体の検出穴と第1、第2の固定穴との各間には、第1〜第4の歪ゲージが設けられている。これらの歪ゲージは、回路パターンで接続してブリッジ回路を構成し、該ブリッジ回路からの出力に基づいて検出部材が受けた外力を測定している。
【特許文献1】特開2001−279936号公報(図2、図9、請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の構成では、起歪体の各穴(「検出穴」または「固定穴」)に、軸部材(「検出部材」または「固定部材」)を圧入している。起歪体の穴と軸部材とは、それぞれ全周において圧入されている。そのため、起歪体のそれぞれの穴の内周面は全周に亘って軸部材から押圧力を受ける。このため、起歪体には、軸部材の圧入による内部応力が生じる。この内部応力は、起歪体に貼付された歪ゲージの検出精度に影響を及ぼす。当然に、歪ゲージの検出精度は、乗員の着座の検出精度に影響を及ぼす。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、起歪体に、軸部材の圧入による内部応力が生じることを抑制することができる車両用シートの荷重検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、
車両のフロアにシートを固定するためのフロア側固定部材とシート側固定部材との間に介在され、前記シートに着座している乗員の荷重を測定する車両用シートの荷重検出装置において、
前記フロア側固定部材および前記シート側固定部材の少なくとも一方に固定される軸部材と、
穴を備え、前記穴に前記軸部材が圧入されることにより前記軸部材に固定される起歪体と、
前記起歪体に貼付される歪ゲージと、
を備え、
前記軸部材は、前記穴の一方開口側から前記穴に圧入される軸本体と、前記軸本体の一端側に一体的に設けられ前記穴に係合する頭部と、を備え、
前記軸本体は、前記起歪体の前記穴の表面硬さより表面硬さが低く形成され前記軸本体を前記穴に圧入する際に前記穴により削り取られる削れ突起部と、前記削れ突起部に対して前記軸本体の周方向に隣接して設けられ前記軸本体を前記穴に圧入する際に前記穴との間で相互に圧力を付与しない非圧入部と、を備え、
前記起歪体と前記軸部材の間であって前記穴の一方開口側に設けられ、前記削れ突起部の削れた部分を収容する逃がし空間が形成されることである。
【0006】
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1において、
前記逃がし空間は、前記穴の一方開口側の全周に亘って形成されることである。
請求項3に係る発明の特徴は、請求項1または2において、
前記非圧入部は、前記軸本体が前記穴に圧入された後において前記穴の内周面との間に隙間を形成して配置されることである。
【0007】
請求項4に係る発明の特徴は、請求項3において、
前記非圧入部と前記穴との間に形成される空間体積は、前記削れ突起部の削り取られた部分の体積より小さく設定されることである。
【0008】
請求項5に係る発明の特徴は、請求項1または2において、
前記非圧入部は、前記軸本体が前記穴に圧入された後において前記穴の内周面に当接して配置されることである。
【0009】
請求項6に係る発明の特徴は、請求項1〜5の何れか一項において、
前記穴は、軸直交方向の断面形状を円形とする穴であり、
前記削れ突起部は、前記軸本体の周方向に複数形成され、
一の前記削れ突起部は、他の前記削れ突起部に対して前記軸本体の軸対称の位置に設けられることである。
【0010】
請求項7に係る発明の特徴は、請求項6において、
前記穴の一方開口側には、開口方向に向かって拡径するテーパ部が形成され、
前記逃がし空間は、前記テーパ部を壁面の一部とすることである。
請求項8に係る発明の特徴は、請求項7において、
前記テーパ部の大径側の内径は、前記削れ突起部の外接円の直径より大きく設定されていることである。
請求項9に係る発明の特徴は、請求項1〜8の何れか一項において、
前記削れ突起部は、前記軸本体の軸方向一端側から軸方向他端側に向かって延びるように形成されることである。
【0011】
請求項10に係る発明の特徴は、請求項1〜9の何れか一項において、
前記軸部材は、前記フロア側固定部材に固定される第一の軸部材と、前記シート側固定部材に固定される第二の軸部材と、を備え、
前記起歪体に形成される前記穴は、第一の穴と第二の穴とを含み、
前記第一の穴に前記第一の軸部材が圧入されることにより前記起歪体が前記第一の軸部材に固定され、
前記第二の穴に前記第二の軸部材が圧入されることにより前記起歪体が前記第二の軸部材に固定されることである。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、削れ突起部の表面硬さが、起歪体の穴の表面硬さより低い。従って、軸本体が起歪体の穴に圧入される際に、削れ突起部が削り取られるのに対して、起歪体には軸本体から何ら押圧力が作用しない。従って、軸本体が起歪体の穴に圧入される際に、起歪体に、軸部材の圧入による内部応力が生じることを抑制できる。
【0013】
さらに、削れ突起部の削れた部分は、逃がし空間に収容されるため、削れ突起部の削れた部分が削れ突起部と起歪体の穴との間に噛み込むことを抑制できる。つまり、削れ突起部の削れた部分が起歪体に内部応力を生じさせる原因とならない。これらの結果、歪ゲージによる歪検出精度が高くなる。つまり、荷重検出装置による乗員の着座による荷重検出精度が向上する。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、逃がし空間が穴の一方開口側の全周に形成されるので、削れ突起部の削れた部分を確実に収容できる。これにより、起歪体に内部応力が生じることを確実に抑制できる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、逃がし空間に加えて、非圧入部と穴との間の空間が、削れ突起部の削れた部分を収容する空間として機能する。これにより、より確実に、削れ突起部の削れた部分が、起歪体に内部応力を生じさせる原因とならない。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、非圧入部と起歪体の穴との間に形成される空間には、削れ突起部の削れた部分の全てを収容する必要がないため、当該構成を採用できる。そして、非圧入部と穴との間に形成される隙間をそれほど大きくする必要がないということになる。つまり、軸本体の曲げ剛性を高めることができる。その結果、軸本体による起歪体の支持剛性を高めることができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、起歪体の穴と軸本体の外周面との接触面積がより多くなる。従って、軸本体による起歪体の支持剛性を高めることができる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、軸対称の位置にある一対の削れ突起部の先端間距離が、削れ突起部の外接円直径となる。つまり、当該一対の削れ突起部により、削れ突起部の外接円直径を確実かつ容易に計測できる。ここで、起歪体の穴の軸直交方向の断面形状は、円形としている。つまり、一対の削れ突起部の先端間距離が、起歪体の穴の内径より大きくなるように設定すればよい。従って、本発明によれば、削れ突起部の削り取り量を高精度に把握することができる。
【0019】
請求項7に係る発明によれば、逃がし空間として、起歪体の穴のテーパ部により形成することで、逃がし空間の成形が容易となり、低コスト化を図ることができる。このテーパ部は、穴の打ち抜き加工を行う際に同時に成形することができる。つまり、別途加工工程を必要とすることなく、テーパ部を成形できる。特に、特許文献1の図10に示すようなワッシャに溝を形成する場合に比べると、大幅に低コスト化を図ることができる。
【0020】
請求項8に係る発明によれば、軸本体を起歪体の穴に圧入する初期に、起歪体の穴に対する軸本体の位置決めが容易となる。さらに、複数の削れ突起部を均等に削り取ることができる。従って、起歪体の穴に対して、軸本体の芯出しが可能となる。
また、軸本体の軸対称の位置に設けられた一対の削れ突起部を、複数備えることで、起歪体の穴に対して、軸本体の芯出しが可能となる。この場合、少なくとも削れ突起部が4つ存在することになる。
【0021】
請求項9に係る発明によれば、軸本体と起歪体の穴との関係において、軸方向の所定の長さに亘って連続的に圧入される。従って、起歪体に対する軸本体の位置決めが確実にできる。
請求項10に係る発明によれば、起歪体の第一の穴と第二の穴の双方付近において、第一、第二の軸部材の圧入による内部応力が生じることを抑制できる。従って、歪ゲージによる歪検出精度がより高くなる。つまり、荷重検出装置による乗員の着座による荷重検出精度がより向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の車両用シートの荷重検出装置を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
<第一実施形態>
(車両用シート装置の概略構成)
第一実施形態の荷重検出装置10を搭載する車両用シート装置の概略構成について、図1および図2を参照して説明する。図1は、車両用シート装置の斜視図である。図2は、車両用シート装置のフレーム部分の部品分解状態の斜視図である。
【0023】
図1および図2に示すように、車両用シート装置は、主として、一対のシートスライド装置13と、シートフレーム本体17と、一対のシートフレーム座18と、4個の荷重検出装置10とから構成される。
【0024】
一対のシートスライド装置13は、車両用シート11を車両のフロア12に対して位置調整し固定する装置である。この一対のシートスライド装置13は、それぞれ、ロアレール14と、本発明のフロア側固定部材としてのアッパレール16等により構成されている。一対のロアレール14は、車両の前後方向に延在するように、且つ、相互に平行となるように、車両のフロア12に固定されている。一対のロアレール14は、車両シート11の左右幅に相当する幅だけ離間している。アッパレール16は、ロアレール14に対して車両前後方向に移動可能に支持されている。このアッパレール16は、ロアレール14に対して位置調整された位置で、ロック機構15によってロアレール14にロックされる。各アッパレール16の上面に形成された取付面16aのうち前後両端には、荷重検出装置10を固定するための一対の固定軸19が、車両前後方向に所定距離だけ隔てて垂直方向に突設固定されている。
【0025】
シートフレーム本体17は、乗員が着座する車両用シート11の座面部を支持する。シートフレーム本体17の車両後端側には、車両用シート11のリクライニング機構が設けられている。各シートフレーム座18は、断面コの字型形状のレール状からなる。そして、シートフレーム座18は、コの字の開口側が車両上方を向くように、且つ、車両前後方向に延在するように、シートフレーム本体17の下面のうち車両左右端に固定されている。そして、シートフレーム座18の下面に形成された取付面18aのうち前後両端には、後述する連結軸40を貫通する連結穴18b(図6に示す)が形成されている。ここで、シートフレーム座18は、本発明のシート側固定部材に相当する。
【0026】
各荷重検出装置10は、車両用シート11に着座している乗員の荷重を測定する装置である。そして、4個の荷重検出装置10は、アッパレール16の取付面16aとシートフレーム座18の取付面18aとの間に介在され、アッパレール16に対してシートフレーム座18を支持している。具体的には、2個の荷重検出装置10は、各アッパレール16の前端と各シートフレーム座18の前端とに取り付けられ、他の2個の荷重検出装置10は、各アッパレール16の後端と各シートフレーム座18の後端とに取り付けられている。つまり、4個の荷重検出装置10は、シートフレーム本体17の下面の前後および左右の4隅がアッパレール16に支持されるように設けられている。
【0027】
より詳細には、各荷重検出装置10は、各アッパレール16に突設固定された一対の固定軸19に固定されている。一方、荷重検出装置10が備える連結軸40が、シートフレーム座18に形成された連結穴18bに挿通固定されている。各荷重検出装置10は、車両用シート11に着座している乗員の荷重を測定する装置である。
【0028】
(荷重検出装置10の全体形状とその固定状態)
次に、荷重検出装置10の全体形状について図3を参照し、荷重検出装置10がアッパレール16に固定される状態について、図4を参照して説明する。図3は、荷重検出装置10の斜視図である。図4は、車両用シート装置の平面図であって、アッパレール16と各荷重検出装置10を示す図である。
【0029】
図3に示すように、荷重検出装置10は、全体として見た場合に、ほぼ平面状に形成され、長手矩形板状のうち一角を大きく傾斜するように面取りが施され(図3の手前側)、且つ、当該面取り部分に対して長手反対端から突出する突出部分(図3の右奥側)を有する形状をなしている。そして、図3に示す荷重検出装置10は、図4において、車両右側のアッパレール16の前端と車両左側にアッパレール16の後端に配置されている。一方、車両右側のアッパレール16の後端と車両左側のアッパレール16の前端に配置される荷重検出装置10は、図3に示す荷重検出装置10を図3の手前奥を対称にしたものが配置されている。
【0030】
つまり、何れの荷重検出装置10も、面取りおよび突出部分を除く部位は、図4に示すように、アッパレール16の取付面16aとシートフレーム座18の取付面18aとの間に挟まれている。そして、荷重検出装置10のうち大きな傾斜面取り部分および突出部分は、一対のアッパレール16が対向する側に張り出している。特に、車両後端に配置される荷重検出装置10において、面取り部分が車両後方に位置し、突出部分が車両前方に位置する。一方、車両前端に配置される荷重検出装置10において、面取り部分が車両前方に位置し、突出部分が車両後方に位置する。
【0031】
例えば、当該車両用シート11が前席の場合には、後席に着座した乗員の脚部が前席の車両用シート11の下部領域(図4における領域A)に侵入することがある。このような場合に、荷重検出装置10が上記のような形状をなしているため、乗員の脚部が、荷重検出装置10のうちアッパレール16から内側に張り出している部分に引っ掛かるおそれがある。しかし、領域Aの最も近い荷重検出装置10のうち、アッパレール16から内側に張り出している部分における車両後端には、大きく傾斜した面取りが施されている。従って、後席の乗員の脚部が領域Aに侵入したとしても、車両後端に配置される荷重検出装置10に引っ掛かることを抑制している。
【0032】
また、詳細は後述するが、荷重検出装置10のうち前記突出部分とは、アンプケース80のコネクタ部分である。つまり、車両後端に配置される荷重検出装置10におけるアンプケース80のコネクタ部分は、後席の乗員側とは反対側に張り出している。従って、後席の乗員の脚部により、アンプケース80のコネクタ部分が直接接触することを回避することができる。
【0033】
(荷重検出装置10の詳細構成)
次に、荷重検出装置10の詳細構成について、図5および図6を参照して説明する。図5は、荷重検出装置10の部品分解状態の斜視図である。図6は、荷重検出装置10をアッパレール16およびシートフレーム座18に固定した状態の断面図である。
【0034】
図5および図6に示すように、荷重検出装置10は、起歪体20と、歪ゲージG1、G2と、本発明の第一の軸部材としての第一、第二のロアブッシュ30、30と、本発明の第二の軸部材としての連結軸40と、リング部材50と、ブラケット部材60と、アッパブッシュ70と、アンプケース80と、FPC部材90とから構成される。
【0035】
起歪体20は、長手矩形の板状に形成され、例えば、焼入れ処理を施されたステンレス鋼からなる。従って、起歪体20は、非常に曲げ剛性が高く、表面硬さが高くなる。この起歪体20の長手方向の両端には、円形の貫通する第一、第二の固定穴21、22が形成されている。この第一、第二の固定穴21、22の離間距離は、各アッパレール16の前後両端のそれぞれに突設固定された一対の固定軸19の離間距離に等しくされている。さらに、起歪体20のうち両端の固定穴21、22の中央に、円形の貫通する中央穴23が形成されている。
【0036】
第一の歪ゲージG1は、起歪体20の下面のうち第一の固定穴21と中央穴23との間に貼付され、第二の歪ゲージG2は、起歪体20の下面のうち第二の固定穴22と中央穴23との間に貼付されている。第一、第二の歪ゲージG1、G2は、いずれも、ハーフブリッジを構成する2素子を有している。そして、第一、第二の歪ゲージG1、G2は、後述するアンプケース80内の配線回路およびFPC部材90に形成された配線などにより、フルブリッジを構成している。つまり、第一、第二の歪ゲージG1、G2は、起歪体20の撓みを測定することができる。この起歪体20の撓みは、車両用シート11に着座する乗員の荷重に応じて変化する。従って、第一、第二の歪ゲージG1、G2は、車両用シート11に着座する乗員の荷重を測定することができる。
【0037】
第一、第二のロアブッシュ30は、起歪体20の下面とアッパレール16の取付面16aとの間に隙間を形成するように、起歪体20とアッパレール16との間に介在している。第一、第二のロアブッシュ30は、起歪体20より表面硬さが低くなるように、例えば炭素鋼などにより形成されている。第一、第二のロアブッシュ30は、本発明の頭部としてのベース部31と、本発明の軸本体としての第一の圧入軸部32と、第二の圧入軸部33とから構成される。
【0038】
ベース部31は、所定厚さの円筒状に形成されている。このベース部31の外径は、起歪体20の第一、第二の固定穴21、22の内径より大きくされている。つまり、ベース部31は、起歪体20の各固定穴21、22に挿通されない大きさとしている。ベース部31は、起歪体20とアッパレール16との間に挟まれる部位となる。従って、ベース部31の所定厚さは、起歪体20とアッパレール16との離間距離に相当する厚さとされている。
【0039】
第一の圧入軸部32は、ベース部31の上面から突出するようにベース部31に一体形成され、所定厚さのほぼ円筒状に形成されている。第一の圧入軸部32は、ベース部31に同軸上に形成されている。この第一の圧入軸部32の外周面には、セレーションが形成されており、第一の圧入軸部32の外接円直径は、ベース部31の外径よりも小さく形成されている。第一の圧入軸部32の所定厚さは、起歪体20の板厚とほぼ同程度、もしくは、起歪体20の板厚よりも僅かに薄い厚さとしている。そして、この第一の圧入軸部32は、起歪体20の第一、第二の固定穴21、22に圧入される。詳細は、後述する。
【0040】
第二の圧入軸部33は、第一の圧入軸部32の上面から突出するように第一の圧入軸部32に一体形成され、所定厚さのほぼ円筒状に形成されている。第二の圧入軸部33は、ベース部31および第一の圧入軸部32に同軸上に形成されている。この第二の圧入軸部33の外周面には、セレーションが形成されており、第二の圧入軸部33の外接円直径は、第一の圧入軸部32の外接円直径よりも小さく形成されている。第二の圧入軸部33の所定厚さは、後述するブラケット部材60の板厚とほぼ同程度の厚さとしている。そして、この第二の圧入軸部33は、ブラケット部材60の第一の取付穴62aおよびアッパブッシュ70に圧入される。
【0041】
第一、第二のロアブッシュ30には、中心に貫通する挿通穴34が形成されている。この挿通穴34は、アッパレール16に突設固定された固定軸19を挿通する。従って、第一、第二のロアブッシュ30は、固定軸19を挿通されて、起歪体20に固定される。
【0042】
連結軸40は、起歪体20とシートフレーム座18とを連結する部材である。この連結軸40は、起歪体20より表面硬さが低くなるように、例えば炭素鋼などにより形成されている。連結軸40は、本発明の頭部としてのフランジ41と、本発明の軸本体としての第一の圧入軸部42と、第二の圧入軸部43と、固定ねじ部44とから構成される。
【0043】
フランジ41は、所定厚さの円筒状に形成されている。フランジ41の外径は、起歪体20の中央穴23の内径より大きくされている。つまり、フランジ41は、起歪体20の中央穴23に挿通されない大きさとされている。このフランジ41の所定厚さは、第一、第二のロアブッシュ30のベース部31の厚さよりも薄く形成されている。そして、フランジ41は、起歪体20とアッパレール16との間であって、起歪体20の下面に当接(係合)する位置に位置する。つまり、フランジ41は、アッパレール16の取付面18との間に隙間を有する状態となる。
【0044】
第一の圧入軸部42は、フランジ41の上面から突出するようにフランジ41に一体形成され、所定厚さのほぼ円柱状に形成されている。第一の圧入軸部42は、フランジ41に同軸上に形成されている。この第一の圧入軸部42の外周面には、セレーションが形成されており、第一の圧入軸部42の外接円直径は、フランジ41の外径よりも小さく形成されている。第一の圧入軸部42の所定厚さは、起歪体20の板厚とほぼ同程度、もしくは、起歪体20の板厚よりも僅かに薄い厚さとしている。そして、この第一の圧入軸部42は、起歪体20の中央穴23に圧入される。詳細は、後述する。
【0045】
第二の圧入軸部43は、第一の圧入軸部42の上面から突出するように第一の圧入軸部42に一体形成され、所定厚さのほぼ円柱状に形成されている。第二の圧入軸部43は、フランジ41および第一の圧入軸部42に同軸上に形成されている。この第二の圧入軸部43の外周面には、セレーションが形成されており、第二の圧入軸部43の外接円直径は、第一の圧入軸部42の外接円直径よりも小さく形成されている。第二の圧入軸部43の所定厚さは、後述するリング部材50の板厚とほぼ同程度の厚さとしている。そして、この第二の圧入軸部43は、リング部材50の貫通穴51に圧入される。
【0046】
固定ねじ部44は、第二の圧入軸部43の上面から突出するように第二の圧入軸部43に一体形成されている。固定ねじ部44は、第二の圧入軸部43に同軸上に形成されている。固定ねじ部44の外径は、第二の圧入軸部43の外接円直径より小さく、且つ、シートフレーム座18の連結穴18bより小さく形成されている。そして、固定ねじ部44は、後述するリング部材50の貫通穴51およびシートフレーム座18の連結穴18bに挿通され、ナット18cにより締結される。
【0047】
リング部材50は、所定厚さの円筒状に形成されている。このリング部材50の貫通穴51の内径は、連結軸40の第二の圧入軸部43の外接円直径より僅かに小さくされている。リング部材50は、起歪体20の上面であって起歪体20の中央穴23と同軸上に配置されている。この状態で、リング部材50の貫通穴51には、連結軸40の固定ねじ部44を挿通した後に、連結軸40の第二の圧入軸部43が下方側から圧入される。ここで、リング部材50は、連結軸40よりも表面硬さが低くなるように形成されている。従って、リング部材50の貫通穴51に連結軸40の第二の圧入軸部43が圧入される際に、第二の圧入軸部43のセレーションの突起部分が押し潰されて変形するか、もしくは、削れる状態となる。これにより、リング部材50に連結軸40の第二の圧入軸部43が圧入により固定される。
【0048】
さらに、リング部材50は、シートフレーム座18の下面であって、シートフレーム座18の連結穴18bに同軸上に配置されている。つまり、リング部材50は、起歪体20の上面とシートフレーム座18の取付面18aとの間に隙間を形成するように、起歪体20とシートフレーム座18との間に挟まれている。このように、連結軸40の固定ねじ部44とナット18cを螺合により締結することで、リング部材50を介して、起歪体20とシートフレーム座18とが所定距離を隔てた状態で固定される。
【0049】
ブラケット部材60は、鋼板により平板状に形成されている。ブラケット部材60は、起歪体20にアンプケース80を固定するための部材である。ブラケット部材60は、アンプケース取付部61と、第一、第二の係止部62、63とから構成される。アンプケース取付部61は、後述するアンプケース80を取り付ける部位である。このアンプケース取付部61は、細長の直角三角形状に近似した形状をなしている。つまり、アンプケース取付部61の一角は、大きく傾斜した面取りが施されている。このアンプケース取付部61が、図4にて上述したように、アッパレール16から内側に張り出した部分となる。
【0050】
第一の係止部62は、アンプケース取付部61のうち直角三角形状の先端角側で面取りが施されていない面(図5の左奥面)から突出するように、アンプケース取付部61に一体的に設けられている。この第一の係止部62には、円形の第一の取付穴62aが形成されている。第一の係止部62は、起歪体20の上面に、第一の取付穴62aと第一の固定穴21とが同軸上となるように配置される。そして、第一の取付穴62aには、第一のロアブッシュ30の第二の圧入軸部33が圧入される。従って、第一の取付穴62aの内径は、第一のロアブッシュ30の第二の圧入軸部33の外接円直径より小さくされている。さらに、第一のロアブッシュ30を下側から固定軸19が挿通して、ナット18dが第一の係止部62の上面に当接した状態で固定軸19に螺合することにより、第一のロアブッシュ30、起歪体20およびブラケット部材60の第一の係止部62がアッパレール16に固定される。
【0051】
第二の係止部63は、アンプケース取付部61のうち直角三角形状の底面側で、第一の係止部62が突出形成された面と同一面(図5の右奥面)から突出するように、アンプケース取付部61に一体的に設けられている。この第二の係止部63は、第一の係止部62から所定距離隔てて設けられている。第二の係止部63には、円形の第二の取付穴63aが形成されている。第二の取付穴63aの内径は、第二のロアブッシュ30の第二の圧入軸部33の外接円直径より大きくされている。従って、第二の取付穴63aは、第二の圧入軸部33が圧入されることはない。つまり、第二の取付穴63aは、第二の圧入軸部33が挿入された状態で、第二の圧入軸部33との間に隙間が形成される。この第二の係止部63は、起歪体20の上面に、第二の取付穴63aと第二の固定穴22とがほぼ同軸上となるように配置される。
【0052】
ここで、第二の係止部63の上面には、アッパブッシュ70が配置されている。アッパブッシュ70は、リング状からなり、中空円板上の平面座部71と、平面座部の内周縁から軸方向に突出する筒状部72とからなる。平面座部71は、第二の係止部63の上面に重なるように配置され、筒状部72は、第二の係支部63の第二の取付穴63aに挿入された状態となる。筒状部72の外周面と第二の取付穴63aの内周面との間には、隙間が形成されている。筒状部72の内径は、第二のロアブッシュ30の第二の圧入軸部33の外接円直径より小さくされている。つまり、筒状部72には、第二のロアブッシュ30の第二の圧入軸部33が圧入される。
【0053】
つまり、第二のロアブッシュ30を下側から固定軸19が挿通して、ナット18dがアッパブッシュ70の上面に当接した状態で固定軸19に螺合することにより、第二のロアブッシュ30、起歪体20、ブラケット部材60の第二の係止部63、およびアッパブッシュ70がアッパレール16に固定される。
【0054】
なお、上述したように、第一の係止部62と第二の係止部63は、所定距離を隔てて配置されている。この第一の係止部62と第二の係止部63との間の領域には、リング部材50が配置されることになる。
【0055】
アンプケース80は、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)などの樹脂製であって、内部に増幅回路を構成した基板を有している。このアンプケース80は、ブラケット部材60のアンプケース取付部61に対応するように、長手矩形状のうち一角を大きく傾斜した面取り(図5の手前面)が施されている。アンプケース80において、面取部の反対側には、コネクタが突出している。このアンプケース80は、アンプケース取付部61の下面に、両者の面取部が一致するように固定される。アンプケース80内部の増幅回路は、コネクタを介して電子制御ユニットと通信を行う。
【0056】
FPC部材90は、FPC(Flexible Printed Circuits)基板からなり、コの字型状をなしている。FPC部材90のコの字型の両開口側は、歪ゲージG1、G2のぞれぞれに接続されている。また、FPC部材90のコの字型中央部分は、アンプケース80内部の増幅回路に接続されている。
【0057】
(起歪体20、ロアブッシュ30、連結軸40の詳細形状)
次に、起歪体20、ロアブッシュ30および連結軸40の詳細形状について、図7〜図9を参照して説明する。図7は、起歪体20を示す図であって、(a)は平面図、(b)はA−A断面図である。図8は、ロアブッシュ30を示す図であって、(a)はロアブッシュ30の側面図、(b)はB−B断面図、(c)はC−C断面図である。図9は、連結軸40を示す図であって、(a)は連結軸40の側面図、(b)はD−D断面図、(c)はE−E断面図である。
【0058】
上述したように、起歪体20は、長手矩形の板状に形成され、例えば、焼入れ処理を施されたステンレス鋼からなる。そして、図7に示すように、この起歪体20の第一、第二の固定穴21、22および中央穴23には、それぞれの一方開口側(図7(b)の下側)に拡開するテーパ部21a、22a、23aが形成されている。このテーパ部21a、22a、23aが形成されている一方開口側が、図6においては、下側に位置する。
【0059】
そして、第一の固定穴21の内径はΦ61であり、第一のテーパ部21aの拡開径(最大径)は、第一の固定穴21の内径Φ61より大きなΦ62である。第二の固定穴22の内径はΦ71であり、第二のテーパ部22aの拡開径(最大径)は、第二の固定穴22の内径Φ71より大きなΦ72である。中央穴23の内径はΦ51であり、中央テーパ部23aの拡開径(最大径)は、中央穴23の内径Φ51より大きなΦ52である。
【0060】
上述したように、ロアブッシュ30は、起歪体20より表面硬さが低くなるように、例えば炭素鋼などにより形成されている。このロアブッシュ30は、ベース部31(本発明の「頭部」に相当)と、第一の圧入軸部32(本発明の「軸本体」に相当)と、第二の圧入軸部33とから構成される。
【0061】
さらに詳細には、図8(a)に示すように、ベース部31の上面は、平面状に形成されている。また、図8(b)(c)に示すように、第一、第二の圧入軸部32、33は、全周に亘って、セレーションが形成されている。
【0062】
第一の圧入軸部32は、図8(b)に示すように、非圧入部としての軸心部32aと、削れ突起部としての突起部32bとからなる。軸心部32aは、外径φ32の円柱状をなしている。軸心部32aの外径φ32は、起歪体20の第一、第二の固定穴21、22の内径Φ61、Φ71よりも小さく設定されている。突起部32bは、軸心部32aの外周面全周に亘って、セレーション、すなわち、軸方向に延びる多数の突条からなる。つまり、突起部32bは、第一の圧入軸部32の軸方向一端側から軸方向他端側に向かって延びるように形成されている。さらに、突起部32bは、先端に向かって次第に細くなるように形成されている。この突起部32bの外接円直径φ31は、起歪体20の第一、第二の固定穴21、22の内径Φ61、Φ71よりも大きく設定されている。一方、突起部32bの外接円直径φ31は、第一、第二のテーパ部21a、22aの拡開径Φ62、Φ72より小さく設定されている。
【0063】
さらに、この突起部32bは、起歪体20の第一、第二の固定穴21、22の表面硬さより表面硬さが低く形成されている。従って、第一の圧入軸部32を第一、第二の固定穴21、22に圧入する際に、突起部32bの少なくとも一部は、第一、第二の固定穴21、22により削り取られる。また、軸心部32aの外周面、すなわち、突起部32bの谷部に相当する部分は、突起部32bに対して第一の圧入軸部32の周方向に隣接して設けられることになる。この軸心部32aは、第一の圧入軸部32を起歪体20の第一、第二の固定穴21、22に圧入する際に、第一、第二の固定穴21、22との間で相互に圧力を付与しない関係となる。
【0064】
上記により、突起部32bが削り取られながら第一の圧入軸部32が固定穴21、22に圧入されることで、第一の圧入軸部32には何ら押圧力が作用しない。従って、第一の圧入軸部32が起歪体20の固定穴21、22に圧入される際に、起歪体20に、第一の圧入軸部32の圧入による内部応力が生じることを抑制できる。
【0065】
さらに、突起部32bに対して第一の圧入軸部32の軸対称の位置には、他の突起部32bが形成されている。つまり、突起部32bの外接円直径は、対向して配置される一対の突起部32bの先端間距離に一致する。つまり、当該一対の突起部32bにより、突起部32bの外接円直径を確実かつ容易に計測できる。また、起歪体20の固定穴21、22の軸直交方向の断面形状は、円形としている。つまり、一対の突起部32bの先端間距離が、起歪体20の固定穴21、22の内径より大きくなるように設定すればよい。従って、突起部32bの削り取り量を高精度に把握することができる。
【0066】
そして、起歪体20の第一、第二の固定穴21、22の一方開口側にはテーパ部21a、22aが形成されており、ベース部31の上面が平面状をなしているため、テーパ部21a、22a、ベース部31の上面および第一の圧入軸部32の根元部を壁面とする逃がし空間が形成される。この逃がし空間は、突起部32bが固定穴21、22により削り取られる部分を収容する領域である。つまり、ベース部31の上面が起歪体20の下面に係合した状態で形成される逃がし空間に、突起部32bの削れた部分が収容される。特に、この逃がし空間は、固定穴21、22の一方開口側の全周に亘って形成されている。
【0067】
このように、突起部32bの削れた部分は逃がし空間に収容されるため、突起部32bの削れた部分が突起部32bと起歪体20の固定穴21、22との間に噛み込むことを抑制できる。つまり、突起部32bの削れた部分が起歪体20に内部応力を生じさせる原因とならない。これらの結果、歪ゲージG1、G2による歪検出精度が高くなる。つまり、荷重検出装置10による乗員の着座による荷重検出精度が向上する。
【0068】
この逃がし空間を形成するためのテーパ部21a、22aは、固定穴21、22の打ち抜き加工を行う際に同時に成形することができる。つまり、別途加工工程を必要とすることなく、テーパ部21a、22aを容易に成形できる。従って、低コスト化を図ることができる。
【0069】
さらに、非圧入部としての軸心部32aの外径φ32は、固定穴21、22の内径Φ61、Φ71より小さくされている。従って、第一の圧入軸部32が固定穴21、22に圧入された後において、軸心部32aと固定穴21、22の内周面との間に隙間が形成されることになる。これにより、逃がし空間に加えて、軸心部32aと固定穴21、22との間の空間が、突起部32bの削れた部分を収容する空間として機能する。これにより、より確実に、突起部32bの削れた部分が、起歪体20に内部応力を生じさせる原因とならない。
【0070】
ただし、軸心部32aと固定穴21、22の内周面との間に形成される隙間の空間体積は、突起部32aが固定穴21、22により削り取られる体積よりも小さくなるように設定されている。ここで、逃がし空間が形成されているため、軸心部32aと起歪体20の固定穴21、22との間に形成される空間には、突起部32bの削れた部分の全てを収容する必要がない。この理由により、当該構成を採用できる。つまり、当該構成では、軸心部32aと固定穴21、22との間に形成される隙間をそれほど大きくする必要がないということになる。つまり、第一の圧入軸部32の曲げ剛性を高めることができる。その結果、第一の圧入軸部32による起歪体20の支持剛性を高めることができる。
【0071】
また、テーパ部21a、22aの拡開径(大径側の内径)Φ62、Φ72は、突起部32bの外接円直径φ31より大きく設定されている。これにより、第一の圧入軸部32を起歪体20の固定穴21、22に圧入する初期において、起歪体20の固定穴21、22に対するロアブッシュ30の位置決めが容易となる。このことから、複数の突起部32bを均等に削り取ることができる。従って、起歪体20の固定穴21、22に対して、ロアブッシュ30の芯出しが可能となる。
【0072】
上述したように、突起部32bは軸方向に突条に形成されている。従って、突起部32bは、起歪体20の固定穴21、22に対して、連続的に削り取られながら圧入されていく。このことによっても、起歪体20に対するロアブッシュ30の芯出し、位置決めを確実に行うことができる。
【0073】
第二の圧入軸部33は、上述した第一の圧入軸部32を僅かに相似状に縮径した形状からなる。そして、第二の圧入軸部33とブラケット部材60の第一の取付穴62aまたはアッパブッシュ70との関係は、上述した第一の圧入軸部32と起歪体20の固定穴21、22との関係と実質的に同一である。具体的には、第二の圧入軸部33は、図8(c)に示すように、非圧入部に相当する軸心部42aと、削れ突起部に相当する突起部42bとからなる。軸心部42aの外径(谷径)φ42は、ブラケット部材60の第一の取付穴62aおよびアッパブッシュ70の内径より小さく、突起部42bの外接円直径φ41は、ブラケット部材60の第一の取付穴62aおよびアッパブッシュ70の内径より大きくされている。これによる効果は、上述した第一の圧入軸部32による効果と実質的に同一である。
【0074】
次に、連結軸40の詳細について説明する。上述したように、連結軸40は、炭素鋼などにより形成され、起歪体20に係合するフランジ41(本発明の「頭部」に相当)、起歪体20の中央穴23に圧入される第一の圧入軸部42(本発明の「軸本体」に相当)、リング部材50に圧入される第二の圧入軸部43、および、固定ねじ部44から構成される。ここで、フランジ41の上面は、図9(a)に示すように、平面状に形成されている。また、第一、第二の圧入軸部42、43は、図9(b)(c)に示すように、全周に亘って、セレーションが形成されている。
【0075】
第一の圧入軸部42は、図9(b)に示すように、非圧入部としての軸心部42aと、削れ突起部としての突起部42bとからなる。軸心部42aは、外径φ12の円柱状をなしている。軸心部42aの外径φ12は、起歪体20の中央穴23の内径Φ51よりも小さく設定されている。突起部42bは、軸心部42aの外周面全周に亘って、セレーション、すなわち、軸方向に延びる多数の突条からなる。つまり、突起部42bは、第一の圧入部42の軸方向一端側から軸方向他端側に向かって延びるように形成されている。さらに、突起部42bは、先端に向かって次第に細くなるように形成されている。この突起部42bの外接円直径φ11は、起歪体20の中央穴23の内径Φ51よりも大きく設定されている。さらに、突起部42bの外接円直径φ11は、中央テーパ部23aの拡開径Φ52より小さく設定されている。さらに、突起部32bに対して第一の圧入軸部42の軸対称の位置には、他の突起部42bが形成されている。
【0076】
さらに、この突起部42bは、起歪体20の中央穴23の表面硬さより表面硬さが低く形成されている。従って、第一の圧入軸部42を中央穴23に圧入する際に、突起部42bの少なくとも一部は、中央穴23により削り取られる。また、軸心部42aの外周面、すなわち、突起部42bの谷部は、突起部42bに対して第一の圧入軸部42の周方向に隣接して設けられることになる。そして、軸心部42aは、第一の圧入軸部42を起歪体20の中央穴23に圧入する際に、中央穴23との間で相互に圧力を付与しない関係となる。
【0077】
従って、連結軸40と起歪体20の中央穴23との関係は、上述したロアブッシュ30と起歪体20の固定穴21、22との関係と実質的に同一の関係となる。従って、連結軸40の第一の圧入軸部42を起歪体20の中央穴23に圧入する場合に、ロアブッシュ30の第一の圧入軸部32を起歪体20の固定穴21、22に圧入する場合による効果と同一の効果を奏する。
【0078】
第二の圧入軸部43は、上述した第一の圧入軸部42を僅かに相似状に縮径した形状からなる。そして、第二の圧入軸部43とリング部材50の貫通穴51との関係は、上述した第一の圧入軸部42と起歪体20の中央穴23との関係と実質的に同一である。具体的には、第二の圧入軸部43は、図9(c)に示すように、非圧入部に相当する軸心部43aと、削れ突起部に相当する突起部43bとからなる。軸心部43aの外径(谷径)φ22は、リング部材50の貫通穴51の内径より小さく、突起部42bの外接円直径φ21は、リング部材50の貫通穴51の内径より大きくされている。これによる効果は、上述した第一の圧入軸部42による効果と実質的に同一である。
【0079】
以上より、起歪体20に圧入される全ての部材、すなわち、第一、第二のロアブッシュ30および連結軸40が起歪体20に圧入されたとしても、起歪体20に内部応力を生じることを確実に抑制できる。つまり、歪ゲージG1、G2による歪検出精度がより高くなり、その結果、荷重検出装置10による乗員の着座による荷重検出精度がより向上する。
【0080】
<第一実施形態の変形態様>
上記実施形態においては、ロアブッシュ30の第一の圧入軸部32の軸心部32aの外径φ32が、起歪体20の固定穴21、22の内径Φ61、Φ71より小さくした。これに限られず、両者の径を同一にすることもできる。ただし、軸心部32aが固定穴21、22に対して圧入されないようにする必要がある。この場合、軸心部32aの外周面は、起歪体20の固定穴21、22の内周面に押圧せずに接触する状態となる。つまり、起歪体20の固定穴21、22と第一の圧入軸部32との接触面積がより多くなる。従って、第一の圧入軸部32による起歪体20の支持剛性を高めることができる。ただし、この場合には、軸心部32aの外周面と起歪体20の固定穴21、22の内周面との間に隙間が形成されないため、当該部位が突起部32bの削れた部分を収容する空間としての機能を発揮しない。
【0081】
また、連結軸42についても、上記ロアブッシュ30の変形態様と同様に変形することができる。この場合、ロアブッシュ30の場合と同様の効果を奏する。
【0082】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態について、図10を参照して説明する。本実施形態では、第一実施形態に対して、連結軸40の第一の圧入軸部142のみ相違するため、以下に、当該相違点のみについて説明する。図10は、連結軸40の第一の圧入軸部142の軸直交断面図、すなわち、第一実施形態における図9(b)に対応する図である。
【0083】
図10に示すように、連結軸40の第一の圧入軸部142は、円柱状の軸心部142aと、軸心部142aの外周面から径方向外方に突出形成された4個の突起部142bとを備える。4個の突起部142bは、軸心部142aの周方向において均等に(90°間隔に)設けられている。さらに、個々の突起部142bは、第一実施形態の突起部42に比べて幅太形状とされている。この連結軸40の第一の圧入軸部142は、第一実施形態の第一の圧入軸部42に対して、形状が異なるのみで、材質などの他の要件は同一である。第一の圧入軸部142の突起部142bを適用した場合にも、第一実施形態と同様の効果を奏する。なお、突起部142を周方向に均等に配置することで、芯出し効果を確実に発揮できる。
【0084】
なお、ここでは、第二実施形態として連結軸40の第一の圧入軸部142について説明した。この連結軸40の第一の圧入軸部142の特徴部分を、ロアブッシュ30の第一の圧入軸部32に同様に適用することができる。この場合、連結軸40の第一の圧入軸部142による効果と同様の効果を奏する。
【0085】
<第三実施形態>
次に、第三実施形態について、図11を参照して説明する。本実施形態では、第一実施形態に対して、連結軸40の第一の圧入軸部242のみ相違するため、以下に、当該相違点のみについて説明する。図11は、連結軸40の第一の圧入軸部242の軸直交断面図、すなわち、第一実施形態における図9(b)に対応する図である。
【0086】
図11に示すように、連結軸40の第一の圧入軸部242は、円柱状の軸心部242aと、軸心部242aの外周面から径方向外方に突出形成された3個の突起部242bとを備える。3個の突起部142bは、軸心部142aの周方向において均等に(120°間隔に)設けられている。さらに、個々の突起部242bは、第一実施形態の突起部42に比べて幅太形状とされている。この連結軸40の第一の圧入軸部242は、第一実施形態の第一の圧入軸部42に対して、形状が異なるのみで、材質などの他の要件は同一である。第一の圧入軸部242の突起部242bを適用した場合にも、第一実施形態と同様の効果を奏する。なお、突起部242を周方向に均等に配置することで、芯出し効果を確実に発揮できる。ただし、突起部242が軸対称に配置されていないため、このことによる効果は発揮しない。
【0087】
なお、ここでは、第三実施形態として連結軸40の第一の圧入軸部242について説明した。この連結軸40の第一の圧入軸部242の特徴部分を、ロアブッシュ30の第一の圧入軸部32に同様に適用することができる。この場合、連結軸40の第一の圧入軸部242による効果と同様の効果を奏する。
【0088】
<第四実施形態>
次に、第四実施形態について、図12を参照して説明する。本実施形態では、第一実施形態に対して、連結軸340のフランジ341のみ相違するため、以下に、当該相違点のみについて説明する。図12は、連結軸340軸方向断面図である。
【0089】
第一実施形態における連結軸40のフランジ41は、上面を平面状に形成した。本実施形態におけるフランジ341は、第一の圧入軸部42の根元部位に全周に亘って溝341aを形成している。従って、突起部42aの削れた部分の逃がし空間は、中央テーパ部23a、溝341aおよび第一の圧入軸部42の根元部とが壁面を形成する。つまり、溝341aを形成することにより、第一実施形態における逃がし空間の体積を拡大することができる。
【0090】
なお、ここでは、第四実施形態として連結軸340について説明した。この連結軸340の特徴部分を、ロアブッシュ30のベース部31に同様に適用することができる。この場合、連結軸340の溝341aによる効果と同様の効果を奏する。
【0091】
また、上記全ての実施形態において、起歪体20の穴21〜23は、円形状としたが、これに限られるものではない。起歪体20の穴21〜23は、角形穴であってもよい。この場合、それぞれの穴21〜23に圧入される第一の圧入軸部32、42の外周面も、穴形状に対応するように変更する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】第一実施形態:車両用シート装置の斜視図である。
【図2】車両用シート装置のフレーム部分の部品分解状態の斜視図である。
【図3】荷重検出装置10の斜視図である。
【図4】車両用シート装置の平面図であって、アッパレール16と各荷重検出装置10を示す図である。
【図5】荷重検出装置10の部品分解状態の斜視図である。
【図6】荷重検出装置10をアッパレール16およびシートフレーム座18に固定した状態の断面図である。
【図7】起歪体20を示す図であって、(a)は平面図、(b)はA−A断面図である。
【図8】ロアブッシュ30を示す図であって、(a)はロアブッシュ30の側面図、(b)はB−B断面図、(c)はC−C断面図である。
【図9】連結軸40を示す図であって、(a)は連結軸40の側面図、(b)はD−D断面図、(c)はE−E断面図である。
【図10】第二実施形態:連結軸40の第一の圧入軸部142の軸直交断面図である。
【図11】第三実施形態:連結軸40の第一の圧入軸部242の軸直交断面図である。
【図12】第四実施形態:連結軸340軸方向断面図である。
【符号の説明】
【0093】
10:荷重検出装置、 11:車両用シート、 13:シートスライド装置
14:ロアレール、 16:アッパレール、 17:シートフレーム本体
18:シートフレーム座
20:起歪体
30:第一、第二のロアブッシュ(第一の軸部材)、 31:ベース部(頭部)
32:第一の圧入軸部(軸本体)、 33:第二の圧入軸部
40:連結軸(第二の軸部材)、 41:フランジ(頭部)
42:第一の圧入軸部(軸本体)、 43:第二の圧入軸部、 44:固定ねじ部
32a、42a:軸心部(非圧入部)、 32b、42b:突起部(削れ突起部)
50:リング部材、 60:ブラケット部材、 70:アッパブッシュ
80:アンプケース、 90:FPC部材、 G1、G2:歪ゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアにシートを固定するためのフロア側固定部材とシート側固定部材との間に介在され、前記シートに着座している乗員の荷重を測定する車両用シートの荷重検出装置において、
前記フロア側固定部材および前記シート側固定部材の少なくとも一方に固定される軸部材と、
穴を備え、前記穴に前記軸部材が圧入されることにより前記軸部材に固定される起歪体と、
前記起歪体に貼付される歪ゲージと、
を備え、
前記軸部材は、前記穴の一方開口側から前記穴に圧入される軸本体と、前記軸本体の一端側に一体的に設けられ前記穴に係合する頭部と、を備え、
前記軸本体は、前記起歪体の前記穴の表面硬さより表面硬さが低く形成され前記軸本体を前記穴に圧入する際に前記穴により削り取られる削れ突起部と、前記削れ突起部に対して前記軸本体の周方向に隣接して設けられ前記軸本体を前記穴に圧入する際に前記穴との間で相互に圧力を付与しない非圧入部と、を備え、
前記起歪体と前記軸部材の間であって前記穴の一方開口側に設けられ、前記削れ突起部の削れた部分を収容する逃がし空間が形成されることを特徴とする車両用シートの荷重検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記逃がし空間は、前記穴の一方開口側の全周に亘って形成されることを特徴とする車両用シートの荷重検出装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記非圧入部は、前記軸本体が前記穴に圧入された後において前記穴の内周面との間に隙間を形成して配置されることを特徴とする車両用シートの荷重検出装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記非圧入部と前記穴との間に形成される空間体積は、前記削れ突起部の削り取られた部分の体積より小さく設定されることを特徴とする車両用シートの荷重検出装置。
【請求項5】
請求項1または2において、
前記非圧入部は、前記軸本体が前記穴に圧入された後において前記穴の内周面に当接して配置されることを特徴とする車両用シートの荷重検出装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項において、
前記穴は、軸直交方向の断面形状を円形とする穴であり、
前記削れ突起部は、前記軸本体の周方向に複数形成され、
一の前記削れ突起部は、他の前記削れ突起部に対して前記軸本体の軸対称の位置に設けられることを特徴とする車両用シートの荷重検出装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記穴の一方開口側には、開口方向に向かって拡径するテーパ部が形成され、
前記逃がし空間は、前記テーパ部を壁面の一部とすることを特徴とする車両用シートの荷重検出装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記テーパ部の大径側の内径は、前記削れ突起部の外接円の直径より大きく設定されていることを特徴とする車両用シートの荷重検出装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項において、
前記削れ突起部は、前記軸本体の軸方向一端側から軸方向他端側に向かって延びるように形成されることを特徴とする車両用シートの荷重検出装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項において、
前記軸部材は、前記フロア側固定部材に固定される第一の軸部材と、前記シート側固定部材に固定される第二の軸部材と、を備え、
前記起歪体に形成される前記穴は、第一の穴と第二の穴とを含み、
前記第一の穴に前記第一の軸部材が圧入されることにより前記起歪体が前記第一の軸部材に固定され、
前記第二の穴に前記第二の軸部材が圧入されることにより前記起歪体が前記第二の軸部材に固定されることを特徴とする車両用シートの荷重検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−122033(P2010−122033A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295255(P2008−295255)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】