説明

車両用シートベルトのタングプレート固定構造

【課題】二つのタングプレートを車室内の天井部分に収納するものにおいて、簡素な構造で操作性よく、両タングプレートを天井部分に確実に保持させることができるようにする。
【解決手段】リトラクタと、リトラクタに基端部を巻回されたウエビング21と、ウエビングの先端部に装備され第1タング部を有する第1タングプレート23と、ウエビングの中間部に移動可能に装備され第2タング部を有する第2タングプレート24と、車両の天井部に装備され、両タングプレート23,24を収納状態に保持する保持部材25とを備え、第1タング部がリトラクタの付勢方向とは逆の反付勢方向へ向けて第1挿入穴に挿入されると共に第2タング部がリトラクタの付勢方向へ向けて第2挿入穴に挿入されたタングプレート収納状態では、第2タングプレート24が、第1タングプレート23の基部に鉛直上方且つ反付勢方向へ向けて当接するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の中央席に用いるのに好適の、車両用シートベルトのタングプレート固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の後部座席(セカンドシートやサードシート)の乗員の安全性向上の観点から、後部座席の中央席(センターシート)にも3点式のシートベルトを装備するようになっている。このような後部中央席の3点式シートベルトの場合、サイドシートの場合のように、車室の側部のピラー部分から直接シートベルトのウエビング(ストラップ)を繰り出すような構造にはできない。そこで、中央席の3点式シートベルトの場合、シートバックの背部や車室の天井部分からウエビングを繰り出すような構造が用いられている。
【0003】
また、一般に、3点式シートベルトは、基端をリトラクタに巻回された1本のウエビングの中間部に可動式のタングプレートを装備しており、座席の着座した乗員は、タングプレートを掴んでウエビングをリトラクタから引き出しながら、座席のシートクッション後端部に装備したバックルに係止して使用する。この使用状態では、ウエビングはタングプレートを境にラップストラップ(腰ベルト)とウエビングストラップ(ダイアゴナルベルト)とに使い分けられる。
【0004】
サイドシートの場合には、ウエビングの先端はピラー等に係止されるが、中央席の場合、ウエビングの先端にもタングプレートを装備して、シートベルトの使用時にはこの先端のタングプレートをシート側に装備したバックルに係止して使用する。シートベルトを使用しない場合には、ウエビングの基端側をリトラクタに巻き取って、先端のタングプレートを中間部の可動タングプレートと共に車室内の天井部分に固定する。これにより、ウエビングやタングプレートが乗降等の妨げにならない。
【0005】
このように、中央席のシートベルトの場合、ウエビングの先端の第1タングプレートと、ウエビングの中間部に可動式の第2タングプレートとの二つのタングプレートを装備し、シートベルトを使用しないときには、二つのタングプレートを車室内の天井部分に落下しないように固定することが必要になる。
したがって、二つのタングプレートをどのようにして、車室内の天井部分に落下しないように係止するかが重要であり、これに関する種々の技術が開発されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、天井に設置され、第1及び第2のタングプレートを収納保持する保持部材に、第1のタングプレートの先端部をリトラクタの反巻き取り方向(巻き取り方向と逆方向)に沿って係脱可能に挿し込む第1の保持穴と、第2のタングプレートの先端部をリトラクタの巻き取り方向に沿って係脱可能に挿し込む第2の保持穴とを形成し、第1の保持穴には、保持穴の下縁の受け部と近接対向し弾性を有する突起を形成した構成が提案されている(段落0016〜0018,0022)。
【0007】
かかる構成によれば、シートベルトの反巻き取り方向に沿って収納した第1のタングプレートにはリトラクタによる巻き取り付勢により引き抜き方向への力が作用するが、第1のタングプレートの先端部が、撓んだ突起と受け部との間で突起の復元力により確実に挟持され、リトラクタによる引き抜き方向への力に抗して高い保持効果が発揮される(段落0025)。
【0008】
また、特許文献2には、天井に設置され、第1及び第2のタングプレートを収納する収納部材を備え、収納部材に、ウエビング巻取り方向に開口し第1のタングプレートを保持する第1保持部と、ウエビング巻取り方向とは反対方向に開口し第2のタングプレートを保持する第2保持部とを設け、第2のタングプレートには、第2のタングプレートがウエビング巻取り方向を向き、かつ第2のタングプレートよりも先端側のウエビングがウエビング引出方向を向いた状態では、第2のタングプレートのウエビングに対する摺動を阻止する摺動阻止手段を設ける構成が提案されている(段落0018,0020)。
【0009】
摺動阻止手段は第2のタングプレートに設けられウエビングが挿通される挿通口内のウエビングの表裏面と対向する一方の側面の端縁に、挿通口の一方の開口を狭めるように、他方の側面に向かって突出するように形成された突出部により構成される(段落0018)。
かかる構成によれば、両タングプレートが収納された状態では摺動阻止手段によりウエビングに対する第2のタングプレートの摺動が阻止されているため、ウエビングに作用するリトラクタの巻取り力(引張り力)が、第2のタングプレートに対して第2保持部へ嵌入させる方向へ作用する。これにより、第2のタングプレートは確実に第2保持部に保持される(段落0022)。
【0010】
また、第2のタングプレートの挿通口に通されたウエビングはリトラクタの巻取り力を受けても、突出部によってその摺動が阻止されるから、第2のタングプレートよりも先端側のウエビングの長さは変わらず、しかもウエビングがその曲げ強度により形状が維持されることによって、第1のタングプレートの第1保持部からの抜けが防止されて第1のタングプレートが確実に第1保持部に保持される(段落0022)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−23622号公報
【特許文献2】特許第4288611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の特許文献1,2の技術のように、第1及び第2のタングプレートの収納時に、第1のタングプレートの先端部をリトラクタの反巻き取り方向(巻き取り方向と逆方向)に沿って第1の保持部に係脱可能に挿し込み、第2のタングプレートの先端部をリトラクタの巻き取り方向に沿って第2の保持穴に係脱可能に挿し込む構成とすれば、収納状態での着脱の操作性がよく、また、第1及び第2のタングプレートの収納位置を水平に横並びに配置し易いので、天井部分の収納構造を高さ方向に抑えることができる。
【0013】
しかしながら、特許文献1の技術は、第1の保持穴に弾性を有する突起を形成する構成なので、保持穴の形状が複雑になり、製造コスト増を招き、突起の耐久性の確保も考慮しなくてはならない。
また、特許文献2の技術は、第2のタングプレートの挿通口に通されたウエビングが挿通口での摺動阻止されるため、このウエビングの挿通口での摺動に起因した、第1のタングプレートの第1保持部からの抜けは防止されるが、第2のタングプレートよりも先端側のウエビングの長さを変えないだけでは、第1のタングプレートを確実に第1保持部に保持できない場合も考えられ、この点では、何らかの手段により第1のタングプレートを第1保持部に拘束させることが必要である。
【0014】
本発明はかかる課題に鑑み創案されたもので、ウエビングの先端とウエビングの中間部とにそれぞれタングプレートを装備し、二つのタングプレートを車室内の天井部分に収納するものにおいて、簡素な構造で操作性よく、両タングプレートを天井部分に確実に保持させることができるようにした、車両用シートベルトのタングプレート固定構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明の車両用シートベルトのタングプレート固定構造は、車両に装備されたリトラクタと、前記リトラクタに基端部を巻回されたウエビングと、前記ウエビングの先端部に装備された第1タングプレートと、前記ウエビングの中間部に移動可能に装備され前記ウエビングが遊動する遊動穴を有する第2タングプレートと、前記車両の天井部に装備され、前記リトラクタから前記天井部の下方の車室内に繰り出される前記ウエビングをガイドすると共に前記両タングプレートを収納状態に保持する保持部材とを備えた、車両用シートベルトのタングプレート固定構造であって、前記保持部材には、前記天井部の天井面に沿って延在し、前記第1タングプレートの第1タング部が挿入される第1挿入穴を有する第1壁部と前記第2タングプレートの第2タング部が挿入される第2挿入穴を有する第2壁部とが対向して形成され、前記両タングプレートを収納する凹所と、前記凹所の外部に前記第2壁部と隣接して形成され前記ウエビングが内部を遊動するスリットと、が設けられ、前記第1タングプレートは、前記リトラクタによる付勢方向とは逆の反付勢方向に向けて前記第1タング部が前記第1挿入穴に挿入されて収納されると共に、前記第2タングプレートは、前記付勢方向に向けて前記第2タング部が前記第2挿入穴に挿入されて収納され、前記第1タング部が前記第1挿入穴に挿入されると共に前記第2タング部が前記第2挿入穴に挿入されたタングプレート収納状態では、前記第2タングプレートが、前記第1タングプレートの基部(この基部にループ結合するウエビングのループ部の一部をも含む)に、鉛直上方且つ前記反付勢方向へ向けて当接するように構成されていることを特徴としている。
【0016】
前記凹所には、前記第1タング部が前記第1挿入穴に挿入された収納状態の第1タングプレートの一部分を収容する部分凹部が形成され、前記両タングプレートの収納状態では、前記第2タングプレートが前記第1タングプレートの前記基部に、前記一部分を前記部分凹部へ押し付けるように当接することが好ましい。
さらに、前記第2タングプレートの前記収納時に、前記リトラクタの付勢力が前記付勢方向且つ鉛直上方に向くように、前記収納時の前記第2タングプレートと前記遊動穴と前記ウエビングとが配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車両用シートベルトのタングプレート固定構造によれば、第1タングプレートは、第1タング部をリトラクタの付勢方向とは逆の反付勢方向に向けて第1挿入穴に挿入されて収納されると共に、第2タングプレートは、第2タング部をリトラクタの付勢方向に向けて第2挿入穴に挿入されて収納されるので、収納状態での着脱の操作性がよく、また、第1及び第2のタングプレートの収納位置を水平に横並びに配置し易いので、天井部分の収納構造を高さ方向に抑えることができる。
【0018】
一方、第1タングプレートの第1タング部が反付勢方向に向けて第1挿入穴に挿入されると、リトラクタの付勢力が第1タング部を第1挿入穴から外すように作用するが、タングプレート収納状態では、第2タングプレートが、第1タングプレートの基部に、鉛直上方且つ反付勢方向へ向けて当接するように構成されているので、第1タングプレートの第1挿入穴からの離脱が防止される。
【0019】
また、凹所に、第1タング部が第1挿入穴に挿入された収納状態の第1タングプレートの一部分を収容する部分凹部を形成し、両タングプレートの収納状態では、第2タングプレートが第1タングプレートの基部に当接し第1タングプレートの一部分を部分凹部へ押し付けるようにすれば、第1タングプレートの一部分が部分凹部内に保持され、第1タングプレートの第1挿入穴からの離脱がより確実に防止されると共に、車両走行時の第1タングプレートの振動等も抑制される。
【0020】
さらに、第2タングプレートの収納時に、リトラクタの付勢力がリトラクタの付勢方向且つ鉛直上方に向くように設定すれば、リトラクタの付勢力によって、第2タングプレートの収納状態の姿勢が確実に保持され、第1タングプレートの第1挿入穴からの離脱をより確実に防止すると共に、車両走行時の第1,第2タングプレートの振動等も抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両用シートベルトのタングプレート固定構造を示す車両天井部の横断面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる車両用シートベルトのタングプレート固定構造を示す車両天井部の斜視図(車室内下方から車両天井部の左側を斜めに見上げた斜視図)である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる車両用シートベルトのタングプレート固定構造を示す車両要部の横断面図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる車両用シートベルトのタングプレート固定構造を示す車両天井部の要部拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面により本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図4は本発明の一実施形態にかかる車両用シートベルトのタングプレート固定構造を説明するもので、これらの図を用いて説明する。なお、本実施形態は、SUV(スポーツユーティリティビークル)やミニバン等の車室内の天井部が比較的高い車両(自動車)の後部座席(セカンドシートやサードシート)の中央席(センターシート)に本構造を適用した例を説明する。ただし、本構造はかかる車両や座席に限定されず適用しうる。
【0023】
〔構成〕
図3に示すように、車両1の車室2内の後部座席3の中央席3Cには、着座した乗員を適切に拘束するために、3点式のシートベルト装置10が装備されている。
シートベルト装置10は、第1タングプレート23及び第2タングプレート24を備えたシートベルト20と、中央席3Cのシートクッション部のシートバック側に装備され第1及び第2タングプレート23,24を係止する第1のバックル11及び第2のバックル12とを備えている。
【0024】
シートベルト20についてさらに説明すると、図1〜図3に示すように、シートベルト20は、ウエビング(ストラップ)21と、ウエビング21の基端部が巻回されるリトラクタ22と、ウエビング21の先端に装備された第1タングプレート23と、ウエビング21の中間部に移動可能に装備された第2タングプレート24と、車室2内の天井部4に装備されウエビング21をガイドすると共にタングプレート23,24を収納状態に保持する保持部材25とを備えている。なお、天井部4には、ルーフアウタパネル6の下方のルーフインナパネル5a,5bに支持されて、天井パネル(ルーフライナー)4aが装備される。
【0025】
リトラクタ22は、車両の天井部4の側方の図示しないルーフサイドパネル等に車体構造部材に固定され、ウエビング21の基端部が巻回されるスプール22aと、ウエビング21に巻き取り付勢力を加える図示しない付勢力付与機構とを備えている。
図1,図4に示すように、第1タングプレート23は、金属製のタングプレート本体231と、タングプレート本体231と一体に結合して形成され着脱操作時に把持する樹脂性の把持部233とを備えている。タングプレート本体231の先端部には、シートベルト使用時に、第1のバックル11に挿入されて図示しない係脱機構を通じて係止されるタング部(第1タング部)232が設けられる。また、タングプレート本体231が埋設された把持部233には、ウエビング21の先端のループ部21aが係合する係合穴234が形成される。
【0026】
なお、ウエビング21は、表面が比較的滑らかで所要の幅と厚みを有しており、その先端は、幅方向に折り重ねられた上で係合穴234に挿通されてループ上に重ねられて縫い付けられてループ部21aを構成している。
第2タングプレート24は、金属製のタングプレート本体241と、タングプレート本体241と一体に結合して形成され着脱操作時に把持する樹脂性の把持部244とを備えている。タングプレート本体241の先端部には、シートベルト使用時に、第2のバックル12に挿入されて図示しない係脱機構を通じて係止されるタング部(第2タング部)242が設けられる。タング部242には、係脱機構の一部を構成する係脱用穴部243が設けられる。また、タングプレート本体241が埋設された把持部244には、ウエビング21の中間部が遊動するように内挿される遊動穴245が形成される。
【0027】
保持部材25は、金属製(板金製)のベース251と、ベース251と一体に結合して形成された樹脂性の保持部材本体250とを備え、ベース251を取付ボルト26を通じて車体のルーフインナパネル5a,5bに締結されて取り付けられる。保持部材本体250は、ベース251に直接結合し天井パネル4aや天井側部パネル(ルーフサイドライナー)4bで被覆される箇所に配置される基部252と、この基部252に対して図示しないステー部を介して離隔して形成され天井パネル4aや天井側部パネル4bに沿って配置される保持部254とを有している。
【0028】
ベース251の一部を内蔵した基部252には、ウエビング21が遊動する遊動穴253が形成される。遊動穴253のウエビング21が摺動する摺動面253aは滑らかな曲面状に形成される。
また、保持部254は、正面視(図4中、下方から見た状態)で略長方形の形状に形成され、その長手方向を車幅方向に向けて天井部4へ装着される。この保持部254には、長手方向一端から中央部にかけて延在する凹所(天井パネル4aに対して窪んでいる凹所)256が形成され、この凹所256よりも長手方向他端側には、ウエビング21が内部を遊動するスリット255が車長方向に沿って設けられている。スリット255の両縁部のウエビング21が摺動する摺動面255a,255bも滑らかな曲面状に形成される。
【0029】
凹所256には、車室2内に向けて傾斜した形状の周壁が形成され、この周壁のうち、凹所256の長手方向一端側の壁部(第1壁部)259には、シートベルト20を使用しない収納時に、第1タングプレート23のタング部232が挿入される挿入穴(第1挿入穴)259aが形成される。また、周壁のうち、壁部259と対向する凹所256の長手方向他端側の壁部(第2壁部)258には、シートベルト20を使用しない収納時に、第2タングプレート24のタング部242が挿入される挿入穴(第2挿入穴)258aが形成される。スリット255は壁部258に隣接して壁部258よりも長手方向他端側に配置される。
【0030】
そして、このシートベルト20を使用しない収納時には、第1タングプレート23の第1タング部232が第1挿入穴259aに適正に挿入されると共に第2タングプレート24の第2タング部242が第2挿入穴258aに適正に挿入された状態(タングプレート収納状態)となるが、この状態で、第2タングプレート24(ここでは、第2タングプレート24の端部246)が、第1タングプレート23の基部235に、所定方向に向いて当接するように設定されている。
【0031】
ここで、「適正に挿入される」とは、各タング部232,242が各挿入穴259a,258aに最深部又は最深部近傍まで挿入されることを言う。また、第1タングプレート23の第1タング部232が挿入穴259aに適正に挿入されると、第1タング部232がウエビング21が付勢力付与機構から受ける付勢力とは逆向きである反付勢方向(図4中、略左方向)に沿う方向に向き、第2タングプレート24の第2タング部242が挿入穴258aに適正に挿入されると、第2タング部242がウエビング21が付勢力付与機構から付勢力を受ける付勢方向(図4中、略右方向)に沿う方向に向くように、各挿入穴259a,258aの周壁面が形成されている。
【0032】
また、第2タングプレート24の端部246が、第1タングプレート23の基部235に当接する際の「所定方向」とは、鉛直上方(図4中、上方向)への成分と且つウエビング21を介してリトラクタ22の付勢力付与機構から第2タングプレート24が受ける付勢力とは逆向きである反付勢方向の成分とを有する方向を言う。
なお、第1タングプレート23の基部235とは、第1タングプレート23に係止されるウエビング21のループ部21aを含んだものとしている。ここでは、第2タングプレート24は、その端部246でループ部21aの一部に直接当接しており、この端部246に直接当接するループ部21aの一部を第1タングプレート23の基部235としている。
【0033】
この第2タングプレート24の端部246の当接は、第1タングプレート23を前記所定方向に拘束して、第1タングプレート23が前記所定方向と逆方向へ移動するのを阻止するためである。したがって、この第2タングプレート24の端部246の当接について別の規定をすると、「第2タングプレート24は、第1タングプレート23を前記所定方向に拘束するように、第1タングプレート23の基部235又は第1タングプレート23に係止されるウエビング21のループ部21aの一部に当接する」と規定することもできる。
【0034】
また、本実施形態では、凹所256には、第1タングプレート23が第1タング部232を第1挿入穴259aに挿入された収納状態の位置にあると第1タングプレート23の一部分(ここでは、ループ部21aの一面側)を収容する部分凹部257が形成されており、両タングプレート23,24の収納状態では、第2タングプレート24が第1タングプレートの基部235に、第1タングプレート23の一部分を部分凹部257へ押し付けるように当接する。
【0035】
つまり、部分凹部257及びこの部分凹部257内に収容された第1タングプレート23の一部分は、第2タングプレート24の端部246が第1タングプレート23の基部235に当接する箇所に対して、略所定方向、つまり、鉛直上方且つ反付勢方向に位置するので、第2タングプレート24は第1タングプレート23との当接により、第1タングプレート23の一部分を部分凹部257へ押し付けるように作用する。
【0036】
また、このようなタングプレート収納状態で、第1タングプレート23の第1タング部232が第1挿入穴259aに適正に挿入されると共に第2タングプレート24の第2タング部242が第2挿入穴258aに適正に挿入されると、第2タングプレート24は、第1タングプレート23に当接した状態で、ウエビング21を介してリトラクタ22の付勢力付与機構から付勢方向への付勢力を受ける。この付勢方向は、収納時の第2タングプレート24と遊動穴245とウエビング21との配置から、第2タングプレート24の第2タング部242の第2挿入穴258aへの挿入方向に沿うので、かかる付勢力により、第2タングプレート24の第2タング部242の第2挿入穴258aからの離脱が防止されるようになっている。
【0037】
〔作用、効果〕
本発明の一実施形態にかかる車両用シートベルトのタングプレート固定構造は、上述のように構成されるので、以下のような効果を得ることができる。
まず、第1タングプレート23は、第1タング部232をリトラクタ22の付勢方向とは逆の反付勢方向に向けて第1挿入穴259aに挿入されて収納され、第2タングプレート24は、第2タング部242をリトラクタ22の付勢方向に向けて第2挿入穴258aに挿入されて収納されるので、例えば、第1タングプレート23と第2タングプレート24とをひとまとめに持って、第1タングプレート23を第1挿入穴259aに挿入しつつ第2タングプレート24を第2挿入穴258aに挿入するなどして、操作性よく収納状態での着脱を行なうことができる。
【0038】
また、第1及び第2のタングプレート23,24の収納位置を水平に横並びに配置し易いので、天井部4の収納構造を高さ方向に抑えることができる。
そして、第1タングプレート23の第1タング部232が反付勢方向に向けて第1挿入穴258aに挿入されると、リトラクタ22の付勢力が第1タング部232を第1挿入穴258aから外すように作用するが、このタングプレート収納状態では、第2タングプレート24の端部246が、第1タングプレート23の基部235に、鉛直上方且つ反付勢方向へ向けて当接するので、第1タングプレート23の第1挿入穴258aからの離脱が防止される。
【0039】
また、本実施形態では、凹所256に、第1タング部232が第1挿入穴259aに挿入された収納状態の第1タングプレート232の一部分を収容する部分凹部257が形成され、両タングプレート23,24の収納状態では、第2タングプレート24が第1タングプレート23の基部235に当接し第1タングプレート23の一部分を部分凹部257へ押し付けるので、第1タングプレート23の一部分が部分凹部257に保持され、第1タングプレート23の第1挿入穴259aからの離脱がより確実に防止され、車両走行時の第1タングプレート23の振動等も抑制される。
【0040】
さらに、第2タングプレート24の収納時に、第2タング部242がリトラクタ22の付勢方向且つ鉛直上方を向いて第2挿入穴258aに挿入され、リトラクタ22の付勢力がこの第2タング部242の第2挿入穴258aへの挿入方向に向くので、リトラクタ22の付勢力によって、第2タングプレート24の収納状態の姿勢が確実に保持され、第1タングプレート23の第1挿入穴259aからの離脱もより確実に防止され、車両走行時の第1,第2タングプレート23,24の振動等も抑制される。
【0041】
〔その他〕
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はかかる実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、かかる実施の形態を適宜変形して実施しうるものである。
【0042】
例えば、部分凹部257がなくても、第2タングプレート24の端部が第1タングプレート23の基部に上記の所定方向へ向けて当接するように構成すれば、第1タングプレート23の第1挿入穴259aからの離脱もより確実に防止され、車両走行時の第1,第2タングプレート23,24の振動等もある程度抑制される。
【符号の説明】
【0043】
1 車両
2 車室
3 後部座席
3C 後部座席3の中央席
4 天井部
10 3点式のシートベルト装置
11 第1のバックル
12 第2のバックル
20 シートベルト
21 ウエビング(ストラップ)
21a ウエビング21の先端のループ部
22 リトラクタ
23 第1タングプレート
24 第2タングプレート
25 保持部材
232 タング部(第1タング部)
235 第1タングプレート23の基部
242 タング部(第2タング部)
245 遊動穴
246 第2タングプレート24の端部
256 凹所
257 部分凹部
258 凹所256の長手方向他端側の壁部(第2壁部)
258a 挿入穴(第2挿入穴)
259 凹所256の長手方向一端側の壁部(第1壁部)
259a 挿入穴(第1挿入穴)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装備されたリトラクタと、前記リトラクタに基端部を巻回されたウエビングと、前記ウエビングの先端部に装備された第1タングプレートと、前記ウエビングの中間部に移動可能に装備され前記ウエビングが遊動する遊動穴を有する第2タングプレートと、前記車両の天井部に装備され、前記リトラクタから前記天井部の下方の車室内に繰り出される前記ウエビングをガイドすると共に前記両タングプレートを収納状態に保持する保持部材とを備えた、車両用シートベルトのタングプレート固定構造であって、
前記保持部材には、
前記天井部の天井面に沿って延在し、前記第1タングプレートの第1タング部が挿入される第1挿入穴を有する第1壁部と前記第2タングプレートの第2タング部が挿入される第2挿入穴を有する第2壁部とが対向して形成され、前記両タングプレートを収納する凹所と、
前記凹所の外部に前記第2壁部と隣接して形成され前記ウエビングが内部を遊動するスリットと、が設けられ、
前記第1タングプレートは、前記リトラクタによる付勢方向とは逆の反付勢方向に向けて前記第1タング部が前記第1挿入穴に挿入されて収納されると共に、
前記第2タングプレートは、前記付勢方向に向けて前記第2タング部が前記第2挿入穴に挿入されて収納され、
前記第1タング部が前記第1挿入穴に挿入されると共に前記第2タング部が前記第2挿入穴に挿入されたタングプレート収納状態では、前記第2タングプレートが、前記第1タングプレートの基部に、鉛直上方且つ前記反付勢方向へ向けて当接するように構成されている
ことを特徴とする、車両用シートベルトのタングプレート固定構造。
【請求項2】
前記凹所には、前記第1タング部が前記第1挿入穴に挿入された収納状態の第1タングプレートの一部分を収容する部分凹部が形成され、
前記両タングプレートの収納状態では、前記第2タングプレートが前記第1タングプレートの前記基部に、前記一部分を前記部分凹部へ押し付けるように当接する
ことを特徴とする、請求項1記載の車両用シートベルトのタングプレート固定構造。
【請求項3】
前記第2タングプレートの前記収納時に、前記リトラクタの付勢力が前記付勢方向且つ鉛直上方に向くように、前記収納時の前記第2タングプレートと前記遊動穴と前記ウエビングとが配置されている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の車両用シートベルトのタングプレート固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−224253(P2012−224253A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94458(P2011−94458)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】