説明

車両用シートベルトプレテンショナー、及びこれを用いた乗客保護方法

【課題】半永久的に使用可能なモーターギア式プレテンショナーによって原価を節減し、特にモーターのトルク制御によって乗客が受ける衝撃を最小化する車両用シートベルトプレテンショナー及びこれを用いた乗客保護方法を提供する。
【解決手段】シートベルトコントローラーの制御信号に応じて動作するモーターと、モーターの回転動力を伝達する減速機と、減速機の回転力を受けて回転し、シートベルトの一端が結合された回転ロールと、を含んで構成される。衝突信号が検出されれば、シートベルトコントローラーの制御信号に応じてモーターが動作してトルクを発生させ、シートベルトに最大荷重が作用するとき、シートベルトの解けを防止するためにモーターが最大トルクを発生し、乗客拘束完了の後、ロードリミッターが作動できるようにモーター51のトルクを減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用シートベルトプレテンショナー及びこれを用いた乗客保護方法に係り、より詳しくは半永久的に使用可能なモーターギア式プレテンショナー及びこれを用いた乗客保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、車両に備えられたシート1には、衝突事故発生の際、乗客の上体を拘束して保護することができるシートベルト2が備えられている。このようなシートベルト2は、プレテンショナー10と共に作動するように構成されている。
すなわち、衝突事故が発生したときに、プレテンショナー10は、シートベルト2を瞬間的に巻き戻す機能をするもので、シートベルト2の拘束力によって乗客の上体が前方に動くことを防止してシートベルト2の機能を向上させることになるものである。
【0003】
従来のプレテンショナー10は、火薬の爆発力を用いて動作する構成のもので、図示のように、火薬を保管している炸薬部11、モーター12、減速機13及び回転ロール14を含む構成でなっている。
ところが、上記したような従来の火薬を用いたプレテンショナー10は、一度使用した後での再使用ができないため、原価が高くなる欠点があり、さらに、プレテンショナー10が作動した後、シートベルト2を徐々に解くロードリミッター(load limiter)の作動が衝撃量によって精巧に制御できないため、乗客が受ける衝撃を加重させる欠点があった。
【0004】
プレテンショナーについては、車両衝突の際に迅速に作動してシートベルトの弛みを引き締め構造面からの改善〔特許文献1,2参照〕、ガス発生剤の組成面からの改善〔例えば、特許文献3参照〕などが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−309205号公報
【特許文献2】特開平06−072288号公報
【特許文献3】特表2001−512413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記欠点を解消するためになされたもので、半永久的に使用可能なモーターギア式プレテンショナーを提供することで原価節減を図り、さらにモーターのトルク制御によって乗客が受ける衝撃を最小にすることができるようにした車両用シートベルトプレテンショナー及びこれを用いた乗客保護方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべくなされた本発明の車両用シートベルトプレテンショナーは、シートベルトコントローラーの制御信号に応じて動作するモーターと、モーターの回転動力を伝達する減速機と、減速機の回転力を受けて回転し、シートベルトの一端が結合された回転ロールと、を含んで構成される。
【0008】
回転ロールは、ハウジングに対して回転可能に設置され、両端がそれぞれ回転ロールとハウジングに結合設置されて回転ロールの回転に弾性復元力を付与する復元スプリングをさらに含むことができる。
【0009】
減速機と回転ロールは、スリーブを介して動力伝達可能に結合され、スリーブの一端には結合軸が備えられて前記減速機に結合され、スリーブの他端にはスプラインが形成されて回転ロールと結合されることができる。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明の車両用シートベルトプレテンショナーを用いた乗客保護方法は、衝突信号が検出したとき、シートベルトコントローラーの制御信号に応じてモーターが動作してトルクを発生させるモーター動作段階と、シートベルトに最大荷重が作用したとき、モーターが最大トルクを発生してシートベルトの解けを防止するモーター最大トルク発生段階と、乗客の拘束が完了した後、モーターのトルクを減少してロードリミッターが作動可能にするロードリミッター機能開始段階と、を含んで構成される。
【0011】
また、この方法は、シートベルトコントローラーの制御信号に応じてモーターが動作するとき、モーターの初期動作によってシートベルトのスラック量を除去する初期スラック除去段階をさらに含むことができる。
【0012】
ロードリミッターの作動後に、モーターのトルクを減少させてシートベルトの引張力を除去し、乗客のシートベルトからの脱出を容易にするシートベルト引張力除去段階をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるシートベルトプレテンショナーは、モーターと減速機を用いてプレテンションの機能及びロードリミッターの機能をすることができる構成のもので、半永久的な使用が可能であり、原価を大幅に節減することができ、さらにモーターのトルク制御によって乗客が受ける衝撃を最小化することができるので、乗客をより安全に保護することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来のシートベルトプレテンショナーを説明する図である。
【図2】本発明によるシートベルトプレテンショナーを説明する図である。
【図3】本発明によるシートベルトプレテンショナーの構成品を説明する図である。
【図4】本発明によるシートベルトプレテンショナーを用いて乗客を保護する方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいて本発明の好適な実施例による車両用シートベルトプレテンショナー,及びこれを用いた乗客保護方法を説明する。
【0016】
本発明によるプレテンショナー50は、モーターの作動によってプレテンションの機能とロードリミッターの機能をするように構成され,図2及び図3に示すように、シートベルトコントローラー61の制御信号に応じて作動するモーター51と、モーター51の回転動力を伝達する減速機52と、減速機52の回転力を受けて回転する回転ロール53とを含んで構成されている。
【0017】
シートベルトコントローラー61は、基本的に衝突センサー63及びシートベルト荷重センサー65から信号を受けることができるように構成される。
衝突センサー63は、衝突事故発生時の状況を検出するセンサーであり、シートベルト荷重センサー65は、衝突事故の際の慣性力によって動く乗客の上体によってシートベルト2が受ける荷重を検出するセンサーである。
【0018】
回転ロール53にはシートベルト2(図2に図示)の一端が結合され、回転ロール53が回転することで、シートベルト2が回転ロール53に巻き取られる、あるいは解けることになる。
回転ロール53は、ハウジング54に対して回転するように設置された構造である。
【0019】
また、本発明は、両端がそれぞれ回転ロール53とハウジング54に結合設置されて、回転ロール53の回転に弾性復元力を付与する復元スプリング55をさらに含んでなていることを特徴としている。
【0020】
一方、減速機52は、多数のギア部材52aで構成され、減速機52と回転ロール53はスリーブ56を介して動力伝達可能に結合された構造である。このために、スリーブ56の一端には減速機52をなすギア部材52aのいずれか一つと結合するための結合軸56aが備えられ、スリーブ56の他端には回転ロール53とスプラインが結合設置される。
【0021】
スリーブ56と回転ロール53がスプライン結合されるために、スリーブ56の回転ロール53と結合する側の端部外周面には、スリーブ56の長手方向に沿って多数のスプライン56bが形成され、回転ロール53の内周面にも同じスプライン53aが形成されている。この構造は、一例であってこれに限定されるものではない。
【0022】
そして、シートベルト2を解いたとき、シートベルト2が回転ロール53に自動で巻かれるようにするリトラクター(retractor)57が設置される。
【0023】
本発明による車両用シートベルトプレテンショナーを用いた乗客保護方法について、図2〜図4を参照して本発明の作用とともに説明する。
衝突センサー63が衝突信号を検出し(衝突信号検出段階、S11)、シートベルトコントローラー61に伝達すると、シートベルトコントローラー61からの制御信号に応じてモーター51が動作してトルクを発生させる(モーター動作段階、S12)。
【0024】
この際、モーター51の初期動作時に発生したトルクによってシートベルト2のスラック(slack)量が除去されることにより、シートに着席した乗客はシートベルト2によって安定に拘束された状態となる(初期スラック除去段階、S13)。
シートベルト2のスラック量が除去され、衝突時の慣性力によって乗客の上体がシートベルト2を押し付ける力が最大になる状況、つまりシートベルト2に最大荷重が作用する状況となると、シートベルトコントローラー61の制御によってモーター51が最大トルクを発生し、これによりシートベルト2の解けが防止されることにより乗客の上体を安定に拘束することができるようになる(モーター最大トルク発生段階、S14)。
【0025】
そして、乗客の拘束が完了した後には、シートベルトコントローラー61の制御によってモーター51のトルクを徐々に減少させるようになる。これにより、シートベルト2が徐々に解けるロードリミッターの機能が動作するようになる(ロードリミッター機能開始段階、S15)。
【0026】
ロードリミッターの機能は、回転ロール53がおよそ2〜3回転だけ解けながら動作するようになる。ロードリミッターの作動後、つまり衝突状況が終わった後には、乗客がシートベルト2から易しく逃げることができなければならない。このために、シートベルトコントローラー61の制御によってモーター51のトルクはもっと減少し、この結果、シートベルト2の引張力が除去される(シートベルト引張力除去段階、S16)。
従って、乗客は引張力が除去されたシートベルト2から脱出が容易になる。
【0027】
以上説明したように、本発明によるシートベルトプレテンショナーは、火薬を使わずにモーター51と減速機52を用いてプレテンションの機能及びロードリミッターの機能を充実に達成することができる構成のもので、半永久的に使用可能な利点と原価を大幅に節減することができる利点がある。
【0028】
また、モーター51のトルク制御によって乗客が受ける衝撃を最小化することができるようになるので、乗客をより安全に保護することができる利点もある。
【0029】
本発明は特定の実施例に基づいて示して説明したが、以下の特許請求範囲によって決まる本発明の技術的思想を逸脱しない範疇内で、本発明を多様に改良及び変更させることができるのは当該分野の通常の知識を持った者に明らかであろう。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、半永久的に使用可能なモーターギア式プレテンショナーによって原価を節減し、特にモーターのトルク制御によって乗客が受ける衝撃を小さくする車両用シートベルトプレテンショナーに適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1:シート
2:シートベルト
10:プレテンショナー
11:炸薬部
12:モーター
13:減速機
14:回転ロール
50:プレテンショナー
51:モーター
52:減速機
52a:(減速機にある)ギア部材
53:回転ロール
53a:(回転ロールの内周面に形成された)スプライン
54:ハウジング
55:復元スプリング
56:スリーブ
56a:(スリーブの一端にある)結合軸
56b:(スリーブの他端外周面に形成された)スプライン
57:リトラクター
61:シートベルトコントローラー
63:衝突センサー
65:シートベルト荷重センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートベルトコントローラー(61)の制御信号に応じて動作するモーター(51)と、
前記モーター(51)の回転動力を伝達する減速機(52)と、
前記減速機(52)の回転力を受けて回転し、シートベルト(2)の一端が結合された回転ロール(53)と、を含んで構成されることを特徴とする車両用シートベルトプレテンショナー。
【請求項2】
前記回転ロール(53)は、ハウジング(54)に対して回転可能に設置され、両端がそれぞれ前記回転ロール(53)と前記ハウジング(54)に結合設置されて前記回転ロール(53)の回転に弾性復元力を付与する復元スプリング(55)を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用シートベルトプレテンショナー。
【請求項3】
前記減速機(52)と前記回転ロール(53)は、スリーブ(56)を介して動力伝達可能に結合され、
前記スリーブ(56)の一端には結合軸(56a)が備えられて前記減速機(52)に結合され、
前記スリーブ(56)の他端にはスプラインが形成されて前記回転ロール(53)と結合される、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用シートベルトプレテンショナー。
【請求項4】
衝突信号が検出したとき(S11)、シートベルトコントローラー(61)の制御信号に応じてモーター(51)が作動してトルクを発生させるモーター動作段階(S12)、
シートベルト(2)に最大荷重が作用したとき、前記モーター(51)が最大トルクを発生して前記シートベルト(2)の解けを防止するモーター最大トルク発生段階(S14)、
乗客の拘束が完了した後、前記モーター(51)のトルクを減少してロードリミッターが作動可能にするロードリミッター機能開始段階(S15)、を含むことを特徴とする車両用シートベルトプレテンショナーを用いた乗客保護方法。
【請求項5】
前記シートベルトコントローラー(61)の制御信号に応じて前記モーター(51)が動作するとき、前記モーター(51)の初期動作によってシートベルト(2)のスラック量を除去する初期スラック除去段階(S13)をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の車両用シートベルトプレテンショナーを用いた乗客保護方法。
【請求項6】
前記ロードリミッターの作動後に、前記モーター(51)のトルクを減少させて前記シートベルト(2)の引張力を除去し、乗客のシートベルト(2)からの脱出を容易にするシートベルト引張力除去段階(S16)を、さらに含むことを特徴とする請求項4に記載の車両用シートベルトプレテンショナーを用いた乗客保護方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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