説明

車両用シートロック装置

【課題】ロック状態、アンロック状態及び不完全ロック状態の全ての状態を確実に検出可能にする。
【解決手段】ベース部材と、それぞれ該ベース部材に枢支され、ストライカ5と係合しシートバックを起立位置に保持可能なフックレバー8、ストライカ5に当接していないアンロック検出位置からストライカ5に当接して乗り上げるロック検出位置に移動可能なセンシングレバー11、センシングレバー11がアンロック検出位置にあるときには、センシングレバーに当接したアンロック位置に保持され、センシングレバーがアンロック検出位置からロック検出位置に至る途中の過程においてセンシングレバー11から離れてフックレバー8に当接した不完全ロック位置に保持され、センシングレバー11がロック検出位置に移動したときには、センシングレバー11及びフックレバー8から離れてロック位置に保持されるオープン部材9とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に起倒可能に支持されたシートバックを起立位置に保持可能な車両用シートロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートロック装置においては、車体に起倒可能に支持されるシートバックに取り付けられ車体に固着されたストライカに係合することによってシートバックを起立位置に保持可能なフックレバーと、ストライカに対して当接することによって、ストライカがフックレバーに係合していることを検出可能なセンシングレバーと、センシングレバーに従動しストライカがフックレバーに係合しているロック状態を示すロック位置及び係合していないアンロック状態を示すアンロック位置に移動可能な警告部材とを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用シートロック装置においては、警告部材におけるアンロック位置及びロック位置はセンシングレバーの位置によって決定されるため、シートの取付位置誤差、シートバックの可動部分のガタ付き等によって、シートロック装置に対するストライカの進入位置が基準位置からずれると、それに伴って、ロック状態を検出するセンシングレバーの停止位置も上下方向へずれるため、ロック状態を示す警告部材のロック位置が不安定となり、ロック状態であることを正確に報知することができないという問題点があった。
【0004】
本出願人は、上記問題点を解決するために、本発明の出願前、特許文献2記載の発明を出願した。特許文献2記載の車両用シートロック装置は、警告部材をオープンレバーに同期するように連結することによって、ロック状態を検出するセンシングレバーの停止位置がずれても、ロック状態を確実に報知することができるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4362556号公報
【特許文献2】特開2010−143330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特許文献2記載の発明をさらに改良して、ロック状態、アンロック状態及び不完全ロック状態の全ての状態を確実に検出可能にした車両用シートロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の発明に係わる車両用シートロック装置は、車体に起倒可能に支持されるシートバックまたは前記車体のいずれか一方に固定されるベース部材と、前記ベース部材に枢支されるとともに、第1ばねにより一方向へ付勢され、前記シートバックまたは前記車体のいずれか他方のストライカと係合し前記シートバックを起立位置に保持可能なフックレバーと、前記ベース部材に枢支されるとともに、第2ばねにより一方向へ付勢され、かつ前記ストライカが前記フックレバーに係合する際、前記第2ばねの付勢力に抗して、前記ストライカに当接していないアンロック検出位置から前記ストライカに当接して乗り上げるロック検出位置に移動可能なセンシングレバーと、前記ベース部材に枢支されるとともに、第3ばねにより一方向へ付勢され、かつ前記センシングレバーがアンロック検出位置にあるときには、前記第3ばねの付勢力に抗して、前記センシングレバーに当接したアンロック位置に保持され、前記センシングレバーがアンロック検出位置からロック検出位置に至る途中の過程において前記センシングレバーから離れて前記フックレバーに当接した不完全ロック位置に保持され、前記センシングレバーがロック検出位置に移動したときには、前記センシングレバー及び前記フックレバーから離れて前記第3ばねの付勢力によりロック位置に移動して保持されるオープン部材とを備えることを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、前記第1の発明において、前記オープン部材は、前記第3ばねの付勢力により前記ベース部材に当接することにより前記ロック位置に保持される。
【0009】
第3の発明は、前記第1の発明において、前記オープン部材は、前記オープン部材の動きに同期して前記オープン部材がアンロック位置にあるときアンロック位置に保持され、前記オープン部材がロック位置にあるときロック位置に保持される操作兼警告部材に連結され、前記操作兼警告部材が前記操作兼警告部材をアンロック位置とロック位置間を移動可能に支持するためのガイド部材に当接することにより前記ロック位置に保持される。
【0010】
第4の発明は、前記第1〜3の発明のいずれかにおいて、前記オープン部材は、前記ロック位置から前記アンロック位置を超えたロック解除方向へ回動して前記フックレバーに当接することによって、前記フックレバーを前記ストライカから離脱させる方向へ回動させる第1作用部と、前記不完全ロック位置に保持されるときに前記フックレバーに当接可能な第2作用部と、前記アンロック位置に保持されるときに前記センシングレバーに当接可能な第3作用部とを有する。
【0011】
第5の発明は、第4の発明において、前記オープン部材は、前記ベース部材に枢支されるとともに、前記第1作用部及び前記第2作用部を有する第1オープンレバーと、当該第1オープンレバーと同軸上に枢支されるとともに、前記第3作用部を有する第2オープンレバーとに分割されて形成され、前記ロック解除方向へ回動する際、前記第2オープンレバーが前記ベース部材に当接しそれ以上の回動が阻止された状態にあっても、前記第1オープンレバーと前記第2オープンレバー間に作用する第4ばねの付勢力に抗して前記ロック解除方向へ回動する。
【0012】
第6の発明は、第5の発明において、前記第1オープンレバーは、前記操作兼警告部材に同期し、前記操作兼警告部材の操作によって前記ロック解除方向へ回動する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、オープン部材がロック位置、アンロック位置及び不完全ロック位置にそれぞれ保持されるため、アンロック状態、ロック状態及び不完全ロック状態を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した車両用リヤシートの斜視図である。
【図2】本発明に係わるシートロック装置の分解斜視図である。
【図3】同じくアンロック状態のシートロック装置の側面図である。
【図4】同じくアンロック状態から第1ロック状態に至る途中の状態のシートロック装置の側面図である。
【図5】同じく第1ロック状態手前における不完全ロック状態のシートロック装置の側面図である。
【図6】同じく第1ロック状態のシートロック装置の側面図である。
【図7】同じく第1ロック解除操作状態のシートロック装置の側面図である。
【図8】同じく第2ロック状態手前における不完全ロック状態のシートロック装置の側面図である。
【図9】同じく第2ロック状態のシートロック装置の側面図である。
【図10】図5に示す状態の要部の拡大側面図である。
【図11】本発明に係わる他の実施例の要部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係わる一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、図1における左斜め上方、図2における左斜め下方、図3〜10における左方を「後方」とし、図1における右斜め下方、図2における右斜め上方、図3〜10における右方を「前方」とする。
【0016】
図1に示すように、リヤシート1は、車体フロアに据え付けられるシートクッション2と、シートクッション2の後端部に左右方向を向くヒンジ軸(図示略)により前後方向へ起倒可能に支持されるシートバック3とを備える。
【0017】
シートバック3は、シートバック3内に装着されるシートロック装置4が車体に固着されるストライカ5に係合することによって、図1に実線で示す第1起立位置と、第1起立位置より後傾の2点鎖線で示す第2起立位置とに保持可能であるとともに、シートバック3の肩部に上下動可能に設けられた操作兼警告部材6の押し込み操作に基いて、シートロック装置4とストライカ5との係合を解除して前方へ倒伏する2点鎖線で示す倒伏位置に移動させることができる。
【0018】
ストライカ5は、シートバック3の側部に対向する車体に固定され、前側の第1係合部51と、第1係合部51から後方へ離間する後側の第2係合部52とを有する。
【0019】
図2に示すように、シートロック装置4は、シートバック3内のシートフレーム(図示略)にボルト(図示略)により固定される金属製のベースプレート71と、ベースプレート71の側面に対向するように固定される金属製のカバープレート72とを含むベース部材7を備え、ベースプレート71及びカバープレート72の上下方向のほぼ中央部には、シートバック3を起立させた際、ストライカ5の第1、2係合部51、52が後方から進入可能な前後方向を向くストライカ進入溝73、74が設けられる。
【0020】
ベースプレート71とカバープレート72間には、ストライカ5の第1係合部51または第2係合部52に係合することにより、シートバック3を第1または第2起立位置に保持可能なフックレバー8と、操作兼警告部材6に上下方向を向くロッド等の連結杆14を介して連結され、本発明のオープン部材を形成する第1オープンレバー9及び第2オープンレバー10と、ストライカ5がフックレバー8に係合しているか否かを検出可能なセンシングレバー11が配設される。
【0021】
フックレバー8は、前部がベースプレート71とカバープレート72間におけるストライカ進入溝73、74の前部近傍に左右方向を向く第1枢軸12により上下方向へ揺動可能に枢支され、かつ第1枢軸12に巻装された第1ばね13によりロック方向(図3〜9において反時計方向)へ付勢されている。
【0022】
なお、図3〜9においては、シートロック装置4の内部構成を明示するため、カバープレート72は下部のみを示して上部は省略してある。
【0023】
フックレバー8の後端部寄りの下部には、ストライカ5の第1係合部51または第2係合部52が上方から係合可能に下方が開口する第1係合溝81が設けられ、また第1係合溝81の前方には、第1係合部51が上方から係合可能に下方が開口する第2係合溝82が設けられている。
【0024】
さらに、フックレバー8における第1係合溝81の前側には、下方へ突出する第1アーム部83が設けられ、同じく第1係合溝81と第2係合溝82との間には、第1アーム部83よりも下方へ延出する第2アーム部84が設けられ、また同じく側面には、側方へ突出するピン状の突軸部85が設けられている。第1アーム部83の後縁は、シートバック3を倒伏位置から第1起立位置に移動させた際、ストライカ5の第1係合部51の前部と当接することにより、フックレバー8が第1ばね13の付勢力に抗して時計方向へ回動するように傾斜する傾斜縁86を形成する。
【0025】
シートバック3が倒伏位置にある等してシートロック装置4がストライカ5と係合していないアンロック状態のときには、図3に示すように、フックレバー8は、第1ばね13の付勢力により、第2アーム部84の下端がカバープレート72に当接したアンロック位置に保持される。シートバック3が第1起立位置に保持されてシートロック装置4が第1ロック状態のときには、図6に示すように、フックレバー8の第1係合溝81がストライカ5の第1係合部51に係合し、フックレバー8は、第1ばね13の付勢力に抗して、アンロック位置から時計方向へ所定角度回動するロック位置に保持される。シートバック3が第2起立位置に保持されてシートロック装置4が第2ロック状態のときには、図9に示すように、ストライカ5の第1係合部51がフックレバー8の第2係合溝82に遊嵌し、第2係合部52が第1係合溝81に係合することにより、フックレバー8は、第1ばね13の付勢力に抗して、第1ロック状態と同位置のロック位置に保持される。さらに、操作兼警告部材6が押し込み操作された解除操作状態のときには、図7に示すように、フックレバー8は、第1ばね13の付勢力に抗して、ロック位置からロック解除方向(図6、9において時計方向)へ回動し第1、2係合溝81、82がストライカ5の第1、2係合部51、52から離脱する。
【0026】
センシングレバー11は、フックレバー8に対して側方へ重なり合うように、ベースプレート71におけるストライカ進入溝73の上方に左右方向を向く第2枢軸15により枢支されるとともに、第2枢軸15に巻装された第2ばね16により反時計方向へ付勢される。
【0027】
センシングレバー11の後部下端には、ストライカ5の第1係合部51または第2係合部52がフックレバー8の第1係合溝81に係合した際、第1係合部51または第2係合部52上に乗り上げ可能に下向き山形状の検出部111が設けられている。また、センシングレバー11における検出部111の後縁は、フックレバー8の傾斜縁86と同じ方向へ傾斜する傾斜縁113を形成する。特に図3から理解できるように、センシングレバー11の傾斜縁113は、フックレバー8の傾斜縁86よりも前側、すなわちストライカ5の進入方向の奥側に位置するように設定される。
【0028】
ストライカ5がフックレバー8に係合していないアンロック状態の場合には、図3に示すように、センシングレバー11は、第2ばね16の付勢力により、センシングレバー11の前端(図3において右端)に設けられた当接部112がベースプレート71の前端上部に設けられたストッパ部75に下方から当接することによって、アンロック検出位置に保持される。また、図6(または図9)に示すように、ストライカ5の第1係合部51(または第2係合部52)がフックレバー8の第1係合溝81に係合した第1ロック状態(または第2ロック状態)の場合には、センシングレバー11は、検出部111が第1係合部51(または第2係合部52)上に乗り上げることによって、第2ばね16の付勢力に抗して、アンロック検出位置から時計方向へ所定角度回動したロック検出位置に保持される。
【0029】
第1オープンレバー9は、ベース部材7におけるセンシングレバー11の上方に左右方向を向く第3枢軸17により枢支されるとともに、第3枢軸17の周りに巻装された第3ばね18の付勢力によりロック方向(図3〜図9において時計方向)へ付勢される。
【0030】
図10に明示されるように、第3ばね18は、一端がベースプレート71、他端が第1オープンレバー9にそれぞれ掛止されることにより、第1オープンレバー9に対してロック方向への付勢力を付与するとともに、当該付勢力がセンシングレバー11に作用する第2ばね16の付勢力よりも小となるように設定される。
【0031】
第1オープンレバー9は、後部に設けた連結部91が連結杆14を介して操作兼警告部材6が連結されるとともに、後述の操作兼警告部材6のロック解除操作に基づいて、図6、9に示すロック位置から第3ばね18の付勢力に抗してロック解除方向(図6、9において反時計方向)へ回動したとき、フックレバー8をロック位置からロック解除方向へ回動させ得るようにフックレバー8の突軸部85に後方から当接可能な第1作用部92と、図5(または図8)に示すように、ストライカ5の第1係合部51がフックレバー8の傾斜縁86(または傾斜縁86の前側)に当接しフックレバー8が第1ばね13の付勢力に抗してアンロック位置からロック解除方向(時計方向)へ回動しているとき、すなわち不完全ロック状態のときにフックレバー8の突軸部85に前方から当接して第1オープンレバー9を図5及び図8に示す不完全ロック位置に保持可能な第2作用部93とを有している。
【0032】
操作兼警告部材6は、シートバック3の肩部に取り付けられる上下方向を向く筒状のガイド部材61内に上下方向へ摺動可能に支持されるとともに、第1オープンレバー9の連結部91に連結杆14を介して連結されることによって、第1オープンレバー9と同期して図6、9に示すように、上面がガイド部材61の上端とほぼ同一高さとなったロック位置Aと、図3に示すようにガイド部材61内に所定量没入したアンロック位置Bとに移動して保持され、さらに、押し込みロック解除操作されることによって、図7に示すように、アンロック位置Bよりもさらにガイド部材61内に没入するロック解除位置Cに移動可能である。
【0033】
第2オープンレバー10は、第1オープンレバー9と同軸17上に枢支されるとともに、第3枢軸17の周りに巻装される第4ばね19により第1オープンレバー9を基準にして反時計方向へ付勢され、通常は段部101がオープンレバー9の側面に設けられた突部94に対して反時計方向から当接した状態に保持される。さらに、第2オープンレバー10は、図3及び図4に示すように、センシングレバー11がアンロック検出位置及び当該位置から時計方向へ若干回動した位置との間の範囲にあるとき、センシングレバー11の前上部に設けられた被当接部114に対して上方から当接可能な第3作用部102と、ベースプレート71の上部に設けられたストッパ部76に時計方向から当接することで第2オープンレバー10の時計方向への回動量を制限する当接部103を有している。
【0034】
図10に明示されるように、第4ばね19は、一端が第1オープンレバー9、他端が第2オープンレバー10にそれぞれ掛止されることにより、第2オープンレバー10を第1オープンレバー9を基準にして反時計方向への付勢を付与する。
【0035】
次に、本実施形態の作用について説明する。
(i)シートバック3が倒伏位置にある場合(ストライカ5がフックレバー8に係合していない場合):
図3に示すように、フックレバー8は、第1ばね13により反時計方向へ付勢されて第2アーム部84の下端がカバープレート72に当接することでアンロック位置に保持され、センシングレバー11は、第2ばね16により反時計方向へ付勢されて当接部112がベースプレート71のストッパ部75に当接することでアンロック検出位置に保持されている。第2オープンレバー10は、第3作用部102がセンシングレバー11の被当接部114に当接した位置に保持され、第1オープンレバー9は、第4ばね19により時計方向へ付勢されて突部94が第2オープンレバー10の段部101に当接することでアンロック位置に保持される。
【0036】
上述により、第1オープンレバー9は、第2オープンレバー10を介してアンロック検出位置に保持されているセンシングレバー11に当接することによって、正確なアンロック位置に保持される。また、操作兼警告部材6は、第1オープンレバー9に同期してガイド部材61内に所定量没入したアンロック位置Bに保持されている。従って、乗員は、操作兼警告部材6の上面がガイド部材61内に没入した状態を視認することで、アンロック状態であることを確認することができる。
【0037】
(ii)シートバック3を倒伏位置から第1起立位置に移動させた場合:
シートバック3を倒伏位置から起立させると、先ず図4に示すように、ストライカ進入溝73、74に進入したストライカ5の第1係合部51がフックレバー8の傾斜縁86に当接する。これにより、フックレバー8は、第1ばね13の付勢力に抗して、アンロック位置から時計方向へ所定角度回動する。この状態においては、第1係合部51がセンシングレバー11の傾斜縁113に未だ当接していないため、センシングレバー11がアンロック検出位置に保持された状態にあり、操作兼警告部材6及び第1、2オープンレバー9、10は、アンロック位置に保持されている。
【0038】
さらに、ストライカ5の第1係合部51がストライカ進入溝73、74の奥側へ向けて進入すると、図5に示すように、第1係合部51がフックレバー8の傾斜縁86に当接しつつセンシングレバー11の傾斜縁113にも当接する。これにより、フックレバー8は、第1ばね13の付勢力に抗して、図4に示す位置よりさらに時計方向へ回動し、センシングレバー11は、第2ばね16の付勢力に抗して、後部が上昇し前部が下降するようにアンロック検出位置から時計方向、すなわちロック検出位置へ向けて回動する。
【0039】
図5に示すように、センシングレバー11がロック検出位置へ向けて回動すると、第2オープンレバー10の第3作用部102が上方から当接しているセンシングレバー11の被当接部114との当接を維持したまま下降する。これにより、第1オープンレバー9は、第3ばね18の付勢力により第2オープンレバー10と共にアンロック位置から時計方向、すなわちロック位置へ向けて回動し、第2オープンレバー10の第3作用部102がセンシングレバー11の被当接部114から離れた直後(または同時)、第2作用部93がフックレバー8の突軸部85に前方から当接することによって不完全ロック位置に保持される。また、操作兼警告部材6も第1オープンレバー9に同期してアンロック位置Bとロック位置Aとの間の不完全ロック位置に停止する。
【0040】
上述により、シートバック3が第1起立位置直前の位置に止まって第1起立位置に保持されているか否かを目視で判別できないような不完全ロック状態であっても、第1オープンレバー9は、アンロック位置からロック解除方向へ回動したフックレバー8に当接した不完全ロック位置に保持される。これにより、乗員は、第1オープンレバー9の動きに同期する操作兼警告部材6の上面がガイド部材61内に僅かに没入した状態を視認することで、不完全ロック状態であることを確認することができる。
【0041】
さらに、図5に示す不完全ロック状態からストライカ5の第1係合部51がストライカ進入溝73、74の奥側へ向けて進入すると、図6に示すように、ストライカ5の第1係合部51がフックレバー8の第1係合溝81内に係合することで、シートバック3は第1起立位置に保持される。
【0042】
図6に示す第1ロック状態においては、フックレバー8は、第1ばね13の付勢力によりストライカ5の第1係合部51に係合してロック位置に保持される。センシングレバー11は、検出部111がストライカ5の第1係合部51上に乗り上げることで、第2ばね16の付勢力に抗して、ロック検出位置に回動して当該位置に保持される。第2オープンレバー10は、第1オープンレバー9の第2作用部93がフックレバー8の突軸部85から離れることで、第3ばね18の付勢力により時計方向に回動して、当接部103がベースプレート71のストッパ部76に当接したロック位置に保持される。第1オープンレバー9は、第2オープンレバー10を介してベースプレート71のストッパ部76に当接したロック位置に保持される。従って、センシングレバー11のロック検出位置がストライカ5との当接関係で上下にずれても、このずれは、第1オープンレバー9には何ら影響しないので、第1オープンレバー9を常時正確なロック位置に保持することができる。操作兼警告部材6は、第1オープンレバー9に同期してロック位置Aに移動する。これにより、乗員は、操作兼警告部材6の上面がガイド部材61と平坦となったロック位置Aを視認することで、ロック状態であることを確認することができる。
【0043】
(iii)シートバック3を第1起立位置から倒伏位置または第2起立位置へ移動させる場合:
シートバック3を第1起立位置から倒伏位置に移動させる場合には、図6に示す第1ロック状態において、図7に示すように、操作兼警告部材6をロック位置Aからアンロック位置Bを超えたロック解除位置Cまで押し込み操作する。これにより、操作兼警告部材6のロック解除操作は、連結杆14を介して第1オープンレバー9に伝達され、第1オープンレバー9は、第3ばね18の付勢力に抗して、ロック位置からアンロック位置を超えてロック解除方向(図5において反時計方向)へ回動し、第1作用部92がフックレバー8の突軸部85に後方から当接する。これにより、フックレバー8は、第1ばね13の付勢力に抗して、ロック解除方向へ回動する。
【0044】
図7に示すように、フックレバー8がロック解除方向へ回動すると、フックレバー8の第1係合溝81がストライカ5の第1係合部51から離脱したロック解除状態となって、シートバック3の第1起立位置の保持が解除される。このロック解除状態で、シートバック3を前方へ移動させると、ストライカ5の第1係合部51がストライカ進入溝73、74から退出して、シートバック3を倒伏位置へ移動させることができる。
【0045】
また、シートバック3を第1起立位置から第2起立位置へ移動させる場合には、前記ロック解除状態のとき、シートバック3を後方へ押すと、ストライカ5の第1係合部51がストライカ進入溝73、74の奥側へ進入し図8に示す状態を経て図9に示す位置に移動する。これにより、フックレバー8が第1ばね13の付勢力によりロック位置に移動し、フックレバー8の第1係合溝81内にストライカ5の第2係合部52が係合し、第2係合溝82にストライカ5の第1係合部51が遊嵌することで、第2ロック状態となって、シートバック3は第2起立位置に保持される。
【0046】
第2ロック状態の場合は、フックレバー8は、第1ばね13の付勢力によりロック位置に保持される。センシングレバー11は、検出部111がストライカ5の第2係合部52上に乗り上げることで、第2ばね16の付勢力によりロック検出位置に保持される。第1オープンレバー9は、第2作用部93がフックレバー8の突軸部85から離れることで、第3ばね18の付勢力により時計方向に回動して第2オープンレバー10の当接部103がベースプレート71のストッパ部76に当接したロック位置Aに保持される。また、これに同期して、操作兼警告部材6もロック位置に移動する。これにより、乗員は、操作兼警告部材6の上面がガイド部材61と平坦となったロック位置Aを視認することで、第2ロック状態であることを確認することができる。
【0047】
図8は、ストライカ5の第1係合部51がセンシングレバー11に当接しセンシングレバー11がアンロック検出位置とロック検出位置間にあって、かつフックレバー8の第2アーム部84の下端がストライカ5の第1係合部51上に乗り上げた不完全ロック状態を示す。この状態においては、第1オープンレバー9の第2作用部93がフックレバー8の突軸部85に前方から当接することで、第1オープンレバー9は、アンロック位置とロック位置間の不完全ロック位置に保持される。これにより、操作兼警告部材6も不完全ロック位置に保持されるため、乗員は、操作兼警告部材6の位置を視認することで不完全ロック状態であることを確認することができる。
【0048】
なお、第1オープンレバー9がロック解除方向へ回動する場合、第2オープンレバー10は、第4ばね19の付勢力をもって、所定の位置まで第1オープンレバー9と共にロック解除方向へ回動するが、図7に示すように、第2オープンレバー10がベースプレート71に反時計方向から当接すると、それ以上、ロック解除方向へ回動することはない。第2オープンレバー10のロック解除方向への回動が阻止された以降は、第1オープンレバー9のみが、第4ばね19の付勢力に抗してロック解除方向へ回動する。このように構成すると、第1オープンレバー9のロック解除方向への回動に伴って、第2オープンレバー10の第3作用部102が大きく作動しないため、シートロック装置4の小型化を可能にすることができる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、上記実施形態に対して、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
【0050】
(a)上記実施形態において、オープン部材を、第1作用部92及び第2作用部93を有する第1オープンレバー9と、第3作用部102を有する第2オープンレバー10とに分割したものを用いて説明したが、これに代えて、オープン部材を第1オープンレバー9と第2オープンレバー10とを一体的に形成し、第1、2及び3作用部92、93及び102を一体的に有するものとする。
【0051】
(b)上記実施形態において、ロック状態における操作兼警告部材6のロック位置Aは、図6、9に示すように第2オープンレバー10の当接部103がベースプレート71のストッパ部76に当接した位置によって決定されるものを説明したが、これに代えて、図11に示すような構成としても良い。すなわち、図11に示す他の実施形態においては、ロック状態における操作兼警告部材60のロック位置は、ガイド部材610に設けた突部610aに下方から当接してそれ以上の上方移動が阻止されることによって決定される。この場合は、上記実施形態における第2オープンレバー10の当接部103は省略される。他の実施形態のようにすると、操作兼警告部材60のロック位置は、ガイド部材610と直接当接によって決定されるため、前記実施形態に比して、操作兼警告部材60のロック位置を正確にすることができる。
【0052】
(c)シートロック装置4を車体側に配置し、ストライカ5をシートバック3側に配置する。この場合は、操作兼警告部材6は、車体側に配置される。
【符号の説明】
【0053】
1 リヤシート
2 シートクッション
3 シートバック
4 シートロック装置
5 ストライカ
6 操作兼警告部材
7 ベース部材
8 フックレバー
9 第1オープンレバー(オープン部材)
10 第2オープンレバー(オープン部材)
11 センシングレバー
12 第1枢軸
13 第1ばね
14 連結杆
15 第2枢軸
16 第2ばね
17 第3枢軸
18 第3ばね
19 第4ばね
51 第1係合部
52 第2係合部
60 操作兼警告部材
61 ガイド部材
71 ベースプレート(ベース部材)
72 カバープレート(ベース部材)
73、74 ストライカ進入溝
75、76 ストッパ部
81 第1係合溝
82 第2係合溝
83 第1アーム部
84 第2アーム部
85 突軸部
86 傾斜縁
91 連結部
92 第1作用部
93 第2作用部
94 突部
101 段部
102 第3作用部
103 当接部
111 検出部
112 当接部
113 傾斜縁
114 被当接部
610 ガイド部材
610a 突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に起倒可能に支持されるシートバックまたは前記車体のいずれか一方に固定されるベース部材と、
前記ベース部材に枢支されるとともに、第1ばねにより一方向へ付勢され、前記シートバックまたは前記車体のいずれか他方のストライカと係合し前記シートバックを起立位置に保持可能なフックレバーと、
前記ベース部材に枢支されるとともに、第2ばねにより一方向へ付勢され、かつ前記ストライカが前記フックレバーに係合する際、前記第2ばねの付勢力に抗して、前記ストライカに当接していないアンロック検出位置から前記ストライカに当接して乗り上げるロック検出位置に移動可能なセンシングレバーと、
前記ベース部材に枢支されるとともに、第3ばねにより一方向へ付勢され、かつ前記センシングレバーがアンロック検出位置にあるときには、前記第3ばねの付勢力に抗して、前記センシングレバーに当接したアンロック位置に保持され、前記センシングレバーがアンロック検出位置からロック検出位置に至る途中の過程において前記センシングレバーから離れて前記フックレバーに当接した不完全ロック位置に保持され、前記センシングレバーがロック検出位置に移動したときには、前記センシングレバー及び前記フックレバーから離れて前記第3ばねの付勢力によりロック位置に移動して保持されるオープン部材とを備えたことを特徴とする車両用シートロック装置。
【請求項2】
前記オープン部材は、前記第3ばねの付勢力により前記ベース部材に当接することにより前記ロック位置に保持されることを特徴とする請求項1記載の車両用シートロック装置。
【請求項3】
前記オープン部材は、前記オープン部材の動きに同期して前記オープン部材がアンロック位置にあるときアンロック位置に保持され、前記オープン部材がロック位置にあるときロック位置に保持される操作兼警告部材に連結され、前記操作兼警告部材が前記操作兼警告部材をアンロック位置とロック位置間を移動可能に支持するためのガイド部材に当接することにより前記ロック位置に保持されることを特徴とする請求項1記載の車両用シートロック装置。
【請求項4】
前記オープン部材は、前記ロック位置から前記アンロック位置を超えたロック解除方向へ回動して前記フックレバーに当接することによって、前記フックレバーを前記ストライカから離脱させる方向へ回動させる第1作用部と、前記不完全ロック位置に保持されるときに前記フックレバーに当接可能な第2作用部と、前記アンロック位置に保持されるときに前記センシングレバーに当接可能な第3作用部とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用シートロック装置。
【請求項5】
前記オープン部材は、前記ベース部材に枢支されるとともに、前記第1作用部及び前記第2作用部を有する第1オープンレバーと、当該第1オープンレバーと同軸上に枢支されるとともに、前記第3作用部を有する第2オープンレバーとに分割されて形成され、前記ロック解除方向へ回動する際、前記第2オープンレバーが前記ベース部材に当接しそれ以上の回動が阻止された状態にあっても、前記第1オープンレバーと前記第2オープンレバー間に作用する第4ばねの付勢力に抗して前記ロック解除方向へ回動することを特徴とする請求項4記載の車両用シートロック装置。
【請求項6】
前記第1オープンレバーは、前記操作兼警告部材に同期し、前記操作兼警告部材の操作によって前記ロック解除方向へ回動することを特徴とする請求項5記載の車両用シートロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−106676(P2012−106676A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258206(P2010−258206)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000148896)三井金属アクト株式会社 (127)
【Fターム(参考)】