説明

車両用シート

【課題】 オットマン本体の無駄な動きを削減し、作動時間の短縮を図ることを目的とする。
【解決手段】 本発明に係る車両用シートは、着座判別手段11sにより着座者がシート本体に着座していると判別されたときに、制御手段ECUは、シート本体が回転機構によって回転させられる際、所定の回転位置でオットマン本体が着座者の脚部を持ち上げた状態を維持できるように、昇降機構を制御してそのオットマン本体を第1位置まで上昇させ、また、着座判別手段11sにより着座者がシート本体に着座していないと判別されたときに、制御手段ECUは、シート本体が回転機構によって回転させられる際、所定の回転位置でオットマン本体が第1位置よりも低い第2位置を維持するように、昇降機構を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート本体に着座している着座者の脚部を持ち上げるオットマン本体を備える車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
上記した車両用シートについては種々のものが提案されている。
例えば、特許文献1に記載された車両用シートは、シート本体に着座している着座者の膝下部を持ち上げる板状のオットマン本体と、そのオットマン本体の傾斜角度を調整する角度調整機構とを備えている。角度調整機構が動作して、オットマン本体が上方(傾斜角度が小さくなる方向)に回動すると着座者の脚部が持ち上げられるようになる。逆に、オットマン本体が下方(傾斜角度が大きくなる方向)に回動すると着座者の脚部が下降し、途中で着座者の足が床面に着くようになる。
【0003】
【特許文献1】特開平11−253271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、この種の車両用シートでは、シート本体に着座者が着座している場合と、着座していない場合とで、オットマン本体の動作を変えることはできない。
例えば、前記車両用シートを車両前向き位置から横向き位置まで回転させる際、所定の回転位置でオットマン本体を上昇させて車体と着座者及びシート本体(オットマン本体)との干渉を避ける場合がある。この場合、上記した車両用シートでは、シート本体に着座者が着座していない場合でも、着座している場合と同じようにオットマン本体を上昇させることになる。しかし、シート本体に着座者が着座していない場合には、着座者がいる場合ほどオットマン本体を上昇させなくても、車体とシート本体(オットマン本体)との干渉を避けられることがある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、シート本体に着座者が着座している場合と、着座していない場合とで、オットマン本体の動作を変えられるようにして、オットマン本体の無駄な動きを削減し、作動時間の短縮を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、シート本体と、該シート本体に着座した着座者の脚部を持ち上げるオットマン本体と、該オットマン本体を昇降させる昇降機構と、前記シート本体を車両前方を向く前向き位置と乗降口を向く外向き位置との間で水平回転させる回転機構と、前記シート本体に着座者が着座しているか否かを判別する着座判別手段と、前記昇降機構および前記回転機構とを制御する制御手段とを有し、前記着座判別手段により着座者が前記シート本体に着座していると判別されたときに、前記制御手段は、前記シート本体が前記回転機構によって回転させられる際、所定の回転位置で前記オットマン本体が着座者の脚部を持ち上げた状態を維持できるように、前記昇降機構を制御してそのオットマン本体を第1位置まで上昇させ、また、前記着座判別手段により着座者が前記シート本体に着座していないと判別されたときに、前記制御手段は、前記シート本体が前記回転機構によって回転させられる際、所定の回転位置で前記オットマン本体が前記第1位置よりも低い第2位置を維持するように、前記昇降機構を制御することを特徴とする。
【0007】
本発明によると、着座判別手段により着座者がシート本体に着座していると判別されたときに、制御手段は、前記シート本体が回転機構によって回転させられる際、所定の回転位置で前記オットマン本体が着座者の脚部を持ち上げた状態を維持できるように、前記昇降機構を制御してそのオットマン本体を第1位置まで上昇させる。
また、前記着座判別手段により着座者が前記シート本体に着座していないと判別されたときに、前記制御手段は、前記シート本体が前記回転機構によって回転させられる際、所定の回転位置で前記オットマン本体が前記第1位置よりも低い第2位置を維持するように、前記昇降機構を制御する。
このように、シート本体に着座者が着座している場合と、着座していない場合とで、オットマン本体の動作が変わるため、オットマン本体の無駄な動きを削減し、作動時間の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、シート本体に着座者が着座している場合と、着座していない場合とで、オットマン本体の動作が変わるため、オットマン本体の無駄な動きを削減し、作動時間の短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[実施形態1]
次に、本発明の実施形態1を図1〜図9に基づいて説明する。図1、図2は本実施形態に係る車両用シートに使用されるオットマン装置、及びその車両用シートの配線ブロック図であり、図3、図4はオットマン装置の動作を表すフローチャートである。図5は車両用シートを備える車両の模式平面図であり、図6〜図9は車両用シートの構成を表す側面図等である。なお、図中のRHは車両右方向、LHは車両左方向、FRは車両前方向、RRは車両後方向を表している。
以下説明する実施形態では、車両用シート1として運転席を例示する。
【0010】
<車両用シート1の構成の概要について>
この車両用シート1は、図5に示すように、車両Mの右側前部に位置している。この車両用シート1の前方には、移動式のステアリングホイール2が配置されている。また、この車両Mの左右側部であって、運転席(車両用シート1)の右側方及び助手席3の左側方には、電動モータを駆動源として上下に回動して開閉する通称ガルウイングと呼ばれる電動式の運転席ドア4と助手席ドア5が装備されている。
車両用シート1及び助手席3は、それぞれ後述する前後移動機構20により車両前後方向に一定の範囲で移動可能であるとともに、同じく後述する回転機構30により車両正面向きの前向き位置と乗降口側に向いた外向き位置との間で約90°水平回転可能に設けられている。助手席3は車両用シート1とほぼ同様に構成されているので、以下車両用シート1の支持構造等について説明する。
【0011】
この車両用シート1は、図2、図6等に示すように、シート本体10と、このシート本体10を車両前後方向に一定の範囲で移動させるための前後移動機構20と、シート本体10を上記した前向き位置と外向き位置との間で水平回転させる回転機構30と、シート本体10に着座した着座者の脚部Lを下方から押し上げるオットマン本体51を有するオットマン装置50と、シート本体10を前後に傾動させるチルト機構70(図9参照)と、これら各機構20,30,50,70の動作制御を行う制御装置ECUとを備えている。
【0012】
前後移動機構20は、図2に示すように、車両MのフロアF上に固定された左右一対の固定レール21,21と、それらの固定レール21,21に沿って前後スライドが可能なスライドテーブル22とを備えている。さらに、車両MのフロアF上には、前後移動機構20の駆動源であるスライドモータ24が取り付けられている。
前後移動機構20のスライドテーブル22上には回転機構30が設置されており、その回転機構30の回転ベース(図示省略)上にチルト機構70を介してシート本体10が設置されている。また、スライドテーブル22には、回転機構30の駆動源である回転モータ34(図2参照)が取り付けられている。
チルト機構70は、シート本体10を前後に傾動させる機構であり、回転機構30の回転ベース上に設置されている。チルト機構70は、図9に示すように、左右一対のチルトレール72,72を備えており、それらのチルトレール72,72が上側に凸となる向きに湾曲した状態で前記回転ベース上に固定されている。左右のチルトレール72,72にはそれぞれ摺動ブロック(図示省略)が連結されており、それらの摺動ブロックにシート本体10を支持するチルトフレーム(図示省略)が固定されている。これにより、シート本体10を支持するチルトフレームは左右のチルトレール72,72に沿って移動可能となる。
【0013】
回転機構30の回転ベース上には、チルトレール72,72に沿ってねじ軸77が回転可能に支持されており、そのねじ軸77にチルトモータ76が連結されている。そして、前記ねじ軸77にナット78が螺合されており、そのナット78がシート本体10を支持する前記チルトフレームに固定されている。これにより、チルトモータ76が駆動されると、ナット78とねじ軸77との螺合作用により、シート本体10がチルトレール72,72に沿って移動しつつ前傾し、または後傾するようになる。なお、シート本体10側に固定されたナット78がねじ軸77に沿ってスムースに移動できるように、ねじ軸77及びチルトモータ76は上下に揺動可能な状態で前記回転ベースに支持されている。
シート本体10は、図2に示すように、シートクッション11とシートバック12を備えており、シートクッション11のほぼ中央内側に着座者が着座したか否かを検知するための着座センサ11sが装着されている。
【0014】
<オットマン装置50の構成について>
さらに、シートクッション11の前部には、図2、図6等に示すように、オットマン装置50が装備されている。オットマン装置50は、着座者の脚部Lを持ち上げるオットマン本体51を備えている。オットマン本体51は、図8に示すように、着座者の脚部Lのうち、膝より上側の膝上部Luの背面側(着座状態で下面側)を受ける膝上当接部51uと、膝より下側の膝下部Ldの背面側を受ける膝下当接部51dを備えている。図示するように膝上当接部51uと膝下当接部51dは、L字形に屈曲している。また、当該オットマン本体51の格納状態において、図6、図7に示すように、膝上当接部51uは、シートクッション11とほぼ面一の座面を形成する。すなわち、本例のオットマン本体51は、その格納時においてシートクッション11の一部を構成している。
オットマン本体51は、シートクッション11の前部に沿って位置する格納位置(下限位置)と、上方へ移動した保持位置との間を移動可能に設けられている。シートクッション11の下面側には、オットマン固定フレーム(図示省略)が取り付けられており、このオットマン固定フレームの下面に2基のオットマンモータ53,53が連結されている。この2基のオットマンモータ53,53は同じ方向に同じ速度で回転する。また、両オットマンモータ53,53は同時に起動、停止される。このオットマンモータ53,53の回転は左右一対のピニオンギヤ55,55に伝達されるようになっている。
オットマンモータ53,53の下方には、図8に示すように、左右一対のオットマンレール57,57が取り付けられている。左右のオットマンレール57,57は、シートクッション11の前方に位置しており、下側に凸なる向きに湾曲している。両オットマンレール57,57にはそれぞれ1個の摺動ブロック体(図示省略)ががたつきなくスムーズに移動可能に装着されている。
【0015】
それぞれの前記摺動ブロック体には、オットマン本体51側に固定された本体フレーム59の後部が固定されている。さらに、左右の本体フレーム59,59には、それぞれラック60が取り付けられている。この左右のラック60,60は、それぞれ上記オットマンレール57と同様下向きに凸となる向きに湾曲している。また、左右のラック60,60はオットマンレール57,57と同じ曲率で湾曲している。このように設けられた左右一対の本体フレーム59,59の先端部間にオットマン本体51が取り付けられている。また、上記左右一対のラック60,60には、それぞれピニオンギヤ55,55が噛み合わされている。
このため、オットマンモータ53,53が起動して左右のピニオンギヤ55,55が回転すると、それぞれのラック60,60に対する噛み合い状態を経て左右のラック60,60ひいては本体フレーム59,59がオットマンレール57,57に沿って移動し、これによりオットマン本体51が円弧形状の移動経路(湾曲経路)に沿って上下に移動する。
図7に示すようにオットマン本体51が格納位置(下限位置)に戻されると、その膝上当接部51uは、前記したようにシートクッション11とほぼ面一の座面を形成する。また、この格納位置では、オットマン本体51の膝下当接部51dは、膝上当接部51uの前端から下方へ張り出した状態に位置される。
一方、オットマンモータ53,53が保持側(上昇側)に起動すると、オットマン本体51は図7に示す格納位置から上記湾曲経路に沿って上側の保持位置へ向けて上昇する。オットマン本体51が格納位置から上昇し始めると、先ず膝上当接部51uによって着座者の膝上Luが上方へ押し上げられる。このため、着座者の膝上Luはその付け根付近であるヒップポイントHPを中心にして上方(図7において時計回り方向)に回動される。膝上Luが上方に回動されることにより相対的に膝下Ldが膝N付近を中心にして下方(図7において反時計回り方向)に回動され、その結果着座者はさらに膝Nを折り曲げた状態となる。こうしてオットマン本体51がさらに上昇して着座者の脚部Lが膝Nをさらに折り曲げた状態となることによって、オットマン本体51の膝下当接部51dが着座者の膝下Ldの背面に当接される。以後、膝上当接部51uを着座者の膝上Luの背面に当接させ、かつ膝下当接部51dを着座者の膝下Ldの背面に当接させた状態で、当該オットマン本体51が上昇して保持位置に至る。
オットマン本体51が保持位置まで上昇した状態が図8に示されている。図示するようにオットマン本体51が保持位置に至った状態では、着座者の脚部Lは膝Nを折り曲げた状態のままで足FTを車両フロアFからリフトさせた高さに保持される。
即ち、オットマンモータ53,53、及びラック60,60、ピニオンギヤ55等が本発明の昇降機構に相当する。
【0016】
<車両用シート1の制御の概要について>
車両用シート1における前後移動機構20のスライドモータ24、回転機構30の回転モータ34、オットマン装置50のオットマンモータ53,53及びチルト機構70のチルトモータ76の各DCモータには、パルスセンサが設けられており、回転方向及び回転角度が検出できるように構成されている。各々のDCモータにおけるパルスセンサの信号は制御装置ECUに入力される(図2参照)。さらに、各々のDCモータは、制御装置ECU及びモータドライブ回路(図1参照)によってPWM制御され、各々のDCモータの出力が調節される。
【0017】
<オットマン装置50の制御について>
上記したように、オットマン装置50のオットマンモータ53,53にはそれぞれパルスセンサ53p,53pが設けられており、図1に示すように、パルスセンサ53p,53pの信号が制御装置ECUに入力される。制御装置ECUは、パルスセンサ53p,53pの信号に基づいて、オットマンモータ53,53の回転方向を検出し、オットマン本体51が上昇中であるか、下降中であるかを判別する。さらに、制御装置ECUは、パルスセンサ53p,53pの信号に基づいて、オットマンモータ53,53の回転角度を検出し、単位時間あたりの前記回転角度に基づいてオットマン本体51の上昇速度、あるいは下降速度を演算する。
また、制御装置ECUには、シートクッション11の着座センサ11sの信号が入力される。これによって、制御装置ECUは、着座者がシートクッション11に着座しているか否かを判別できるようになる。即ち、着座センサ11s及び制御装置ECUが本発明の着座判別手段に相当する。
制御装置ECUは、オットマンモータ53,53のパルスセンサ53p,53pの信号に基づいて、それらのオットマンモータ53,53の出力値を演算し、その信号をモータドライブ回路(図1参照)に出力する。モータドライブ回路は、制御装置ECUからの信号に基づいて、オットマンモータ53,53に供給するパルスの幅を制御(PWM制御)し、オットマンモータ53,53の出力(C(定数)×T(トルク)×N(回転数))を調整する。
【0018】
さらに、制御装置ECUは、前記モータドライブ回路に対してオットマンモータ53,53のブレーキ信号をPWM制御出力可能に構成されている。モータドライブ回路は、制御装置ECUからのブレーキ信号を受けて、オットマンモータ53,53に対する電力の供給を停止し、オットマンモータ53,53(DCモータ)の端子間を電気的にショートさせる(図1(B)参照 ショートブレーキ)。
DCモータの端子間がショートされた状態で、そのモータが外力により回転させられると、コイルに逆起電力が発生し、その逆起電力に起因する電流Iが流れる。これにより、その電流Iが流れているコイルとモータの磁界との間でそのモータの回転を妨げる方向の回転力が発生する。これがショートブレーキである。
ショートブレーキは、オットマン本体51を緩やかに下降させる際に使用される。
【0019】
次に、図3、図4のフローチャートに基づいて、オットマン装置50の動作説明を行う。ここで、前記フローチャートに基づく処理を実行するためのプログラムは制御装置ECUのROMに格納されている。
シート本体10に着座者が着座している状態、即ち、着座センサ11sがオンの状態で(ステップS101 YES)、オットマン本体51の上昇タイミングになると(ステップS102 YES)、オットマンモータ53,53が上昇側に起動する。これによって、オットマン本体51は、図7に示す格納位置から湾曲経路に沿って上側の保持位置に向けて上昇する。
このとき、制御装置ECU及びモータドライブ回路は、オットマン本体51の上昇を妨げる方向の負荷(逆負荷)、即ち、着座者の脚部Lの重量、オットマン本体51の重量及びオットマンレール57,57に対する摺動ブロック体の摺動抵抗等に打ち勝って、前記オットマン本体51を所定速度で上昇させることができるように、オットマンモータ53,53の出力を制御する。
【0020】
オットマン本体51が格納位置から上昇し始めると、先ず膝上当接部51uによって着座者の膝上Luが上方へ押し上げられる。このため、着座者の膝上Luはその付け根付近であるヒップポイントHPを中心にして上方(図7において時計回り方向)に回動される。膝上Luが上方に回動されることにより相対的に膝下Ldが膝N付近を中心にして下方(図7において反時計回り方向)に回動され、その結果着座者はさらに膝Nを折り曲げた状態となる。こうしてオットマン本体51がさらに上昇して着座者の脚部Lが膝Nをさらに折り曲げた状態となることによって、オットマン本体51の膝下当接部51dが着座者の膝下Ldの背面に当接される。
以後、膝上当接部51uを着座者の膝上Luの背面に当接させ、かつ膝下当接部51dを着座者の膝下Ldの背面に当接させた状態で、当該オットマン本体51が上昇して図8に示す保持位置に至る(ステップS103)。オットマン本体51が保持位置に至ると、制御装置ECU及びモータドライブ回路は、オットマン本体51がその位置に保持されるように、オットマンモータ53,53の出力を制御する。
ここで、オットマン本体51の前記保持位置は、着座者の足FTを車両フロアFから一定距離リフトさせるために、必要なリフト量が設定されている。また、この設定は制御装置ECU内にメモリされており、任意に変更することができる。
【0021】
次に、オットマン本体51の下降タイミングになると(ステップS104 YES)、オットマン下降制御が行なわれる(ステップS105)。オットマン下降制御が開始されると、オットマンモータ53,53に対する電源の供給が止められる。これによって、オットマン本体51は、着座者の脚部Lの重量、及び自重により下降する。オットマン本体51の下降動作は、ラック60,60とピニオンギヤ55,55を介してオットマンモータ53,53に伝達され、オットマンモータ53,53が下降方向に回転する。そして、オットマンモータ53,53の下降方向の回転がパルスセンサ53p,53pによって制御装置ECUに入力される。即ち、オットマンモータ53,53の電源オフ状態におけるパルスセンサ53p,53pの信号からオットマン本体51に下降方向の負荷(逆負荷)が加わっているか否かを判別できる。
逆負荷が有りと判別された場合には(図4 ステップ112 YES)、制御装置ECUは、前記モータドライブ回路に対してオットマンモータ53,53のブレーキ信号をPWM制御出力する。モータドライブ回路は、制御装置ECUからのブレーキ信号を受けて、オットマンモータ53,53の端子間を電気的にショートさせる(ステップS113)。これによって、オットマンモータ53,53のコイルに逆起電力が発生し、その逆起電力に起因する電流Iにより、オットマンモータ53,53の下降方向の回転を妨げる力(トルク)が発生する。そして、前記トルクがブレーキとなるように、制御装置ECUがブレーキ信号をPWM制御出力することにより、オットマン本体51はオットマンレール57,57に沿って安定した速度で緩やかに下降する。
【0022】
これによって、着座者の足FTがゆっくりとフロアF等に着地し、着座者に不安感を与えることがない。
このようにして、着座者の足FTがフロアF等に着くと、オットマン本体51に加わる着座者の脚部Lの重量が減少するため、下降方向の負荷(逆負荷)は大幅に減少する。このため、オットマン本体51の下降速度がほぼ零になり、その下降速度の低下がパルスセンサ53p,53pにより検出される。即ち、パルスセンサ53p,53pの信号により、逆負荷の減少(逆負荷なし)が検出される。これによって、図4におけるステップS112の判定がNOになり、制御装置ECUは前記モータドライブ回路にオットマン下降信号を出力する。これを受けて、前記モータドライブ回路は、オットマンモータ53,53を下降方向に駆動させる。これにより、オットマン本体51は、比較的高速で格納位置まで戻される(ステップS115 YES)。このように、着座者の足FTがフロアF等に着いた後は、オットマン本体51が比較的高速で格納位置まで戻されるため、格納動作が迅速になる。
即ち、図3、図4のフローチャートに基づく処理を実行する制御装置ECUが本発明の制御手段に相当する。さらに、オットマン本体51の保持位置が本発明におけるオットマン本体51の第1位置に相当し、着座者の足FTがフロアF等に着地した状態のオットマン本体51の位置(格納位置以外)が、本発明におけるオットマン本体51の第2位置に相当する。
【0023】
次に、シート本体10に着座者が着座していない状態におけるオットマン装置50の動作について説明する。
シート本体10に着座者が着座していない状態、即ち、着座センサ11sがオフの状態で(図3 ステップS101 NO)、オットマン本体51の上昇タイミングになると(ステップS106 YES)、オットマンモータ53,53が上昇側に起動し、オットマン本体51は定位置(第2位置)まで上昇してその位置に保持される。
また、オットマン本体51の下降タイミングになると(ステップS108 YES)、オットマンモータ53,53が下降側に起動し、オットマン本体51は格納位置に戻される。
【0024】
<車両用シート1の全体動作について>
車両用シート1を構成する前後移動機構20、回転機構30、オットマン装置50及びチルト機構70の各動作は、制御装置ECUによって相互に関連付けられている。
先ず、降車時について説明する。運転席に着座した着座者が図示省略した降車開始スイッチを操作すると、電動式の運転席ドア4が上方へ回動して開かれる。次に、ステアリングホイール2が格納位置に向けて移動し始める。
ステアリングホイール2の格納動作が開始されると、同時に若しくはその後一定時間後に、スライドモータ24が起動してシート本体10がリヤモーストに向けて後退し始める。
また、シート本体10の後退動作中にオットマンモータ53,53が起動してオットマン装置50の作動が開始される。降車時の場合、先ずオットマン本体51が格納位置から保持位置へ向けて上昇し始めることにより、着座者の脚部Lが上方へ押し上げられ、これにより着座者の足FTが車両フロアFからリフトされる。なお、シート本体10に着座者が着座していない場合には、オットマン本体51は定位置(第2位置)まで上昇してその位置に保持される。なお、前記第2位置は、オットマン本体51等がロッカー部Rと干渉しない位置に設定されている。
シート本体10の後退動作及びオットマン本体51の上昇動作が完了すると、回転モータ34が起動してシート本体10が車両正面向きに前向き位置から乗降口側に向けて右回転し始める。この回転動作中、着座者の脚部Lはオットマン装置50によって保持位置に保持されて足FTがロッカー部Rに干渉することが回避される。
次に、シート本体10の回転動作中に、チルトモータ76が起動してチルト機構70が作動し始める。このタイミングは、シート本体10の回転動作に伴い着座者の足FTがロッカーR及びピラーを通過して車室外へ至った時点に設定されている。
チルト機構70が作動を開始し始めることにより、シート本体10は乗降口側に回転しつつ車室外側に移動して前傾方向に傾動し始める。この段階では、着座者の足FTは、ロッカー部R及びピラー等(乗降口)を通過して車室外へ至っている。シート本体10のチルトダウン動作が完了すると、シートクッション11の後部に対する前部の相対高さが着座状態における場合よりも低くなってほぼ水平状態となるため、着座者はより楽に立ち上がり動作をしやすくなる。
さらに、シート本体10の乗降口側への回転動作中及び前傾側へのチルトダウン動作中に、オットマン装置50が格納側に作動し始める。オットマン本体51の格納動作は、前記上昇動作よりも低速でなされる。足FTとゆっくりと路面GL若しくは車両フロアFに着地させることにより、着座者に安心感を与えるためである。
以上のようにシート本体10が乗降口側に回転し、チルトダウン動作が完了し、かつオットマン本体51が格納位置に戻されると、当該車両用シート1の降車時における一連の動作が完了する。
【0025】
次に、乗車時における各機構20,30,50,70の動作について説明する。
先ず、前傾状態のシート本体10に着座者が着座して、図示省略した乗降開始スイッチを操作すると、オットマン装置50のオットマンモータ53,53が上昇側に起動してオットマン本体51が格納位置から保持位置に向けて上昇し始める。なお、シート本体10に着座者が着座していない場合には、オットマン本体51は定位置(第2位置)まで上昇してその位置に保持される。
また、オットマン本体51の上昇動作途中にチルト機構70が作動してシート本体10がチルトアップされる。チルト機構70のチルトモータ76が起動してシート本体10がチルトアップされると、当該シート本体10が車室内側に移動しつつシートクッション11の前部が後部に対してリフトされる。
チルトアップ動作が開始されると、回転機構30が作動し始め、さらにドア4が閉じ始める。回転機構30の作動開始は、着座者の足FTがロッカー部Rやピラー等の乗降口に干渉しない位置までチルト機構70により車室内側へ移動した時点に設定されている。オットマン本体51が保持位置まで上昇して着座者の脚部Lが下方から押し上げられ、またシート本体10がチルトアップされた状態で該シート本体10が車両正面向きの前向き位置に向けて回転する。
シート本体10及び着座者が車両正面向きの前向き位置に到達すると、回転モータ34が停止されて回転動作が終了する。回転動作が終了すると、これと同時にステアリングホイール2が旋回操作可能な使用位置まで取り出される。また、これとは別に前後移動機構20のスライドモータ24が前進側に起動してシート本体10がリヤモーストから前進する。
また、シート本体10の前進動作開始と同時に、オットマンモータ53,53が下降制御されて、オットマン本体51が保持位置から格納位置に向けて下降する。
シート本体10の回転動作が完了した後、シート本体10は着座者の身長に適合したシートポジションまで前進する。この後、オットマン本体51の下降により着座者の足FTが車両フロアFに着地され、さらにオットマン本体51が格納位置まで戻された状態で、一連の乗降動作が完了する。
【0026】
<車両用シート1の長所について>
以上のように構成した本実施形態の車両用シート1によれば、着座センサ11sにより着座者がシート本体10に着座していると判別されたときに、制御装置ECUは、シート本体10が回転機構30によって回転させられる際、所定の回転位置でオットマン本体51が着座者の脚部Lを持ち上げた状態を維持できるように、オットマンモータ53,53を制御してそのオットマン本体51を保持位置(第1位置)まで上昇させる。
また、着座センサ11sにより着座者がシート本体10に着座していないと判別されたときに、制御装置ECUは、シート本体10が回転機構30によって回転させられる際、所定の回転位置でオットマン本体51が保持位置(第1位置)よりも低い第2位置を維持するように、オットマンモータ53,53を制御する。
このように、シート本体10に着座者が着座している場合と、着座していない場合とで、オットマン本体51の動作が変わるため、オットマン本体51の無駄な動きを削減し、作動時間の短縮を図ることができる。
また、第2位置は、オットマン本体51がシート本体10に着座している着座者の脚部Lを持ち上げない位置に設定されているため、シート本体10に着座者が着座していない場合に、オットマン本体51の昇降動作が必要最小限になる。
【0027】
<変更例について>
以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、本実施形態では、オットマン本体51の第2位置を着座者の足FTがフロアF等に着地した状態の位置(格納位置以外)に設定する例を示したが、前記格納位置でオットマン本体51が車両Mのロッカー部R等と干渉しない場合には、前記格納位置を第2位置とすることも可能である。
また、シート本体10に着座者が着座している場合と、着座していない場合とで、オットマン本体51の動作を変える例を示したが、前後移動機構20、チルト機構70等の動作を変えることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る車両用シートに使用されるオットマン装置の配線ブロック図(A図)、及びショートブレーキを表す模式図(B図)である。
【図2】本実施形態に係る車両用シートの配線ブロック図である。
【図3】オットマン装置の動作を表すフローチャートである。
【図4】オットマン装置の動作を表すフローチャートである。
【図5】車両用シートを備える車両の模式平面図である。
【図6】車両用シートの構成を表す側面図である。
【図7】オットマン装置の駆動機構の側面図である。
【図8】オットマン装置の駆動機構の側面図である。
【図9】チルト機構の側面図である。
【符号の説明】
【0029】
M …車両
1 …車両用シート
10 …シート本体
11 …シートクッション
11s…着座センサ(着座判別手段)
12 …シートバック
22 …スライドテーブル
24 …スライドモータ
20 …前後駆動機構
30 …回転機構
34 …回転モータ
50 …オットマン装置
51 …オットマン本体
53 …オットマンモータ(昇降機構)
55 …ピニオンギヤ(昇降機構)
57 …オットマンレール(昇降機構)
60 …ラック(昇降機構)
L …着座者の脚部
FT …着座者の足
ECU…制御装置(制御手段、着座判別手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体と、
該シート本体に着座した着座者の脚部を持ち上げるオットマン本体と、
該オットマン本体を昇降させる昇降機構と、
前記シート本体を車両前方を向く前向き位置と乗降口を向く外向き位置との間で水平回転させる回転機構と、
前記シート本体に着座者が着座しているか否かを判別する着座判別手段と、
前記昇降機構および前記回転機構とを制御する制御手段とを有し、
前記着座判別手段により着座者が前記シート本体に着座していると判別されたときに、前記制御手段は、前記シート本体が前記回転機構によって回転させられる際、所定の回転位置で前記オットマン本体が着座者の脚部を持ち上げた状態を維持できるように、前記昇降機構を制御してそのオットマン本体を第1位置まで上昇させ、
また、前記着座判別手段により着座者が前記シート本体に着座していないと判別されたときに、前記制御手段は、前記シート本体が前記回転機構によって回転させられる際、所定の回転位置で前記オットマン本体が前記第1位置よりも低い第2位置を維持するように、前記昇降機構を制御することを特徴とする車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−97993(P2007−97993A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294682(P2005−294682)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】