説明

車両用シート

【課題】ドライバーシートの左右両側にパッセンジャーシートが配設されている場合であっても、乗員がドライバーシートに容易に着座することができる車両用シートを提供する。
【解決手段】車幅方向中央部のドライバーシート5と該ドライバーシート5の側方に配置されたパッセンジャーシート7とを、ドライバーシート5の後方に配置した回転中心Cを中心として同時に回転させ、ドライバーシート5がドア開口部11に対面するようにした。これにより、ドライバーシート5に乗員が容易に乗り込みやすくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。更に詳しくは、車幅方向の中央部にドライバーシートを配置し、該ドライバーシートの側方にパッセンジャーシートを配置した車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車幅方向の中央部にドライバーシートを配置し、該ドライバーシートの左右両側にパッセンジャーシートを一対に配置した車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載された車両用シートにおいては、車幅方向中央部にドライバーシートを配置し、該ドライバーシートの左右両側で、かつ、ドライバーシートよりも車両後方側に一対のパッセンジャーシートをオフセット配置している。
【特許文献1】特開平11−235988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の車両用シートでは、ドライバーシートが一対のパッセンジャーシートの中央側に配置されているため、乗員がドライバーシートに着座する際に、パッセンジャーシートが邪魔になるという問題があった。また、パッセンジャーシートに既に乗員が着座しているときには、乗員がドライバーシートに着座することができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、ドライバーシートの左右両側にパッセンジャーシートが配設されている車両であっても、乗員がドライバーシートに容易に着座することができる車両用シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用シートは、車幅方向の左右両側に所定間隔をおいて配置した一対のパッセンジャーシートと、これらのパッセンジャーシートの間に配置したドライバーシートと、を備え、前記ドライバーシートを前記パッセンジャーシートの一方側と共に回転させることによって、前記ドライバーシートを車体のドア開口部に対面させるように構成したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用シートによれば、ドライバーシートを回転させてドア開口部に対面させるという比較的単純な動作によって、乗員がドライバーシートに容易に乗り込めるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0009】
図1は本発明の実施形態による車両室内の前部を概略的に示す平面図、図2は本発明の実施形態によるドライバーシートとパッセンジャーシートの分解斜視図である。
【0010】
図1に示すように、この車体1の車両室内の前端部には、車幅方向に沿ってインストルメントパネル3が配設されており、該インストルメントパネル3の後方側には、ドライバーシート5とパッセンジャーシート7,9とが配設されている。具体的には、車体の車幅方向中央側にドライバーシート5が配設され、該ドライバーシート5の左右両側にはパッセンジャーシート7,9がドライバーシート5に近接した状態で左右一対に配設されている。なお、パッセンジャーシート7,9の側方には、ドア開口部11が形成されており、該ドア開口部11には、図外の開閉可能なドアが設けられている。なお、図1におけるドライバーシート5の後方側には、後述するように、ドライバーシート5及び左側のパッセンジャーシート7を回転させる仮想的な回転中心Cが配置されている。
【0011】
次いで、図2を用いて、本実施形態による車両用シートの構造を簡単に説明する。
【0012】
車両左側に配置されたパッセンジャーシート7は、下部に配設されてフロア上を走行するシートフレーム13と、該シートフレーム13の上に載置されて、シートフレーム13にスライド可能に係合されたシート本体15とからなる。
【0013】
前記シート本体15は、下端にスライド部17が設けられた左右一対の脚部19,19と、これらの脚部19,19の間に配置され、取付板21を介して配設された歯合板材23と、前記脚部19の上に配設されたシートクッション25と、該シートクッション25に対して回動可能に支持されたシートバック27と、からなる。前記スライド部17は、断面略コ字状に形成され、下側が開口している。また、前記歯合板材23は、車両前後方向に沿って延び、ドライバーシート側の面に歯部29が連続して形成されている。
【0014】
前記シートフレーム13は、複数の打ち抜き部が形成されたフレーム本体31と、該フレーム本体31の左右両端に設けられて前後方向に沿って延びるレール部33,33と、該レール部33の前端及び後端から斜め下方に延びる支持脚35,35と、該支持脚35,35の下面に回動可能に取り付けられた走行車輪37と、前記フレーム本体31に設けられたモータ39とからなる。前記レール部33には、シート本体15のスライド部17が摺動可能に係合されている。
【0015】
このモータ39には、上方向及び下方向に向けて回転可能なギヤ部41,43が設けられている。上側のギヤ部41は、前記歯合板材23の歯部29に歯合されているため、ギヤ部41を回転させると歯合板材23に前後方向の移動荷重を付与し、シート本体15をレール部33に沿って摺動させることができる。また、走行車輪37は、上下方向に延びる軸を中心に回転可能な基部45と、該基部45の下側に配置されてフロアに当接しながら回転することにより、フロア上を走行する車輪部47とからなる。
【0016】
また、ドライバーシート5も、前記パッセンジャーシート7とほぼ同様の構造を有する。ただし、取付板21及び歯合板材23とモータ39は配設されていない。さらに、フレーム本体49は、パッセンジャーシート7のフレーム本体31に結合されており、該フレーム本体31よりも車両前側にオフセットして配置されている。従って、ドライバーシート5のシートフレーム51と、パッセンジャーシート7のシートフレーム13とは、結合されて一体になっており、前側の左右両端部と、後側の左右両端部とに合計4箇所の走行車輪37が配設されている。
【0017】
図3は、本発明の実施形態による駆動レール及び回転用レールを概略的に示す斜視図である。
【0018】
車両のフロア上には、図1に示す回転中心Cを中心とする円弧に沿って配置された4つの回転用レールが敷設されている。これらの回転用レールは、上方が開放された断面略コ字状のレールであり、ドライバーシート5の前側の右側車輪53をガイドする第1の回転用レール57と、パッセンジャーシート7の前側の左側車輪37をガイドする第2の回転用レール59と、ドライバーシート5の後側の右側車輪をガイドする第3の回転用レール61と、パッセンジャーシート7の後側の左側車輪55をガイドする第4の回転用レール63と、からなる。これらの回転用レール57,59,61,63の凹部内に車輪部47が走行可能に収容されているため、各車輪37,53,55は、回転用レール57,59,61,63に沿って走行することができる。さらに、駆動レール65も回転用レール57,59,61,63と同様に回転中心C(図1参照)を中心とする円弧に沿って湾曲形成されており、駆動レール65に、モータ39の下側のギヤ部43が歯合されている。
【0019】
以下に、本発明の実施形態による車両用シートを回転走行させる手順を簡単に説明する。
【0020】
まず、図外のスイッチを操作すると、図2に示したモータ39が回転する。下側のギヤ部43は駆動レール65に歯合されているため、下側のギヤ部43が矢印方向に回転すると、図4に示すように、パッセンジャーシート7と共にドライバーシート5が回転する。
【0021】
また、モータ39の上側のギヤ部41は、パッセンジャーシート7の歯合板材23に歯合されているため、図2の矢印方向に回転させると、パッセンジャーシート7のシート本体15がシートフレーム13に対して後方にスライド移動する。
【0022】
従って、図4に示すように、車両左側のパッセンジャーシート7は、回転中心Cを中心として左方向(反時計回り)に回転しながら、シートフレーム13のレール部33に沿って後方にスライド移動する。
【0023】
一方、ドライバーシート5は、パッセンジャーシート7と一体になって回転中心Cを中心として回転走行する。ただし、シートフレーム51に対して前後方向にスライドすることなく、シートフレーム51に保持されたまま回転する。
【0024】
このシート回転によって、ドライバーシート5は、車両左側のドア開口部11に対面するため、乗員がドアを開けてドライバーシート5に容易に着座することができる。
【0025】
以下に、本発明の実施形態による作用効果を説明する。
【0026】
本発明の実施形態による車両用シートにおいては、前記パッセンジャーシート7は、車体1に対して回転しつつ車両後方に向けて直線移動するように構成している。従って、車両室内のスペースが狭い場合でも、ドライバーシート5を大きく回転させることができ、乗員がドライバーシート5に乗降しやすくなる。
【0027】
また、前記ドライバーシート5及びパッセンジャーシート7は、ドライバーシート5の後方側の所定位置Cを中心に回転するように構成している。従って、ドアを閉めたままでも、ドライバーシート5やパッセンジャーシート7,9の後部側に容易に移動することができる。
【0028】
そして、前記ドライバーシート5及びパッセンジャーシート7の下部にそれぞれシートフレーム13,51を設けると共に、これらのシートフレーム同士13,51を結合させている。このため、駆動源となるモータ39が一つでも、ドライバーシート5及びパッセンジャーシート7を同時に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態による車両室内の前部を概略的に示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態によるドライバーシートとパッセンジャーシートの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態による駆動レール及び回転用レールを概略的に示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態による車両用シートを回転させた状態を概略的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0030】
C…回転中心(所定位置)
1…車体
5…ドライバーシート
7,9…パッセンジャーシート
11…ドア開口部
13,51…シートフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向中央側に配置したドライバーシートと、該ドライバーシートの左右両側に配置したパッセンジャーシートとを備え、前記ドライバーシートを前記パッセンジャーシートの一方側と共に回転させることによって、前記ドライバーシートを車体のドア開口部に対面させるように構成したことを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記パッセンジャーシートは、車体に対して回転しつつ車両後方に向けて直線移動するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記ドライバーシート及びパッセンジャーシートは、ドライバーシートの後方側の所定位置を中心に回転するように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記ドライバーシート及びパッセンジャーシートの下部にそれぞれシートフレームを設けると共に、これらのシートフレーム同士を結合させたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate