説明

車両用シート

【課題】シート背面のハーネスの余長部による外観低下、および余長部の後方への突出を抑えることができる車両用シートを提供する。
【解決手段】シートバック20に固定した可撓性を有するカバー部材40でハーネス30の余長部31を覆う。カバー部材40は余長部31を横断して覆う形態であり可撓性を有することから、シートバック20のリクライニング動作に追従するハーネス30の余長部31の動きを妨げることなく、余長部31の後方への突出を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに係り、特にシートクッションの後端部からシートバックの背面にわたってハーネスが配設されている車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車の運転席や助手席のシートは、一般に、乗員が着座するシートクッションの後端部に、リクライニング軸を介して、上体を支持するシートバックが前後方向にリクライニング可能に支持された構成となっている。ところでシートバックには、リクライニング用のモータや、乗員の背中や腰を電動で可動的に支持する電動支持部(ランバーサポート)、あるいはヒータなどが内蔵されているものがある。そして、これら電気部品に給電するための電線束であるハーネスが、シートクッションの後端部からシートバックの背面にわたって外部に設けられる場合がある(特許文献1参照)。
【0003】
このようにハーネスを配索した場合、ハーネスの、リクライニング軸の後方に当たる部分は、シートバックを前方に倒した際に引っ張り応力や曲げ応力がかかることを防ぐために、余裕を持たせた余長部が設けられる。余長部が設けられていないとシートバックを前方に倒した際にハーネスに負荷がかかるとともにシートバックを前方に倒すことができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−248681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ハーネスの余長部は、シートバックを後方に倒した状態では後方に突出する傾向にあるため、外観(見栄え)の低下を招いたり、リヤシートに座っている乗員の邪魔になったりするなどの問題が生じてしまう。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、シート背面のハーネスの余長部による外観低下、および余長部の後方への突出を抑えることができる車両用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用シートは、シートクッションと、このシートクッションの後端部にリクライニング軸を介してリクライニング可能に支持されたシートバックと、前記シートクッションの後端部から前記シートバックの背面にわたって外部に配設されたハーネスとを備え、前記ハーネスにおける前記リクライニング軸の後方に当たる部分に、前記シートバックのリクライニング動作を許容する余長部が設けられている車両用シートにおいて、前記シートバックに、前記ハーネスの前記余長部を該余長部の延在する方向に横断して覆う可撓性を有するカバー部材が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、カバー部材でハーネスの余長部がカバーされるため外観の低下が抑えられるとともに、余長部の後方への突出を規制して抑えることができる。また、カバー部材は可撓性を有するとともに余長部の延在する方向を横断して余長部を覆っているため、シートバックのリクライニング動作に追従して延在方向に沿って移動する余長部の動きを妨げることがない。
【0009】
本発明は、前記カバー部材は、一端部が前記シートバックに固定され、他端部に設けられた係合部材が、前記シートバックに設けられた被係合部材に着脱可能に係合される形態を含む。この形態によると、被係合部材に対する係合部材の係合を外した状態でハーネスを配設し、また、カバー部材で余長部を覆った状態からカバー部材を開いて余長部を露出させることができる。このため、カバー部材に影響を受けることなくハーネスの配設作業を行うことができ、また、カバー部材を容易に外してハーネスのメンテナンス等を速やかに行うことができる。
【0010】
また、本発明は、前記カバー部材が前記シートバックの表面を構成するトリムカバーと同じ材料で形成されている形態を含む。この形態ではカバー部材がシートバックと同じ材料であるから目立たず、違和感のない外観とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シート背面のハーネスの余長部による外観低下、および余長部の後方への突出を抑えることができる車両用シートが提供されるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るシートの全体側面図である。
【図2】同シートの後方からの斜視図である。
【図3】同シートの側面図であって、シートバックを(a)前傾させた状態、(b)後傾させた状態である。
【図4】一実施形態に係るカバー部材が取り付けられシートバックの一部斜視図であって、カバー部材が開いている状態を示している。
【図5】一実施形態に係るカバー部材が取り付けられシートバックの一部斜視図であってカバー部材が閉じた状態を示している。
【図6】図5のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、一実施形態に係る車両用シート1を示している。このシート1は運転席用あるいは助手席用であって、シートクッション10とシートバック20とから構成されている。シートクッション10は左右両側にサイドフレーム11を有しており、このサイドフレーム11の後端部に、シートバック20内のシートバックフレーム21がリクライニング軸22を介してリクライニング可能に支持されている。
【0014】
シートバック20は、シートバックフレーム21を包んで設けられたウレタン等からなるクッション材23の表面に布製や皮革製のトリムカバー24が張られた構成であり、シートクッション10も同様の構成である。シートバック20の上端にはヘッドレスト25が取り付けられている。このシート1によれば、乗員は、前方(図1でF方向)を向いた状態でシートクッション10に腰掛け、シートバック20に背中から上体を預けて着座するようになっている。
【0015】
図2に示すように、シート1の背面の片側(左側)には複数のハーネス30が配設されている。これらハーネス30は、シートクッション10の後端部からシートバック20の背面の下端部にわたって外部に配設されている。ハーネス30は、例えばシートバック20に内蔵されているリクライニング用のモータやランバーサポート、あるいはヒータなどへの給電用電線束である。
【0016】
ハーネス30における外部に露出している部分はリクライニング軸22の後方に当たる部分であり、この部分は余裕をもった長さとされ、シートバック20が図1のように通常の使用状態において後方に円弧状の弛みが生じる余長部31とされている。余長部31は上下方向に延びており、この余長部31が設けられていることにより、図3(a)に示すようにシートバック20を前方に倒した際にハーネス30に引っ張り応力や曲げ応力がかからず、損傷が防がれる。
【0017】
ところが、この余長部31は、図3(b)に示すようにシートバック20を後方に倒すと後方に湾曲した状態で突出する。そこで本実施形態では、図4および図5に示すように、シートバック20に、ハーネス30の余長部31を覆うカバー部材40が設けられている。このカバー部材40は可撓性を有する布、樹脂等からなるもので、矩形状に形成され、その一辺部が、シートバック20のトリムカバー24における余長部31の一側方(車両の外側)に縫い付けられて固定されている。カバー部材40は、余長部31を横方向に横断する状態で余長部31を覆い、他端部に設けられた係合部材50をシートバック20に固定した被係合部材55に係合させることで余長部31を覆う。
【0018】
図4はカバー部材40を開いた状態を示し、図5はカバー部材40でハーネス30の余長部31を覆った状態を示している。係合部材50は、図6に示すように断面矢印状のプレートであってカバー部材40の他端縁全長にわたる長さを有しており、カバー部材40が余長部31を覆った状態で、断面矢印状の先端係合部50aが余長部31側に向くようにしてカバー部材40の他端部の内側に縫い付けて固定されている。
【0019】
一方、シートバック20のトリムカバー24における余長部31の他側方(カバー部材40の縫い付け部の反対側)には、係合部材50が着脱可能に係合される被係合部材55が固定されている。被係合部材55は、弾性を有する樹脂等により断面J字状に形成されたプレート状のもので、断面J字状の先端被係合部55aが余長部31側に向くようにしてシートバック20のトリムカバー24に縫い付けて固定されている。
【0020】
係合部材50は、先端係合部50aが被係合部材の先端被係合部55aに図6においてC方向に挿入されると係合し、これによってカバー部材40がハーネス30の余長部31を覆った状態が保持される。また、係合部材50をD方向に引っ張ると先端被係合部55aが弾性変形して先端係合部50aが抜けて外れ、カバー部材40を捲ることにより余長部31を露出させることができる。
【0021】
本実施形態によれば、カバー部材40でハーネス30の余長部31が覆われるため外観の低下が抑えられるとともに、シートバック20を後傾した際において余長部31が後方へ突出する変形を規制して抑えることができる。また、カバー部材40は可撓性を有するとともに余長部31の延在する方向(上下方向)を横断して余長部31を覆うため、シートバック20のリクライニング動作に追従して延在方向に沿って移動する余長部31の動きを妨げることがない。
【0022】
また、カバー部材40は、係合部材50をシートバック20に固定された被係合部材55に着脱することにより開閉自在である。このため、カバー部材40を開いた状態でハーネス30を配設し、また、カバー部材40を開いてハーネス30のメンテナンス等を行うことができる。すなわち、カバー部材40に影響を受けることなくハーネス30の配設作業を行うことができ、また、カバー部材40を容易に開いてハーネス30のメンテナンス等を速やかに行うことができる。
【0023】
なお、カバー部材40の材料としては、上記のように可撓性を有する布や樹脂等のように、ハーネス30の余長部31を抑えながら余長部31の動きを許容する比較的柔軟なものが好適であるが、これに加えてカバー部材40自身が固定されているシートバック20の表面を構成するトリムカバー24と同じ材料で形成されていると、カバー部材40が目立たず、違和感のない外観とすることができるので好ましい。
【0024】
また、本発明におけるカバー部材をシートバック側に保持してハーネスを覆った状態を着脱自在に保持する係合部材と被係合部材としては、上記実施形態の係合部材50と被係合部材55といった形態の他に、同様の機能を有するものであれば如何なる形態のものでもよい。一例としては面ファスナーが挙げられ、面ファスナーの場合には着脱が比較的容易であるといった利点がある。
【符号の説明】
【0025】
1…車両用シート
10…シートクッション
20…シートバック
22…リクライニング軸
24…トリムカバー
30…ハーネス
31…余長部
40…カバー部材
50…係合部材
55…被係合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、
このシートクッションの後端部にリクライニング軸を介してリクライニング可能に支持されたシートバックと、
前記シートクッションの後端部から前記シートバックの背面にわたって外部に配設されたハーネスとを備え、
前記ハーネスにおける前記リクライニング軸の後方に当たる部分に、前記シートバックのリクライニング動作を許容する余長部が設けられている車両用シートにおいて、
前記シートバックに、前記ハーネスの前記余長部を該余長部の延在する方向に横断して覆う可撓性を有するカバー部材が設けられていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記カバー部材は、一端部が前記シートバックに固定され、他端部に設けられた係合部材が、前記シートバックに設けられた被係合部材に着脱可能に係合されることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記シートバックの表面を構成するトリムカバーと同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−40901(P2012−40901A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181614(P2010−181614)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】