車両用シート
【課題】シートにこもりやすい温度や湿度を排出させやすくして、着座時の蒸れを安価に低減する。
【解決手段】ポリウレタンフォームの発泡成形体からなるパッド本体12の腿下部26におけるパッド表面に収容凹部34を設け、繊維材により形成された立体網状クッション体からなる通気性部材14を収容凹部34に配設する。パッド本体12を貫通して収容凹部34内とパッド裏面側とを連通させる通気孔36を設けるとともに、収容凹部34を、パッド本体12の前方から空気を取り込めるように当該パッド本体の前縁12Aに対して通気可能に開かれた状態に設ける。例えば、パッド本体の前縁12Aから離間した収容凹部34に対し、空気流路35を設けてパッド本体の前縁12Aに繋げる。
【解決手段】ポリウレタンフォームの発泡成形体からなるパッド本体12の腿下部26におけるパッド表面に収容凹部34を設け、繊維材により形成された立体網状クッション体からなる通気性部材14を収容凹部34に配設する。パッド本体12を貫通して収容凹部34内とパッド裏面側とを連通させる通気孔36を設けるとともに、収容凹部34を、パッド本体12の前方から空気を取り込めるように当該パッド本体の前縁12Aに対して通気可能に開かれた状態に設ける。例えば、パッド本体の前縁12Aから離間した収容凹部34に対し、空気流路35を設けてパッド本体の前縁12Aに繋げる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用シートをはじめとする車両用シートにおいては、乗員の冷房や暖房を行ったり、着座時の蒸れを低減するために、ウレタンパッドに貫通穴や溝を設け、外部に取り付けた送風機等により強制的に空気の流れを作ることによって、座面に冷気や暖気を供給したり、湿度や温度の高くなった空気を換気して、快適性を向上させることが知られている(下記特許文献1,2参照)。しかしながら、かかる従来技術では、空気をシートに供給するために、送風機等を別途設ける必要がある。また、ウレタンパッドについても、パッド表面に設けた溝に蓋をするため、後貼りでスラブウレタン等を貼り付ける必要がある。そのため、いずれも高コストに繋がり、高級グレードの車両等にしか搭載できない状況になっている。
【0003】
ところで、下記特許文献3には、一定の弾性を有すると共にその厚み方向及び平面方向へ通気可能な、繊維材による3次元的な立体構造の網状クッション体を、ポリウレタンフォームよりなるパッド本体に設けた空気通路を覆うように着座部の表面に配することが開示されている。また、下記特許文献4には、熱可塑性樹脂からなる連続線状体を多数、それぞれループ状に曲がりくねらせ、かつ互いの接触部を融着させた立体網状構造体からなる網状クッション体を、パッド本体の着座部に組み込むことが開示されている。かかる立体網状クッション体は、パッド本体を構成するポリウレタンフォームに比べて、優れた通気性を有する通気性部材である。しかしながら、これらの従来技術では、依然としてパッド裏面側から送風機等により空気を強制的に循環させるものであり、上記高コストの問題を解消するには至っていない。また、これらの従来技術では、車室内の空気の流れを利用してシート内における空気の流れを作るものではなく、折角の通気性部材を活用しきれていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−236607号公報
【特許文献2】特開2005−095343号公報
【特許文献3】特開2009−077760号公報
【特許文献4】特開2004−073429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、車室内の空気の流れを利用してシート内で空気を流動させやすくし、これによりシートにこもりやすい温度や湿度を排出させやすくして、着座時の蒸れを安価に低減することができる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用シートは、ポリウレタンウォームの発泡成形体からなり着座部における腿下部のパッド表面に収容凹部が設けられたパッド本体と、繊維材により形成された立体網状クッション体からなり前記収容凹部に配設された通気性部材と、前記パッド本体及び通気性部材の表面を覆う通気性を有するシートカバーとを備え、前記パッド本体には当該パッド本体を貫通して前記収容凹部内とパッド裏面側とを連通させる通気孔が設けられ、前記収容凹部が前記パッド本体の前方から空気を取り込めるように当該パッド本体の前縁に対して通気可能に開かれて設けられたものである。
【0007】
前記収容凹部がパッド本体の前縁に対して通気可能に開かれた構成とするためには、例えば、前記通気性部材が前記パッド本体の前縁にかかるように設けられてもよく(従って、この場合、収容凹部もパッド本体の前縁にかかるように設けられる。)、あるいはまた、前記収容凹部が前記パッド本体の前縁から離間して設けられるとともに、該収容凹部と前記パッド本体の前縁とを繋ぐ空気流路が設けられて、該空気流路により通気可能とされてもよい。
【0008】
本発明の好ましい一態様例によれば、前記腿下部のパッド裏面側に裏面側凹部が設けられ、前記通気孔がパッド裏面側において前記裏面側凹部に開口して設けられてもよい。
【0009】
本発明の好ましい一態様例によれば、また、前記通気孔が、前記収容凹部からパッド裏面側に向かって後方に傾斜して延びるよう設けられてもよい。
【0010】
本発明の好ましい一態様例によれば、また、前記シートカバーは、前記パッド本体の前縁を覆う前方側部において他の部分よりも通気性が高く形成されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、立体網状クッション体からなる通気性部材をパッド表面に設けた収容凹部に配設したので、パッド本体とシートカバーとの間に空気が流動する通気空間が形成される。特に本発明では、通気性部材を収容する収容凹部がシート前方からの空気を取り込めるようにパッド本体の前縁に対して通気可能に開かれているので、エアコン等から吹き出される前方からの風を収容凹部に取り込みやすく、通気性部材から通気孔を介してパッド裏面側に逃がすことにより、空気の流れを作ることができる。このように、車室内の空気の流れを利用して、シート内で空気を流動させやすくすることができるので、安価な構造でありながら、シートにこもりやすい温度や湿度を排出させやすくして着座時の蒸れを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る車両用シートの断面図
【図2】該車両用シートを構成するパッド本体及び通気性部材の斜視図
【図3】該パッド本体及び通気性部材の組み付け状態での平面図
【図4】該パッド本体の底面図
【図5】図3のV−V線断面図
【図6】図3のVI−VI線断面図
【図7】支持フレームの斜視図
【図8】第2実施形態に係るパッド本体及び通気性部材の組み付け状態での断面図
【図9】第3実施形態に係る車両用シートの断面図
【図10】第3実施形態のパッド本体及び通気性部材の組み付け状態での断面図
【図11】図10に示された組み付け状態についての平面図
【図12】第4実施形態に係るパッド本体及び通気性部材の組み付け状態での断面図
【図13】第5実施形態に係る車両用シートの断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1〜7に基づいて第1実施形態の車両用シート10について説明する。この車両用シート10は、自動車の前席となるシートであり、軟質ポリウレタンフォームの発泡成形体からなるパッド本体12と、繊維材により形成された立体網状クッション体からなる通気性部材14と、通気性を有するシートカバー16と、金属製の支持フレーム18とを備えてなる。実際には、更に不図示の背もたれ部を備えて車両用シート10が構成される。
【0015】
パッド本体12は、着座者である乗員の臀部を支持するためのシートクッションパッドであり、図2,3に示すように、乗員の臀部から大腿部にかけての部位を受け止める幅方向中央の着座部20と、その左右両側において上方に隆起状に形成されて乗員を左右から支え着座姿勢を保持するためのサイド部22,22とからなる。着座部20は、乗員の臀部を受け止め支持する後側約半分の尻下部24と、乗員の大腿部を受け止め支持する前側約半分の腿下部26とを有して構成されている。
【0016】
パッド表面、即ちパッド本体12の上面には、シートカバー16を係止するため、前後方向Xに延びる左右一対の縦吊込み溝28,28と、その前後方向中央部において幅方向Yに延びる横吊込み溝30とが設けられている。そして、一対の縦吊込み溝28,28よりも幅方向外側が上記サイド部22,22となり、その間が着座部20となっている。また、横吊込み溝30の後側が尻下部24となり、前側が腿下部26となっている。この例では、更に、尻下部24を前後に区画するように第2横吊込み溝32が設けられている。
【0017】
パッド本体12には、上記腿下部26のパッド表面に通気性部材14を収容するための収容凹部34が設けられている。収容凹部34は、平面視矩形状をなして腿下部26の略全域にわたって形成されており、パッド表面から所定の深さにて陥没形成されている。収容凹部34は、この例では、パッド本体12の前縁12Aにかかるようには設けられておらず、当該前縁12Aから離間して、即ち、前縁12Aから後方に所定距離をおいた位置に設けられている。
【0018】
このように収容凹部34がパッド本体12の前縁12Aまで達していない場合、収容凹部34にシート前方からの空気をそのまま取り込むことができない。そこで、この例では、図1〜3に示すように、収容凹部34とパッド本体12の前縁12Aとを繋ぐ空気流路35を設け、該空気流路35により収容凹部34をパッド本体12の前縁12Aに対して通気可能に開かれた状態として、収容凹部34にパッド本体12の前方から空気を取り込めるよう構成している。空気流路35は、この例では、バッド表面に設けた前後方向Xに延びる凹溝により形成されており、該凹溝が幅方向Yに複数個(図では3個)設けられている。なお、空気流路35としては、収容凹部34をパッド本体12の前縁12Aに開口させるものであれば、例えば、収容凹部34の前縁からパッド本体12の前縁12Aに貫通する前後方向Xに延びる貫通穴であってもよい。
【0019】
パッド本体12には、また、当該パッド本体12を貫通して収容凹部34内とパッド裏面側(即ち、パッド本体12の下面側)とを連通させる通気孔36が設けられている。通気孔36は、この例では、平面視矩形状をなして、左右1つずつ、合計で2つ設けられているが、1つ以上あれば、形状や個数は特に限定されない。
【0020】
図4〜6に示すように、パッド本体12には、腿下部26のパッド裏面側に裏面側凹部38が陥没形成されている。裏面側凹部38は、着座者の左右の腿に対応するように、左右の2箇所に略対称に設けられており、平面視矩形状をなしている。上記通気孔36は、パッド裏面側において該裏面側凹部38に開口して設けられており、従って、収容凹部34と裏面側凹部38との間を繋ぐように設けられている。また、通気孔36は、図5に示されるように、収容凹部34の底面に対して垂直ではなく、収容凹部34からパッド裏面側に向かって後方Xrに傾斜して延びるように設けられている。
【0021】
パッド本体12の裏面には、不織布などの補強布40が積層されている。補強布40は、金型内にポリウレタンフォーム原料を注入してパッド本体12を発泡成形する際に、予め金型内に取り付けておくことで積層一体化されている。補強布40は、上記裏面側凹部38が設けられた部分を除いて、パッド裏面の略全体にわたって設けられている。
【0022】
上記通気性部材14は、繊維材により形成された立体網状クッション体からなり、パッド本体12の収容凹部34内に配設される。通気性部材14は、上記通気孔36の上面を覆って収容凹部34を充填するように当該収容凹部34に対応した形状を有し、この例では、図2に示すように、平面視矩形状に形成されている。このように収容凹部34に通気性部材14を配設することにより、腿下部26において、パッド本体12とシートカバー16との間に、空気の流動する空間である通気空間が形成される。
【0023】
ここで、立体網状クッション体としては、クッション性と通気性を有していれば、特に限定されないが、熱可塑性弾性樹脂からなる繊度が300dtex以上の繊維材(連続線状体)をまがりくねらせランダムループを形成し、夫々のループを互いに溶融状態で接触せしめて、接触部の大部分を融着させてなる三次元ランダムループ接合構造体を用いることが好ましい。上記繊度は、より好ましくは500〜100000dtexであり、更に好ましくは500〜50000dtexである。上記熱可塑性弾性樹脂としては、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーを使用することが好ましい。また、該三次元ランダムループ接合構造体は、見掛け密度(JIS K6400に準拠)が5〜100kg/m3であることが好ましく、より好ましくは10〜80kg/m3である。このような見掛け密度のものを用いることにより、クッション性を確保しつつ、優れた通気性を付与することができる。かかる三次元ランダムループ接合構造体の具体例としては、例えば、東洋紡績株式会社製の「ブレスエアー」が挙げられる。
【0024】
上記シートカバー16は、図1に示すように、パッド本体12と通気性部材14の表面を全体にわたって覆うように設けられており、パッド表面に設けられた吊込み溝28,30,32を利用して公知の方法により張り付けられている。シートカバー16としては、通気性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、ポリエステル繊維等からなるファブリックの他、パンチング等により通気性を付与したレザー等を用いることもできる。
【0025】
上記支持フレーム18は、パッド本体12の下方に配置されてパッド本体12を支持するものである。図1,7に示すように、支持フレーム18は、パッド裏面に対応する略矩形状をなしており、パッド本体12の前側部分(詳細には、腿下部26)の下面を受ける剛性を持つ前側受け面部42と、その後方に設けられてパッド本体12の後側部分(詳細には、主として尻下部24)の下面を弾性的に支持するバネ部44とを備えて構成されている。
【0026】
詳細には、支持フレーム18は、前端部において幅方向Yに延びる略水平な面状の前側受け面部42と、その左右両端からそれぞれ後方に延びる側壁部46,46と、側壁部46,46の後端部同士を連結する後側の連結部48と、前側受け面部42と連結部48との間に架け渡されて両者の間を略水平面内で左右に交互に振れながら前後方向に延びる複数本のS字状バネ45とを備えて構成されている。
【0027】
パッド本体12の腿下部26の下面には、上記のように左右一対の裏面側凹部38が設けられているので、その間の凸状部50(図4〜6参照)が支持フレーム18の前側受け面部42に当接支持される。そのため、腿下部26のパッド裏面側には、図1に示すように、裏面側凹部38によって前側受け面部42との間に隙間52が形成され、更に、後方のバネ部44に向かって空気が抜けるように、裏面側凹部38は前側受け面部42の後端を越えてより後方まで延設されている。
【0028】
以上よりなる本実施形態であると、立体網状クッション体からなる通気性部材14をパッド表面に設けた収容凹部34に配設したので、パッド本体12とシートカバー16との間に空気が流動する通気空間が形成される。そのため、暖まった空気を該通気空間から通気孔36を介して流動させることができるので、高くなった温度や湿度を排出しやすくなる。
【0029】
特に通気性部材14を収容する収容凹部34がシート前方からの空気を取り込めるようにパッド本体12の前縁12Aに対して通気可能に開かれているので、シート前方の空気を空気流路35から収容凹部34の通気性部材14に導き、通気孔36を通ってパッド裏面側に導くような空気の流れを作ることができる。そのため、着座時や運転時の振動で、空気が排出、吸引を繰り返し、空気を流動させて、高くなった温度や湿度を排出することができる。また、通常のエアコンを作動させることにより生じるシート前方からの風を、図1に示すように、パッド本体12の前縁12Aから空気流路35を通って収容凹部34の通気性部材14に取り込み、通気性部材14から通気孔36を介してパッド裏面側、更に後方のバネ部44に逃がすことができる。そのため、車室内の空気の流れを利用して、シート10内で空気を流動させやすくすることができる。
【0030】
このように既存の空調設備はそのままで、その風の流れを利用してシート10内で空気を循環させることができるので、安価な構造でありながら、シート10にこもりやすい温度や湿度を排出させやすくして、着座時の蒸れを低減することができる。
【0031】
また、この実施形態であると、腿下部26に裏面側凹部38を設けて、該裏面側凹部38に通気孔36を開口させたので、パッド裏面側に空気を排出しやすくすることができる。特に、上記支持フレーム18の構成と裏面側凹部38との位置関係とも相俟って、パッド裏面側において空気を後方に逃がす効果を高めることができる。また、上記のように通気孔36が下方に向かって後方に傾斜して形成されていることからも、この後方に逃がす効果をより高めることができる。
【0032】
(第2実施形態)
図8は第2実施形態に係るパッド本体12と通気性部材14との組み付けた状態を示す図である。この例では、パッド本体12に設けた空気流路35の構成が第1実施形態とは異なる。
【0033】
すなわち、この例では、収容凹部34とパッド本体12の前縁12Aとを繋ぐ凹溝状の空気流路35が、単にパッド前縁12Aまで設けられているだけではなく、更に下方に延設されており、従って、パッド本体12の前面部12Bを上下方向に延びる延長溝部54が形成されている。
【0034】
このように空気流路35をパッド本体12の前面部12Bに回り込むように延長したことにより、シート前方からの風を更に取り込みやすくすることができる。その他の構成は第1実施形態と同様であり、同様の作用効果が奏される。
【0035】
(第3実施形態)
図9〜11は第3実施形態を示したものである。この実施形態では、通気性部材14がパッド本体12の前縁12Aにかかるように設けられた点で、第1実施形態とは異なる。
【0036】
すなわち、この例では、パッド本体12に設けられた収容凹部34が、パッド本体12の前縁12Aにかかるようにパッド本体12の前方に開かれた形状に設けられており、第1実施形態に対して前方に延長されている。そして、この延長された収容凹部34を埋めるように通気性部材14が配設されており、これにより、通気性部材14はパッド本体12の前縁12Aに至るまで設けられている。
【0037】
このように通気性部材14をパッド本体12の前縁12Aまで配設することにより、大腿部の圧迫感を低減することができる。立体網状クッション体からなる通気性部材14は、ポリウレタンフォームの発泡成形体からなるパッド本体12に比べて、硬度を同等に設定した場合、初期荷重に対する撓み量が大きく柔らかいという特徴がある。これは、立体網状クッション体には、ポリウレタンフォームの発泡成形体のような高密度のスキン層(コア部に比べて高密度)がないためである。例えば、シートクッションパッドとして一般的なポリウレタンフォームの発泡成形体と、立体網状クッション体として東洋紡績株式会社製「ブレスエアー」とについて、荷重撓み特性を比較したところ、下記表1に示すように、硬さ(25%硬度)は略同等でありながら、5%撓み時と10%撓み時での荷重は立体網状クッション体の方が顕著に小さい値であった。なお、荷重撓み特性試験は、JASO−B408の硬さ試験に準拠して行った(最大荷重:980N、加圧板:φ200mm、撓み速度:100mm/分)。
【0038】
【表1】
【0039】
このように通気性部材14は、パッド本体12に比べて初期荷重に対して柔らかいので、これをパッド前縁12Aにかかるように設けることにより、大腿部の圧迫感を低減することができる。また、通気性部材14をパッド本体12の前縁12Aまで配設することにより、その幅方向の全体でシート前方からの風を取り込むことができるので、空気をより流動しやすくすることができる。その他の構成は第1実施形態と同様であり、同様の作用効果が奏される。
【0040】
(第4実施形態)
図12は第4実施形態に係るパッド本体12と通気性部材14との組み付けた状態を示す図である。この例では、通気性部材14がパッド本体12の前面部12Bに回り込むように延長された点で第3実施形態とは異なる。
【0041】
すなわち、この例では、収容凹部34とこれに配設された通気性部材14が、単にパッド前縁12Aまで達しているだけでなく、更に下方に延設されており、従って、パッド本体12の前面部12Bを上下方向に延びる通気性部材14の縦壁部14Aが形成されている。
【0042】
このように通気性部材14をパッド本体12の前面部12Bに回り込むように延長したことにより、大腿部の圧迫感を低減する効果をより高めることができるとともに、シート前方からの風を更に取り込みやすくすることができる。その他の構成は第3実施形態と同様であり、同様の作用効果が奏される。
【0043】
(第5実施形態)
図13は第5実施形態に係る車両用シートを示したものである。この実施形態では、前方からの空気の取り込みをより多くするために、部分的にシートカバー16の通気性を向上させた点で第1実施形態とは異なる。
【0044】
すなわち、本実施形態では、シートカバー16は、上記空気流路35部分を含むパッド本体12の前縁12Aを覆う前方側部16Aにおいて、他の部分よりも通気性が高く形成されている。より詳細には、この例では、図13においてMで示す範囲の通気性が、他の部分の通気性よりも高く設定されており、すなわち、シートカバー16は、パッド本体12の前面部12Bを覆って車両前方に面する部分である前方側部16Aが、着座部20を覆う部分を含むシートカバー本体部16Bよりも通気性が高くなっている。このように部分的に通気性の高いシートカバー16は、当該前方側部16Aにおいて、シートカバーを構成するファブリックやレザーのメッシュを粗くする又はパンチングの数を増やす等の手法により得られる。
【0045】
このようにシートカバー16の前方側部16Aの通気性を高く設定することにより、シート前方からの風を更に取り込みやすくことができ、空気流路35から収容凹部34の通気性部材14に至る空気の流れをよりスムーズにすることができる。その他の構成は第1実施形態と同様であり、同様の作用効果が奏される。
【0046】
(他の実施形態)
以上の実施形態では、通気性部材14の設置箇所を腿下部26のみとしたが、通気性部材14は腿下部26から尻下部24にかけて着座部20の全域に設けてもよく、これにより快適性を更に高めることができる。但し、尻下部24は座り心地に対する影響が大きいので、好ましくは、通気性部材14は腿下部26のみに設置することである。
【0047】
また、以上の実施形態では、通気孔36をパッド本体12の裏面側凹部38に開口させて設けたが、例えば支持フレームに通気可能な溝や孔が設けられている場合、該通気孔をこれら支持フレームの溝や孔に対して開口させて設けてもよい。
【0048】
また、以上の実施形態では、1人掛けの車両用シートについて説明したが、ベンチタイプと呼ばれる2人又は3人掛けのシートについても同様に適用することができる。また、以上の実施形態では、特に言及しなかったが、背もたれ部においても、上記通気性部材を組み込むことにより、更に快適性を向上することができる。その他、一々列挙しないが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
10…車両用シート 12…パッド本体 12A…前縁
14…通気性部材 16…シートカバー 16A…前方側部
20…着座部 26…腿下部 34…収容凹部
35…空気流路 36…通気孔 38…裏面側凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用シートをはじめとする車両用シートにおいては、乗員の冷房や暖房を行ったり、着座時の蒸れを低減するために、ウレタンパッドに貫通穴や溝を設け、外部に取り付けた送風機等により強制的に空気の流れを作ることによって、座面に冷気や暖気を供給したり、湿度や温度の高くなった空気を換気して、快適性を向上させることが知られている(下記特許文献1,2参照)。しかしながら、かかる従来技術では、空気をシートに供給するために、送風機等を別途設ける必要がある。また、ウレタンパッドについても、パッド表面に設けた溝に蓋をするため、後貼りでスラブウレタン等を貼り付ける必要がある。そのため、いずれも高コストに繋がり、高級グレードの車両等にしか搭載できない状況になっている。
【0003】
ところで、下記特許文献3には、一定の弾性を有すると共にその厚み方向及び平面方向へ通気可能な、繊維材による3次元的な立体構造の網状クッション体を、ポリウレタンフォームよりなるパッド本体に設けた空気通路を覆うように着座部の表面に配することが開示されている。また、下記特許文献4には、熱可塑性樹脂からなる連続線状体を多数、それぞれループ状に曲がりくねらせ、かつ互いの接触部を融着させた立体網状構造体からなる網状クッション体を、パッド本体の着座部に組み込むことが開示されている。かかる立体網状クッション体は、パッド本体を構成するポリウレタンフォームに比べて、優れた通気性を有する通気性部材である。しかしながら、これらの従来技術では、依然としてパッド裏面側から送風機等により空気を強制的に循環させるものであり、上記高コストの問題を解消するには至っていない。また、これらの従来技術では、車室内の空気の流れを利用してシート内における空気の流れを作るものではなく、折角の通気性部材を活用しきれていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−236607号公報
【特許文献2】特開2005−095343号公報
【特許文献3】特開2009−077760号公報
【特許文献4】特開2004−073429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、車室内の空気の流れを利用してシート内で空気を流動させやすくし、これによりシートにこもりやすい温度や湿度を排出させやすくして、着座時の蒸れを安価に低減することができる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用シートは、ポリウレタンウォームの発泡成形体からなり着座部における腿下部のパッド表面に収容凹部が設けられたパッド本体と、繊維材により形成された立体網状クッション体からなり前記収容凹部に配設された通気性部材と、前記パッド本体及び通気性部材の表面を覆う通気性を有するシートカバーとを備え、前記パッド本体には当該パッド本体を貫通して前記収容凹部内とパッド裏面側とを連通させる通気孔が設けられ、前記収容凹部が前記パッド本体の前方から空気を取り込めるように当該パッド本体の前縁に対して通気可能に開かれて設けられたものである。
【0007】
前記収容凹部がパッド本体の前縁に対して通気可能に開かれた構成とするためには、例えば、前記通気性部材が前記パッド本体の前縁にかかるように設けられてもよく(従って、この場合、収容凹部もパッド本体の前縁にかかるように設けられる。)、あるいはまた、前記収容凹部が前記パッド本体の前縁から離間して設けられるとともに、該収容凹部と前記パッド本体の前縁とを繋ぐ空気流路が設けられて、該空気流路により通気可能とされてもよい。
【0008】
本発明の好ましい一態様例によれば、前記腿下部のパッド裏面側に裏面側凹部が設けられ、前記通気孔がパッド裏面側において前記裏面側凹部に開口して設けられてもよい。
【0009】
本発明の好ましい一態様例によれば、また、前記通気孔が、前記収容凹部からパッド裏面側に向かって後方に傾斜して延びるよう設けられてもよい。
【0010】
本発明の好ましい一態様例によれば、また、前記シートカバーは、前記パッド本体の前縁を覆う前方側部において他の部分よりも通気性が高く形成されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、立体網状クッション体からなる通気性部材をパッド表面に設けた収容凹部に配設したので、パッド本体とシートカバーとの間に空気が流動する通気空間が形成される。特に本発明では、通気性部材を収容する収容凹部がシート前方からの空気を取り込めるようにパッド本体の前縁に対して通気可能に開かれているので、エアコン等から吹き出される前方からの風を収容凹部に取り込みやすく、通気性部材から通気孔を介してパッド裏面側に逃がすことにより、空気の流れを作ることができる。このように、車室内の空気の流れを利用して、シート内で空気を流動させやすくすることができるので、安価な構造でありながら、シートにこもりやすい温度や湿度を排出させやすくして着座時の蒸れを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る車両用シートの断面図
【図2】該車両用シートを構成するパッド本体及び通気性部材の斜視図
【図3】該パッド本体及び通気性部材の組み付け状態での平面図
【図4】該パッド本体の底面図
【図5】図3のV−V線断面図
【図6】図3のVI−VI線断面図
【図7】支持フレームの斜視図
【図8】第2実施形態に係るパッド本体及び通気性部材の組み付け状態での断面図
【図9】第3実施形態に係る車両用シートの断面図
【図10】第3実施形態のパッド本体及び通気性部材の組み付け状態での断面図
【図11】図10に示された組み付け状態についての平面図
【図12】第4実施形態に係るパッド本体及び通気性部材の組み付け状態での断面図
【図13】第5実施形態に係る車両用シートの断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1〜7に基づいて第1実施形態の車両用シート10について説明する。この車両用シート10は、自動車の前席となるシートであり、軟質ポリウレタンフォームの発泡成形体からなるパッド本体12と、繊維材により形成された立体網状クッション体からなる通気性部材14と、通気性を有するシートカバー16と、金属製の支持フレーム18とを備えてなる。実際には、更に不図示の背もたれ部を備えて車両用シート10が構成される。
【0015】
パッド本体12は、着座者である乗員の臀部を支持するためのシートクッションパッドであり、図2,3に示すように、乗員の臀部から大腿部にかけての部位を受け止める幅方向中央の着座部20と、その左右両側において上方に隆起状に形成されて乗員を左右から支え着座姿勢を保持するためのサイド部22,22とからなる。着座部20は、乗員の臀部を受け止め支持する後側約半分の尻下部24と、乗員の大腿部を受け止め支持する前側約半分の腿下部26とを有して構成されている。
【0016】
パッド表面、即ちパッド本体12の上面には、シートカバー16を係止するため、前後方向Xに延びる左右一対の縦吊込み溝28,28と、その前後方向中央部において幅方向Yに延びる横吊込み溝30とが設けられている。そして、一対の縦吊込み溝28,28よりも幅方向外側が上記サイド部22,22となり、その間が着座部20となっている。また、横吊込み溝30の後側が尻下部24となり、前側が腿下部26となっている。この例では、更に、尻下部24を前後に区画するように第2横吊込み溝32が設けられている。
【0017】
パッド本体12には、上記腿下部26のパッド表面に通気性部材14を収容するための収容凹部34が設けられている。収容凹部34は、平面視矩形状をなして腿下部26の略全域にわたって形成されており、パッド表面から所定の深さにて陥没形成されている。収容凹部34は、この例では、パッド本体12の前縁12Aにかかるようには設けられておらず、当該前縁12Aから離間して、即ち、前縁12Aから後方に所定距離をおいた位置に設けられている。
【0018】
このように収容凹部34がパッド本体12の前縁12Aまで達していない場合、収容凹部34にシート前方からの空気をそのまま取り込むことができない。そこで、この例では、図1〜3に示すように、収容凹部34とパッド本体12の前縁12Aとを繋ぐ空気流路35を設け、該空気流路35により収容凹部34をパッド本体12の前縁12Aに対して通気可能に開かれた状態として、収容凹部34にパッド本体12の前方から空気を取り込めるよう構成している。空気流路35は、この例では、バッド表面に設けた前後方向Xに延びる凹溝により形成されており、該凹溝が幅方向Yに複数個(図では3個)設けられている。なお、空気流路35としては、収容凹部34をパッド本体12の前縁12Aに開口させるものであれば、例えば、収容凹部34の前縁からパッド本体12の前縁12Aに貫通する前後方向Xに延びる貫通穴であってもよい。
【0019】
パッド本体12には、また、当該パッド本体12を貫通して収容凹部34内とパッド裏面側(即ち、パッド本体12の下面側)とを連通させる通気孔36が設けられている。通気孔36は、この例では、平面視矩形状をなして、左右1つずつ、合計で2つ設けられているが、1つ以上あれば、形状や個数は特に限定されない。
【0020】
図4〜6に示すように、パッド本体12には、腿下部26のパッド裏面側に裏面側凹部38が陥没形成されている。裏面側凹部38は、着座者の左右の腿に対応するように、左右の2箇所に略対称に設けられており、平面視矩形状をなしている。上記通気孔36は、パッド裏面側において該裏面側凹部38に開口して設けられており、従って、収容凹部34と裏面側凹部38との間を繋ぐように設けられている。また、通気孔36は、図5に示されるように、収容凹部34の底面に対して垂直ではなく、収容凹部34からパッド裏面側に向かって後方Xrに傾斜して延びるように設けられている。
【0021】
パッド本体12の裏面には、不織布などの補強布40が積層されている。補強布40は、金型内にポリウレタンフォーム原料を注入してパッド本体12を発泡成形する際に、予め金型内に取り付けておくことで積層一体化されている。補強布40は、上記裏面側凹部38が設けられた部分を除いて、パッド裏面の略全体にわたって設けられている。
【0022】
上記通気性部材14は、繊維材により形成された立体網状クッション体からなり、パッド本体12の収容凹部34内に配設される。通気性部材14は、上記通気孔36の上面を覆って収容凹部34を充填するように当該収容凹部34に対応した形状を有し、この例では、図2に示すように、平面視矩形状に形成されている。このように収容凹部34に通気性部材14を配設することにより、腿下部26において、パッド本体12とシートカバー16との間に、空気の流動する空間である通気空間が形成される。
【0023】
ここで、立体網状クッション体としては、クッション性と通気性を有していれば、特に限定されないが、熱可塑性弾性樹脂からなる繊度が300dtex以上の繊維材(連続線状体)をまがりくねらせランダムループを形成し、夫々のループを互いに溶融状態で接触せしめて、接触部の大部分を融着させてなる三次元ランダムループ接合構造体を用いることが好ましい。上記繊度は、より好ましくは500〜100000dtexであり、更に好ましくは500〜50000dtexである。上記熱可塑性弾性樹脂としては、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーを使用することが好ましい。また、該三次元ランダムループ接合構造体は、見掛け密度(JIS K6400に準拠)が5〜100kg/m3であることが好ましく、より好ましくは10〜80kg/m3である。このような見掛け密度のものを用いることにより、クッション性を確保しつつ、優れた通気性を付与することができる。かかる三次元ランダムループ接合構造体の具体例としては、例えば、東洋紡績株式会社製の「ブレスエアー」が挙げられる。
【0024】
上記シートカバー16は、図1に示すように、パッド本体12と通気性部材14の表面を全体にわたって覆うように設けられており、パッド表面に設けられた吊込み溝28,30,32を利用して公知の方法により張り付けられている。シートカバー16としては、通気性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、ポリエステル繊維等からなるファブリックの他、パンチング等により通気性を付与したレザー等を用いることもできる。
【0025】
上記支持フレーム18は、パッド本体12の下方に配置されてパッド本体12を支持するものである。図1,7に示すように、支持フレーム18は、パッド裏面に対応する略矩形状をなしており、パッド本体12の前側部分(詳細には、腿下部26)の下面を受ける剛性を持つ前側受け面部42と、その後方に設けられてパッド本体12の後側部分(詳細には、主として尻下部24)の下面を弾性的に支持するバネ部44とを備えて構成されている。
【0026】
詳細には、支持フレーム18は、前端部において幅方向Yに延びる略水平な面状の前側受け面部42と、その左右両端からそれぞれ後方に延びる側壁部46,46と、側壁部46,46の後端部同士を連結する後側の連結部48と、前側受け面部42と連結部48との間に架け渡されて両者の間を略水平面内で左右に交互に振れながら前後方向に延びる複数本のS字状バネ45とを備えて構成されている。
【0027】
パッド本体12の腿下部26の下面には、上記のように左右一対の裏面側凹部38が設けられているので、その間の凸状部50(図4〜6参照)が支持フレーム18の前側受け面部42に当接支持される。そのため、腿下部26のパッド裏面側には、図1に示すように、裏面側凹部38によって前側受け面部42との間に隙間52が形成され、更に、後方のバネ部44に向かって空気が抜けるように、裏面側凹部38は前側受け面部42の後端を越えてより後方まで延設されている。
【0028】
以上よりなる本実施形態であると、立体網状クッション体からなる通気性部材14をパッド表面に設けた収容凹部34に配設したので、パッド本体12とシートカバー16との間に空気が流動する通気空間が形成される。そのため、暖まった空気を該通気空間から通気孔36を介して流動させることができるので、高くなった温度や湿度を排出しやすくなる。
【0029】
特に通気性部材14を収容する収容凹部34がシート前方からの空気を取り込めるようにパッド本体12の前縁12Aに対して通気可能に開かれているので、シート前方の空気を空気流路35から収容凹部34の通気性部材14に導き、通気孔36を通ってパッド裏面側に導くような空気の流れを作ることができる。そのため、着座時や運転時の振動で、空気が排出、吸引を繰り返し、空気を流動させて、高くなった温度や湿度を排出することができる。また、通常のエアコンを作動させることにより生じるシート前方からの風を、図1に示すように、パッド本体12の前縁12Aから空気流路35を通って収容凹部34の通気性部材14に取り込み、通気性部材14から通気孔36を介してパッド裏面側、更に後方のバネ部44に逃がすことができる。そのため、車室内の空気の流れを利用して、シート10内で空気を流動させやすくすることができる。
【0030】
このように既存の空調設備はそのままで、その風の流れを利用してシート10内で空気を循環させることができるので、安価な構造でありながら、シート10にこもりやすい温度や湿度を排出させやすくして、着座時の蒸れを低減することができる。
【0031】
また、この実施形態であると、腿下部26に裏面側凹部38を設けて、該裏面側凹部38に通気孔36を開口させたので、パッド裏面側に空気を排出しやすくすることができる。特に、上記支持フレーム18の構成と裏面側凹部38との位置関係とも相俟って、パッド裏面側において空気を後方に逃がす効果を高めることができる。また、上記のように通気孔36が下方に向かって後方に傾斜して形成されていることからも、この後方に逃がす効果をより高めることができる。
【0032】
(第2実施形態)
図8は第2実施形態に係るパッド本体12と通気性部材14との組み付けた状態を示す図である。この例では、パッド本体12に設けた空気流路35の構成が第1実施形態とは異なる。
【0033】
すなわち、この例では、収容凹部34とパッド本体12の前縁12Aとを繋ぐ凹溝状の空気流路35が、単にパッド前縁12Aまで設けられているだけではなく、更に下方に延設されており、従って、パッド本体12の前面部12Bを上下方向に延びる延長溝部54が形成されている。
【0034】
このように空気流路35をパッド本体12の前面部12Bに回り込むように延長したことにより、シート前方からの風を更に取り込みやすくすることができる。その他の構成は第1実施形態と同様であり、同様の作用効果が奏される。
【0035】
(第3実施形態)
図9〜11は第3実施形態を示したものである。この実施形態では、通気性部材14がパッド本体12の前縁12Aにかかるように設けられた点で、第1実施形態とは異なる。
【0036】
すなわち、この例では、パッド本体12に設けられた収容凹部34が、パッド本体12の前縁12Aにかかるようにパッド本体12の前方に開かれた形状に設けられており、第1実施形態に対して前方に延長されている。そして、この延長された収容凹部34を埋めるように通気性部材14が配設されており、これにより、通気性部材14はパッド本体12の前縁12Aに至るまで設けられている。
【0037】
このように通気性部材14をパッド本体12の前縁12Aまで配設することにより、大腿部の圧迫感を低減することができる。立体網状クッション体からなる通気性部材14は、ポリウレタンフォームの発泡成形体からなるパッド本体12に比べて、硬度を同等に設定した場合、初期荷重に対する撓み量が大きく柔らかいという特徴がある。これは、立体網状クッション体には、ポリウレタンフォームの発泡成形体のような高密度のスキン層(コア部に比べて高密度)がないためである。例えば、シートクッションパッドとして一般的なポリウレタンフォームの発泡成形体と、立体網状クッション体として東洋紡績株式会社製「ブレスエアー」とについて、荷重撓み特性を比較したところ、下記表1に示すように、硬さ(25%硬度)は略同等でありながら、5%撓み時と10%撓み時での荷重は立体網状クッション体の方が顕著に小さい値であった。なお、荷重撓み特性試験は、JASO−B408の硬さ試験に準拠して行った(最大荷重:980N、加圧板:φ200mm、撓み速度:100mm/分)。
【0038】
【表1】
【0039】
このように通気性部材14は、パッド本体12に比べて初期荷重に対して柔らかいので、これをパッド前縁12Aにかかるように設けることにより、大腿部の圧迫感を低減することができる。また、通気性部材14をパッド本体12の前縁12Aまで配設することにより、その幅方向の全体でシート前方からの風を取り込むことができるので、空気をより流動しやすくすることができる。その他の構成は第1実施形態と同様であり、同様の作用効果が奏される。
【0040】
(第4実施形態)
図12は第4実施形態に係るパッド本体12と通気性部材14との組み付けた状態を示す図である。この例では、通気性部材14がパッド本体12の前面部12Bに回り込むように延長された点で第3実施形態とは異なる。
【0041】
すなわち、この例では、収容凹部34とこれに配設された通気性部材14が、単にパッド前縁12Aまで達しているだけでなく、更に下方に延設されており、従って、パッド本体12の前面部12Bを上下方向に延びる通気性部材14の縦壁部14Aが形成されている。
【0042】
このように通気性部材14をパッド本体12の前面部12Bに回り込むように延長したことにより、大腿部の圧迫感を低減する効果をより高めることができるとともに、シート前方からの風を更に取り込みやすくすることができる。その他の構成は第3実施形態と同様であり、同様の作用効果が奏される。
【0043】
(第5実施形態)
図13は第5実施形態に係る車両用シートを示したものである。この実施形態では、前方からの空気の取り込みをより多くするために、部分的にシートカバー16の通気性を向上させた点で第1実施形態とは異なる。
【0044】
すなわち、本実施形態では、シートカバー16は、上記空気流路35部分を含むパッド本体12の前縁12Aを覆う前方側部16Aにおいて、他の部分よりも通気性が高く形成されている。より詳細には、この例では、図13においてMで示す範囲の通気性が、他の部分の通気性よりも高く設定されており、すなわち、シートカバー16は、パッド本体12の前面部12Bを覆って車両前方に面する部分である前方側部16Aが、着座部20を覆う部分を含むシートカバー本体部16Bよりも通気性が高くなっている。このように部分的に通気性の高いシートカバー16は、当該前方側部16Aにおいて、シートカバーを構成するファブリックやレザーのメッシュを粗くする又はパンチングの数を増やす等の手法により得られる。
【0045】
このようにシートカバー16の前方側部16Aの通気性を高く設定することにより、シート前方からの風を更に取り込みやすくことができ、空気流路35から収容凹部34の通気性部材14に至る空気の流れをよりスムーズにすることができる。その他の構成は第1実施形態と同様であり、同様の作用効果が奏される。
【0046】
(他の実施形態)
以上の実施形態では、通気性部材14の設置箇所を腿下部26のみとしたが、通気性部材14は腿下部26から尻下部24にかけて着座部20の全域に設けてもよく、これにより快適性を更に高めることができる。但し、尻下部24は座り心地に対する影響が大きいので、好ましくは、通気性部材14は腿下部26のみに設置することである。
【0047】
また、以上の実施形態では、通気孔36をパッド本体12の裏面側凹部38に開口させて設けたが、例えば支持フレームに通気可能な溝や孔が設けられている場合、該通気孔をこれら支持フレームの溝や孔に対して開口させて設けてもよい。
【0048】
また、以上の実施形態では、1人掛けの車両用シートについて説明したが、ベンチタイプと呼ばれる2人又は3人掛けのシートについても同様に適用することができる。また、以上の実施形態では、特に言及しなかったが、背もたれ部においても、上記通気性部材を組み込むことにより、更に快適性を向上することができる。その他、一々列挙しないが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
10…車両用シート 12…パッド本体 12A…前縁
14…通気性部材 16…シートカバー 16A…前方側部
20…着座部 26…腿下部 34…収容凹部
35…空気流路 36…通気孔 38…裏面側凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンウォームの発泡成形体からなり、着座部における腿下部のパッド表面に収容凹部が設けられたパッド本体と、
繊維材により形成された立体網状クッション体からなり、前記収容凹部に配設された通気性部材と、
前記パッド本体及び通気性部材の表面を覆う通気性を有するシートカバーとを備え、
前記パッド本体には当該パッド本体を貫通して前記収容凹部内とパッド裏面側とを連通させる通気孔が設けられ、前記収容凹部が前記パッド本体の前方から空気を取り込めるように当該パッド本体の前縁に対して通気可能に開かれて設けられた
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記通気性部材が前記パッド本体の前縁にかかるように設けられたことを特徴とする請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記収容凹部が前記パッド本体の前縁から離間して設けられるとともに、該収容凹部と前記パッド本体の前縁とを繋ぐ空気流路が設けられて、該空気流路により前記収容凹部が前記パッド本体の前縁に対して通気可能に開かれたことを特徴とする請求項1記載の車両用シート。
【請求項4】
前記腿下部のパッド裏面側に裏面側凹部が設けられ、前記通気孔がパッド裏面側において前記裏面側凹部に開口して設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記通気孔が、前記収容凹部からパッド裏面側に向かって後方に傾斜して延びるよう設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記シートカバーは、前記パッド本体の前縁を覆う前方側部において他の部分よりも通気性が高く形成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項1】
ポリウレタンウォームの発泡成形体からなり、着座部における腿下部のパッド表面に収容凹部が設けられたパッド本体と、
繊維材により形成された立体網状クッション体からなり、前記収容凹部に配設された通気性部材と、
前記パッド本体及び通気性部材の表面を覆う通気性を有するシートカバーとを備え、
前記パッド本体には当該パッド本体を貫通して前記収容凹部内とパッド裏面側とを連通させる通気孔が設けられ、前記収容凹部が前記パッド本体の前方から空気を取り込めるように当該パッド本体の前縁に対して通気可能に開かれて設けられた
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記通気性部材が前記パッド本体の前縁にかかるように設けられたことを特徴とする請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記収容凹部が前記パッド本体の前縁から離間して設けられるとともに、該収容凹部と前記パッド本体の前縁とを繋ぐ空気流路が設けられて、該空気流路により前記収容凹部が前記パッド本体の前縁に対して通気可能に開かれたことを特徴とする請求項1記載の車両用シート。
【請求項4】
前記腿下部のパッド裏面側に裏面側凹部が設けられ、前記通気孔がパッド裏面側において前記裏面側凹部に開口して設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記通気孔が、前記収容凹部からパッド裏面側に向かって後方に傾斜して延びるよう設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記シートカバーは、前記パッド本体の前縁を覆う前方側部において他の部分よりも通気性が高く形成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−23140(P2013−23140A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162025(P2011−162025)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【出願人】(000003160)東洋紡株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【出願人】(000003160)東洋紡株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】
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