説明

車両用シート

【課題】基材となる立体編物に発熱線が取り付けられたヒータ装置を備える車両用シートにおいて、発熱線が取り付けられることによる座り心地の低下を抑制すること。
【解決手段】表層21と裏層22の間に立体層23を有する立体編物20に通電されることによって発熱する発熱線24が取り付けられた面状のヒータ装置2を備えた車両用シート1であって、前記発熱線24は、立体編物20の表側に形成された窪みである収容部25内に収容されて取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材として立体編物を用いた面状のヒータ装置を備える車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、通気性を有する基材に、発熱線が縫製によって固定された面状のヒータ装置が記載されている。このような面状のヒータ装置は、車両用シート等に好適に用いられる。車両用シートでは、背部や臀部といった乗員のシートに接触する部位を温めるため、シートカバーの裏側に面状のヒータ装置が配される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−297532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような発熱線が基材に縫製されてなるヒータ装置は、基材が発熱線に潰されて溝状の凹みとなってしまう。特に、特許文献1に記載されるような立体構造を有する厚みのある基材(立体編物)を用いる場合、発熱線に潰される部分がその隣接部分を引きこんでしまうため、凹みが大きくなる。また、発熱線を縫い付ける糸によって立体編物の表層が引っ張られ、当該凹みがさらに大きくなることもある。このように、従来の構造では、ヒータ面に生ずる大きな凹みにより、シートの座り心地が低下してしまうという問題があった。
【0005】
上記実情に鑑みて、本発明が解決しようとする課題は、基材となる立体編物に発熱線が取り付けられたヒータ装置を備える車両用シートにおいて、発熱線が取り付けられることによる座り心地の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明にかかる車両用シートは、表層と裏層の間に立体層を有する立体編物に通電されることによって発熱する発熱線が取り付けられた面状のヒータ装置を備えた車両用シートであって、前記発熱線は、立体編物の表側に形成された窪みである収容部内に収容されて取り付けられていることを要旨とする。
【0007】
上記構成によれば、立体編物に形成された収容部内に発熱線が収容されて取り付けられる構成であるから、発熱線によって立体編物に大きな凹みが生ずることはなく、ヒータ面の凹凸が小さい。そのため、発熱線が取り付けられることによるシートの座り心地の低下を抑制できる。
【0008】
また、前記発熱線は、前記収容部の両側面および前記裏層を通る糸で前記立体編物に縫い付けられていればよい。
【0009】
発熱線を糸によって立体編物に縫い付ける場合、上記のように発熱線を縫い付ける糸が収容部の両側面および裏層を通るようにすればよい。このようにすれば、発熱線を縫い付ける糸によって収容部の両側面と裏層が引きつけられた状態となるから(表層と裏層が糸によって直接的に引きつけられる構成ではないから)、縫い付ける糸によってヒータ面に大きな凹凸ができるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる車両用シートによれば、立体編物の収容部内に発熱線が収容されるため、ヒータ面の凹凸が小さい。そのため、発熱線が取り付けられることによるシートの座り心地の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(a)は本発明の実施形態にかかる車両用シートの外観斜視図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線断面を模式的に示した図である。
【図2】図2(a)は収容部が形成された立体編物の断面を模式的に示した図であり、図2(b)は立体編物の収容部内に発熱線が収容された状態の断面(ヒータ装置の断面)を模式的に示した図である。
【図3】立体編物の収容部内に収容された発熱線が収容部の側面および裏層を通る糸によって立体編物に縫い付けられた状態の断面(ヒータ装置の断面)を模式的に示した図である。
【図4】従来の手法により立体編物に発熱線が取り付けられる様子(従来構造のヒータ装置)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、単に上下方向(厚み方向)とは、図2、図3の上下方向(立体編物20の厚み方向)をいう。
【0013】
本実施形態にかかる車両用シート1は、シートカバー3(表皮)およびヒータ装置2を備える。ヒータ装置2は、シートカバー3とクッション材であるシートパッド4との間に設けられている。シートカバー3やシートパッド4、これらを支持するシートフレーム(図示せず)等の構成は公知の構成が適用できるから、詳細な説明は省略する。また、以下で詳細に説明するヒータ装置2が設置される箇所は特に限定されない。シートの背もたれ部(シートバック)や着座部(シートクッション)など、どのような場所においても適用することができる。
【0014】
ヒータ装置2は、基材(ベース)となる立体編物20、および、この立体編物20に取り付けられる発熱線24を有する。かかるヒータ装置2は、車両に設けられる図示されない給電手段によって発熱線24に通電されると発熱線24が発熱する面状のヒータである。
【0015】
立体編物20は、シートの通気性を良好なものとするためヒータ装置2の基材として用いる。この立体編物20は、表層21、立体層23、および裏層22を有する。表層21および裏層22は、薄い布材である。表層21や裏層22には、良好な通気性を確保するための複数の通気孔が形成されている。すなわち、少なくとも表層21や裏層22はメッシュ素材で構成されている。
【0016】
立体層23は、表層21と裏層22を繋ぐ連結層である。すなわち、表層21と裏層22を繋ぐ略上下方向に延びる多数の連結糸231で構成される層である。この立体層23(連結糸231)の構造は、クロス構造(連結糸231同士がクロスするもの)や、トラス構造(連結糸231によって「V」が連続した形状をなすもの)等、周知の構造が適用可能である。立体編物20は、この立体層23の存在により、所定の厚みを有する三次元的な形状の編物となっている。この立体層23を構成する連結糸231の材質は、特定の材質に限定されるものではないが、シートのクッション性を高めるといった観点から、弾性を有する材料で形成されていることが好ましい。
【0017】
発熱線24は、ニクロムなどの通電によって発熱する金属材料によって構成される。この発熱線24は、立体編物20に予め形成された収容部25内に収容されて取り付けられている。立体編物20に形成される収容部25を形成する方法としては、平坦な立体編物(通常の立体編物)の所定部位(収容部25を形成しようとする箇所)をプレス(熱プレス)することで、当該所定部位の立体層23の厚みを小さくすることにより形成する手法が挙げられる。
【0018】
収容部25の幅は、発熱線24の径よりも小さくすることが望ましい。このようにすれば、収容部25内に発熱線24が圧入されたような状態(発熱線24が収容部25の両側面251に挟み込まれたような状態)となるから、立体編物20に対する発熱線24の位置ずれが生じにくい。また、発熱線24によって立体編物20における収容部25の周囲が引っ張られて大きな凹みとなってしまうこともない。
【0019】
このように、発熱線24が立体編物20に形成された収容部25内に収容されて取り付けられる構成とすれば、発熱線24が固定されたヒータ面(表面)の凹凸を小さくすることができる。そのため、発熱線24が取り付けられることによるシートの座り心地の低下を抑制できる。
【0020】
このように立体編物20の収容部25内に収容される発熱線24は、次のように立体編物20に縫い付けられているとよい。図3に示すように、収容部25内に収容された発熱線24は、収容部25の両側面251および裏層22を通る糸26によって立体編物20に縫い付けられる。具体的には、収容部25に収容された発熱線24の上方を通り、かつ、収容部25の両側面251および裏層22を通る断面で見ると環状となる糸26によって縫い付けられる。これにより、発熱線24は、糸26と収容部25の底面252との間に挟まれたような状態で収容部25内に保持される。なお、発熱線24は、発熱線24の周囲を螺旋条に沿う一本の糸26(長い糸)で発熱線24を立体編物20に縫い付けてもよいし、複数の環状の糸26(複数の短い糸)で発熱線24を立体編物20に縫い付けてもよい。
【0021】
このような構成とすれば、発熱線24を縫い付ける糸26によって収容部25の側面251と裏層22が引きつけ合う。従来のように、単純に表層101と裏層102を通るように環状に縫い付けられた糸106によって発熱線104が立体編物100に縫い付けられる構成(図4参照)とすると、当該糸106によって表層101が裏層102側に引きつけられて立体層103が潰れ、立体編物100のヒータ面(表面)に大きな凹みが形成されてしまう(図4(b)参照)ところ、本実施形態は発熱線24を縫い付ける糸26によって立体編物20の表層21と裏層22が直接的に引きつけ合う構成ではないから、発熱線24を縫い付けることにより立体編物20の表層21が裏層22側に引きつけられて大きな凹みとなってしまうことはない。
【0022】
さらに、収容部25の側面251同士が引きつけられるように糸26を立体編物20に縫い付ければ、収容部25の開口が狭まる。したがって、収容部25内に収容された発熱線24の動き(立体編物20に対する発熱線24の位置ずれ)を抑制できる。
【0023】
このように、本構成は、ヒータ面(表面)の凹凸を小さくするために収容部25内に発熱線24が収容されることを巧みに利用し、発熱線24を立体編物20に縫い付ける糸26が収容部25の側面251を通るようにすることで、発熱線24を縫い付ける糸26によって立体編物20の表面が大きく凹んでしまうことを防止することができるものである。つまり、発熱線で潰されることによる立体編物の大きな凹み、および、発熱線を縫い付ける糸に表層が引っ張られることによる立体編物の大きな凹み、の両方の発生を防止することができる点で優れる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 車両用シート
2 ヒータ装置
20 立体編物
21 表層
22 裏層
23 立体層
24 発熱線
25 収容部
251 (収容部の)側面
26 (発熱線を立体編物に縫い付ける)糸
3 シートカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層と裏層の間に立体層を有する立体編物に通電されることによって発熱する発熱線が取り付けられた面状のヒータ装置を備えた車両用シートであって、
前記発熱線は、立体編物の表側に形成された窪みである収容部内に収容されて取り付けられていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記発熱線は、前記収容部の両側面および前記裏層を通る糸で前記立体編物に縫い付けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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