説明

車両用スイッチ

【課題】主に自動車の各種ランプの消点灯操作に用いられる車両用スイッチに関し、簡易な構成で、静音化が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】操作体11と回転体15の間にカム体17を設け、このカム体17によって、操作体11と回転体15の回転を規制することによって、回転体15の寸法を大きくすることなく、衝突音等の発生を防ぐことができるため、簡易な構成で、静音化が可能な車両用スイッチを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車の各種ランプの消点灯操作等に用いられる車両用スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のステアリングホイール下方に車両用スイッチを装着し、これによって、車両に装備された各種ランプの消点灯操作を行なうものが増えている。
【0003】
このような従来の車両用スイッチについて、図5〜図8を用いて説明する。
【0004】
図5は従来の車両用スイッチの分解斜視図であり、同図において、1は絶縁樹脂製の操作体、2は同じく保持体で、操作体1が保持体2右端に回転可能に装着されると共に、保持体2右端には複数のばね3がやや撓んだ状態で収納され、これに付勢されたボール4が操作体1内の凹凸部(図示せず)に弾接している。
【0005】
また、5は絶縁樹脂製の回転体、6は同じく支持体で、支持体6の軸部6A右端に保持体2が固着され、回転体5が保持体2と支持体6の間に回転可能に装着されると共に、回転体5右端にはばね3がやや撓んだ状態で収納され、これに付勢されたボール4が保持体2左端の凹凸部(図示せず)に弾接している。
【0006】
そして、7は絶縁樹脂または金属製のピンで、このピン7がばね8をやや撓めた状態で、回転体5右端に収納されると共に、操作体1や保持体2には段差部1Aや解除部1B、係止部2Aが設けられている。
【0007】
さらに、9は絶縁樹脂または金属製で略円柱状の操作軸、10は同じく略円筒状の回転軸で、回転軸10内に操作軸9が回転可能に挿入されると共に、操作軸9右端には操作体1が、回転軸10には回転体5が各々固着されている。
【0008】
また、この操作軸9と回転軸10が保持体2や支持体6内を回転可能に挿通すると共に、操作軸9と回転軸10の左端には、これらの回転に応じて電気的接離を行う、導電金属製の複数の可動接点や固定接点から形成されたスイッチ接点(図示せず)が設けられて、車両用スイッチが構成されている。
【0009】
そして、このように構成された車両用スイッチが自動車内の運転席前方の、ステアリングホイールの下方に装着されると共に、複数のスイッチ接点がリード線やコネクタ(図示せず)等によって、バッテリや各種ランプ、車両の電子回路(図示せず)等に接続される。
【0010】
以上の構成において、図7(a)の平面図に示すように、操作体1と回転体5が「OFF」の位置にある状態では、図6(a)の断面図に示すように、回転体5内のばね8に付勢されたピン7が、操作体1の段差部1A左端に弾接すると共に、操作体1と回転体5がばね3やボール4によって、この「OFF」位置に保持されている。
【0011】
そして、この「OFF」位置から、図7(b)に示すように、回転体5をフロント「F」の位置に回転操作すると、図6(b)に示すように、回転体5の回転に伴ってピン7が上方へ移動して、操作体1の段差部1A右端に弾接する。
【0012】
また、この回転体5に固着された回転軸10が回転して、回転軸10左端に設けられたスイッチ接点の電気的接離が行われ、これを車両の電子回路が検出すると共に、車両前方に装備されたフロントフォグランプ(図示せず)が点灯する。
【0013】
なお、この操作角度では、保持体2の係止部2Aがピン7に当接して、回転体5のこれ以上の回転が規制され、回転体5は上方のリヤ「R」の位置へは回転できないようになっている。
【0014】
そして、操作体1を「OFF」の位置から、図7(c)に示すように、ロー「L」の位置に回転操作すると、操作体1に固着された操作軸9が回転して、操作軸9左端のスイッチ接点の電気的接離が行われ、これを車両の電子回路が検出すると共に、車両前方に装備されたヘッドランプ(図示せず)や、後方に装備されたテールランプ(図示せず)が点灯する。
【0015】
また、この時、図6(c)に示すように、操作体1の回転に伴ってピン7がばね8を撓めながら左方へ移動して、操作体1の段差部1A左端に弾接し、係止部2Aよりも左方へ移動するため、回転体5の回転規制が解除されて上方への回転が可能な状態となる。
【0016】
そして、この規制が解除された回転体5を、図7(d)に示すように、リヤ「R」の位置へ回転操作すると、図6(d)に示すように、ピン7が係止部2A左端を上方へ弾接摺動し、これに伴って回転軸10が回転してスイッチ接点の電気的接離が行われ、車両後方に装備されたリヤフォグランプ(図示せず)が点灯する。
【0017】
さらに、図8(a)の平面図に示すように、操作体1をハイ「H」の位置に回転操作すると、図6(e)に示すように、操作体1が上方へ回転すると共に、操作軸9が回転してスイッチ接点の電気的接離が行われ、これを電子回路が検出すると共に、ヘッドランプが上向きに切換えられて、遠方まで照射可能な状態となる。
【0018】
なお、図8(b)に示すように、操作体1をロー「L」の操作角度に戻すと、図6(f)に示すように、操作体1が下方へ回転すると共に、操作軸9が回転してスイッチ接点の電気的接離が行われ、ヘッドランプが下向きに切換えられて、対向車への眩しさが低減された状態となる。
【0019】
さらに、図8(c)に示すように、操作体1を下方へ回転して「OFF」の位置まで戻すと、操作体1と操作軸9が下方へ回転して、スイッチ接点の電気的接離が行われ、ヘッドランプもテールランプも消灯した状態となるが、この時、操作していない回転体5も下方へ回転してフロント「F」の位置に戻り、リヤフォグランプも消灯する。
【0020】
つまり、操作体1を「OFF」の位置まで戻した場合には、操作体1の解除部1Bが回転体5に当接して、図6(g)に示すように、回転体5を下方へ回転させ、ピン7が操作体1の段差部1A右端に弾接した、フロント「F」の操作角度まで戻すようになっている。
【0021】
そして、この後、図8(d)に示すように、回転体5を下方へ回転して「OFF」の位置まで戻すと、図6(h)に示すように、ピン7が操作体1の段差部1A左端に弾接した状態になると共に、フロントフォグランプも消灯する。
【0022】
なお、操作体1と回転体5は、操作体1と保持体2の間、及び保持体2と回転体5の間に設けられ、ばね3に付勢されたボール4が、操作体1と保持体2の凹凸部に各々弾接することによって、各々の操作角度で保持されると共に、節度感を伴って回転操作が行われるようになっている。
【0023】
すなわち、操作体1と回転体5を回転操作することで、車両の前方や後方に装備された様々なランプの消点灯操作を行うと共に、操作体1と回転体5の間に設けられたピン7とばね8、及び段差部1Aや解除部1B、係止部2Aによって、所定の操作角度、例えば図7(b)や図8(c)に示す操作角度では、これらの回転が規制されるように構成されているものであった。
【0024】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2010−153302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、上記従来の車両用スイッチにおいては、回転体5内にピン7とばね8を収納し、これらと段差部1Aや解除部1B、係止部2Aによって、操作体1や回転体5の回転を規制しているため、ピン7やばね8の分だけ回転体5の寸法が長くなると共に、例えば図6(a)から図6(b)に示すように、回転体5を回転してピン7を上方へ移動した際に、ばね8に付勢されたピン7が段差部1A左端から右端に弾接して、衝突音が生じてしまう場合があるという課題があった。
【0027】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、簡易な構成で、静音化が可能な車両用スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記目的を達成するために本発明は、操作体と回転体の間にカム体を設け、このカム体によって、操作体と回転体の回転を規制するようにして車両用スイッチを構成したものであり、回転体の寸法を大きくすることなく、衝突音等の発生を防ぐことができるため、簡易な構成で、静音化が可能な車両用スイッチを得ることができるという作用を有するものである。
【発明の効果】
【0029】
以上のように本発明によれば、簡易な構成で、静音化が可能な車両用スイッチを実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態による車両用スイッチの分解斜視図
【図2】同断面図
【図3】同平面図
【図4】同平面図
【図5】従来の車両用スイッチの分解斜視図
【図6】同断面図
【図7】同平面図
【図8】同平面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を用いて説明する。
【0032】
なお、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0033】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による車両用スイッチの分解斜視図であり、同図において、11は絶縁樹脂製の操作体、12は同じく保持体で、操作体11が保持体12右端に回転可能に装着されると共に、保持体12右端には複数のばね3がやや撓んだ状態で収納され、これに付勢されたボール4が操作体11内の凹凸部(図示せず)に弾接している。
【0034】
また、15は絶縁樹脂製の回転体、6は同じく支持体で、支持体6の軸部6A右端に保持体12が固着され、回転体15が保持体12と支持体6の間に回転可能に装着されると共に、回転体15右端にはばね3がやや撓んだ状態で収納され、これに付勢されたボール4が保持体12左端の凹凸部(図示せず)に弾接している。
【0035】
そして、17は絶縁樹脂製のカム体で、このカム体17が操作体11と回転体15の間に配設されると共に、カム体17には操作体11の突起部11Aが挿通する溝部17Aが、操作体11には解除部11Bが、回転体15には係止部15Aが各々設けられている。
【0036】
さらに、9は絶縁樹脂または金属製で略円柱状の操作軸、10は同じく略円筒状の回転軸で、回転軸10内に操作軸9が回転可能に挿入されると共に、操作軸9右端には操作体11が、回転軸10には回転体15が各々固着されている。
【0037】
また、この操作軸9と回転軸10が保持体12や支持体6内を回転可能に挿通すると共に、操作軸9と回転軸10の左端には、これらの回転に応じて電気的接離を行う、導電金属製の複数の可動接点や固定接点から形成されたスイッチ接点(図示せず)が設けられて、車両用スイッチが構成されている。
【0038】
そして、このように構成された車両用スイッチが自動車内の運転席前方の、ステアリングホイールの下方に装着されると共に、複数のスイッチ接点がリード線やコネクタ(図示せず)等によって、バッテリや各種ランプ、車両の電子回路(図示せず)等に接続される。
【0039】
以上の構成において、図3(a)の平面図に示すように、操作体11と回転体15が「OFF」の位置にある状態では、図2(a)の断面図に示すように、操作体11の突起部11Aがカム体17下端に当接すると共に、操作体11と回転体15がばね3やボール4によって、この「OFF」位置に保持されている。
【0040】
そして、この「OFF」位置から、図3(b)に示すように、回転体15をフロント「F」の位置に回転操作すると、図2(b)に示すように、回転体15が上方へ回転すると共に、この回転体15に固着された回転軸10が回転して、回転軸10左端に設けられたスイッチ接点の電気的接離が行われ、これを車両の電子回路が検出すると共に、車両前方に装備されたフロントフォグランプ(図示せず)が点灯する。
【0041】
なお、この操作角度では、回転体15の係止部15Aがカム体17下端に当接して、回転体15のこれ以上の回転が規制され、回転体15は上方のリヤ「R」の位置へは回転できないようになっている。
【0042】
そして、操作体11を「OFF」の位置から、図3(c)に示すように、ロー「L」の位置に回転操作すると、操作体11に固着された操作軸9が回転して、操作軸9左端のスイッチ接点の電気的接離が行われ、これを車両の電子回路が検出すると共に、車両前方に装備されたヘッドランプ(図示せず)や、後方に装備されたテールランプ(図示せず)が点灯する。
【0043】
また、この時、図2(c)に示すように、操作体11の突起部11Aがカム体17の溝部17A内を移動し、これによってカム体17が右方へ移動するため、カム体17下端が係止部15Aから離れ、回転体15の回転規制が解除されて上方への回転が可能な状態となる。
【0044】
なお、このように「OFF」位置から、回転体15をフロント「F」の位置に回転操作した場合や、操作体11をロー「L」の位置に回転操作した場合、操作体11や回転体15が、ばね3やボール4によって各々の操作角度に保持されると共に、突起部11Aによってカム体17の移動が行われて、回転体15の回転規制の解除が行われるため、背景技術の項で説明したピンやばねを用いた場合のように、衝突音等が発生することはなく、静音化を図った状態で各々の位置への回転操作が行われるようになっている。
【0045】
そして、この規制が解除された回転体15を、図3(d)に示すように、リヤ「R」の位置へ回転操作すると、図2(d)に示すように、回転体15が上方へ回転すると共に、これに伴って回転軸10が回転してスイッチ接点の電気的接離が行われ、車両後方に装備されたリヤフォグランプ(図示せず)が点灯する。
【0046】
さらに、図4(a)の平面図に示すように、操作体11をハイ「H」の位置に回転操作すると、図2(e)に示すように、操作体11が上方へ回転して、突起部11Aも溝部17A内を上方へ移動すると共に、操作軸9が回転してスイッチ接点の電気的接離が行われ、これを電子回路が検出すると共に、ヘッドランプが上向きに切換えられて、遠方まで照射可能な状態となる。
【0047】
なお、図4(b)に示すように、操作体11をロー「L」の操作角度に戻すと、図2(f)に示すように、操作体11が下方へ回転すると共に、操作軸9が回転してスイッチ接点の電気的接離が行われ、ヘッドランプが下向きに切換えられて、対向車への眩しさが低減された状態となる。
【0048】
さらに、図4(c)に示すように、操作体11を下方へ回転して「OFF」の位置まで戻すと、操作体11と操作軸9が下方へ回転して、スイッチ接点の電気的接離が行われ、ヘッドランプもテールランプも消灯した状態となるが、この時、操作していない回転体15も下方へ回転してフロント「F」の位置に戻り、リヤフォグランプも消灯する。
【0049】
つまり、操作体11を「OFF」の位置まで戻した場合には、操作体11の解除部11Bが回転体15に当接して、図2(g)に示すように、回転体15を下方へ回転させ、フロント「F」の操作角度まで戻すようになっている。
【0050】
そして、この後、図4(d)に示すように、回転体15を「OFF」の位置まで回転して戻すと、図2(h)に示すように、回転体15が下方へ回転して、フロントフォグランプも消灯する。
【0051】
なお、操作体11と回転体15は、操作体11と保持体12の間、及び保持体12と回転体15の間に設けられ、ばね3に付勢されたボール4が、操作体11と保持体12の凹凸部に各々弾接することによって、各々の操作角度で保持されると共に、節度感を伴って回転操作が行われるようになっている。
【0052】
すなわち、操作体11と回転体15を回転操作することで、車両の前方や後方に装備された様々なランプの消点灯操作を行うと共に、操作体11と回転体15の間にカム体17を設け、このカム体17に突起部11Aや係止部15A、解除部11B等を係合させることによって、所定の操作角度、例えば図3(b)や図4(c)に示す操作角度では、これらの回転が規制されるように構成されている。
【0053】
また、このようにカム体17を用いて操作体11や回転体15の回転を規制することで、ピンやばねを用いた場合のように、回転体15を大きな形状にすることなく、簡易な構成に形成できると共に、操作体11や回転体15を回転操作した際に、衝突音等が発生することもなく、静音化を図った状態で車両に装備された様々なランプの、多様な操作を行うことができるようになっている。
【0054】
なお、以上の説明では、操作軸9と回転軸10の左端にスイッチ接点を形成すると共に、この操作軸9や回転軸10を回転してスイッチ接点の電気的接離を行う構成について説明したが、操作体11や回転体15に導電金属製の可動接点を装着すると共に、これを保持体12に設けた複数の固定接点に弾接させてスイッチ接点を形成し、操作体11や回転体15の回転によって直接スイッチ接点の電気的接離を行う構成としても、本発明の実施は可能である。
【0055】
このように本実施の形態によれば、操作体11と回転体15の間にカム体17を設け、このカム体17によって、操作体11と回転体15の回転を規制することによって、回転体15の寸法を大きくすることなく、衝突音等の発生を防ぐことができるため、簡易な構成で、静音化が可能な車両用スイッチを得ることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明による車両用スイッチは、簡易な構成で、静音化が可能なものを得ることができるという有利な効果を有し、主に自動車の各種ランプの消点灯操作用として有用である。
【符号の説明】
【0057】
3 ばね
4 ボール
6 支持体
6A 軸部
9 操作軸
10 回転軸
11 操作体
11A 突起部
11B 解除部
12 保持体
15 回転体
15A 係止部
17 カム体
17A 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持体に回転可能に装着された操作体と、上記保持体と支持体の間に回転可能に装着された回転体と、上記操作体と上記回転体の回転に応じて電気的接離を行うスイッチ接点からなり、上記操作体と上記回転体の間にカム体を設け、このカム体によって上記操作体と上記回転体の回転を規制した車両用スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−4435(P2013−4435A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136909(P2011−136909)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】