説明

車両用センターピラー

【課題】外荷重と内荷重とにそれぞれ作用するリインフォースを備えた、センターピラー構造を提供する。
【解決手段】アウターパネル2とインナーパネル3とで画成される中空領域Sに、アウターパネル2の内側に設けられサイドシルからルーフサイドレール迄に亘って延びる第1補強パネル10と、この第1補強パネル10の内側に設けられドアヒンジと共にピラーを補強する第2補強パネル20と、を備え、ベルトアンカ8をインナーパネル3の車室側の面に取り付けた車両用センターピラー1であって、インナーパネル3の中空領域S側の面でベルトアンカ8と車幅方向に重なる位置に設けた第3補強パネル30を備え、第3補強パネル30は、第2補強パネル20からの外荷重を分散して受ける複数の荷重分担部30B,30Cと、ベルトアンカ8からの内荷重を受けて変形を促進する変形促進部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のセンターピラーに係り、特に車両側面衝突時の車室へのピラーの侵入を低減すると共に、車両側面衝突に限らず衝突時に乗員がピラーに当たった場合に乗員の保護性能に優れたセンターピラーの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は従来のセンターピラー100の概略図であり、右側のセンターピラー100を車室側から見た図である。図7は図6のA′−A′線に沿ったセンターピラー100の拡大断面図である。
【0003】
従来のセンターピラー100は、側面衝突時にセンターピラー100の外側から車幅方向内側へ向けて荷重が作用したときに、センターピラー100の断面構造が崩れてセンターピラー100が車室へ侵入することを低減できるように構成されている。
【0004】
センターピラー100は、図7に示すように、アウターパネル102とインナーパネル103とで画成される中空領域(閉断面)S′内に、三つのリインフォースメント(それぞれ第1補強部材110、第2補強部材120、第3補強部材130と呼ぶ。)をアウターパネル102に沿わせて設けている。
【0005】
第1補強部材110は、図6に示すように、下側のサイドシル105から上側のルーフサイドレール106までに亘って上下方向に延びた部材である。第1補強部材110は、アウターパネル102と同様に、断面コ字型に形成されており、車室側へ内側面を臨ませるように配設されている。具体的には、第1補強部材110は、図7に示すようにアウターパネル102によって囲われる領域に収容されている。
【0006】
第2補強部材120は、センターピラー100に支持されたリヤドアのドアヒンジの取付剛性を補強すると共に、センターピラー100を補強するものであり、センターピラー100の全長の内、四分の一の高さ位置から上方のルーフサイドレール106までに亘って設けられている。第2補強部材120は、アウターパネル102及び第1補強部材110と同様に、断面コ字型に形成されており、車室側へ内側面を臨ませるように配設されている。具体的には、第2補強部材120は第1補強部材110によって囲われる領域に収容されている。
【0007】
第3補強部材130はセンターピラー100を補強するものであり、第2補強部材120より上下方向の寸法が短く選定されている。第3補強部材130は、アウターパネル102と第1補強部材110及び第2補強部材120と同様に、断面コ字型に形成され、車室側へ内側面を臨ませるように配設されている。具体的には、第3補強部材130は第2補強部材120によって囲われる領域に収容されている。
【0008】
これらの第1補強部材110、第2補強部材120及び第3補強部材130を備えることで、アウターパネル102の外側から車室側へ向けての荷重がセンターピラー100に加わった場合でも、センターピラー100の断面が崩れることが防止できる。これにより、センターピラー100が車室内へ入り込むことを軽減できるようにしている。
【0009】
従来のセンターピラー100は、このようなボディの強度や剛性を保持する機能に加えて、フロントシートに着座した乗員を保護するシートベルト装置を収容すると共に、シートベルトを支持するために利用されている。具体的には、リトラクターがピラー内部に収容されており、ベルトはセンターピラー内を通ってピラーの上部に設けられた開口から引き出されている。センターピラー100の開口から引き出されたベルトを支持するために、図7に示すように、ピラー上部の車室側の面には、ベルトアンカ108が設けられている。
【0010】
図7に示すように、センターピラー100を構成するインナーパネル103の内側において、ベルトアンカ108の取付領域には、ベルトアンカ108の取付強度を補強するベルトアンカリインフォースメント140が設けられている。
【0011】
図8は従来のベルトアンカリインフォースメント140の斜視図である。ベルトアンカリインフォースメント140は、中間に形成された平坦部141と、この平坦部141の両脇に形成された凸部142,143とから構成されており、一枚の鋼製の板材を例えばプレス加工して形成されている。平坦部141の中央には取付用の開口141Aが形成されている。左右の凸部142,143は、図7に示すように、それぞれ一対の縦壁部142A,142B,143A,143Bとこれらの縦壁部142A,142B,143A,143Bの端部を繋ぐ連結部142C,143Cとから構成されている。図7に示すように、センターピラー100に取り付けた状態で、凸部142,143が平坦部141より車輌外側に位置し、各縦壁部142A,142B,143A,143Bが車輌の車幅方向に沿う姿勢で、センターピラー100内に取り付けられる。具体的には、インナーパネル103の中空領域S′側の面にベルトリインフォースメント140が配設され、インナーパネル103の車室側の面にベルトアンカ108が配設されている。ベルトアンカ108は、ボルト109Aとナット109Bでベルトリインフォースメント140に固定されている。
【0012】
このようなベルトアンカリインフォースメント140を備えていることで、例えば車両衝突(側面衝突に限らない)時に乗員の頭部がセンターピラー100に、具体的にはセンターピラー100の車室側の面に設けられたベルトアンカ108に当たった場合、車室側から車幅方向外側へ向いた荷重がベルトアンカ108に作用し、この荷重はベルトアンカ108を支持するベルトアンカリインフォースメント140が変形することで吸収される。この衝撃吸収によって、乗員の保護が図られている。
【0013】
特許文献1には、センターピラーの内部に2つの補強パネルを備えたセンターピラー構造が開示されている。このセンターピラーでは車両側突時の変形を抑制するように2つの補強パネルが部分的に重ね合わせて配置されている(特許文献1の段落[0006]、[0025]等)。しかし、特許文献1では、乗員の頭部がセンターピラーに当たった場合の衝撃吸収については何ら説明されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010−173403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来のセンターピラー100は、図7に示すように、側面衝突時に作用する荷重(以下、外荷重と呼ぶ。)によって断面が崩れることを防止するために、3部品、つまり第1補強部材110、第2補強部材120及び第3補強部材130を備え、車室側からの乗員の衝突による荷重(以下、内荷重と呼ぶ。)を吸収するために1部品、つまりベルトアンカリインフォースメント140を備えている。機能別に補強部品が設けられているため、センターピラー100を構成する部品数が多くなり、結果としてコストや重量の増加を招いている。そこで、外荷重と内荷重とにそれぞれ効果のあるリインフォースの開発が要求される。
【0016】
本発明は上記問題を解決するために創作されたものであり、外荷重のみならず内荷重をも衝撃を吸収し得るように作用するリインフォースを備えた、センターピラー構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明は、アウターパネルとインナーパネルとで画成される中空領域に、アウターパネルの内側に設けられサイドシルからルーフサイドレール迄に亘って延びる第1補強パネルと、この第1補強パネルの内側に設けられドアヒンジと共にピラーを補強する第2補強パネルと、を備え、ベルトアンカがインナーパネルの車室側の面に取り付けられた車両用センターピラーであって、インナーパネルの中空領域側の面でベルトアンカと車幅方向に重なる位置に設けられた第3補強パネルを備え、第3補強パネルは、第2補強パネルからの外荷重を分散して受ける複数の荷重分担部と、ベルトアンカからの内荷重を受けて変形を促進する変形促進部と、を備えていることを特徴としている。
【0018】
本発明の車両用センターピラーにおいて、前記変形促進部は、前記第3補強パネルに形成された複数の切欠部でなっている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第3補強パネルがセンターピラーの外側からの外荷重だけでなく、車室側からの内荷重にも対応して、当該荷重をそれぞれ吸収する。センターピラー断面の構成部品として、外荷重と内荷重とにそれぞれ共用できる第3補強パネルを設けることで、図7に示す従来のセンターピラー100に比べて部品点数を削減することができる。また、部品点数の削減に伴って、コストや質量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るセンターピラーの概略側面図である。
【図2】図1のA−A線に沿ったセンターピラーのベルトアンカ取付位置での拡大断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る第3補強パネルの斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るセンターピラーの外荷重作用時の機能を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態に係るセンターピラーの内荷重作用時の機能を説明するための図である。
【図6】従来のセンターピラーの概略側面図である。
【図7】図6のA′−A′線に沿ったセンターピラーの拡大断面図である。
【図8】従来のベルトアンカリインフォースメントの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図中の符号Frは車両前方を、Upは車両上方を、LHは車幅方向であって左方を示す。
図1は本発明の実施形態に係るセンターピラー1の概略図であり、右側のセンターピラー1を車室側から見た図である。図2は図1のA−A線に沿ったベルトアンカ取付位置Pにおけるセンターピラー1の拡大断面図である。
【0022】
本実施形態に係るセンターピラー1は、アウターパネル2とインナーパネル3と第1補強パネル10と第2補強パネル20と第3補強パネル30とを備えている。
【0023】
アウターパネル2は、図2に示すように、ベルトアンカ取付位置Pにおいて、面を車幅方向外側に向けたアウタ横壁部2Aと、アウタ横壁部2Aの前端から車両内側方向へ延び面を車両前方へ向けたアウタ前壁部2Bと、アウタ横壁部2Aの後端から車両内側方向へ延び面を車両後方へ向けたアウタ後壁部2Cと、アウタ前壁部2Bの車両内側の端から車両前方側へ向けて延出したフランジ2Dと、アウタ後壁部2Cの車両内側の端から車両後方側へ向けて延出したフランジ2Eと、で車両外側に突出した断面コ字型に上下方向に延びて形成されている。このアウターパネル2は一枚の鋼製の板材を例えばプレス加工して形成されている。なお、アウタ前壁部2Bとアウタ後壁部2Cとは、車両外側から車室側へ向けていくにつれて互いの間隔が広がるように設けられている。
【0024】
インナーパネル3は、図2に示すように、ベルトアンカ取付位置Pにおいて、シートベルトアンカ取付用に平坦に形成された中間部3Aと、この中間部3Aの前端から延出して車室側に凹むように形成された第1凹部3Bと、中間部3Aの後端から延出して車室側に凹むように形成された第2凹部3Cと、第1凹部3Bの前端から車両前方へ延出したフランジ3Dと、第2凹部3Cの後端から車両後方へ延出したフランジ3Eと、から構成れている。このように、インナーパネル3は、アウターパネル2と比べると、平坦状に形成されている。このインナーパネル3は一枚の鋼製の板材を例えばプレス加工して形成されている。
【0025】
アウターパネル2の前後のフランジ2D,2Eとインナーパネル3の前後のフランジ3D,3Eをそれぞれ重ね合わせることで、中空領域(閉断面)Sが画成される。この中空領域(閉断面)S内に第1補強パネル10、第2補強パネル20、第3補強パネル30が配設される。
【0026】
第1補強パネル10はセンターピラー1を補強する部材である。第1補強パネル10は、図1に示すように下側のサイドシル5から上側のルーフサイドレール6までに亘って上下方向に延びた部材である。
【0027】
ベルトアンカ取付位置Pにおいて、第1補強パネル10は、面を車幅方向外側に向けた第1横壁部10Aと、第1横壁部10Aの前端から車両内側方向へ延び面を車両前方へ向けた第1前壁部10Bと、第1横壁部10Aの後端から車両内側方向へ延び面を車両後方へ向けた第1後壁部10Cと、第1前壁部10Bの車両内側の端から車両前方側へ向けて延出したフランジ10Dと、第1後壁部10Cの車両内側の端から車両後方側へ向けて延出したフランジ10Eと、を備えている。
【0028】
このように第1補強パネル10はアウターパネル2と同様に断面コ字型に形成されている。この第1補強パネル10は一枚の鋼製の板材を例えばプレス加工して形成されている。
【0029】
第1補強パネル10の第1横壁部10Aの幅W1の寸法は、アウターパネル2のアウタ横壁部2Aの幅Wよりも狭く設定されており、第1補強パネル10はアウターパネル2によって囲われる領域に収容されている。
【0030】
第1補強パネル10の第1横壁部10Aと第1前壁部10B及び第1後壁部10Cは、アウターパネル2のアウタ横壁部2Aとアウタ前壁部2B及びアウタ後壁部2Cとにそれぞれ対向するように設けられている。さらに第1補強パネル10の第1横壁部10A,第1前壁部10B及び第1後壁部10Cと、アウターパネル2のアウタ横壁部2A,アウタ前壁部2B及びアウタ後壁部2Cとの間には所定幅のクリアランスC1が設定されている。
【0031】
このように第1補強パネル10は、アウターパネル2に対してクリアランスC1が設定されてアウターパネル2によって囲われる領域に収容されている状態で、図2に示すように、第1前壁部10Bと第1後壁部10Cとが、車両外側から車室側へ向けていくにつれて互いの間隔が広がるように形成されている。
【0032】
第1補強パネル10の前後のフランジ10D,10Eは、それぞれアウターパネル2のフランジ2D,2Eとインナーパネル3のフランジ3D,3Eとに挟まれた状態で、例えばスポット溶接によって固定されている。
【0033】
第2補強パネル20はセンターピラー1に支持されたリヤドアのドアヒンジの取付剛性を補強すると共に、センターピラー1を補強するものである。第2補強パネル20は、図1に示すように、センターピラー1の全長の内、四分の一の高さ位置から上側のルーフサイドレール6までに亘って設けられている。
【0034】
ベルトアンカ取付位置Pにおいて、第2補強パネル20は、面を車幅方向外側に向けた第2横壁部20Aと、第2横壁部20Aの前端から車両内側方向へ延び面を車両前方へ向けた第2前壁部20Bと、第2横壁部20Aの後端から車両内側方向へ延び面を車両後方へ向けた第2後壁部20Cと、を備えている。
【0035】
このように第2補強パネル20はアウターパネル2及び第1補強パネル10と同様に断面コ字型に形成されている。この第2補強パネル20は、一枚の鋼製の板材を例えばプレス加工して形成されている。
【0036】
第2補強パネル20の第2横壁部20Aの幅W2の寸法は、第1補強パネル10の第1横壁部10Aの幅W1よりも狭く設定されており、第2補強パネル20は第1補強パネル10によって囲われる領域に収容されている。
【0037】
第2補強パネル20の第2横壁部20Aと第2前壁部20B及び第2後壁部20Cは、第1補強パネル10の第1横壁部10Aと第1前壁部10B及び第1後壁部10Cとそれぞれ対向するように設けられている。さらに第2補強パネル20の第2横壁部20A,第2前壁部20B及び第2後壁部20Cと、第1補強パネル10の第1横壁部10A,第1前壁部10B及び第1後壁部10Cとの間には所定幅のクリアランスC2が設定されている。図示を省略するが、第2補強パネル20はそのほぼ全長に亘って第1補強パネル10との間にクリアランスC2が設定されているが、一部において第1補強パネル10に接し、その接触部分がスポット溶接されて第2補強パネル20は第1補強パネル10に固定されている。
【0038】
このように第2補強パネル20は、第1補強パネル10に対してクリアランスC2が設定されて第1補強パネル10によって囲われる領域に収容されている状態で、図2に示すように、第2前壁部20Bと第2後壁部20Cとが、車両外側から車室側へ向けていくにつれて互いの間隔が広がるように形成されている。
【0039】
第3補強パネル30はセンターピラー1に支持されたベルトアンカ8の取付強度を補強すると共に、センターピラー1を補強するものである。第3補強パネル30は、インナーパネル3の中空領域側の面でベルトアンカ8と車幅方向に重なる高さ位置に設けられている。第3補強パネル30は、図1に示すように、上下方向に沿った寸法が第2補強パネル20より短くなるように設定されている。
【0040】
ベルトアンカ取付位置Pにおいて、第3補強パネル30は、面を車幅方向内側に向けた第3横壁部30Aと、第3横壁部30Aの前端から車両外側方向へ延び面を車両前方へ向けた第3前壁部30Bと、第3横壁部30Aの後端から車両外側方向へ延び面を車両後方へ向けた第3後壁部30Cと、を備えている。
【0041】
このように第3補強パネル30はアウターパネル2、第1補強パネル10及び第2補強パネル20と同様に断面コ字型に形成されている。この第3補強パネル30は一枚の鋼製の板材を例えばプレス加工して形成されている。
【0042】
第3補強パネル30の第3前壁部30Bの先端部と第3後壁部30Cの先端部の間隔W3の寸法は、第2補強パネル20の第2横壁部20Aの幅W2よりも狭く設定されている。
【0043】
第3補強パネル30の第3横壁部30Aと第3前壁部30B及び第3後壁部30Cは、第2補強パネル20の第2横壁部20Aと第2前壁部20B及び第2後壁部20Cとにそれぞれ対向するように設けられている。さらに第3補強パネル30の第3前壁部30B及び第3後壁部30Cと、第2補強パネル20の第2前壁部20B及び第2後壁部20Cとの間には、所定幅のクリアランスC3が設定されている。さらに、第3前壁部30B及び第3後壁部30Cの車幅方向外側の端部は、第2補強パネル20の第2横壁部20Aに接触しないように配設されている。
【0044】
このように第3補強パネル30は、第2補強パネル20に対してクリアランスC3が設定されて第3補強パネル30によって囲われる領域に部分的に収容されている状態で、図2に示すように、第3前壁部30Bと第3後壁部30Cとが、車室側から車両外側へ向けていくにつれて互いの間隔が広がるように形成されている。
【0045】
この第3補強パネル30の第3横壁部30Aには、図3に示すように、貫通孔31が形成されている。インナーパネル3はこの貫通孔31に対応した貫通孔3G(図1参照)を備えている。各貫通孔31,3Gの位置を重ねた状態で、これらの貫通孔31,3Gにベルトアンカ8に固定されたボルト9Aを通してナット9Bで締めることで、ベルトアンカ8は第3補強パネル30に固定される。この第3補強パネル30はインナーパネル3とスポット溶接によって固定されている。
【0046】
第3補強パネル30は、図3に示すように、ベルトアンカ取付用の貫通孔31の周囲に、変形促進部として二つの切欠部32,33が形成されている。図示例では、貫通孔31の上側と下側とに、円弧状の切欠部32,33が設けられている。
【0047】
このように構成された本実施形態に係るセンターピラー1の作用について、場合を分けて説明する。
【0048】
A.ピラー外側から荷重が加わった場合
例えば、側面衝突が起きて、図4に示すようにセンターピラー外側から車幅方向内側へ、つまり車室側へ向けての荷重F1がセンターピラー1に作用した場合、この荷重F1はアウターパネル2に先ず作用してアウターパネル2が変形する。アウターパネル2はその変形の過程で内側の第1補強パネル10に接する。荷重F1が大きいとアウターパネル2から第1補強パネル10へ荷重F1が入力して、第1補強パネル10も変形する。第1補強パネル10はその変形の過程で内側の第2補強パネル20に接する。荷重F1が大きいと第1補強パネル10から第2補強パネル20へ荷重F1が入力して、第2補強パネル20も変形する。
【0049】
ここで、本実施形態の場合、第2補強パネル20の変形に伴う車幅方向内側への移動先に、第3補強パネル30の第3前壁部30Bと第3後壁部30Cとが配設されているため、第2補強パネル20の変形の過程で、例えば第2補強パネル20が図4に破線で示す位置に移動すると、第3補強パネル30の第3前壁部30Bと第3後壁部30Cとに当たる。ここで、第3前壁部30Bと第3後壁部30Cとは、第2補強パネル20の第2横壁部20Aの面に対してほぼ垂直状に設けられているため、第2補強パネル20から第3補強パネル30へ荷重F1が入力されると、この荷重F1は第3前壁部30Bと第3後壁部30Cとにそれぞれ作用する。つまり、荷重F1が第3前壁部と第3後壁部とに分散される。このように、第3補強パネル30の第3前壁部30Bと第3後壁部30Cとに荷重を分担させることで、センターピラー1の断面崩れを抑制できる。よって、センターピラー1の車室R内への侵入量を軽減できる。
【0050】
B.ピラー内側から荷重が加わった場合
例えば、側面衝突に限らず車両衝突が生じ、衝突の衝撃による乗員の体の移動に伴って頭部がセンターピラー1に取り付けたベルトアンカ8に当たった場合、図5に示すように、車室側から車幅方向外側へ向けての荷重F2がベルトアンカ8に作用する。センターピラー1を構成するベルトアンカ取付位置Pでは、荷重F2は、ベルトアンカ8を介して、第3補強パネル30に作用する。この荷重F2が入力されたベルトアンカ取付位置Pでは、第3補強パネル30の第3横壁部30Aに変形促進部としての切欠部32,33(図3参照)が形成されているため、第3補強パネル30が変形し易く形成されている。よって、図5に破線で示すように、第3補強パネル30が変形することができる。このように、第3補強パネル30の第3横壁部30Aの面が変形することで、衝撃を吸収する。
【0051】
このように本発明の実施形態に係るセンターピラー1では、第3補強パネル30がセンターピラー1の外側から外荷重だけでなく、車室側からの内荷重にも対応して、当該荷重を吸収するように構成されている。センターピラー断面の構成部品として、外荷重と内荷重とにそれぞれ共用できる第3補強パネル30を設けることで、図7に示す従来のセンターピラー100に比べて部品点数を削減することができる。また、部品点数の削減に伴って、コストや質量を低減することができる。
【0052】
以上説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施をすることができる。
荷重分担部として、一対の突出する片、つまり第3前壁部30Bと第3後壁部30Cとを備えた第3補強パネル30を例示したが、3つ以上の突出片或いは突出部分を備えて、第3補強パネルを構成してもよい。例えば、断面W字型などに形成して、外側からの荷重を複数の荷重分担部としての突出片で受けるように構成してもよい。
変形促進部として、2つの切欠部を例示したが、数は2つに限定されるものではない。一つでも3つ以上でもよい。また、形状も円弧状に限らず、円、四角などであってもよい。また、切欠に限らず、例えば線状のスリットであってもよい。
前記説明では、第1補強パネル、第2補強パネルが、所謂一枚の鋼製のプレートをプレスして形成したものを前提にしたが、第1補強パネルは、複数のパーツが接合して構成されてもよいことは勿論である。第2補強パネル、第3補強パネルも同様である。
【符号の説明】
【0053】
1 センターピラー
2 アウターパネル
3 インナーパネル
5 サイドシル
6 ルーフサイドレール
8 ベルトアンカ
10 第1補強パネル
20 第2補強パネル
30 第3補強パネル
30B 第3前壁部(荷重分担部)
30C 第3後壁部(荷重分担部)
32 切欠部(変形促進部)
S 中空領域(閉断面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターパネルとインナーパネルとで画成される中空領域に、上記アウターパネルの内側に設けられサイドシルからルーフサイドレール迄に亘って延びる第1補強パネルと、この第1補強パネルの内側に設けられドアヒンジと共にピラーを補強する第2補強パネルと、を備え、
ベルトアンカが上記インナーパネルの車室側の面に取り付けられた、車両用センターピラーであって、
上記インナーパネルの中空領域側の面で上記ベルトアンカと車幅方向に重なる位置に設けられた第3補強パネルを備え、
上記第3補強パネルは、上記第2補強パネルからの外荷重を分散して受ける複数の荷重分担部と、上記ベルトアンカからの内荷重を受けて変形を促進する変形促進部と、を備えていることを特徴とする、車両用センターピラー。
【請求項2】
前記変形促進部は、前記第3補強パネルに形成された複数の切欠部であることを特徴とする、請求項1に記載の車両用センターピラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−23038(P2013−23038A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158475(P2011−158475)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】