説明

車両用ドアミラーのパネル取付構造

【課題】バイザー側の設計自由度及びアンダーパネルの良好な取付作業性を維持しつつ、アンダーパネルの意匠面でのヒケの発生を抑え且つアンダーパネルを安定的に固定する。
【解決手段】後方確認用のミラーを保持するためのバイザーと、バイザーの下側部分を覆う樹脂製のアンダーパネル3とを備えた車両用ドアミラーのパネル取付構造である。アンダーパネル3は、第1係合孔に係合する第1係合部33と、ピン穴に嵌合する基準ピン23と、アンダーパネル3の内側面における幅方向の中央部から後方に突出する台座部13と、を有している。台座部13の横断面は、第1係合部33及び基準ピン23よりも薄肉の板状部材13a,13bで構成されるコ字状に形成され、且つ、台座部13の先端部には、第1係合部33と基準ピン23とが共に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後方確認用のミラーを保持するためのバイザーと、当該バイザーの下側部分を覆う樹脂製のアンダーパネルとを備えた車両用ドアミラーのパネル取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車庫入れ等の際に死角となる車両下方を撮影するための小型カメラや、乗車の際に乗員の足元を照らすためのフットランプ等を、ミラーを保持するためのバイザーと当該バイザーを覆うためのカバーパネルとから成るミラーハウジング内に収容するようにした車両用ドアミラーが知られている。この種の車両用ドアミラーでは、下面に覗き窓を開口した専用のカバーパネルを製造し、この覗き窓に小型カメラのレンズやフットランプの先端等を臨ませるものが多い。
【0003】
しかしながら、小型カメラやフットランプ等を設けるタイプの車両用ドアミラーと、これらを設けないタイプの車両用ドアミラーとは、前者では覗き窓をカバーパネルの下面に開口する必要があるという点を除けば、同じ仕様のカバーパネルを用いることができる筈である。にもかかわらず、小型カメラやフットランプ等を設けるタイプの車両用ドアミラーと、これらを設けないタイプの車両用ドアミラーとで、カバーパネル全体を別々に製造するやり方では、共有できる部分まで別の金型を製作しなければならず、金型製作費が嵩むという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するために、例えば、特許文献1では、小型カメラ又はフットランプを覗き窓から下向きに臨ませるようにミラーハウジング内に収容することが可能な車両用ドアミラーにおいて、バイザーを覆うためのカバーパネルを、共有部分である、バイザーの上側部分を覆うアッパーパネルと、専用部分である、バイザーの下側部分を覆うアンダーパネルとに分けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−182286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、カバーパネルのバイザーへの取付構造としては、例えば上記特許文献1の図2に示すように、車両前後方向前側から、カバーパネルに形成された基準ピン(位置決め部材)をバイザーに形成されたピン穴(位置決め孔)に差し込んで位置決めを行うとともに、カバーパネルに形成されたクリップ(係合部)をバイザーに形成された嵌合孔(被係合部)に差し込んで、カバーパネルをバイザーに取付固定するものが多い。
【0007】
ここで、特許文献1の図2に示す如く、アンダーパネルの外周面の湾曲が小さい場合には、アンダーパネルの幅方向の端部のみならず幅方向中央部でも、アンダーパネルとバイザーとの間の距離が短いことから、アンダーパネルの幅方向中央部における位置決め部材及び係合部の寸法が短くても、これらを位置決め孔に嵌合させたり、被係合部に係合させたりすることができる。しかし、ドアミラーの意匠性を向上させるべく、アンダーパネルの外周面を大きく湾曲させた場合には、アンダーパネルの幅方向中央部では、アンダーパネルとバイザーとの間の距離が長くなることから、位置決め部材及び係合部をバイザー側に延長させる必要があるところ、位置決め部材及び係合部の寸法を長くした場合には、以下のような問題がある。
【0008】
すなわち、位置決め部材及び係合部の寸法を長くすると、これらの体積も必然的に大きくなることから、射出成形の際、これら係合部及び位置決め部材が収縮したときに、アンダーパネルの外側面(意匠面)にヒケが生じるおそれがある。また、位置決め部材及び係合部の寸法を長くすると、これらの係合部及び位置決め部材が撓み易くなることから、位置決め部材を位置決め孔に差し込んで位置決めを行っても、係合部の位置と被係合部の位置とがズレてしまい、取付作業性が低下するおそれがある。
【0009】
そこで、位置決め部材及び係合部を、アンダーパネルとバイザーとの間の距離が短いアンダーパネルの幅方向の端部のみに設けることが考えられるが、かかるやり方では、幅方向における固定点(係合部)間の距離が長過ぎることから、アンダーパネルを安定的に固定することが困難となる。
【0010】
また、バイザーの上側部分は、ミラーの角度を調節するためのユニット(ミラー角度調節ユニット)等を保持するために、パネル取付側の面がアッパーパネルに向かって突き出していることが多く、アッパーパネルとバイザーとの間の距離が通常短くなっているところ、これと同様に、バイザーの下側部分におけるパネル取付側の面をアンダーパネルに向けて突出させて、アンダーパネルとバイザーとの間の距離を短くすることも考えられる。しかしながら、かかる取付構造は、ミラー角度調節ユニットをはじめ各種の装置を保持する役割を果たすバイザー側の設計自由度を制約する点で望ましくない。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両用ドアミラーのパネル取付構造において、バイザー側の設計自由度及びアンダーパネルの良好な取付作業性を維持しつつ、アンダーパネルの意匠面でのヒケの発生を抑え且つアンダーパネルを安定的に固定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両用ドアミラーのパネル取付構造では、アンダーパネルの幅方向中央部に設けられる係合部及び位置決め部材を、アンダーパネルの内側面に直接形成するのではなく、これら係合部及び位置決め部材よりも薄肉の板状部材で構成される開断面状を有する台座部を介して、アンダーパネルに形成するようにしている。
【0013】
具体的には、第1の発明は、後方確認用のミラーを保持するためのバイザーと、当該バイザーに対してミラー面と略垂直な方向から当該ミラーとは反対側に取り付けられて、当該バイザーの下側部分を覆う樹脂製のアンダーパネルと、を備えた車両用ドアミラーのパネル取付構造を対象とする。
【0014】
そして、上記アンダーパネルは、上記バイザーに形成された被係合部に係合する係合部と、上記バイザーに形成された位置決め孔に嵌合する位置決め部材と、当該アンダーパネルの内側面における幅方向の中央部から上記バイザーに向かってミラー面と略垂直な方向に突出する台座部と、を有しており、上記台座部の横断面は、上記係合部及び位置決め部材よりも薄肉の板状部材で構成される開断面状に形成され、且つ、当該台座部の先端部には、上記係合部と上記位置決め部材とが共に設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
なお、「開断面」とは、建築用語であり、「鋼板」で構成される部材の断面が箱断面のように閉じていない形状のことを意味するところ、本発明では、樹脂製品におけるこれと同様の形状を表現すべく「開断面状」という語を用いている。
【0016】
第1の発明によれば、その先端部に係合部及び位置決め部材が設けられた台座部はアンダーパネルの内側面に直接形成されているが、この台座部の横断面は、係合部及び位置決め部材よりも薄肉の板状部材で構成されており、かかる薄肉の板状部材が収縮してもその影響は小さいことから、アンダーパネルの意匠面におけるヒケの発生を抑制することができる。
【0017】
また、台座部の横断面は、薄肉の板状部材で構成されているものの、開断面状(例えば、コ字形)であることから、曲げ剛性が確保されており、かかる台座部の先端部に設けられた係合部及び位置決め部材をしっかりと支持することができる。そうして、バイザーに向かって突出する台座部の先端部に、係合部及び位置決め部材を設けることから、これら係合部及び位置決め部材の寸法を長くする必要がないので、係合部及び位置決め部材が撓むのを抑えることができる。このように、台座部によって係合部及び位置決め部材がしっかりと支持されることと、係合部及び位置決め部材の撓みが抑えられることとが相俟って、係合部及び位置決め部材と位置決め孔及び被係合部との位置関係が維持されることから、意匠性を向上させるべくアンダーパネルの外周面を大きく湾曲させた場合でも、取付作業性の低下を抑えることができる。なお、台座部の横断面は、閉断面状ではなく開断面状であることから、スライド型等を用いて容易に成型することが可能となっている。
【0018】
さらに、台座部は、アンダーパネルの内側面における幅方向の中央部に設けられているので、アンダーパネルの幅方向の両端部に設けられた係合部だけを用いて、アンダーパネルをバイザーに取り付ける場合に比して、アンダーパネルをより安定的に固定することができる。
【0019】
また、バイザーについては、従来通り、位置決め孔(例えばピン穴)と被係合部(例えば嵌合穴)とを形成するだけでよいことから、バイザー側の設計自由度を維持することができる。
【0020】
加えて、係合部と位置決め部材とを共に台座部の先端部に形成していることから、係合部及び位置決め部材のそれぞれに対して台座部を形成する場合に比して、省スペース化を図ることができるとともに、台座部を成型するためのスライド型の数を減少させることができる。
【0021】
以上より、車両用ドアミラーのパネル取付構造において、バイザー側の設計自由度及びアンダーパネルの良好な取付作業性を維持しつつ、アンダーパネルの意匠面でのヒケの発生を抑え且つアンダーパネルを安定的に固定することができる。
【0022】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記位置決め部材は、上方から見て、上記係合部によって隠れないような位置に設けられていることを特徴とするものである。
【0023】
アンダーパネルをバイザーに取り付ける際には、作業者は位置決め部材の位置を上方から確認しながら取付作業を行うところ、第2の発明によれば、位置決め部材の位置を常に上方から確認することができるので、アンダーパネルの取付作業性を向上させることができる。
【0024】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記位置決め部材は、断面十字状に形成されていることを特徴とするものである。
【0025】
ところで、位置決め部材が断面円形等の場合には、アンダーパネルをバイザーに組み付ける際、アンダーパネルを上方から見ただけでは、アンダーパネルがバイザーに対してミラー面と略垂直な軸周りに傾斜していても、そのことを認識することはできない。
【0026】
ここで、第3の発明によれば、位置決め部材が断面十字状に形成されていることから、上方から見た十字の見え方等によって、アンダーパネルがバイザーに対して正規の取付姿勢になっているか否かを一目で判別することが可能となるので、取付作業性をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る車両用ドアミラーのパネル取付構造によれば、係合部と位置決め部材とを、樹脂製のアンダーパネルの内側面に直接形成するのではなく、その横断面が当該係合部及び位置決め部材よりも薄肉の板状部材で構成されている台座部を介して、アンダーパネルに形成するようにしていることから、射出成形の際、アンダーパネルの意匠面にヒケが生じるのを抑えることができる。
【0028】
また、係合部及び位置決め部材を横断面が開断面状である台座部の先端部に設けることで、係合部及び位置決め部材と位置決め孔及び被係合部との位置関係が維持されることから、意匠性を向上させるべくアンダーパネルの外周面を大きく湾曲させた場合でも、取付作業性の低下を抑えることができる。
【0029】
さらに、台座部は、アンダーパネルの内側面における幅方向の中央部に設けられているので、アンダーパネルの幅方向の両端部に設けられた係合部だけを用いて、アンダーパネルをバイザーに取り付ける場合に比して、アンダーパネルをより安定的に固定することができる。
【0030】
また、バイザーについては、従来通り、位置決め孔と被係合部とを形成するだけでよいことから、バイザー側の設計自由度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラーを示す斜視図である。
【図2】車両用ドアミラーの分解斜視図である。
【図3】アンダーパネルの斜視図である。
【図4】アンダーパネルの平面図である。
【図5】アンダーパネルの裏面図である。
【図6】バイザーの正面図である。
【図7】アンダーパネルをバイザーに取り付けた状態における、図5のVII−VII線及び図6のVII−VII線に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0033】
−ドアミラーの全体構造−
図1は、本発明の実施形態に係る車両用ドアミラーを示す斜視図であり、図2は、ドアミラーの分解斜視図である。このドアミラー1は、運転者の後方確認のために用いられるものであり、三角窓部を介してフロントドア31に固定されるものとは異なり、図1に示すように、フロントドア31のアウターパネル31aに直接ミラーベース21が固定されるようになっている。なお、以下の説明では、右側のドアミラー1について説明するが、左側のドアミラーについては、右側のドアミラー1と左右対称であることを除けば同様の構成であることから、その説明を省略する。
【0034】
このドアミラー1は、後方確認用のミラー9と、ミラー9を保持するためのバイザー7と、バイザー7の下側部分を覆う樹脂製のアンダーパネル3と、バイザー7の上側部分を覆う樹脂製のアッパーパネル5と、アウターパネル31aに対してバイザー7を支持するためのミラーベース21と、を備えている。
【0035】
図2に示すように、ミラー9は両面テープ(図示せず)によってミラーホルダー11に装着されており、かかるミラーホルダー11は、バイザー7に固定されたミラー角度調節ユニット15に、不図示のピボット球を介して傾動自在に支持されている。すなわち、ミラー9は、ミラーホルダー11及びミラー角度調節ユニット15を介してバイザー7に保持されていて、ミラー角度調節ユニット15がミラーホルダー11を傾動させることにより、バイザー7に対して角度調節可能となっている。
【0036】
ミラーベース21は、当該ミラーベース21とアウターパネル31aとの間に防水用のシールラバー29を介設させるようにして、アウターパネル31aに固定されており、かかるミラーベース21の上端部には、バイザー7に固定された電動格納ユニット19の回転軸(図示せず)が取り付けられている。これにより、電動格納ユニット19を動作させると、ドアミラー1におけるミラーベース21よりも上側の部分(ミラーボディ)が回転軸周りに回動して、ドアミラー1が、格納姿勢(ミラー面と略垂直な方向と車幅方向とが略一致した姿勢)と、展開姿勢(ミラー面と略垂直な方向と車両前後方向とが略一致した姿勢)と、を採ることになる。
【0037】
なお、以下の説明では、便宜上ドアミラー1が展開姿勢をとった状態について説明し、ミラー面と略垂直な方向を「車両前後方向」、ドアミラー1の幅方向を「車幅方向」、バイザー7におけるミラー9取付側を「後側」、バイザー7におけるミラー9取付側とは反対側を「前側」という。
【0038】
アンダーパネル3及びアッパーパネル5は、バイザー7に対して車両前後方向前側(以下、「前方」という)から取り付けられてドアミラー1の意匠面をなすとともに、当該バイザー7と共に、電動格納ユニット19等を収容するためのミラーハウジングを構成している。そうして、本実施形態のドアミラー1では、その意匠性を向上させるために、これらアンダーパネル3及びアッパーパネル5の外周面を大きく湾曲させている。
【0039】
−アンダーパネルの構造−
図3、図4及び図5は、それぞれアンダーパネルの斜視図、平面図及び裏面図であり、図6は、バイザーの正面図である。このアンダーパネル3は、射出成形によって形成された樹脂成型品であり、図3に示すように、長軸の一方(車幅方向内側)の端部に貫通孔が形成された略楕円状のパネルを長軸に沿って半割にしたような形状の底壁部3aと、当該底壁部3aの前側の縁部から上方に立ち上がる竪壁部3bとを備えており、車幅方向から見てその断面が丸味を帯びたL字をなしている(図7参照)。
【0040】
このアンダーパネル3は、バイザー7に形成された第1〜第3係合孔37,47,57にそれぞれ係合する第1〜第3係合部33,43,53と、バイザー7に形成されたピン穴(位置決め孔)27に嵌合する基準ピン(位置決め部材)23と、竪壁部3bの後側面(アンダーパネル3の内側面)における車幅方向中央部から車両前後方向後側(以下、「後方」という)に突出する台座部13と、を有している。
【0041】
第2係合部43は、竪壁部3bの車幅方向内側の端部に突設されており、車幅方向と直交し且つ竪壁部3bの後側面から後方に延びる略矩形板状の本体部43aと、当該本体部43aの先端部で且つ車幅方向外側に形成された略楔状の係合爪43bと、当該本体部43aの基端部で且つ車幅方向内側に形成された、当該本体部43aの剛性を高めるためのリブ43cとを有している。この第2係合部43は、バイザー7の車幅方向内側の端部に形成された第2係合孔47に係合爪43bが係合することで、アンダーパネル3をバイザー7に固定するようになっている。
【0042】
また、第3係合部53は、竪壁部3bの後側面における車幅方向外側の端部に突設されており、竪壁部3bの後側面から後方に水平に延びる略矩形板状の本体部53aと、当該本体部53aの先端部で且つ下側に形成された略楔状の係合爪53bと、当該本体部53aの基端部で且つ上側に形成された、当該本体部53aの剛性を高めるためのリブ53cとを有している。この第3係合部53は、バイザー7の車幅方向外側の端部に形成された第3係合孔57に係合爪53bが係合することで、アンダーパネル3をバイザー7に固定するようになっている。
【0043】
第1係合部(係合部)33は、第3係合部53と同様に、後方に水平に延びる略矩形板状の本体部33aと、当該本体部33aの先端部で且つ下側に形成された略楔状の係合爪33bと、当該本体部33aの基端部で且つ上側に形成された、当該本体部33aの剛性を高めるためのリブ33cとを有しているものの、竪壁部3bの後側面から直接突設される第3係合部53とは異なり、竪壁部3bの車幅方向中央部に形成された台座部13の先端部(後述する妻板部13d)に突設されている。この第1係合部33は、図7に示すように、バイザー7の車幅方向中央部に形成された第1係合孔(被係合部)37に係合爪33bが係合することで、アンダーパネル3をバイザー7に固定するようになっている。
【0044】
基準ピン23は、後方に水平に延びる平面視略T字状の水平板部23aと、当該水平板部23aの上下面からそれぞれ上下に延びる突条部23bとを有していて、図3及び図5に示すように、その先端部が断面十字状に形成されている。この基準ピン23は、台座部13の先端部(妻板部13d)で且つ第1係合部33の上方に突設されていて、図7に示すように、バイザー7の車幅方向中央部に形成されたピン穴27に嵌合するようになっている。
【0045】
台座部13は、竪壁部3bの上端部且つ車幅方向中央部から後方に延びる頂板部13aと、頂板部13aの下方で当該頂板部13aと対向するように後方に延びる底板部13bと、頂板部13aの車幅方向外側の縁部と底板部13bの車幅方向外側の縁部とを連結するように後方に延びる側板部13cとを有し、車両前後方向視で横断面コ字状に形成されているとともに、これら頂板部13a、底板部13b及び側板部13cの先端部を繋ぐ妻板部13dをさらに有している。
【0046】
この台座部13の先端は、車両前後方向における、第2及び第3係合部43,53の付け根に対応する位置辺りまで延びており、これにより、アンダーパネル3の車幅方向中央部では、車幅方向両端部に比してアンダーパネル3とバイザー7との間の距離が長くなるにも拘わらず、第1係合部33及び基準ピン23の寸法を、第2及び第3係合部43,53の寸法と同程度に短くすることが可能となっている。
【0047】
また、これら頂板部13a、底板部13b、側板部13c及び妻板部13dは、第1係合部33の本体部及び基準ピン23の水平板部よりも薄肉に形成されている。換言すると、台座部13の横断面は、第1係合部33の本体部33a及び基準ピン23の水平板部23aよりも薄肉の板状部材で構成される開断面状に形成されている。このように、台座部13は、薄肉ではあるものの、その横断面がコ字形(開断面状)であることから、その先端部に設けられた第1係合部33及び基準ピン23をしっかりと支持することができる。のみならず、その横断面が薄肉の板状部材で構成されていることから、その収縮による影響が小さくなるので、アンダーパネル3の外側面にヒケが生じるのを抑制することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、第1係合部33及び基準ピン23が設けられる妻板部13dも、頂板部13a、底板部13b及び側板部13cと同様に、第1係合部33の本体部及び基準ピン23の水平板部よりも薄肉に形成したが、妻板部13dの収縮による意匠面への影響は小さいと解されるので、妻板部13dを厚くしてもよい。
【0049】
−アンダーパネルの取付方法−
次に、アンダーパネル3の取付方法について説明する。アンダーパネル3は、図7の白抜き矢印で示すように、バイザー7に対して前方から取り付けられる。この際、作業者は、アンダーパネル3を上方から見ながら、基準ピン23をピン穴27に誘導するように、アンダーパネルをバイザー7に近づけるところ、本実施形態のアンダーパネル3では、基準ピン23が第1係合部33よりも上側に位置していることから、作業者は基準ピン23の位置を常に確認することができる。
【0050】
ここで、基準ピン23が断面円形の場合には、アンダーパネル3を上方から見ただけでは、アンダーパネル3がバイザー7に対して車両前後方向に延びる軸周りに傾斜していても、そのことを認識することはできないが、本実施形態のアンダーパネル3では、基準ピン23の断面形状を円形ではなく十字状としていることから、例えば突条部23bの側面が見えれば、アンダーパネル3がバイザー7に対して正規の取付姿勢になっていないことを一目で判別することができる。
【0051】
そうして、アンダーパネル3がバイザー7に対して正規の取付姿勢になった状態で、図7に示すように、基準ピン23をピン穴27に挿入すると、第1係合部33が第1係合孔37に案内される。このとき、第2及び第3係合部43,53も第2及び第3係合孔47,57にそれぞれ案内される。
【0052】
この状態で、アンダーパネル3を後方にさらに押し込むと、第1係合部33の略楔状の係合爪33bが、図7に示すように、第1係合孔37を区画する下側壁部37aを乗り越えて、かかる下側壁部37aの背面(後側面)に係合する。このとき、第2及び第3係合部43,53の係合爪43b,53bも第2及び第3係合孔47,57にそれぞれ係合し、これらにより、アンダーパネル3がバイザー7に固定される。
【0053】
−効果−
本実施形態によれば、先端部に第1係合部33及び基準ピン23が設けられた台座部13は、アンダーパネル3の内側面に直接形成されているが、台座部13の横断面は第1係合部33及び基準ピン23よりも薄肉の頂板部13a、底板部13b及び側板部13cで構成されており、これらの収縮による影響は小さいことから、アンダーパネル3の外側面にヒケが生じるのを抑制することができる。
【0054】
また、台座部13は、薄肉ではあるものの、その横断面がコ字形であることから、その先端部に設けられた第1係合部33及び基準ピン23をしっかりと支えることができる。そうして、第1係合部33及び基準ピン23は、バイザー7に向かって突出する台座部13の先端部に設けられていることから、これら第1係合部33及び基準ピン23の寸法を長くする必要がないので、第1係合部33及び基準ピン23が撓むのを抑えることができる。
【0055】
さらに、台座部13は、アンダーパネル3の内側面における幅方向の中央部に設けられているので、アンダーパネル3の幅方向の両端部に設けられた第2及び第3係合部43,53だけを用いて、アンダーパネル3をバイザー7に取り付ける場合に比して、アンダーパネル3をより安定的に固定することができる。
【0056】
また、バイザー7については、従来通り、ピン穴27と第1係合孔37とを形成するだけでよいことから、バイザー7側の設計自由度を維持することができる。
【0057】
加えて、第1係合部33と基準ピン23とを共に台座部13の先端部に形成していることから、第1係合部33及び基準ピン23のそれぞれに対して台座部13を形成する場合に比して、省スペース化を図ることができるとともに、台座部13を成型するためのスライド型の数を減少させることができる。
【0058】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0059】
上記実施形態では、カバーパネルをアンダーパネル3とアッパーパネル5とからなる2分割構造としたが、これに限らず、3分割以上としてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、小型カメラやフットランプ等を設けないタイプのドアミラー1に本発明を適用したが、これに限らず、小型カメラやフットランプ等を設けるタイプのドアミラーに本発明を適用してもよく、その場合にはアンダーパネル3の底壁部3aに、小型カメラのレンズやフットランプの先端を臨ませるための覗き窓を形成すればよい。
【0061】
さらに、上記実施形態では、台座部13を横断面コ字状に形成したが、これに限らず、台座部13の横断面は、スライド型による型抜きが可能で且つ台座部13の剛性を高めるような開断面状に形成すればよいので、例えば断面H型に形成してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、基準ピン23を第1係合部33の上方に設けたが、基準ピン23は、上方から見て第1係合部33によって隠れないような位置に設ければよいので、例えば、基準ピン23と第1係合部33とが左右に並ぶようにしてもよい。
【0063】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明は、後方確認用のミラーを保持するためのバイザーと、当該バイザーの下側部分を覆う樹脂製のアンダーパネルと、を備えた車両用ドアミラーのパネル取付構造等について有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 ドアミラー
3 アンダーパネル
7 バイザー
9 ミラー
13 台座部
13a 頂板部(板状部材)
13b 底板部(板状部材)
13d 側板部(板状部材)
23 基準ピン(位置決め部材)
27 ピン穴(位置決め孔)
33 第1係合部(係合部)
37 第1係合孔(被係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方確認用のミラーを保持するためのバイザーと、当該バイザーに対してミラー面と略垂直な方向から当該ミラーとは反対側に取り付けられて、当該バイザーの下側部分を覆う樹脂製のアンダーパネルと、を備えた車両用ドアミラーのパネル取付構造であって、
上記アンダーパネルは、上記バイザーに形成された被係合部に係合する係合部と、上記バイザーに形成された位置決め孔に嵌合する位置決め部材と、当該アンダーパネルの内側面における幅方向の中央部から上記バイザーに向かってミラー面と略垂直な方向に突出する台座部と、を有しており、
上記台座部の横断面は、上記係合部及び位置決め部材よりも薄肉の板状部材で構成される開断面状に形成され、且つ、当該台座部の先端部には、上記係合部と上記位置決め部材とが共に設けられていることを特徴とする車両用ドアミラーのパネル取付構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ドアミラーのパネル取付構造において、
上記位置決め部材は、上方から見て、上記係合部によって隠れないような位置に設けられていることを特徴とする車両用ドアミラーのパネル取付構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用ドアミラーのパネル取付構造において、
上記位置決め部材は、断面十字状に形成されていることを特徴とする車両用ドアミラーのパネル取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−1191(P2013−1191A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132497(P2011−132497)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000147660)株式会社石▲崎▼本店 (28)
【Fターム(参考)】