車両用ドアミラーの手動格納・電動格納共用ベース、手動格納式車両用ドアミラー、電動格納式車両用ドアミラー、手動格納式または電動格納式ドアミラーの選択的製造方法
【課題】回転部側にシャフトを配置する手動格納式ドアミラーと固定部側にシャフトを配置する電動格納式ドアミラーの双方に使用できるベースを提供する。
【解決手段】ベース32は車体固定部32aと回転支持部32bを具える。回転支持部32bは電動格納式ドアミラーの電動駆動機構70のシャフト74を立設固定するシャフト立設固定面76を具える。シャフト立設固定面76の中央部には手動格納式ドアミラーの回転部側に形成されたシャフト38を回転自在に挿通する中心穴56が形成されている。シャフト立設固定面76の外周側には、手動格納式ドアミラーの回転部側にシャフト38と同軸に形成された環状壁40を回転自在に収容する環状壁収容溝58が形成されている。
【解決手段】ベース32は車体固定部32aと回転支持部32bを具える。回転支持部32bは電動格納式ドアミラーの電動駆動機構70のシャフト74を立設固定するシャフト立設固定面76を具える。シャフト立設固定面76の中央部には手動格納式ドアミラーの回転部側に形成されたシャフト38を回転自在に挿通する中心穴56が形成されている。シャフト立設固定面76の外周側には、手動格納式ドアミラーの回転部側にシャフト38と同軸に形成された環状壁40を回転自在に収容する環状壁収容溝58が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は手動格納式車両用ドアミラー(以下「手動格納式ドアミラー」)と電動格納式車両用ドアミラー(以下「電動手動格納式ドアミラー」)の双方に共用できるベース、該ベースを使用した手動格納式ドアミラー、該ベースを使用した電動格納式ドアミラー、該ベースを使用して手動格納式ドアミラーまたは電動格納式ドアミラーを選択的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
手動格納・電動格納共用ハウジングおよびベースに手動格納用ユニットと電動格納用ユニットを選択的に組み付けて手動格納式ドアミラーまたは電動格納式ドアミラーを選択的に構成できるようにした技術として下記特許文献1に記載のものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−34287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1記載のものによれば、手動格納式ドアミラー、電動格納式ドアミラーのいずれも、固定部側にシャフトを配置してハウジングを回転自在に支持する形式のものであり、手動格納式ドアミラーが回転部側にシャフトを配置する形式であって、電動格納式ドアミラーが固定部側にシャフトを配置する形式である場合には適用することができなかった。
【0005】
この発明は上述の点に鑑みてなされたもので、手動格納式ドアミラーが回転部側にシャフトを配置する形式であって、電動格納式ドアミラーが固定部側にシャフトを配置する形式である場合に適用することができる手動格納・電動格納共用ベースを提供するものである。またこの発明はこの手動格納・電動格納共用ベースを使用した手動格納式ドアミラーおよび電動格納式ドアミラーを提供するものである。またこの発明はこの手動格納・電動格納共用ベースを使用して手動格納式ドアミラーまたは電動格納式ドアミラーを選択的に製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の手動格納・電動格納共用ベースは手動格納式ドアミラーおよび電動格納式ドアミラーに共用されるベースであって、車体外側に取り付けられる車体固定部と、該車体固定部に繋がって設けられ、ミラー回転部を回転自在に支持して格納位置と復帰位置に変位させる回転支持部とを具備し、前記回転支持部の上面側に、電動格納式ドアミラーの回転軸を構成する第1のシャフトを立設固定するシャフト立設固定面と、前記シャフト立設固定面の中央部に形成され、手動格納式ドアミラーに使用する場合は前記ミラー回転部からその回転軸上を下方に向けて突出形成された第2のシャフトを回転自在に挿通し、電動格納式ドアミラーに使用する場合は前記シャフト立設固定面に立設固定された第1のシャフト内を通って下方に引き出されるハーネスを挿通する中心穴と、前記中心穴よりも外周側の位置で該中心穴と同心の円形に形成され、手動格納式ドアミラーに使用する場合に、前記ミラー回転部の前記第2のシャフトよりも外周側の位置で該第2のシャフトと同軸に下方に向けて配置されたミラー回転部側の環状壁を回転自在に収容する環状壁収容溝とを具備してなるものである。この手動格納・電動格納共用ベースによれば、電動格納式ドアミラーに使用する場合はベースのシャフト立設固定面に第1のシャフトを立設固定し、この第1のシャフトにミラー回転部を回転自在に支持する。手動格納式ドアミラーに使用する場合はミラー回転部側に設けられた第2のシャフトをベースの中心穴に通して、ミラー回転部側の環状壁をベース側の環状壁収容溝に収容して、ミラー回転部を回転自在に支持する。このようにして、この発明によれば手動格納・電動格納共用ベースを手動格納式ドアミラーと電動格納式ドアミラーに共用することができる。
【0007】
この発明の手動格納・電動格納共用ベースは、前記回転支持部の前記中心穴よりも外周側の位置で上面側に露出して前記回転軸の周方向に延在して凹凸状に形成され、手動格納式ドアミラーに使用する場合に、該凹凸に対応して前記ミラー回転部側に凹凸状に形成されたクラッチのミラー回転部側部分と係合するクラッチのベース側部分を具備することができる。このクラッチのベース側部分は例えば環状壁収容溝よりも内周側に形成することができる。これによれば、環状壁収容溝の径方向外側にクラッチを配置するための専用幅を不要とすることができる。あるいはクラッチのベース側部分は環状壁収容溝内底部に形成することもできる。これによれば、クラッチを配置するための径方向の専用幅を不要とすることができるので、ベースとミラー回転部が相対回転する部分の径を小さくすることができる。またこの発明の手動格納・電動格納共用ベースはシャフト立設固定面に第1のシャフトの位置決め用の凹凸構造を具備することができる。これによれば第1のシャフトを容易かつ安定に位置決めすることができる。
【0008】
この発明の手動格納式ドアミラーは、この発明の手動格納・電動格納共用ベースと、前記第2のシャフトおよび前記環状壁を具え、該第2のシャフトを前記ベースの前記シャフト立設固定面の中心穴に回転自在に挿通し、かつ該環状壁を前記ベース側の環状壁収容溝に回転自在に収容して該ベースに回転自在に支持されるミラー回転部と、前記シャフト立設固定面の中心穴を通って前記ベースの下面側に突出する前記第2のシャフトに圧縮状態で嵌挿装着され、前記ベースと前記ミラー回転部との間に前記回転軸に沿って相互に突き合わす方向に付勢力を付与するばねとを具備してなるものである。この手動格納式ドアミラーによれば、この発明の手動格納・電動格納共用ベースを用いて手動格納式ドアミラーを構成することができる。
【0009】
この発明の手動格納式ドアミラーは、この発明の手動格納・電動格納共用ベースと、前記第2のシャフトおよび前記環状壁および前記クラッチのミラー回転部側部分を具え、該第2のシャフトを前記ベースの前記シャフト立設固定面の中心穴に回転自在に挿通し、かつ該環状壁を前記ベース側の環状壁収容溝に回転自在に収容して該ベースに回転自在に支持されるミラー回転部と、前記シャフト立設固定面の中心穴を通って前記ベースの下面側に突出する前記第2のシャフトに圧縮状態で嵌挿装着され、前記ベースと前記ミラー回転部との間に前記回転軸に沿って相互に突き合わす方向に付勢力を付与して、前記クラッチのミラー回転部側部分とベース側部分どうしを圧接させるばねとを具備してなるものである。この手動格納式ドアミラーによれば、この発明の手動格納・電動格納共用ベースを用いて手動格納式ドアミラーを構成することができる。
【0010】
この発明の電動格納式ドアミラーは、この発明の手動格納・電動格納共用ベースと、前記シャフト立設固定面に立設固定される前記第1のシャフトと、該第1のシャフトの軸回り方向に回転自在に支持され、内蔵する電動駆動機構による回転力を該第1のシャフトに伝達して該軸回り方向に回転駆動されるミラー回転部とを具備してなるものである。この電動格納式ドアミラーによれば、この発明の手動格納・電動格納共用ベースを用いて電動格納式ドアミラーを構成することができる。
【0011】
この発明の電動格納式ドアミラーの選択的製造方法は、この発明の手動格納・電動格納共用ベースの1の個体を使用してこの発明の手動格納式ドアミラーを製造し、この発明の手動格納・電動格納共用ベースの別の1の個体を使用してこの発明の電動格納式ドアミラーを製造するものである。この電動格納式ドアミラーの選択的製造方法によれば、この発明の手動格納・電動格納共用ベースを使用して手動格納式ドアミラーまたは電動格納式ドアミラーを選択的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の手動格納・電動格納共用ベースを使用して構成したこの発明の手動格納式ドアミラーの実施の形態1の要部を示す分解斜視図である。
【図2】図1の手動格納式ドアミラーのハウジング36単体の平面図である。
【図3】図1の手動格納式ドアミラーにおいて、ハウジング36の凹所42にハウジング支持部材34を収容して、ハウジング支持部材34をハウジング支持部材配置空間37baに配置した状態を示す平面図である。
【図4】図3の状態における底面図である。
【図5】図3の状態における背面図である。
【図6】図1の手動格納式ドアミラーを、ハウジング36が復帰位置にあるときに、回転軸Sを通る面で切断した部分断面図(図4、図8のA−A矢視位置の断面に相当)である。
【図7】図1のハウジング支持部材34をストッパ40cが形成されている側から見た斜視図である。
【図8】図1のベース32の回転支持部32bの平面図である。
【図9】図1のベース32の回転支持部32bの一部破断斜視図である。
【図10】図1の手動格納式ドアミラーの一部破断斜視図である。
【図11】図1のドアミラーのハウジング支持部材34とハウジング36の連結固定位置の部分断面図(図4のB−B矢視位置の断面に相当)である。
【図12】図1のドアミラーのハウジング36が復帰位置にあるときに、クラッチのベース側部分60とミラー回転部側部分54とが噛み合った状態を示す一部拡大正面図である。
【図13】この発明の手動格納・電動格納共用ベースを使用して構成したこの発明の手動格納式ドアミラーの実施の形態2を示す図で、ハウジング36の凹所42にハウジング支持部材34を収容してハウジング36の底面側から見た図である。
【図14】同実施の形態2による手動格納式ドアミラーにおけるベース32の回転支持部32bの平面図である。
【図15】同実施の形態2による手動格納式ドアミラーを、ハウジング36が復帰位置にあるときに、回転軸Sを通る面で切断した部分断面図である。
【図16】手動格納式ドアミラーの実施の形態1で使用した手動格納・電動格納共用ベースを使用して構成したこの発明の電動格納式ドアミラーの実施の形態の要部を示す分解斜視図である。
【図17】図16の取付部品72をストッパ73aが形成されている側から見た斜視図である。
【図18】図16の電動格納式ドアミラーにおいて、ハウジング36の凹所42に取付部品72を介して電動駆動機構70を収容して、電動駆動機構70を電動駆動機構配置空間37baに配置した状態を示す平面図である。
【図19】図18の状態における底面図である。
【図20】図18の状態における背面図である。
【図21】図16のベース32の回転支持部32bに電動駆動機構70を載置支持した状態を示す斜視図である。
【図22】図16の電動格納式ドアミラーのハウジング36、取付部品72、電動駆動機構70の連結固定位置の部分断面図(図19のD−D矢視位置の断面に相当)である。
【図23】図16の電動格納式ドアミラーにおける電動駆動機構70のシャフト74をベース32に立設固定する位置の部分断面図(図8、図19のC−C矢視位置の断面に相当)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
《手動格納式ドアミラーの実施の形態1》
この発明の手動格納・電動格納共用ベースを使用して構成したこの発明の手動格納式ドアミラーの実施の形態1を説明する。図1はこの実施の形態による手動格納式ドアミラーの構成を分解して示す。このドアミラーは右側用で、図1は背面側から見た状態を示す。図1ではハウジング(ミラーボデー)36の背面側に装着するハウジングカバー、ハウジング36の前面側空間37a(図4)内に固定配置する鏡面調整用アクチュエータ、鏡面角度を可変に該鏡面調整用アクチュエータに固定支持されるミラー板等は図示を省略している。このドアミラーは車体外側に取り付けられるベース32と、ベース32に対し回転軸Sの周り方向に回転自在に軸受支持されるハウジング支持部材34(フレーム)と、ハウジング支持部材34に固定支持されるハウジング36を具備する。ハウジング36はハウジング支持部材34を内部空間37の凹所42に収容してハウジング支持部材配置空間37baに配置し、ビス44でハウジング支持部材34に固定支持される。このようにハウジング支持部材34とハウジング36とを相互に連結固定して一体化してミラー回転部35が構成される。ハウジング支持部材34とハウジング36とを一体化した状態では、ハウジング支持部材34のシャフト38とその外周側の環状壁40はハウジング36の下面から下方に向けて突出する。このシャフト38と環状壁40をベース32の回転支持部32bに形成されたシャフト挿通孔56と環状壁収容溝58(図8、図9)にそれぞれ差し込み、次いでベース32の下面側からシャフト38にコイルばね46を短縮(圧縮)して嵌挿装着し、さらにシャフト38の下端部にプレート48を装着することにより、ハウジング支持部材34とベース32は相互に連結される。これによりハウジング36は手動操作でハウジング支持部材34を伴って、ストッパ40c(図7)で規制される角度範囲内で回転軸Sの周り方向に回転して格納位置(後方可倒位置)と復帰位置さらには前方側に倒れた位置(前方可倒位置)に変位可能となる。
【0014】
図1のハウジング支持部材34、ハウジング36、ベース32についてそれぞれ説明する。ハウジング支持部材34はPA+GF(ガラス繊維入りのポリアミド)樹脂等の硬質プラスチックによる一体成型品あるいはアルミ等の金属による一体鋳造品等で構成されている。図1に示すように、ハウジング支持部材34にはベース32と相対回転する回転軸S上に配置される中空丸棒状のシャフト38と、シャフト38よりも外周側に離れた位置でシャフト38に対し径方向に間隙を隔てて同軸に配置された円形の環状壁40が形成されている。シャフト38はハウジング支持部材34に一体に形成されているので、シャフト専用部品が不要となって部品点数が削減される。これにより組み付け作業の効率化が図られる。環状壁40の板厚は下方に行くに従い僅かに薄くなるように形成されている(図6)。環状壁40は、環状壁40とシャフト38を繋ぐ円板状の連結部39(図3,図6)を越えてそのまま上方に突出して環状壁延長部41を構成している。環状壁延長部41は環状壁40の剛性を高める働きをする。図6に示すように、環状壁40と連結部39とシャフト38で囲まれた空間内には、連結部39と環状壁40との境界部分(環状壁40のすぐ内周側)に、シャフト38および環状壁40と同軸に配置されたクラッチのミラー回転部側部分54が形成されている。クラッチのミラー回転部側部分54は図4に示すように、山部54aと谷部54bの繰り返し構造を周方向に等ピッチで3回繰り返し形成して構成されている。山部54aと谷部54bの境界部分54cはそれぞれ傾斜面に形成されている(図12)。図7に示すように、環状壁40の外周面の周方向の一部の領域にはストッパ40cが径方向に突出して形成されている。ストッパ40cは、図8のベース32の環状壁収容溝58のすぐ外周側の位置で回転軸Sを中心とする周方向の一部の領域に形成されたストッパ移動溝63に収容されて、ハウジング支持部材34の回転に伴ってストッパ移動溝63を移動し、ストッパ移動溝63の両端部63a,63bに当接して係止される。ストッパ40cが端部63aで係止される位置がハウジング36の前方可倒位置であり、ストッパ40cが端部63bで係止される位置がハウジング36の格納位置(後方可倒位置)である。ストッパ40cは環状壁40の外周面に形成されているので、環状壁40が無くストッパ40cがその基部だけでハウジング支持部材34に連結されている場合に比べて、ストッパ40cを強固に支持することができ、ストッパ40cが折れるのを防止することができる。なお上記の配置とは逆に、ストッパ移動溝63を環状壁収容溝58のすぐ内周側の位置に形成し、ストッパ40cを環状壁40の内周面に突出形成することもできる。図7に示すように、ハウジング支持部材34の前面側には鏡面調整用アクチュエータの一部分をねじ止め支持するねじ穴29,31が形成されている。
【0015】
図1のハウジング36はハウジング支持部材34よりも剛性が低いABS等のプラスチックによる一体成型品で作られている。図1に示すように、ハウジング36は内部空間37が仕切り板36aで前面側空間37aと背面側空間37bとに概ね仕切られている。前面側空間37a(図4)内には、図示しない鏡面調整用アクチュエータが仕切り板36aの前面側に配置して収容される。すなわち、鏡面調整用アクチュエータは一部分が該仕切り板36aの前面に形成されたねじ穴(図示せず)にねじ止め固定され、他の一部分がハウジング支持部材34の前面側のねじ穴29,31(図7)にねじ止め固定される。鏡面調整用アクチュエータには図示しないミラー板が装着される。背面側空間37bにはハウジング支持部材34を上方から差し込んで配置可能なハウジング支持部材配置空間37ba(電動格納式ドアミラーの電動駆動機構配置空間と共通)(図1)が形成されている。ハウジング支持部材配置空間37baの下部には上方に開口する凹所42(図1,2,3,5)が形成されている。凹所42にはハウジング支持部材34が収容される。ハウジング36の背面側にはねじ通し穴33(図1)が形成されている。ねじ通し穴33にはねじ(図示せず)が差し込まれてハウジング支持部材34の背面側に形成されたねじ穴43(図1)にねじ込まれる。これによりハウジング36とハウジング支持部材34とはハウジング36の背面側からも固定される。ハウジング36の背面側空間37bは図示しないハウジングカバーが装着されて閉じられる。ハウジング36の底面には回転軸S上に、ハウジング支持部材34のシャフト38と環状壁40を突出させる丸穴52(図2)が形成されている。丸穴52にはストッパ40c(図7),73a(図17)を通すための切欠52a(図2、図4、図13、図19)が形成されている。
【0016】
図1のベース32(手動格納・電動格納共用ベース)はPA+GF樹脂等の硬質プラスチックによる一体成型品あるいはアルミ等の金属による一体鋳造品等で構成されている。ベース32は車体に固定される車体固定部32aと、車体固定部32aの下端部から側方に突出してハウジング支持部材34を回転自在に軸受支持する回転支持部32bを有する。図8はベース32の回転支持部32bを上から見た状態を示す。図9は回転支持部32bの一部を破断して示した斜視図である。回転支持部32bには回転軸S上にシャフト挿通孔56とその外周側に環状壁収容溝58と、環状壁収容溝58のすぐ内周側にクラッチのベース側部分60が同軸に形成されている。シャフト挿通孔56はハウジング36が復帰位置にあるときにシャフト38を僅かなクリアランスで挿通する大きさに形成されている。環状壁収容溝58の内壁面58aおよび外壁面58bには、環状壁40(図6)の内壁面40aおよび外壁面40bとの当接箇所を設定する突条59,61が回転軸Sと平行な方向に延在してかつ周方向に等角度間隔に配置した状態に6本ずつ突出形成されている。環状壁収容溝58と環状壁40は、ハウジング36が復帰位置にあるときに内壁面58a(突条59の位置),40aどうしおよび外壁面58b(突条61の位置),40bどうしがクリアランスなしで当接する内径、外径に形成されている。環状壁収容溝58の溝幅は環状壁40の板厚の変化に合わせて、下方に行くに従い僅かに狭くなるように形成されている(図6)。環状壁収容溝58の深さは、ハウジング支持部材34がベース32に対し相対回転できる角度範囲内で、クラッチのミラー回転部側部分54とベース側部分60とが常に押圧当接し合える十分な深さに形成されている。クラッチのベース側部分60は環状壁収容溝58のすぐ内周側に山部60aと谷部60bの繰り返し構造を周方向に等ピッチで3回繰り返し形成して構成されている(図8、図9)。山部60aと谷部60bの境界部分60cはそれぞれ傾斜面に形成されている(図9、図12)。
【0017】
図1の手動格納式ドアミラーは例えば次の手順で組み立てられる。
(1)ハウジング36の凹所42にハウジング支持部材34を収容して、ハウジング支持部材34をハウジング支持部材配置空間37baに配置する。図3、図4、図5はこのときの状態を平面図、底面図、背面図でそれぞれ示す。
(2)ハウジング36の下面に形成された2個のねじ通し穴50(図4)にビス44(図1)をそれぞれ差し込んでハウジング支持部材34の下面のねじ穴にねじ込むことにより、ハウジング36とハウジング支持部材34とを相互に連結固定する。 図11はハウジング支持部材34とハウジング36の連結固定位置の断面(図4のB−B矢視位置の断面に相当)を示す。ハウジング支持部材34とハウジング36は、ハウジング36に形成されたねじ通し穴50からビス44を差し込んで、ハウジング支持部材34に形成されたねじ穴66にねじ込むことにより連結固定されている。
(3)ハウジング36の底面の丸穴52から下方に突出するシャフト38と環状壁40をベース32の回転支持部32bに形成されたシャフト挿通孔56と環状壁収容溝58にそれぞれ回転自在に差し込む(図6、図10、図11)。
(4)ベース32の下面側に突出したシャフト38にコイルばね46を嵌挿し、シャフト38の下端部にプレート48を装着して、シャフト38にコイルばね46を短縮状態に装着し、もってベース32にハウジング支持部材34を介してハウジング36を回転軸Sの周り方向に回転自在に連結して軸受支持する(図6、図10、図11)。
(5)ハウジング36の背面側のねじ通し穴33(図1)からねじ(図示せず)を差し込んで、ハウジング支持部材34のねじ穴43(図1)にねじ込んでハウジング36とハウジング支持部材34との連結を強固にする。
(6)ハウジング36の裏面側の開口(図1、図2、図3、図5に示すエッジ36cで囲まれた領域)にハウジングカバーを装着する。これによりハウジング支持部材34は、ハウジング36の下面から突出しているシャフト38および環状壁40を除く部分すなわち連結部39よりも上の部分がハウジング36の内部空間37に収容された状態となる。
(7)ハウジング36の前面側空間37aに鏡面調整用アクチュエータを装着し、該鏡面調整用アクチュエータにミラー板を装着する。
【0018】
図6は図1のドアミラーを組み立てて、ハウジング36が復帰位置にあるときに、回転軸Sを通る面で切断した状態を示す(図4、図8のA−A矢視位置の断面に相当)。シャフト38の中空部38aには鏡面調整用アクチュエータ等に駆動用電力を供給するハーネス62が挿通されている。ベース32の下部開口部は蓋64で閉じられている。ハウジング36が復帰位置にあるときはコイルばね46の付勢力はベース32とハウジング支持部材34との間に、回転軸Sに沿って相互に突き合わせる方向に付与され、クラッチのベース側部分60(図8、図9)の山部60a、谷部60bとミラー回転部側部分54(図4)の谷部54b、山部54aとが相互に噛み合った状態(図12に示す状態)となる。これによりハウジング36を装着したハウジング支持部材34はベース32上に起立した状態に保持される。このとき環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61とはいずれも当接した状態となり、ハウジング36はがたつき無く復帰位置に保持される。シャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとの間には僅かなクリアランスがある。
【0019】
ハウジング36が復帰位置にある状態からコイルばね46の付勢力に抗してハウジング36に手で回転軸Sの周り方向に力を加えると、クラッチのミラー回転部側部分54の傾斜面54c(図12)がベース側部分60の傾斜面60cを滑り上がってクラッチの噛み合いが外れる。このとき傾斜面54cの滑り上がりによりハウジング支持部材34がその分上方に移動する。前述のように環状壁40の板厚は下方に行くに従い僅かに薄くなるように形成され、環状壁収容溝58の溝幅は環状壁40の板厚の変化に合わせて、下方に行くに従い僅かに狭くなるように形成されているので(図6)、ハウジング支持部材34が上方に移動することにより、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61との当接が緩められ(両壁面間に隙間が生じ)、ハウジング36は回転軸Sの周り方向に回転できるようになり、格納位置(後方可倒位置)あるいは格納位置とは反対側の前方可倒位置に変位する。このハウジング36が回転するときの軸受支持は、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bとの摺動、あるいはシャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとの摺動、あるいはこれら両摺動によって行われる。
【0020】
ハウジング36が復帰位置にある状態でハウジング36に無用な外力が加わって(例えばハウジング36に上から荷重がかかる等)、ハウジング支持部材34に掛かる曲げモーメント(図6のシャフト挿通孔56の中心位置Pを中心とする矢印Fで示す方向のモーメント)が増大してハウジング支持部材34に傾きが生じたときは、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61とが押圧当接し、またシャフト38に傾きが生じてシャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとが押圧当接して、これら3面の押圧当接で該外力を分担して支持する。したがってハウジング支持部材34は全体として高い剛性が得られ、外力に対して高い支持力が得られる。したがってハウジング支持部材34を金属でなくPA+GF樹脂等の硬質プラスチックによる一体成型品で作ってもシャフト38や環状壁40が折れたり曲がったり破損するのが防止される。ハウジング支持部材34およびベース32をいずれもPA+GF樹脂等の硬質プラスチックによる一体成型品で作ればドアミラーを安価に製造することができる。特にこの実施の形態によれば、ハウジング36が復帰位置にあるときに、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61どうしがクリアランスなしで当接し、シャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとは僅かなクリアランスで対面しているので、ハウジング36に外力が加わったときに、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61どうしの押圧当接で該外力の多くの部分を支持し、シャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとの押圧当接で該外力の残りの部分を支持するので、シャフト38に掛かる力を軽減してシャフト38が折れたり曲がったりするのをより確実に防止することができる。
【0021】
また上記実施の形態によれば、環状壁40は環状壁収容溝58に収容されて隠されるので、従来の車両用ドアミラーと同等の外観を保つことができる。またクラッチ54,60は環状壁40および環状壁収容溝58よりも内周側に配置されているので、環状壁40および環状壁収容溝58よりも外周側にクラッチを配置するための径方向の専用幅(クラッチを形成するためにハウジング支持部材34およびベース32に設ける回転軸Sに関する径方向の幅)が不要である。またシャフト38の中空部38aにハーネス62を通すので、ハーネス62の取り回しが容易である。またコイルばね46は環状壁収容溝58よりも内周側に配置されているので、コイルばね46の直径を小さくすることができる。
【0022】
《手動格納式ドアミラーの実施の形態2》
この発明の手動格納・電動格納共用ベースを使用して構成したこの発明の手動格納式ドアミラーの実施の形態2を図13〜図15に示す。これはクラッチのミラー回転部側部分54を環状壁40の頂部に形成し、クラッチのベース側部分60を環状壁収容溝58の底部に形成したものである。他の構成は実施の形態1と同じである。図13はハウジング36の凹所42(図2)にハウジング支持部材34を収容して(図3)ハウジング36の底面側から見た図(実施の形態1の図4に相当)、図14はベース32の回転支持部32bの平面図(実施の形態1の図8に相当)、図15はハウジング36が復帰位置にあるときに、回転軸Sを通る面で切断した断面図(実施の形態1の図6に相当)である。実施の形態1と共通する部分には同一の符号を用いる。これによれば、クラッチを配置するための径方向の専用幅が不要となるので、ベース32とハウジング支持部材34が相対回転する部分の径を小さくすることができる。この実施の形態のドアミラーは実施の形態1のドアミラーと同様に動作する。
【0023】
なお前記手動格納式ドアミラーの実施の形態1,2ではハウジング36とハウジング支持部材34を別体で構成して組み付けたが、両者を一体成型品または一体鋳造品として構成することもできる。また同実施の形態1,2ではコイルばね46をシャフト38に係止するためにプレート48を用いたが、コイルばね46のプレート側の端部をシャフト38に直接係止する構造にすればプレート48を省くこともできる。また同実施の形態1,2ではばねとしてコイルばね46を使用した場合について説明したが、皿ばねや板ばねを使用することもできる。
【0024】
《電動格納式ドアミラーの実施の形態》
前記手動格納式ドアミラーの実施の形態1で説明した手動格納・電動格納共用ベース32を使用して構成したこの発明の電動格納式ドアミラーの実施の形態を図16〜図23に示す。前記手動格納式ドアミラーの実施の形態1と共通する部分には同一の符号を用いる。図16はこの実施の形態による電動格納式ドアミラーの構成を分解して示す。このドアミラーは右側用で、図16は背面側から見た状態を示す。図16ではハウジング36の背面側に装着するハウジングカバー、鏡面調整用アクチュエータ、ミラー板等は図示を省略している。このドアミラーは車体外側に取り付けられるベース32と、電動駆動機構70と、取付部品72と、ハウジング36を具備する。取付部品72は電動駆動機構70とハウジング36との間に介在して電動駆動機構70をハウジング36に固定連結する働きをする。取付部品72はPA+GF樹脂等の硬質プラスチックによる一体成型品あるいはアルミ等の金属による一体鋳造品等で構成される。取付部品72は電動駆動機構70を上部の開口部72bから嵌め込んで収容する内部空間72aを有する。取付部品72の下面にはシャフト74(図22,図23)の下面74aaを下方に露出させる開口部72cが形成されている。取付部品72は下方に向けて突出する環状壁73を有する。環状壁73はベース32の環状壁収容溝58に非接触で収容される(図22、図23)。図17に示すように、環状壁73の外周面の周方向の一部の領域にはストッパ73aが径方向に突出して形成されている。ストッパ73aは、手動格納式ドアミラーの場合と同様に、図8のベース32の環状壁収容溝58のすぐ外周側位置で回転軸Sを中心とする周方向の一部の領域に形成されたストッパ移動溝63に収容されて、取付部品72の回転に伴ってストッパ移動溝63を移動し、ストッパ移動溝63の両端部63a,63bに当接して係止される。ストッパ73aが端部63aで係止される位置がハウジング36の前方可倒位置であり、ストッパ73aが端部63bで係止される位置がハウジング36の格納位置(後方可倒位置)である。ストッパ73aは環状壁73の外周面に形成されているので、環状壁73が無くストッパ73aがその基部だけで取付部品72に連結されている場合に比べて、ストッパ73aを強固に支持してストッパ73aが折れるのを防止することができる。なお上記の配置とは逆に、ストッパ移動溝63を環状壁収容溝58のすぐ内周側の位置に形成し、ストッパ73aを環状壁73の内周面に突出形成することもできる。図17に示すように、取付部品72の前面側には鏡面調整用アクチュエータの一部分をねじ止め支持するねじ穴67,69(図7のハウジング支持部材34のねじ穴29,31に相当)が形成されている。図16において、電動駆動機構70は取付部品72の内部空間72aに収容保持されて、取付部品72ごとハウジング36の凹所42に収容保持されて電動駆動機構配置空間37ba(手動格納式ドアミラーのハウジング支持部材配置空間と共通)に配置され、ビス44で取付部品72ごとハウジング36に固定支持される。このように取付部品72に収容された電動駆動機構70とハウジング36とを一体化してミラー回転部35が構成される。ベース32、ハウジング36、ハウジングカバーは前記手動格納式ドアミラーの実施の形態1で説明したものと同一のものである。なお電動駆動機構70がハウジング36の凹所42に直接収容保持されるように電動駆動機構70の外形および凹所42の内形を形成すれば、取付部品72を不要にすることができる。
【0025】
電動駆動機構70は従来の電動格納式ドアミラーの電動駆動機構と同様の機構を有するものであり、ケース71内に中空丸棒状の金属製シャフト74(図22,図23)、モータ、ギヤ、クラッチ機構、コイルばね、電子回路基板等を収容配置して構成されている。シャフト74は回転軸Sと同軸に配置される。シャフト74の基部74aの下面74aaはハウジング36の下面に露出する。シャフト74の基部74aの下部には図19に示すように、回転軸Sを取り囲む3箇所に脚90が突出形成されている。各脚90の下面にはねじ穴88が形成されている。またシャフト74の基部74aの下部には図19に示すように、1本の位置決め用ピン79が突出形成されている。シャフト74の中心には上下に貫通する中空部74bが形成されている。中空部74bの下端部は基部74aの下面74aaの中央部に開口している。中空部74bの上端部は電動駆動機構70のケース71の上部に形成された中空部92(図22、図23)に連通し、電動駆動機構70の上方に開口している。
【0026】
ベース32の上面中央部にはシャフト立設固定面76(図8、図9)が構成されている。シャフト立設固定面76には、図8、図9に示すように、壁部77とボス75が突出形成されている。シャフト立設固定面76のうち壁部77およびボス75が形成されていない領域は脚90を支持する脚支持面91を構成する。脚支持面91にはねじ通し穴80が形成されている。ボス75にはピン収容穴81が形成されている。シャフト74は脚90を脚支持面91に着地させてシャフト立設固定面76に支持される。この状態では壁部77およびボス75は脚90どうしの隙間に嵌り込み、ピン収容穴81にはピン79が収容される。このようなシャフト立設固定面76の凹凸とシャフト74の下面74aaの凹凸との係合(嵌め合い)により、シャフト74はその中心軸を回転軸Sに一致させてベース32上に位置決めされる。シャフト74がベース32上に位置決めされた状態で、ベース32の下面側から3本のビス78(図16)をねじ通し穴80に通して脚90の下面に形成されたねじ穴88にねじ込むことによりシャフト74はベース32上に立設固定される(図23)。シャフト74がベース32上に立設固定された状態では、ベース32の中心穴56(手動格納式手動格納式ドアミラーの場合のシャフト挿通孔)、シャフト74の中空部74b、ケース71の中空部92は相互に連通してハーネス通し穴を構成する。
【0027】
図16の電動格納式ドアミラーは例えば次の手順で組み立てられる。
(1)取付部品72の上部開口部72bからその内部空間72aに電動駆動機構70を嵌め込んで収容する。これにより電動駆動機構70の約下半分が内部空間72aに嵌り込んだ状態で、電動駆動機構70に取付部品72が装着される。このとき電動駆動機構70のシャフト74の基部74aの下面74aaは取付部品72の下部開口部72cから下方に露出した状態となる。
(2)取付部品72が装着された電動駆動機構70をハウジング36の凹所42に上方から収容する。図18、図19、図20はこのときの状態を平面図、底面図、背面図でそれぞれ示す。
(3)ハウジング36の下面に形成された2個のねじ通し穴50(図19)にビス44(図16)をそれぞれ差し込んで電動駆動機構70の下面のねじ穴にねじ込むことにより、ハウジング36と電動駆動機構70とを相互に連結固定する。 図22は電動駆動機構70とハウジング36の連結固定位置の断面(図19のD−D矢視位置の断面に相当)を示す。図22に示すように、電動駆動機構70とハウジング36は、ハウジング36に形成されたねじ通し穴50からビス44を差し込んで、取付部品72に形成されたねじ通し穴82を介して、電動駆動機構70に形成されたねじ穴84にねじ込むことにより連結固定される。
(4)ハウジング36の下面に露出しているシャフト74の基部74aをベース32のシャフト立設固定面76に、シャフト74の中心軸を回転軸Sに合わせて載置する。図21は取付部品72およびハウジング36を外してベース32の回転支持部32bに電動駆動機構70を載置した状態を示す。脚90と壁部77との係合およびピン79(図19)とピン収容穴81(図8、図9)との係合によりシャフト74の基部74aはベース32のシャフト立設固定面76に位置決めされる。
(5)ベース32の回転支持部32bの裏面側から、ねじ通し穴80(図8)にビス78(図16)を差し込み、シャフト74の下面74aaに形成されたねじ穴88(図19)にねじ込むことにより、シャフト74は回転支持部32bに立設固定される。これによりミラー回転部35は回転支持部32bに対し回転軸Sの周り方向に回転自在に連結される。図22、図23はこのときの状態を断面図で示す。
(6)ハウジング36の背面側のねじ通し穴33(図1)からねじ(図示せず)を差し込んで、取付部品72のねじ通し穴87(図16)に通して、電動駆動機構70のねじ穴89(図16)にねじ込んでハウジング36と取付部品72と電動駆動機構70との連結を強固にする。
(7)ハウジング36の裏面側の開口(図16、図18、図20に示すエッジ36cで囲まれた領域)にハウジングカバーを装着する。これにより電動駆動機構70は、ハウジング36の下面から突出しているシャフト74の基部74aを除く部分がハウジング36の内部空間37に収容された状態となる。
(8)ハウジング36の前面側空間37aに鏡面調整用アクチュエータを装着し、該鏡面調整用アクチュエータにミラー板を装着する。
【0028】
図23は図16のドアミラーを組み立てて、ハウジング36が復帰位置にあるときに、図8、図19のC−C矢視位置に相当する位置で切断した断面を示す。相互に連通するシャフト74の中空部74bおよびケース71の中空部92には電動駆動機構70および鏡面調整用アクチュエータ等に駆動用電力を供給するハーネス62が挿通されている。ベース32の下部開口部は蓋64で閉じられている。電動駆動機構70内のモータが駆動されると、電動駆動機構70はベース32の回転支持部32bに立設固定されたシャフト74を中心にケース71が回転し、ケース71に連結されているハウジング36はこれに従動して、ストッパ73a(図17))で規制される角度範囲内で回転軸Sの周り方向に回転し、復帰位置から格納位置に、または格納位置から復帰位置に変位する。またるハウジング36が復帰位置にあるときにハウジング36に車両前方方向への外力が作用すると、電動駆動機構70内でコイルばねの付勢力に抗してクラッチの噛み合いが外れてるハウジング36は前方側に倒れた位置(前方可倒位置)に変位して、該外力を逃がす。
【0029】
以上は手動格納式ドアミラーの実施の形態1で説明した手動格納・電動格納共用ベースを使用してこの発明の電動格納式ドアミラーを構成した例を説明したが、手動格納式ドアミラーの実施の形態2で説明した手動格納・電動格納共用ベースを使用してこの発明の電動格納式ドアミラーを構成することもできる。
【0030】
《手動格納式または電動格納式ドアミラーの選択的製造方法の実施の形態》
手動格納式ドアミラーの実施の形態1で説明した手動格納・電動格納共用ベース32を複数個用意して、そのうちのあるものを手動格納式ドアミラーの実施の形態1で説明した手動格納式ドアミラーを製造するのに使用し、他のあるものを電動格納式ドアミラーの実施の形態で説明した電動格納式ドアミラーを製造するのに使用することができる。同様に、手動格納式ドアミラーの実施の形態2で説明した手動格納・電動格納共用ベース32を複数個用意して、そのうちのあるものを手動格納式ドアミラーの実施の形態2で説明した手動格納式ドアミラーを製造するのに使用し、他のあるものを電動格納式ドアミラーの実施の形態で説明したのと同様の電動格納式ドアミラーを製造するのに使用することができる。
【符号の説明】
【0031】
32…手動格納・電動格納共用ベース、32a…車体固定部、32b…回転支持部、35…ミラー回転部、36…ハウジング、38…第2のシャフト、40,73…環状壁、40c,73a…ストッパ、46…コイルばね(ばね)、54…クラッチのミラー回転部側部分、56…シャフト挿通孔,中心穴、58…環状壁収容溝、60…クラッチのベース側部分、62…ハーネス、63…ストッパ移動溝、63a,63b…ストッパ移動溝の端部、74…第1のシャフト、76…シャフト立設固定面、70…電動駆動機構、S…回転軸
【技術分野】
【0001】
この発明は手動格納式車両用ドアミラー(以下「手動格納式ドアミラー」)と電動格納式車両用ドアミラー(以下「電動手動格納式ドアミラー」)の双方に共用できるベース、該ベースを使用した手動格納式ドアミラー、該ベースを使用した電動格納式ドアミラー、該ベースを使用して手動格納式ドアミラーまたは電動格納式ドアミラーを選択的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
手動格納・電動格納共用ハウジングおよびベースに手動格納用ユニットと電動格納用ユニットを選択的に組み付けて手動格納式ドアミラーまたは電動格納式ドアミラーを選択的に構成できるようにした技術として下記特許文献1に記載のものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−34287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1記載のものによれば、手動格納式ドアミラー、電動格納式ドアミラーのいずれも、固定部側にシャフトを配置してハウジングを回転自在に支持する形式のものであり、手動格納式ドアミラーが回転部側にシャフトを配置する形式であって、電動格納式ドアミラーが固定部側にシャフトを配置する形式である場合には適用することができなかった。
【0005】
この発明は上述の点に鑑みてなされたもので、手動格納式ドアミラーが回転部側にシャフトを配置する形式であって、電動格納式ドアミラーが固定部側にシャフトを配置する形式である場合に適用することができる手動格納・電動格納共用ベースを提供するものである。またこの発明はこの手動格納・電動格納共用ベースを使用した手動格納式ドアミラーおよび電動格納式ドアミラーを提供するものである。またこの発明はこの手動格納・電動格納共用ベースを使用して手動格納式ドアミラーまたは電動格納式ドアミラーを選択的に製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の手動格納・電動格納共用ベースは手動格納式ドアミラーおよび電動格納式ドアミラーに共用されるベースであって、車体外側に取り付けられる車体固定部と、該車体固定部に繋がって設けられ、ミラー回転部を回転自在に支持して格納位置と復帰位置に変位させる回転支持部とを具備し、前記回転支持部の上面側に、電動格納式ドアミラーの回転軸を構成する第1のシャフトを立設固定するシャフト立設固定面と、前記シャフト立設固定面の中央部に形成され、手動格納式ドアミラーに使用する場合は前記ミラー回転部からその回転軸上を下方に向けて突出形成された第2のシャフトを回転自在に挿通し、電動格納式ドアミラーに使用する場合は前記シャフト立設固定面に立設固定された第1のシャフト内を通って下方に引き出されるハーネスを挿通する中心穴と、前記中心穴よりも外周側の位置で該中心穴と同心の円形に形成され、手動格納式ドアミラーに使用する場合に、前記ミラー回転部の前記第2のシャフトよりも外周側の位置で該第2のシャフトと同軸に下方に向けて配置されたミラー回転部側の環状壁を回転自在に収容する環状壁収容溝とを具備してなるものである。この手動格納・電動格納共用ベースによれば、電動格納式ドアミラーに使用する場合はベースのシャフト立設固定面に第1のシャフトを立設固定し、この第1のシャフトにミラー回転部を回転自在に支持する。手動格納式ドアミラーに使用する場合はミラー回転部側に設けられた第2のシャフトをベースの中心穴に通して、ミラー回転部側の環状壁をベース側の環状壁収容溝に収容して、ミラー回転部を回転自在に支持する。このようにして、この発明によれば手動格納・電動格納共用ベースを手動格納式ドアミラーと電動格納式ドアミラーに共用することができる。
【0007】
この発明の手動格納・電動格納共用ベースは、前記回転支持部の前記中心穴よりも外周側の位置で上面側に露出して前記回転軸の周方向に延在して凹凸状に形成され、手動格納式ドアミラーに使用する場合に、該凹凸に対応して前記ミラー回転部側に凹凸状に形成されたクラッチのミラー回転部側部分と係合するクラッチのベース側部分を具備することができる。このクラッチのベース側部分は例えば環状壁収容溝よりも内周側に形成することができる。これによれば、環状壁収容溝の径方向外側にクラッチを配置するための専用幅を不要とすることができる。あるいはクラッチのベース側部分は環状壁収容溝内底部に形成することもできる。これによれば、クラッチを配置するための径方向の専用幅を不要とすることができるので、ベースとミラー回転部が相対回転する部分の径を小さくすることができる。またこの発明の手動格納・電動格納共用ベースはシャフト立設固定面に第1のシャフトの位置決め用の凹凸構造を具備することができる。これによれば第1のシャフトを容易かつ安定に位置決めすることができる。
【0008】
この発明の手動格納式ドアミラーは、この発明の手動格納・電動格納共用ベースと、前記第2のシャフトおよび前記環状壁を具え、該第2のシャフトを前記ベースの前記シャフト立設固定面の中心穴に回転自在に挿通し、かつ該環状壁を前記ベース側の環状壁収容溝に回転自在に収容して該ベースに回転自在に支持されるミラー回転部と、前記シャフト立設固定面の中心穴を通って前記ベースの下面側に突出する前記第2のシャフトに圧縮状態で嵌挿装着され、前記ベースと前記ミラー回転部との間に前記回転軸に沿って相互に突き合わす方向に付勢力を付与するばねとを具備してなるものである。この手動格納式ドアミラーによれば、この発明の手動格納・電動格納共用ベースを用いて手動格納式ドアミラーを構成することができる。
【0009】
この発明の手動格納式ドアミラーは、この発明の手動格納・電動格納共用ベースと、前記第2のシャフトおよび前記環状壁および前記クラッチのミラー回転部側部分を具え、該第2のシャフトを前記ベースの前記シャフト立設固定面の中心穴に回転自在に挿通し、かつ該環状壁を前記ベース側の環状壁収容溝に回転自在に収容して該ベースに回転自在に支持されるミラー回転部と、前記シャフト立設固定面の中心穴を通って前記ベースの下面側に突出する前記第2のシャフトに圧縮状態で嵌挿装着され、前記ベースと前記ミラー回転部との間に前記回転軸に沿って相互に突き合わす方向に付勢力を付与して、前記クラッチのミラー回転部側部分とベース側部分どうしを圧接させるばねとを具備してなるものである。この手動格納式ドアミラーによれば、この発明の手動格納・電動格納共用ベースを用いて手動格納式ドアミラーを構成することができる。
【0010】
この発明の電動格納式ドアミラーは、この発明の手動格納・電動格納共用ベースと、前記シャフト立設固定面に立設固定される前記第1のシャフトと、該第1のシャフトの軸回り方向に回転自在に支持され、内蔵する電動駆動機構による回転力を該第1のシャフトに伝達して該軸回り方向に回転駆動されるミラー回転部とを具備してなるものである。この電動格納式ドアミラーによれば、この発明の手動格納・電動格納共用ベースを用いて電動格納式ドアミラーを構成することができる。
【0011】
この発明の電動格納式ドアミラーの選択的製造方法は、この発明の手動格納・電動格納共用ベースの1の個体を使用してこの発明の手動格納式ドアミラーを製造し、この発明の手動格納・電動格納共用ベースの別の1の個体を使用してこの発明の電動格納式ドアミラーを製造するものである。この電動格納式ドアミラーの選択的製造方法によれば、この発明の手動格納・電動格納共用ベースを使用して手動格納式ドアミラーまたは電動格納式ドアミラーを選択的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の手動格納・電動格納共用ベースを使用して構成したこの発明の手動格納式ドアミラーの実施の形態1の要部を示す分解斜視図である。
【図2】図1の手動格納式ドアミラーのハウジング36単体の平面図である。
【図3】図1の手動格納式ドアミラーにおいて、ハウジング36の凹所42にハウジング支持部材34を収容して、ハウジング支持部材34をハウジング支持部材配置空間37baに配置した状態を示す平面図である。
【図4】図3の状態における底面図である。
【図5】図3の状態における背面図である。
【図6】図1の手動格納式ドアミラーを、ハウジング36が復帰位置にあるときに、回転軸Sを通る面で切断した部分断面図(図4、図8のA−A矢視位置の断面に相当)である。
【図7】図1のハウジング支持部材34をストッパ40cが形成されている側から見た斜視図である。
【図8】図1のベース32の回転支持部32bの平面図である。
【図9】図1のベース32の回転支持部32bの一部破断斜視図である。
【図10】図1の手動格納式ドアミラーの一部破断斜視図である。
【図11】図1のドアミラーのハウジング支持部材34とハウジング36の連結固定位置の部分断面図(図4のB−B矢視位置の断面に相当)である。
【図12】図1のドアミラーのハウジング36が復帰位置にあるときに、クラッチのベース側部分60とミラー回転部側部分54とが噛み合った状態を示す一部拡大正面図である。
【図13】この発明の手動格納・電動格納共用ベースを使用して構成したこの発明の手動格納式ドアミラーの実施の形態2を示す図で、ハウジング36の凹所42にハウジング支持部材34を収容してハウジング36の底面側から見た図である。
【図14】同実施の形態2による手動格納式ドアミラーにおけるベース32の回転支持部32bの平面図である。
【図15】同実施の形態2による手動格納式ドアミラーを、ハウジング36が復帰位置にあるときに、回転軸Sを通る面で切断した部分断面図である。
【図16】手動格納式ドアミラーの実施の形態1で使用した手動格納・電動格納共用ベースを使用して構成したこの発明の電動格納式ドアミラーの実施の形態の要部を示す分解斜視図である。
【図17】図16の取付部品72をストッパ73aが形成されている側から見た斜視図である。
【図18】図16の電動格納式ドアミラーにおいて、ハウジング36の凹所42に取付部品72を介して電動駆動機構70を収容して、電動駆動機構70を電動駆動機構配置空間37baに配置した状態を示す平面図である。
【図19】図18の状態における底面図である。
【図20】図18の状態における背面図である。
【図21】図16のベース32の回転支持部32bに電動駆動機構70を載置支持した状態を示す斜視図である。
【図22】図16の電動格納式ドアミラーのハウジング36、取付部品72、電動駆動機構70の連結固定位置の部分断面図(図19のD−D矢視位置の断面に相当)である。
【図23】図16の電動格納式ドアミラーにおける電動駆動機構70のシャフト74をベース32に立設固定する位置の部分断面図(図8、図19のC−C矢視位置の断面に相当)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
《手動格納式ドアミラーの実施の形態1》
この発明の手動格納・電動格納共用ベースを使用して構成したこの発明の手動格納式ドアミラーの実施の形態1を説明する。図1はこの実施の形態による手動格納式ドアミラーの構成を分解して示す。このドアミラーは右側用で、図1は背面側から見た状態を示す。図1ではハウジング(ミラーボデー)36の背面側に装着するハウジングカバー、ハウジング36の前面側空間37a(図4)内に固定配置する鏡面調整用アクチュエータ、鏡面角度を可変に該鏡面調整用アクチュエータに固定支持されるミラー板等は図示を省略している。このドアミラーは車体外側に取り付けられるベース32と、ベース32に対し回転軸Sの周り方向に回転自在に軸受支持されるハウジング支持部材34(フレーム)と、ハウジング支持部材34に固定支持されるハウジング36を具備する。ハウジング36はハウジング支持部材34を内部空間37の凹所42に収容してハウジング支持部材配置空間37baに配置し、ビス44でハウジング支持部材34に固定支持される。このようにハウジング支持部材34とハウジング36とを相互に連結固定して一体化してミラー回転部35が構成される。ハウジング支持部材34とハウジング36とを一体化した状態では、ハウジング支持部材34のシャフト38とその外周側の環状壁40はハウジング36の下面から下方に向けて突出する。このシャフト38と環状壁40をベース32の回転支持部32bに形成されたシャフト挿通孔56と環状壁収容溝58(図8、図9)にそれぞれ差し込み、次いでベース32の下面側からシャフト38にコイルばね46を短縮(圧縮)して嵌挿装着し、さらにシャフト38の下端部にプレート48を装着することにより、ハウジング支持部材34とベース32は相互に連結される。これによりハウジング36は手動操作でハウジング支持部材34を伴って、ストッパ40c(図7)で規制される角度範囲内で回転軸Sの周り方向に回転して格納位置(後方可倒位置)と復帰位置さらには前方側に倒れた位置(前方可倒位置)に変位可能となる。
【0014】
図1のハウジング支持部材34、ハウジング36、ベース32についてそれぞれ説明する。ハウジング支持部材34はPA+GF(ガラス繊維入りのポリアミド)樹脂等の硬質プラスチックによる一体成型品あるいはアルミ等の金属による一体鋳造品等で構成されている。図1に示すように、ハウジング支持部材34にはベース32と相対回転する回転軸S上に配置される中空丸棒状のシャフト38と、シャフト38よりも外周側に離れた位置でシャフト38に対し径方向に間隙を隔てて同軸に配置された円形の環状壁40が形成されている。シャフト38はハウジング支持部材34に一体に形成されているので、シャフト専用部品が不要となって部品点数が削減される。これにより組み付け作業の効率化が図られる。環状壁40の板厚は下方に行くに従い僅かに薄くなるように形成されている(図6)。環状壁40は、環状壁40とシャフト38を繋ぐ円板状の連結部39(図3,図6)を越えてそのまま上方に突出して環状壁延長部41を構成している。環状壁延長部41は環状壁40の剛性を高める働きをする。図6に示すように、環状壁40と連結部39とシャフト38で囲まれた空間内には、連結部39と環状壁40との境界部分(環状壁40のすぐ内周側)に、シャフト38および環状壁40と同軸に配置されたクラッチのミラー回転部側部分54が形成されている。クラッチのミラー回転部側部分54は図4に示すように、山部54aと谷部54bの繰り返し構造を周方向に等ピッチで3回繰り返し形成して構成されている。山部54aと谷部54bの境界部分54cはそれぞれ傾斜面に形成されている(図12)。図7に示すように、環状壁40の外周面の周方向の一部の領域にはストッパ40cが径方向に突出して形成されている。ストッパ40cは、図8のベース32の環状壁収容溝58のすぐ外周側の位置で回転軸Sを中心とする周方向の一部の領域に形成されたストッパ移動溝63に収容されて、ハウジング支持部材34の回転に伴ってストッパ移動溝63を移動し、ストッパ移動溝63の両端部63a,63bに当接して係止される。ストッパ40cが端部63aで係止される位置がハウジング36の前方可倒位置であり、ストッパ40cが端部63bで係止される位置がハウジング36の格納位置(後方可倒位置)である。ストッパ40cは環状壁40の外周面に形成されているので、環状壁40が無くストッパ40cがその基部だけでハウジング支持部材34に連結されている場合に比べて、ストッパ40cを強固に支持することができ、ストッパ40cが折れるのを防止することができる。なお上記の配置とは逆に、ストッパ移動溝63を環状壁収容溝58のすぐ内周側の位置に形成し、ストッパ40cを環状壁40の内周面に突出形成することもできる。図7に示すように、ハウジング支持部材34の前面側には鏡面調整用アクチュエータの一部分をねじ止め支持するねじ穴29,31が形成されている。
【0015】
図1のハウジング36はハウジング支持部材34よりも剛性が低いABS等のプラスチックによる一体成型品で作られている。図1に示すように、ハウジング36は内部空間37が仕切り板36aで前面側空間37aと背面側空間37bとに概ね仕切られている。前面側空間37a(図4)内には、図示しない鏡面調整用アクチュエータが仕切り板36aの前面側に配置して収容される。すなわち、鏡面調整用アクチュエータは一部分が該仕切り板36aの前面に形成されたねじ穴(図示せず)にねじ止め固定され、他の一部分がハウジング支持部材34の前面側のねじ穴29,31(図7)にねじ止め固定される。鏡面調整用アクチュエータには図示しないミラー板が装着される。背面側空間37bにはハウジング支持部材34を上方から差し込んで配置可能なハウジング支持部材配置空間37ba(電動格納式ドアミラーの電動駆動機構配置空間と共通)(図1)が形成されている。ハウジング支持部材配置空間37baの下部には上方に開口する凹所42(図1,2,3,5)が形成されている。凹所42にはハウジング支持部材34が収容される。ハウジング36の背面側にはねじ通し穴33(図1)が形成されている。ねじ通し穴33にはねじ(図示せず)が差し込まれてハウジング支持部材34の背面側に形成されたねじ穴43(図1)にねじ込まれる。これによりハウジング36とハウジング支持部材34とはハウジング36の背面側からも固定される。ハウジング36の背面側空間37bは図示しないハウジングカバーが装着されて閉じられる。ハウジング36の底面には回転軸S上に、ハウジング支持部材34のシャフト38と環状壁40を突出させる丸穴52(図2)が形成されている。丸穴52にはストッパ40c(図7),73a(図17)を通すための切欠52a(図2、図4、図13、図19)が形成されている。
【0016】
図1のベース32(手動格納・電動格納共用ベース)はPA+GF樹脂等の硬質プラスチックによる一体成型品あるいはアルミ等の金属による一体鋳造品等で構成されている。ベース32は車体に固定される車体固定部32aと、車体固定部32aの下端部から側方に突出してハウジング支持部材34を回転自在に軸受支持する回転支持部32bを有する。図8はベース32の回転支持部32bを上から見た状態を示す。図9は回転支持部32bの一部を破断して示した斜視図である。回転支持部32bには回転軸S上にシャフト挿通孔56とその外周側に環状壁収容溝58と、環状壁収容溝58のすぐ内周側にクラッチのベース側部分60が同軸に形成されている。シャフト挿通孔56はハウジング36が復帰位置にあるときにシャフト38を僅かなクリアランスで挿通する大きさに形成されている。環状壁収容溝58の内壁面58aおよび外壁面58bには、環状壁40(図6)の内壁面40aおよび外壁面40bとの当接箇所を設定する突条59,61が回転軸Sと平行な方向に延在してかつ周方向に等角度間隔に配置した状態に6本ずつ突出形成されている。環状壁収容溝58と環状壁40は、ハウジング36が復帰位置にあるときに内壁面58a(突条59の位置),40aどうしおよび外壁面58b(突条61の位置),40bどうしがクリアランスなしで当接する内径、外径に形成されている。環状壁収容溝58の溝幅は環状壁40の板厚の変化に合わせて、下方に行くに従い僅かに狭くなるように形成されている(図6)。環状壁収容溝58の深さは、ハウジング支持部材34がベース32に対し相対回転できる角度範囲内で、クラッチのミラー回転部側部分54とベース側部分60とが常に押圧当接し合える十分な深さに形成されている。クラッチのベース側部分60は環状壁収容溝58のすぐ内周側に山部60aと谷部60bの繰り返し構造を周方向に等ピッチで3回繰り返し形成して構成されている(図8、図9)。山部60aと谷部60bの境界部分60cはそれぞれ傾斜面に形成されている(図9、図12)。
【0017】
図1の手動格納式ドアミラーは例えば次の手順で組み立てられる。
(1)ハウジング36の凹所42にハウジング支持部材34を収容して、ハウジング支持部材34をハウジング支持部材配置空間37baに配置する。図3、図4、図5はこのときの状態を平面図、底面図、背面図でそれぞれ示す。
(2)ハウジング36の下面に形成された2個のねじ通し穴50(図4)にビス44(図1)をそれぞれ差し込んでハウジング支持部材34の下面のねじ穴にねじ込むことにより、ハウジング36とハウジング支持部材34とを相互に連結固定する。 図11はハウジング支持部材34とハウジング36の連結固定位置の断面(図4のB−B矢視位置の断面に相当)を示す。ハウジング支持部材34とハウジング36は、ハウジング36に形成されたねじ通し穴50からビス44を差し込んで、ハウジング支持部材34に形成されたねじ穴66にねじ込むことにより連結固定されている。
(3)ハウジング36の底面の丸穴52から下方に突出するシャフト38と環状壁40をベース32の回転支持部32bに形成されたシャフト挿通孔56と環状壁収容溝58にそれぞれ回転自在に差し込む(図6、図10、図11)。
(4)ベース32の下面側に突出したシャフト38にコイルばね46を嵌挿し、シャフト38の下端部にプレート48を装着して、シャフト38にコイルばね46を短縮状態に装着し、もってベース32にハウジング支持部材34を介してハウジング36を回転軸Sの周り方向に回転自在に連結して軸受支持する(図6、図10、図11)。
(5)ハウジング36の背面側のねじ通し穴33(図1)からねじ(図示せず)を差し込んで、ハウジング支持部材34のねじ穴43(図1)にねじ込んでハウジング36とハウジング支持部材34との連結を強固にする。
(6)ハウジング36の裏面側の開口(図1、図2、図3、図5に示すエッジ36cで囲まれた領域)にハウジングカバーを装着する。これによりハウジング支持部材34は、ハウジング36の下面から突出しているシャフト38および環状壁40を除く部分すなわち連結部39よりも上の部分がハウジング36の内部空間37に収容された状態となる。
(7)ハウジング36の前面側空間37aに鏡面調整用アクチュエータを装着し、該鏡面調整用アクチュエータにミラー板を装着する。
【0018】
図6は図1のドアミラーを組み立てて、ハウジング36が復帰位置にあるときに、回転軸Sを通る面で切断した状態を示す(図4、図8のA−A矢視位置の断面に相当)。シャフト38の中空部38aには鏡面調整用アクチュエータ等に駆動用電力を供給するハーネス62が挿通されている。ベース32の下部開口部は蓋64で閉じられている。ハウジング36が復帰位置にあるときはコイルばね46の付勢力はベース32とハウジング支持部材34との間に、回転軸Sに沿って相互に突き合わせる方向に付与され、クラッチのベース側部分60(図8、図9)の山部60a、谷部60bとミラー回転部側部分54(図4)の谷部54b、山部54aとが相互に噛み合った状態(図12に示す状態)となる。これによりハウジング36を装着したハウジング支持部材34はベース32上に起立した状態に保持される。このとき環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61とはいずれも当接した状態となり、ハウジング36はがたつき無く復帰位置に保持される。シャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとの間には僅かなクリアランスがある。
【0019】
ハウジング36が復帰位置にある状態からコイルばね46の付勢力に抗してハウジング36に手で回転軸Sの周り方向に力を加えると、クラッチのミラー回転部側部分54の傾斜面54c(図12)がベース側部分60の傾斜面60cを滑り上がってクラッチの噛み合いが外れる。このとき傾斜面54cの滑り上がりによりハウジング支持部材34がその分上方に移動する。前述のように環状壁40の板厚は下方に行くに従い僅かに薄くなるように形成され、環状壁収容溝58の溝幅は環状壁40の板厚の変化に合わせて、下方に行くに従い僅かに狭くなるように形成されているので(図6)、ハウジング支持部材34が上方に移動することにより、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61との当接が緩められ(両壁面間に隙間が生じ)、ハウジング36は回転軸Sの周り方向に回転できるようになり、格納位置(後方可倒位置)あるいは格納位置とは反対側の前方可倒位置に変位する。このハウジング36が回転するときの軸受支持は、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bとの摺動、あるいはシャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとの摺動、あるいはこれら両摺動によって行われる。
【0020】
ハウジング36が復帰位置にある状態でハウジング36に無用な外力が加わって(例えばハウジング36に上から荷重がかかる等)、ハウジング支持部材34に掛かる曲げモーメント(図6のシャフト挿通孔56の中心位置Pを中心とする矢印Fで示す方向のモーメント)が増大してハウジング支持部材34に傾きが生じたときは、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61とが押圧当接し、またシャフト38に傾きが生じてシャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとが押圧当接して、これら3面の押圧当接で該外力を分担して支持する。したがってハウジング支持部材34は全体として高い剛性が得られ、外力に対して高い支持力が得られる。したがってハウジング支持部材34を金属でなくPA+GF樹脂等の硬質プラスチックによる一体成型品で作ってもシャフト38や環状壁40が折れたり曲がったり破損するのが防止される。ハウジング支持部材34およびベース32をいずれもPA+GF樹脂等の硬質プラスチックによる一体成型品で作ればドアミラーを安価に製造することができる。特にこの実施の形態によれば、ハウジング36が復帰位置にあるときに、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61どうしがクリアランスなしで当接し、シャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとは僅かなクリアランスで対面しているので、ハウジング36に外力が加わったときに、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61どうしの押圧当接で該外力の多くの部分を支持し、シャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとの押圧当接で該外力の残りの部分を支持するので、シャフト38に掛かる力を軽減してシャフト38が折れたり曲がったりするのをより確実に防止することができる。
【0021】
また上記実施の形態によれば、環状壁40は環状壁収容溝58に収容されて隠されるので、従来の車両用ドアミラーと同等の外観を保つことができる。またクラッチ54,60は環状壁40および環状壁収容溝58よりも内周側に配置されているので、環状壁40および環状壁収容溝58よりも外周側にクラッチを配置するための径方向の専用幅(クラッチを形成するためにハウジング支持部材34およびベース32に設ける回転軸Sに関する径方向の幅)が不要である。またシャフト38の中空部38aにハーネス62を通すので、ハーネス62の取り回しが容易である。またコイルばね46は環状壁収容溝58よりも内周側に配置されているので、コイルばね46の直径を小さくすることができる。
【0022】
《手動格納式ドアミラーの実施の形態2》
この発明の手動格納・電動格納共用ベースを使用して構成したこの発明の手動格納式ドアミラーの実施の形態2を図13〜図15に示す。これはクラッチのミラー回転部側部分54を環状壁40の頂部に形成し、クラッチのベース側部分60を環状壁収容溝58の底部に形成したものである。他の構成は実施の形態1と同じである。図13はハウジング36の凹所42(図2)にハウジング支持部材34を収容して(図3)ハウジング36の底面側から見た図(実施の形態1の図4に相当)、図14はベース32の回転支持部32bの平面図(実施の形態1の図8に相当)、図15はハウジング36が復帰位置にあるときに、回転軸Sを通る面で切断した断面図(実施の形態1の図6に相当)である。実施の形態1と共通する部分には同一の符号を用いる。これによれば、クラッチを配置するための径方向の専用幅が不要となるので、ベース32とハウジング支持部材34が相対回転する部分の径を小さくすることができる。この実施の形態のドアミラーは実施の形態1のドアミラーと同様に動作する。
【0023】
なお前記手動格納式ドアミラーの実施の形態1,2ではハウジング36とハウジング支持部材34を別体で構成して組み付けたが、両者を一体成型品または一体鋳造品として構成することもできる。また同実施の形態1,2ではコイルばね46をシャフト38に係止するためにプレート48を用いたが、コイルばね46のプレート側の端部をシャフト38に直接係止する構造にすればプレート48を省くこともできる。また同実施の形態1,2ではばねとしてコイルばね46を使用した場合について説明したが、皿ばねや板ばねを使用することもできる。
【0024】
《電動格納式ドアミラーの実施の形態》
前記手動格納式ドアミラーの実施の形態1で説明した手動格納・電動格納共用ベース32を使用して構成したこの発明の電動格納式ドアミラーの実施の形態を図16〜図23に示す。前記手動格納式ドアミラーの実施の形態1と共通する部分には同一の符号を用いる。図16はこの実施の形態による電動格納式ドアミラーの構成を分解して示す。このドアミラーは右側用で、図16は背面側から見た状態を示す。図16ではハウジング36の背面側に装着するハウジングカバー、鏡面調整用アクチュエータ、ミラー板等は図示を省略している。このドアミラーは車体外側に取り付けられるベース32と、電動駆動機構70と、取付部品72と、ハウジング36を具備する。取付部品72は電動駆動機構70とハウジング36との間に介在して電動駆動機構70をハウジング36に固定連結する働きをする。取付部品72はPA+GF樹脂等の硬質プラスチックによる一体成型品あるいはアルミ等の金属による一体鋳造品等で構成される。取付部品72は電動駆動機構70を上部の開口部72bから嵌め込んで収容する内部空間72aを有する。取付部品72の下面にはシャフト74(図22,図23)の下面74aaを下方に露出させる開口部72cが形成されている。取付部品72は下方に向けて突出する環状壁73を有する。環状壁73はベース32の環状壁収容溝58に非接触で収容される(図22、図23)。図17に示すように、環状壁73の外周面の周方向の一部の領域にはストッパ73aが径方向に突出して形成されている。ストッパ73aは、手動格納式ドアミラーの場合と同様に、図8のベース32の環状壁収容溝58のすぐ外周側位置で回転軸Sを中心とする周方向の一部の領域に形成されたストッパ移動溝63に収容されて、取付部品72の回転に伴ってストッパ移動溝63を移動し、ストッパ移動溝63の両端部63a,63bに当接して係止される。ストッパ73aが端部63aで係止される位置がハウジング36の前方可倒位置であり、ストッパ73aが端部63bで係止される位置がハウジング36の格納位置(後方可倒位置)である。ストッパ73aは環状壁73の外周面に形成されているので、環状壁73が無くストッパ73aがその基部だけで取付部品72に連結されている場合に比べて、ストッパ73aを強固に支持してストッパ73aが折れるのを防止することができる。なお上記の配置とは逆に、ストッパ移動溝63を環状壁収容溝58のすぐ内周側の位置に形成し、ストッパ73aを環状壁73の内周面に突出形成することもできる。図17に示すように、取付部品72の前面側には鏡面調整用アクチュエータの一部分をねじ止め支持するねじ穴67,69(図7のハウジング支持部材34のねじ穴29,31に相当)が形成されている。図16において、電動駆動機構70は取付部品72の内部空間72aに収容保持されて、取付部品72ごとハウジング36の凹所42に収容保持されて電動駆動機構配置空間37ba(手動格納式ドアミラーのハウジング支持部材配置空間と共通)に配置され、ビス44で取付部品72ごとハウジング36に固定支持される。このように取付部品72に収容された電動駆動機構70とハウジング36とを一体化してミラー回転部35が構成される。ベース32、ハウジング36、ハウジングカバーは前記手動格納式ドアミラーの実施の形態1で説明したものと同一のものである。なお電動駆動機構70がハウジング36の凹所42に直接収容保持されるように電動駆動機構70の外形および凹所42の内形を形成すれば、取付部品72を不要にすることができる。
【0025】
電動駆動機構70は従来の電動格納式ドアミラーの電動駆動機構と同様の機構を有するものであり、ケース71内に中空丸棒状の金属製シャフト74(図22,図23)、モータ、ギヤ、クラッチ機構、コイルばね、電子回路基板等を収容配置して構成されている。シャフト74は回転軸Sと同軸に配置される。シャフト74の基部74aの下面74aaはハウジング36の下面に露出する。シャフト74の基部74aの下部には図19に示すように、回転軸Sを取り囲む3箇所に脚90が突出形成されている。各脚90の下面にはねじ穴88が形成されている。またシャフト74の基部74aの下部には図19に示すように、1本の位置決め用ピン79が突出形成されている。シャフト74の中心には上下に貫通する中空部74bが形成されている。中空部74bの下端部は基部74aの下面74aaの中央部に開口している。中空部74bの上端部は電動駆動機構70のケース71の上部に形成された中空部92(図22、図23)に連通し、電動駆動機構70の上方に開口している。
【0026】
ベース32の上面中央部にはシャフト立設固定面76(図8、図9)が構成されている。シャフト立設固定面76には、図8、図9に示すように、壁部77とボス75が突出形成されている。シャフト立設固定面76のうち壁部77およびボス75が形成されていない領域は脚90を支持する脚支持面91を構成する。脚支持面91にはねじ通し穴80が形成されている。ボス75にはピン収容穴81が形成されている。シャフト74は脚90を脚支持面91に着地させてシャフト立設固定面76に支持される。この状態では壁部77およびボス75は脚90どうしの隙間に嵌り込み、ピン収容穴81にはピン79が収容される。このようなシャフト立設固定面76の凹凸とシャフト74の下面74aaの凹凸との係合(嵌め合い)により、シャフト74はその中心軸を回転軸Sに一致させてベース32上に位置決めされる。シャフト74がベース32上に位置決めされた状態で、ベース32の下面側から3本のビス78(図16)をねじ通し穴80に通して脚90の下面に形成されたねじ穴88にねじ込むことによりシャフト74はベース32上に立設固定される(図23)。シャフト74がベース32上に立設固定された状態では、ベース32の中心穴56(手動格納式手動格納式ドアミラーの場合のシャフト挿通孔)、シャフト74の中空部74b、ケース71の中空部92は相互に連通してハーネス通し穴を構成する。
【0027】
図16の電動格納式ドアミラーは例えば次の手順で組み立てられる。
(1)取付部品72の上部開口部72bからその内部空間72aに電動駆動機構70を嵌め込んで収容する。これにより電動駆動機構70の約下半分が内部空間72aに嵌り込んだ状態で、電動駆動機構70に取付部品72が装着される。このとき電動駆動機構70のシャフト74の基部74aの下面74aaは取付部品72の下部開口部72cから下方に露出した状態となる。
(2)取付部品72が装着された電動駆動機構70をハウジング36の凹所42に上方から収容する。図18、図19、図20はこのときの状態を平面図、底面図、背面図でそれぞれ示す。
(3)ハウジング36の下面に形成された2個のねじ通し穴50(図19)にビス44(図16)をそれぞれ差し込んで電動駆動機構70の下面のねじ穴にねじ込むことにより、ハウジング36と電動駆動機構70とを相互に連結固定する。 図22は電動駆動機構70とハウジング36の連結固定位置の断面(図19のD−D矢視位置の断面に相当)を示す。図22に示すように、電動駆動機構70とハウジング36は、ハウジング36に形成されたねじ通し穴50からビス44を差し込んで、取付部品72に形成されたねじ通し穴82を介して、電動駆動機構70に形成されたねじ穴84にねじ込むことにより連結固定される。
(4)ハウジング36の下面に露出しているシャフト74の基部74aをベース32のシャフト立設固定面76に、シャフト74の中心軸を回転軸Sに合わせて載置する。図21は取付部品72およびハウジング36を外してベース32の回転支持部32bに電動駆動機構70を載置した状態を示す。脚90と壁部77との係合およびピン79(図19)とピン収容穴81(図8、図9)との係合によりシャフト74の基部74aはベース32のシャフト立設固定面76に位置決めされる。
(5)ベース32の回転支持部32bの裏面側から、ねじ通し穴80(図8)にビス78(図16)を差し込み、シャフト74の下面74aaに形成されたねじ穴88(図19)にねじ込むことにより、シャフト74は回転支持部32bに立設固定される。これによりミラー回転部35は回転支持部32bに対し回転軸Sの周り方向に回転自在に連結される。図22、図23はこのときの状態を断面図で示す。
(6)ハウジング36の背面側のねじ通し穴33(図1)からねじ(図示せず)を差し込んで、取付部品72のねじ通し穴87(図16)に通して、電動駆動機構70のねじ穴89(図16)にねじ込んでハウジング36と取付部品72と電動駆動機構70との連結を強固にする。
(7)ハウジング36の裏面側の開口(図16、図18、図20に示すエッジ36cで囲まれた領域)にハウジングカバーを装着する。これにより電動駆動機構70は、ハウジング36の下面から突出しているシャフト74の基部74aを除く部分がハウジング36の内部空間37に収容された状態となる。
(8)ハウジング36の前面側空間37aに鏡面調整用アクチュエータを装着し、該鏡面調整用アクチュエータにミラー板を装着する。
【0028】
図23は図16のドアミラーを組み立てて、ハウジング36が復帰位置にあるときに、図8、図19のC−C矢視位置に相当する位置で切断した断面を示す。相互に連通するシャフト74の中空部74bおよびケース71の中空部92には電動駆動機構70および鏡面調整用アクチュエータ等に駆動用電力を供給するハーネス62が挿通されている。ベース32の下部開口部は蓋64で閉じられている。電動駆動機構70内のモータが駆動されると、電動駆動機構70はベース32の回転支持部32bに立設固定されたシャフト74を中心にケース71が回転し、ケース71に連結されているハウジング36はこれに従動して、ストッパ73a(図17))で規制される角度範囲内で回転軸Sの周り方向に回転し、復帰位置から格納位置に、または格納位置から復帰位置に変位する。またるハウジング36が復帰位置にあるときにハウジング36に車両前方方向への外力が作用すると、電動駆動機構70内でコイルばねの付勢力に抗してクラッチの噛み合いが外れてるハウジング36は前方側に倒れた位置(前方可倒位置)に変位して、該外力を逃がす。
【0029】
以上は手動格納式ドアミラーの実施の形態1で説明した手動格納・電動格納共用ベースを使用してこの発明の電動格納式ドアミラーを構成した例を説明したが、手動格納式ドアミラーの実施の形態2で説明した手動格納・電動格納共用ベースを使用してこの発明の電動格納式ドアミラーを構成することもできる。
【0030】
《手動格納式または電動格納式ドアミラーの選択的製造方法の実施の形態》
手動格納式ドアミラーの実施の形態1で説明した手動格納・電動格納共用ベース32を複数個用意して、そのうちのあるものを手動格納式ドアミラーの実施の形態1で説明した手動格納式ドアミラーを製造するのに使用し、他のあるものを電動格納式ドアミラーの実施の形態で説明した電動格納式ドアミラーを製造するのに使用することができる。同様に、手動格納式ドアミラーの実施の形態2で説明した手動格納・電動格納共用ベース32を複数個用意して、そのうちのあるものを手動格納式ドアミラーの実施の形態2で説明した手動格納式ドアミラーを製造するのに使用し、他のあるものを電動格納式ドアミラーの実施の形態で説明したのと同様の電動格納式ドアミラーを製造するのに使用することができる。
【符号の説明】
【0031】
32…手動格納・電動格納共用ベース、32a…車体固定部、32b…回転支持部、35…ミラー回転部、36…ハウジング、38…第2のシャフト、40,73…環状壁、40c,73a…ストッパ、46…コイルばね(ばね)、54…クラッチのミラー回転部側部分、56…シャフト挿通孔,中心穴、58…環状壁収容溝、60…クラッチのベース側部分、62…ハーネス、63…ストッパ移動溝、63a,63b…ストッパ移動溝の端部、74…第1のシャフト、76…シャフト立設固定面、70…電動駆動機構、S…回転軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動格納式ドアミラーおよび電動格納式ドアミラーに共用されるベースであって、車体外側に取り付けられる車体固定部と、該車体固定部に繋がって設けられ、ミラー回転部を回転自在に支持して格納位置と復帰位置に変位させる回転支持部とを具備し、
前記回転支持部の上面側に、
電動格納式ドアミラーの回転軸を構成する第1のシャフトを立設固定するシャフト立設固定面と、
前記シャフト立設固定面の中央部に形成され、手動格納式ドアミラーに使用する場合は前記ミラー回転部からその回転軸上を下方に向けて突出形成された第2のシャフトを回転自在に挿通し、電動格納式ドアミラーに使用する場合は前記シャフト立設固定面に立設固定された第1のシャフト内を通って下方に引き出されるハーネスを挿通する中心穴と、
前記中心穴よりも外周側の位置で該中心穴と同心の円形に形成され、手動格納式ドアミラーに使用する場合に、前記ミラー回転部の前記第2のシャフトよりも外周側の位置で該第2のシャフトと同軸に下方に向けて配置されたミラー回転部側の環状壁を回転自在に収容する環状壁収容溝と
を具備してなる車両用ドアミラーの手動格納・電動格納共用ベース。
【請求項2】
前記回転支持部の前記中心穴よりも外周側の位置で上面側に露出して前記回転軸の周方向に延在して凹凸状に形成され、手動格納式ドアミラーに使用する場合に、該凹凸に対応して前記ミラー回転部側に凹凸状に形成されたクラッチのミラー回転部側部分と係合するクラッチのベース側部分を具備してなる請求項1記載の車両用ドアミラーの手動格納・電動格納共用ベース。
【請求項3】
請求項1記載の手動格納・電動格納共用ベースと、
前記第2のシャフトおよび前記環状壁を具え、該第2のシャフトを前記ベースの前記シャフト立設固定面の中心穴に回転自在に挿通し、かつ該環状壁を前記ベース側の環状壁収容溝に回転自在に収容して該ベースに回転自在に支持されるミラー回転部と、
前記シャフト立設固定面の中心穴を通って前記ベースの下面側に突出する前記第2のシャフトに圧縮状態で嵌挿装着され、前記ベースと前記ミラー回転部との間に前記回転軸に沿って相互に突き合わす方向に付勢力を付与するばねと
を具備してなる手動格納式ドアミラー。
【請求項4】
請求項2記載の手動格納・電動格納共用ベースと、
前記第2のシャフトおよび前記環状壁および前記クラッチのミラー回転部側部分を具え、該第2のシャフトを前記ベースの前記シャフト立設固定面の中心穴に回転自在に挿通し、かつ該環状壁を前記ベース側の環状壁収容溝に回転自在に収容して該ベースに回転自在に支持されるミラー回転部と、
前記シャフト立設固定面の中心穴を通って前記ベースの下面側に突出する前記第2のシャフトに圧縮状態で嵌挿装着され、前記ベースと前記ミラー回転部との間に前記回転軸に沿って相互に突き合わす方向に付勢力を付与して、前記クラッチのミラー回転部側部分とベース側部分どうしを圧接させるばねと
を具備してなる手動格納式ドアミラー。
【請求項5】
前記ベースが前記環状壁収容溝の外周側または内周側に隣接してストッパ移動溝を有し、
前記ミラー回転部が前記環状壁の外周面または内周面に径方向に突出して形成されたストッパを有し、
該ストッパが前記ミラー回転部の回転に伴い前記ストッパ移動溝を移動して、該ストッパ移動溝の端部に当接して係止される請求項3または4記載の手動格納式ドアミラー。
【請求項6】
請求項1または2記載の手動格納・電動格納共用ベースと、
前記シャフト立設固定面に立設固定される前記第1のシャフトと、
該第1のシャフトの軸回り方向に回転自在に支持され、内蔵する電動駆動機構による回転力を該第1のシャフトに伝達して該軸回り方向に回転駆動されるミラー回転部と
を具備してなる電動格納式ドアミラー。
【請求項7】
前記ベースが前記環状壁収容溝の外周側または内周側に隣接してストッパ移動溝を有し、
前記ミラー回転部が環状壁と該環状壁の外周面または内周面に径方向に突出して形成されたストッパを有し、
該ストッパが前記ミラー回転部の回転に伴い前記ストッパ移動溝を移動して、該ストッパ移動溝の端部に当接して係止される請求項6記載の手動格納式ドアミラー。
【請求項8】
請求項1または2記載の手動格納・電動格納共用ベースの1の個体を使用して請求項3から5のいずれか1つの手動格納式ドアミラーを製造し、請求項1または2記載の手動格納・電動格納共用ベースの別の1の個体を使用して請求項6または7記載の電動格納式ドアミラーを製造する手動格納式または電動格納式ドアミラーの選択的製造方法。
【請求項1】
手動格納式ドアミラーおよび電動格納式ドアミラーに共用されるベースであって、車体外側に取り付けられる車体固定部と、該車体固定部に繋がって設けられ、ミラー回転部を回転自在に支持して格納位置と復帰位置に変位させる回転支持部とを具備し、
前記回転支持部の上面側に、
電動格納式ドアミラーの回転軸を構成する第1のシャフトを立設固定するシャフト立設固定面と、
前記シャフト立設固定面の中央部に形成され、手動格納式ドアミラーに使用する場合は前記ミラー回転部からその回転軸上を下方に向けて突出形成された第2のシャフトを回転自在に挿通し、電動格納式ドアミラーに使用する場合は前記シャフト立設固定面に立設固定された第1のシャフト内を通って下方に引き出されるハーネスを挿通する中心穴と、
前記中心穴よりも外周側の位置で該中心穴と同心の円形に形成され、手動格納式ドアミラーに使用する場合に、前記ミラー回転部の前記第2のシャフトよりも外周側の位置で該第2のシャフトと同軸に下方に向けて配置されたミラー回転部側の環状壁を回転自在に収容する環状壁収容溝と
を具備してなる車両用ドアミラーの手動格納・電動格納共用ベース。
【請求項2】
前記回転支持部の前記中心穴よりも外周側の位置で上面側に露出して前記回転軸の周方向に延在して凹凸状に形成され、手動格納式ドアミラーに使用する場合に、該凹凸に対応して前記ミラー回転部側に凹凸状に形成されたクラッチのミラー回転部側部分と係合するクラッチのベース側部分を具備してなる請求項1記載の車両用ドアミラーの手動格納・電動格納共用ベース。
【請求項3】
請求項1記載の手動格納・電動格納共用ベースと、
前記第2のシャフトおよび前記環状壁を具え、該第2のシャフトを前記ベースの前記シャフト立設固定面の中心穴に回転自在に挿通し、かつ該環状壁を前記ベース側の環状壁収容溝に回転自在に収容して該ベースに回転自在に支持されるミラー回転部と、
前記シャフト立設固定面の中心穴を通って前記ベースの下面側に突出する前記第2のシャフトに圧縮状態で嵌挿装着され、前記ベースと前記ミラー回転部との間に前記回転軸に沿って相互に突き合わす方向に付勢力を付与するばねと
を具備してなる手動格納式ドアミラー。
【請求項4】
請求項2記載の手動格納・電動格納共用ベースと、
前記第2のシャフトおよび前記環状壁および前記クラッチのミラー回転部側部分を具え、該第2のシャフトを前記ベースの前記シャフト立設固定面の中心穴に回転自在に挿通し、かつ該環状壁を前記ベース側の環状壁収容溝に回転自在に収容して該ベースに回転自在に支持されるミラー回転部と、
前記シャフト立設固定面の中心穴を通って前記ベースの下面側に突出する前記第2のシャフトに圧縮状態で嵌挿装着され、前記ベースと前記ミラー回転部との間に前記回転軸に沿って相互に突き合わす方向に付勢力を付与して、前記クラッチのミラー回転部側部分とベース側部分どうしを圧接させるばねと
を具備してなる手動格納式ドアミラー。
【請求項5】
前記ベースが前記環状壁収容溝の外周側または内周側に隣接してストッパ移動溝を有し、
前記ミラー回転部が前記環状壁の外周面または内周面に径方向に突出して形成されたストッパを有し、
該ストッパが前記ミラー回転部の回転に伴い前記ストッパ移動溝を移動して、該ストッパ移動溝の端部に当接して係止される請求項3または4記載の手動格納式ドアミラー。
【請求項6】
請求項1または2記載の手動格納・電動格納共用ベースと、
前記シャフト立設固定面に立設固定される前記第1のシャフトと、
該第1のシャフトの軸回り方向に回転自在に支持され、内蔵する電動駆動機構による回転力を該第1のシャフトに伝達して該軸回り方向に回転駆動されるミラー回転部と
を具備してなる電動格納式ドアミラー。
【請求項7】
前記ベースが前記環状壁収容溝の外周側または内周側に隣接してストッパ移動溝を有し、
前記ミラー回転部が環状壁と該環状壁の外周面または内周面に径方向に突出して形成されたストッパを有し、
該ストッパが前記ミラー回転部の回転に伴い前記ストッパ移動溝を移動して、該ストッパ移動溝の端部に当接して係止される請求項6記載の手動格納式ドアミラー。
【請求項8】
請求項1または2記載の手動格納・電動格納共用ベースの1の個体を使用して請求項3から5のいずれか1つの手動格納式ドアミラーを製造し、請求項1または2記載の手動格納・電動格納共用ベースの別の1の個体を使用して請求項6または7記載の電動格納式ドアミラーを製造する手動格納式または電動格納式ドアミラーの選択的製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−121493(P2011−121493A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281435(P2009−281435)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000148689)株式会社村上開明堂 (185)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000148689)株式会社村上開明堂 (185)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]