説明

車両用ドアミラー装置

【課題】シャフトの下部外周壁とベース部材の凹所の内周壁との間の隙間内に、水が溜まるのを防止することのできる車両用ドアミラー装置を提供する。
【解決手段】車両のドア外壁面に固定され上面に凹所11Aを有するベース部材11と、凹所11Aに立設されたシャフト12と、シャフト12周りに回動自在に支持されドアミラー本体が設けられたミラーハウジング13とを備え、シャフト12の下部外周壁12Cと凹所11Aの内周壁11Bとの間に隙間S1が形成されている車両用ドアミラー装置であって、ベース部材11の凹所11Aの上面に、隙間S1に連通した溝35を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ドアミラー装置に係り、特に、ドアミラー本体を有するミラーハウジングをドア外壁面に取り付けるための取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用ドアミラー装置は、車両のドア外壁面に固定されたベース部材と、このベース部材に立設されたシャフトと、このシャフト周りに回動自在に支持されたミラーハウジングとを有しており、ミラーハウジングにドアミラー本体が取り付けられた構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9は、従来の車両用ドアミラー装置を示しており、ベース部材11、シャフト12及びミラーハウジング13が各々組み付けられた部分の断面図である。ベース部材11は、その一側(図の左側)が、図示していない車両のドア外壁面に固定され、また他側(図の右側)の上面には凹所11A(図6、図7等も参照)が形成されている。凹所11Aの内周壁11Bは円形を成し、その凹所11A内にシャフト12が立設されている。シャフト12は、下部が円筒状に形成され、その円筒状部分12Aの先端部12Bの外径(詳細には下部外周壁12Cの外径)は、凹所11Aの内周壁11Bの内径よりも小さく形成されている。このため、シャフト12を凹所11A内に立設したとき、シャフト12の下部外周壁12Cと凹所11Aの内周壁11Bとの間に隙間S1が形成されている。なお、図9において、Lはシャフト12の中心軸であり、凹所11Aの中心はシャフト12の中心軸Lに合致している。
【0004】
一方、ミラーハウジング13はシャフト12全体を覆うように配置され、シャフト12の中心軸L周りに回動自在に設けられている。また、ミラーハウジング13には、シャフト12が挿入される部分が略円筒状に形成され、その略円筒状部分13Aの下端面には突条14がシャフト12の下部外周壁12Cに沿って円状に設けられている。この突条14の内壁面14Aは、略円筒状部分13Aの下部内周壁13Bと面一に形成され、略円筒状部分13Aの上下方向の長さが増大されており、その結果、ミラーハウジング13が傾くのが防止されている。そして、通常時(つまり、ドアミラー装置の使用時)、突条14の先端部は、シャフト12の下部外周壁12Cと凹所11Aの内周壁11Bとの間の隙間S1内に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−78779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来技術では、図9に示すように、シャフト12の下部外周壁12Cと凹所11Aの内周壁11Bとの間の隙間S1内に、雨等によって水15が溜まるという問題がある。すなわち、ベース部材11の凹所11Aの上面とシャフト12の先端部12Bの端面12Dとの間の隙間S2は0.2mm位しかなく、隙間S1内には水15が溜まりやすい。隙間S1内に水15が溜まると、特に寒冷地においては、水15が凍結してミラーハウジング13の突条14を固定してしまい、ミラーハウジング13を回動させることが難しくなる。
【0007】
また、ミラーハウジング13を格納したときは、ミラーハウジング13は、図10に示すように、全体が矢印A方向(上方向)に位置しており、隙間S1内に溜まった水15が凍結すると、ミラーハウジング13を通常の位置(つまり、ドアミラー装置使用時の位置)に戻そうとしても、ミラーハウジング13は、その突条14が、凍結した水15(つまり氷)の表面を滑るだけで、下方の定位置に戻すことができなくなる。
【0008】
本発明の課題は、シャフトの下部外周壁とベース部材の凹所の内周壁との間の隙間内に、水が溜まるのを防止することのできる車両用ドアミラー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両のドア外壁面に固定され上面に凹所を有するベース部材と、前記凹所に立設されたシャフトと、該シャフト周りに回動自在に支持されドアミラー本体が設けられたミラーハウジングとを備え、前記シャフトの下部外周壁と前記凹所の内周壁との間に隙間が形成されている車両用ドアミラー装置であって、前記ベース部材の凹所の上面に、前記隙間に連通した溝を形成したことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、シャフトの下部外周壁と凹所の内周壁との間の隙間に水が溜まっても、その水は溝を介して外部へ排出されるので、水の凍結によってミラーハウジングが回動しなくなるといった不具合の発生を防ぐことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記溝は、前記凹所の直径方向に形成されているとともに、前記凹所の直径方向中央部に排出穴を有し、かつ前記溝は、前記凹所の内周壁側が高く前記排出穴側が低い傾斜溝であることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、前記隙間内の水を、溝を介して効率良く排出穴から外部へ排出することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記ミラーハウジングは、前記シャフトに支持された部分が円筒状に形成され、その円筒状部分の下端面に突条が設けられ、前記突条の先端部は、前記隙間内に位置していることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、ミラーハウジングの円筒状部分は、突条の長さ分だけ上下方向の長さが長くなって、ミラーハウジングが傾くのを防止することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記突条は、前記シャフトの下部外周壁に沿って円状に配置され、かつ前記ミラーハウジングの円筒状部分の内周壁と面一に設けられていることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、ミラーハウジングが傾くのをより効果的に防止することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記ベース部材の凹所には互いに大きさの異なる2つの凸部が形成され、前記シャフトの底面には互いに大きさの異なる2つの凹所が形成されて、前記シャフトを前記ベース部材の凹所に立設したとき、前記大きな凸部が前記大きな凹部に、前記小さな凸部が前記小さな凹部にそれぞれ嵌合することを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、ベース部材に対してシャフトを車幅方向左右逆に取り付けてしまうのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シャフトの下部外周壁とベース部材の凹所の内周壁との間の隙間内に、水が溜まるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る車両用ドアミラー装置が搭載された自動車の要部斜視図である。
【図2】本発明に係る車両用ドアミラー装置の概略構成図である。
【図3】図2のSC−SC線に沿った断面図である。
【図4】本発明に係る車両用ドアミラー装置のうち、ベース部材、シャフト及びミラーハウジングが各々組み付けられた部分の要部を断面で示した斜視図である。
【図5】ベース部材、シャフト及びミラーハウジングが各々組み付けられた部分の要部断面図である。
【図6】ベース部材の上面図である。
【図7】図6のSA−SA線に沿った断面図である。
【図8】図6のSB−SB線に沿った断面図である。
【図9】従来技術を示しており、ベース部材、シャフト及びミラーハウジングが各々組み付けられた部分の要部断面図である。
【図10】従来技術を示しており、ミラー格納時における、ベース部材、シャフト及びミラーハウジングが各々組み付けられた部分の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。なお、従来技術と同一の箇所には同一の符号を記すこととする。
【実施例】
【0022】
図1は、本発明に係る車両用ドアミラー装置が搭載された自動車の要部斜視図である。自動車20のフロントドア21のドア外壁面21Aには車両用ドアミラー装置10が設けられている。この車両用ドアミラー装置10は、ドア外壁面21Aに保持板22を介して固定されたベース部材11と、ベース部材11に立設されたシャフト12と、このシャフト12周りに回動自在に支持されドアミラー本体(図示省略)が取り付けられたミラーハウジング13とを有している。
【0023】
図2は本発明に係る車両用ドアミラー装置の概略構成図であり、また図3は図2のSC−SC線に沿った断面図である。図2に示すように、ベース部材11に立設されたシャフト12は、ミラーハウジング13のうち保持板22に近い側に設けられている。また、シャフト12には、図3に示すように、ミラーハウジング13の略円筒状部分13Aが回動自在に嵌合されている。シャフト12周辺の詳細な構成については後述する。
【0024】
図4は、車両用ドアミラー装置10のうち、ベース部材11、シャフト12及びミラーハウジング13が各々組み付けられた部分の要部を断面で示した斜視図である。図4に示すように、ベース部材11の上面には凹所11A(図6、図7及び図8も参照)が形成され、その凹所11Aの上面中央部にシャフト12が立設されている。
【0025】
シャフト12は中空に作られており、全体が上部よりも下部の方が大きい略テーパ状を成している。シャフト12の下部には、L字型に曲げられて拡径された段付き部23が形成され、この段付き部23よりも下方に円筒状部分12Aが設けられている。円筒状部分12Aの下部には外周面が拡径された段付き部24が形成され、この段付き部24の下方に先端部12Bが設けられている。また、シャフト12の円筒状部分12Aには、図5に示すように、段付き部24下方の先端部12Bの外周側に下部外周壁12Cが設けられ、この下部外周壁12Cと凹所11Aの内周壁11Bとの間に隙間S1が形成されている。なお、図5において、Lはシャフト12の中心軸であり、凹所11Aの中心はシャフト12の中心軸Lに合致している。
【0026】
一方、シャフト12の外側には、前述したように、ミラーハウジング13がシャフト12を覆うように設けられている。ミラーハウジング13はシャフト12周りに回動自在に支持され、このミラーハウジング13にはドアミラー本体(図示省略)が設けられている。ミラーハウジング13は、図4に示すように、シャフト12の周囲においては、シャフト12のテーパ状部分の周囲に位置し略円筒形状に形成された上部円筒状部分25と、シャフト12の円筒状部分12Aの周囲に位置する略円筒状部分13Aとを有し、上部円筒状部分25と略円筒状部分13Aとは段付き部26を介して繋がっている。また、略円筒状部分13Aの下端部は、ミラーハウジング13の底板27に繋がっている。
【0027】
ミラーハウジング13の略円筒状部分13Aには、シャフト12の段付き部24に合わせて、内周面が拡径された段付き部28が設けられ、この段付き部28の下方に下部内周壁13B(図5参照)が形成されている。そして、略円筒状部分13Aの下端面(詳細には、略円筒状部分13Aのうち段付き部28よりも下方の部分の下端面)に突条14が設けられ、この突条14の先端部は、シャフト12の下部外周壁12Cとベース部材11の凹所11Aの内周壁11Bとの間の隙間S1内に位置している。
【0028】
突条14は、シャフト12の下部外周壁12Cに沿って円状に設けられている。また、図5に示すように、突条14の内壁面14Aは、略円筒状部分13Aの下部内周壁13Bと面一に形成され、略円筒状部分13Aの上下方向の長さが増大されており、その結果、ミラーハウジング13が傾くのが防止されている。
【0029】
また、シャフト12には、図4に示すように、その略テーパ状を成した部分の外側にコイルスプリング29が設けられている。このコイルスプリング29は、その下端部がミラーハウジング13の上部筒状部分25上のワッシャ37に、上端部がプッシュナット30にそれぞれ当接している。プッシュナット30は、コイルスプリング29を圧縮した状態でシャフト12に固定されており、ミラーハウジング13全体は、コイルスプリング29によって矢印B方向(下方向)に付勢されている。
【0030】
図6はベース部材11の平面図、図7は図6のSA−SA線に沿った断面図、図8は図6のSB−SB線に沿った断面図である。
【0031】
ベース部材11には、図6に示すように、その上面に円形の凹所11Aが形成されている。凹所11Aには3箇所に支持穴31が形成され、これら支持穴31には、シャフト12の底面に形成された支持ピン32(図4参照)が各々嵌合される。これにより、シャフト12をベース部材11に強固に固定することができる。
【0032】
また、凹所11Aには、直方体形状の凸部33,34が設けられている。凸部33は凸部34よりもサイズが大きく設定されている。一方、シャフト12の底面には、凸部33,34に合致するそれぞれサイズの異なる凹部(図示省略)が形成されており、シャフト12を凹所11Aに立設する際、凸部33は大きなサイズの凹部に、凸部34は小さなサイズの凹部にそれぞれ嵌合するよう構成されている。このように構成することにより、シャフト12が左右逆向き(車幅方向逆向き)に立設されるのを防ぐことができる。
【0033】
本実施例では、ベース部材11の凹所11Aに、隙間S1に連通する溝35が形成されている。溝35は凹所11Aの直径方向に設けられ、また溝35の中央部には排出穴36が上下方向に設けられている。そして、溝35は、凹所11Aの内周壁11B側が高く、排出穴36側が低い傾斜溝となっている。
【0034】
次に、本実施例の作用について説明する。
【0035】
シャフト12の下部外周壁12Cとベース部材11の凹所11Aの内周壁11Bとの間の隙間S1内の水は溝35を介して排出穴36へ排出される。このとき、溝35は傾斜溝となっているので、水をスムーズに排出穴36へ導いて外部へ排出することができる。その結果、隙間S1内に水が溜まることがなく、水の凍結によってミラーハウジング13が回動しなくなるといった不具合の発生を防止することが可能となる。
【0036】
なお、図6において、円形の二点鎖線はシャフト12の下部外周壁12Cを示しており、この下部外周壁12Cと凹所11Aの内周壁11Bとの間の隙間S1内の水は、矢印Cのように溝35の上流側に集まり、さらに溝35内を矢印Dのように流れて排出穴36から外部へ排出される。
【0037】
また、ミラーハウジング13を格納した状態のときも、前記隙間S1に水が溜まることがないので、図10で説明したような、水の凍結によりミラーハウジング13が下方の定位置に戻すことができなくなるといった事態も生じない。なお、図10の場合、ミラーハウジング13は車両前方へ傾倒した状態となっている。
【0038】
以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、上記実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記実施例の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
10 車両用ドアミラー装置
11 ベース部材
11A 凹所
11B 内周壁
12 シャフト
12A 円筒状部分
12B 先端部
12C 下部外周壁
12D 端面
13 ミラーハウジング
13A 略円筒状部分
13B 下部内周壁
14 突条
14A 内周壁
35 溝
36 排出穴
S1 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドア外壁面に固定され上面に凹所を有するベース部材と、
前記凹所に立設されたシャフトと、
該シャフト周りに回動自在に支持されドアミラー本体が設けられたミラーハウジングとを備え、
前記シャフトの下部外周壁と前記凹所の内周壁との間に隙間が形成されている車両用ドアミラー装置であって、
前記ベース部材の凹所の上面に、前記隙間に連通した溝を形成したことを特徴とする車両用ドアミラー装置。
【請求項2】
前記溝は、前記凹所の直径方向に形成されているとともに、前記凹所の直径方向中央部に排出穴を有し、
かつ前記溝は、前記凹所の内周壁側が高く前記排出穴側が低い傾斜溝であることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアミラー装置。
【請求項3】
前記ミラーハウジングは、前記シャフトに支持された部分が円筒状に形成され、その円筒状部分の下端面に突条が設けられ、前記突条の先端部は、前記隙間内に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用ドアミラー装置。
【請求項4】
前記突条は、前記シャフトの下部外周壁に沿って円状に配置され、かつ前記ミラーハウジングの円筒状部分の内周壁と面一に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の車両用ドアミラー装置。
【請求項5】
前記ベース部材の凹所には互いに大きさの異なる2つの凸部が形成され、前記シャフトの底面には互いに大きさの異なる2つの凹所が形成されて、
前記シャフトを前記ベース部材の凹所に立設したとき、前記大きな凸部が前記大きな凹部に、前記小さな凸部が前記小さな凹部にそれぞれ嵌合することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用ドアミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−224246(P2012−224246A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94332(P2011−94332)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】