説明

車両用ドアロック装置

【課題】回転レバーの形状を簡素化するとともに、連結具と連結孔(回転レバー)との連結部でのガタツキを無くすこと。
【解決手段】車両用ドアロック装置は、操作ケーブルにおけるインナーワイヤ24bの端部に固着された連結具24dが連結される連結孔23bを有してハウジングに回転可能に組付けられる回転レバー23を備えている。連結孔23bが回転レバー23に形成した段部23cに設けられていて、連結具24dの先端部24d1が連結孔23bに挿通されて保持されている。連結具24dの先端部24d1には、段部23cの一側にある連結孔の一側内壁23b1に係合し回転レバーの一側面23dに係合する第1屈曲部24x1と、段部23cの他側にある連結孔の他側内壁23b2に係合し回転レバーの他側面23eに係合する第2屈曲部24x2が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアロック装置の一つとして、アウターチューブとインナーワイヤとを有する操作ケーブルと、前記アウターチューブの端部に組付けられるケーブルキャップの支持部を有するハウジングと、前記インナーワイヤの端部に固着された連結具が連結される連結孔を有して前記ハウジングに回転可能に組付けられる回転レバーを備えているものがあり、例えば、下記特許文献1に示されている。また、操作力を伝達するためのロッドと回転レバーを備えていて、ロッドの先端部がクランク状に形成され、この先端部が前記回転レバーに設けた連結孔(係合孔)に挿通されて保持されているものがあり、例えば、下記特許文献2に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−41829号公報
【特許文献2】実開昭61−59759号公報
【発明の概要】
【0004】
(発明が解決しようとする課題)
上記した特許文献1に記載されている車両用ドアロック装置においては、インナーワイヤの端部に固着された連結具が円柱状に形成されていて中間部外周にてインナーワイヤの端部に固着されており、回転レバーの先端部には折り返し部が形成されていて、この折り返し部に円柱状の連結具を組付けるためのスリット(インナーワイヤを挿通するためのもの)と連結孔(連結具の端部が固定される部位)が形成されている。このため、回転レバーの形状が簡素化できないものの、円柱状の連結具が連結孔に嵌合するように構成すれば、連結具と連結孔(回転レバー)との連結部でのガタツキ(連結孔の径方向でのガタツキ)を無くすことが可能である。
【0005】
一方、上記した特許文献2に記載されているロッドと回転レバーの結合構造では、回転レバーに折り返し部を設ける必要がないものの、回転レバーの板厚方向(連結孔の軸方向)にてロッドが移動しないようにするためのループ状弾性舌片が回転レバーに設けられていて、回転レバーの形状が簡素化できない。また、この結合構造では、ロッドの先端部がクランク状に形成されるとともに、連結孔が回転レバーの平板部位の形成されているため、連結孔に挿通されるロッドの先端部(クランク状に形成されている部位の中間部)と連結孔の内壁間に所望の隙間が必要であり、ロッドと連結孔(回転レバー)との連結部でのガタツキ(連結孔の径方向でのガタツキ)を無くすことはできない。
【0006】
(課題を解決するための手段)
本発明は、上記した課題を解決すべく(回転レバーの形状を簡素化するとともに、連結具と連結孔(回転レバー)との連結部でのガタツキを無くすべく)なされたものであり、アウターチューブとインナーワイヤとを有する操作ケーブルと、前記アウターチューブの端部に組付けられるケーブルキャップの支持部を有するハウジングと、前記インナーワイヤの端部に固着された連結具が連結される連結孔を有して前記ハウジングに回転可能に組付けられる回転レバーを備えている車両用ドアロック装置であって、前記連結孔が前記回転レバーに形成した段部に設けられていて、前記連結具の先端部が前記連結孔に挿通されて保持されており、前記先端部には、前記段部の一側にある前記連結孔の一側内壁に係合するとともに前記回転レバーの一側面に係合する第1屈曲部と、前記段部の他側にある前記連結孔の他側内壁に係合するとともに前記回転レバーの他側面に係合する第2屈曲部が設けられていることに特徴がある。
【0007】
この場合において、前記第2屈曲部はその前記連結孔の一側内壁側に位置する部位に、前記連結孔の一側内壁と当接して前記連結孔に対する前記先端部の組付けをガイドするように構成された曲面、又は、前記連結孔の一側内壁と干渉しないように構成された曲面を有することも可能である。これらの場合において、前記連結具の基端部に回り止め用の係合部(例えば、突起)が設けられるとともに、前記ケーブルキャップの先端部に前記係合部(例えば、突起)が嵌合可能な係止部(例えば、凹部)が設けられていることも可能である。
【0008】
(発明の作用効果)
本発明による車両用ドアロック装置においては、連結孔が回転レバーに形成した段部に設けられ、連結具の先端部には、前記段部の一側にある前記連結孔の一側内壁に係合するとともに前記回転レバーの一側面に係合する第1屈曲部と、前記段部の他側にある前記連結孔の他側内壁に係合するとともに前記回転レバーの他側面に係合する第2屈曲部が設けられている。この構成は、連結具における先端部の形状を適宜に設定するとともに、回転レバーにおける段部の板厚方向長さ(段差)を適宜に設定することにより、可能である。
【0009】
このため、本発明では、回転レバーには段部を設定することで実施できて、回転レバーの先端部に折り返し部を形成する場合(上記特許文献1の場合)や、回転レバーにループ状弾性舌片を設ける場合(上記特許文献2の場合)に比して、回転レバーの形状を簡素化することが可能である。また、本発明では、連結具の先端部に、上記した第1屈曲部と第2屈曲部が設けられているため、連結具と連結孔(回転レバー)との連結部でのガタツキ(連結孔の径方向でのガタツキと連結孔の軸方向でのガタツキ)を無くすことが可能であり、ガタによる不具合(異音発生、操作ケーブルの作動不良)を防止することが可能である。また、本発明では、アウターチューブとインナーワイヤとを有する操作ケーブルが採用されているため、配索の自由度が大きくて、操作ケーブルを容易に配置することが可能である。
【0010】
また、本発明の実施に際して、前記第2屈曲部が、その前記連結孔の一側内壁側に位置する部位に、前記連結孔の一側内壁と当接して前記連結孔に対する前記先端部の組付けをガイドするように構成された曲面、又は、前記連結孔の一側内壁と干渉しないように構成された曲面を有する場合には、前記連結孔に対して前記先端部を組付ける際の組付け性が向上する。また、本発明の実施に際して、前記連結具の基端部に回り止め用の係合部(例えば、突起)が設けられるとともに、前記ケーブルキャップの先端部に前記係合部(例えば、突起)が嵌合可能な係止部(例えば、凹部)が設けられている場合には、連結具の連結孔(回転レバー)への組付に際して、回り止め用の係合部を係止部に嵌合することで、アウターチューブとインナーワイヤの相対回転を規制できて、連結具の連結孔(回転レバー)への組付性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による車両用ドアロック装置の一実施形態を車両内側からみた側面図である。
【図2】図1に示した車両用ドアロック装置の樹脂カバーを開いた状態の側面図である。
【図3】図2に示した回転レバー単体の側面図である。
【図4】図3のA−A線に沿った拡大断面図である。
【図5】図4に実線で示した回転レバーの連結孔に図4に仮想線で示した連結具が組付けられるときの工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1および図2は本発明による車両用ドアロック装置100を示していて、この車両用ドアロック装置100は、車両の前方右側に装備されるドア(図示省略)に装着されるものであり、ラッチ機構10とロック機構20を備えている。この車両用ドアロック装置100では、ロック機構20の樹脂ハウジング21に対してラッチ機構10の樹脂ボディ11が固定されることで、ラッチ機構10がロック機構20に組付けられるように構成されている。
【0013】
ラッチ機構10は、周知のように、車両のドアをボディ(図示省略の車体)に対して閉状態(ドアが閉じられた状態)で保持するためのもので、上記した樹脂ボディ11を備えるとともに、車体に固定されたストライカ(図示省略)と係脱可能なラッチ12を備えている。ロック機構20は、上記した樹脂ハウジング21を備えるとともに、樹脂ハウジング21に開閉可能に組付けた樹脂カバー22と、樹脂ハウジング21に支持孔23a(図3参照)にて回転可能に組付けられる回転レバー(インサイドオープンレバー)23と、アウターチューブ24aとインナーワイヤ24bとを有する操作ケーブル24を備えている。
【0014】
この実施形態において、ラッチ機構10の内部構成(樹脂ボディ11内の内部構成)は、特願2010−251512の車両用ドアロック装置におけるラッチ機構の内部構成と実質的に同じであり、また、ロック機構20の内部構成(樹脂ハウジング21内の内部構成)は、特願2010−251512の車両用ドアロック装置におけるロック機構の内部構成と実質的に同じである。
【0015】
また、この実施形態においては、アウターチューブ24aの端部に筒状のケーブルキャップ24cが一体的に組付けられていて、このケーブルキャップ24cは樹脂ハウジング21の支持部21aに長手方向にて移動不能に組付けられている。一方、インナーワイヤ24bの端部には連結具24dが一体的に固着されていて、この連結具24dは回転レバー23に設けた連結孔23b(図3〜図5参照)に連結されている。
【0016】
ところで、この実施形態においては、図4および図5に示したように、連結具24dの先端部24d1がクランク状に形成され、図3に示したように、連結孔23bが回転レバー23に形成した段部23cに重なるように設けられていて、連結具24dの先端部24d1が連結孔23bに挿通されて保持されている。回転レバー23に形成した段部23cは、図3に示したように、L字状に設けられていて、連結孔23bが設けられている部位では、支持孔23aの中心と連結孔23bの中心を結ぶ直線に沿って直線状に形成されている。
【0017】
また、連結具24dの先端部24d1には、段部23cの一側(図4の左側)にある連結孔23bの一側内壁23b1に係合するとともに回転レバー23の一側面(図4の上側面)23dに係合する第1屈曲部24x1と、段部23cの他側(図4の右側)にある連結孔23bの他側内壁23b2に係合するとともに回転レバー23の他側面(図4の下側面)23eに係合する第2屈曲部24x2が設けられている。また、この実施形態では、図4および図5に示したように、連結具24dの連結孔(回転レバー)23bへの組付に際して、連結具24dの先端部24d1が連結孔23bの一側内壁23b1と当接して連結孔23bに対する先端部24d1の組付けがガイドされるように(または、先端部24d1が連結孔23bの一側内壁23b1に干渉しないように)、先端部24d1の一部24y(連結孔23bに挿通される部位)が円弧形状(曲面)に形成されている。この一部(曲面)24yは、第2屈曲部24x2における連結孔23bの一側内壁23b1側に位置する部位に設けられている。
【0018】
また、この実施形態においては、図2に示したように、連結具24dの基端部に回り止め用の突起(係合部)24d2が設けられるとともに、ケーブルキャップ24cの先端部内周に前記突起(係合部)24d2が嵌合可能な凹部(係止部)24c1が設けられている。また、樹脂ハウジング21に規制突起21bが設けられていて、樹脂ハウジング21の開口が樹脂カバー22によって閉じられるまでは、規制突起21bによって回転レバー23が支持孔23a周りの回転を規制されるように構成されている。なお、規制突起21bは、樹脂ハウジング21の開口が樹脂カバー22によって閉じられるとき、樹脂カバー22に設けた押動突起22aによって折損されるように構成されている。
【0019】
上記のように構成したこの実施形態の車両用ドアロック装置100においては、回転レバー23の連結孔23bが回転レバー23に形成した段部23cに設けられ、連結具24dの先端部24d1には、上記した第1屈曲部24x1と、上記した第2屈曲部24x2が設けられている。この構成は、連結具24dにおける先端部24d1の形状を適宜に設定するとともに、回転レバー23における段部23cの板厚方向長さ(段差)を適宜に設定することにより、可能である。
【0020】
このため、この実施形態では、回転レバー23には段部23cを設定することで実施できて、回転レバーの先端部に折り返し部を形成する場合(上記特許文献1の場合)や、回転レバーにループ状弾性舌片を設ける場合(上記特許文献2の場合)に比して、回転レバー23の形状を簡素化することが可能である。また、この実施形態では、連結具24dの先端部24d1に、上記した第1屈曲部24x1と第2屈曲部24x2が設けられているため、連結具24dと連結孔(回転レバー)23bとの連結部でのガタツキ(連結孔23bの径方向(図4の左右方向)でのガタツキと連結孔23bの軸方向(図4の上下方向)でのガタツキ)を無くすことが可能であり、ガタによる不具合(異音発生、操作ケーブル24の作動不良)を防止することが可能である。また、この実施形態では、アウターチューブ24aとインナーワイヤ24bとを有する操作ケーブル24が採用されているため、配索の自由度が大きくて、操作ケーブル24を容易に配置することが可能である。
【0021】
また、この実施形態では、連結具24dの第2屈曲部24x2が、その連結孔23bの一側内壁23b1側に位置する部位に、上記した曲面24yを有しているため、連結孔23bに対して連結具24dの先端部24d1を組付ける際の組付け性が向上する。また、この実施形態では、連結具24dの基端部に回り止め用の突起24d2が設けられるとともに、ケーブルキャップ24cの先端部に突起24d2が嵌合可能な凹部24c1が設けられている。このため、連結具24dの連結孔(回転レバー)23bへの組付に際して、回り止め用の突起24d2を凹部24c1に嵌合することで、アウターチューブ24aとインナーワイヤ24bの相対回転を規制できて、連結具24dの連結孔(回転レバー)23bへの組付性を向上させることが可能である。なお、連結具24dの連結孔(回転レバー)23bへの組付は、図5の(a)の状態から(b)の状態を経て(c)の状態とすることにより行われている。
【0022】
上記実施形態においては、連結具24dの基端部に回り止め用の突起(係合部)24d2が設けられるとともに、ケーブルキャップ24cの先端部内周に前記突起(係合部)24d2が嵌合可能な凹部(係止部)24c1が設けられているが、連結具(24d)の基端部に回り止め用の凹部(係合部)が設けられるとともに、ケーブルキャップ(24c)の先端部に前記凹部(係合部)が嵌合可能な突起(係止部)が設けられるようにして実施することも可能である。
【0023】
また、上記実施形態においては、回転レバー23に形成した段部23cが支持孔23aの近傍にまで延びるように設けて実施したが、この段部23cは連結孔23bと重なる程度の大きさであればよく、上記実施形態に比して短く設けて実施することも可能である。また、上記した段部23cは連結孔23bと重なる程度の大きさであればよいため、支持孔(23a)が形成されている部位に対して、連結孔(23b)が形成されている部位が折れ曲がるように、回転レバー(23)がL字状に形成されている場合には、連結孔(23b)が形成されている部位(折れ曲がる部位)のみに段部(23c)を設けて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0024】
100…車両用ドアロック装置、10…ラッチ機構、11…樹脂ボディ、12…ラッチ、20…ロック機構、21…樹脂ハウジング、21a…支持部、21b…規制突起、22…樹脂カバー、22a…押動突起、23…回転レバー、23a…支持孔、23b…連結孔、23b1…連結孔の一側内壁、23b2…連結孔の他側内壁、23c…段部、23d…回転レバーの一側面、23e…回転レバーの他側面、24…操作ケーブル、24a…アウターチューブ、24b…インナーワイヤ、24c…ケーブルキャップ、24c1…ケーブルキャップに設けた凹部(係止部)、24d…連結具、24d1…連結具の先端部、24x1…連結具の第1屈曲部、24x2…連結具の第2屈曲部、24d2…連結具の基端部に設けた回り止め用の突起(係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターチューブとインナーワイヤとを有する操作ケーブルと、
前記アウターチューブの端部に組付けられるケーブルキャップの支持部を有するハウジングと、
前記インナーワイヤの端部に固着された連結具が連結される連結孔を有して前記ハウジングに回転可能に組付けられる回転レバーを備えている車両用ドアロック装置であって、
前記連結孔が前記回転レバーに形成した段部に設けられていて、前記連結具の先端部が前記連結孔に挿通されて保持されており、前記先端部には、前記段部の一側にある前記連結孔の一側内壁に係合するとともに前記回転レバーの一側面に係合する第1屈曲部と、前記段部の他側にある前記連結孔の他側内壁に係合するとともに前記回転レバーの他側面に係合する第2屈曲部が設けられている車両用ドアロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドアロック装置において、
前記第2屈曲部はその前記連結孔の一側内壁側に位置する部位に、前記連結孔の一側内壁と当接して前記連結孔に対する前記先端部の組付けをガイドするように構成された曲面、又は、前記連結孔の一側内壁と干渉しないように構成された曲面を有する車両用ドアロック装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用ドアロック装置において、
前記連結具の基端部に回り止め用の係合部が設けられるとともに、前記ケーブルキャップの先端部に前記係合部が嵌合可能な係止部が設けられている車両用ドアロック装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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