説明

車両用ドア開閉装置

【課題】車載カメラを用いずにユーザのジェスチャーを非接触で検出することによって車両ドアを開閉駆動するための低コストでかつ操作性の良い車両用ドア開閉装置を提供する。
【解決手段】本発明の車両用ドア開閉装置は、車両ボデーに移動可能に支持された車両ドアと、車両ドアを開閉駆動するドア駆動手段と、車両外面に配置されたセンサユニットを有しセンサユニットから所定範囲内にある人体の動きを非接触検出して検出結果に応じた検出信号を出力するセンサ手段と、検出信号に基づいて人体の動きを特定し、特定された人体の動きに基づいて車両ドアの移動動作を決定し、決定に従ってドア駆動手段を制御する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ドア開閉装置に関し、より具体的には、ユーザの身体の動きを非接触で検出して車両ドアを開閉駆動する車両用ドア開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のユーザが車両ドアにユーザ自身の力を直接作用させずに車両ドアを開閉する装置が知られている。例えば、特許文献1は、ドア近傍の物体を検知するセンサ部からの信号と車載カメラで撮影されるユーザの手の動きに基づいてドア開閉を制御するドア制御装置を開示している。
【0003】
特許文献2は、車載カメラによってユーザの画像を取得し、ユーザの手が荷物等で塞がっていると判断した場合でかつユーザの所持する携帯機と車両側との相互通信によるユーザ照合が一致した場合にドアを解錠及び開放するドア制御装置を開示している。
【0004】
また、特許文献3は、スライド式ドアのハンドル内に挿入されたユーザの指先の動きを超音波で検出して、その指先の動きに基づいてドア開閉を制御する車両ドア開閉機構を開示している。
【0005】
さらに、特許文献4は、スライドドアのドアハンドルに沿って設けられた複数の静電容量センサに接触したユーザの指先の動きに基づいて、ドアの開閉方向及び開閉速度を設定して車両ドアを制御する車両用ドア開閉制御装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−13824号公報
【特許文献2】特開2006−274677号公報
【特許文献3】特開2010−7307号公報
【特許文献4】特開2009−79353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のドア制御装置では、ユーザの手の動きを撮影するための車載カメラを設置する必要があり、また、撮影された映像を画像解析するための手段が必要となり、装置を設置するコストが高くなるという問題がある。また、車載カメラの設置位置に自由度がないため、ドア開閉動作におけるユーザの一連の動線が複雑になり、使い勝手が悪いという問題がある。例えば、車両に戻ってきたユーザが車両ドアを開いて車両に乗る場合、ユーザは、ドア付近の車載カメラに近づき、車載カメラに自身の手の動きを撮影させ、開放されるドアの軌跡から自身が離れるように移動し、再度車両に近づいて乗り込むことになる。また、ユーザが車両から降りてドアを閉じる場合、ユーザは、車両から降り、開放状態のドアをよけてから車載カメラの撮影範囲まで移動し、車載カメラに自身の手の動きを撮影させてドアを閉じることになる。いずれの場合でも、ユーザは車載カメラとドア双方の位置や動きを意識して動かなければならず、その動線がスムーズではない。
【0008】
また、特許文献2のドア制御装置も、特許文献1と同様に車載カメラを用いるため、装置導入のコストが高くなるという問題がある。また、ユーザのドア操作の意思とは無関係にユーザの状態及びユーザ照合に基づいてドア解錠又は開放動作が行われるので、ユーザの意図に反してドアが解錠又は開放してしまう可能性がある。そのため、ユーザは無用なドア解錠又は開放を回避するように注意を払わなければならない。
【0009】
また、特許文献3の車両ドア開閉機構及び特許文献4の車両ドア開閉制御装置によると、ユーザがドア開閉の意思を車両側に伝達するためには、ユーザが開閉対象のドアハンドルに直接接触する必要がある。そして、ドアハンドルという限られた構造中に各種センサを配置したうえで、各センサに対する指先の動作をドア開閉の意思に対応付ける必要があった。しかし、その対応付けが必ずしも直感的なものとはならず、そのような車両ドアを使い慣れないユーザにとっては扱いが難しいものとなってしまう問題がある。特に、このような車両ドアを使い慣れないユーザは、ドアハンドルに接触してから各センサが反応してドアが動き出すまでのタイムラグに、そのドアの開閉方向に不要に大きな力を加えてしまう可能性さえある。またさらに、開く途中又は閉じる途中のドアを停止又は逆転する場合に、ユーザは、手放しかけた又は手放してしまったドアハンドルのセンサ部分に再度触れるために、移動中のドアハンドルを追いかけ、追いついた後に上述した指先の細かい動作を行う必要があり、とっさの操作が難しいという問題があった。
【0010】
上記をまとめると、本発明の課題は、車載カメラを用いずにユーザの身体の動き(ジェスチャー)を非接触で検出することによって車両ドアを開閉駆動するための低コストでかつ操作性の良い車両用ドア開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車両用ドア開閉装置は、車両ボデーに移動可能に支持された車両ドアと、車両ドアを開閉駆動するドア駆動手段と、車両外面に配置されたセンサユニットを有しセンサユニットから所定範囲内にある人体の動きを非接触検出して検出結果に応じた検出信号を出力するセンサ手段と、検出信号に基づいて人体の動きを特定し、特定された人体の動きに基づいて車両ドアの移動動作を決定し、決定に従ってドア駆動手段を制御する制御手段とを備えた車両用ドア開閉装置である。
上記のように、車両外面に配置したセンサユニットによってユーザの動きを非接触検出して車両ドアを動作させる構成としたので、車両用ドア開閉装置を低コストで導入容易な構成とすることができる。
【0012】
ここで、センサ手段が人体の手の振り方向を検出し、制御手段が手の振り方向に対応して車両ドアの開閉動作を決定する構成とした。
上記構成によると、さらに、車両ドアの動作をユーザの直感的操作に対応付けることができ、ユーザの利便性が高まる。
【0013】
また、センサユニットを、操作対象となる車両ドアの間口近傍で、かつ操作対象となる車両ドアの移動経路外に配置することがより好ましい。
また、センサユニットを、操作対象となる車両ドア以外の部分に配置することがより好ましい。
例えば、車両側面がフロントドア及びリアドアを備え、リアドアがスライド式ドアである場合に、センサユニットを少なくともフロントドアの外面に配置すればよい。
上記の位置にセンサユニットを配置することにより、ユーザの乗車又は降車時のスムーズな動線を確保することができる。
【0014】
さらに、センサユニットは、所定範囲内の人体の有無を検出する接近センサ及び人体の手の振り方向を検出するモーションセンサからなり、制御手段が、接近センサ部が人体有りを検出した後、検出された前記手の振り方向に従って車両ドアの移動方向を決定するように構成され、少なくともモーションセンサを赤外線センサとすることができる。
ここで、制御手段が、接近センサ部が人体有りを検出するまではモーションセンサをオフ状態とするように構成してもよい。
センサユニットを赤外線センサによって構成することにより、低コストで導入容易な車両用ドア開閉装置とすることができるとともに、車両ドアにおける空気抵抗の低減及びデザイン性の向上を達成できる。また、各センサを適切なタイミングで動作させることによって車両用ドア開閉装置の消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】本発明の第1の実施例による車両用ドア開閉装置が搭載された車両を示す図である。
【図1B】本発明の第1の実施例による車両用ドア開閉装置を説明する図である。
【図2】本発明の第1の実施例による車両用ドア開閉装置の構成を示すブロック図である。
【図3A】本発明で用いるセンサユニットの一例を示す図である。
【図3B】本発明で用いるセンサユニットの他の例を示す図である。
【図4A】本発明の第1の実施例による車両用ドア開閉装置の動作を示すフローチャートである。
【図4B】本発明の第1の実施例による車両用ドア開閉装置の動作を示す他のフローチャートである。
【図5】本発明の第2乃至第5の実施例による車両用ドア開閉装置が搭載された車両を示す図である。
【図6】本発明の第6の実施例による車両用ドア開閉装置が搭載された車両を示す図である。
【図7】本発明の第7の実施例による車両用ドア開閉装置が搭載された車両を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施例1.
[車両用ドア開閉装置の概略構成]
図1Aは、本発明の第1の実施例による車両用ドア開閉装置が搭載された車両1の左側面を示す図である。車両1はボデー10、フロントドア20及びリアドア22を備える。リアドア22はスライド式ドアであり、不図示のドア駆動機構によって図の左右方向にスライド開閉駆動される。フロントドア20の外面には、車両外側に向けて配置されたセンサユニット21が装備される。センサユニット21は、フロントドア20のドアハンドルがある場合には、そのドアハンドルよりも上側(ウインドウ側)にあってもよいし、下側(地面側)にあってもよいし、ドアハンドルを囲むように配置されていてもよい。なお、以降の各実施例では、車両の左側面又は後部のみについて説明するが、車両右側にも同様に本発明を適用できる。
【0017】
車両1の基本的なドア開閉操作として、リアドア22が閉じた状態でユーザがセンサユニット21の前で手を左から右方向(車両後方に向けて)に振ると、リアドア22は右方向にスライドして開く(図1B、矢印参照)。また、リアドア22が開いた状態でユーザがセンサユニット21の前で手を右から左方向(車両前方に向けて)に振ると、リアドア22は左方向にスライドして閉じる(図1B、矢印参照)。また、リアドア22が開いていく途中でユーザがセンサユニット21の前で手を左方向に振ると、リアドア22は開動作を停止し、あるいは、閉動作に転じて左方向にスライドする。さらに、リアドア22が閉じていく途中でユーザがセンサユニット21の前で手を右方向に振ると、リアドア22は閉動作を停止し、あるいは、開動作に転じて右方向にスライドする。このような動作を実現するための構成を以下に説明する。
【0018】
[車両用ドア開閉装置の制御構成]
図2に、第1の実施例による車両用ドア開閉装置2のブロック図を示す。車両用ドア開閉装置2は、センサ手段30、制御手段40、ドア駆動手段50及び車両ドア55(本実施例ではリアドア22)を備える。センサ手段30は、センサユニット21から所定範囲内にある人体(以下、「ユーザ」という)の動きを非接触検出して検出結果に応じた検出信号を出力する。制御手段40は、検出信号に基づいてユーザの身体、特に、手の動き(即ち、ジェスチャー)を特定し、特定されたユーザの動きに基づいて車両ドア55の移動動作を決定し、その決定に従ってドア駆動手段50を制御する。ドア駆動手段50は制御手段40からの制御信号に従って車両ドア55を開閉駆動する。
【0019】
センサ手段30は、所定範囲内のユーザの有無に応じた信号を出力する接近センサ31及びユーザのジェスチャーに応じた信号を出力するモーションセンサ32からなる。接近センサ31及びモーションセンサ32には、例えば、アクティブ型(量子型、反射型)赤外線センサ、パッシブ型(熱型、焦電型)赤外線センサ、超音波センサ、マイクロ波センサ等を用いることができる。接近センサ31は少なくとも1つのセンサ素子からなり、モーションセンサ32は2以上のセンサ素子からなる。また、接近センサ31とモーションセンサ32はそれぞれ異なる種類のセンサで構成してもよいし、双方を同種類のセンサで構成してもよい。両センサを同種類のセンサで構成する場合、モーションセンサ32の素子の一部又は全部が接近センサ31を兼ねるようにしてもよい。また、両センサを同種類のセンサで構成し、接近センサ31とモーションセンサ32とで感度を異ならせてもよい。
【0020】
図3Aにセンサユニット21の一例を示す。センサユニット21は接近センサ素子211並びに複数のモーションセンサ素子212a及び212b(これらをまとめて「モーションセンサ素子212」という)からなる。センサユニット21において、モーションセンサ素子212がユーザの横方向への手の振りを検出及び認識する必要があるので、少なくともモーションセンサ素子212は横方向に配列される。例えば、接近センサ素子211には、熱量の小さい小動物等の検出を回避しつつ人体のみを検出し易いパッシブ型赤外線センサ素子を用い、モーションセンサ素子212には、反応速度の高いアクティブ型赤外線センサ素子を用いることができる。また、接近センサ素子211又はモーションセンサ素子212として、温度条件の影響を受け難い超音波センサ又はマイクロ波センサを用いてもよい。
【0021】
モーションセンサ素子212について、対象物がモーションセンサ素子212aの検知範囲内で検出された後に、対象物がモーションセンサ素子212bの検知範囲内で検出されるとともにモーションセンサ素子212aで検出されなくなった場合は、ユーザの左から右への手の振りが検出されることになる。また逆に、対象物がモーションセンサ素子212bの検知範囲内で検出された後に、対象物がモーションセンサ素子212aの検知範囲内で検出されるとともにモーションセンサ素子212bで検出されなくなった場合は、ユーザの右から左への手の振りが検出されることになる。
【0022】
図3Bにセンサユニット21の他の例を示す。この例では、マトリクス状に配列されたセンサ素子全てがアクティブ型赤外線センサ素子からなり、そのうちの一部が接近センサ素子213となり、その他がモーションセンサ素子214となる。このように、モーションセンサ素子214を多数の画素で構成することにより、ユーザのジェスチャーの認識精度を向上することができる。
【0023】
モーションセンサ素子214について、所定の大きさの対象物(反射物)が、マトリクスの左端付近のモーションセンサ素子の検知範囲内で検出され、右方向に隣接するモーションセンサ素子の検知範囲内で順次検出されていき、右端付近のモーションセンサ素子を最後に対象物が検出されなくなった場合、ユーザの左から右への手の振りが検出されることになる。また逆方向も同様である。このように、モーションセンサ素子214を多数配列したことにより、ユーザの手の動きとそれ以外の反射物の動きを識別することができる。例えば、ユーザが接近センサ213によって検出された後に、ユーザが手を振ることなくセンサユニット21の前面を横切った場合等には、反射物が上記所定の大きさよりも大きいとしてジェスチャー非検出とすることができる。また、ユーザが接近センサ213によって検出された後に、ユーザの荷物の一部(小さな部分)がセンサユニット21の前面を横切った場合等には、反射物が上記所定の大きさよりも小さいとしてジェスチャー非検出とすることができる。
【0024】
なお、図3A及び3Bのセンサユニット21は例示であり、当業者であれば、センサ素子の数、種類、配置、配列、指向性等は図示したものに限られないことが分かるはずである。また、接近センサ素子又はモーションセンサ素子において、複数の種類のセンサ素子を適宜組み合わせて、対応する複数の検出結果の論理積をとる等して検出精度を高めるようにしてもよい。
【0025】
また、接近センサ素子211又は213がユーザを検出していない間は、後述する制御手段40によって、モーションセンサ素子212又は214をオフ状態として消費電力を低減するようにしてもよい。例えば、モーションセンサ素子212又は214にアクティブ型センサ素子を用いる場合には、接近センサ素子211又は213がユーザを検出するまでは、モーションセンサ素子212又は214の赤外線出力を停止するようにすればよい。
【0026】
制御手段40は、接近判定部41、ジェスチャー認識部42及びドア動作決定部43を備える。
接近判定部41は、接近センサ31からの信号に基づいて所定範囲内にユーザが存在するか否かを判断し、ユーザが存在する場合にはユーザ有り信号をドア動作決定部43に出力し、それ以外の場合には何も出力しない(ユーザ無し信号を出力してもよい)。
ジェスチャー認識部42は、モーションセンサ32からの信号に基づいてユーザのジェスチャーを認識し、認識されたジェスチャーが所定のパターンに一致するか否かを判断する。ここで、所定のパターンとは、上述した、手を左又は右に振る動作に対応するパターンである。従って、ジェスチャー認識部42は、入力された信号パターンが、ユーザが手を右に振っている場合のパターンに一致する場合には開ジェスチャー信号を、ユーザが手を左に振っている場合のパターンに一致する場合には閉ジェスチャー信号をドア動作決定部43に出力し、どちらでもない場合には何も出力しない(ジェスチャー無し信号を出力してもよい)。
【0027】
ドア動作決定部43は、接近判定部41からの信号が無い場合(又はユーザ無し信号の場合)には、ジェスチャー認識部42の出力状態にかかわらず、ドア駆動手段50に指示を行わない。ドア動作決定部43は、接近判定部41からの信号がユーザ有り信号の場合で、かつジェスチャー認識部42からの信号が無い場合(又はジェスチャー無し信号の場合)にも、ドア駆動手段50に何も指示しない。ドア動作決定部43は、接近判定部41からの信号がユーザ有り信号の場合で、かつジェスチャー認識部42からの信号が開ジェスチャー信号の場合には、ドア駆動手段50に開動作信号を出力する。ドア動作決定部43は、接近判定部41からの信号がユーザ有り信号の場合で、かつジェスチャー認識部42からの信号が閉ジェスチャー信号の場合には、ドア駆動手段50に閉動作信号を出力する。
【0028】
また、前述したように、制御手段40は、接近判定部41からの信号が無い場合(又はユーザ無し信号の場合)には、モーションセンサ32及びジェスチャー認識部42を非動作状態(通電オフ状態)として、待機電力を削減する構成としてもよい。
【0029】
ドア駆動手段50はドア動作決定部43からの動作信号に従って、車両ドア55を駆動する。即ち、ドア駆動手段50は、車両ドア55の閉状態において開動作信号を受けた場合には、車両ドア55を開動作させる。このとき車両ドア55がロック状態である場合には開動作の前にロック解除の処理が含まれる。ドア駆動手段50は、車両ドア55の開状態においてドア駆動手段50が閉動作信号を受けた場合には、車両ドア55を閉動作させる。なお、車両ドア55の閉動作にロック施錠動作を含めてもよい。また、既に車両ドア55が開放されている状態で開動作信号を受信した場合、又は既に車両ドア55が閉じている状態で閉動作信号を受けた場合には、ドア駆動手段50から車両ドア55への動作は実質的に何も行われない。ドア駆動手段50には周知のドア開閉駆動機構を用いればよい。なお、本実施例は車両ドア55(リアドア22)としてスライド式ドアを用いるので、スライド式ドアのドア開閉駆動機構が搭載されるが、後述する他の実施例における他の方式のドアには、各ドアに適したドア開閉行動機構が搭載されるものとする。
【0030】
ここで、車両ドア55の移動中に、ユーザがその移動方向と逆の移動を示すジェスチャーを行った場合、即ち、そのドア移動の停止又は逆転を意図した場合、ドア動作決定部43は、ドア駆動手段50による車両ドア55の開動作中又は閉動作中にジェスチャー認識部42から閉ジェスチャー信号又は開ジェスチャー信号(以下、「逆動作信号」という)を受けることになる。ドア動作決定部43は、逆動作信号を受けた場合には、そのまま逆動作信号をドア駆動手段50に出力して車両ドア55の移動を逆転してもよいし、現在行われているドア移動を一時停止し、次の開ジェスチャー信号又は閉ジェスチャー信号を待つようにしてもよい。車両ドア55が開動作中又は閉動作中であるかは、ドア動作決定部43において、ドア駆動手段50からその動作を示す信号をフィードバックして判断するようにしてもよいし、制御手段40内にタイマー(不図示)を設けて、ドア動作決定部43から開動作信号又は閉動作信号を出力してから所定時間内であることによって判断するようにしてもよい。
【0031】
なお、図2においては、各ブロックを有線で接続するものを図示しているが、無線通信によって接続する構成としてもよい。
【0032】
[車両用ドア開閉装置の制御方法]
次に、車両用ドア開閉装置2の動作を説明する。図4Aは車両用ドア開閉装置2の制御方法を示す基本フローチャートである。なお、このフローチャートの開始の時点で、既にユーザは停車中の車両に自由に乗り降りする権限を有しているものとする。
ステップS01において、制御手段40が、センサ手段30の接近センサ31からの信号に基づいてユーザがセンサユニット21から所定範囲内に存在するか否かを判断する。処理は、Yesの場合にはステップS02に進み、Noの場合にはステップS01で待機する。
ステップS02において、制御手段40でタイマT=Tにセットされる。このタイマは接近センサ31がユーザを検知してからユーザが手を振る動作を開始するまでの時間を待つためのものであり、数秒〜数十秒に設定される。
【0033】
ステップS03において、制御手段40が、センサ手段30のモーションセンサ32からの信号に基づいて、ユーザが手を車両後方に向けて振る動作を行っているか否かを判断する。処理は、Yesの場合にはステップS04に進み、Noの場合にはステップS06に進む。
ステップS04において、制御手段40はドア駆動手段50に開動作信号を出力し、ステップS05において、ドア駆動手段50が車両ドア55を開動作させ、処理が終了する。なお、車両ドア55が既に開放されている場合には、結果的にドア駆動手段50は車両ドア55を動作させないことになる。
【0034】
ステップS06において、制御手段40が、センサ手段30のモーションセンサ32からの信号に基づいて、ユーザが手を車両前方に向けて振る動作を行っているか否かを判断する。処理は、Yesの場合にはステップS07に進み、Noの場合にはステップS09に進む。
ステップS07において、制御手段40はドア駆動手段50に閉動作信号を出力し、ステップS08において、ドア駆動手段50が車両ドア55を閉動作させ、処理が終了する。なお、車両ドア55が既に閉じている場合には、結果的にドア駆動手段50は車両ドア55を動作させないことになる。
【0035】
ステップS09及びS10においてタイマがカウントされ、処理は、タイマが時間切れとなった場合は終了し、それ以外の場合はステップS03に戻る。
【0036】
なお、逆動作信号を受けた場合にドアを一時停止することなく逆転動作する制御を含める場合も、図4Aのフローチャートを用いることができる。なお、車両用ドア開閉装置2の動作が有効の間は、処理はエンドの直後にスタートに戻るものとする。
【0037】
図4Bは、図4Aのフローチャートにおいて、上述した逆動作信号における一時停止動作がさらに関係する場合の制御方法のフローチャートである。図4Bにおいて、ステップS01からS10までは図4Aのフローチャートと同様である。
ステップS11において、制御手段40は車両ドア55の開動作が完了したか否かを判断する。処理は、Yesの場合には終了し、Noの場合にはステップS12に進む。
ステップS12において、制御手段40は、ユーザが車両前方に向けて手を振ったか否か(逆動作信号を受けたか否か)を判断する。処理は、Yesの場合にはステップS15に進み、Noの場合にはステップS05に戻る。
ステップS13においてもステップS11と同様に、制御手段40は車両ドア55の閉動作が完了したか否かを判断する。処理は、Yesの場合には終了し、Noの場合にはステップS14に進む。
ステップS14において、制御手段40、ユーザが車両後方に向けて手を振ったか否か(逆動作信号を受けたか否か)を判断する。処理は、Yesの場合にはステップS15に進み、Noの場合にはステップS08に戻る。
ステップS15において、制御手段40はドア駆動手段50に一時停止信号を出力し、車両ドア55の移動動作を一時停止させ、処理はステップS02に戻り、ユーザの次のジェスチャーを待つ。
【0038】
なお、本発明は、図2のブロック図に示した車両用ドア開閉装置において図4A又は4Bの制御方法をコンピュータ(CPU)に実行させるためのプログラム、及び当該プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体も含む。
【0039】
上述した第1の実施例の車両用ドア開閉装置は以下の種々の有利な効果を奏する。
(1)本発明は低コストで導入容易な構成を実現できる。
本実施例によると、車載カメラを用いずに、車両外部に面配置可能な赤外線センサ等を用いてユーザの存在(接近)やジェスチャーを非接触検出する構成としたことにより、低コストで導入容易な車両用ドア開閉装置を提供することができる。
【0040】
(2)本発明はユーザのスムーズな動線を確保することができる。
車載カメラと比べて赤外線センサ等は設置位置や配置に自由度が高いので、本実施例では、車載カメラでは設置不可能であった車両外面(特に、操作対象となるドアの移動経路外)にセンサ部を設けることが可能となる。従って、ユーザが乗車又は降車する際の動線を考慮して、所望の位置にセンサユニットを設けることができる。本実施例では、センサユニット21が、操作対象となるリアドア22の移動経路外(開閉軌跡外部)にあるフロントドア20に配置されている。ここで、ユーザが車両遠方から歩いてきて車両1に乗る場合(図1参照)、ユーザはリアドア22の前方間口近傍に向かって歩いていき、間口近傍手前で立ち止まり、フロントドア20の後方部分に設置されたセンサユニット21に向かって手を左から右に振ると、リアドア22が右側(後方)にスライドする。そして、リアドア22が開放されると、ユーザはそのまま直進して車両1に乗り込むことができる。また、ユーザが車両1から降車する場合でも、センサユニット21がリアドア22の間口近傍にあるので、ユーザは降車した場所から車両1の側面後方にステップを踏むことなくその場でセンサユニット21に手を振ることができる。そして、ユーザがセンサユニット21に向かって手を右から左に振ると、リアドア22は左側にスライドして閉じる。このように、第1の実施例に構成によると、ユーザはドア開閉のためにほとんど動線を曲げずに、スムーズな動線で車両1への乗り降りができる。なお、本明細書において、「間口近傍」とは、操作対象の車両ドアの間口前面に立った標準的な体格の大人が手を翳せる範囲をいうものとする。
【0041】
(3)本発明はユーザのとっさの場合の直感的操作を容易とすることができる。
上記(2)に関連して、センサユニット21が、操作対象となるリアドア22の移動経路以外の部分(開閉軌跡外部)に設けられていることにより、ユーザはリアドアが移動中であってもその移動動作とは無関係にリアドアを操作できる。例えば、リアドア22が開方向又は閉方向に移動中にとっさにその移動を停止又は逆転したい場合でも、ユーザは(従来技術のようにドアハンドルを追いかけることなく)センサユニット21の前に立ったまま所望の方向に手を振ることにより、容易かつ直感的に落ち着いてその移動動作を一時停止又は逆転することができる。このように、第1の実施例の構成によってユーザにおける操作性及び利便性を高めることができる。
【0042】
(4)本発明は車両の空気抵抗低減及びデザイン性向上に寄与する。
本実施例では、ドアハンドルではなく、面配置されたセンサユニット21によってユーザの手の動きを検出してリアドア22を開閉するので、リアドア22のドアハンドルを小型化又は廃止することができる。これにより、リアドア22をよりプレーンなデザインとすることができ、空気抵抗の低減及び車両デザイン性の向上が期待できる。
【0043】
[他の実施例]
実施例1では、スライド式ドアを有する車両において、センサユニットをフロントドア面に設ける構成を示したが、他の実施例として、センサユニットを他の場所に設置したものを示す。なお、各実施例では、センサユニットの配置又は操作対象となる車両ドアが実施例1と異なるのみで、装置のブロック図(図2)、センサユニットの基本的構成(図3A又は3B)及び動作のフローチャート(図4A又は4B)は実施例1と同様のものが適用される。
【0044】
実施例2.
図5に第2の実施例の車両用ドア開閉装置を搭載した車両3を示す。同図に示すように、本実施例のセンサユニット12は、フロントドア20とリアドア22の間にセンターピラー11がある場合には、センターピラー11の外面に設けられる。センサユニット12はセンサユニット21とは異なり縦に長いため、図3A又は図3Bのセンサユニットを縦横反転したものが用いられる。従って、ユーザは手を縦方向に振ってリアドア22を開閉することになる。例えば、ユーザが手を下から上方向に振った場合には、ジェスチャー認識部42がドア駆動手段50に開動作信号を出力してリアドア22が開き、ユーザが手を上から下方向に振った場合には、ジェスチャー認識部42がドア駆動手段50に閉動作信号を出力してリアドア22が閉じるようにすればよい。
【0045】
本実施例でも、上述した有利な効果(1)〜(4)を享受することができる。特に、センサユニット12の位置が、リアドア22の間口により近くなるので、リアドア22の至近距離からでもドア開閉操作がし易くなる。
【0046】
実施例3.
第3の実施例の車両用ドア開閉装置は、図5に示すように、本実施例のセンサユニット14はリアドア22の上のルーフ13の外面に(可能であれば車両側面側に)設けられる。ユーザは、センサユニット14に対して手を横方向に振ってリアドア22を開閉することになる。なお、センサユニット14が車両側面側に設けることができない場合は、少なくとも接近センサ素子については、車両側面側に向けて指向性を持たせる必要がある。動作は上記実施例と同様であるが、本実施例はサンルーフ(不図示)の開閉動作に使用することもできる。
【0047】
本実施例でも、上述した有利な効果(1)〜(4)を享受することができる。車高が高くない車両の場合には、ユーザから見易い位置にセンサユニットが配置されることになるので、ユーザの直感的動作により寄与することができる。逆に、車高が高い車両の場合でも、例えばユーザがセンサユニット前面を横切っただけの場合と、意識的にドア操作のためにセンサユニット前面で手を振った場合とを識別し易くなり、誤検出を防止できる。また、背の低い子供の手が届かない位置にセンサユニット14があるので、子供のいたずらによりリアドア22が開閉してしまうのを防止することができる。
【0048】
実施例4.
第4の実施例の車両用ドア開閉装置はバックドア24(例えば、跳ね上げ式)の開閉に関するものである。図5に示すように、センサユニット16はリアドア22後部のリアピラー15の側面に設けられる。ユーザは、車両1の側方からセンサユニット16に対して手を縦方向に振ってバックドア24を開閉することになる。具体的には、ユーザがセンサユニット16の前で手を下から上方向に振った場合には、ジェスチャー認識部42がドア駆動手段50に開動作信号を出力してバックドア24が開き、ユーザが手を上から下方向に振った場合には、ジェスチャー認識部42がドア駆動手段50に閉動作信号を出力してバックドア24が閉じる。
【0049】
第4の実施例でも、上述した有利な効果(1)〜(4)を享受することができる。バックドア24のように稼動範囲の大きいドアを開閉する場合であっても、センサユニット16(即ち、ユーザの操作位置)がバックドア24の開閉軌跡上にないので、ユーザは開閉中のバックドア24をよけながら開閉操作を行う必要がない。従って、上記の効果(2)について利益が大きい。
【0050】
実施例5.
第5の実施例の車両用ドア開閉装置、図5に示すように、本実施例のセンサユニット23はリアドア22の面に設けられる。センサユニット23はセンサユニット21とは異なり、操作対象となるドアに設置されているので、上記効果(2)及び(3)は得難いが、それでも少なくとも効果(1)及び(4)は得られる。また、リアドア22側に図2のブロック図における手段のほとんどを実装できるので、装置の導入が容易となる利点がある。
【0051】
また、実施例5の変形例として、図5の構成において、センサユニット21でリアドア22を操作し、センサユニット23でフロントドア20を操作するようにしてもよい。この場合は上記効果(1)〜(4)を享受することができる。
【0052】
なお、実施例1〜5は単独で実施してもよいし、2以上の実施例を組み合わせて使用してもよい。例えば、2以上の実施例におけるセンサユニットからの検出結果の論理積に従ってドア開閉動作を決定することによって、誤検出の可能性を減少させることができる。
【0053】
実施例6.
図6に第6の実施例の車両用ドア開閉装置を搭載した車両4を示す。車両4はクォータパネル60の面に設けられたセンサユニット61、及びスイング式のリアドア62を備える。センサユニット61はセンサユニット21とは異なりリアドアの後方に位置するので、ユーザの手の動きに対してドアの開閉動作は実施例1の場合の逆としてもよい。例えば、ユーザが手を右から左方向(車両後方から前方に向けて)に振った場合には、ジェスチャー認識部42がドア駆動手段50に開動作信号を出力してリアドア62が開き、ユーザが手を左から右方向に振った場合には、ジェスチャー認識部42がドア駆動手段50に閉動作信号を出力してリアドア62が閉じるようにすればよい。このように、本発明はスイング式のドアにも適用できる。
【0054】
本実施例では、上記効果(1)から(4)を得ることができる。特に、センサユニット61がリアドア62の開閉軌跡上に無いので、ユーザは、開閉するリアドア62をよけながら開閉操作を行う必要がない。従って、特許文献1のような複雑な動線を辿る必要はなく、有利である。
【0055】
実施例7
図7に第7の実施例の車両用ドア開閉装置を搭載した車両5を示す。車両5はクォータパネル70の面に設けられたセンサユニット71、及び上方に跳ね上げるサイドドア(ガルウイングドア)72を備える。ユーザは手を縦方向に振ってサイドドア72を開閉することになる。例えば、ユーザがセンサユニット71に対して手を下から上方向に振った場合には、ジェスチャー認識部42がドア駆動手段50に開動作信号を出力してサイドドア72が開き、センサユニット71に対して手を上から下方向に振った場合には、ジェスチャー認識部42がドア駆動手段50に閉動作信号を出力してサイドドア72が閉じるようにすればよい。
【0056】
本実施例では、上記効果(1)から(4)を得ることができる。特に、高速走行可能でかつデザイン性が重視されるガルウイングドアを用いる車両においては、上記効果(4)について特に有利となる。
【0057】
以上のように、本発明によると、車載カメラを用いずにユーザのジェスチャーを非接触で検出することによって車両ドアを開閉駆動するための低コストでかつ操作性の良い車両用ドア開閉装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0058】
1、3、4、5.車両
2.車両用ドア開閉装置
10.ボデー
11.センターピラー
12、14、16、21、23、61、71.センサユニット
13.ルーフ
15.リアピラー
20.フロントドア
22、62.リアドア
24.バックドア
30.センサ手段
31.接近センサ
32.モーションセンサ
40.制御手段
41.接近検出部
42.ジェスチャー認識部
43.ドア動作決定部
50.ドア駆動手段
55.車両ドア
60、70.クォータパネル
72.サイドドア
211.接近センサ素子
212.モーションセンサ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドア開閉装置であって、
車両ボデーに移動可能に支持された車両ドアと、
前記車両ドアを開閉駆動するドア駆動手段と、
車両外面に配置されたセンサユニットを有し、該センサユニットから所定範囲内にある人体の動きを非接触検出して検出結果に応じた検出信号を出力するセンサ手段と、
前記検出信号に基づいて前記人体の動きを特定し、該特定された人体の動きに基づいて前記車両ドアの移動動作を決定し、該決定に従って前記ドア駆動手段を制御する制御手段と
を備えた車両用ドア開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドア開閉装置において、前記センサ手段が前記人体の手の振り方向を検出し、前記制御手段が該手の振り方向に対応して車両ドアの開閉動作を決定するように構成された車両用ドア開閉装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用ドア開閉装置において、前記センサユニットが、操作対象となる車両ドアの間口近傍で、かつ該操作対象となる車両ドアの移動経路外に配置された車両用ドア開閉装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用ドア開閉装置において、前記センサユニットが、該操作対象となる車両ドア以外の部分に配置された車両用ドア開閉装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用ドア開閉装置において、前記車両側面がフロントドア及びリアドアを備え、前記リアドアがスライド式ドアであり、前記センサユニットが少なくとも前記フロントドアの外面に配置された車両用ドア開閉装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の車両用ドア開閉装置において、前記センサユニットは、前記所定範囲内の人体の有無を検出する接近センサ、及び前記人体の手の振り方向を検出するモーションセンサからなり、前記制御手段が、前記接近センサ部が人体有りを検出した後、検出された前記手の振り方向に従って前記車両ドアの移動方向を決定するように構成され、少なくとも前記モーションセンサが赤外線センサからなる、車両用ドア開閉装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用ドア開閉装置において、前記制御手段が、前記接近センサ部が人体有りを検出するまでは前記モーションセンサをオフ状態とするように構成された車両用ドア開閉装置。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate