説明

車両用ドラムブレーキ

【課題】制動時の高荷重の入力に耐えるようにシューウェブの一端部の板厚を増肉すると共にそのシューウェブの製造コストを安価にする車両用ドラムブレーキを提供する。
【解決手段】シューウェブ36は、その一端部を制動時アンカー部材72に当接させることによってブレーキシュー22がアンカー部材72に受け止められるものであり、シューウェブ36の一端部は、その先端がシューウェブ36の厚み方向に曲げられた状態で据え込み加工が施されることでその曲げ方向とは反対側に増肉されるため、始めにシューウェブ36の一端部を曲げることによって、その後の据え込み加工によりシューウェブ36の一端部の板厚を増肉させる増肉量がプレス加工でシューウェブの一端部の板厚を制動時の高荷重の入力に耐えるように増肉させる従来のものより少なくなるので、焼き入れ工程なしで制動時の高荷重の入力に耐えるようにシューウェブ36の一端部の板厚を増肉できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドラムブレーキに関し、特に車両用ドラムブレーキの製造コストを安価にする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用ドラムブレーキは、たとえば特許文献1に示すように、(a) バッキングプレートと、(b) そのバッキングプレート上に拡開可能に配設された円弧状の一対のブレーキシューと、(c) その一対のブレーキシューの一端部を当接させるためにそのバッキングプレートに固設されたアンカー部材と、(d) 車輪と一体的に回転する有底円筒状の回転ドラムとを含み、(e) その一対のブレーキシューを拡開させてその一対のブレーキシューをその回転ドラムの内周面に摺接させることによって、車輪の回転を制動するものである。(f) 前記ブレーキシューは、円弧状且つ平板状のシューウェブを有し、(g) 前記シューウェブは、その一端部を制動時前記アンカー部材に当接させることによって前記ブレーキシューが前記アンカー部材に受け止められるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−298121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記車両用ドラムブレーキの制動時において前記シューウェブの一端部には前記アンカー部材から高荷重の力が入力されるため、その高荷重に耐えられるようにそのシューウェブの一端部は、例えば高周波焼入れをした状態でプレス加工によって板厚が厚くなるように増肉して強度を高めていた。
【0005】
そのため、前記シューウェブの一端部の板厚を増肉するために高周波焼入れ等の焼入れ工程が必要となり、前記シューウェブすなわち前記ブレーキシューの製造コストが高くなるという問題があった。また、前記焼入れ工程を行わないでプレス加工をするという考えもあるが、そうすることによって高荷重の大型プレス機が必要となり延いては前記シューウェブすなわち前記ブレーキシューの製造コストが高くなるという問題もあった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、制動時の高荷重の入力に耐えるようにシューウェブの一端部の板厚を増肉すると共にそのシューウェブの製造コストを安価にする車両用ドラムブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a) バッキングプレートと、(b) そのバッキングプレート上に拡開可能に配設された円弧状の一対のブレーキシューと、(c) その一対のブレーキシューの一端部を当接させるためにそのバッキングプレートに固設されたアンカー部材と、(d) 車輪と一体的に回転する有底円筒状の回転ドラムとを含み、(e) その一対のブレーキシューを拡開させてその一対のブレーキシューをその回転ドラムの内周面に摺接させることによって、車輪の回転を制動する車両用ドラムブレーキであって、(f) 前記ブレーキシューは、円弧状且つ平板状のシューウェブを有し、(g) 前記シューウェブは、その一端部を制動時前記アンカー部材に当接させることによって前記ブレーキシューが前記アンカー部材に受け止められるものであり、(h) 前記シューウェブの一端部は、その先端が前記シューウェブの厚み方向に曲げられた状態で据え込み加工が施されることでその曲げ方向とは反対側に増肉されるものであることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、前記シューウェブの一端部において、前記先端が前記シューウェブの厚み方向に曲げられる曲げ量は、前記シューウェブの板厚と同等或いはそれ以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明の車両用ドラムブレーキによれば、(f) 前記ブレーキシューは、円弧状且つ平板状のシューウェブを有し、(g) 前記シューウェブは、その一端部を制動時前記アンカー部材に当接させることによって前記ブレーキシューが前記アンカー部材に受け止められるものであり、(h) 前記シューウェブの一端部は、その先端が前記シューウェブの厚み方向に曲げられた状態で据え込み加工が施されることでその曲げ方向とは反対側に増肉されるものであるため、前記シューウェブの一端部は、その先端が前記シューウェブの厚み方向に曲げられることによって前記シューウェブの厚み方向の幅が大きくなり、前記先端が前記シューウェブの厚み方向に曲げられた状態で据え込み加工が施されることでその曲げ方向とは反対側に増肉されると板厚が厚くなる。すなわち、始めに前記シューウェブの一端部を曲げることによって、その後の据え込み加工により前記シューウェブの一端部の板厚を増肉させる増肉量がプレス加工のみでシューウェブの一端部の板厚を制動時の高荷重の入力に耐えるように増肉させる従来のものに比較して少なくなるので、焼き入れ工程や高荷重の大型プレス機等を用いなくとも制動時の高荷重の入力に耐えるようにシューウェブの一端部の板厚を増肉することができる。また、前記シューウェブの一端部の板厚を増肉するために焼き入れ工程や高荷重の大型プレス機等を用いないので前記シューウェブの製造コストを安価にすることができる。
【0010】
請求項2に係る発明の車両用ドラムブレーキによれば、前記シューウェブの一端部において、前記先端が前記シューウェブの厚み方向に曲げられる曲げ量は、前記シューウェブの板厚と同等或いはそれ以下であるため、制動時前記アンカー部材から前記シューウェブの一端部に入力される荷重の中心位置を前記シューウェブの厚み方向において前記平板状のシューウェブの板厚内にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例のデュオサーボ型ドラムブレーキを示す正面図である。
【図2】図1の実施例のドラムブレーキに備えられた拡開装置の構成を説明するための断面図である。
【図3】本発明のドラムブレーキにおける、ブレーキシューだけを示す図である。
【図4】図3のIV-IV視断面図である。
【図5】綱板から図3に示すシューウェブが製造されるまでの製造工程を示す図である。
【図6】図5に示されているプレス工程を説明する図である。
【図7】図5に示されている曲げ工程を説明する図である。
【図8】図7に示されている長板部材が取り付けられると共にその長板部材の一端部の板厚が増肉される増肉部成形装置および図5に示されている増肉部成形工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例のパーキングブレーキ用ドラムブレーキ(以下、ドラムブレーキという)10を中央部に備えたデュオサーボ型のドラムインディスクブレーキ12のハット型ディスクおよびキャリパ等を取り外した正面図である。上記ハット型ディスクは、円板状外周部と有底円筒状中央部とを備え、その円板状外周部がディスクブレーキの摩擦板として機能し、その有底円筒状中央部が車輪と一体的に回転するブレーキドラム(回転ドラム)14として機能するように構成されている。また、ブレーキドラム14は、図1の1点鎖線で示す2つの同心円で表されており、その2つの円のうちの中心側の円はブレーキドラム14の内周面16を示している。
【0014】
ドラムブレーキ10は、略円板形状を成し、たとえば図示しない車軸管、アクスルハウジング、サスペンション装置などの車体側部材すなわち非回転部材に一体的に固設されたバッキングプレート18を備えている。このバッキングプレート18の外周部には、前記ハット型ディスクの円板状外周部を保護するためのディスクカバー20が固定されている。
【0015】
また、ドラムブレーキ10は、バッキングプレート18の左右の外周部に凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能に略対称的に配設される円弧形状の一対のブレーキシュー22,24と、その一対のブレーキシュー22,24の一端部すなわち図1の上端部の間において位置固定に設けられた拡開装置26と、それら上端部を互いに接近する方向に常時付勢して拡開装置26に当接させるためのコイル状のリターンスプリング28と、一対のブレーキシュー22,24の他端部すなわち図1の下端部の間に介在させられてアジャストホイール30の回転に伴って全長が変化すなわち伸長させられることによりシュー間隙を調節する間隙調節装置32と、それら下端部を互いに接近する方向に常時付勢して間隙調節装置32を長手方向に挟圧するための中間部分がコイル状のスプリング34とを備えている。
【0016】
スプリング34の中間部分は間隙調節装置32のアジャストホイール30に接触させられており、アジャストホイール30が振動等によって回転しないようになっている。それら間隙調節装置32およびスプリング34は、一対のブレーキシュー22,24の他端部間を相対回転可能に連結するものであるので、間隙調節機能を備えた連結装置として機能している。
【0017】
一対のブレーキシュー22,24は、何れもバッキングプレート18の板面と略平行な平板状を成し且つ図1に示す正面図において全体が円弧形状に湾曲したシューウェブ36,38と、それらの円弧形状を成す外周側端縁に沿って断面が略T字状を成すように一体的に固設された帯板状のシューリム40,42と、それらシューリム40,42の外周面に接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング44,46とを備えてそれぞれ構成されている。また、一対のブレーキシュー22,24は、シューウェブ36,38にそれぞれ配設されたシューホールドダウン装置48,50によってバッキングプレート18に対して面方向の相対移動可能に保持されている。上記バッキングプレート18、シューウェブ36,38、シューリム40,42は、いずれも鋼板から打ち抜かれ且つ所定の曲げ成形が施されたプレス部品である。
【0018】
拡開装置26は、図2に示すように、バッキングプレート18に対して面方向に移動可能な浮動式であり、一端部において連結ピン52により相対回動可能に連結されたレバー54およびストラット56を備えており、連結ピン52がバッキングプレート18と略平行となる姿勢で配設されている。レバー54は2枚の金属板で構成されており、連結ピン52に連結される一端部は互いに密着するように一体的に重ね合わせられているとともにブレーキシュー24と係合させられる係合凹部58が設けられている一方、他端部は互いに所定寸法だけ離間させられパーキングブレーキケーブル60の先端に固設された掛止部材62を掛止するケーブル掛止部64が設けられている。また、ストラット56も2枚の金属板で構成されており、その内側にレバー54が配設されているとともに、連結ピン52と反対の他端部は互いに密着するように内側へ曲げられて一体的に重ね合わせられブレーキシュー22と係合させられる係合凹部66が設けられている。また、レバー54には、所定形状に曲成された板ばね68が装着され、パーキングブレーキケーブル60をレバー54のケーブル掛止部64へ案内するとともに、一旦ケーブル掛止部64に挿入された掛止部材62が離脱しないようになっている。
【0019】
また、一対のブレーキシュー22,24の一端部間においてバッキングプレート18の一面には、2本のボルト70によってアンカー部材72の固定部72aがバッキングプレート18と共にアクスルハウジングやサスペンション装置など車体側部材に一体的に固定されている。また、拡開装置26はそれらボルト70の頭部70h上に当接して支持され、アンカー部材72の固定部72aおよびバッキングプレート18にはパーキングブレーキケーブル60を挿通させるための挿通孔72b、18aが設けられている。これら挿通孔72b、18aには、パーキングブレーキケーブル60を内周側に収容するガイドパイプ74が挿通され、それらにかしめ着けられている。
【0020】
このように構成された拡開装置26では、パーキングブレーキケーブル60を介して引張方向のパーキングブレーキレバーからの操作力が伝達されると、レバー54が連結ピン52まわり矢印F方向に回動するにともなって一対のブレーキシュー22,24が拡開し一対のブレーキシュー22,24のライニング44,46がブレーキドラム14の内周面16に摺接する。
【0021】
一対のブレーキシュー22,24のライニング44,46がブレーキドラム14の内周面16に接触している状態時において、ブレーキドラム14すなわち車輪が図1に示す矢印G方向に回転しようとすると一対のブレーキシュー22,24はブレーキドラム14と共に回転しようとするがブレーキシュー22のシューウェブ36の一端部36aがアンカー部材72に当接し一対のブレーキシュー22,24がそのアンカー部材72に受け止められることによって上記車輪の回転を制動する。また、反対に前記引張方向のパーキングブレーキレバーからの操作力が戻されると、リターンスプリング28の付勢力に従って一対のブレーキシュー22,24が縮径され一対のブレーキシュー22,24のライニング44,46がブレーキドラム14の内周面16から離間する。
【0022】
図3および図4はブレーキシュー22を説明する図であり、その図3および図4によれば、ドラムブレーキ10の制動時シューウェブ36の一端部36aには前記車輪を制動するためにアンカー部材72から高荷重の力が入力されるため、シューウェブ36の一端部36aはその高荷重に耐えるため図4に示すように板厚が厚く増肉されている。以下において、そのシューウェブ36の製造方法を図5乃至図8を用いて説明する。
【0023】
図5は、例えば綱板から図3に示すシューウェブ36が製造されるまでの製造工程を示す図である。その図5において、プレス工程P1では、板厚が均一厚みの綱板がプレス加工による打ち抜きによって図6に示すように円弧状且つ平板状に成形された長板部材76(シューウェブ36)が作製される。
【0024】
続く曲げ工程P2では、長板部材76の一端部76aが曲げ加工によって、図7に示すようにその一端部76aの先端が長板部材76の厚み方向に曲げられる。また、長板部材76の一端部76aにおいて、その一端部76aの先端が長板部材76aの厚み方向に曲げられる曲げ量Aは、長板部材76の板厚Bと同等或いはそれ以下に設定されるものである。図7の実線で示す長板部材76の一端部76aは曲げ工程P2前の状態を示すものであり、図7の一点鎖線で示す長板部材76の一端部76aは曲げ工程P2後の状態を示すものである。
【0025】
図8の上段は、プレス工程P1および曲げ工程P2によって成形された長板部材76が増肉部成形装置78に取り付けられた状態を示す図である。増肉部成形装置78は、曲げ工程P2によって一端部76aが曲げられた長板部材76の一端部76aを据え込み加工によって制動時の高荷重の入力に耐えるように板厚を厚く増肉させるものであって、長板部材76を保持する保持金型80と、長板部材76の一端部76aを矢印H方向に加圧する加圧金型82とを備えている。
【0026】
図5に戻り、増肉部成形工程P3では、図7の下段に示すように加圧金型82が長板部材76の一端部76aを矢印H方向に加圧すると、長板部材76の一端部76aは長板部材76の板厚方向に広がるように変形しようとするが長板部材76の一端部76aの先端は保持金型80の内周壁80aによってその変形が抑止されるため、曲げ工程P2によって上記先端が曲げられた曲げ方向とは反対側が図7の下段に示すように増肉され長板部材76の一端部76aの板厚が厚くなる。
【0027】
上述のように、長板部材76の一端部76aは、曲げ工程P2によりその先端が長板部材76の厚み方向に曲げられることによって長板部材76の厚み方向の幅が大きくなり、増肉部成形工程P3によって上記先端が長板部材76の厚み方向に曲げられた状態で据え込み加工が施されることでその曲げ方向とは反対側が増肉されて板厚が厚くなる。すなわち、始めに曲げ工程P2で長板部材76の一端部76aを曲げることによって、その後の増肉部成形工程P3の据え込み加工により長板部材76の一端部76aの板厚を増肉させる増肉量がプレス加工のみで長板部材の一端部の板厚を制動時の高荷重の入力に耐えるように増肉させる従来のものに比較して少なくなるので、焼き入れ工程や高荷重の大型プレス機等を用いなくとも制動時の高荷重の入力に耐えるように長板部材の一端部の板厚を増肉することができる。また、長板部材76の一端部76aの板厚を増肉するために焼き入れ工程や高荷重の大型プレス機等を用いないので長板部材76すなわちシューウェブ36の製造コストを安価にすることができる。
【0028】
また、上述のように、長板部材76の一端部76aにおいて、その一端部76aの先端が長板部材76の厚み方向に曲げられる曲げ量Aは、長板部材76の板厚Bと同等或いはそれ以下に設定されるので、増肉部成形工程P3によって曲げ工程P2により長板部材76の一端部76aの先端が曲げられた曲げ方向とは反対側が増肉されるとドラムブレーキ10制動時にアンカー部材72から長板部材76の一端部76aに入力される荷重の中心位置を長板部材76の厚み方向において平板状の長板部材76の板厚内にすることができるため、長板部材76の一端部76aの強度を好適に向上させることができる。
【0029】
尚、本実施例の増肉部成形工程P3では、焼き入れ工程や高荷重の大型プレス機等を用いないので長板部材76の一端部76aを増肉させる増肉量が少ないため、上記曲げ量Aが長板部材76の板厚Bを超えるとドラムブレーキ10制動時にアンカー部材72から長板部材76の一端部76aに入力される荷重の中心位置を所定位置に設定できなくなる。
【0030】
図5に戻り、硬化工程P4では、増肉部成形工程P3によって成形された長板部材76の一端部76aの端面76bをプレス加工で金型により叩くことによってその端面76bの表面の硬度が350HV〜400HV程度される。そのため、好適に長板部材76の一端部76aの強度が向上する。また、上記プレス工程P1、曲げ工程P2、増肉部成形工程P3、硬化工程P4によって製造された長板部材76が図3に示すシューウェブ36であり、上記長板部材76の一端部76aがシューウェブ36の一端部36aである。
【0031】
ここで、本実施例のドラムブレーキ10によれば、(f) ブレーキシュー22は、円弧状且つ平板状のシューウェブ36を有し、(g) シューウェブ36は、その一端部36aを制動時アンカー部材72に当接させることによってブレーキシュー22がアンカー部材72に受け止められるものであり、(h) 長板部材76(シューウェブ36)の一端部76a(一端部36a)は、その先端が長板部材76(シューウェブ36)の厚み方向に曲げられた状態で据え込み加工が施されることでその曲げ方向とは反対側に増肉されるものであるため、長板部材76(シューウェブ36)の一端部76a(一端部36a)は、その先端が長板部材76(シューウェブ36)の厚み方向に曲げられることによって長板部材76(シューウェブ36)の厚み方向の幅が大きくなり、前記先端が長板部材76(シューウェブ36)の厚み方向に曲げられた状態で据え込み加工が施されることでその曲げ方向とは反対側に増肉されると板厚が厚くなる。すなわち、始めに長板部材76(シューウェブ36)の一端部76a(一端部36a)を曲げることによって、その後の据え込み加工により長板部材76(シューウェブ36)の一端部76a(一端部36a)の板厚を増肉させる増肉量がプレス加工のみで長板部材(シューウェブ)の一端部の板厚を制動時の高荷重の入力に耐えるように増肉させる従来のものに比較して少なくなるので、焼き入れ工程や高荷重の大型プレス機等を用いなくとも制動時の高荷重の入力に耐えるように長板部材76(シューウェブ36)の一端部76a(一端部36a)の板厚を増肉することができる。また、長板部材76(シューウェブ36)の一端部76a(一端部36a)の板厚を増肉するために焼き入れ工程や高荷重の大型プレス機等を用いないので長板部材76(シューウェブ36)の製造コストを安価にすることができる。
【0032】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、長板部材76(シューウェブ36)の一端部76a(一端部36a)において、前記先端が長板部材76(シューウェブ36)の厚み方向に曲げられる曲げ量Aは、長板部材76(シューウェブ36)の板厚Bと同等或いはそれ以下であるため、制動時アンカー部材72から長板部材76(シューウェブ36)の一端部76a(一端部36a)に入力される荷重の中心位置を長板部材76(シューウェブ36)の厚み方向において平板状の長板部材76(シューウェブ36)の板厚内にすることができる。
【0033】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適応される。
【0034】
たとえば、前述の実施例のドラムブレーキ10は、パーキングブレーキ専用のドラムブレーキであったが、車両走行中に使用されるサービスブレーキとしてドラムブレーキに本発明を使用することができる。
【0035】
また、前述の実施例のドラムブレーキ10は、デュオサーボ型ドラムブレーキであったが、ツーリーディング型やリーディング・トレーリング型などのドラムブレーキに本発明を適用することが可能である。すなわち、ドラムブレーキ制動時にシューウェブの一端部がアンカー部材に当接するものであればどのような型式のドラムブレーキに本発明を適用することが可能である。
【0036】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0037】
10:ドラムブレーキ
14:ブレーキドラム(回転ドラム)
16:内周面
18:バッキングプレート
22,24:一対のブレーキシュー
36,38:シューウェブ
72:アンカー部材
A:長板部材(シューウェブ)の厚み方向に曲げられる曲げ量
B:長板部材(シューウェブ)の板厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッキングプレートと、該バッキングプレート上に拡開可能に配設された円弧状の一対のブレーキシューと、該一対のブレーキシューの一端部を当接させるために該バッキングプレートに固設されたアンカー部材と、車輪と一体的に回転する有底円筒状の回転ドラムとを含み、該一対のブレーキシューを拡開させて該一対のブレーキシューを該回転ドラムの内周面に摺接させることによって、前記車輪の回転を制動する車両用ドラムブレーキであって、
前記ブレーキシューは、円弧状且つ平板状のシューウェブを有し、
前記シューウェブは、その一端部を制動時前記アンカー部材に当接させることによって前記ブレーキシューが前記アンカー部材に受け止められるものであり、
前記シューウェブの一端部は、その先端が前記シューウェブの厚み方向に曲げられた状態で据え込み加工が施されることで該曲げ方向とは反対側に増肉されるものであることを特徴とする車両用ドラムブレーキ。
【請求項2】
前記シューウェブの一端部において、前記先端が前記シューウェブの厚み方向に曲げられる曲げ量は、前記シューウェブの板厚と同等或いはそれ以下であることを特徴とする請求項1の車両用ドラムブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−174932(P2010−174932A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15872(P2009−15872)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】