車両用パネル構造体
【課題】軽量化しつつ、剛性や強度アップを可能にした車両用パネル構造体を提供する。
【解決手段】車両用パネル構造体1では、断面C字状をなすチャンネル部材3の立上げ部7同士を密着させてなるリブ部8をもったパネル4と、このチャンネル部材3の並設方向に延在してパネル4に溶接されるフランジ部10を有する縦骨5とが利用され、このようなパネル4と縦骨5とを接合する際の工夫として、パネル4の面板部6と縦骨5のフランジ部10とを密着させた状態で溶接している。このような構成によって、縦骨5とパネル4との間の力の伝達効率が良好になり、車両の走行時に常に発生し続けている捩り力や撓み力など、不規則に発生し続ける荷重を効率良く逃がしてやることができる。さらに、断面C字状のチャンネル部材の採用により、剛性や強度のアップが図られ、縦骨5の本数を減らすことができ、その結果としてパネル構造体1の軽量化を可能にしている。
【解決手段】車両用パネル構造体1では、断面C字状をなすチャンネル部材3の立上げ部7同士を密着させてなるリブ部8をもったパネル4と、このチャンネル部材3の並設方向に延在してパネル4に溶接されるフランジ部10を有する縦骨5とが利用され、このようなパネル4と縦骨5とを接合する際の工夫として、パネル4の面板部6と縦骨5のフランジ部10とを密着させた状態で溶接している。このような構成によって、縦骨5とパネル4との間の力の伝達効率が良好になり、車両の走行時に常に発生し続けている捩り力や撓み力など、不規則に発生し続ける荷重を効率良く逃がしてやることができる。さらに、断面C字状のチャンネル部材の採用により、剛性や強度のアップが図られ、縦骨5の本数を減らすことができ、その結果としてパネル構造体1の軽量化を可能にしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の側構体、妻構体、屋根構体などに利用される車両用パネル構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2005−329412号公報がある。この公報に記載されたパネル構造体は、ハット形状の第1の補強部材が外板に対しスポット溶接によって固定され、各第1の補強部材は、外板に並設させた状態でパネルの横骨として機能する。さらに、第1の補強部材の頂部にハット形状の第2の補強部材がスポット溶接により固定され、第2の補強部材は、パネルの縦骨として機能する。そして、このようなパネル構造体では、補強部材が縦と横とでクロスするように配置され、鉄道車両の捻れや撓みに対する強化を図っている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−329412号公報
【特許文献2】特許第2763984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の車両用パネル構造体は、縦骨として機能する第2の補強部材が外板から離間し、ハット形状の部材によって浮き骨構造のパネルとして構成されている。このような構造は、車両に捩りや撓みが発生した場合に、縦骨→横骨→外板又は外板→横骨→縦骨への力の伝達効率が悪く、車両の走行時に常に発生し続けている捩り力や撓み力など、不規則に発生し続ける力を効率良く逃がしてやることが難しかった。そして、このようなパネル構造体で剛性や強度のアップを図る場合、縦骨の本数を増やしたり、板厚を厚くしたりする必要があり、その結果としてパネル構造体の重量アップを招来する。
【0005】
本発明は、軽量化しつつ、剛性や強度アップを可能にした車両用パネル構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用パネル構造体は、面板部とこの面板部の両端に設けられた立上げ部とを有するチャンネル部材の立上げ部同士を密着させてなるリブ部をもったパネルと、チャンネル部材の並設方向に延在してパネルに溶接されるフランジ部を有する縦骨とを備え、パネルの面板部と縦骨のフランジ部とは、密着させた状態で溶接されていることを特徴とする。
【0007】
この車両用パネル構造体では、チャンネル部材の立上げ部同士を密着させてなるリブ部をもったパネルと、このチャンネル部材の並設方向に延在してパネルに溶接されるフランジ部を有する縦骨とが利用され、このようなパネルと縦骨とを接合する際の工夫として、パネルの面板部と縦骨のフランジ部とを密着させた状態で溶接している。このような構成によって、縦骨とパネルとの間の力の伝達効率が良好になり、車両の走行時に常に発生し続けている捩り力や撓み力など、不規則に発生し続ける荷重を効率良く逃がしてやることができる。さらに、断面C字状のチャンネル部材の採用により、剛性や強度のアップが図られ、縦骨の本数を減らすことができ、その結果としてパネル構造体の軽量化を可能にしている。
【0008】
また、パネルのリブ部と縦骨との交差部分には、リブ部と縦骨との少なくとも一方に切り込み部が設けられていると好適である。このような構成を採用した場合、交差部分に切り込み部があることで、パネルの面板部と縦骨のフランジ部との密着性を担保しつつ、パネル構造体の組立て作業性を良好にすることができる。
【0009】
また、交差部分において、パネルのリブ部と縦骨とはL形ブラケットにより連結されていると好適である。L形ブラケットの利用により、パネルと縦骨との接合を簡単かつ確実に補強することができる。
【0010】
また、パネルにおけるリブ部と反対側の面に外板が密着され、外板とパネルは、リブ部と平行に延在する第1の溶接部によって接合され、パネルの面板部と縦骨のフランジ部は、リブ部に対して直交して延在する第2の溶接部によって接合され、第1及び第2の溶接部は、リブ部側から施工されると共に、外板の外表面にまで達していないと好適である。このような構成によって、外板は、外観に溶接跡の無い化粧板として機能する。そして、外板の板厚を変えることで、パネル構造体自体の剛性や強度を容易に変更することができる。
【0011】
また、第1及び第2の溶接部は、レーザ溶接であると好適である。レーザ溶接により、外板とパネルと縦骨との溶接作業性が良好になる。
【0012】
また、リブ部の遊端側には、面板部と平行に延在するリップ部が設けられていると好適である。このような構成によって、パネル構造体の横骨として機能するリブ部の強度アップを図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軽量化しつつ、剛性や強度アップを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る車両用パネル構造体の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1に示すように、車両用パネル構造体1は、鉄道車両の側構体、妻構体、屋根構体及び屋根構体などに適用可能である。このパネル構造体1は、外面側が車両から露出することを予定したステンレス製の外板2と、この外板2の内面側で所定枚数の断面C字状のチャンネル部材3を並設して、外板2に溶接されるパネル4と、チャンネル部材3の並設方向に延在してパネル4に溶接される縦骨5とを備えている。
【0016】
図2に示すように、パネル4の構成要素であるステンレス製のチャンネル部材3は、長方形の面板部6と、この面板部6の長手側における両端に設けられた断面L字状の立上げ部7とで断面C字状を形成している。そして、強度アップを図るために、立上げ部7の遊端側には、面板部6と平行に延在し且つ長手方向にも延在するリップ部7aが設けられている。このような構成のチャンネル部材3の立上げ部7同士を外板2上で密着させることにより、パネル4には、長手方向に延在する断面T字状のリブ部8(図4参照)が形成されることになる。そして、このリブ部8が、パネル構造体1自体の横骨を構成する。
【0017】
図3に示すように、ステンレス鋼からなる縦骨5は、断面コ字状の本体部9と、この本体部9の長手側における両端から直交して突出するフランジ部10とでハット形状をなす。このフランジ部10は、チャンネル部材3の並設方向(リブ部8に対して直交する方向)に延在してパネル4に溶接される。縦骨5がハット形状をなすことで、縦骨5の強度アップを図ると共に、溶接面の確保を容易にしている。
【0018】
さらに、パネル構造体1では、図1に示すように、パネル4のリブ部8と縦骨5とが直交するように交差する。そこで、パネル4の面板部6と縦骨5のフランジ部10とを、密着させた状態で溶接することを容易にするために、交差部分Cにおいて、リブ部8と縦骨5との少なくとも一方に切り込み部が設けられている。
【0019】
例えば、第1の実施形態にあっては、図2に示すように、チャンネル部材3の各立上げ部7には、縦骨5の本体部9の幅より僅かに広い切り込み部3aが形成され、図3に示すように、縦骨5の各フランジ部10には、リブ部8の幅より僅かに広い切り込み部5aが形成されている。このような切り込み部3a,5aにより、外板2上に配置されたパネル4に対して、縦骨5をリブ部8側から組み付けることができ、パネル構造体1の組立て作業性を良好にし、さらに、パネル4の面板部6と縦骨5のフランジ部10との密着性を容易に担保することができる。
【0020】
パネル構造体1の組立てにあたって、図4及び図6に示すように、外板2上にチャンネル部材3の立上げ部7同士を密着させるようにしてチャンネル部材3を並べる。このとき、隣接するチャンネル部材3の切り込み部3a同士を位置合わせしながら作業が行われ、パネル4においては、リブ部8と反対側の面が外板2に密着される。そして、外板2上で立上げ部7同士を密着させた後、リベットなどの機械的な締結やレーザ溶接などによって、立上げ部7同士を接合させる。なお、隣接するチャンネル部材3の切り込み3a同士を並設させることでパネル4の切り込み部4aが形成される。
【0021】
外板2上にチャンネル部材3を並置した後、図5及び図6に示すように、外板2とパネル4は、クランプ用治具等によって位置固定された状態で、リブ部8と平行に延在する第1の溶接部Aによって接合される。この第1の溶接部Aは、レーザによる直線的な連続溶接部であり、この溶接は、リブ部8側から施工されると共に、面板部6上をリブ部8に対して平行にレーザを走査させながら行われる。さらに、第1の溶接部Aは、外板2の外表面にまで達していない。このような半貫通溶接によって、外板2は、外観に溶接跡の無い化粧板として機能する。なお、第1の溶接部Aの施工には、レーザ溶接の際の酸化防止のためのアシストガスを利用するのが好ましい。
【0022】
外板2とパネル4との溶接後、図1及び図7に示すように、パネル4の切り込み部4aと縦骨5の切り込み部5a(図6参照)とを位置合わせしながら、パネル4の面板部6と縦骨5のフランジ部10とを密着させる。この場合、第1の溶接部Aは、縦骨5のフランジ部10が被さる部分において研削加工などで平滑化され、パネル4の面板部6と縦骨5のフランジ部10との密着性を高めている。
【0023】
その後、パネル4の面板部6と縦骨5のフランジ部10は、クランプ用治具等によって位置固定された状態で、リブ部8に対して直交して延在する第2の溶接部Bによって接合される。この第2の溶接部Bは、レーザによる直線的な連続溶接部であり、この溶接は、リブ部8側から施工されると共に、フランジ部10上をリブ部8に対して直交する方向にレーザを走査させながら行われる。さらに、第2の溶接部Bは、外板2の外表面にまで達していない。このような半貫通溶接によって、外板2は、外観に溶接跡の無い化粧板として機能する。第2の溶接部Bの施工には、レーザ溶接の際の酸化防止のためのアシストガスを利用するのが好ましい。
【0024】
さらに、交差部分Cにおいて、パネル4のリブ部8の側面と縦骨5とはL形ブラケット11a,11bにより連結される。例えば、左右一対のL形ブラケット11aは、縦骨5の本体部9とリブ部8におけるチャンネル部材3の立上げ部7の側面とに密着させた状態で溶接される。また、上方のL形ブラケット11bは、縦骨5の本体部9と、リブ部8におけるチャンネル部材3の立上げ部7のリップ部7aとに密着させた状態で溶接される。L形ブラケット11a,11bの採用により、パネル4と縦骨5との接合を簡単かつ確実に補強することができる。
【0025】
このような車両用パネル構造体1では、断面C字状をなすチャンネル部材3の立上げ部7同士を密着させてなるリブ部8をもったパネル4と、このチャンネル部材3の並設方向に延在してパネル4に溶接されるフランジ部10を有する縦骨5とが利用され、このようなパネル4と縦骨5とを接合する際の工夫として、パネル4の面板部6と縦骨5のフランジ部10とを密着させた状態で溶接している。このような構成によって、縦骨5とパネル4との間の力の伝達効率が良好になり、車両の走行時に常に発生し続けている捩り力や撓み力など、不規則に発生し続ける荷重を効率良く逃がしてやることができる。さらに、断面C字状のチャンネル部材の採用により、剛性や強度のアップが図られ、縦骨5の本数を減らすことができ、その結果としてパネル構造体1の軽量化を可能にしている。
【0026】
ここで、前述したパネル構造体1を側構体に適用した例について説明する。例えば、窓穴2aをもったT字状の外板2(図8(a)参照)と、この形状に合うような長さにカットされた所定枚数のチャンネル部材3(図8(b)参照)とを準備する。そして、外板2上に各チャンネル部材3を並設させ、外板2とパネル4とをレーザ溶接後に、縦骨5をリブ部8すなわち横骨に直交するようにパネル4にレーザ溶接する。
【0027】
なお、前述したパネル構造体1は、外板2にパネル4をレーザ溶接した後に、パネル4に対して縦骨5をレーザ溶接して組み立てているが、作業テーブル上でチャンネル部材3を並べて、パネル4に縦骨5をレーザ溶接し、その後、パネル4に外板2をレーザ溶接してもよい。
【0028】
次に、本発明に係る車両用パネル構造体の第2〜第4実施形態について説明するが、第1の実施形態と同一又は同等な構成部分については、同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0029】
[第2の実施形態]
図9〜図15に示すように、第2の実施形態に関するパネル構造体20において、チャンネル部材23の断面L字状の各立上げ部22には切り込み部が形成されておらず、縦骨25の本体部26及びフランジ部27には、リップ部22a付きのリブ部28の高さ及び幅より僅かに大きな切り込み部25aが形成されている。この切り込み部25aにより、外板2上に配置されたパネル24に対して、縦骨25をリブ部28側から組み付けることができ、パネル構造体20の組立て作業性を良好にし、さらに、パネル24の面板部29と縦骨25のフランジ部27との密着性を容易に担保することができる。
【0030】
パネル構造体20の組立てにあたって、図12及び図14に示すように、外板2上にチャンネル部材23の立上げ部22同士を密着させるようにしてチャンネル部材23を並べる。このとき、パネル24におけるリブ部28と反対側の面に外板2が密着される。その後、図13及び図14に示すように、外板2とパネル24は、クランプ用治具等によって位置固定された状態で、リブ部28と平行に延在する第1の溶接部Aによって接合される。
【0031】
外板2とパネル24との溶接後、図9及び図14に示すように、パネル24のリブ部28を縦骨25の切り込み部25a内に挿入して、パネル24の面板部29と縦骨25のフランジ部27とを密着させる。その後、パネル24の面板部29と縦骨25のフランジ部27は、クランプ用治具等によって位置固定させた状態で、リブ部28に対して直交して延在する第2の溶接部Bによって接合される。
【0032】
[第3の実施形態]
図16〜図21に示すように、第3の実施形態に関するパネル構造体30において、断面C字状のチャンネル部材33の断面I字状の各立上げ部32には切り込み部及びリップ部が形成されておらず、縦骨35の本体部36及びフランジ部37には、リブ部38の高さ及び幅より僅かに大きな切り込み部35aが形成されている。この切り込み部35aにより、外板2上に配置されたパネル34に対して、縦骨35をリブ部38側から組み付けることができ、パネル構造体30の組立て作業性を良好にし、さらに、パネル34の面板部39と縦骨35のフランジ部37との密着性を容易に担保することができる。
【0033】
パネル構造体30の組立てにあたって、図19及び図21に示すように、外板2上にチャンネル部材33の立上げ部32同士を密着させるようにしてチャンネル部材33を並べる。このとき、パネル34におけるリブ部38と反対側の面に外板2が密着される。その後、図20に示すように、外板2とパネル34は、クランプ用治具等によって位置固定された状態で、リブ部38と平行に延在する第1の溶接部Aによって接合される。
【0034】
外板2とパネル34との溶接後、図16及び図21に示すように、パネル34のリブ部38を縦骨35の切り込み部35a内に挿入して、パネル34の面板部39と縦骨35のフランジ部37とを密着させる。その後、パネル34の面板部39と縦骨35のフランジ部37は、クランプ用治具等によって位置固定させた状態で、リブ部38に対して直交して延在する第2の溶接部Bによって接合される。そして、パネル34のリブ部38の側面と縦骨35の本体部36とに左右一対のL形ブラケット11aを溶接し、リブ部38の頂部と縦骨35の本体部36とを溶接ビード部Dにより連結する。
【0035】
[第4の実施形態]
図22〜図26に示すように、第4の実施形態に関するパネル構造体40において、チャンネル部材43の断面L字状の各立上げ部42には切り込み部50が形成され、この切り込み部50は、縦骨45のスライド挿入を可能にするために、縦骨45の本体部46の幅より少し大きく切り欠かれた第1の部分50aと、縦骨45のフランジ部47の幅より少し大きく切り欠かれた第2の部分50bとでT字状に形成されている。これに対して、縦骨45には、切り込み部が形成されてない。チャンネル部材43の切り込み部50により、外板2上に配置されたパネル44に対して、縦骨45を横方向からスライドさせるように組み付けることができる。これにより、パネル構造体40の組立て作業性を良好にし、さらに、パネル44の面板部49と縦骨45のフランジ部47との密着性を容易に担保することができる。
【0036】
パネル構造体40の組立てにあたって、図22及び図25に示すように、外板2上にチャンネル部材43の立上げ部42同士を密着させるようにしてチャンネル部材43を並べる。このとき、隣接するチャンネル部材43の切り込み部50同士を位置合わせしながら作業が行われ、パネル44におけるリブ部48と反対側の面に外板2が密着される。その後、外板2とパネル44は、クランプ用治具等によって位置固定させた状態で、リブ部48と平行に延在する第1の溶接部Aによって接合される。
【0037】
外板2とパネル44との溶接後、図22及び図26に示すように、パネル44の切り込み部50内に横から縦骨45をスライドさせるように差し込みながら、パネル44の面板部49と縦骨45のフランジ部47とを密着させる。その後、パネル44の面板部49と縦骨45のフランジ部47は、クランプ用治具等によって位置固定させた状態で、リブ部48に対して直交して延在する第2の溶接部Bによって接合される。
【0038】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、図27に示すように、パネル構造体60に適用されるチャンネル部材61は、面板部62の両端に設けられた断面L字状の立上げ部63と、立上げ部63の間で面板部62に設けられた断面T字状のリブ部64とを備えている。さらに、立上げ部63及びリブ部64には切り込み部61aが形成されている。なお、リブ部64の本数は1本以上であれば、何本であってもよい。
【0039】
図28に示すように、パネル構造体70に適用されるチャンネル部材71は、面板部72の両端に設けられた断面L字状の立上げ部73と、立上げ部73の間で面板部72に設けられた断面T字状のリブ部74とを備えている。なお、リブ部74の本数は1本以上であれば、何本であってもよい。
【0040】
図29に示すように、パネル構造体80に適用されるチャンネル部材81は、面板部82の両端に設けられた断面I字状の立上げ部83と、立上げ部83の間で面板部82に設けられた断面I字状のリブ部84とを備えている。なお、リブ部84の本数は1本以上であれば、何本であってもよい。
【0041】
また、外板、パネル及び縦骨は、ステンレス鋼に限らず、アルミ合金、高張力鋼、一般鋼材などであってもよい。チャンネル部材3,23,33,43,61,71,81は、ロールフォーミング加工により成形されてもよい。溶接方法は、連続的又はスポット的なレーザ溶接に限らず、摩擦攪拌接合(FSW)、MIG溶接、アーク溶接、シーム溶接などであってもよく、溶接箇所に応じて溶接の種類は適宜選択される。また、外板2の板厚を変えることで、パネル構造体自体の剛性や強度を容易に変更することができる。また、本発明に係るパネル構造体は、鉄道車両に限らず、バスやトラックなどの車両にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る車両用パネル構造体の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】チャンネル部材を示す斜視図である。
【図3】縦骨を示す斜視図である。
【図4】外板上にチャンネル部材を並べた状態を示す斜視図である。
【図5】パネルを外板に溶接した状態を示す斜視図である。
【図6】図1のI−I線に沿う断面図である。
【図7】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図8】(a)は外板を示す平面図であり、(b)は、パネルに縦骨を溶接した状態を示す平面図である。
【図9】本発明に係る車両用パネル構造体の第2実施形態を示す斜視図である。
【図10】チャンネル部材を示す斜視図である。
【図11】縦骨を示す斜視図である。
【図12】外板上にチャンネル部材を並べた状態を示す斜視図である。
【図13】パネルを外板に溶接した状態を示す斜視図である。
【図14】図9のIII−III線に沿う断面図である。
【図15】図9のIV−IV線に沿う断面図である。
【図16】本発明に係る車両用パネル構造体の第3実施形態を示す斜視図である。
【図17】チャンネル部材を示す斜視図である。
【図18】縦骨を示す斜視図である。
【図19】外板上にチャンネル部材を並べた状態を示す斜視図である。
【図20】パネルを外板に溶接した状態を示す斜視図である。
【図21】図16のV−V線に沿う断面図である。
【図22】本発明に係る車両用パネル構造体の第4実施形態を示す斜視図である。
【図23】チャンネル部材を示す斜視図である。
【図24】縦骨を示す斜視図である。
【図25】図22のVI−VI線に沿う断面図である。
【図26】図22のVII−VII線に沿う断面図である。
【図27】車両用パネル構造体の第5実施形態に係るチャンネル部材を示す斜視図である。
【図28】車両用パネル構造体の第6実施形態に係るチャンネル部材を示す斜視図である。
【図29】車両用パネル構造体の第7実施形態に係るチャンネル部材を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1,20,30,40,60,70,80…車両用パネル構造体、2…外板、3,23,33,43,61,71,81…チャンネル部材、3a,4a,5a,25a,35a,50…切り込み部,4,24,34,44…パネル、5,25,35,45…縦骨、6,29,39,49,62,72,82…面板部、7,22,32,42,63,73,83…立上げ部、7a…リップ部、8,28,38,48…リブ部、10,27,37,47…フランジ部、11a,11b…ブラケット、A…第1の溶接部、B…第2の溶接部、C…交差部分。
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の側構体、妻構体、屋根構体などに利用される車両用パネル構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2005−329412号公報がある。この公報に記載されたパネル構造体は、ハット形状の第1の補強部材が外板に対しスポット溶接によって固定され、各第1の補強部材は、外板に並設させた状態でパネルの横骨として機能する。さらに、第1の補強部材の頂部にハット形状の第2の補強部材がスポット溶接により固定され、第2の補強部材は、パネルの縦骨として機能する。そして、このようなパネル構造体では、補強部材が縦と横とでクロスするように配置され、鉄道車両の捻れや撓みに対する強化を図っている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−329412号公報
【特許文献2】特許第2763984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の車両用パネル構造体は、縦骨として機能する第2の補強部材が外板から離間し、ハット形状の部材によって浮き骨構造のパネルとして構成されている。このような構造は、車両に捩りや撓みが発生した場合に、縦骨→横骨→外板又は外板→横骨→縦骨への力の伝達効率が悪く、車両の走行時に常に発生し続けている捩り力や撓み力など、不規則に発生し続ける力を効率良く逃がしてやることが難しかった。そして、このようなパネル構造体で剛性や強度のアップを図る場合、縦骨の本数を増やしたり、板厚を厚くしたりする必要があり、その結果としてパネル構造体の重量アップを招来する。
【0005】
本発明は、軽量化しつつ、剛性や強度アップを可能にした車両用パネル構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用パネル構造体は、面板部とこの面板部の両端に設けられた立上げ部とを有するチャンネル部材の立上げ部同士を密着させてなるリブ部をもったパネルと、チャンネル部材の並設方向に延在してパネルに溶接されるフランジ部を有する縦骨とを備え、パネルの面板部と縦骨のフランジ部とは、密着させた状態で溶接されていることを特徴とする。
【0007】
この車両用パネル構造体では、チャンネル部材の立上げ部同士を密着させてなるリブ部をもったパネルと、このチャンネル部材の並設方向に延在してパネルに溶接されるフランジ部を有する縦骨とが利用され、このようなパネルと縦骨とを接合する際の工夫として、パネルの面板部と縦骨のフランジ部とを密着させた状態で溶接している。このような構成によって、縦骨とパネルとの間の力の伝達効率が良好になり、車両の走行時に常に発生し続けている捩り力や撓み力など、不規則に発生し続ける荷重を効率良く逃がしてやることができる。さらに、断面C字状のチャンネル部材の採用により、剛性や強度のアップが図られ、縦骨の本数を減らすことができ、その結果としてパネル構造体の軽量化を可能にしている。
【0008】
また、パネルのリブ部と縦骨との交差部分には、リブ部と縦骨との少なくとも一方に切り込み部が設けられていると好適である。このような構成を採用した場合、交差部分に切り込み部があることで、パネルの面板部と縦骨のフランジ部との密着性を担保しつつ、パネル構造体の組立て作業性を良好にすることができる。
【0009】
また、交差部分において、パネルのリブ部と縦骨とはL形ブラケットにより連結されていると好適である。L形ブラケットの利用により、パネルと縦骨との接合を簡単かつ確実に補強することができる。
【0010】
また、パネルにおけるリブ部と反対側の面に外板が密着され、外板とパネルは、リブ部と平行に延在する第1の溶接部によって接合され、パネルの面板部と縦骨のフランジ部は、リブ部に対して直交して延在する第2の溶接部によって接合され、第1及び第2の溶接部は、リブ部側から施工されると共に、外板の外表面にまで達していないと好適である。このような構成によって、外板は、外観に溶接跡の無い化粧板として機能する。そして、外板の板厚を変えることで、パネル構造体自体の剛性や強度を容易に変更することができる。
【0011】
また、第1及び第2の溶接部は、レーザ溶接であると好適である。レーザ溶接により、外板とパネルと縦骨との溶接作業性が良好になる。
【0012】
また、リブ部の遊端側には、面板部と平行に延在するリップ部が設けられていると好適である。このような構成によって、パネル構造体の横骨として機能するリブ部の強度アップを図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軽量化しつつ、剛性や強度アップを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る車両用パネル構造体の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1に示すように、車両用パネル構造体1は、鉄道車両の側構体、妻構体、屋根構体及び屋根構体などに適用可能である。このパネル構造体1は、外面側が車両から露出することを予定したステンレス製の外板2と、この外板2の内面側で所定枚数の断面C字状のチャンネル部材3を並設して、外板2に溶接されるパネル4と、チャンネル部材3の並設方向に延在してパネル4に溶接される縦骨5とを備えている。
【0016】
図2に示すように、パネル4の構成要素であるステンレス製のチャンネル部材3は、長方形の面板部6と、この面板部6の長手側における両端に設けられた断面L字状の立上げ部7とで断面C字状を形成している。そして、強度アップを図るために、立上げ部7の遊端側には、面板部6と平行に延在し且つ長手方向にも延在するリップ部7aが設けられている。このような構成のチャンネル部材3の立上げ部7同士を外板2上で密着させることにより、パネル4には、長手方向に延在する断面T字状のリブ部8(図4参照)が形成されることになる。そして、このリブ部8が、パネル構造体1自体の横骨を構成する。
【0017】
図3に示すように、ステンレス鋼からなる縦骨5は、断面コ字状の本体部9と、この本体部9の長手側における両端から直交して突出するフランジ部10とでハット形状をなす。このフランジ部10は、チャンネル部材3の並設方向(リブ部8に対して直交する方向)に延在してパネル4に溶接される。縦骨5がハット形状をなすことで、縦骨5の強度アップを図ると共に、溶接面の確保を容易にしている。
【0018】
さらに、パネル構造体1では、図1に示すように、パネル4のリブ部8と縦骨5とが直交するように交差する。そこで、パネル4の面板部6と縦骨5のフランジ部10とを、密着させた状態で溶接することを容易にするために、交差部分Cにおいて、リブ部8と縦骨5との少なくとも一方に切り込み部が設けられている。
【0019】
例えば、第1の実施形態にあっては、図2に示すように、チャンネル部材3の各立上げ部7には、縦骨5の本体部9の幅より僅かに広い切り込み部3aが形成され、図3に示すように、縦骨5の各フランジ部10には、リブ部8の幅より僅かに広い切り込み部5aが形成されている。このような切り込み部3a,5aにより、外板2上に配置されたパネル4に対して、縦骨5をリブ部8側から組み付けることができ、パネル構造体1の組立て作業性を良好にし、さらに、パネル4の面板部6と縦骨5のフランジ部10との密着性を容易に担保することができる。
【0020】
パネル構造体1の組立てにあたって、図4及び図6に示すように、外板2上にチャンネル部材3の立上げ部7同士を密着させるようにしてチャンネル部材3を並べる。このとき、隣接するチャンネル部材3の切り込み部3a同士を位置合わせしながら作業が行われ、パネル4においては、リブ部8と反対側の面が外板2に密着される。そして、外板2上で立上げ部7同士を密着させた後、リベットなどの機械的な締結やレーザ溶接などによって、立上げ部7同士を接合させる。なお、隣接するチャンネル部材3の切り込み3a同士を並設させることでパネル4の切り込み部4aが形成される。
【0021】
外板2上にチャンネル部材3を並置した後、図5及び図6に示すように、外板2とパネル4は、クランプ用治具等によって位置固定された状態で、リブ部8と平行に延在する第1の溶接部Aによって接合される。この第1の溶接部Aは、レーザによる直線的な連続溶接部であり、この溶接は、リブ部8側から施工されると共に、面板部6上をリブ部8に対して平行にレーザを走査させながら行われる。さらに、第1の溶接部Aは、外板2の外表面にまで達していない。このような半貫通溶接によって、外板2は、外観に溶接跡の無い化粧板として機能する。なお、第1の溶接部Aの施工には、レーザ溶接の際の酸化防止のためのアシストガスを利用するのが好ましい。
【0022】
外板2とパネル4との溶接後、図1及び図7に示すように、パネル4の切り込み部4aと縦骨5の切り込み部5a(図6参照)とを位置合わせしながら、パネル4の面板部6と縦骨5のフランジ部10とを密着させる。この場合、第1の溶接部Aは、縦骨5のフランジ部10が被さる部分において研削加工などで平滑化され、パネル4の面板部6と縦骨5のフランジ部10との密着性を高めている。
【0023】
その後、パネル4の面板部6と縦骨5のフランジ部10は、クランプ用治具等によって位置固定された状態で、リブ部8に対して直交して延在する第2の溶接部Bによって接合される。この第2の溶接部Bは、レーザによる直線的な連続溶接部であり、この溶接は、リブ部8側から施工されると共に、フランジ部10上をリブ部8に対して直交する方向にレーザを走査させながら行われる。さらに、第2の溶接部Bは、外板2の外表面にまで達していない。このような半貫通溶接によって、外板2は、外観に溶接跡の無い化粧板として機能する。第2の溶接部Bの施工には、レーザ溶接の際の酸化防止のためのアシストガスを利用するのが好ましい。
【0024】
さらに、交差部分Cにおいて、パネル4のリブ部8の側面と縦骨5とはL形ブラケット11a,11bにより連結される。例えば、左右一対のL形ブラケット11aは、縦骨5の本体部9とリブ部8におけるチャンネル部材3の立上げ部7の側面とに密着させた状態で溶接される。また、上方のL形ブラケット11bは、縦骨5の本体部9と、リブ部8におけるチャンネル部材3の立上げ部7のリップ部7aとに密着させた状態で溶接される。L形ブラケット11a,11bの採用により、パネル4と縦骨5との接合を簡単かつ確実に補強することができる。
【0025】
このような車両用パネル構造体1では、断面C字状をなすチャンネル部材3の立上げ部7同士を密着させてなるリブ部8をもったパネル4と、このチャンネル部材3の並設方向に延在してパネル4に溶接されるフランジ部10を有する縦骨5とが利用され、このようなパネル4と縦骨5とを接合する際の工夫として、パネル4の面板部6と縦骨5のフランジ部10とを密着させた状態で溶接している。このような構成によって、縦骨5とパネル4との間の力の伝達効率が良好になり、車両の走行時に常に発生し続けている捩り力や撓み力など、不規則に発生し続ける荷重を効率良く逃がしてやることができる。さらに、断面C字状のチャンネル部材の採用により、剛性や強度のアップが図られ、縦骨5の本数を減らすことができ、その結果としてパネル構造体1の軽量化を可能にしている。
【0026】
ここで、前述したパネル構造体1を側構体に適用した例について説明する。例えば、窓穴2aをもったT字状の外板2(図8(a)参照)と、この形状に合うような長さにカットされた所定枚数のチャンネル部材3(図8(b)参照)とを準備する。そして、外板2上に各チャンネル部材3を並設させ、外板2とパネル4とをレーザ溶接後に、縦骨5をリブ部8すなわち横骨に直交するようにパネル4にレーザ溶接する。
【0027】
なお、前述したパネル構造体1は、外板2にパネル4をレーザ溶接した後に、パネル4に対して縦骨5をレーザ溶接して組み立てているが、作業テーブル上でチャンネル部材3を並べて、パネル4に縦骨5をレーザ溶接し、その後、パネル4に外板2をレーザ溶接してもよい。
【0028】
次に、本発明に係る車両用パネル構造体の第2〜第4実施形態について説明するが、第1の実施形態と同一又は同等な構成部分については、同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0029】
[第2の実施形態]
図9〜図15に示すように、第2の実施形態に関するパネル構造体20において、チャンネル部材23の断面L字状の各立上げ部22には切り込み部が形成されておらず、縦骨25の本体部26及びフランジ部27には、リップ部22a付きのリブ部28の高さ及び幅より僅かに大きな切り込み部25aが形成されている。この切り込み部25aにより、外板2上に配置されたパネル24に対して、縦骨25をリブ部28側から組み付けることができ、パネル構造体20の組立て作業性を良好にし、さらに、パネル24の面板部29と縦骨25のフランジ部27との密着性を容易に担保することができる。
【0030】
パネル構造体20の組立てにあたって、図12及び図14に示すように、外板2上にチャンネル部材23の立上げ部22同士を密着させるようにしてチャンネル部材23を並べる。このとき、パネル24におけるリブ部28と反対側の面に外板2が密着される。その後、図13及び図14に示すように、外板2とパネル24は、クランプ用治具等によって位置固定された状態で、リブ部28と平行に延在する第1の溶接部Aによって接合される。
【0031】
外板2とパネル24との溶接後、図9及び図14に示すように、パネル24のリブ部28を縦骨25の切り込み部25a内に挿入して、パネル24の面板部29と縦骨25のフランジ部27とを密着させる。その後、パネル24の面板部29と縦骨25のフランジ部27は、クランプ用治具等によって位置固定させた状態で、リブ部28に対して直交して延在する第2の溶接部Bによって接合される。
【0032】
[第3の実施形態]
図16〜図21に示すように、第3の実施形態に関するパネル構造体30において、断面C字状のチャンネル部材33の断面I字状の各立上げ部32には切り込み部及びリップ部が形成されておらず、縦骨35の本体部36及びフランジ部37には、リブ部38の高さ及び幅より僅かに大きな切り込み部35aが形成されている。この切り込み部35aにより、外板2上に配置されたパネル34に対して、縦骨35をリブ部38側から組み付けることができ、パネル構造体30の組立て作業性を良好にし、さらに、パネル34の面板部39と縦骨35のフランジ部37との密着性を容易に担保することができる。
【0033】
パネル構造体30の組立てにあたって、図19及び図21に示すように、外板2上にチャンネル部材33の立上げ部32同士を密着させるようにしてチャンネル部材33を並べる。このとき、パネル34におけるリブ部38と反対側の面に外板2が密着される。その後、図20に示すように、外板2とパネル34は、クランプ用治具等によって位置固定された状態で、リブ部38と平行に延在する第1の溶接部Aによって接合される。
【0034】
外板2とパネル34との溶接後、図16及び図21に示すように、パネル34のリブ部38を縦骨35の切り込み部35a内に挿入して、パネル34の面板部39と縦骨35のフランジ部37とを密着させる。その後、パネル34の面板部39と縦骨35のフランジ部37は、クランプ用治具等によって位置固定させた状態で、リブ部38に対して直交して延在する第2の溶接部Bによって接合される。そして、パネル34のリブ部38の側面と縦骨35の本体部36とに左右一対のL形ブラケット11aを溶接し、リブ部38の頂部と縦骨35の本体部36とを溶接ビード部Dにより連結する。
【0035】
[第4の実施形態]
図22〜図26に示すように、第4の実施形態に関するパネル構造体40において、チャンネル部材43の断面L字状の各立上げ部42には切り込み部50が形成され、この切り込み部50は、縦骨45のスライド挿入を可能にするために、縦骨45の本体部46の幅より少し大きく切り欠かれた第1の部分50aと、縦骨45のフランジ部47の幅より少し大きく切り欠かれた第2の部分50bとでT字状に形成されている。これに対して、縦骨45には、切り込み部が形成されてない。チャンネル部材43の切り込み部50により、外板2上に配置されたパネル44に対して、縦骨45を横方向からスライドさせるように組み付けることができる。これにより、パネル構造体40の組立て作業性を良好にし、さらに、パネル44の面板部49と縦骨45のフランジ部47との密着性を容易に担保することができる。
【0036】
パネル構造体40の組立てにあたって、図22及び図25に示すように、外板2上にチャンネル部材43の立上げ部42同士を密着させるようにしてチャンネル部材43を並べる。このとき、隣接するチャンネル部材43の切り込み部50同士を位置合わせしながら作業が行われ、パネル44におけるリブ部48と反対側の面に外板2が密着される。その後、外板2とパネル44は、クランプ用治具等によって位置固定させた状態で、リブ部48と平行に延在する第1の溶接部Aによって接合される。
【0037】
外板2とパネル44との溶接後、図22及び図26に示すように、パネル44の切り込み部50内に横から縦骨45をスライドさせるように差し込みながら、パネル44の面板部49と縦骨45のフランジ部47とを密着させる。その後、パネル44の面板部49と縦骨45のフランジ部47は、クランプ用治具等によって位置固定させた状態で、リブ部48に対して直交して延在する第2の溶接部Bによって接合される。
【0038】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、図27に示すように、パネル構造体60に適用されるチャンネル部材61は、面板部62の両端に設けられた断面L字状の立上げ部63と、立上げ部63の間で面板部62に設けられた断面T字状のリブ部64とを備えている。さらに、立上げ部63及びリブ部64には切り込み部61aが形成されている。なお、リブ部64の本数は1本以上であれば、何本であってもよい。
【0039】
図28に示すように、パネル構造体70に適用されるチャンネル部材71は、面板部72の両端に設けられた断面L字状の立上げ部73と、立上げ部73の間で面板部72に設けられた断面T字状のリブ部74とを備えている。なお、リブ部74の本数は1本以上であれば、何本であってもよい。
【0040】
図29に示すように、パネル構造体80に適用されるチャンネル部材81は、面板部82の両端に設けられた断面I字状の立上げ部83と、立上げ部83の間で面板部82に設けられた断面I字状のリブ部84とを備えている。なお、リブ部84の本数は1本以上であれば、何本であってもよい。
【0041】
また、外板、パネル及び縦骨は、ステンレス鋼に限らず、アルミ合金、高張力鋼、一般鋼材などであってもよい。チャンネル部材3,23,33,43,61,71,81は、ロールフォーミング加工により成形されてもよい。溶接方法は、連続的又はスポット的なレーザ溶接に限らず、摩擦攪拌接合(FSW)、MIG溶接、アーク溶接、シーム溶接などであってもよく、溶接箇所に応じて溶接の種類は適宜選択される。また、外板2の板厚を変えることで、パネル構造体自体の剛性や強度を容易に変更することができる。また、本発明に係るパネル構造体は、鉄道車両に限らず、バスやトラックなどの車両にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る車両用パネル構造体の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】チャンネル部材を示す斜視図である。
【図3】縦骨を示す斜視図である。
【図4】外板上にチャンネル部材を並べた状態を示す斜視図である。
【図5】パネルを外板に溶接した状態を示す斜視図である。
【図6】図1のI−I線に沿う断面図である。
【図7】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図8】(a)は外板を示す平面図であり、(b)は、パネルに縦骨を溶接した状態を示す平面図である。
【図9】本発明に係る車両用パネル構造体の第2実施形態を示す斜視図である。
【図10】チャンネル部材を示す斜視図である。
【図11】縦骨を示す斜視図である。
【図12】外板上にチャンネル部材を並べた状態を示す斜視図である。
【図13】パネルを外板に溶接した状態を示す斜視図である。
【図14】図9のIII−III線に沿う断面図である。
【図15】図9のIV−IV線に沿う断面図である。
【図16】本発明に係る車両用パネル構造体の第3実施形態を示す斜視図である。
【図17】チャンネル部材を示す斜視図である。
【図18】縦骨を示す斜視図である。
【図19】外板上にチャンネル部材を並べた状態を示す斜視図である。
【図20】パネルを外板に溶接した状態を示す斜視図である。
【図21】図16のV−V線に沿う断面図である。
【図22】本発明に係る車両用パネル構造体の第4実施形態を示す斜視図である。
【図23】チャンネル部材を示す斜視図である。
【図24】縦骨を示す斜視図である。
【図25】図22のVI−VI線に沿う断面図である。
【図26】図22のVII−VII線に沿う断面図である。
【図27】車両用パネル構造体の第5実施形態に係るチャンネル部材を示す斜視図である。
【図28】車両用パネル構造体の第6実施形態に係るチャンネル部材を示す斜視図である。
【図29】車両用パネル構造体の第7実施形態に係るチャンネル部材を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1,20,30,40,60,70,80…車両用パネル構造体、2…外板、3,23,33,43,61,71,81…チャンネル部材、3a,4a,5a,25a,35a,50…切り込み部,4,24,34,44…パネル、5,25,35,45…縦骨、6,29,39,49,62,72,82…面板部、7,22,32,42,63,73,83…立上げ部、7a…リップ部、8,28,38,48…リブ部、10,27,37,47…フランジ部、11a,11b…ブラケット、A…第1の溶接部、B…第2の溶接部、C…交差部分。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面板部とこの面板部の両端に設けられた立上げ部とを有するチャンネル部材の前記立上げ部同士を密着させてなるリブ部をもったパネルと、前記チャンネル部材の並設方向に延在して前記パネルに溶接されるフランジ部を有する縦骨とを備え、
前記パネルの面板部と前記縦骨の前記フランジ部とは、密着させた状態で溶接されていることを特徴とする車両用パネル構造体。
【請求項2】
前記パネルの前記リブ部と前記縦骨との交差部分には、前記リブ部と前記縦骨との少なくとも一方に切り込み部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の車両用パネル構造体。
【請求項3】
前記交差部分において、前記パネルの前記リブ部と前記縦骨とはL形ブラケットにより連結されていることを特徴とする請求項2記載の車両用パネル構造体。
【請求項4】
前記パネルにおける前記リブ部と反対側の面に外板が密着され、前記外板と前記パネルは、前記リブ部と平行に延在する第1の溶接部によって接合され、前記パネルの前記面板部と前記縦骨の前記フランジ部は、前記リブ部に対して直交して延在する第2の溶接部によって接合され、
前記第1及び第2の溶接部は、前記リブ部側から施工されると共に、前記外板の外表面にまで達していないことを特徴とする請求項2又は3記載の車両用パネル構造体。
【請求項5】
前記第1及び第2の溶接部は、レーザ溶接であることを特徴とする請求項4記載の車両用パネル構造体。
【請求項6】
前記リブ部の遊端側には、前記面板部と平行に延在するリップ部が設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項記載の車両用パネル構造体。
【請求項1】
面板部とこの面板部の両端に設けられた立上げ部とを有するチャンネル部材の前記立上げ部同士を密着させてなるリブ部をもったパネルと、前記チャンネル部材の並設方向に延在して前記パネルに溶接されるフランジ部を有する縦骨とを備え、
前記パネルの面板部と前記縦骨の前記フランジ部とは、密着させた状態で溶接されていることを特徴とする車両用パネル構造体。
【請求項2】
前記パネルの前記リブ部と前記縦骨との交差部分には、前記リブ部と前記縦骨との少なくとも一方に切り込み部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の車両用パネル構造体。
【請求項3】
前記交差部分において、前記パネルの前記リブ部と前記縦骨とはL形ブラケットにより連結されていることを特徴とする請求項2記載の車両用パネル構造体。
【請求項4】
前記パネルにおける前記リブ部と反対側の面に外板が密着され、前記外板と前記パネルは、前記リブ部と平行に延在する第1の溶接部によって接合され、前記パネルの前記面板部と前記縦骨の前記フランジ部は、前記リブ部に対して直交して延在する第2の溶接部によって接合され、
前記第1及び第2の溶接部は、前記リブ部側から施工されると共に、前記外板の外表面にまで達していないことを特徴とする請求項2又は3記載の車両用パネル構造体。
【請求項5】
前記第1及び第2の溶接部は、レーザ溶接であることを特徴とする請求項4記載の車両用パネル構造体。
【請求項6】
前記リブ部の遊端側には、前記面板部と平行に延在するリップ部が設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項記載の車両用パネル構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2008−87543(P2008−87543A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268426(P2006−268426)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】
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