説明

車両用ブレーキ液圧制御装置

【課題】基体の小型化を達成できる車両用ブレーキ液圧制御装置を提供する。
【解決手段】基体10には、一面11から背面12まで貫通するハウジング取付用貫通孔17と、背面12に開口するモータ取付穴18と、モータ50の回転軸が収容される回転軸収容穴15とが設けられており、ハウジング取付用貫通孔17は、回転軸収容穴15の中心Pを対称点として二箇所に点対称配置され、モータ取付穴18は、回転軸収容穴15の中心Pを対称点としてハウジング取付用貫通孔17とは別位置で二箇所に点対称配置された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用ブレーキ液圧制御装置としては、特許文献1に示すようなものがあった。特許文献1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置では、ハウジング装置の基体に対向する面にハウジング取付穴が形成されるとともに、基体にハウジング取付用貫通孔が形成されている。そして、基体のハウジング装着面とは逆側の面(背面)側からハウジング取付用貫通孔にハウジング取付ねじを挿入して、その取付ねじの先端をハウジング装置のハウジング取付穴に螺合させて、ハウジング装置と基体とを一体的に締め付けることで、ハウジング装置を基体に固定している。
【0003】
一方、基体の背面には、モータ取付穴が形成されており、モータに形成されたフランジ部にモータ取付ねじを挿通して、その先端をモータ取付穴に螺合させることで、モータを基体に固定している。
【0004】
このような構成によれば、以下のような作用効果を得られる。つまり、ハウジング取付ねじを基体の背面側から貫通させてハウジング取付穴に螺合させることで、ハウジング装置を基体に固定し、一方、モータ取付ねじをフランジ部に挿通させてモータ取付穴に螺合させることで、モータを基体に固定しているので、一のねじが三部材に跨ることがなく、部材間の公差を最小限にできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−6855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記のような車両用ブレーキ液圧制御装置では、4本のハウジング取付ねじと、2本のモータ取付ねじを用いているので、基体には、各ねじに対応するハウジング取付用貫通孔とモータ取付穴をそれぞれ形成しなければならない。そのため、基体の内部の配管やレイアウトが制約を受けてしまい、基体の小型化を困難なものとしていた。さらに、部品点数や加工工数が増加するといった課題もあった。
【0007】
このような観点から、本発明は、基体の小型化を達成できる車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決する請求項1に係る発明は、基体と、この基体の一面に設けられた電磁弁と該電磁弁に装着されるコイル組立体とを収容する収容空間を備えたコントロールハウジングと、前記基体の前記一面に対する背面に設けられたポンプ駆動用モータとを備えた車両用ブレーキ液圧制御装置において、前記基体には、前記一面から前記背面まで貫通して形成され前記コントロールハウジングを固定するハウジング取付ねじが挿通されるハウジング取付用貫通孔と、前記背面に開口して形成され前記モータを固定するモータ取付ねじが挿入されるモータ取付穴と、前記背面に開口して形成され前記モータの回転軸が収容される回転軸収容穴とが設けられており、前記ハウジング取付用貫通孔は、前記回転軸収容穴の中心を対称点として二箇所に点対称配置され、前記モータ取付穴は、前記回転軸収容穴の中心を対称点として前記ハウジング取付用貫通孔とは別位置で二箇所に点対称配置されたことを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置である。
【0009】
このような構成によれば、ハウジング取付用貫通孔およびモータ取付穴が、それぞれ回転軸収容穴の中心を対称点として二箇所に点対称配置されることで、バランス良く配置されるので、基体とハウジングおよびモータとの取付箇所を最小限とすることができる。これによって、部品点数を低減できるとともに、基体の省スペース化およびレイアウト性の向上を図ることができ、基体の小型化を達成できる。
【0010】
そして、本発明は、前記背面側から見て、二つの前記ハウジング取付用貫通孔の位置と二つの前記モータ取付穴の位置とが矩形の頂点を構成するように、前記ハウジング取付用貫通孔と前記モータ取付穴とが配置されていることを特徴とするものが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、ハウジング取付用貫通孔およびモータ取付穴が、背面側から見て、水平方向および垂直方向にバランス良く配置されるので、耐振動性の向上と、より一層の基体の小型化が図れる。
【0012】
また、本発明は、前記基体には、前記回転軸収容穴から前記基体の側面に貫通する一対のポンプ収容孔が形成されており、前記ハウジング取付用貫通孔と前記モータ取付穴は、前記ポンプ収容孔と非干渉の近接位置で、前記ポンプ収容孔を挟むように配置されていることを特徴とするものが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、ハウジング取付用貫通孔とモータ取付穴が、ポンプ収容孔に干渉しない近接した位置でポンプ収容孔を挟むように配置されるので、基体のポンプ収容孔の軸方向と直交する方向の寸法を最小限にすることができる。
【0014】
さらに、本発明は、前記背面側から見て、前記コントロールハウジングの前記基体側の開口部は、二つの前記ハウジング取付用貫通孔の位置を直径の両端とする円の範囲内に納まることを特徴とするものが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、コントロールハウジングの固定箇所(二つのハウジング取付用貫通孔)間の距離に対して、ハウジングの開口部の幅が過度に大きくならないので、2つのハウジング取付ねじの締付力を収容空間の開口部の全周に渡って有効に伝達することができ、コントロールハウジングの基体への固定性能を高めることができる。
【0016】
また、前記コントロールハウジングの前記開口部は、正方形形状を呈していることを特徴とするものが好ましい。
【0017】
ここで、正方形形状とは、各辺の長さが等しい矩形であって、コーナー部が面取りされたものも含む。このような構成によれば、2つのハウジング取付ねじを収容空間の開口部に対してバランス良く配置できるので、コントロールハウジングの基体への固定性能をより一層高めることができる。
【0018】
さらに、本発明は、前記コントロールハウジングの前記収容空間を区画する周壁部には、フランジ部が外方に突出して形成されており、前記フランジ部には、前記ハウジング取付ねじが螺合されるハウジング固定穴と、該ハウジング固定穴の周囲部から前記周壁部の外周縁部に延在する補強リブとが設けられていることを特徴とするものが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、補強リブを介して、2つのハウジング取付ねじの締付力を周壁部の外周縁部に有効に伝達することができるので、コントロールハウジングの基体への固定性能をより一層高めることができる。
【0020】
また、本発明は、前記背面側から見て、前記モータの回転軸心位置と、前記コントロールハウジングの前記基体側の開口部の中心位置とが重なるように構成されていることを特徴とするものが好ましい。
【0021】
このような構成によれば、モータおよびコントロールハウジングの重量バランスが良好になるので、基体へ安定した状態で固定されることとなり、モータおよびコントロールハウジングの基体への固定性能をより一層高めることができる。
【0022】
さらに、本発明は、前記コントロールハウジングの前記収容空間を区画する周壁部は矩形枠状に形成され、前記周壁部の四辺のうち互いに対向する一対の辺には、それぞれフランジ部が外方に突出して形成され、前記フランジ部には、前記ハウジング取付ねじが螺合されるハウジング固定穴が設けられており、前記基体の前記一面と前記周壁部との間には、シール部材が介設され、前記シール部材は、前記周壁部に沿う矩形枠状の周縁部と、該周縁部の各辺から内側に突出する複数の帯状の舌部とを備えてなり、前記舌部は、前記ハウジング固定穴に隣接する前記周壁部の前記一対の辺に設けられた固定部近接舌部を備えており、前記固定部近接舌部が設けられた位置でのみ前記舌部が前記基体と前記コイル組立体とで挟まれることを特徴とするものが好ましい。
【0023】
このような構成によれば、コイル組立体と基体で挟まれた固定部近接舌部には、反力(復元力)が発生するが、この部分はハウジング取付ねじで締め付けられているので、コントロールハウジングおよびコイル組立体が基体から離反することはなく、この部分のシール性能が低下することはない。
【0024】
さらに、本発明は、前記周壁部および前記シール部材の前記周縁部は、正方形枠状に形成されていることを特徴とするものが好ましい。
【0025】
このような構成によれば、シール部材の設置方向が90度単位でどの方向でも自由に組み付けることができ、シール部材の設置方向を規制する必要がないので、組付け作業性を向上させることができる。
【0026】
そして、本発明は、前記舌部は、前記固定部近接舌部に直交する方向に延在する他方の辺に設けられた固定部遠隔舌部をさらに備えており、前記コイル組立体は、前記固定部遠隔舌部から離間して配置されていることを特徴とするものが好ましい。
【0027】
このような構成によれば、ハウジング取付ねじで強固に締め付けられた固定部近接舌部以外の舌部(固定部遠隔舌部)は、コイル組立体と基体に挟まれないので、必要以上に大きな反力が発生することはない。したがって、締め付けられていない部分でコントロールハウジングが変形することはなく、シール性能の低下を防止できる。
【0028】
また、本発明は、前記周縁部の各辺には、前記固定部近接舌部または前記固定部遠隔舌部がそれぞれ同一形状に形成されていることを特徴とするものが好ましい。
【0029】
このような構成によれば、周壁部の各辺が同一形状になるので、シール部材の設置方向が90度単位でどの方向でも自由に組み付けることができる。これによって、シール部材の設置方向を規制する必要がないので、組付け作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、基体の小型化を達成できるといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置を示した分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置を示した斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置を示した背面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置を示した上面図である。
【図5】図3のA−A線断面図である。
【図6】(a)は図3のB−B線断面図、(b)は(a)のD部拡大図である。
【図7】(a)は図4のC−C線断面図、(b)は(a)のE部拡大図である。
【図8】(a)はコントロールハウジングを示した背面図、(b)はコントロールハウジングにシール部材を取り付けた状態を示した背面図である。
【図9】(a)はシール部材を示した背面図、(b)はシール部材を示した断面図、(c)はシール部材を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、本実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の全体構成を説明する。
【0033】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置1は、基体10と、この基体10の一面11に配設された電磁弁20と、基体10の一面11に装着されたコントロールハウジング30と、基体10の一面11に対する背面(一面の裏側の面)12に配設されたモータ50(ポンプ駆動用モータ)と、を備えて構成されている。基体10の一面11とコントロールハウジング30との間には、シール部材60(図1参照)が介設されている。
【0034】
図1に示すように、基体10は、略直方体に形成される金属部材であって、内部にブレーキ液の流路やモータの回転軸収容穴14やポンプ収容孔15等が形成されている。回転軸収容穴14は、基体10の背面12に開口する断面円形の有底の穴で、モータ50の回転軸(図示せず)が収容される。ポンプ収容孔15は、回転軸収容穴14から基体10の両側面13にそれぞれ貫通する孔で、回転軸収容穴14の両側に一対設けられている。ポンプ収容孔15は、側面13に対して直角方向(法線方向)に延在している。各ポンプ収容孔15は、互いに同一軸線上に形成されている。基体10の一面11には、電磁弁20を取り付けるための取付穴16(図6および図7参照)がブレーキ液の流路に連通して形成されている。
【0035】
図1および図5に示すように、基体10には、ハウジング取付用貫通孔17とモータ取付穴18が形成されている。ハウジング取付用貫通孔17は、コントロールハウジング30を基体10に固定するためのハウジング取付ねじ80が貫通される孔である。ハウジング取付用貫通孔17は、基体10の一面11と背面12の両面に開口するように基体10を貫通して形成されており、一面11に対して直角方向(一面11の法線方向)に延在している。
【0036】
モータ取付穴18は、背面12に開口して形成されており、モータ50を固定するモータ取付ねじ81が挿入される有底の穴である。モータ取付穴18には、雌ねじが形成されており、モータ取付ねじ81が螺合する。モータ取付ねじ81は、モータ50のフランジ部51に形成されたモータ取付用貫通孔52を貫通してモータ取付穴18に螺合される。
【0037】
図3に示すように、ハウジング取付用貫通孔17は、基体10を背面側から見て、回転軸収容穴14の中心Pを対称点として二箇所に点対称配置されている。また、モータ取付穴18は、基体10を背面側から見て、回転軸収容穴14の中心Pを対称点として、ハウジング取付用貫通孔17とは別位置で二箇所に点対称配置されている。さらに、背面側から見て、二つのハウジング取付用貫通孔17,17の位置と二つのモータ取付穴18,18の位置とが矩形(本実施形態では長方形)の頂点を構成するように、ハウジング取付用貫通孔17,17とモータ取付穴18,18とが配置されている。二つのハウジング取付用貫通孔17,17の位置と二つのモータ取付穴18,18の位置とで構成される長方形の内側に、組付け後の車両用ブレーキ液圧制御装置1の重心が位置するように構成されている。
【0038】
ハウジング取付用貫通孔17とモータ取付穴18は、ポンプ収容孔15と干渉しない近接位置で、ポンプ収容孔15を挟むように配置されている。言い換えれば、各ポンプ収容孔15の直上には、ハウジング取付用貫通孔17およびモータ取付穴18の一方が配置され、ポンプ収容孔15の直下には、ハウジング取付用貫通孔17およびモータ取付穴18の他方が配置されている。なお、本実施形態における上下方向は、図1の上下の方向であって、車両用ブレーキ液圧制御装置1を車体に取り付けたときの上下方向とは違う場合がある。ポンプ収容孔15は、ハウジング取付用貫通孔17とモータ取付穴18とで上下から挟まれた位置に配置されている。
【0039】
具体的には、背面側から見て左側に位置するポンプ収容孔15の直上には、モータ取付穴18が配置され、同じポンプ収容孔15の直下には、ハウジング取付用貫通孔17が形成されている。一方、背面側から見て右側に位置するポンプ収容孔15の直上には、ハウジング取付用貫通孔17が配置され、同じポンプ収容孔15の直下には、モータ取付穴18が形成されている。なお、本発明において、ポンプ収容孔15の直上とは、ポンプ収容孔15の上側で、ポンプ収容孔15に干渉しない部分でポンプ収容孔15とハウジング取付用貫通孔17またはモータ取付穴18間の肉厚を確保できる位置を示し、ポンプ収容孔15の直下とは、ポンプ収容孔15の下側で、ポンプ収容孔15に干渉しない部分でポンプ収容孔15とハウジング取付用貫通孔17またはモータ取付穴18間の肉厚を確保できる位置を示す。
【0040】
言い換えれば、ハウジング取付用貫通孔17,17同士を結んだ直線と、モータ取付穴18,18同士を結んだ直線とが、回転軸収容穴14の中心Pを交点として交差している。各直線は同じ長さで、それぞれの中心位置で交差しており、長方形の対角線を構成している。さらに、図3の上下方向において、上側に位置するハウジング取付用貫通孔17とモータ取付穴18同士が同じ高さに位置し、下側に位置するハウジング取付用貫通孔17とモータ取付穴18同士が同じ高さに位置している。
【0041】
さらには、ポンプ収容孔15の上側に位置するハウジング取付用貫通孔17およびモータ取付穴18は、背面12の左右上部に形成された入口ポート24,24とポンプ収容孔15との間に形成されている。そして、上側のハウジング取付用貫通孔17(またはモータ取付穴18)と下側のモータ取付穴18(またはハウジング取付用貫通孔17)は、ポンプ収容孔15の中心軸線を対称線として線対称に配置されている。つまり、上側のハウジング取付用貫通孔17と下側のモータ取付穴18は、ポンプ収容孔15の中心軸線からの離間距離が等しい。また、ハウジング取付用貫通孔17とモータ取付穴18は、ともに、入口ポート24の中心位置よりも、外側(基体10の側面13)寄りの位置に形成されている。
【0042】
図1および図4に示すように、コントロールハウジング30は、各種電気部品と、ハウジング本体部31とを備えており、電気部品をハウジング本体部31に装着して構成されている。電気部品は、基体10に取り付けられる電磁弁20に装着されるコイル組立体32(図1参照)や、電磁弁20の作動を制御する制御ユニットを構成する制御基板37などからなる。
【0043】
図6および図7に示すように、コイル組立体32は、ソレノイドコイル34と磁路枠35とを備えて構成されている。ソレノイドコイル34は、電磁弁20の基体10からの突出部分を囲繞するボビン33に電線を巻きつけて形成されている。ボビン33の軸方向両端には鍔部33a,33bがそれぞれ形成されている。磁路枠35は、ボビン33の軸方向両端を挟むようにしてボビン33に装着される。
【0044】
図6乃至図8に示すように、ハウジング本体部31は、樹脂にて形成されており、その内側に、基体10の一面11に設けられた電磁弁20と、コイル組立体32を収容する収容空間36を備えている。収容空間36は、基体10の一面11に対向するように形成されている。図6および図7に示すように、ハウジング本体部31には、その内部空間を二つに仕切る制御基板37が取り付けられている。内部空間は、制御基板37によって、基体側に位置する第一収容部31aと、反基体側(基体10の反対側)に位置する第二収容部31bとに仕切られている。ハウジング本体部31の第二収容部31bの開口部には、第二収容部31bを塞ぐための蓋体39が設けられている。収容空間36は、第一収容部31aにて構成されており、制御基板37と、基体側へ延出する周壁部38によって区画されている。周壁部38は、ハウジング本体部31の一部を構成している。制御基板37は、複数のねじ37aを介してハウジング本体部31に固定されている(図6および図7参照)。また、制御基板37は、ワイヤーボンディング37bによって、ハウジング本体部31の端子29と電気的に接続されている(図6参照)。
【0045】
図8の(a)に示すように、周壁部38は、矩形(本実施形態では正方形)枠状に形成されている。なお、本発明における「矩形」または「正方形」は、出隅部が曲線形状に面取りされたものや、斜めに面取りされた形状のものも含む。周壁部38の四辺のうち互いに対向する一対の辺(図8中、左右方向)には、一対のフランジ部40が外方に突出して形成されている。フランジ部40には、ハウジング取付ねじ80が螺合されるハウジング固定穴41と、補強リブ44が設けられている。
【0046】
図5に示すように、ハウジング固定穴41は、ハウジング本体部31にインサートモールドにて埋設されたブッシュ43にて形成されている。ブッシュ43は筒状の金属部材である。ブッシュ43の内周部には、雌ねじが形成されており、その内周部にてハウジング固定穴41が構成されている。ハウジング固定穴41は、コントロールハウジング30を基体10に装着した状態で、ハウジング取付用貫通孔17と同軸状になるように配置されている。ブッシュ43の基体側一端は、ハウジング本体部31の基体10に対向する面(周壁部38の開口端面)に開口しており、他端は、ハウジング本体部31の樹脂に覆われて塞がれている。
【0047】
図8の(a)に示すように、補強リブ44は、ハウジング固定穴41の周囲部から周壁部38の外周縁部(本実施形態では、周壁部38の出隅部)に延在する樹脂にて構成されている。補強リブ44は、2つのハウジング固定穴41に、それぞれ二つずつ形成されている。補強リブ44は、直線状に延在していて、ハウジング固定穴41の周囲部から、周壁部38の出隅部に向かっている。補強リブ44は、四つの出隅部のうち、一番近い出隅部と、二番目に近い出隅部に向かって延在している。なお、フランジ部40の補強リブ44と周壁部38との間は、軽量化のために肉抜きされている。
【0048】
周壁部38が正方形の枠状に形成されていることに伴なって、コントロールハウジング30の基体側の開口部36a(図8の(a)中、網掛けハッチングにて示す)も正方形形状になっている。開口部36aは、周壁部38の内周面の投影形状と略同等の形状であって、後記する凹溝45を含まない、収容空間の実質的な開口の範囲である。この開口部36aは、基体の背面側から見て、二つのハウジング固定穴41の軸心位置(ハウジング取付用貫通孔17,17(図3参照)の中心位置)を直径の両端とする円の範囲内に納まる大きさに形成されている。これによって、コントロールハウジング30の固定箇所(ハウジング取付用貫通孔17,17)間の距離に対して、開口部36aの幅が過度に大きくならないように構成されている。
【0049】
背面側から見て、コントロールハウジング30は、開口部36aの中心位置がモータ50の回転軸心位置と重なるように配置固定されている(図6および図7参照)。
【0050】
図6、図7および図8の(a)に示すように、周壁部38の開口部側先端には、シール部材60を固定するための凹溝45が形成されている。凹溝45は、開口部を囲うように正方形に形成されている。凹溝45には、シール部材60の一部が収容される。
【0051】
シール部材60は、コントロールハウジング30内に水分が浸入するのを防止するための部材である。図9に示すように、シール部材60は、周壁部38に沿う矩形枠状の周縁部61と、周縁部61の各辺から内側に突出する複数の帯状の舌部62とを備えている。周縁部61は、凹溝45と同等の辺長さを備える正方形枠状に形成されている。周縁部61は、凹溝45内に圧縮された状態で収容される。コントロールハウジング30が基体10に固定されると、周縁部61が凹溝45と基体10の一面11とで圧縮されて、シール部材60が圧縮状態で固定される。
【0052】
舌部62は、周縁部61の各辺にそれぞれ形成されている。周縁部61の隣り合う辺に設けられた舌部62,62同士は、連続して形成されている。舌部62は、周縁部61の下端部から内側に延びて形成されており、シール部材60は断面L字状を呈している。舌部62は、周縁部61の長手方向に沿って帯状に形成されている。舌部62は、先端部に向かうにつれて薄くなうように形成されている。舌部62の基端部には、凹溝45の壁部分が入り込む溝63が形成されており、シール性能を高めている。
【0053】
図8の(b)に示すように、舌部62は、ハウジング固定穴41に隣接する周壁部38の一対の辺(以下「固定部近接辺38a」という場合がある)に設けられた第一の舌部62(以下「固定部近接舌部62a」という場合がある)と、第一の舌部62に直交する方向に延在する他方の辺に設けられた第二の舌部62(以下「固定部遠隔舌部62b」という場合がある)とからなる。
【0054】
周縁部61の四辺に形成された舌部62のうち、第一の舌部62(固定部近接舌部62a)は、基体10と、コントロールハウジング30内に設けられたコイル組立体32とで挟まれる。具体的には、第一の舌部62は、基体10の一面11の表面と、コイル組立体32のボビン33の鍔部33bとで挟まれる。一方、第二の舌部62(固定部遠隔舌部62b)は、コイル組立体32には接触しない。本実施形態では、4つのコイル組立体32が2列に配列されているが、コイル組立体32は、固定部近接舌部62aに接触するように配置されており、固定部近接舌部62aの長手方向と直交する方向に延在する他の舌部とは非接触となるように配置されている。つまり、コイル組立体32は、固定部近接舌部62aに近接して配置され、固定部遠隔舌部62bとは距離をあけて配置されている。
【0055】
各舌部62は、周縁部61の正方形の各辺にそれぞれ同一形状に形成されている。これによって、シール部材60は、各辺が同一形状の正方形形状となるので、90度回転しても同形状である。よって、各舌部62は、固定部近接舌部62aと固定部遠隔舌部62bのどちらにも成り得る。
【0056】
以上のような構成の車両用ブレーキ液圧制御装置1によれば、ハウジング取付用貫通孔17およびモータ取付穴18が、それぞれ回転軸収容穴14の中心を対称点として二箇所に点対称配置されることで、重量的にバランス良く配置される。これによって、ハウジング取付ねじ80の締付力をコントロールハウジング30の周壁部38にバランスよく伝達できるとともに、モータ取付ねじ81の締付力をモータ50のフランジ部51にバランスよく伝達できる。したがって、基体10とコントロールハウジング30およびモータ50との取付箇所を最小限とすることができる。これによって、ハウジング取付ねじ80やモータ取付ねじ81の部品点数を低減できる。また、基体10におけるハウジング取付用貫通孔17およびモータ取付穴18の設置スペースを低減できるので、基体10の省スペース化および他の流路等のレイアウト性の向上を図ることができ、基体10の小型化を達成でき、さらには車両用ブレーキ液圧制御装置1の小型化も達成できる。
【0057】
また、本実施形態では、二つのハウジング取付用貫通孔17の位置と二つのモータ取付穴18の位置とが矩形の頂点を構成するようにしているので、左右方向および上下方向においても重量的にバランスが良好に保持される。これによって、耐振動性の向上が図れるとともに、より一層の基体10の小型化が図れる。
【0058】
さらに、ハウジング取付用貫通孔17とモータ取付穴18が、ポンプ収容孔15に干渉しない近接した位置でポンプ収容孔15を上下から挟むように配置されるので、基体10の上下方向のスペースを無駄にすることが無く、基体10の上下寸法を最小限にすることができる。
【0059】
また、本実施形態では、コントロールハウジング30の収容空間36の開口部36aは、二つのハウジング取付用貫通孔17の位置を直径の両端とする円の範囲内に納まるように構成されていることで、コントロールハウジング30の固定箇から、開口部36aの全体が過度に離れた位置となることはない。したがって、2つのハウジング取付ねじ81の締付力を収容空間36の開口部36aの全周に渡って有効に伝達することができる。よって、コントロールハウジング30の基体10への固定性能を高めることができるとともに、シール部材60によるシール性能を高めることができる。
【0060】
さらに、開口部36aを正方形形状としたことで、2つのハウジング取付ねじ81を開口部36aに対して、重量的なバランスがより一層良好となる。これによって、コントロールハウジング30の基体10への固定性能をさらに高めることができる。
【0061】
また、コントロールハウジング30の周壁部38の外側の補強リブ44を介して、2つのハウジング取付ねじ80の締付力を周壁部38の外周縁部に有効に伝達することができる。これによって、周壁部38の全周に渡って、コントロールハウジング30を基体10に押し付けることができ、固定性能をより一層高めるとともに、シール部材60によるシール性能を高めることができる。
【0062】
また、本実施形態では、モータ50の回転軸心位置と、コントロールハウジング30の開口部36aの中心位置とが重なるように構成されているので、モータ50およびコントロールハウジング30の両方を同時にバランスよく固定することができる。
【0063】
一方、本実施形態では、コイル組立体32は、固定部近接舌部62a(第一の舌部62)に接触するように配置され、固定部遠隔舌部62b(第二の舌部62)とは非接触となるように配置されているので、コイル組立体32の振動は、ハウジング取付ねじ80によって強固に固定された部分の近傍の舌部62によって効率的に吸収される。また、コイル組立体32と基体10で挟まれた舌部62(固定部近接舌部62a)には、反力(復元力)が発生するが、この部分はハウジング取付ねじ80で強固に締め付けられているので、コントロールハウジング30およびコイル組立体32が基体10から離反しない。したがって、この部分のシール性能が低下することはない。さらに、ハウジング取付ねじ80によって強固に固定された部分から比較的遠い固定部遠隔舌部62bでは、コイル組立体32の振動が伝わり難い。さらに、固定部遠隔舌部62bは、コイル組立体32と基体10に挟まれていないので、舌部62に必要以上に大きな反力(コイル組立体32を基体10から離反させようとする方向の力)が発生しない。したがって、ハウジング取付ねじ80によって締め付けられていない固定部遠隔舌部62bにおいても、コントロールハウジング30が変形することはなく、シール性能の低下を防止できる。
【0064】
また、シール部材60は、90度回転しても同形状であるので、シール部材60の設置方向が90度単位でどの方向でも自由に組み付けることができる。これによって、シール部材60の設置方向を規制する必要がないので、組付け作業が容易になる。
【0065】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、周壁部38が正方形枠状に形成されているが、これに限定されるものではなく、中心から周縁部までの距離寸法のバラツキが少なければ長方形またはその他の形状であってもよい。たとえば、周壁部38が、円形枠状または楕円形枠状であってもよく、この場合、補強リブ44は、ハウジング固定穴41の周囲部から、周壁部38の外周部に接線として接するように延在するように形成されるのが好ましい。
【0066】
また、前記実施形態では、シール部材60の舌部62は、固定部近接舌部62aと、固定部遠隔舌部62bとを備えて構成されているが、これに限定されるものではなく、固定部近接舌部62aのみを備える(固定部遠隔舌部62bは備えていない)構成であってもよい。
【0067】
さらに、前記実施形態では、二つのハウジング取付用貫通孔17の位置と二つのモータ取付穴18の位置とが矩形の頂点を構成するように構成されているが、矩形に限定されるものではなく、たとえば、平行四辺形であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 車両用ブレーキ液圧制御装置
10 基体
11 一面
12 背面
14 回転軸収容穴
15 ポンプ収容孔
17 ハウジング取付用貫通孔
18 モータ取付穴
20 電磁弁
30 コントロールハウジング
32 コイル組立体(電気部品)
36 収容空間
36a 開口部
38 周壁部
40 フランジ部
41 ハウジング固定穴
50 モータ
60 シール部材
61 周縁部
62 舌部
62a 固定部近接舌部
62b 固定部遠隔舌部
80 ハウジング取付ねじ
81 モータ取付ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、この基体の一面に設けられた電磁弁と該電磁弁に装着されるコイル組立体とを収容する収容空間を備えたコントロールハウジングと、前記基体の前記一面に対する背面に設けられたポンプ駆動用モータとを備えた車両用ブレーキ液圧制御装置において、
前記基体には、前記一面から前記背面まで貫通して形成され前記コントロールハウジングを固定するハウジング取付ねじが挿通されるハウジング取付用貫通孔と、前記背面に開口して形成され前記モータを固定するモータ取付ねじが挿入されるモータ取付穴と、前記背面に開口して形成され前記モータの回転軸が収容される回転軸収容穴とが設けられており、
前記ハウジング取付用貫通孔は、前記回転軸収容穴の中心を対称点として二箇所に点対称配置され、
前記モータ取付穴は、前記回転軸収容穴の中心を対称点として前記ハウジング取付用貫通孔とは別位置で二箇所に点対称配置された
ことを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
前記背面側から見て、二つの前記ハウジング取付用貫通孔の位置と二つの前記モータ取付穴の位置とが矩形の頂点を構成するように、前記ハウジング取付用貫通孔と前記モータ取付穴とが配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記基体には、前記回転軸収容穴から前記基体の側面に貫通する一対のポンプ収容孔が形成されており、
前記ハウジング取付用貫通孔と前記モータ取付穴は、前記ポンプ収容孔と非干渉の近接位置で、前記ポンプ収容孔を挟むように配置されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記背面側から見て、前記コントロールハウジングの前記基体側の開口部は、二つの前記ハウジング取付用貫通孔の位置を直径の両端とする円の範囲内に納まる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項5】
前記コントロールハウジングの前記開口部は、正方形形状を呈している
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項6】
前記コントロールハウジングの前記収容空間を区画する周壁部には、フランジ部が外方に突出して形成されており、
前記フランジ部には、前記ハウジング取付ねじが螺合されるハウジング固定穴と、該ハウジング固定穴の周囲部から前記周壁部の外周縁部に延在する補強リブとが設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項7】
前記背面側から見て、前記モータの回転軸心位置と、前記コントロールハウジングの前記基体側の開口部の中心位置とが重なるように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項8】
前記コントロールハウジングの前記収容空間を区画する周壁部は矩形枠状に形成され、前記周壁部の四辺のうち互いに対向する一対の辺には、それぞれフランジ部が外方に突出して形成され、前記フランジ部には、前記ハウジング取付ねじが螺合されるハウジング固定穴が設けられており、
前記基体の前記一面と前記周壁部との間には、シール部材が介設され、前記シール部材は、前記周壁部に沿う矩形枠状の周縁部と、該周縁部の各辺から内側に突出する複数の帯状の舌部とを備えてなり、
前記舌部は、前記ハウジング固定穴に隣接する前記周壁部の前記一対の辺に設けられた固定部近接舌部を備えており、前記固定部近接舌部が設けられた位置でのみ前記舌部が前記基体と前記コイル組立体とで挟まれる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項9】
前記周壁部および前記シール部材の前記周縁部は、正方形枠状に形成されている
ことを特徴とする請求項8に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項10】
前記舌部は、前記固定部近接舌部に直交する方向に延在する他方の辺に設けられた固定部遠隔舌部をさらに備えており、
前記コイル組立体は、前記固定部遠隔舌部から離間して配置されている
ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項11】
前記周縁部の各辺には、前記固定部近接舌部または前記固定部遠隔舌部がそれぞれ同一形状に形成されている
ことを特徴とする請求項10に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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