説明

車両用ホイールコーティング組成物及びホイール

【課題】本発明は、自動車や、二輪車などの車両用ホイールに対して、車両の制動時に発生する微細なブレーキパッド粉末の付着を防止できる車両用ホイールコーティング組成物及びホイールを得ることにある。
【解決手段】ホイールの表面が水滴接触角150°以上の超撥水性表面を有する車両ホイール用コーティング組成物及びホイールを用いることを特徴とする。更に上記超撥水表面が撥油性を有することを特徴とする。又、上記超撥水表面の凸凹のRaが200nm以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や、ニ輪車などの車両用ホイールに対して、車両の制動時に発生する微細なブレーキパッド粉末の付着を防止する車両用ホイールコーティング用組成物及びホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特開平10−46054では、ホイール表面に、光触媒性酸化物粒子が外気と接するように露出した親水性を呈する部分と、撥水性フッ素樹脂が外気と接するように露出した撥水性を呈する部分の双方が表面に微視的に分散された構造を有する表面層を形成させることにより、親水性表面と撥水性表面が隣接するため、親水性表面になじみやすい親水性の付着物は隣接する撥水性部分になじまず、逆に撥水性表面になじみやすい疎水性の付着物は隣接する親水性部分になじまない。そのため、親水性付着物も、疎水性付着物も部材表面に固着されることはなく、表面は清浄な状態に維持される技術やさらに、光触媒が存在することにより、光触媒の光励起に応じて光触媒性酸化物粒子が外気と接するように露出した親水性を呈する部分は恒久的に親水性を維持するので、上記親水性を呈する部分と撥水性を呈する部分の双方が表面に微視的に分散された構造よりなるホイールが提案されている。
【0003】
また、WO2002−88269に開示されているように無機ポリシラザン、希釈溶剤及び触媒を含有することを特徴とする防汚コーティング液をホイール表面に塗布し、ホイール表面をガラス質に改質し、汚れを防ぐ方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、車両のホイールの汚れの主成分は、ブレーキを掛けたときのブレーキパッドとディスクのこすれにより発生するブレーキパッド粉末(ブレーキダスト)であり、従来の方法では、いずれの方法でも、ブレーキダストが付着し、汚れの落としやすさに差はあるものの、外観をきれいに維持するためにはホイールの洗浄作業が必要であった。また、洗浄後でも、走行することによりすぐに汚れが付着してくるものであった。
【特許文献1】特開平10−46054号公報
【特許文献2】WO2002−88269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、自動車や、二輪車などの車両用ホイールに対して、車両の制動時に発生する微細なブレーキパッド粉末の付着を防止でき、ホイールの表面が水滴接触角150°以上の超撥水性を有している、車両のホイール及びホイールコーティング用組成物を提供することを目的とする。更に、特に外観が重視される車両のホイールでは、表面の光沢、色調を損なわないようにホイール表面の形成物が透明性であることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の目的を達成するために、ホイールの表面に水滴接触角150°以上の超撥水性表面を有する事を特徴とする。ホイール表面に接触角150°以上の超撥水性を発揮させるには、表面が疎水化されたフラクタル構造とすることが必要で、その方法としては、特に限定されるものではなく、ホイールに超撥水コーティング液を塗布する方法や、微細な凸凹を形成できるコーティング液を塗布乾燥後、疎水化する方法、ホイール表面を直接プラズマ処理等により微細な凸凹を形成し、その後、表面を疎水化する方法などが挙げられる。最も簡便な処理方法としては、ホイール表面に超撥水コーティング液を塗布する方法が挙げられるが、超撥水コーティング液としては、疎水性の微粒子、バインダー、溶媒などを配合した組成物が主に考えられる。また、ホイールの材質は、アルミニウムでも、鉄でもよく、特に限定されるものではない。また、ホイールの表面処理は、塗装、メッキ、未処理など特に限定されるものではない。疎水性の微粒子としては、珪素、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、アンチモン、スズ、タングステン、亜鉛、鉄、セリウム、マンガン、銅、マグネシウム、ホルミウム、ニッケル等の酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1
つを疎水化したものを主成分とすることができる。また、疎水性微粒子の粒子径は5nm以上100nm以下であることが好ましい。
バインダーとしては、溶媒に溶解し、乾燥させると透明体を形成する成分が上げられ、メチル、メチルフェニル、メチルハイドロジェン、アミノ変性、エポキシ変性、エポキシポリエーテル変性、カルボキシル変性、カルボキシルポリエーテル変性、アルコール変性、アルキル変性、アルキルアラルキル変性、アルキルアラルキルポリエーテル変性、ポリエーテル変性、フッ素変性のシリコン等のシリコン類、フェニルメチル系レジン、メチル系レジン、変性系レジン等のレジン類、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等の樹脂類、陰イオン表面活性剤、陽イオン表面活性剤、非イオン系表面活性剤、両性の表面活性剤等の表面活性剤類、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエーテル共重合体、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸等の合成高分子類、高級アルコール類、高級脂肪酸類、シリカ系無機コーティング剤、シラザン系無機コーティング剤、シリコーンゴム等のゴム類、デンプン、グリコーゲン、セルロース等の多糖類、スメクタイト等の鉱物類等が挙げられる。なお、陰イオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸、α
− オレフィンスルホン酸、アルカンスルホン酸、硫酸アルキル、硫酸アルキルポリオキシエチレン、リン酸アルキル、長鎖脂肪酸、α − スルホ脂肪酸エステル及びそれらの塩等が挙げられ、陽イオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等が挙げられ、非イオン系界面活性剤としては、アルキルポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルポリグルコシド等が挙げられ、両性界面活性剤としては、ジメチルアルキルアミンオキシド、N
−アルキルベタイン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類等、のような極性溶媒、ヘキサン、n−ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン等の非極性溶媒が挙げられる
【0007】
また上記超撥水表面が撥油性を有することを特徴とする。ホイール表面は撥油性もあったほうが好ましく、撥油性を発揮させるためには、フッ素の導入が好ましく、そのためには、いくつかの方法が考えられる。微粒子をフルオロアルキルシラン化合物で疎水化する方法、表面の凸凹構造をフッ素系樹脂でコーティングする方法などが上げられる。フルオロアルキルシラン化合物としては、例えば、CF3 CH2 CH2 Si(OCH3 ) 3 、CF3 CH2 CH2 SiCl3 、CF3 (CF2 )3 CH2 CH2 Si(OCH3
)3 、CF3 (CF2 )3 CH2 CH2 SiCl3 、CF3 (CF2 )5 CH2 CH2 Si(OCH3 )3 、CF3 (CF2 )5 CH2 CH2
SiCl3 、CF3 (CF2 )7 CH2 CH2Si(OCH3 )3 、CF3 (CF2 )7 CH2 CH2 SiCl3 、CF3 (CF2 )7 CH2
CH2 Si(OCH3 )Cl2 等が挙げられる。
【0008】
更に上記超撥水表面の凸凹のRaが200nm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、前記の構成により、車両の制動時に発生する微細なブレーキバッド粉末(ブレーキダスト)の付着を防止できるため、常に車両のホイールをきれいな状態で維持する事ができ、超撥水性を維持している期間はホイールの洗浄作業が不必要となる利点がある。又、超撥水表面の凸凹のRaが200nm以下であることにより光の乱反射を防止し、透明性を損なわれない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施例1
表1に示す様に、イソプロピルアルコール(表では「IPA」と記載する)98質量%と、疎水性シリカ(レオロシールHM30S:固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)2質量%を混合した後、超音波分散機を用い、周波数44KHzで1時間分散させ、疎水性シリカ分散液を作成し、塗料用刷毛にて表面にクリア塗装が施されたアルミホイール表面に、この疎水性シリカ分散液を塗布し、そのまま放置して乾燥させる事により水滴接触角160°の超撥水性表面を得た。
【0011】
上記作業によって得られたホイールを装着した自動車を、乾燥路において、500Km通常走行後と、1000Kmの通常走行後、更に、上記ホイールの内側面にブレーキオイルを薄く塗り、500Km通常走行後に夫々のホイール状態の観察を行い、ホイールを表面の汚れの付着状態を下記評価基準に基づき目視評価した。その結果を表1に示す。

汚れの付着状態の評価基準
○:汚れが付いていない。
△:まだらに汚れが付いている。
×:全体に汚れが付いている。

【0012】
実施例2
表1に示す様に、イソプロピルアルコール(表では「IPA」と記載する)97.8質量%と、疎水性シリカ(レオロシールHM30S:固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)2質量%と、アミノ変性シリコン(TSF4700、固形分100%、モメンティブ製)0.2質量%を混合した後、超音波分散機を用い、周波数44KHzで1時間分散させ、疎水性シリカ分散液を作成し、塗料用刷毛にて表面にクリア塗装が施されたアルミホイール表面に、この疎水性シリカ分散液を塗布し、そのまま放置して乾燥させる事により水滴接触角158°の超撥水性表面を得た。
【0013】
上記作業によって得られたホイールを装着した自動車を、乾燥路において、500Km通常走行後と、1000Kmの通常走行後、更に、上記ホイールの内側面にブレーキオイルを薄く塗り、500Km通常走行後に夫々のホイール状態の観察を行い、ホイールを表面の汚れの付着状態を評価基準に基づき目視評価した。その結果を表1に示す。
【0014】
実施例3
表1に示す様に、イソプロピルアルコール(表では「IPA」と記載する)97.9質量%と、疎水性シリカ(レオロシールHM30S:固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)2質量%と、フルオロアルキルシラン(TSL8233、モメンティブ製)0.1質量%を混合した後、超音波分散機を用い、周波数44KHzで1時間分散させ、疎水性シリカ分散液を作成し、塗料用刷毛にて表面にクリア塗装が施されたアルミホイール表面に、この疎水性シリカ分散液を塗布し、そのまま放置して乾燥させる事により水滴接触角160 °の超撥水性表面を得た。
【0015】
上記作業によって得られたホイールを装着した自動車を、乾燥路において、500Km通常走行後と、1000Kmの通常走行後、更に、上記ホイールの内側面にブレーキオイルを薄く塗り、500Km通常走行後に夫々のホイール状態の観察を行い、ホイールを表面の汚れの付着状態を評価基準に基づき目視評価した。その結果を表1に示す。
【0016】
実施例4
表1に示す様に、イソプロピルアルコール(表では「IPA」と記載する)97.7質量%と、疎水性シリカ(レオロシールHM30S:固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)2質量%と、アミノ変性シリコン(TSF4700、固形分100%、モメンティブ製)0.2質量%、フルオロアルキルシラン(TSL8233、モメンティブ製)0.1質量%を混合した後、超音波分散機を用い、周波数44KHzで1時間分散させ、疎水性シリカ分散液を作成し、塗料用刷毛にて表面にクリア塗装が施されたアルミホイール表面に、この疎水性シリカ分散液を塗布し、そのまま放置して乾燥させる事により水滴接触角158°の超撥水性表面を得た。
【0017】
上記作業によって得られたホイールを装着した自動車を、乾燥路において、500Km通常走行後と、1000Kmの通常走行後、更に、上記ホイールの内側面にブレーキオイルを薄く塗り、500Km通常走行後に夫々のホイール状態の観察を行い、ホイールを表面の汚れの付着状態を評価基準に基づき目視評価した。その結果を表1に示す。
【0018】
実施例5
表1に示す様に、イソプロピルアルコール(表では「IPA」と記載する)10質量%と、n−ヘキサン88質量%、疎水性シリカ(レオロシールHM30S:固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)2質量%を混合した後、超音波分散機を用い、周波数44KHzで1時間分散させ、疎水性シリカ分散液を作成し、塗料用刷毛にて表面にクリア塗装が施されたアルミホイール表面に、この疎水性シリカ分散液を塗布し、そのまま放置して乾燥させる事により水滴接触角160°の超撥水性表面を得た。
【0019】
上記作業によって得られたホイールを装着した自動車を、乾燥路において、500Km通常走行後と、1000Kmの通常走行後、更に、上記ホイールの内側面にブレーキオイルを薄く塗り、500Km通常走行後に夫々のホイール状態の観察を行い、ホイールを表面の汚れの付着状態を評価基準に基づき目視評価した。その結果を表1に示す。
【0020】
比較例1
表1に示す様に、表面にクリア塗装が施されたアルミホイール表面を未処理の状態で維持し、水滴接触角80°の表面を得た。
【0021】
上記作業によって得られたホイールを装着した自動車を、乾燥路において、500Km通常走行後と、1000Kmの通常走行後、更に、上記ホイールの内側面にブレーキオイルを薄く塗り、500Km通常走行後に夫々のホイール状態の観察を行い、ホイールを表面の汚れの付着状態を評価基準に基づき目視評価した。その結果を表1に示す。
【0022】
比較例2
表1に示す様に、表面にクリア塗装が施されたアルミホイール表面に、市販のホイールコート剤(C社製)を使用法に従ってコーティングし、水滴接触角95°の表面を得た。
【0023】
上記作業によって得られたホイールを装着した自動車を、乾燥路において、500Km通常走行後と、1000Kmの通常走行後、更に、上記ホイールの内側面にブレーキオイルを薄く塗り、500Km通常走行後に夫々のホイール状態の観察を行い、ホイールを表面の汚れの付着状態を評価基準に基づき目視評価した。その結果を表1に示す。
【0024】
比較例3
表1に示す様に、n−ヘキサン99.8質量%と、アミノ変性シリコン(TSF4700、固形分100%、モメンティブ製)0.2質量%を混合した後、超音波分散機を用い、周波数44KHzで1時間分散させ、塗料用刷毛にて表面にクリア塗装が施されたアルミホイール表面に、この分散液を塗布し、そのまま放置して乾燥させる事により水滴接触角100°の表面を得た。
【0025】
上記作業によって得られたホイールを装着した自動車を、乾燥路において、500Km通常走行後と、1000Kmの通常走行後、更に、上記ホイールの内側面にブレーキオイルを薄く塗り、500Km通常走行後に夫々のホイール状態の観察を行い、ホイールを表面の汚れの付着状態を評価基準に基づき目視評価した。その結果を表1に示す。
【0026】
比較例4
表1に示す様に、イソプロピルアルコール(表では「IPA」と記載する)99.9質量%と、フルオロアルキルシラン(TSL8233、モメンティブ製)0.1質量%を混合した後、超音波分散機を用い、周波数44KHzで1時間分散させ、塗料用刷毛にて表面にクリア塗装が施されたアルミホイール表面に、この分散液を塗布し、そのまま放置して乾燥させる事により水滴接触角90°の表面を得た。
【0027】
上記作業によって得られたホイールを装着した自動車を、乾燥路において、500Km通常走行後と、1000Kmの通常走行後、更に、上記ホイールの内側面にブレーキオイルを薄く塗り、500Km通常走行後に夫々のホイール状態の観察を行い、ホイールを表面の汚れの付着状態を評価基準に基づき目視評価した。その結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1から明らかな様に、実施例1〜5のイソプロピルアルコール(表では「IPA」と記載する)と、疎水性シリカ(レオロシールHM30S:固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)を混合した各疎水性シリカ分散液を塗布したホイールは水滴接触角150°以上の超撥水性を有し、乾燥路において500Km通常走行後に目視評価では、全く汚れが確認できず、上記ホイールの内側面にブレーキオイルを薄く塗り、500Km通常走行後の目視評価でも、汚れの付着が一部に留まっており、良好な結果を得た。
更に、実施例2〜4の上記疎水性シリカ分散液にアミノ変性シリコン(TSF4700、固形分100%、モメンティブ製)若しくはフルオロアルキルシラン(TSF8233、モメンティブ製)の少なくとも1つを混合した疎水性シリカ分散液を塗布したホイールは乾燥路において1000Km通常走行後においても、汚れの付着が一部に留まっており、その中でも、フルオロアルキルシラン(TSF8233、モメンティブ製)を混合したものでは、上記ホイールの内側面にブレーキオイルを薄く塗り、500Km通常走行後の目視評価でも、全く汚れが確認できず、更に疎水性シリカ分散液にアミノ変性シリコン(TSF4700、固形分100%、モメンティブ製)若しくはフルオロアルキルシラン(TSL8233、モメンティブ製)の両方を混合した実施例4においては、全ての試験において、全く汚れが確認できず、最も優れた評価結果となった。
【0030】
一方、比較例1〜4においては、全てのホイールが水滴接触角150°未満であり、超撥水性を有しておらず、全ての試験項目において、実施例よりも劣っていた。
【0031】
上記の通り、実施例1〜5において良好な結果が得られた理由は、必ずしも全てが解明できている訳ではないが、ホイール表面が水滴接触角150°以上の超撥水性表面の状態においては、表面が、泥汚れやブレーキダストなどの粒子の粒径よりも微細な凹凸で構成されるため、泥汚れやブレーキダストとは超撥水性表面に対して、点で接触する状態となるため、摩擦抵抗が非常に低く、走行中は常に遠心力が働くホイールにおいて、低い摩擦力と、遠心力の相乗効果によって、泥汚れやブレーキダストが、滑り落ち付着しないものと考えられる。従来から、ハスの葉の表面は超撥水性を示し、この濡れない葉の表面は、水滴と表面が合体するのを防ぐだけではなく、汚れと表面が合体するのも防ぎ、水滴は表面の汚れを取り込んでこぼれ落ちることが知られている。この現象は、ハスの葉の上に自然に堆積したほこりなどが、雨などの水が流れ落ちるときに同時に汚れを落としていくものであった。このように、超撥水性表面は汚れとは合体しないものの、ほこりなどは堆積する。この汚れを除去するには、水滴で洗い流すなどの他は、風や振動など外的な力により除去することができる。自動車用、二輪車用のホイールは40km/h走行時でも、1秒間に5回転程度回転しており、ホイール表面には強い遠心力が働いており、超撥水性表面に堆積したほこり等を除去するには、好都合である。また、ホイール汚れは、ブレーキダストが主の汚れであり、この汚れは通常時(停車時)には発生せず、必ず走行時に発生するものであり、車両の走行時に発生する汚れを、走行による遠心力により除去でききるため、ホイールの表面を超撥水性にすることは、ホイール表面の美観を維持するためには、最適の方法である。
【0032】
更に車両のホイールは、ブレーキ部分等からのオイルによる油性汚れなどの可能性もあり、表面は撥水性のみならず、フッ素の導入などによる撥油性を付加する事によって、更にホイールの用途に適したホイールコーティング用組成物を得ることが出来る。
尚、超撥水性表面を有しているため、当然の公知の効果として汚れを含んだ雨水の付着を防止し、逆に、乾燥路走行中にホイールの隅部などに僅かに残った泥汚れやブレーキダストなども汚れを、洗い流し、ホイールの汚れを自動的に除去する効果があるため超撥水性を維持している期間はホイールの洗浄作業が不必要となる。ホイール表面に超撥水性を保持させる方法としては、以下のようなものがあげられる。複合メッキ、コーティング、塗装などいずれの方法でも良いが、ホイール表面に疎水性の微細な凸凹構造を形成させる方法、あるいは、親水性の微細な凸凹構造を形成させた後、その表面を疎水処理しても良い。また、ホイールの美観の観点から、超撥水膜は透明であることが好ましく、微細な凸凹構造の表面粗さRaは200nm以下であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、車両用ホイールの汚れ防止及び汚れ除去が容易な車両用ホイールコーティング組成物及びホイールとして、産業上利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例1において製作された超撥水膜のAFM写真を示す参考図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールの表面に水滴接触角150°以上の超撥水性表面を有することを特徴とする車両用ホイールコーティング組成物及びホイール。
【請求項2】
上記超撥水表面が撥油性を有することを特徴とする請求項1記載の車両用ホイールコーティング組成物及びホイール。
【請求項3】
上記超撥水表面の凸凹のRaが200nm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の、車両用ホイールコーティング組成物及びホイール。

【図1】
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【公開番号】特開2009−138033(P2009−138033A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312783(P2007−312783)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(391021226)株式会社カーメイト (100)
【Fターム(参考)】