説明

車両用ホイール

【課題】 ディスクとリムを弾性的に連結した車両用ホイールにおいて、面外ねじり剛性の低下を回避ないしは抑制できるようにする。
【解決手段】
リム20の内周に、互いに車軸方向に離間対向して配置された一対の壁部31,32が固定されている。リム20と別体をなすディスク10の外周縁部12が、一対の壁部31,32間に配置されている。ディスク10の外周縁部12と一対の壁部31,32との間に弾性部材33,34が圧縮状態で介在されている。一対の壁部31,32間には架橋部35が掛け渡されて固定されている。この架橋部35が、ディスク10に形成された貫通穴14を貫通するとともに、弾性部材33,34に対して径方向内側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクとリムを弾性的に連結することにより、ロードノイズや振動を吸収、緩和できる車両用ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクとリムとの間に介在された弾性部材の弾性を利用してロードノイズや振動を吸収、緩和できる車両用ホイールは、特許文献1に開示されているように公知である。この特許文献1の車両用ホイールについて、図8を参照しながら簡単に説明する。
【0003】
図8に示すように、車両用ホイールは、中央部が車軸に固定されるディスク10と、外周にタイヤが装着されるリム20と、これらディスク10とリム20とを弾性的に連結する連結手段30’とを備えている。
【0004】
上記連結手段30’は、上記リム20の内周に固定されるとともに互いに車軸方向に離れた円環状の一対の壁部31,32を有している。上記ディスク10の外周縁部12が、上記リム20の内周から離間するとともに上記壁部31,32からも離間した状態で、壁部31,32間に配置されている。ディスク10の外周縁部12と壁部31,32との間には、円環状の弾性部材33,34が車軸方向に圧縮状態で介在されている。
【0005】
上記構成において、車両走行時にタイヤからリム20、ディスク10を介して車両へとロードノイズや振動の伝達経路が構成されるが、上記リム20とディスク10との間に弾性部材33,34が介在されているので、ロードノイズや振動の吸収、緩和を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−335200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記車両用ホイールでは、壁部31,32の内周縁が自由端となっている。そのため、壁部31,32が弾性部材33,34に押され、若干量ではあるが矢印で示すように外側に変形するため、ホイールの横剛性ないしは面外ねじり剛性が低かった。その結果、車両の操縦安定性を低下させる可能性があった。
【0008】
また、長期使用による弾性部材33,34の磨耗や劣化あるいは壁部31,32の変形等のために、弾性部材33,34とディスク10の外周縁部12、壁31,32との間の摩擦力が低下し、ディスクからリムへのトルク伝達を十分に行えなくなる可能性もあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、リムの内周に、互いに車軸方向に離間対向して配置された一対の壁部が固定され、上記リムと別体をなすディスクの外周縁部が、上記リムの内周から離間するとともに上記一対の壁部からも離間した状態で一対の壁部間に配置され、ディスクの外周縁部と一対の壁部との間に弾性部材が圧縮状態で介在される車両用ホイールにおいて、更に、上記一対の壁部間には架橋部が掛け渡されて固定されており、この架橋部が、上記ディスクに形成された貫通穴を貫通するとともに、上記弾性部材に対して径方向内側に配置されていることを特徴とする。
ここで、「壁部のリム内周への固定」、「架橋部の壁部への固定」とは、一体成形、溶接、ネジ止め等を含む。
【0010】
上記構成によれば、上記リムからディスクに向かうロードノイズや振動を弾性部材により吸収、緩和することができる。
上記一対の壁部に掛け渡された架橋部により、一対の壁部の互いに離れる方向への変形を禁じることができるので、ホイールの横剛性ないしは面外ねじり剛性の低下を回避ないしは抑制することができ、弾性部材33,34と壁部31,32との摩擦力が低下することを防止できる。
万一、弾性部材の劣化や磨耗等により摩擦力が低下して、リムとディスクとの間で周方向のすべりが生じた場合には、上記架橋部がディスクの貫通穴の周縁に当たるため、トルク伝達を確保することができる。
【0011】
好ましくは、上記一対の壁部および上記弾性部材の各々が円環状をなし、上記架橋部が周方向に等間隔をなして複数配置されている。
これによれば、弾性部材を安定して保持できるとともに、壁部の変形をより確実に禁じることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両用ホイールでは、ロードノイズや振動を吸収、緩和することができるとともに、横剛性ないしは面外ねじり剛性の低下を、回避ないしは抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施例に係わる車両用ホイールの正面図である。
【図2】図1におけるII−II線に沿う断面図である。
【図3】同車両用ホイールの分解断面図である。
【図4】本発明の第2実施例に係わる車両用ホイールの断面図である。
【図5】本発明の第3実施例に係わる車両用ホイールの断面図である。
【図6】本発明の第4実施例に係わる車両用ホイールの断面図である。
【図7】本発明の第5実施例に係わる車両用ホイールの断面図である。
【図8】従来の車両用ホイールの欠点を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
以下、本発明の第1実施例に係わる車両用ホイールについて、図1〜図3を参照しながら説明する。車両用ホイールは、互いに別体をなすディスク10およびリム20と、これらディスク10とリム20とを弾性的に連結する連結手段30とを備えている。
【0015】
上記ディスク10は車軸(図示しない)に固定される中央部11と、円環状をなす外縁部12と、中央部11と外縁部12とを連ねるとともに周方向に間隔をおいて離間した複数のスポーク部13とを一体に有している。スポーク部13間には、飾り穴14(貫通穴)が形成されている。
【0016】
上記ディスク10の中央部11における車軸固定構造については周知であるので説明を省略する。
上記ディスク10の外縁部12の両側面には、円環状をなす浅い嵌め込み溝12a,12aが形成されている。
【0017】
上記リム20は外周にタイヤ(図示しない)が装着される形状をなしているが、この装着のための形状は周知であるので説明を省略する。
【0018】
上記連結手段30は、一対の壁部31,32と、一対の弾性部材33,34を有している。ここで、ディスク10より車両側に位置する壁部31および弾性部材33をそれぞれ第1壁部、第1弾性部材と称し、ディスク10より車両の反体側に位置する壁部32および弾性部材34を第2壁部、第2弾性部材と称す。
上記第1壁部31は円環状の板部からなり、リム20の内周から径方向内側に突出している。本実施例では、リム20の鋳造時に第1壁部31も一緒に成形され、リム20と一体をなしている。
【0019】
上記第2壁部32は、円環状の板部からなり、リム20の内周から車軸と直交する方向に突出しており、上記第1壁部32と車軸方向に離間対向している。本実施例では、第2壁部32は、リム20の内周に溶接により固定されている。図2において、この溶接部を符号41で示す。
【0020】
上記壁部31,32の互いに対向する側面には、円環状をなす浅い嵌め込み溝31a,32aがそれぞれ形成されている。
【0021】
上記ディスク10は、その外周縁部12が上記壁部31,32間に収容されるようにして配置されている。この外周縁部12は上記壁部31,32に対して車軸方向に等距離離間している。また、この外周縁部12の外径はリム20の対応する部位の内径より小さいため、外周縁部12はリム20の内周からも離間している。なお、外周縁部12と壁部31,32の離間距離は異なっていてもよい。
【0022】
上記弾性部材33,34は、繊維により補強されたゴム材料からなり、円環形状をなすとともに全周にわたって同一断面形状、例えば矩形をなしている。
【0023】
上記第1弾性部材33は、上記ディスク10の外周縁部12の一方の側面と上記第1壁部31との間に車軸方向に圧縮された状態で介在され、その両側縁部が嵌め込み溝12a,31aに嵌め込まれている。
【0024】
上記第2弾性部材34は、上記ディスク10の外周縁部12の他方の側面と上記第2壁部32との間に車軸方向に圧縮された状態で介在され、その両側縁部が嵌め込み溝12a,32aに嵌め込まれている。
【0025】
次に、本発明の特徴部について説明する。上記連結手段30は更に周方向に等間隔をなして配置された複数の架橋部35を有している。本実施例では、これら架橋部35は飾り穴14と同数(例えば5つ)配置されている。
【0026】
図2に示すように、各架橋部35は、上記弾性部材33,34に対して径方向内側に配置されており、上記ディスク10の飾り穴14に通され、上記壁部31、32に掛け渡されるようにして壁部31,32に固定されている。
【0027】
図1に示すように、本実施例の架橋部35は壁部31,32の内周縁形状に対応して円弧形状をなし、その車軸方向両側縁がこれら壁部31,32の内周縁に固定されている。
【0028】
本実施例の上記架橋部35の固定の態様について詳述する。架橋部35はリム20鋳造時にリム20および第1壁部31と一体に成形され、第1壁部31の内周縁から車軸方向に車両とは反体側に延びており、その先端側の縁が上記第2壁部32の内周縁に溶接されている。この溶接部を図2において符号42で示す。
【0029】
図1、図2に示すように、上記架橋部35は飾り穴14の周縁から離れている。架橋部35の周方向の両端は、飾り穴14の周縁から周方向に等距離離れている。なお、架橋部35の両端と飾り穴14の周縁との間の離間距離は異なっていてもよい。
上記車両用ホイールにおいて、弾性部材33,34を除く構成要素(すなわち、ディスク10、リム20、壁部31,32、架橋部35)は全て同種または異種の金属材料からなる。
【0030】
上記構成をなす車両用ホイールの組立工程について図3を参照しながら簡単に説明する。リム20と第1壁部31と架橋部35を有する鋳造成形品を用意し、第1弾性部材33の一側縁部を第1壁部31の嵌め込み溝31aに嵌め込むことにより、第1弾性部材33を成形品にセットする。次に、ディスク10の外周縁部12の嵌め込み溝12aを第1弾性部材33の他方の側縁部に嵌め込むことにより、ディスク10をセットする。同様にして第2弾性部材34、第2壁部32を順にセットする。
最後に、第2壁部32を第1壁部31に向かって押し、弾性部材33,34に所定の圧縮荷重を付与した状態で、第2壁部32をリム20の内周と架橋部35に溶接する。
【0031】
上記構成をなす車両用ホイールでは、上記タイヤからリム20を経てディスク10に向かうロードノイズや振動を弾性部材33,34により吸収、緩和することができる。
上記壁部31,32は、車両がコーナーを回る時等に車軸方向外側に広がるような荷重を受けるが、これら壁部31,32に架橋部35が掛け渡されているので、車軸方向外側に広がるような変形が禁じられる。その結果、ホイールの横剛性ないしは面外ねじり剛性の低下を回避ないしは抑制することができる。さらに、上記のように壁部31,32の変形が防止できるので、弾性部材33,34と壁部31,32との摩擦力が低下することを防止できる。
【0032】
万一、第1、第2弾性部材33,34の劣化や磨耗等により摩擦力が低下して、リム20とディスク10との間で周方向のすべりが生じた場合には、上記架橋部35がディスク10の飾り穴14の周縁に当たる。その結果、この架橋部35を介してディスク10からリム20へのトルク伝達を確保することができ、車両の停止または安全な場所までの走行が可能となる。
【実施例2】
【0033】
以下、本発明の他の実施例について図を参照しながら説明する。これら実施例において先行する実施例に対応する構成部には同番号を付してその詳細な説明を省略する。
図4に示す第2実施例では、リム20と第1壁部31が一体をなして成形されており、第2壁部32と架橋部35が、リム20とは別の鋳造成形品からなり一体をなしている。この実施例では、図4のセット状態において、第2壁部32を第1壁部31に向かって押した状態で、第1壁部31をリム20の内周に溶接するとともに、架橋部35を第1壁部31に溶接する。溶接箇所をそれぞれ符号41,43で示す。
【実施例3】
【0034】
図5に示す第3実施例では、第2実施形態と同様にリム20と第1壁部31とが一体に成形されるが、第2壁部32と架橋部35は別体をなす。この実施例では、第2壁部32を第1壁部31に向かって押した状態で、第1壁部31をリム20の内周に溶接した後、架橋部35の両側縁部を第1壁部31と第2壁部32に溶接する。溶接箇所をそれぞれ符号42,43で示す。
【実施例4】
【0035】
図6に示す第4実施例では、上記第3実施例と同様に、架橋部35は壁部31、32と別体をなす。架橋部35はその両側縁に、周方向に間隔をおいて配置された複数の薄肉の噛み合い部35xを有している。
他方、第1壁部31、第2壁部32の内周縁には、周方向に等間隔をおいて複数の噛み合い溝31x、32xが形成されている。架橋部35の両側の噛み合い部35xを第1壁部31、第2壁部32の噛み合い溝31x、32xに嵌め込んだ状態で、溶接やネジ等の手段で固定する。
【実施例5】
【0036】
図7に示す第5実施例では、上記第3実施例と同様に、架橋部35は壁部31、32と別体をなす。第1壁部31の内周縁から円環状の鍔部31yが車軸方向に延び、その先端縁部には等間隔をなして複数の噛み合い溝31xが形成されている。第2壁部32の内周縁にも噛み合い溝32xが形成されている。
架橋部35は断面略L字形をなし、その両側縁部に薄肉の噛み合い部35xを有している。架橋部35の両側の噛み合い部35xを第1壁部31、第2壁部32の噛み合い溝31x、32xに嵌めこんだ状態で、ネジ45で固定する。
【0037】
本発明は、上記実施例に制約されず、種々の態様を採用することができる。例えば、ディスク外周縁部、一対の壁部において、弾性部材に対向する面をショットブラスト処理で粗したり、凹凸を付けたりして、滑り止めを施してもよい。その代わりに弾性部材の表面に同様の滑り止めを施してもよい。
【0038】
ディッシュタイプのディスクを用いる場合には、周方向に細長い円弧状の長穴が、架橋部が通る貫通穴となる。
上記実施例ではディスクの各貫通穴に1つの架橋部を配置したが、各貫通穴に周方向に離れた複数の架橋部を配置していてもよい。
上記実施例ではディスクの複数の貫通穴の全てに架橋部を配置していたが、選択された貫通穴にのみ配置してもよい。
上記実施例では、架橋部を第1、第2壁部の内周縁に固定したが、内周縁よりリム寄りに固定してもよい。
壁部は円環状ではなく、周方向に複数に分けられていても良い。
弾性部材は全周にわたって断面形状が同一でなくてもよい。
【0039】
上述した全ての実施例において、第1壁部31と第2壁部32を置き替えるようにしてもよい。すなわち、図1〜図3の第1実施例において車両の反対側の第2壁部32をリム20および架橋部35と一体に成形し、車両側の第1壁部31をリム20および架橋部35に溶接してもよい。また、図4の第2実施例において、車両の反対側の第2壁部32をリム20一体に成形し、車両側の第1壁部31と架橋部35を一体に成形し、第1壁部31をリム20に溶接するとともに架橋部35を第2壁部32に溶接してもよい。さらに、図5〜図7の実施例において、車両の反対側の第2壁部32をリム20一体に成形し、車両側の第1壁部31をリム20に溶接してもよい。
【0040】
弾性部材は、その一方の側縁部または両側縁部を、壁部、ディスク外周縁部に加硫接着してもよい。例えば、ディスク外周縁部の両面に一対の弾性部材を加硫接着させることにより、組立作業を楽にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、ロードノイズや振動を吸収、緩和するためにディスクとリムを弾性的に連結した全ての車両用ホイールに適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 ディスク
12 ディスクの外周縁部
14 飾り穴(貫通穴)
20 リム
30 連結手段
31、32 壁部
33、34 弾性部材
35 架橋部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リムの内周に、互いに車軸方向に離間対向して配置された一対の壁部が固定され、上記リムと別体をなすディスクの外周縁部が、上記一対の壁部間に配置され、これらディスクの外周縁部と一対の壁部との間に弾性部材が圧縮状態で介在される車両用ホイールにおいて、
更に、上記一対の壁部間には架橋部が掛け渡されて固定されており、この架橋部が、上記ディスクに形成された貫通穴を貫通するとともに、上記弾性部材に対して径方向内側に配置されていることを特徴とする車両用ホイール。
【請求項2】
上記一対の壁部および弾性部材の各々が円環状をなし、上記架橋部が周方向に等間隔をなして複数配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ホイール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−285051(P2010−285051A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139715(P2009−139715)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)