説明

車両用マッサージシート

【課題】押圧方向の厚みがより小さく、且つ容易に組み付けられるエア式マッサージ機能を備える車両用シートを提供する。
【解決手段】車両用シート本体に取り付けられるベース部材43a,43bにガスの吸入及び排出によって伸縮可能なガスバッグ30が固定され、ガスバッグ30の開口32に接続具50が接続されている。接続具50は、ベース部材に固定されたガスバッグ30の開口32に接続されるバッグ接続部52と、バッグ接続部52に連続して形成されベース部材より着座面から離れた位置を通る連携部54と、連携部54から少なくとも着座面側に向かって曲がる起立部57と、起立部57に連続して形成されてベース部材上またはベース部材より着座面側に位置してホースに接続されるホース接続部61とを有する。ホース接続部61にガス吸排手段に接続されるホースが接続されて、ベース部材の着座面側に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ機能を備える車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
マッサージチェアやマッサージ用のマットには、マッサージにおける押圧をエアの吸入で膨張し、エアを排出することで収縮するエアバッグによって行うエア式のものがある(例えば、特許文献1参照。)このようなエアバッグには、典型的には1つの開口が設けられ、この開口に管状部分を有する接続具が取り付けられる。また、接続具には、ホースが固定されて、ホースにエアの供給、排出を可能とするエア供給手段が接続される。ここで、接続具は、例えば、平面状のフランジ部分と、フランジ部分の中央から垂直に立ち上がりL字状に屈曲された管状部分とを有する形状とされ、フランジ部分がエアバッグに溶着され、管状部分の開放端にホースが接続される構成とすることができる(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−201804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車両のシートにおいても、乗り心地の向上、特に長時間シートに座ったときの身体の強張りを軽減するためにマッサージ機能を付与することが試みられている。車両用シートにエア式のマッサージ機構を適用する場合、少なくともシートバック等にエアバッグと接続具とホースとを組み込む必要がある。そこで、例えば、上記のL字状の接続具をシートバックの着座面と反対側、すなわちエアバッグの裏側に設けることを考えると、ホースはエアバッグをシートバックに取り付けるための基板の裏側で接続具に取り付けられることになる。このため、シートバックへのマッサージ部品の組み付け作業が煩雑になり、また、シートバックの裏側に組み付け作業のためのスペースが必要となる。特に、複数のエアバッグを設けて複数のホースを用いる場合、取り回しも考慮して組み付けなければならず、作業が煩雑になりやすい。あるいは、エアバッグの側面、すなわち押圧する面に隣接する面に開口を備えるエアバッグを用い、シートバックのエアバッグ取り付け基板の表側に接続具を配置する構成も考えられる。しかしながら、エアバッグの接続具との接続部分は、伸縮できないため、十分な伸縮性能を得るために押圧方向により多くの厚みを必要とし、結果的にシートバックの厚みが大きくなるおそれがある。
【0004】
そこで、本発明は、押圧方向の厚みがより小さく、且つ容易に組み付けられるエア式マッサージ機能を備える車両用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、本発明の第1発明はマッサージ機能を備える車両用シートであって、車両用シート本体に取り付けられるベース部材と、ガスの吸入及び排出によって伸縮可能なガスバッグと、ガスを吸入及び排出可能なガス吸排手段に接続されるホースと、前記ガスバッグと前記ホースとをガスを流通可能に接続する接続具とを有し、前記ガスバッグは、前記ベース部材にガスが流通可能な開口を有する面で接触してシートの着座面に向かって伸縮可能に固定され、前記接続具は、前記ベース部材に固定された前記ガスバッグの開口に接続されるバッグ接続部と、バッグ接続部に連続して形成され前記ベース部材より着座面から離れた位置を通る連携部と、この連携部から少なくとも着座面側に向かって曲がる起立部と、この起立部から延びて前記ベース部材上または当該ベース部材より着座面側に位置して前記ホースに接続されるホース接続部とを有し、前記ホースは、前記接続具のホース接続部に接続されて前記ベース部材の着座面側に配置される車両用シートを提供する。
この発明によれば、ガスバッグの開口はベース部材に接触する面に設けられているため、ガスバッグの開口によってガスバッグの伸縮量が規制されることが抑制されている。また、接続具は、連携部がベース部材より着座面から離れた位置を通るため、着座面側に接続具のための厚みを必要としない。さらに、接続具のホース接続部は、連携部から着座面側に向かって延びる起立部によって、ベース部材上またはベース部材より着座面側に位置しており、着座面側からホースのホース接続部への取り付けや取り回しが可能となっている。したがって、この車両用シートでは、マッサージ機能部分の厚みが良好に抑制されるとともに、容易に組み付け可能となっている。
また、本発明の第2発明は、第1発明において、前記ガスバッグの開口は、前記ベース部材に接触される面から着座面と反対側に突出するとともに、前記ベース部材に沿う方向に開口している車両用シートを提供する。
この車両用シートでは、接続具のバッグ接続部と連携部とをガスバッグの開口に沿う平面内に延びる形状とすることができ、接続具がより簡単な構成となる。
本発明の第3発明は、第1又は第2発明において、前記接続具は、起立部とホース接続部との間に、起立部から前記ベース部材に沿う方向に曲がる平伏部を備える車両用シートを提供する。
この車両用シートでは、ホース接続部がベース部材に沿って延びるため、ホースをベース部材に沿わせて配置することができ、特にホース部分における着座面側への厚みを軽減することができる。
また、本発明の第4発明は、第3発明において、さらに、前記接続部の平伏部は、前記起立部の軸線回りに回動自在に設けられる、車両用シートである。
この車両用シートでは、ホースの取り回しに合わせてホース接続部を備える平伏部を所望の向きに回動させることができ、ホースの取り付け及び取り回し作業が容易になるとともに、より小容積でのホースの取り回しが可能となる。
また、本発明の第5発明は、上記いずれかの発明において、前記ガスバッグは、シートの着座面に向かう方向に弾性変形可能な蛇腹構造によって伸縮可能に形成されている車両用シートを提供する。
この車両用シートでは、ガスバッグは、弾性変形可能な蛇腹構造を備えているため、所定の形状に安定化されており、組み付け作業性がより向上されている。また、ガスバッグは、弾性変形可能なため、常時においてパッドと同様に着座者の背部を柔軟に支持することができ、ガスの吸入及び排出によって伸長および収縮して着座者の背部を押圧または押圧解除することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、押圧方向の厚みがより小さく、且つ容易に組み付けられるエア式マッサージ機能を備える車両用シートを提供することにより、エア式マッサージ機能を備え、従来と同様の大きさの車両用シートを簡便に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1に、本発明の一実施形態に係わるエア式のマッサージ機能を備える車両用シートの概略を示す。車両用シート1は、シートクッション2と、シートバック4と、ヘッドレスト6とを有し、マッサージ手段10を備えている。シートクッション2およびヘッドレスト6は、公知の構成である。シートバック4は、マッサージ手段10のマッサージ部12,13を内蔵している。マッサージ手段10は、マッサージ部12,13の他、本実施形態では、シートバック4やシートクッション2とは別体で形成されているガス吸排手段14を備えている。ガス吸排手段14は、チューブ16を介してマッサージ部12,13に接続されている。
【0008】
図2を参照してシートバック4におけるマッサージ部12,13の配置について説明する。シートバック4は、図示しないフレームとパッド22とカバー26とを備える公知の構成を有する。フレームには、シートバック4の着座面中央を横断するように支持部24が設けられている。支持部24は、マッサージ部12,13を弾性的に支持する部分であり、後述するベース部材43a,43bをその一面が着座面に向かうように固定可能に設けられている。本実施形態の支持部24は、それぞれ複数のワイヤが組み合わされて形成されており、図2では、シートバック4の上部に2本、シートバック4の下部から中央にかけて4本のワイヤを示している。
【0009】
パッド22には、フレーム全体を被覆する公知の構成であり、マッサージ部12,13の後述するガスバッグ30の位置、大きさ、形状に合わせた穴24を複数備える。貫通穴24は、フレーム側から着座面に向かって貫通する。本実施形態では、図1に示すガスバッグ30の位置に合わせて、シートバックの縦中心線に対して左右対称となるように上下方向に4つ、合計8個の穴24が設けられている。カバー26は、パッド22の表面に密着して設けられる公知の構成であり、穴24部分も被覆してパッド22の表面と連続する面に形成している。
【0010】
なお、図2に示す形態では、マッサージ部13に振動手段47が設けられている。振動手段47は、マッサージ手段10の一部であり、公知の振動発生装置、いわゆるバイブレータであり、マッサージ部13に接触して設けられて、マッサージ部13にマッサージ効果を発揮し得る振動を伝達する。振動手段47は、例えば、支持ばね20に、あるいは、マッサージ部13に直接、着座面と反対の側に位置するように固定される。
【0011】
次に、マッサージ部12,13の構成について説明する。マッサージ部12,13は、着座者の施療部、具体的には背部を押圧及び押圧解除をくり返すことができる部分である。図1に示すように、マッサージ部12,13は、それぞれベース部材43a,43bと、複数のガスバッグ30と接続具50(図3〜5参照)とホース41とを備えている。ベース部材43a,43bは樹脂やファイバーボード、金属など公知の材料で形成される板状部材である。ベース部材43a,43bは、金具によるクランプやワイヤの巻き付けなど、公知の方法で支持ばね20に固定可能に形成されている。また、ベース部材43a,43bには、1つのガスバッグ30、接続具50の組に対して少なくとも2つの貫通穴が設けられる。本実施形態では、図4に示すように、1つのガスバッグ30及び接続具50の組に対して3つの貫通穴を備えている。図4中左から順に接続具50を通す起立穴44、ガスバッグ30と接続具50との接続に関連する接続穴45、およびガスバッグ30をベース部材43a,43bに固定するための係止穴46が設けられている。
【0012】
本実施形態では、ベース部材43aには左右に並列して2組のガスバッグ30、接続具50、及びホース41が設けられ、ベース部材43bには左右に2列、上下に3列並列して6組のガスバッグ30、接続具50及びホース41が設けられている。これらのガスバッグ30、接続具50およびホース41は同一の構成を用いることができる。以下、ガスバッグ30、接続具50及びホース41の一実施形態に係る構成及び配置について、図3〜5を参照して説明する。
【0013】
ガスバッグ30は、ガスを流通可能な開口32と、開口32を介してガスを吸引又は排出可能な内部空間とを備える部材で、ガスの吸引及び排出によってベース部材43a,43bに固定された状態で着座面に向かう方向に伸長及び収縮する。本実施形態では、底部30aおよび頂部30bを備える円筒体に形成されており、その外周面が蛇腹構造に形成されている。ガスバッグ30は、内部空間にガスが吸引されることで蛇腹構造が開いて伸長し、全開のとき図5の左側に示す高さとなる。また、内部空間からガスが排出されることで、蛇腹構造が閉じて収縮し、全閉のとき図5の右側に示す高さとなる。蛇腹構造は、常時は、図5の右側に示されるように閉じていても良いが、好ましくは、例えば図5の中央に示すように半開きの状態に形成されて、ガスバッグ30が伸縮方向に弾性変形可能とされる。
【0014】
ガスバッグ30は、開口32をベース部材43a,43bに接触する面、すなわち底部30aに備えている。開口32は、例えば、底部30aに開く穴としても良いし、底部30aから下方あるいは内部空間に向かって延びる管状部を設けてその開放端としても良い。好ましくは、本実施形態のように、底部30aから突出してベース部材43a,43bの反対側に延びる延出部34が設けられて延出部34に開口32が形成されると、後で詳述する接続具50の組み付けが容易となる。また、より好ましくは、図4に示すように延出部34から底部30aにほぼ平行、すなわちベース部材43a,43bに沿う方向に延びる管状部35が設けられてその開放端が開口32に形成されると、ベース部材43a,43bからの突出量をより小さい範囲に予め規定することができ、好ましい。また、開口32は、底部30aの中心より離れた端縁に近い部分に設けられると、接続具を小型化でき、好ましい。本実施形態では、図4,5に示すように、底部30aの一端縁寄りの部分から円錐台状の延出部34が突出し、この延出部34の側面下端から同じ一端縁側に向かって管状部35が延びて、その開放端が開口32に形成されている。開口32は、ガスバッグ30の外周面の延長上に位置している。
【0015】
ガスバッグ30は、ベース部材43a,43bに固定可能な部位を備える。ガスバッグ30のベース部材43a,43bへの固定形態は、特に限定されず、ビスやクリップ等の留め具を用いる構成とされても良いし、底部30aをベース部材43a,43bに接着、溶着などする構成とされても良い。好ましくは、本実施形態のように、ベース部材43a,43bにガスバッグ30自体が係止する構成であると、部品点数の増加や重量化を抑制して簡単且つ短時間で固定することができる。図4,5に示すように、ガスバッグ30は、底部30aから下方に突出する係止部37を備える。係止部37は、底部30aから延びる中実の柱状部38と、柱状部38の下端から延び柱状部38より大径の半球状に形成されたかさ部39とを備える。柱状部38は、ベース部材43a,43bの厚みにほぼ等しい長さを有しており、図4,5に示すように、ベース部材43a,43bの係止穴46に圧入されることで、かさ部39がベース部材43a,43bの反対側に突出してベース部材43a,43bに係止される。このとき、ガスバッグ30の延出部34は、ベース部材43a,43bの接続穴45を通ってベース部材43a,43bの下側に突出している。
【0016】
接続具50は、ガスバッグ30とホース41とをガスを流通可能に接続する部材であり、少なくともバッグ接続部52、連携部54、起立部57及びホース接続部61をこの順で有する。本実施形態では、図3〜5に示すように、さらに、起立部57とホース接続部61との間に回動自在な平伏部59を備える。
バッグ接続部52は、ガスバッグ30の開口32に気密に接続可能な公知の構成とすることができる。本実施形態では、図4に示すように、ガスバッグ30の管状部35の内面に密着可能な外径を備える管状部分に形成されている。また、バッグ接続部52の外面には、ガスバッグ30の管状部35からの抜けを防止するテーパ形状の抜け止め52aが設けられている。
【0017】
連携部54は、バッグ接続部52に連続して形成されベース部材43a,43bより着座面から離れた位置を通る部分である。連携部54は、図4に示す形態では、バッグ接続部52に連続する同一径を有し、ベース部材43a,43bより着座面から離れている伏管部分55のみから構成されている。なお、連携部54は、例えば、バッグ接続部52がベース部材43a,43bに沿わない方向を向いている場合は、伏管部分55との間に屈曲部や湾曲部を備えていても良い。また、伏管部分55は、ベース部材43a,43bに沿う面内を延びていることが好ましいが、ベース部材43a,43bに沿う方向、あるいはベース部材からの距離が変わる方向の湾曲部分、屈曲部分を備えていたり、伏管部分55全体が湾曲等していても良い。
【0018】
起立部57は、連携部54に連続して形成され、連携部54から少なくとも着座面側に向かって曲がる部分であり、ホース接続部61がベース部材43a,43b上又はベース部材43a,43bより着座面側に位置されるようにする部分である。起立部57は、連携部54から湾曲あるいは屈曲して着座面側に向かう部分を有しており、図4では、連携部54から垂直に屈曲する部分と、上方、すなわち着座面側に直線状に延びる部分とを備えている。本実施形態では、起立部57は、起立穴44を通って着座面側まで延びている。
【0019】
接続具50は、起立部57に連続してホース接続部61を備えていても良いが、好ましくは、間に平伏部59が設けられる。平伏部59が設けられることにより、ホース41の配置に必要とされるスペース、特にシートバック4の厚み方向の距離を軽減することができる。平伏部59は、起立部57に連続して設けられ、起立部から前記ベース部材に沿う方向に曲がる部分である。本実施形態では、起立部57に対して垂直に屈曲する部分を有しており、連携部54に平行に延びる直管状部分を備えている。また、図3,4に示すように、平伏部59は、起立部57の軸線回りに回動自在に設けられると、ホース41のホース接続部61への取り付けや、ホース41の取り回しが容易となり、好ましい。
【0020】
ホース接続部61は、ベース部材43a,43b上またはベース部材43a,43bより着座面側に位置してホース41の開口に接続される部分である。ホース接続部61は、バッグ接続部52と同様、ホースの開口に気密に接続可能な公知の構成とすることができる。図3〜5では、ホース接続部61は、バッグ接続部52と同様、ホース41の内周面に密着可能な外径を有するとともに、テーパ形状の抜け止め61aを備えている。
【0021】
接続具50は、樹脂、金属など公知の材料を種々の方法で成形することによって形成される。本実施形態の接続具50は、バッグ接続部52、連携部54及び起立部57の一部を構成する第1の部材71と、起立部57の一部から平伏部59およびホース接続部61を構成する第2の部材76とを備える。第1の部材71は、起立部57の外周面を構成しており、起立部57側の端部が第2の部材76を回動自在に嵌め込み可能、且つ、第2の部材76との間を密閉するシール(Oリング81)を収容可能なより大径の外筒73に形成されている。一方、第2の部材76は、起立部57の内周面を構成しており、その端部は、第1の部材71の外筒73に挿入されて回動自在な外径を有する内筒78に形成されている。内筒78の先端側の外周面には、円環状の溝79が形成されており、溝79に嵌めこむようにして、外筒73と内筒78との間をシールするOリング81が設けられている。なお、外筒73の上端内側には、内側に突出する円環状のフランジ74が形成されて、Oリング81が外れ出るのを抑止する押え部材83が固定されている。
【0022】
ホース41は、ガスを流通可能な公知の管状部材である。ホース41は、接続具50のホース接続部61に気密に接続可能な端部を備える。図3〜5に示す接続具50に対しては、ホース接続部61の外周面に密着する内径を有するものが用いられる。ホース41は、他端がコネクタ(図示せず)に接続されて図1に示すチューブ16にガスが流通可能に接続される。なお、チューブ16内の流通管の数は、特に限定されない。チューブ16は、ホース41に1対1で対応する流通管を備えていても良いし、左右に設けられるガスバッグ30を一組としてホース412本に対して1本の流通管を備えていても良い。
【0023】
また、チューブ16を介して設けられるガス吸排手段14は、ガスバッグ30にガスを所定量、あるいは所定圧力となるまで供給し、ガスバッグ30からガスを所定量あるいは所定内圧となるまで排出する手段である。ガス吸排手段14は、公知の構成とすることができ、例えば、ガス、典型的にはエアを供給可能なポンプと、ガスをガスバッグ30に供給可能な吸入弁と、ガスをガスバッグ30から排出可能な排出弁と、ガスの吸入量や排出量、吸入や排出のタイミングを制御する制御手段を有する。具体的な一例として、ガス吸排手段14は、エアポンプと、三方弁と、制御手段とを備える構成とすることができる。ガスの吸排は、所望の方法で制御手段により制御される。例えば、各ガスバッグ30ごとに独立して制御したり、左右一組ずつを一括して制御し、上下方向については個別に制御したりすることができる。
【0024】
マッサージ部12,13は、それぞれ、ベース部材43a,43bにガスバッグ30を固定し、このガスバッグ30に接続具50を固定してから、ベース部材43a,43bをフレームに固定してホース41を接続具50のホース接続部61に取り付けて取り回すことでシートバック4に組み付けられる。あるいは、接続具50をガスバッグ30に固定後、ホース41をホース接続部61に取り付けてから、あるいは、さらに取り回しをしてから、フレームにベース部材43a,43bを固定することでシートバック4に組み付けられる。その後、適宜の順番で、ホース41のコネクタを介してのチューブ16への接続、チューブ16のガス吸排手段14への接続を行い、マッサージ手段10を組み立てることができる。
【0025】
この車両用シート1では、接続具50のホース接続部61が、ベース部材43a,43bに対して、ガスバッグ30が設けられる側、すなわち着座面側からホース41を接続可能に設けられている。したがって、フレームにベース部材43a,43bを固定した後でホース41を接続具50に接続することが容易である。また、ホース41をホース接続部61に接続する作業を組み付け工程の任意の段階に組み込むことができ、組み付け作業の自由度が高い。特に、接続具50に、起立部57の軸線回りに回動自在な平伏部59が設けられて、ホース接続部61がベース部材43a,43bに沿って回動自在に設けられることにより、接続具50のベース部材43a,43bにおける位置を予め固定してもホース接続部61を種々の方向に向けることができ、ホース41の接続やホース41の取り回しが容易である。
【0026】
また、本実施形態の車両シート1では、マッサージ部12,13を設けるために必要とされるスペース、特にシートバック4の厚み方向におけるスペースが軽減されている。このため、エア式マッサージ機能を備えていても従来と同様の厚みのシートバック4とすることができる。具体的には、接続具50の連携部54がベース部材43a,43bより着座面から離れた位置を通るため、ベース部材43a,43bからの着座面側への突出量は、ガスバッグ30の伸縮に必要とされる厚みのみとすることができる。また、接続具50のホース接続部61がベース部材43a,43b上又はベース部材43a,43bより着座面側に設けられるため、ホース41は、着座面側に設けられる。ここで、一般にホース41の大きさは、ガスバッグ30に比して十分小さいため、シートバック4の厚みに直接影響しない。このため、ベース部材43a,43bの着座面と反対の側には、ホース41の配置および取り付け作業のためのスペースを必要としない。
【0027】
特に、ガスバッグ30の開口32がベース部材43a,43bの着座面と反対側でベース部材43a,43bに沿う方向に開口しているため、開口32によって着座面側に位置するガスバッグ30の伸縮が妨げられることがないため、伸縮部分を必要最小厚さに設定できる。また、ガスバッグ30の開口32の位置によってベース部材43a,43bの着座面と反対側への突出量を予め決定することができる。さらに、接続具50が平伏部59を備えているため、ホース41をベース部材43a,43bに沿って配置することができ、ホース41がパッド22を介して着座面に作用するおそれがない。とりわけ、平伏部59が回動自在である接続具50では、ホース41に負担がかからず、且つスペースをとらない取り回しが可能である。
【0028】
この車両用シート1のシートバック4は、自然状態では、図2に示すように着座面がカバー26によって滑らかな曲面を備える形状に形成されている。このとき、マッサージ手段10のガスバッグ30は、概ね自然状態であり、カバー26に接触するか、カバー26より後退して位置する。この車両用シート1に人間が着座すると、パッド22および各ガスバッグ30は、着座者の背中によって受ける圧力に合わせて弾性変形する。ガスバッグ30が弾性変形可能であるため、ガスバッグ30の頂部30bは、パッド22と同様、着座者の背面に沿うことができ、着座者の背部への当たりが和らげられて、違和感が生じにくい。
【0029】
車両用シート1に人間が着座した状態でマッサージ手段10を作動させることにより、着座者の背部をマッサージすることができる。ガス吸排手段14によってガスバッグ30にガスを供給することで、ガスバッグ30を伸長させて着座者の背部を押圧することができる。また、ガス吸排手段14によってガスバッグからガスを排出させることで、ガスバッグ30を収縮させて、伸長時より低い押圧にしたり、押圧を解除したりすることができる。ガスの吸排出をくり返すことで、繰り返し着座者の背部(施療部)を押圧してマッサージすることができる。また、振動手段47を作動させることにより、ベース部材24を介して下側の6個のガスバッグ30を振動させることができ、ガスバッグ30による押圧に加えて振動をも付与したマッサージができる。
【0030】
本発明に係る車両用シートは、上記実施形態に限定されない。車両用シートは、助手席用シートや、中間席用シートの他、後部座席用のシート、あるいは、運転席用シートであっても良い。
【0031】
マッサージ手段のマッサージ部及びガスバッグは、着座面の所望の位置に所望の数だけ設けることができる。マッサージ部は、1以上のガスバッグを備えていれば良い。好ましくは、ガスバッグは、本実施形態のように、シートバックの縦中心線に対して左右対称となるように設ける。また、ガスバッグの形状は、本実施形態に限定されず、蛇腹構造を備えない袋等であっても良い。また、例えば、ガスバッグは、1押圧部分につき1個設ける形態に限定されず、1つのガスバッグに2以上の押圧可能部分が形成されていても良い。また、逆に、1つのガスバッグに対して2以上の開口が設けられ2以上の接続具が接続されて種々の方法によるマッサージが可能とされていても良い。また、ガスバッグは、弾性変形可能であることが好ましいが、弾性変形せず、伸縮のみ可能とされていても良いことはもちろんである。
【0032】
接続具50は、平伏部が起立部に対して回動しない構成でも良いし、平伏部を備えない構成でも良い。平伏部を備えない接続具では、ホース接続部61が着座面に向かって開口する。また、接続具50は、起立部とホース接続部との間、起立部と平伏部との間、平伏部とホース接続部との間などで分割可能に形成されていても良い。この形式では、例えば、ホース41にホース接続部61を含む部分を、ガスバッグ30の開口32にバッグ接続部52を含む部分を、それぞれ接続しておき、ベース部材43a,43bをフレームに固定した後など上述の形態と同様、任意の時期に接続具50を一体化することで、マッサージ部のシートバック4への組み付けが行える。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る車両用シートの一実施の形態の概略図である。
【図2】図1の車両用シートのシートバックの側断面図である。
【図3】本発明に係るガスバッグと接続具の一実施形態を示す斜視図である。
【図4】図3のガスバッグと接続具の側断面図である。
【図5】図3のガスバッグの伸縮状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 車両用シート
2 シートクッション
4 シートバック
6 ヘッドレスト
10 マッサージ手段
12,13 マッサージ部
14 ガス吸排手段
16 チューブ
20 支持ばね
22 パッド
24 穴
26 カバー
30 ガスバッグ
30a 底部
30b 頂部
32 開口
34 延出部
35 管状部
37 係止部
38 柱状部
39 かさ部
41 ホース
43a,43b ベース部材
44 起立穴
45 接続穴
46 係止穴
47 振動手段
50 連結具
52 バッグ接続部
52a,61a 抜け止め
54 連携部
55 伏管部分
57 起立部
59 平伏部
61 ホース接続部
71 第1の部材
73 外筒
74 フランジ
76 第2の部材
78 内筒
79 溝
81 Oリング
83 押え部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マッサージ機能を備える車両用シートであって、
車両用シート本体に取り付けられるベース部材と、ガスの吸入及び排出によって伸縮可能なガスバッグと、ガスを吸入及び排出可能なガス吸排手段に接続されるホースと、前記ガスバッグと前記ホースとをガスを流通可能に接続する接続具とを有し、
前記ガスバッグは、前記ベース部材にガスが流通可能な開口を有する面で接触してシートの着座面に向かって伸縮可能に固定され、
前記接続具は、前記ベース部材に固定された前記ガスバッグの開口に接続されるバッグ接続部と、バッグ接続部に連続して形成され前記ベース部材より着座面から離れた位置を通る連携部と、この連携部から少なくとも着座面側に向かって曲がる起立部と、この起立部から延びて前記ベース部材上または当該ベース部材より着座面側に位置して前記ホースに接続されるホース接続部とを有し、
前記ホースは、前記接続具のホース接続部に接続されて前記ベース部材の着座面側に配置される、車両用シート。
【請求項2】
前記ガスバッグの開口は、前記ベース部材に接触される面から着座面と反対側に突出するとともに、前記ベース部材に沿う方向に開口している、請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記接続具は、起立部とホース接続部との間に、起立部から前記ベース部材に沿う方向に曲がる平伏部を備える、請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記接続部の平伏部は、前記起立部の軸線回りに回動自在に設けられる、請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記ガスバッグは、シートの着座面に向かう方向に弾性変形可能な蛇腹構造によって伸縮可能に形成されている、請求項1から4のいずれかに記載の車両用シート。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−198069(P2006−198069A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11442(P2005−11442)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】