説明

車両用ミラー格納ユニット

【課題】 車両用ミラー格納ユニットにおいて、外形の大型化を防止しつつ、水等を長期間に亘って残留させずに、ケース内部への浸水を防止する。
【解決手段】 台座部21の下面(調整プレート24の下面)21aと近接して対向するケース10の上面11のうち、回転軸20の軸部22が挿通される軸孔12の外側周囲に、円環状に延びて、上面11よりも凹んだトラップ溝13が形成され、さらに、ケース10に、トラップ溝13の底部の互いに異なる位置の2箇所とケース10の外周面16(外表面)の2箇所とをそれぞれ連通させる2つの排水路14,15(排液通路)が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ミラー格納ユニットに関し、詳細には、ミラーステーが取り付けられて回転するプレートと車体に固定されるケースの上面との間の隙間に浸入した雨滴等液体に対する防水性能の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両、特にトラックやバス等においては、比較的大型のアウターミラー(アウトサイドミラーやアンダーミラー等)が、車体の外部に備えられており、これらのアウターミラーは、ミラーステーを介して車体に取り付けられている。
【0003】
そして、このミラーステーは、上下端部ともに回動自在に支持されており、駐車時等不使用時には、車両の前面側の格納位置に回動させることにより、車幅方向外側への突出量の低減に資している。
【0004】
さらに、近年は、この格納位置と使用位置との間の回動操作を、電動モータにより行わせる車両用ミラー格納ユニットが普及している。
【0005】
この車両用ミラー格納ユニット(以下、ミラー格納ユニットという。)100は、例えば図13に示すように、車体200(図14参照)に取り付けられ、内部に電動モータ50を備えたケース10と、一端部にミラーステー210が取り付けられるフランジ状の台座部21を有し、この一端部を上側とするようにケース10に対して略上下方向に挿通され、電動モータ50の回転によって、ケース10に対して回転する回転軸20とを備え、電動モータ50の回転によって、回転軸20を回転させ、台座部21の上面21a側に固着されるミラーステー210を、使用位置と格納位置との間で回動させるようになっている(特許文献1)。
【0006】
ここで、ミラー格納ユニット100の回転軸20は、ケース10に対して回転するため、図15の概略断面に示すように、回転軸20の台座部21の下面21bとケース10の上面11とは、わずかな隙間Mを介して対向している。
【0007】
そして、この台座部21およびケース10の外方から、雨滴や洗車時の水が吹きかかると、この隙間Mに水が流れ込み、回転軸20の軸部22の外周面を伝って、ケース10の内部に水が流れ込む虞がある。
【0008】
そこで、回転軸20の軸部22とケース10の軸孔12との間の隙間に、水が流れ込むのを防止するため、例えば、図15に示したものでは、軸孔12と軸部22との間に、Oリング30を介在させて、台座部21の下面21bとケース10の上面11との間に流れ込んだ水を、Oリング30によって堰き止め、ケース10の内部に水が浸入するのを防止している。
【0009】
なお、図13における符号19はケース10の底を構成する底板であり、図15における符号70は、ケースの外方を覆うように、必要に応じて備えられるカバーである。
【特許文献1】特開平10−81176号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述したOリング30は、相対的に回転するケース10の軸孔12と回転軸20の軸部22とにそれぞれ当接しているため、回転軸20の回転の際に、回転動作を抑制する摺動抵抗を生じ、この結果、回転軸20を駆動する電動モータ50の負荷を増大させる。
【0011】
そして、この負荷の増大分を補って回転軸20を円滑に回転動作させるためには、より大きなトルクを発生する電動モータ50を用いる必要がある。この結果、使用する電動モータ50の外形が大型化し、これに伴ってケース10の外形も大型化する。
【0012】
また、Oリング30によって堰き止められた水は、そのOリング30の近傍に溜まるため、経時的に長期間に亘り残留し、ケース10や回転軸20の防錆等の観点から好ましくない。
【0013】
さらに、Oリング30が経時的に劣化した際には、Oリング30による浸水阻止機能が十分に発揮されず、ケース10内に雨水等が容易に浸入する虞がある。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、全体の外形を大型化させることなく、かつ水等の液体成分を長期間に亘って残留させることなく、ケース内部への浸水を防止することができる車両用ミラー格納ユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る車両用ミラー格納ユニットは、回転軸が挿通されるケースの軸孔の周囲に、水を落とし込むトラップ溝を形成するとともに、このトラップ溝とケースの外表面とを連通させる排液通路を形成して、ケースの上面に沿って軸孔に流れようとする水をトラップ溝および排液通路を順次介して、ケースの外部に排出させるものである。
【0016】
すなわち、本発明に係る車両用ミラー格納ユニットは、車体に取り付けられ、内部にモータを備えたケースと、一端部にミラーステーが取り付けられるフランジ状の台座部を有し、該一端部を上側とするように前記ケースに対して略上下方向に挿通され、前記モータにより前記ケースに対して回転する回転軸とを備え、前記モータの回転により、前記回転軸を回転させて、該台座部の上面側に固着されるミラーステーを、使用位置と格納位置との間で回動させる車両用ミラー格納ユニットにおいて、前記台座部の下面と近接して対向する前記ケースの上面のうち、前記回転軸が挿通される軸孔の外側周囲に、環状のトラップ溝が形成され、かつ、該トラップ溝の底部と前記ケースの外表面とを連通させる排液通路が形成されていることを特徴とする。
【0017】
ここで、回転軸は、柱状の回転軸本体とフランジ状の台座部とが別体に形成されて、ミラー格納ユニットの組立てにより、両者が係合する等して、両者が少なくとも一体的に回転するように構成されたものであってもよい。
【0018】
また、台座部自体も、単一の部材によって構成されるものでなくてもよく、例えば、ケースの上面と対向する下面を含む第一の部材とミラーステーが取り付けられる上面を含む第二の部材とが係合する等して、両部材が少なくとも一体的に回転するように構成されたものであってもよい。
【0019】
排液通路の、ケースの外表面側の開口は、ケースの周面に形成されてもよいし、ケースの底面に形成されてもよい。
【0020】
このように形成された本発明に係る車両用ミラー格納ユニットによれば、台座部の下面とケースの上面との隙間に、ケースおよび台座部の外方から、雨滴や洗車時の水等液体が浸入すると、これらの液体は、ケースに形成された軸孔に到達する以前に、ケースの上面で軸孔の外側に形成されたトラップ溝に流れ落ち、このトラップ溝に流れ落ちた液体は、排液通路を通って、ケースの外表面に排出される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る車両用ミラー格納ユニットによれば、台座部の下面とケースの上面との隙間に、ケースおよび台座部の外方から、雨滴や洗車時の水等液体が浸入すると、これらの液体は、ケースに形成された軸孔に到達する以前に、ケースの上面で軸孔の外側に形成されたトラップ溝に流れ落ち、このトラップ溝に流れ落ちた液体は、排液通路を通って、ケースの外表面に排出される。
【0022】
したがって、ケースの軸孔に液体が到達するのを有効に防止して、この軸孔を通ってケース内部に浸水するのを防止することができる。
【0023】
また、従来の車両用ミラー格納ユニットのように、軸孔の外側に、防水用Oリングを設ける必要がないため、防水用Oリングを設けることによるケースと台座部あるいは回転軸との間の摩擦抵抗の増大、これに伴うモータの負荷の増大、という問題が生じることがなく、したがって、出力を抑えた小型のモータを使用することができ、ミラー格納ユニット全体の小型化に資することができる。
【0024】
しかも、Oリングで堰き止められた液体は、経時的に長期間に亘って、その堰き止められた部分に残留するが、本発明の車両用ミラー格納ユニットは、Oリングを用いていないため、液体の長期間に亘る残留を防止することもでき、防錆面でも有利である。
【0025】
なお、排液通路の、ケースの外表面における開口は、ケースの上面よりも低い位置に形成されていることが必要であることは言うまでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の車両用ミラー格納ユニットに係る最良の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る車両用ミラー格納ユニット100を示す分解斜視図である。
【0027】
図示のミラー格納ユニット100は、例えば図14に示すように、車体200のフロントウインドシールドの下方に設けられ、車室内に配設されたスイッチを操作することにより、ミラーステー210を、車体200の前面側に倒した位置である格納位置と、走行中等ミラー使用時の位置である使用位置との間で、回動させるものである。
【0028】
そして、このミラー格納ユニット100は、車体200に取り付けられ、内部にモータ50を備えたケース10と、一端部にミラーステー210が取り付けられるフランジ状の台座部21を有し、この一端部を上側とするようにケース10に対して略上下方向に挿通され、モータ50によりケース10に対して回転する回転軸20とを、基本構成として備えている。
【0029】
ここで、ケース10の上面11には、回転軸20の軸部22が挿通される軸孔12が形成され、また、底部は開口しており、ケース10の内部にモータ50やその他の機構部材が配設された後に、この底部の開口を塞ぐ底板部材19が接合される。
【0030】
回転軸20は、台座部21と軸部22とが別体の部材によって構成されているが、両者は組み合わされて一体的に回転する単一の回転軸と見なすことができる。
【0031】
また、この台座部21自体も、その上面21aにミラーステー210が直接結合されるベースプレート23と、その下面21bがケース10の上面11とわずかな隙間を介して対向する調整プレート24とが重ね合わされて構成されている。
【0032】
そして、軸部22の一端部に形成された外歯ギヤ22aと、ベースプレート23に形成された上段内歯ギヤ23aとが噛合して、軸部22とベースプレート23とが一体的に回転し、さらにベースプレート23に形成された下段内歯ギヤ23bと調整プレート24に形成された外歯ギヤ24aとが噛合することにより、ベースプレート23と調整プレート24とが一体的に回転し、以上の構成によって、軸部22、ベースプレート23および調整プレート24は一体的に回転する。
【0033】
ここで、ケース10の上面11には、2つのボール42,42がこの上面11から一部突出するように設置されており、調整プレート24の下面21bには、図示を省略したが、この突出したボール42,42の一部が没入する、円弧状に延びた回転角度規制溝が形成されており、この回転角度規制溝の範囲で、ケース10に対する回転軸20の回転が許容されている。なお、この回転角度規制溝の範囲は、ミラーステー210の格納位置と使用位置との間の可動角度範囲を規定するものである。
【0034】
一方、ベースプレート23には、ミラーステー210を取り付けるための取付孔23cが形成されているが、ミラーステー210側の取付孔210aの形成位置は、このミラーステー210が使用される車種に応じて異なる場合があり、それにも拘わらずベースプレート23の取付孔23cの位置が一定であると、ミラーステー210の格納位置および使用位置が、所望とする位置から角度ずれすることになる。
【0035】
さらに、ミラーステー210側の複数の取付孔210a間の角度間隔が、ベースプレート23側の取付孔23c間の角度間隔と一致しない場合や、ミラーステー210側の取付孔210aの形成個数と、ベースプレート23側の取付孔23cの形成個数とが一致しない場合には、そもそもこのベースプレート23だけで対応することはできない。
【0036】
しかし、本実施形態のミラー格納ユニット100は、ベースプレート23を調整プレート24に対して任意の角度で噛合させることができるため、ミラーステー210の格納位置および使用位置に対応させることができ、回転軸30が単一の部材で形成されたものであるミラー格納ユニットよりも、適用可能車種を増やすことができる。
【0037】
また、噛合角度位置の調整だけでは対応できない場合であっても、ミラーステー210側の取付孔210aの形成個数や形成角度間隔に対応した他のベースプレート(図示せず)を予め準備し、このベースプレートに交換することによって、容易に対応することができ、回転軸30が単一の部材で形成されたものであるミラー格納ユニットよりも、低コストで適用可能車種を増やすことができる(汎用性の向上)。
【0038】
ケース10の内部には、モータ50の他、モータ50から回転軸20への駆動力の断接を切り替えるクラッチギヤ45およびクラッチホルダ46、回転軸20を軸方向に沿って付勢するスプリング44、このスプリング44の座となるワッシャ43、クラッチホルダ46等が回転軸20から抜けるのを防止するEリングクリップ47、モータ50が収容されるプレート49、モータ50の駆動力を伝達するウォームギヤ51,52およびヘリカルギヤ53、モータ50とウォームギヤ51とを接続するジョイント48、並びに車体の乗員室内に配置されてモータ50への電力供給の断接を行うスイッチ54に接続された配線類54などが収容されている。
【0039】
また、台座部21の下面(調整プレート24の下面)21aと近接して対向するケース10の上面11のうち、回転軸20の軸部22が挿通される軸孔12の外側周囲には、図2に示すように、円環状に延びて、上面11よりも凹んだトラップ溝13が形成されている。
【0040】
さらに、ケース10には、同図に示すように、このトラップ溝13の底部の互いに異なる位置の2箇所と、ケース10の外周面16(外表面)の2箇所とをそれぞれ連通させる2つの排水路14,15(排液通路)が形成されている。
【0041】
そして、ケース10にこのようなトラップ溝13および排水路14,15が形成されているミラー格納ユニット100は、ブラケット220(および図示しないガスケット)を介して車体200に取り付けられた状態で、図2(c)相当の断面図である図3に示すように設置される。また、図3におけるC部の詳細は、図4の詳細拡大図に示すものとなっている。
【0042】
次に、本実施形態のミラー格納ユニット100の作用について説明する。
【0043】
なお、ミラーステー210の格納位置から使用位置への回動動作および使用位置から格納位置への回動動作は、従来の車両用ミラー格納ユニット(例えば、特開平10−81176号公報(特許文献1)等記載のもの)と同様であるため説明は省略し、本実施形態のミラー格納ユニット100の特徴である排水機能について、図4を参照して以下に説明する。
【0044】
まず、台座部21の下面(調整プレート24の下面)21bとケース10の上面11との隙間に、ケース10および台座部21の外方から、雨滴や洗車時の水Wが浸入すると、この水Wは、ケース10に形成された軸孔12に到達する手前で、ケース10に形成されたトラップ溝13に流れ落ち、このトラップ溝13に流れ落ちた水Wは、排水路15(または図2に示した排水路14。以下、同じ。)を通って、ケース10の外周面16に形成された開口15a(排水路14については、開口15aと同様にケース10の外周面16に形成された開口。以下、同じ。)に到達し、この開口15aを通って、ケース10の外周面に排水される。
【0045】
この結果、ケース10の軸孔12に水Wが到達するのを有効に防止して、この軸孔12を通ってケース10の内部に浸水するのを防止することができる。
【0046】
また、従来の車両用ミラー格納ユニットのように、軸孔12の外側に、防水用Oリングを設ける必要がないため、防水用Oリングを設けることによるケース10と台座部21あるいは軸部22との間の摩擦抵抗の増大、これに伴うモータ50の負荷の増大、という問題が生じることがなく、したがって、出力を抑えた小型のモータ50を使用することができ、ミラー格納ユニット100全体の小型化に資することができる。
【0047】
しかも、Oリングで堰き止められた水Wは、経時的に長期間に亘って、その堰き止められた部分に残留するが、本実施形態のミラー格納ユニット100は、Oリングを用いていないため、水Wの長期間に亘る残留を防止することもでき、防錆面での耐久性を向上させることもできる。
【0048】
なお、トラップ溝13は、その全周のうち排水路14,15に連通する部分において、その底部の上下方向位置が最も低くなるように、その深さに高低を設けるのが好ましい。トラップ溝13の底部が全周に亘って完全に同一高さであっても、排水路14,15への排水機能が損なわれることはないが、この排水路14,15に連通する部分が最も低く形成されていれば、トラップ溝13内の水Wが、より迅速に排水路14,15に排水されるため、トラップ溝13に大量の水Wが流れ込んでも、トラップ溝13から水Wが溢れるのを防止し、あるいは抑制することができる。
【0049】
なお、本実施形態のミラー格納ユニット100においては、図3に示すように、ケース10の外方を覆うとともに、少なくとも下部が、外部に開放されているカバー70(二点鎖線で示す)を、さらに備えた構成を採用することもできる。
【0050】
このようなカバー70を設けたミラー格納ユニット100によれば、ケース10がカバー70に覆われているため、排水路15(以下、排水路15に関する説明は、排水路14についても同様であるため、排水路14についての言及は省略する。)に、ケース10の外周面16側の開口15aから水Wが浸入するのを防止することができ、ケース10内部への浸水を一層確実に防止することができる。
【0051】
すなわち、ケース10の外周面16側の開口15aから水Wが排水路15に浸入して、水Wが排水路15を逆流すると、水Wがトラップ溝13から溢れて、この溢れた水Wはケース10の軸孔12に到達する虞があるが、ケース10の外周面16の開口15aから水Wが浸入しない以上、そのようなケース10への浸水は生じ得ない。
【0052】
なお、カバー70を備えないミラー格納ユニット100であっても、排水路15の、ケース10の外周面16側の開口15aが、車体200に対向する向きとなる位置に形成されているものでは、雨滴や洗車水などは、この開口15aに直接吹きつけられないため、ケース10の外周面16側の開口15aから排水路15への浸水を防止し、または抑制することができる。また、例え、水Wが車体200に反射する等して偶発的に排水路15に浸入した場合であっても、そのような水Wは勢いが減殺されているため、排水路15を逆流することはなく、ケース10の内部への浸水を防止することができる。
(変形例1)
本実施形態に係るミラー格納ユニット100においては、図5に示すように、台座部21の下面21bに、トラップ溝13に入り込む円弧状(回転軸20の軸部22の中心回りに、台座部21の下面21bに沿って円弧状の意。)に延びた突起21cが形成されていることが好ましい。
【0053】
台座部21の下面21bとケース10の上面11との隙間に、ケース10および台座部21の外方から、水Wが浸入すると、この水Wは、トラップ溝13に流れ落ちるが、水Wが、高圧洗車などによって浸入した勢いのあるものであるときは、図4に示したものでは、水Wはトラップ溝13を通り越して軸孔12に到達する虞がある。
【0054】
しかし、図5に示した変形例1のミラー格納ユニット100によれば、台座部21の下面21bに、トラップ溝13に入り込む突起21cが形成されているため、勢いのよい水Wも、この突起21cに衝突して下方のトラップ溝13に落下し、または突起21cに沿ってトラップ溝13に滴下する。
【0055】
したがって、浸入した水Wが、トラップ溝13を容易に通り越して軸孔12に到達するのを防止し、これによりケース10の内部が浸水するのを、より確実に防止することができる。
(変形例2)
本実施形態に係るミラー格納ユニット100においては、図6に示すように、排水路15は、その底部15bが、トラップ溝13の底部からケース10の外周面16に向かうにしたがって下るように傾斜して形成されていることが好ましい。
【0056】
このように構成された変形例2のミラー格納ユニット100によれば、トラップ溝13に流れ落ちた水Wは、重力にしたがってさらに下方に流れるが、排水路15の底部15bが、ケース10の外周面16に向かうにしたがって下方に傾斜して形成されていることにより、トラップ溝13からこの排水路15に流れ込んだ水Wは、より下方であるケース10の外周面16における開口15aに流れ易く、したがって、トラップ溝13や排水路15に水Wが残留するのを防止することができる。
【0057】
なお、トラップ溝13や排水路15に水Wが残留することがないため、残留した水Wが凍結した場合に生じうる排水路15の閉塞が起こらず、排水機能が阻害されるのを未然に防止することができる。
(変形例3)
本実施形態に係るミラー格納ユニット100においては、図7に示すように、排水路15は、その断面積が、トラップ溝13の底部からケース10の外周面16に向かうにしたがって大きくなるように形成されていることが好ましい。
【0058】
排水口となる排水路15のケース10の外周面16における開口15aの開口面積が小さいときは、この開口15aに到達した水Wの粘性や表面張力等により、水Wが開口15aを塞ぐように残存することが起こり易いが、このように構成された変形例3のミラー格納ユニット100によれば、ケース10の外周面16に向かうにしたがって排水路15の断面積が大きくなるため、そのような粘性や表面張力による残存作用が抑制され、水Wが排水路15に残存するのを防止することができる。
【0059】
なお、排水路15に水Wが残留することがないため、残留した水Wが凍結した場合に生じ得る排水路15の閉塞も起こらず、排水機能が阻害されるのを未然に防止することができる。
(変形例4)
本実施形態に係るミラー格納ユニット100においては、図8に示すように、排水路15は、ケース10の外周面16の開口15aにおいて、底部側が天部側よりも排水路15の内部側に後退して形成されていることが好ましい。
【0060】
排水路15を流れてケース10の外周面16の開口15aに到達した水Wが、この開口15aにおいて、表面張力により開口15aを塞いで残留すると、水Wがこの開口15aから外部に排出されなくなるが、このように構成された変形例4のミラー格納ユニット100によれば、排水路15の底部側が天部側に対して排水路15の内部側に後退していることにより、水Wの自重が、表面張力の作用している水/空気間の界面に作用し易く、この結果、表面張力による界面が形成されにくくなり、水Wがこの開口15aに残留するのを防止することができる。
【0061】
そして、この開口15aに水Wが残留することがないため、残留した場合に生じ得る水Wの凍結による開口15の閉塞が起こらず、排水機能が阻害されるのを未然に防止することができる。
【0062】
なお、開口15aにおける排水路15の底部側を天部側よりも後退させた形状に形成する方法としては、例えば、ケース10の外周面16における開口15aの下側部分16aを除去して、開口15aの上側部分16bよりも後退させればよい。
【0063】
このような除去加工によれば、ケース10を成型する型によって形成する場合に比べて、型の複雑化を防止することができるとともに、型の改修を行う必要がないため、従来の型を引き続き用いることができる。
【0064】
なお、除去加工の際には、図9(a)に示した除去前のケース10の外周面16の開口15aよりも下側部分16aを、同図(b)および図8に示すように、開口15aの部分で除去深さが最も深く(例えば、深さ略1mm)、開口15aよりも下方にいくにしたがって、その除去深さが徐々に浅くなる傾斜した平面状の新たな外周面16a′を形成するように、下側部分16aを除去するのが好ましい。このような傾斜面の方が、鉛直な面の場合よりも、排水路15の延びる方向に対する面の角度が浅くなり、水Wが流れ落ち易いからである。このとき、除去部分の、外周面16に沿った上下方向長さは、例えば略15mm、開口15aの部分における幅は、例えば略10mmに設定すればよい。ただし、これらの深さ、長さ、幅に限定されるものではない。
【0065】
また、排水路15の底部側を天部側よりも排水路15の内部側に後退させるのに代えて、天部側が底部側に対してケース15の外周面16側に突出させてもよく、ケース10の外周面16における開口15aの上方側の壁面21bが下方側の壁面16′に対してオーバーハングしている形態であれば、底部側を天部側よりも排水路15の内部側に後退させたものと同様の作用、効果を奏することができる。
(変形例5)
本実施形態に係るミラー格納ユニット100においては、図10および図11(図10におけるC部詳細を示す図)に示すように、ケース10の上面11のうち環状のトラップ溝13を境界とした内側部分(軸部22側の部分)は、外側部分の上面11よりも高く形成されていることが好ましい。
【0066】
すなわち、図11に示すように、トラップ溝13より内側部分の上面11bは、外側部分の上面11よりも高さhだけ高く形成されている。
【0067】
トラップ溝13の外方側からトラップ溝13まで進んだ水Wは、通常はトラップ溝13に落ち込んで排水路15を通ってケース10の外部に排水されるが、この水Wの進行の勢いが強い場合には、トラップ溝13を通り越して軸孔12に到達する虞がある。
【0068】
特に、図10,11において、台座部21の下面21bに突起21cが形成されていないものでは、その虞が大きい。
【0069】
しかし、トラップ溝13よりも内側部分が、トラップ溝13よりも外側部分のケース11の上面11に対して高く形成されている本変形例のミラー格納ユニット100によれば、トラップ溝13を通り越した水Wであっても、トラップ溝13よりも内側部分の縦壁に衝突することになるため、この内側部分に形成された軸孔12に到達しにくくなる。
【0070】
そして、内側部分の縦壁に衝突した水Wは、進行の勢いが減殺されてトラップ溝13に流れ落ち、トラップ溝13から排水路15を通ってケースの外部に排出される。
【0071】
したがって、浸入した水Wが、トラップ溝13を容易に通り越して軸孔12に到達するのを防止し、これによりケース10の内部が浸水するのを、より確実に防止することができる。
(変形例6)
本実施形態に係るミラー格納ユニット100においては、図12(a)に示すように、ケース10の上面11のうち環状のトラップ溝13(以下、内側トラップ溝13という。)を境界とした外側部分に、さらにトラップ溝17a,17b(外側トラップ溝17a,17b)が形成されていることが好ましい。
【0072】
ここで、各外側トラップ溝17a,17bは、ケース10の上面11よりも低く形成された低上面11aに連通しており、これら外側トラップ溝17a,17bに流れ込んだ水Wは、それぞれ低上面11aに流れて、ケース10の外部に排水可能となっている。
【0073】
また、一方の外側トラップ溝17bにはさらに、内側トラップ溝13に連通する凹部17cが形成されており、この外側トラップ溝17bに流れ込んだ水Wは、低上面11aに流れるとともに、この凹部17cから内側トラップ溝13に流れ落ち、排水路14を通ってケース10の外部に排水可能となっている。
【0074】
なお、この変形例6においては、外側トラップ溝17aと外側トラップ溝17bとは、全体として環状に連結されているものではないが、内側トラップ溝13を全周に亘って取り囲むように、外側トラップ溝17aと外側トラップ溝17bとが環状に連結されていてもよい。
【0075】
このように構成された変形例のミラー格納ユニット100によれば、図12(b)に示すように、ミラー格納ユニット100の外方から進行した水Wは、内側トラップ溝13に到達する以前に、外側トラップ溝17a(17b)に到達し、この外側トラップ溝17a(17b)に流れ落ちるため、水Wが内側トラップ溝13に到達する確率を低減することができ、したがって、水Wが軸孔12に到達するのを一層確実に防止することができる。
【0076】
なお、上述した実施形態のミラー格納ユニット100は、上述した変形例1〜6の構成を2以上組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用ミラー格納ユニットを示す分解斜視図である。
【図2】図1に示したミラー格納ユニットのうちケースの詳細を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)の矢視Aによる平面図、(c)は(b)のB−B線に沿った断面図、をそれぞれ表す。
【図3】図1に示したミラー格納ユニットの、図2(c)相当の要部断面図である。
【図4】図3におけるC部の詳細を示す拡大断面図である。
【図5】図1に示したミラー格納ユニットの変形例(その1)を示す、図4相当の要部断面図である。
【図6】図1に示したミラー格納ユニットの変形例(その2)を示す、図4相当の要部断面図である。
【図7】図1に示したミラー格納ユニットの変形例(その3)を示す、図4相当の要部断面図である。
【図8】図1に示したミラー格納ユニットの変形例(その4)を示す、図4相当の要部断面図である。
【図9】図8に示した変形例のミラー格納ユニットの、ケース外表面の加工を説明する要部斜視図である。
【図10】図1に示したミラー格納ユニットの変形例(その5)を示す、図3相当の要部断面図である。
【図11】図10におけるC部の詳細を示す拡大断面図である。
【図12】図1に示したミラー格納ユニットの変形例(その6)を示す図であり、(a)は図2(a)相当のケースの斜視図、(b)は(a)におけるD−D線に沿った断面を示す拡大断面図、をそれぞれ示す。
【図13】従来の車両用ミラー格納ユニットの概略構成を示す分解斜視図である。
【図14】図10に示したミラー格納ユニットが車体に取り付けられた状態を示す外観図である。
【図15】回転軸とケースとの間にOリングが配設された状態を説明する概略断面図である。
【符号の説明】
【0078】
10 ケース
11 上面
12 軸孔
13 トラップ溝
14,15 排水路(排液通路)
15a 開口
16 外周面(外表面)
20 回転軸
21 台座部
22 軸部
21a 上面
21b 下面
50 電動モータ
100 車両用ミラー格納ユニット
200 車両
210 ミラーステー
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられ、内部にモータを備えたケースと、一端部にミラーステーが取り付けられるフランジ状の台座部を有し、該一端部を上側とするように前記ケースに対して略上下方向に挿通され、前記モータにより前記ケースに対して回転する回転軸とを備え、前記モータの回転により、前記回転軸を回転させて、該台座部の上面側に固着されるミラーステーを、使用位置と格納位置との間で回動させる車両用ミラー格納ユニットにおいて、
前記台座部の下面と近接して対向する前記ケースの上面のうち、前記回転軸が挿通される軸孔の外側周囲に、環状のトラップ溝が形成され、かつ、該トラップ溝の底部と前記ケースの外表面とを連通させる排液通路が形成されていることを特徴とする車両用ミラー格納ユニット。
【請求項2】
前記排液通路は、その底部が、前記トラップ溝の底部から前記ケースの外表面に向かうにしたがって下るように傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ミラー格納ユニット。
【請求項3】
前記排液通路は、その断面積が、前記トラップ溝の底部から前記ケースの外表面に向かうにしたがって大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ミラー格納ユニット。
【請求項4】
前記排液通路は、前記ケースの外表面側の開口において、相対的に、底部側が天部側よりも該排液通路の内部側に後退して形成されていることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載の車両用ミラー格納ユニット。
【請求項5】
前記台座部の下面には、前記トラップ溝に入り込む円弧状に延びた突起が形成されていることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項に記載の車両用ミラー格納ユニット。
【請求項6】
前記ケースの外方を覆うとともに、少なくとも下部が、外部に開放されているカバーを、さらに備えたことを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項に記載の車両用ミラー格納ユニット。
【請求項7】
前記ケースの上面のうち前記環状のトラップ溝を境界とした内側部分は、外側部分の上面よりも高く形成されていることを特徴とする請求項1から6のうちいずれか1項に記載の車両用ミラー格納ユニット。
【請求項8】
前記ケースの上面のうち前記環状のトラップ溝を境界とした外側部分に、さらにトラップ溝が形成されたことを特徴とする請求項1から7のうちいずれか1項に記載の車両用ミラー格納ユニット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−15953(P2006−15953A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198021(P2004−198021)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】