説明

車両用ワイヤ式衝突検出装置

【課題】歩行者など車両に比べて小質量の衝突体の衝突又は衝突荷重を高精度かつ高速に検出可能な車両用ワイヤ式衝突検出装置を提供すること。
【解決手段】衝突体がバンパカバー8の左右方向中央部に衝突すると、バンパカバー8がこの衝突箇所にて後方へ凹み、これによりコイルスプリング12が伸張する。樹脂糸11はバンパアブソーバ3とともに衝突箇所にて後方へ屈曲し、これにより張力センサ13に掛かる張力が増大し、張力センサ13はこの増加した張力に応じた信号電圧を出力する。衝突体がバンパカバー8の左右方向中央部全体に広く衝突した場合には、バンパカバー8、樹脂糸11、バンパアブソーバ3がこの衝突箇所にて後方へ広く後退し、これにより樹脂糸11の必要経路長は短縮され、コイルスプリング12が縮小し、樹脂糸11はバンパアブソーバ3とともに衝突箇所にて後方へ屈曲し、これにより張力センサ13に掛かる張力が減少し、張力センサ13はこの減少した張力に応じた信号電圧を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤを用いて車両衝突荷重を検出する車両用ワイヤ式衝突検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1は、所定の初期張力を有してバンパ レインフォースの前面に沿って横架されたワイヤーの張力が車両衝突発生時に増大することを検出する車両用ワイヤ式衝突検出装置を記載している。
【特許文献1】特開2004−212281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、上記特許文献1は、車両衝突によるバンパ レインフォースの変形によるワイヤーの張力変化を、ワイヤーの両端に連結された張力センサ によって計測するものであるが、歩行者のように衝突体の質量が小さい場合、衝突により発生するバンパ レインフォースの変形が小さいため、検出精度が低下するという問題があった。また、衝突体がバンパーに衝突し、衝突荷重がバンパーからバンパ レインフォースに伝達されてバンパ レインフォースが変形し、その結果としてワイヤー張力が変化して初めて衝突又は衝突荷重を検出することができるため、検出が遅れるという問題があった。
【0004】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、歩行者など車両に比べて小質量の衝突体の衝突又は衝突荷重を高精度かつ高速に検出可能な車両用ワイヤ式衝突検出装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の車両用ワイヤ式衝突検出装置は、車体の前面又は後面に沿って左右に延設され両端が車体に固定される衝突検出用の線材と、衝突時の前記線材の変形に関連する物理量を電気的に検出する線材変形検出センサと、前記線材変形検出センサの出力に基づいて衝突を判定する判定回路とを備え、前記線材は、車体前面に装備されたバンパーに前記線材の長手方向へ変位可能に収容されることを特徴としている。
【0006】
なお、線材としては、鋼線の他、釣り糸のごとき樹脂線でもよく、線材断面は円形の他、扁平形状、テープ形状など種々の断面形状をもつことができる。このように構成した本発明によれば、歩行者など車両に比べて小質量の衝突体の衝突又は衝突荷重を高精度かつ高速に検出可能な車両用ワイヤ式衝突検出装置を実現することができる。
【0007】
更に具体的に説明すると、この発明では、衝突検出用の線材をバンパーに収容してバンパーの長手方向に延在させる。好適には、線材は、製造工程の許容できない複雑化が生じない範囲でバンパーのできるだけ車両前部では前方側、車両後部では後方側に配置され、更に、線材と車体(たとえばバンパ レインフォース)との間には変形しやすいバンパアブソーバの一部又は全部が配置される。
【0008】
このようにすれば、衝突体がバンパーに衝突すると、線材に速やかに衝突荷重が掛かるため、高速に衝突乃至衝突荷重の検出が可能となる。なお、衝突又は衝突荷重の検出は、線材の張力変化を検出してもよく、後述するように線材長手方向変位量すなわち線材の長手方向への変位を検出してもよい。
【0009】
更に、この発明では、上述したように線材と車体(たとえばバンパ レインフォース)との間に変形しやすいバンパアブソーバの一部又は全部が配置されるため、衝突が生じる衝突箇所にてバンパアブソーバが容易に変形するため、この衝突箇所にて線材は車両側へ容易に大きく変位させることが可能となり、その結果、上記特許文献1のようにバンパ レインフォース前面にワイヤを配置するのに比べて格段に感度よく衝突又は衝突荷重を検出することができる。
【0010】
好適な態様において、前記線材のたるみを吸収するとともに衝突時に前記線材をその長手方向へ変位させるたるみ吸収部材を有し、前記線材変形検出センサは、衝突による前記線材の長手方向変位量を電気信号に変換する。このようにすれば、衝突体がバンパアブソーバを押し込んでそれを変形にさせる際に、バンパアブソーバの変形に追従して線材が繰り出されるために、衝突荷重により線材長手方向変位量を大きく変化させることができ、この線材長手方向変位量を計測することにより高感度に衝突荷重を検出することができる。
【0011】
また、衝突によりバンパアブソーバ全体が車体(たとえばバンパ レインフォース)に近接するような変形を生じる場合でも、線材長手方向変位量はそれに応じて変化するために問題なく衝突又は衝突荷重を検出することができる。
【0012】
更に、バンパーの製造ばらつきなどにより、バンパーの線材収容経路長がばらついてもそれに応じてたるみ吸収部材が線材のたるみを吸収しつつバンパーの線材収容経路長に等しい線材延設長を確保するため、製造歩留まりを大幅に向上することも可能となる。
【0013】
好適な態様において、前記バンパーは、バンパ レインフォースの前面に固定されたバンパアブソーバと、前記バンパアブソーバの前面に位置して前記バンパアブソーバの少なくとも前面を囲包するバンパカバーとを有し、前記線材は、前記バンパアブソーバと前記バンパカバーとの間に配置される。このようにすれば、衝突発生時にバンパアブソーバの変形又は変位に合わせて線材の位置変化又は変位を大きく確保できるとともに、バンパカバーへの衝突体の衝突により生じる衝突荷重を速やかに検出することができる。更に、本質的に別体であるバンパカバーとバンパアブソーバとの間に線材を配置すればよいため、バンパアブソーバとバンパカバーとの形状変更を最小化したり、線材収容作業を簡素化したりすることができる。
【0014】
好適な態様において、前記線材は、チューブに挿通されているので、たとえばバンパアブソーバの角部などにおいて線材移動に大きな摩擦や引っかかりが生じることを抑止することができ、それによる検出感度低下を防止することができる。また、バンパアブソーバの表面の摩擦係数が高くても、チューブの内面の摩擦係数を小さくすることにより同様に検出感度低下を抑止することができる。
【0015】
好適な態様において、前記チューブに潤滑材又は摩擦係数低下材が注入されているので、上記検出感度低下を一層抑止することができる。
【0016】
好適な態様において、前記線材は、前記バンパカバーの後面に左右方向所定ピッチで形成されて前記線材を収容する複数の突起部を有する。この態様はバンパカバーの後面にて線材保持を行う場合であるが、バンパカバーの複数箇所の突起にて線材を保持するため、線材移動における摩擦を低減することができ、それによる検出感度の低下を抑止することができる。
【0017】
好適な態様において、前記線材は、前記バンパアブソーバの前面に保持されるので、線材保持を簡単に行うことができる。
【0018】
好適な態様において、前記線材は、前記バンパアブソーバの前面に所定ピッチで形成された複数の突起部に接するため、線材はバンパアブソーバに少数の箇所にて接することができ、その結果として線材移動の際の摩擦を減らすことができる。
【0019】
好適な態様において、前記線材の両端は、最終的にバンパ レインフォースの両端部に支持される。このようすれば、車体(たとえばバンパ レインフォース)に対するバンパアブソーバの変位又は変形に伴う線材の移動又は張力変化を効率よく実現することができる。
【0020】
好適な態様において、前記たるみ吸収部材は、弾性部材を有する。このようにすれば、線材への張力付与とたるみ吸収とを弾性部材の弾性変形により良好に行うことができる。また、弾性部材は付勢力の小さい変化で大きく変化することができるため、衝突による線材長手方向変位量を大きく確保することができ、線材断線事故を防止することができる。
【0021】
好適な態様において、前記弾性部材は、前記線材と直列に接続されるコイルスプリングからなるので、上記機能をもつ弾性部材を簡単に実現できる。
【0022】
その他、前記たるみ吸収部材を、前記線材が巻装されるとともに前記弾性部材により前記線材を巻き取る方向に弾性付勢される巻き取りドラムにより構成してもよい。
【0023】
その他、互いに上下方向へ所定ピッチ隔ててそれぞれバンパアブソーバの前面に沿いつつ左右方向へ複数の線材を配列してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想を他の公知技術又はそれと同等機能をもつ技術の組み合わせにより実現してもよいことはもちろんである。
【実施例1】
【0025】
(全体構成の説明)
この実施形態の車両用衝突物体判別装置を図1に示すブロック図及び図2に示す模式平面図により説明する。
【0026】
1、2はワイヤー式衝突センサ、3はバンパアブソーバ、4はコントローラ(信号処理回路)、5は車速センサ、6は車体、7はバンパ レインフォース(バンパリーンフォースとも言う)、8はバンパカバー、9、10はサイドメンバーである。サイドメンバー9、10は、左右に所定間隔を隔てて車両下部にて前後に延設される構造部材であり、バンパ レインフォース7は、サイドメンバー9、10の前面に横架、固定される構造部材である。バンパアブソーバ3はバンパ レインフォース7の前面に位置してバンパ レインフォース7に固定され、バンパカバー8はバンパ レインフォース7に被せられてバンパアブソーバ3又はバンパ レインフォース7に固定されている。バンパアブソーバ3とバンパカバー8とは本発明で言うバンパーを構成している。
【0027】
ワイヤー式衝突センサ1、2について、図3及び図4を参照して説明する。ワイヤー式衝突センサ1は、バンパ レインフォース7の両端にそれぞれ固定される一対のワイヤセンサ10と、バンパアブソーバ3の前面に沿って左右方向に延在し、両端が一対のワイヤセンサ10に接続される樹脂糸(ワイヤ)11とからなる。
【0028】
各ワイヤセンサ10は、一端が樹脂糸11の他端に固定されたコイルスプリング(たるみ吸収部材)12と、一端がコイルスプリング12の他端に接続され、一端がバンパ レインフォース7の左右方向他端に固定された張力センサ13と、樹脂糸11が挿入されたプラスチックチューブ14とからなる。したがって、プラスチックチューブ14はバンパアブソーバ3の前面に密着しつつその大部分はバンパアブソーバ3の左右方向に延在している。プラスチックチューブ14の内部にはグリスが注入されている。張力センサ13は、通常の歪みゲージ型センサからなる。
【0029】
なお、この実施例では、プラスチックチューブ14は、バンパアブソーバ3の前面には左右方向に延在する長溝部に収容、保持されており、これによりプラスチックチューブ14が振動や自己の重量により上下方向へ変位するのを防止している。なお、プラスチックチューブ14を省略することも可能である。樹脂糸11は必要強度が確保できる範囲にてその移動時に生じる摩擦を減らすために細くされることが好ましい。ただし、バンパアブソーバ3の左右の角部におけるプラスチックチューブ14及び樹脂糸11の角度急変部分において、プラスチックチューブ14又は樹脂糸11がバンパアブソーバ3に食い込んだり、両者間の摩擦抵抗が増大するのを防止するため、この部位にガイドローラーや表面が湾曲した硬質のガイド部材をバンパアブソーバ3の角部に設けられているが、容易に理解できることなので図示説明は省略する。
【0030】
なお、上記実施例では、弾性部材であるコイルスプリング12を樹脂糸11の両側に設けたが、一カ所に設けてもよい。同様に、張力センサを樹脂糸11の一端側にだけ設けてもよい。張力センサ13として、歪みゲージ型センサ以外の他の種類の張力センサを採用してもよく、その他、樹脂糸11の長手方向の変位量又はコイルスプリング12の長手方向の変位量を計測するワイヤー長手方向変位量検出センサを用いてもよい。このワイヤー長手方向変位量検出センサとしては、たとえば樹脂糸11をリールに巻き付け、このリールにその回転角を検出するロータリーエンコーダを取り付ける方式や、樹脂糸11に直列接続された磁石の移動を電磁的に検出する方式など公知の原理を用いて構成することができる。
【0031】
以下、このワイヤー式衝突センサ1の動作を説明する。
【0032】
(衝突体がバンパカバー8の左右方向中央部に局部的に衝突した場合)
衝突体がバンパカバー8の左右方向中央部に衝突した場合を説明する。衝突によりバンパアブソーバ3の左右方向中央部により窪みが生じた場合、この窪みに沿って樹脂糸11がバンパアブソーバ3の内部に引き込まれる。その結果、窪み30の一方側の樹脂糸11はΔLだけ引き込まれ、窪み30の他方側の樹脂糸11もΔLだけ引き込まれるとみなすことができる。したがって、両方のコイルスプリング12はほぼ等量だけ伸び、両方の張力センサ13はコイルスプリング12の伸び量に比例する張力に相当するほぼ等しい信号電圧を出力する。
【0033】
ただし、厳密には、バンパアブソーバ3の前面又はプラスチックチューブ14の内面で生じる摩擦抵抗力が、窪みすなわち衝突箇所の左右方向位置により決定される窪みからその両側の二つのコイルスプリング12までの樹脂糸11の距離に比例するため、この摩擦抵抗力の差だけ二つのコイルスプリング12の伸び量が異なる。したがって、二つの張力センサ13が検出した張力の差により左右方向衝突位置の推定も可能である。たとえば衝突位置が完全に左右方向中央であれば、差は0となる。衝突位置が左右方向一方側に偏れば、この偏りに応じて衝突位置側の張力センサ13は反衝突位置側の張力センサ13よりも大きい張力を検出する。
【0034】
バンパアブソーバ3は衝突荷重に対して塑性変形性をもつため、張力センサ13が検出する張力の微分値、すなわちコイルスプリング12の単位時間当たりの伸び量が単位時間当たりのバンパアブソーバ3の変形量すなわち単位時間当たりの衝突エネルギー量すなわち衝突荷重を示すと考えることができる。
【0035】
(衝突体がバンパカバー8の左右方向中央部に広く衝突した場合)
衝突体がバンパカバー8の左右方向中央部全体に広く衝突した場合には、バンパカバー8、樹脂糸11、バンパアブソーバ3がこの衝突箇所にて後方へ広く後退し、これにより樹脂糸11の必要経路長は短縮され、コイルスプリング12が縮小し、樹脂糸11はバンパアブソーバ3とともに衝突箇所にて後方へ屈曲し、これにより張力センサ13に掛かる張力が減少し、張力センサ13はこの減少した張力に応じた信号電圧を出力する。ただ、このような衝突は、歩行者の衝突とみさなさい方が好適である。
【0036】
(衝突体がバンパカバー8の左右角部に衝突した場合)
衝突体がバンパカバー8の左又は右の角部に衝突した場合には、バンパカバー8がこの衝突箇所にて斜め後方へ後退し、これにより樹脂糸11の必要経路長は短縮され、コイルスプリング12が縮小し、樹脂糸11はバンパアブソーバ3とともに衝突箇所にて後方へ移動し、これにより張力センサ13に掛かる張力が減少し、張力センサ13はこの減少した張力に応じた信号電圧を出力する。これにより、張力センサ13は、衝突によるバンパアブソーバ3の角部の後退変形を検出することができる。
【0037】
コントローラ4は、上記した張力センサ13から出力される張力変化を示す信号電圧を処理し、張力変化が衝突直前の定常的な初期値から所定量変化した場合に衝突発生と判断するとともに、張力の微分値すなわち単位時間当たりの張力変化量を衝突荷重と見なしてこの衝突荷重と車速変化率から衝突体の質量を推定し、この衝突体の質量が歩行者の質量範囲にある場合に今回の衝突体を歩行者と判定する。
【0038】
また、コントローラ4は、張力増大時に二つの張力センサ13の張力差により左右方向衝突位置を推定することもでき、同様に張力減少時に張力減少が大きい側のバンパアブソーバ3の角部に衝突が生じたと推定することもできる。
【0039】
更に、樹脂糸11又はそれと同等のワイヤは、取り付け時における各部の製造寸法のばらつきや、経時な長さ変化により非衝突時の張力センサ13の張力値が変動する。したがって、張力センサ13の張力検出値が急激変化する直前の張力検出値を基準として、この直前の張力検出値からの単位時間当たりの張力変化量により衝突荷重を推定することが好適である。これにより、これら製造寸法のばらつきや経時的な寸法変化による悪影響を排除することができる。
【0040】
(実施例効果)
以上説明したこの実施例のワイヤー式衝突センサ1によれば、バンパアブソーバ3やバンパカバー8の変形や変位に追従してコイルスプリング12を伸縮させることができるので、バンパアブソーバ3やバンパカバー8の変形や変位の大きさに伴う樹脂糸11の経路長の変化すなわち樹脂糸11の長手方向の変位量に変換することができるので、歩行者など車両に比べて小質量の衝突体の衝突又は衝突荷重を高感度かつ高速に検出可能な車両用ワイヤ式衝突検出装置を実現することができる。
【0041】
また、樹脂糸11をバンパアブソーバ3とバンパカバー8との間に配置したので、衝突体がバンパーに衝突すると線材に速やかに衝突荷重が掛かるため、高速に衝突乃至衝突荷重の検出が可能となる。
【0042】
また、衝突によりバンパアブソーバ全体が車体(たとえばバンパ レインフォース)に近接するような変形を生じる場合でも、線材長手方向変位量はそれに応じて変化するために問題なく衝突又は衝突荷重を検出することができる。
【0043】
更に、バンパーの製造ばらつきなどにより、バンパーの線材収容経路長がばらついてもそれに応じてたるみ吸収部材が線材のたるみを吸収しつつバンパーの線材収容経路長に等しい線材延設長を確保するため、製造歩留まりを大幅に向上することも可能となる。
【実施例2】
【0044】
他の実施例について図5を参照して説明する。
【0045】
この実施例は、ワイヤー式衝突センサ1の樹脂糸11をバンパカバー8の後面に保持した点をその特徴としている。バンパカバー8の後面には左右方向所定ピッチで樹脂糸11を方向移動自在に保持する突起部81を有している。突起部81は上方へ開口する溝部をもつL字形状に形成されており、この溝部に樹脂糸11が保持されている。突起部81に溝部の代わりに樹脂糸11が挿通される貫通孔を設けてもよい。このようにすれば、実施例1と同等の効果を奏することができる。その他、これら各突起部81と一体に形成されたレール形状の部材をバンパカバー8の後面又はバンパアブソーバ3の前面に接着又は嵌合してもよい。突起部81は少なくともバンパカバー8の左右の角部に設けることが、樹脂糸11の方向変更のために好適である。
【0046】
(変形態様)
変形態様に置いて、樹脂糸11は、車両の左右方向中央位置においてバンパカバー8の後面の突起部に巻き付けられて固定されている。更に、樹脂糸11の両端はそれぞれコイルスプリング12、張力センサ13を介してバンパ レインフォース7に固定されている。このようにすれば、バンパカバー8の左側への衝突においては左側の張力センサ13だけがそれを検出し、バンパカバー8の右側への衝突においては右側の張力センサ13だけがそれを検出し、バンパカバー8の左右方向中央への衝突においては、両方の張力センサ13がそれを検出するため、衝突位置の推定が一層精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1の車両用ワイヤ式衝突検出装置を示すブロック図である。
【図2】実施例1の車両用ワイヤ式衝突検出装置を示す模式平面図である。
【図3】実施例1の車両用ワイヤ式衝突検出装置を示す模式斜視図である。
【図4】実施例1の車両用ワイヤ式衝突検出装置を示す模式拡大平面図である。
【図5】実施例2の車両用ワイヤ式衝突検出装置を示す模式縦断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 ワイヤー式衝突センサ
3 バンパアブソーバ
4 コントローラ
7 バンパ レインフォース
8 バンパカバー
9 サイドメンバー
11 樹脂糸
12 コイルスプリング
13 張力センサ
14 プラスチックチューブ
81 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前面又は後面に沿って左右に延設され両端が車体に固定される衝突検出用の線材と、
衝突時の前記線材の変形に関連する物理量を電気的に検出する線材変形検出センサと、
前記線材変形検出センサの出力に基づいて衝突を判定する判定回路と、
を備え、
前記線材は、車体前面に装備されたバンパーに前記線材の長手方向へ変位可能に収容されることを特徴とする車両用ワイヤ式衝突検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ワイヤ式衝突検出装置において、
前記線材のたるみを吸収するとともに衝突時に前記線材をその長手方向へ変位させるたるみ吸収部材を有し、
前記線材変形検出センサは、衝突による前記線材の長手方向変位量を電気信号に変換することを特徴とする車両用ワイヤ式衝突検出装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両用ワイヤ式衝突検出装置において、
前記バンパーは、バンパ レインフォースの前面に固定されたバンパアブソーバと、前記バンパアブソーバの前面に位置して前記バンパアブソーバの少なくとも前面を囲包するバンパカバーとを有し、
前記線材は、前記バンパアブソーバと前記バンパカバーとの間に配置されることを特徴とする車両用ワイヤ式衝突検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両用ワイヤ式衝突検出装置において、
前記線材は、チューブに挿通されていることを特徴とする車両用ワイヤ式衝突検出装置。
【請求項5】
請求項4記載の車両用ワイヤ式衝突検出装置において、
前記チューブに潤滑材又は摩擦係数低下材が注入されていることを特徴とする車両用ワイヤ式衝突検出装置。
【請求項6】
請求項3記載の車両用ワイヤ式衝突検出装置において、
前記線材は、前記バンパカバーの後面に左右方向所定ピッチで形成されて前記線材を収容する複数の突起部を有することを特徴とする車両用ワイヤ式衝突検出装置。
【請求項7】
請求項3記載の車両用ワイヤ式衝突検出装置において、
前記線材は、前記バンパアブソーバの前面に保持されることを特徴とする車両用ワイヤ式衝突検出装置。
【請求項8】
請求項7記載の車両用ワイヤ式衝突検出装置において、
前記線材は、前記バンパアブソーバの前面に所定ピッチで形成された複数の突起部に接することを特徴とする車両用ワイヤ式衝突検出装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか記載の車両用ワイヤ式衝突検出装置において、
前記線材の両端は、最終的にバンパ レインフォースの両端部に支持されることを特徴とする車両用ワイヤ式衝突検出装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか記載の車両用ワイヤ式衝突検出装置において、
前記たるみ吸収部材は、弾性部材を有することを特徴とする車両用ワイヤ式衝突検出装置。
【請求項11】
請求項10記載の車両用ワイヤ式衝突検出装置において、
前記弾性部材は、前記線材と直列に接続されるコイルスプリングからなることを特徴とする車両用ワイヤ式衝突検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−111053(P2006−111053A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297747(P2004−297747)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】