車両用側突検出装置
【課題】広範囲の衝突検出を高精度に可能な車両用側突検出装置を提供する。
【解決手段】側面ドア1は、外板11と、内板12と、補強部材13を備えている。そして、複数の第一のコイル101〜103を、内板12と補強部材の何れか一方(第一の被検出部材)から離隔した状態で、内板12および補強部材13の他方に取り付ける。この第一のコイル101〜103は、第一の被検出部材との間に磁界を発生させ、第一の被検出部材との離間距離に応じてインダクタンスLsが変化するようにされている。そして、判定手段50が、第一のコイル101〜103のインダクタンスLsの変化に基づいて、外板11に物体が衝突したことを判定する。
【解決手段】側面ドア1は、外板11と、内板12と、補強部材13を備えている。そして、複数の第一のコイル101〜103を、内板12と補強部材の何れか一方(第一の被検出部材)から離隔した状態で、内板12および補強部材13の他方に取り付ける。この第一のコイル101〜103は、第一の被検出部材との間に磁界を発生させ、第一の被検出部材との離間距離に応じてインダクタンスLsが変化するようにされている。そして、判定手段50が、第一のコイル101〜103のインダクタンスLsの変化に基づいて、外板11に物体が衝突したことを判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面ドアに物体が衝突したことを検出する車両用側突検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用側突検出装置として、例えば、特開平5−93735号公報(特許文献1)に記載されたものがある。特許文献1に記載の車両用側突検出装置は、側面ドア内部に配置された補強部材の変形を検出した場合に、乗員保護が必要な衝突と判定するとされている。ここで、外板は非常に曲げ剛性が低いため、小さな衝撃により変形しやすい。そのため、例えば、側面ドアを開いたときに電柱などにぶつけることで外板が変形する場合や、走行中において小さな衝撃により外板が変形する場合には、エアバッグなどの展開は不要である。つまり、外板の変形を検出することによりエアバッグなどの展開を行うと、上記のような場合にもエアバッグが展開されてしまう。そこで、特許文献1の構成によれば、外板が変形したとしても、補強部材が変形しない程度の衝撃であれば、衝突していないと判定される。従って、乗員保護が必要な衝突のみを検出して、その場合のみにエアバッグなどを展開することができる。
【特許文献1】特開平5−93735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の車両用側突検出装置においては、センサが配置された補強部材の位置が変形した場合のみ検出するため、その範囲が非常に狭くなってしまう。従って、特定位置の衝突しか検出できないという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、広範囲の衝突検出を高精度に可能な車両用側突検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両用側突検出装置は、
側面ドアの外板と、
前記外板の車室内側に前記外板に対向して離隔配置される前記側面ドアの内板と、
前記外板と前記内板との間であって前記内板に対して離隔配置され、前記外板の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する補強部材と、
を備え、
前記内板および前記補強部材の何れか一方である第一の被検出部材が強磁性体からなる場合に、前記内板と前記補強部材との間であって前記第一の被検出部材から離隔した状態で前記内板および前記補強部材の他方に取り付けられ、両者が対向する方向に磁界を発生させ、前記第一の被検出部材との離間距離の変化に応じてインダクタンスが変化するコイルを第一のコイルと定義し、
前記外板および前記内板の何れか一方である第二の被検出部材が強磁性体からなる場合に、前記外板と前記内板との間であって前記第二の被検出部材から離隔した状態で前記外板および前記内板の他方に取り付けられ、両者が対向する方向に磁界を発生させ、前記第二の被検出部材との離間距離の変化に応じてインダクタンスが変化するコイルを第二のコイルと定義した場合に、
前記第一のコイルおよび前記第二のコイルのうち何れか一方の前記コイルを複数備えるか、若しくは、前記第一のコイルおよび前記第二のコイルをそれぞれ少なくとも1つ以上備え当該コイルの前記インダクタンスの変化に基づいて車両と物体とが衝突したことを判定する判定手段を備える。
【0006】
物体が側面ドアに衝突した場合には、外板が内板側に近づくように変形し、特に衝撃が大きい場合には、さらに補強部材が内板側に近づくように変形する。そして、本発明において、第一、第二の被検出部材と第一、第二のコイルとの離間距離が短くなった場合には、それぞれの離間距離に応じて第一のコイルまたは第二のコイルのインダクタンスが変化する。
【0007】
ここで、本発明において、第一のコイルまたは第二のコイルのインダクタンスが変化するのは、第一のコイルまたは第二のコイルにより磁界を発生させる範囲において、補強部材または外板が変形した場合である。つまり、側突検出可能範囲は、ほぼ、第一のコイルまたは第二のコイルの大きさに対応した範囲となる。従って、特許文献1に記載のセンサの場合に比べると、1つの第一のコイルまたは1つの第二のコイルのみであっても、側突検出可能範囲は十分に広範囲となる。
【0008】
ただし、コイルの大きさを大きくすると、コイルによる検出感度が低下する。例えば、コイルの大きさの全範囲において、被検出部材がコイルに近づくように変形した場合には、コイルのインダクタンスは十分に変化する。従って、この場合は、コイルの大きさに関わらず感度は一定となる。しかし、コイルの大きさに対して狭い範囲のみにおいて、被検出部材がコイルに近づくように変形した場合には、コイルのインダクタンスの変化は、コイルの大きさによって異なる。具体的には、コイルの大きさが小さいほど、コイルのインダクタンスの変化が大きく現れる。つまり、上述したように、コイルの大きさが大きくなるほど、コイルによる検出感度が低下することになる。従って、コイルによる検出感度を低下することなく、広範囲の検出を可能とする必要がある。
【0009】
そこで、本発明は、複数のコイルを備えることとしている。これにより、広範囲であり且つ高精度の側突検出が可能となる。複数のコイルとは、前記第一のコイルおよび前記第二のコイルのうち何れか一方の前記コイルを複数備える場合、若しくは、前記第一のコイルおよび前記第二のコイルをそれぞれ少なくとも1つ以上備える場合である。ここで、上記の「第一のコイルおよび第二のコイルのうち何れか一方のコイルを複数」とは、第一のコイルのみを複数の場合と、第二のコイルのみを複数の場合とが含まれる。
【0010】
本発明において、複数のコイルの位置に関しての好適な態様として、以下のものがある。複数のコイルの位置に関する第一の好適態様として、前記補強部材は、車両前後方向に延びるように配置され、前記車両用側突検出装置は、前記第一のコイルを複数備え、それぞれの前記第一のコイルは、車両前後方向に異なる位置に配置される場合である。
【0011】
つまり、この場合とは、複数の第一のコイルを備える場合であって、これら複数の第一のコイルは車両前後方向に延びる補強部材に対向しており、複数の第一のコイルがそれぞれ異なる位置に配置されている場合である。これにより、補強部材の広範囲の変形を高精度に検出できる。従って、物体が側面ドアに衝突することにより補強部材の何れかの位置が内板側に近づくように変形する場合を高精度に検出できる。
【0012】
上記第一の好適態様において、前記車両用側突検出装置は、さらに、前記第二のコイルを複数備え、複数の前記第二のコイルは、前記第一のコイルのそれぞれに対して車両前後方向に同一位置であって車両上下方向に異なる位置に配置されるとよい。つまり、この車両用側突検出装置は、複数の第一のコイルに加えて、複数の第二コイルを備えていることになる。これにより、より広範囲の衝突検出が可能となる。
【0013】
さらに、この場合、前記第二のコイルは、それぞれの前記第一のコイルに対して車両上方に異なる位置および車両下方に異なる位置に配置されるとよい。これにより、車両上下方向においても、さらなる広範囲な衝突検出が可能となる。
【0014】
また、複数のコイルの位置に関する第二の好適態様として、前記第一のコイルおよび前記第二のコイルをそれぞれ少なくとも1つ以上備え、前記第二のコイルは、前記第一のコイルに対して車両前後方向に同一位置であって車両上下方向に異なる位置に配置される。これにより、車両上下方向の広範囲に高精度な衝突検出が可能となる。
【0015】
上記第二の好適態様において、前記第二のコイルは、それぞれの前記第一のコイルに対して車両上方に異なる位置および車両下方に異なる位置に配置されるとよい。これにより、車両上下方向のさらなる広範囲に高精度な衝突検出が可能となる。
【0016】
また、本発明の判定手段に関する好適な態様として、以下のものがある。判定手段に関する第一の好適態様として、少なくとも複数の第一のコイルを車両前後方向に異なる位置に配置される場合、前記判定手段は、それぞれの前記コイルの前記インダクタンスの変化に基づいて、前記物体が前記側面ドアの全体に亘って衝突したのか、または、前記物体が前記側面ドアに局所的に衝突したのかを判定する。
【0017】
ここで、側面ドアの全体に亘って衝突する物体は、例えば、他車両や建物などである。側面ドアの局所的に衝突する物体は、電柱などである。そして、衝突物体が他車両などの場合と、衝突物体が電柱などの場合とでは、側面ドアの変形態様が異なる。その結果、乗員保護の態様も異なることになる。本発明の態様によれば、車両前後方向に異なる位置に配置されたコイル全てにより衝突を検出した場合には、物体が側面ドアの全体に亘って衝突したと判定でき、車両前後方向に異なる位置に配置されたコイルの何れかにより衝突を検出した場合には、物体が側面ドアの局所的に衝突したと判定できる。つまり、判定手段により物体が側面ドアの全体に亘る衝突か局所的な衝突かの種類を判別できる。従って、判定手段の判定結果を利用して、適切な乗員保護を行うことができる。
【0018】
また、判定手段に関する第二の好適態様として、少なくとも複数の第一のコイルを車両前後方向に異なる位置に配置される場合、前記判定手段は、それぞれの前記コイルの前記インダクタンスの変化に基づいて、前記側面ドアの車両前後方向において前記物体が衝突した位置を判定する。特に、衝突物体が電柱などの場合に、その衝突位置が側面ドアのうち車両前方なのか、車両後方なのかを判定できる。これにより、適切な乗員保護を図ることができる。例えば、衝突位置毎にエアバッグを配置した場合に、必要なエアバッグのみを展開することで足りる。
【0019】
また、判定手段に関する第三の好適態様として、少なくとも複数の第一のコイルを車両前後方向に異なる位置に配置される場合、前記判定手段は、それぞれの前記コイルの前記インダクタンスの変化に基づいて、前記補強部材における車両前後方向の変形分布を算出する。このように、補強部材における車両前後方向の変形分布を算出することで、適切な乗員保護を行うことができる。
【0020】
また、判定手段に関する第四の好適態様として、第一のコイルおよび第二のコイルを車両前後方向に同一位置に配置されている場合、前記判定手段は、車両前後方向に同一位置に配置される前記第一のコイルおよび前記第二のコイルの前記インダクタンスの変化に基づいて、両前記コイルにより前記物体の衝突を検出した場合にのみ、車両と物体とが衝突したと判定する。これにより、補強部材の変形を検出する第一のコイルをメインセンサとして、外板の変形を検出する第二のコイルをセーフィングセンサとして、取り扱うことができる。従って、誤検出を防止できる。
【0021】
また、判定手段に関する第五の好適態様として、車両前後方向に同一位置において第一のコイルの車両上方および車両下方にそれぞれ第二のコイルが配置されている場合、前記判定手段は、所定の前記第一のコイルにより前記物体の衝突を検出した場合であって、前記所定の前記第一のコイルと車両前後方向に同一位置であって前記所定の前記第一のコイルの車両上方および車両下方に配置される複数の前記第二のコイルの何れかにより前記物体の衝突を検出した場合に、前記側面ドアの車両前後方向において前記所定の第一のコイルが配置された位置に物体が衝突したと判定する。
【0022】
これにより、補強部材の変形を検出する第一のコイルをメインセンサとして、外板の変形を検出する複数の第二のコイルをセーフィングセンサとして、取り扱うことができる。さらに、セーフィングセンサとしての複数の第二のコイルは、車両上方の第二のコイルと、車両下方の第二のコイルのどちらか一方のみが検出されればよいとする。これにより、より誤検出を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。
【0024】
<第一実施形態>
第一実施形態の車両用側突検出装置について、図1〜図7を参照して説明する。第一実施形態は、コイル21が内板12に直接取り付けられた形態であって、補強部材13との離間距離の変化を検出する第一のコイル部材101、102、103を車両前後方向に3つ備える形態である。
【0025】
図1は、側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。図2は、側面ドア1の車室内側から見た斜視図である。図2において、右側が車両前方を示し、左側が車両後方を示す。なお、コイル21は、内板12より車外側に位置しているが、分かりやすくするために実線にて示している。図3は、第一のコイル部材101を示す斜視図である。図4は、補強部材13とそれぞれのコイル21との離間距離に対するコイル21のインダクタンスLsの関係を示す図である。図5は、車両用側突検出装置を示す回路構成図である。
【0026】
図1および図2に示すように、側面ドア1は、車外側に位置する外板11と、外板11から車室内側に離隔して且つ外板11に対向して配置される内板12とを備える。さらに、側面ドア1は、円柱棒状からなり、車両前後方向に延びるように、外板11と内板12との間のうち車両左右方向のほぼ中央であって、車両上下方向のほぼ中央に配置されている補強部材13を備えている。つまり、補強部材13は、内板12に対向して離隔配置されている。この補強部材13は、少なくとも外板11の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する。つまり、外板11に物体が衝突した場合に、曲げ剛性の低い外板11が変形したとしても、補強部材13により側面ドア1全体が変形することを抑制している。ここで、第一実施形態においては、外板11、内板12および補強部材13が、金属(強磁性体)からなる。ただし、本実施形態においては、コイル21との離間距離を測定するための補強部材13が強磁性体であればよい。なお、本実施形態における補強部材13が、本発明における第一の被検出部材となる。
【0027】
そして、内板12には、3つの第一のコイル部材101〜103が配置されている。第一のコイル部材101は、図3に示すように、全体として平面状に形成されている。この第一のコイル部材101は、コイル21と、一対のフィルム22とから構成されている。コイル21は、例えば銅などの導電性材料により平面状に巻回するようにパターン印刷形成されている。一対のフィルム22は、コイル21を両面から挟持して、コイル21が露出しないように被覆している。このフィルム22は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)またはPEN(ポリエチレンナフタレート)などの可撓性材料により薄膜状に形成されている。つまり、フィルム22は、屈曲自在である。また、コイル21自体についても屈曲変形可能である。従って、第一のコイル部材101全体として、屈曲変形可能であり、非常に柔軟性が高い。また、第一のコイル部材102、103も、第一のコイル部材101と同様の構成からなる。
【0028】
これら3つの第一のコイル部材101〜103は、図1および図2に示すように、内板12のうち補強部材13に対向するように内板12に取り付けられている。つまり、第一のコイル部材101〜103は、内板12と補強部材13との間に配置されている。さらに、第一のコイル部材101〜103は、車両前後方向に異なる位置に配置されている。具体的には、第一のコイル部材101は、内板12のうち車両前方に取り付けられている。第一のコイル部材102は、内板12のうち車両前後方向中央部に取り付けられている。第一のコイル部材103は、内板12のうち車両後方に取り付けられている。そして、第一のコイル部材101〜103の法線方向、すなわち、それぞれのコイル21のコイル軸方向が、内板12と補強部材13とが対向する方向に一致するように、第一のコイル部材101〜103が配置されている。従って、それぞれのコイル21に電流を供給した場合に、内板12と補強部材13とが対向する方向に磁界を発生させる。
【0029】
ここで、側面ドア1の外板11に物体が衝突すると、外板11が車室内側に変形する。そして、この衝撃が大きい場合には、物体は補強部材13を車室内側へ変形させる。つまり、内板12と補強部材13との離間距離が短くなる。そうすると、それぞれのコイル21が発生する磁界によって、補強部材13に渦電流が流れ、補強部材13に磁界が発生する。つまり、衝突によって補強部材13とコイル21との離間距離が短くなることに伴って、コイル21に鎖交する渦電流によって発生した磁界が増加する。そうすると、図4に示すように、補強部材13とコイル21との間の距離が減少するに従って、コイル21のインダクタンスLsは減少する。このように、コイル21のインダクタンスLsは、補強部材13とコイル21との離間距離の変化に応じて変化する。なお、側面ドア1の外板11に物体が衝突した場合であっても、補強部材13が変形しなければ、コイル21のインダクタンスLsは変化しない。
【0030】
次に、車両用側突検出装置は、図5に示すように、発振回路30と、コイル21を一部に構成する検出回路40と、衝突判定部50とから構成される。発振回路30は、交流電圧を発振する回路である。
【0031】
検出回路40は、3つの第一のコイル部材101〜103を構成するそれぞれのコイル21を一部に備える。これらコイル21は、インダクタンスLsと抵抗Rsの直列回路に相当する。このインダクタンスLsは、上述したように、補強部材13とそれぞれのコイル21との離間距離に応じて変化する。そして、それぞれの第一のコイル部材101〜103を構成するそれぞれのコイル21の一端は、発振回路30に接続されている。そして、発振回路30により、それぞれの第一のコイル部材101〜103のコイル21の一端に対して、時分割で交流電圧を印加している。つまり、補強部材13が内板12側に近づくように変形した場合、コイル21のインダクタンスLsが小さくなるため、検出回路40の出力電圧の振幅は大きくなる。
【0032】
衝突判定部50は、検出回路40からの出力電圧に基づいて、外板11に物体が衝突して、補強部材13を変形させる状態に至ったか否かを判定する。この判定のための閾値Thは、衝突判定部50に予め記憶されている。具体的には、検出回路40からの出力電圧の最大振幅が、この衝突判定閾値Thを超えたか否かにより、衝突判定を行う。
【0033】
ここで、本実施形態においては、3つの第一のコイル部材101〜103を配置している。衝突の態様としては、電柱などが衝突する場合や、車両や建物などが衝突する場合がある。このことについて、図6および図7を参照して説明する。図6は、衝突物体とその位置に関する図である。図7は、検出回路40からの出力電圧を示す図である。
【0034】
図6(a)は、電柱が側面ドア1の車両前後方向の中央部に衝突した場合を示している。このとき、中央部に配置されている第一のコイル102と補強部材13との離間距離が小さくなっている。図6(b)は、電柱が側面ドア1の車両後方側に衝突した場合を示している。このとき、車両後方に配置されている第一のコイル103と補強部材13との離間距離が小さくなっている。図6(c)は、車両が側面ドア1に衝突した場合を示している。このとき、全ての第一のコイル101〜103と補強部材13との離間距離が小さくなっている。
【0035】
これらの態様において、検出回路40からの出力電圧の最大振幅は、図7(a)〜図7(c)に示すようになっている。つまり、図6(a)の態様においては、図7(a)に示すように、発振回路30に中央部の第一のコイル102を接続した場合における出力電圧のみが、衝突判定閾値Thを超えている。また、図6(b)の態様においては、図7(b)に示すように、発振回路30に車両後方の第一のコイル103を接続した場合における出力電圧のみが、衝突判定閾値Thを超えている。また、図6(c)の態様においては、図7(c)に示すように、発振回路30にそれぞれの第一のコイル101〜103を接続した場合における出力電圧が、衝突判定閾値Thを超えている。
【0036】
このように、衝突判定部50は、どの第一のコイル101〜103が接続された場合の出力電圧が衝突判定閾値Thを超えたか否かを判定することで、物体が外板11の全体に亘って衝突したのか、または、物体が外板11に局所的に衝突したのかを判定することができる。つまり、衝突判定部50は、衝突物体の種類を判定することができる。
【0037】
さらに、衝突判定部50は、どの第一のコイル101〜103が接続された場合の出力電圧が衝突判定閾値Thを超えたか否かを判定することで、外板11の車両前後方向において物体が衝突した位置を判定することができる。さらには、衝突判定部50は、補強部材13における車両前後方向の変形分布を算出することもできる。
【0038】
このようにして得られた判定結果は、適切な乗員保護装置の起動に用いることができる。例えば、車両が衝突した場合と電柱が衝突した場合とによって異なる乗員保護装置を備えた車両においては、衝突物体に応じた乗員保護装置の起動が可能となる。また、局所的な衝突の場合には、その位置にいる乗員を確実に保護できる乗員保護装置の起動ができる。例えば、側面ドア1の車両前後方向において、複数のエアバッグなどの乗員保護装置が配置されている場合などにおいて、衝突した位置に配置されたエアバッグを展開することが可能となる。これにより、必要な乗員保護装置のみを起動させることができる。
【0039】
ここで、本実施形態においては、車両前後方向に3つの第一のコイル101〜103を配置した。これにより、広範囲な検出が可能となることは明らかである。さらに、複数の第一のコイルを配置することで、高精度な検出をも可能とした。このことについて、図8および図9を参照して説明する。図8は、第一のコイルを1つのみ配置した場合を示す図である。図9は、コイルの車両前後方向幅を変えた場合に、コイル21のインダクタンスLsの変化率がどのように変化するかを示した図である。なお、図8においては、電柱が側面ドア1に衝突した場合を例にあげる。
【0040】
図9に示すように、コイル21の車両前後方向幅が小さいほど、コイル21のインダクタンスLsの変化率が大きくなっていることがわかる。そして、コイル21のインダクタンスLsの変化率が大きいということは、僅かな離間距離の変化であってもコイル21のインダクタンスLsが変化することである。つまり、コイル21のインダクタンスLsの変化率が大きいほど、コイル21の感度が良いということになる。つまり、コイル21の車両前後方向幅が小さいほど、コイル21の感度が良好となる。この結果、コイル21の車両前後方向幅を大きくすることで、コイル21の数を減らすことができるが、その分コイル21の感度を低下させることになる。つまり、上記実施形態によれば、複数の第一のコイル部材101〜103を備えることで、高精度の衝突検出が可能となった。
【0041】
<第二実施形態>
第二実施形態の車両用側突検出装置について、図10〜図12を参照して説明する。第二実施形態は、コイル21が内板12に直接取り付けられた形態であって、補強部材13との離間距離の変化を検出する第一のコイル部材102と、外板11との離間距離の変化を検出する第二のコイル部材202、302を備える形態である。第二のコイル部材202、302それぞれの単体の構成は、第一実施形態における第一のコイル部材101と同様である。
【0042】
ここで、図10は、側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。図11は、側面ドア1の車室内側から見た斜視図である。図11において、右側が車両前方を示し、左側が車両後方を示す。なお、コイル21は、内板12より車外側に位置しているが、分かりやすくするために実線にて示している。図12は、衝突判定部50の判定処理を模式的に示す図である。
【0043】
図10および図11に示すように、第一のコイル部材102が、内板12のうち補強部材13に対向するように内板12に取り付けられている。そして、この第一のコイル部材102は、車両前後方向のうち中央部に配置されている。上側第二のコイル部材202は、内板12のうち外板11に対向するように、且つ、第一のコイル部材102の車両上方に配置されている。つまり、上側第二のコイル部材202は、第一のコイル部材102と車両前後方向において同一位置であって、車両上下方向に異なる位置に配置されている。下側第二のコイル部材302は、内板12のうち外板11に対向するように、且つ、第一のコイル部材102の車両下方に配置されている。つまり、下側第二のコイル部材302は、第一のコイル部材102および上側第二のコイル部材202と車両前後方向において同一位置であって、車両上下方向に異なる位置に配置されている。
【0044】
ここで、第二実施形態においては、補強部材13に加えて、外板11が強磁性体からなるようにする必要がある。つまり、本実施形態では、補強部材13が本発明における第一の被検出部材となり、外板11が、本発明における第二の被検出部材となる。
【0045】
そして、上側第二のコイル部材202および下側第二のコイル部材302は、外板11に対向して配置されている。従って、衝突により外板11が内板12側に近づくように変形した場合に、上側第二のコイル部材202または下側第二のコイル部材302のインダクタンスが小さくなるように変化する。この変化挙動は、第一のコイル部材102の変化挙動とは多少異なるものの、実質的には同様である。従って、上側第二のコイル部材202と下側第二のコイル部材302のインダクタンスが、当該コイル部材202、302と外板11の対向箇所との離間距離に応じたものとなる。
【0046】
そして、衝突判定部50において、第一のコイル部材102の出力信号に基づく判定結果はAND回路51に出力され、上側第二のコイル部材202および下側第二のコイル部材302の出力信号に基づく判定結果はOR回路52を介して、AND回路51に出力されている。ここで、上記判定結果とは、当該出力電圧の最大振幅が衝突判定閾値Thを超えた場合にON信号となり、超えない場合にOFF信号となる。
【0047】
つまり、第一のコイル部材102の出力信号が衝突判定閾値を超えた場合であって、上側第二のコイル部材202と下側第二のコイル部材302の出力信号の少なくとも一方が衝突判定閾値を超えた場合に、AND回路51が信号を出力することになる。このときが、衝突したと判定される状態である。従って、第一のコイル部材102がメインセンサとして機能し、上側第二のコイル部材202および下側第二のコイル部材302が、セーフィングセンサとして機能している。
【0048】
物体が外板11に衝突した場合に、最初に変形するのは、外板11である。続いて、外板11の変形が大きくなると、補強部材13が変形する。つまり、衝突物体が車両の場合や電柱の場合には、第一のコイル部材102により衝突を検出するときには、必ず上側第二のコイル部材202および下側第二のコイル部材302により衝突を検出する状態となる。従って、第一のコイル部材102と、第二のコイル部材202、302の何れか一方が、衝突を検出したと判定されれば、確実に衝突したと言える。一方、仮に、第一のコイル部材102にノイズなどにより出力電圧が大きくなったとしても、第二のコイル部材202、302の出力電圧が大きくならなければ、全体としては、衝突したとは判定されない。このように、第二実施形態の構成によれば、ノイズなどによる誤検出を防止できる。
【0049】
<第三実施形態>
第三実施形態の車両用側突検出装置について、図13を参照して説明する。第三実施形態は、コイル21が内板12に直接取り付けられた形態であって、補強部材13との離間距離の変化を検出する第一のコイル101〜103を車両前後方向に3つと、外板11との離間距離の変化を検出する第二のコイル201〜203、301〜303を車両前後方向にそれぞれ3つずつ備える形態である。つまり、第三実施形態の車両用側突検出装置は、上述した第一実施形態と第二実施形態の両方を併せ持つ形態となる。なお、第二のコイル部材201〜203、301〜303それぞれの単体の構成は、第一実施形態における第一のコイル部材101と同様である。
【0050】
ここで、図13は、側面ドア1の車室内側から見た斜視図である。図13において、右側が車両前方を示し、左側が車両後方を示す。なお、コイル21は、内板12より車外側に位置しているが、分かりやすくするために実線にて示している。
【0051】
図13に示すように、第一のコイル部材101〜103が、内板12のうち補強部材13に対向するように配置され、且つ、それぞれ車両前後方向に異なる位置に取り付けられている。また、上側第二のコイル部材201〜203が、内板12のうち外板11に対向するように配置され、且つ、第一のコイル部材101〜103のそれぞれに車両前後方向に同一位置であって車両上方に異なる位置に配置されている。また、下側第二のコイル301〜303が、内板12のうち外板11に対向するように配置され、且つ、第一のコイル部材101〜103のそれぞれに車両前後方向に同一位置であって車両下方に異なる位置に配置されている。
【0052】
この場合、車両上下方向に同一位置に配置されたコイル部材101、201、301の組、コイル部材102、202、302の組、および、コイル部材103、203、303の組は、それぞれ、上述した第二実施形態のコイル部材に相当する。つまり、衝突判定部50は、第一のコイル部材101が衝突したと判定し、且つ、第二のコイル部材201、301の少なくとも一方が衝突したと判定した場合に、側面ドア11のうち車両前方に物体が衝突したと判定する。また、衝突判定部50は、第一のコイル部材102が衝突したと判定し、且つ、第二のコイル部材202、302の少なくとも一方が衝突したと判定した場合に、側面ドア11のうち車両前後方向の中央部に物体が衝突したと判定する。また、衝突判定部50は、第一のコイル部材103が衝突したと判定し、且つ、第二のコイル部材203、303の少なくとも一方が衝突したと判定した場合に、側面ドア11のうち車両後方に物体が衝突したと判定する。このように、広範囲に高精度な検出が可能となる。
【0053】
<その他>
上記各実施形態においては、第一のコイル部材101〜103を内板12に取り付けるものとした。この他に、第一のコイル部材101〜103を補強部材13に取り付けるようにしてもよい。この場合、第一のコイル部材101〜103による被検出部材が内板12となるため、内板12が強磁性体とする必要がある。一方、補強部材13は、強磁性体である必要はない。このようにしても、上記同様に衝突検出が可能である。
【0054】
また、第二のコイル部材201〜203、301〜303も内板12に取り付けたが、外板11に取り付けるようにしてもよい。この場合、第二のコイル部材201〜203、301〜303による被検出部材が内板12となるため、内板12が強磁性体とする必要がある。一方、外板11は、強磁性体である必要はない。このようにしても、上記同様に衝突検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第一実施形態における側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。
【図2】第一実施形態における側面ドア1の車室内側から見た斜視図である。
【図3】第一実施形態における第一のコイル部材101を示す斜視図である。
【図4】補強部材13とそれぞれのコイル21との離間距離に対するコイル21のインダクタンスLsの関係を示す図である。
【図5】車両用側突検出装置を示す回路構成図である。
【図6】衝突物体とその位置に関する図である。
【図7】検出回路40からの出力電圧を示す図である。
【図8】第一のコイルを1つのみ配置した場合を示す図である。
【図9】コイルの車両前後方向幅を変えた場合に、コイル21のインダクタンスLsの変化率がどのように変化するかを示した図である。
【図10】第二実施形態における側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。
【図11】第二実施形態における側面ドア1の車室内側から見た斜視図である。
【図12】第二実施形態における衝突判定部50の判定処理を模式的に示す図である。
【図13】第三実施形態における側面ドア1の車室内側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1:側面ドア
11:外板、 12:内板、 13:補強部材
21:コイル、 22:フィルム
30:発振回路、 40:検出回路、 50:衝突判定部
101〜103:第一のコイル部材
201〜203:上側第二のコイル部材
301〜303:下側第二のコイル部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面ドアに物体が衝突したことを検出する車両用側突検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用側突検出装置として、例えば、特開平5−93735号公報(特許文献1)に記載されたものがある。特許文献1に記載の車両用側突検出装置は、側面ドア内部に配置された補強部材の変形を検出した場合に、乗員保護が必要な衝突と判定するとされている。ここで、外板は非常に曲げ剛性が低いため、小さな衝撃により変形しやすい。そのため、例えば、側面ドアを開いたときに電柱などにぶつけることで外板が変形する場合や、走行中において小さな衝撃により外板が変形する場合には、エアバッグなどの展開は不要である。つまり、外板の変形を検出することによりエアバッグなどの展開を行うと、上記のような場合にもエアバッグが展開されてしまう。そこで、特許文献1の構成によれば、外板が変形したとしても、補強部材が変形しない程度の衝撃であれば、衝突していないと判定される。従って、乗員保護が必要な衝突のみを検出して、その場合のみにエアバッグなどを展開することができる。
【特許文献1】特開平5−93735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の車両用側突検出装置においては、センサが配置された補強部材の位置が変形した場合のみ検出するため、その範囲が非常に狭くなってしまう。従って、特定位置の衝突しか検出できないという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、広範囲の衝突検出を高精度に可能な車両用側突検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両用側突検出装置は、
側面ドアの外板と、
前記外板の車室内側に前記外板に対向して離隔配置される前記側面ドアの内板と、
前記外板と前記内板との間であって前記内板に対して離隔配置され、前記外板の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する補強部材と、
を備え、
前記内板および前記補強部材の何れか一方である第一の被検出部材が強磁性体からなる場合に、前記内板と前記補強部材との間であって前記第一の被検出部材から離隔した状態で前記内板および前記補強部材の他方に取り付けられ、両者が対向する方向に磁界を発生させ、前記第一の被検出部材との離間距離の変化に応じてインダクタンスが変化するコイルを第一のコイルと定義し、
前記外板および前記内板の何れか一方である第二の被検出部材が強磁性体からなる場合に、前記外板と前記内板との間であって前記第二の被検出部材から離隔した状態で前記外板および前記内板の他方に取り付けられ、両者が対向する方向に磁界を発生させ、前記第二の被検出部材との離間距離の変化に応じてインダクタンスが変化するコイルを第二のコイルと定義した場合に、
前記第一のコイルおよび前記第二のコイルのうち何れか一方の前記コイルを複数備えるか、若しくは、前記第一のコイルおよび前記第二のコイルをそれぞれ少なくとも1つ以上備え当該コイルの前記インダクタンスの変化に基づいて車両と物体とが衝突したことを判定する判定手段を備える。
【0006】
物体が側面ドアに衝突した場合には、外板が内板側に近づくように変形し、特に衝撃が大きい場合には、さらに補強部材が内板側に近づくように変形する。そして、本発明において、第一、第二の被検出部材と第一、第二のコイルとの離間距離が短くなった場合には、それぞれの離間距離に応じて第一のコイルまたは第二のコイルのインダクタンスが変化する。
【0007】
ここで、本発明において、第一のコイルまたは第二のコイルのインダクタンスが変化するのは、第一のコイルまたは第二のコイルにより磁界を発生させる範囲において、補強部材または外板が変形した場合である。つまり、側突検出可能範囲は、ほぼ、第一のコイルまたは第二のコイルの大きさに対応した範囲となる。従って、特許文献1に記載のセンサの場合に比べると、1つの第一のコイルまたは1つの第二のコイルのみであっても、側突検出可能範囲は十分に広範囲となる。
【0008】
ただし、コイルの大きさを大きくすると、コイルによる検出感度が低下する。例えば、コイルの大きさの全範囲において、被検出部材がコイルに近づくように変形した場合には、コイルのインダクタンスは十分に変化する。従って、この場合は、コイルの大きさに関わらず感度は一定となる。しかし、コイルの大きさに対して狭い範囲のみにおいて、被検出部材がコイルに近づくように変形した場合には、コイルのインダクタンスの変化は、コイルの大きさによって異なる。具体的には、コイルの大きさが小さいほど、コイルのインダクタンスの変化が大きく現れる。つまり、上述したように、コイルの大きさが大きくなるほど、コイルによる検出感度が低下することになる。従って、コイルによる検出感度を低下することなく、広範囲の検出を可能とする必要がある。
【0009】
そこで、本発明は、複数のコイルを備えることとしている。これにより、広範囲であり且つ高精度の側突検出が可能となる。複数のコイルとは、前記第一のコイルおよび前記第二のコイルのうち何れか一方の前記コイルを複数備える場合、若しくは、前記第一のコイルおよび前記第二のコイルをそれぞれ少なくとも1つ以上備える場合である。ここで、上記の「第一のコイルおよび第二のコイルのうち何れか一方のコイルを複数」とは、第一のコイルのみを複数の場合と、第二のコイルのみを複数の場合とが含まれる。
【0010】
本発明において、複数のコイルの位置に関しての好適な態様として、以下のものがある。複数のコイルの位置に関する第一の好適態様として、前記補強部材は、車両前後方向に延びるように配置され、前記車両用側突検出装置は、前記第一のコイルを複数備え、それぞれの前記第一のコイルは、車両前後方向に異なる位置に配置される場合である。
【0011】
つまり、この場合とは、複数の第一のコイルを備える場合であって、これら複数の第一のコイルは車両前後方向に延びる補強部材に対向しており、複数の第一のコイルがそれぞれ異なる位置に配置されている場合である。これにより、補強部材の広範囲の変形を高精度に検出できる。従って、物体が側面ドアに衝突することにより補強部材の何れかの位置が内板側に近づくように変形する場合を高精度に検出できる。
【0012】
上記第一の好適態様において、前記車両用側突検出装置は、さらに、前記第二のコイルを複数備え、複数の前記第二のコイルは、前記第一のコイルのそれぞれに対して車両前後方向に同一位置であって車両上下方向に異なる位置に配置されるとよい。つまり、この車両用側突検出装置は、複数の第一のコイルに加えて、複数の第二コイルを備えていることになる。これにより、より広範囲の衝突検出が可能となる。
【0013】
さらに、この場合、前記第二のコイルは、それぞれの前記第一のコイルに対して車両上方に異なる位置および車両下方に異なる位置に配置されるとよい。これにより、車両上下方向においても、さらなる広範囲な衝突検出が可能となる。
【0014】
また、複数のコイルの位置に関する第二の好適態様として、前記第一のコイルおよび前記第二のコイルをそれぞれ少なくとも1つ以上備え、前記第二のコイルは、前記第一のコイルに対して車両前後方向に同一位置であって車両上下方向に異なる位置に配置される。これにより、車両上下方向の広範囲に高精度な衝突検出が可能となる。
【0015】
上記第二の好適態様において、前記第二のコイルは、それぞれの前記第一のコイルに対して車両上方に異なる位置および車両下方に異なる位置に配置されるとよい。これにより、車両上下方向のさらなる広範囲に高精度な衝突検出が可能となる。
【0016】
また、本発明の判定手段に関する好適な態様として、以下のものがある。判定手段に関する第一の好適態様として、少なくとも複数の第一のコイルを車両前後方向に異なる位置に配置される場合、前記判定手段は、それぞれの前記コイルの前記インダクタンスの変化に基づいて、前記物体が前記側面ドアの全体に亘って衝突したのか、または、前記物体が前記側面ドアに局所的に衝突したのかを判定する。
【0017】
ここで、側面ドアの全体に亘って衝突する物体は、例えば、他車両や建物などである。側面ドアの局所的に衝突する物体は、電柱などである。そして、衝突物体が他車両などの場合と、衝突物体が電柱などの場合とでは、側面ドアの変形態様が異なる。その結果、乗員保護の態様も異なることになる。本発明の態様によれば、車両前後方向に異なる位置に配置されたコイル全てにより衝突を検出した場合には、物体が側面ドアの全体に亘って衝突したと判定でき、車両前後方向に異なる位置に配置されたコイルの何れかにより衝突を検出した場合には、物体が側面ドアの局所的に衝突したと判定できる。つまり、判定手段により物体が側面ドアの全体に亘る衝突か局所的な衝突かの種類を判別できる。従って、判定手段の判定結果を利用して、適切な乗員保護を行うことができる。
【0018】
また、判定手段に関する第二の好適態様として、少なくとも複数の第一のコイルを車両前後方向に異なる位置に配置される場合、前記判定手段は、それぞれの前記コイルの前記インダクタンスの変化に基づいて、前記側面ドアの車両前後方向において前記物体が衝突した位置を判定する。特に、衝突物体が電柱などの場合に、その衝突位置が側面ドアのうち車両前方なのか、車両後方なのかを判定できる。これにより、適切な乗員保護を図ることができる。例えば、衝突位置毎にエアバッグを配置した場合に、必要なエアバッグのみを展開することで足りる。
【0019】
また、判定手段に関する第三の好適態様として、少なくとも複数の第一のコイルを車両前後方向に異なる位置に配置される場合、前記判定手段は、それぞれの前記コイルの前記インダクタンスの変化に基づいて、前記補強部材における車両前後方向の変形分布を算出する。このように、補強部材における車両前後方向の変形分布を算出することで、適切な乗員保護を行うことができる。
【0020】
また、判定手段に関する第四の好適態様として、第一のコイルおよび第二のコイルを車両前後方向に同一位置に配置されている場合、前記判定手段は、車両前後方向に同一位置に配置される前記第一のコイルおよび前記第二のコイルの前記インダクタンスの変化に基づいて、両前記コイルにより前記物体の衝突を検出した場合にのみ、車両と物体とが衝突したと判定する。これにより、補強部材の変形を検出する第一のコイルをメインセンサとして、外板の変形を検出する第二のコイルをセーフィングセンサとして、取り扱うことができる。従って、誤検出を防止できる。
【0021】
また、判定手段に関する第五の好適態様として、車両前後方向に同一位置において第一のコイルの車両上方および車両下方にそれぞれ第二のコイルが配置されている場合、前記判定手段は、所定の前記第一のコイルにより前記物体の衝突を検出した場合であって、前記所定の前記第一のコイルと車両前後方向に同一位置であって前記所定の前記第一のコイルの車両上方および車両下方に配置される複数の前記第二のコイルの何れかにより前記物体の衝突を検出した場合に、前記側面ドアの車両前後方向において前記所定の第一のコイルが配置された位置に物体が衝突したと判定する。
【0022】
これにより、補強部材の変形を検出する第一のコイルをメインセンサとして、外板の変形を検出する複数の第二のコイルをセーフィングセンサとして、取り扱うことができる。さらに、セーフィングセンサとしての複数の第二のコイルは、車両上方の第二のコイルと、車両下方の第二のコイルのどちらか一方のみが検出されればよいとする。これにより、より誤検出を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。
【0024】
<第一実施形態>
第一実施形態の車両用側突検出装置について、図1〜図7を参照して説明する。第一実施形態は、コイル21が内板12に直接取り付けられた形態であって、補強部材13との離間距離の変化を検出する第一のコイル部材101、102、103を車両前後方向に3つ備える形態である。
【0025】
図1は、側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。図2は、側面ドア1の車室内側から見た斜視図である。図2において、右側が車両前方を示し、左側が車両後方を示す。なお、コイル21は、内板12より車外側に位置しているが、分かりやすくするために実線にて示している。図3は、第一のコイル部材101を示す斜視図である。図4は、補強部材13とそれぞれのコイル21との離間距離に対するコイル21のインダクタンスLsの関係を示す図である。図5は、車両用側突検出装置を示す回路構成図である。
【0026】
図1および図2に示すように、側面ドア1は、車外側に位置する外板11と、外板11から車室内側に離隔して且つ外板11に対向して配置される内板12とを備える。さらに、側面ドア1は、円柱棒状からなり、車両前後方向に延びるように、外板11と内板12との間のうち車両左右方向のほぼ中央であって、車両上下方向のほぼ中央に配置されている補強部材13を備えている。つまり、補強部材13は、内板12に対向して離隔配置されている。この補強部材13は、少なくとも外板11の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する。つまり、外板11に物体が衝突した場合に、曲げ剛性の低い外板11が変形したとしても、補強部材13により側面ドア1全体が変形することを抑制している。ここで、第一実施形態においては、外板11、内板12および補強部材13が、金属(強磁性体)からなる。ただし、本実施形態においては、コイル21との離間距離を測定するための補強部材13が強磁性体であればよい。なお、本実施形態における補強部材13が、本発明における第一の被検出部材となる。
【0027】
そして、内板12には、3つの第一のコイル部材101〜103が配置されている。第一のコイル部材101は、図3に示すように、全体として平面状に形成されている。この第一のコイル部材101は、コイル21と、一対のフィルム22とから構成されている。コイル21は、例えば銅などの導電性材料により平面状に巻回するようにパターン印刷形成されている。一対のフィルム22は、コイル21を両面から挟持して、コイル21が露出しないように被覆している。このフィルム22は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)またはPEN(ポリエチレンナフタレート)などの可撓性材料により薄膜状に形成されている。つまり、フィルム22は、屈曲自在である。また、コイル21自体についても屈曲変形可能である。従って、第一のコイル部材101全体として、屈曲変形可能であり、非常に柔軟性が高い。また、第一のコイル部材102、103も、第一のコイル部材101と同様の構成からなる。
【0028】
これら3つの第一のコイル部材101〜103は、図1および図2に示すように、内板12のうち補強部材13に対向するように内板12に取り付けられている。つまり、第一のコイル部材101〜103は、内板12と補強部材13との間に配置されている。さらに、第一のコイル部材101〜103は、車両前後方向に異なる位置に配置されている。具体的には、第一のコイル部材101は、内板12のうち車両前方に取り付けられている。第一のコイル部材102は、内板12のうち車両前後方向中央部に取り付けられている。第一のコイル部材103は、内板12のうち車両後方に取り付けられている。そして、第一のコイル部材101〜103の法線方向、すなわち、それぞれのコイル21のコイル軸方向が、内板12と補強部材13とが対向する方向に一致するように、第一のコイル部材101〜103が配置されている。従って、それぞれのコイル21に電流を供給した場合に、内板12と補強部材13とが対向する方向に磁界を発生させる。
【0029】
ここで、側面ドア1の外板11に物体が衝突すると、外板11が車室内側に変形する。そして、この衝撃が大きい場合には、物体は補強部材13を車室内側へ変形させる。つまり、内板12と補強部材13との離間距離が短くなる。そうすると、それぞれのコイル21が発生する磁界によって、補強部材13に渦電流が流れ、補強部材13に磁界が発生する。つまり、衝突によって補強部材13とコイル21との離間距離が短くなることに伴って、コイル21に鎖交する渦電流によって発生した磁界が増加する。そうすると、図4に示すように、補強部材13とコイル21との間の距離が減少するに従って、コイル21のインダクタンスLsは減少する。このように、コイル21のインダクタンスLsは、補強部材13とコイル21との離間距離の変化に応じて変化する。なお、側面ドア1の外板11に物体が衝突した場合であっても、補強部材13が変形しなければ、コイル21のインダクタンスLsは変化しない。
【0030】
次に、車両用側突検出装置は、図5に示すように、発振回路30と、コイル21を一部に構成する検出回路40と、衝突判定部50とから構成される。発振回路30は、交流電圧を発振する回路である。
【0031】
検出回路40は、3つの第一のコイル部材101〜103を構成するそれぞれのコイル21を一部に備える。これらコイル21は、インダクタンスLsと抵抗Rsの直列回路に相当する。このインダクタンスLsは、上述したように、補強部材13とそれぞれのコイル21との離間距離に応じて変化する。そして、それぞれの第一のコイル部材101〜103を構成するそれぞれのコイル21の一端は、発振回路30に接続されている。そして、発振回路30により、それぞれの第一のコイル部材101〜103のコイル21の一端に対して、時分割で交流電圧を印加している。つまり、補強部材13が内板12側に近づくように変形した場合、コイル21のインダクタンスLsが小さくなるため、検出回路40の出力電圧の振幅は大きくなる。
【0032】
衝突判定部50は、検出回路40からの出力電圧に基づいて、外板11に物体が衝突して、補強部材13を変形させる状態に至ったか否かを判定する。この判定のための閾値Thは、衝突判定部50に予め記憶されている。具体的には、検出回路40からの出力電圧の最大振幅が、この衝突判定閾値Thを超えたか否かにより、衝突判定を行う。
【0033】
ここで、本実施形態においては、3つの第一のコイル部材101〜103を配置している。衝突の態様としては、電柱などが衝突する場合や、車両や建物などが衝突する場合がある。このことについて、図6および図7を参照して説明する。図6は、衝突物体とその位置に関する図である。図7は、検出回路40からの出力電圧を示す図である。
【0034】
図6(a)は、電柱が側面ドア1の車両前後方向の中央部に衝突した場合を示している。このとき、中央部に配置されている第一のコイル102と補強部材13との離間距離が小さくなっている。図6(b)は、電柱が側面ドア1の車両後方側に衝突した場合を示している。このとき、車両後方に配置されている第一のコイル103と補強部材13との離間距離が小さくなっている。図6(c)は、車両が側面ドア1に衝突した場合を示している。このとき、全ての第一のコイル101〜103と補強部材13との離間距離が小さくなっている。
【0035】
これらの態様において、検出回路40からの出力電圧の最大振幅は、図7(a)〜図7(c)に示すようになっている。つまり、図6(a)の態様においては、図7(a)に示すように、発振回路30に中央部の第一のコイル102を接続した場合における出力電圧のみが、衝突判定閾値Thを超えている。また、図6(b)の態様においては、図7(b)に示すように、発振回路30に車両後方の第一のコイル103を接続した場合における出力電圧のみが、衝突判定閾値Thを超えている。また、図6(c)の態様においては、図7(c)に示すように、発振回路30にそれぞれの第一のコイル101〜103を接続した場合における出力電圧が、衝突判定閾値Thを超えている。
【0036】
このように、衝突判定部50は、どの第一のコイル101〜103が接続された場合の出力電圧が衝突判定閾値Thを超えたか否かを判定することで、物体が外板11の全体に亘って衝突したのか、または、物体が外板11に局所的に衝突したのかを判定することができる。つまり、衝突判定部50は、衝突物体の種類を判定することができる。
【0037】
さらに、衝突判定部50は、どの第一のコイル101〜103が接続された場合の出力電圧が衝突判定閾値Thを超えたか否かを判定することで、外板11の車両前後方向において物体が衝突した位置を判定することができる。さらには、衝突判定部50は、補強部材13における車両前後方向の変形分布を算出することもできる。
【0038】
このようにして得られた判定結果は、適切な乗員保護装置の起動に用いることができる。例えば、車両が衝突した場合と電柱が衝突した場合とによって異なる乗員保護装置を備えた車両においては、衝突物体に応じた乗員保護装置の起動が可能となる。また、局所的な衝突の場合には、その位置にいる乗員を確実に保護できる乗員保護装置の起動ができる。例えば、側面ドア1の車両前後方向において、複数のエアバッグなどの乗員保護装置が配置されている場合などにおいて、衝突した位置に配置されたエアバッグを展開することが可能となる。これにより、必要な乗員保護装置のみを起動させることができる。
【0039】
ここで、本実施形態においては、車両前後方向に3つの第一のコイル101〜103を配置した。これにより、広範囲な検出が可能となることは明らかである。さらに、複数の第一のコイルを配置することで、高精度な検出をも可能とした。このことについて、図8および図9を参照して説明する。図8は、第一のコイルを1つのみ配置した場合を示す図である。図9は、コイルの車両前後方向幅を変えた場合に、コイル21のインダクタンスLsの変化率がどのように変化するかを示した図である。なお、図8においては、電柱が側面ドア1に衝突した場合を例にあげる。
【0040】
図9に示すように、コイル21の車両前後方向幅が小さいほど、コイル21のインダクタンスLsの変化率が大きくなっていることがわかる。そして、コイル21のインダクタンスLsの変化率が大きいということは、僅かな離間距離の変化であってもコイル21のインダクタンスLsが変化することである。つまり、コイル21のインダクタンスLsの変化率が大きいほど、コイル21の感度が良いということになる。つまり、コイル21の車両前後方向幅が小さいほど、コイル21の感度が良好となる。この結果、コイル21の車両前後方向幅を大きくすることで、コイル21の数を減らすことができるが、その分コイル21の感度を低下させることになる。つまり、上記実施形態によれば、複数の第一のコイル部材101〜103を備えることで、高精度の衝突検出が可能となった。
【0041】
<第二実施形態>
第二実施形態の車両用側突検出装置について、図10〜図12を参照して説明する。第二実施形態は、コイル21が内板12に直接取り付けられた形態であって、補強部材13との離間距離の変化を検出する第一のコイル部材102と、外板11との離間距離の変化を検出する第二のコイル部材202、302を備える形態である。第二のコイル部材202、302それぞれの単体の構成は、第一実施形態における第一のコイル部材101と同様である。
【0042】
ここで、図10は、側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。図11は、側面ドア1の車室内側から見た斜視図である。図11において、右側が車両前方を示し、左側が車両後方を示す。なお、コイル21は、内板12より車外側に位置しているが、分かりやすくするために実線にて示している。図12は、衝突判定部50の判定処理を模式的に示す図である。
【0043】
図10および図11に示すように、第一のコイル部材102が、内板12のうち補強部材13に対向するように内板12に取り付けられている。そして、この第一のコイル部材102は、車両前後方向のうち中央部に配置されている。上側第二のコイル部材202は、内板12のうち外板11に対向するように、且つ、第一のコイル部材102の車両上方に配置されている。つまり、上側第二のコイル部材202は、第一のコイル部材102と車両前後方向において同一位置であって、車両上下方向に異なる位置に配置されている。下側第二のコイル部材302は、内板12のうち外板11に対向するように、且つ、第一のコイル部材102の車両下方に配置されている。つまり、下側第二のコイル部材302は、第一のコイル部材102および上側第二のコイル部材202と車両前後方向において同一位置であって、車両上下方向に異なる位置に配置されている。
【0044】
ここで、第二実施形態においては、補強部材13に加えて、外板11が強磁性体からなるようにする必要がある。つまり、本実施形態では、補強部材13が本発明における第一の被検出部材となり、外板11が、本発明における第二の被検出部材となる。
【0045】
そして、上側第二のコイル部材202および下側第二のコイル部材302は、外板11に対向して配置されている。従って、衝突により外板11が内板12側に近づくように変形した場合に、上側第二のコイル部材202または下側第二のコイル部材302のインダクタンスが小さくなるように変化する。この変化挙動は、第一のコイル部材102の変化挙動とは多少異なるものの、実質的には同様である。従って、上側第二のコイル部材202と下側第二のコイル部材302のインダクタンスが、当該コイル部材202、302と外板11の対向箇所との離間距離に応じたものとなる。
【0046】
そして、衝突判定部50において、第一のコイル部材102の出力信号に基づく判定結果はAND回路51に出力され、上側第二のコイル部材202および下側第二のコイル部材302の出力信号に基づく判定結果はOR回路52を介して、AND回路51に出力されている。ここで、上記判定結果とは、当該出力電圧の最大振幅が衝突判定閾値Thを超えた場合にON信号となり、超えない場合にOFF信号となる。
【0047】
つまり、第一のコイル部材102の出力信号が衝突判定閾値を超えた場合であって、上側第二のコイル部材202と下側第二のコイル部材302の出力信号の少なくとも一方が衝突判定閾値を超えた場合に、AND回路51が信号を出力することになる。このときが、衝突したと判定される状態である。従って、第一のコイル部材102がメインセンサとして機能し、上側第二のコイル部材202および下側第二のコイル部材302が、セーフィングセンサとして機能している。
【0048】
物体が外板11に衝突した場合に、最初に変形するのは、外板11である。続いて、外板11の変形が大きくなると、補強部材13が変形する。つまり、衝突物体が車両の場合や電柱の場合には、第一のコイル部材102により衝突を検出するときには、必ず上側第二のコイル部材202および下側第二のコイル部材302により衝突を検出する状態となる。従って、第一のコイル部材102と、第二のコイル部材202、302の何れか一方が、衝突を検出したと判定されれば、確実に衝突したと言える。一方、仮に、第一のコイル部材102にノイズなどにより出力電圧が大きくなったとしても、第二のコイル部材202、302の出力電圧が大きくならなければ、全体としては、衝突したとは判定されない。このように、第二実施形態の構成によれば、ノイズなどによる誤検出を防止できる。
【0049】
<第三実施形態>
第三実施形態の車両用側突検出装置について、図13を参照して説明する。第三実施形態は、コイル21が内板12に直接取り付けられた形態であって、補強部材13との離間距離の変化を検出する第一のコイル101〜103を車両前後方向に3つと、外板11との離間距離の変化を検出する第二のコイル201〜203、301〜303を車両前後方向にそれぞれ3つずつ備える形態である。つまり、第三実施形態の車両用側突検出装置は、上述した第一実施形態と第二実施形態の両方を併せ持つ形態となる。なお、第二のコイル部材201〜203、301〜303それぞれの単体の構成は、第一実施形態における第一のコイル部材101と同様である。
【0050】
ここで、図13は、側面ドア1の車室内側から見た斜視図である。図13において、右側が車両前方を示し、左側が車両後方を示す。なお、コイル21は、内板12より車外側に位置しているが、分かりやすくするために実線にて示している。
【0051】
図13に示すように、第一のコイル部材101〜103が、内板12のうち補強部材13に対向するように配置され、且つ、それぞれ車両前後方向に異なる位置に取り付けられている。また、上側第二のコイル部材201〜203が、内板12のうち外板11に対向するように配置され、且つ、第一のコイル部材101〜103のそれぞれに車両前後方向に同一位置であって車両上方に異なる位置に配置されている。また、下側第二のコイル301〜303が、内板12のうち外板11に対向するように配置され、且つ、第一のコイル部材101〜103のそれぞれに車両前後方向に同一位置であって車両下方に異なる位置に配置されている。
【0052】
この場合、車両上下方向に同一位置に配置されたコイル部材101、201、301の組、コイル部材102、202、302の組、および、コイル部材103、203、303の組は、それぞれ、上述した第二実施形態のコイル部材に相当する。つまり、衝突判定部50は、第一のコイル部材101が衝突したと判定し、且つ、第二のコイル部材201、301の少なくとも一方が衝突したと判定した場合に、側面ドア11のうち車両前方に物体が衝突したと判定する。また、衝突判定部50は、第一のコイル部材102が衝突したと判定し、且つ、第二のコイル部材202、302の少なくとも一方が衝突したと判定した場合に、側面ドア11のうち車両前後方向の中央部に物体が衝突したと判定する。また、衝突判定部50は、第一のコイル部材103が衝突したと判定し、且つ、第二のコイル部材203、303の少なくとも一方が衝突したと判定した場合に、側面ドア11のうち車両後方に物体が衝突したと判定する。このように、広範囲に高精度な検出が可能となる。
【0053】
<その他>
上記各実施形態においては、第一のコイル部材101〜103を内板12に取り付けるものとした。この他に、第一のコイル部材101〜103を補強部材13に取り付けるようにしてもよい。この場合、第一のコイル部材101〜103による被検出部材が内板12となるため、内板12が強磁性体とする必要がある。一方、補強部材13は、強磁性体である必要はない。このようにしても、上記同様に衝突検出が可能である。
【0054】
また、第二のコイル部材201〜203、301〜303も内板12に取り付けたが、外板11に取り付けるようにしてもよい。この場合、第二のコイル部材201〜203、301〜303による被検出部材が内板12となるため、内板12が強磁性体とする必要がある。一方、外板11は、強磁性体である必要はない。このようにしても、上記同様に衝突検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第一実施形態における側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。
【図2】第一実施形態における側面ドア1の車室内側から見た斜視図である。
【図3】第一実施形態における第一のコイル部材101を示す斜視図である。
【図4】補強部材13とそれぞれのコイル21との離間距離に対するコイル21のインダクタンスLsの関係を示す図である。
【図5】車両用側突検出装置を示す回路構成図である。
【図6】衝突物体とその位置に関する図である。
【図7】検出回路40からの出力電圧を示す図である。
【図8】第一のコイルを1つのみ配置した場合を示す図である。
【図9】コイルの車両前後方向幅を変えた場合に、コイル21のインダクタンスLsの変化率がどのように変化するかを示した図である。
【図10】第二実施形態における側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。
【図11】第二実施形態における側面ドア1の車室内側から見た斜視図である。
【図12】第二実施形態における衝突判定部50の判定処理を模式的に示す図である。
【図13】第三実施形態における側面ドア1の車室内側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1:側面ドア
11:外板、 12:内板、 13:補強部材
21:コイル、 22:フィルム
30:発振回路、 40:検出回路、 50:衝突判定部
101〜103:第一のコイル部材
201〜203:上側第二のコイル部材
301〜303:下側第二のコイル部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面ドアの外板と、
前記外板の車室内側に前記外板に対向して離隔配置される前記側面ドアの内板と、
前記外板と前記内板との間であって前記内板に対して離隔配置され、前記外板の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する補強部材と、
を備え、
前記内板および前記補強部材の何れか一方である第一の被検出部材が強磁性体からなる場合に、前記内板と前記補強部材との間であって前記第一の被検出部材から離隔した状態で前記内板および前記補強部材の他方に取り付けられ、両者が対向する方向に磁界を発生させ、前記第一の被検出部材との離間距離の変化に応じてインダクタンスが変化するコイルを第一のコイルと定義し、
前記外板および前記内板の何れか一方である第二の被検出部材が強磁性体からなる場合に、前記外板と前記内板との間であって前記第二の被検出部材から離隔した状態で前記外板および前記内板の他方に取り付けられ、両者が対向する方向に磁界を発生させ、前記第二の被検出部材との離間距離の変化に応じてインダクタンスが変化するコイルを第二のコイルと定義した場合に、
前記第一のコイルおよび前記第二のコイルのうち何れか一方の前記コイルを複数備えるか、若しくは、前記第一のコイルおよび前記第二のコイルをそれぞれ少なくとも1つ以上備え、当該コイルの前記インダクタンスの変化に基づいて車両と物体とが衝突したことを判定する判定手段を備えることを特徴とする車両用側突検出装置。
【請求項2】
前記補強部材は、車両前後方向に延びるように配置され、
前記車両用側突検出装置は、前記第一のコイルを複数備え、
それぞれの前記第一のコイルは、車両前後方向に異なる位置に配置される請求項1に記載の車両用側突検出装置。
【請求項3】
前記車両用側突検出装置は、さらに、前記第二のコイルを複数備え、
複数の前記第二のコイルは、前記第一のコイルのそれぞれに対して車両前後方向に同一位置であって車両上下方向に異なる位置に配置される請求項2に記載の車両用側突検出装置。
【請求項4】
前記第二のコイルは、それぞれの前記第一のコイルに対して車両上方に異なる位置および車両下方に異なる位置に配置される請求項3に記載の車両用側突検出装置。
【請求項5】
前記第一のコイルおよび前記第二のコイルをそれぞれ少なくとも1つ以上備え、
前記第二のコイルは、前記第一のコイルに対して車両前後方向に同一位置であって車両上下方向に異なる位置に配置される請求項1に記載の車両用側突検出装置。
【請求項6】
前記第二のコイルは、それぞれの前記第一のコイルに対して車両上方に異なる位置および車両下方に異なる位置に配置される請求項5に記載の車両用側突検出装置。
【請求項7】
前記判定手段は、それぞれの前記コイルの前記インダクタンスの変化に基づいて、前記物体が前記側面ドアの全体に亘って衝突したのか、または、前記物体が前記側面ドアに局所的に衝突したのかを判定する請求項2に記載の車両用側突検出装置。
【請求項8】
前記判定手段は、それぞれの前記コイルの前記インダクタンスの変化に基づいて、前記側面ドアの車両前後方向において前記物体が衝突した位置を判定する請求項2に記載の車両用側突検出装置。
【請求項9】
前記判定手段は、それぞれの前記コイルの前記インダクタンスの変化に基づいて、前記補強部材における車両前後方向の変形分布を算出する請求項2に記載の車両用側突検出装置。
【請求項10】
前記判定手段は、車両前後方向に同一位置に配置される前記第一のコイルおよび前記第二のコイルの前記インダクタンスの変化に基づいて、両前記コイルにより前記物体の衝突を検出した場合にのみ、車両と物体とが衝突したと判定する請求項3または5に記載の車両用側突検出装置。
【請求項11】
前記判定手段は、
所定の前記第一のコイルにより前記物体の衝突を検出した場合であって、
前記所定の前記第一のコイルと車両前後方向に同一位置であって前記所定の前記第一のコイルの車両上方および車両下方に配置される複数の前記第二のコイルの何れかにより前記物体の衝突を検出した場合に、
前記側面ドアの車両前後方向において前記所定の第一のコイルが配置された位置に物体が衝突したと判定する請求項4または6に記載の車両用側突検出装置。
【請求項1】
側面ドアの外板と、
前記外板の車室内側に前記外板に対向して離隔配置される前記側面ドアの内板と、
前記外板と前記内板との間であって前記内板に対して離隔配置され、前記外板の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する補強部材と、
を備え、
前記内板および前記補強部材の何れか一方である第一の被検出部材が強磁性体からなる場合に、前記内板と前記補強部材との間であって前記第一の被検出部材から離隔した状態で前記内板および前記補強部材の他方に取り付けられ、両者が対向する方向に磁界を発生させ、前記第一の被検出部材との離間距離の変化に応じてインダクタンスが変化するコイルを第一のコイルと定義し、
前記外板および前記内板の何れか一方である第二の被検出部材が強磁性体からなる場合に、前記外板と前記内板との間であって前記第二の被検出部材から離隔した状態で前記外板および前記内板の他方に取り付けられ、両者が対向する方向に磁界を発生させ、前記第二の被検出部材との離間距離の変化に応じてインダクタンスが変化するコイルを第二のコイルと定義した場合に、
前記第一のコイルおよび前記第二のコイルのうち何れか一方の前記コイルを複数備えるか、若しくは、前記第一のコイルおよび前記第二のコイルをそれぞれ少なくとも1つ以上備え、当該コイルの前記インダクタンスの変化に基づいて車両と物体とが衝突したことを判定する判定手段を備えることを特徴とする車両用側突検出装置。
【請求項2】
前記補強部材は、車両前後方向に延びるように配置され、
前記車両用側突検出装置は、前記第一のコイルを複数備え、
それぞれの前記第一のコイルは、車両前後方向に異なる位置に配置される請求項1に記載の車両用側突検出装置。
【請求項3】
前記車両用側突検出装置は、さらに、前記第二のコイルを複数備え、
複数の前記第二のコイルは、前記第一のコイルのそれぞれに対して車両前後方向に同一位置であって車両上下方向に異なる位置に配置される請求項2に記載の車両用側突検出装置。
【請求項4】
前記第二のコイルは、それぞれの前記第一のコイルに対して車両上方に異なる位置および車両下方に異なる位置に配置される請求項3に記載の車両用側突検出装置。
【請求項5】
前記第一のコイルおよび前記第二のコイルをそれぞれ少なくとも1つ以上備え、
前記第二のコイルは、前記第一のコイルに対して車両前後方向に同一位置であって車両上下方向に異なる位置に配置される請求項1に記載の車両用側突検出装置。
【請求項6】
前記第二のコイルは、それぞれの前記第一のコイルに対して車両上方に異なる位置および車両下方に異なる位置に配置される請求項5に記載の車両用側突検出装置。
【請求項7】
前記判定手段は、それぞれの前記コイルの前記インダクタンスの変化に基づいて、前記物体が前記側面ドアの全体に亘って衝突したのか、または、前記物体が前記側面ドアに局所的に衝突したのかを判定する請求項2に記載の車両用側突検出装置。
【請求項8】
前記判定手段は、それぞれの前記コイルの前記インダクタンスの変化に基づいて、前記側面ドアの車両前後方向において前記物体が衝突した位置を判定する請求項2に記載の車両用側突検出装置。
【請求項9】
前記判定手段は、それぞれの前記コイルの前記インダクタンスの変化に基づいて、前記補強部材における車両前後方向の変形分布を算出する請求項2に記載の車両用側突検出装置。
【請求項10】
前記判定手段は、車両前後方向に同一位置に配置される前記第一のコイルおよび前記第二のコイルの前記インダクタンスの変化に基づいて、両前記コイルにより前記物体の衝突を検出した場合にのみ、車両と物体とが衝突したと判定する請求項3または5に記載の車両用側突検出装置。
【請求項11】
前記判定手段は、
所定の前記第一のコイルにより前記物体の衝突を検出した場合であって、
前記所定の前記第一のコイルと車両前後方向に同一位置であって前記所定の前記第一のコイルの車両上方および車両下方に配置される複数の前記第二のコイルの何れかにより前記物体の衝突を検出した場合に、
前記側面ドアの車両前後方向において前記所定の第一のコイルが配置された位置に物体が衝突したと判定する請求項4または6に記載の車両用側突検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−132247(P2009−132247A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309314(P2007−309314)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】
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