説明

車両用内装部品の製造装置

【課題】 本発明は、簡便な装置構成で、付属部品を確実に接着固定することができる車両用内装部品の製造装置を実現する。
【解決手段】 車両用内装部品の所定箇所に付属部品を接着固定する製造装置であって、車両用内装部品が載置される受け冶具と、受け冶具に設置される部品固定ユニットと、を備え、部品固定ユニットは、車両用内装部品の所定位置に、付属部品を案内するロケート部と、ロケート部の側面から突出して、付属部品を車両用内装部品に押圧する押圧部と、ロケート部の内部に収納された押圧部を突出させる駆動部と、を備えることを特徴とする車両用内装部品の製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装部品のベース基材に付属部品を接着する車両用内装部品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室には、居住空間としての快適性のある空間を創り出すために、内装部品が装着されている。これらの内装部品は、工業製品として生産されるものであり、自動車を使用する者に満足感を提供する高い品質を備えながら低コストであることが要求されている。これを実現するためには、品質を維持しながら生産効率を高めることができる有用な製造装置が必要である。
【0003】
図6は、従来技術に係る車両用内装部品の製造装置を説明するための模式図である。図6(a)は、車両用内装部品の一つであるルーフトリム30の模式図であり、ルーフパネルへの取り付け面側の外観を示している。また、ルーフトリム30は、合成樹脂の成形体であるベース基材に表皮材を貼着したものであり、図に示す取り付け面の裏面である車室側の面に表皮材が貼着されている。ルーフトリム30には、さらに、ルームランプやサンバイザ等のユニットが取り付けられて使用される。図中に示すように、ルーフトリム30の中央には、ルームランプユニットを取り付ける開口32が設けられ、その開口32の周辺の強度を補強するために、鉄製のブラケット31がベース基材に接着固定される。
【0004】
図6(b)は、ルーフトリム30にブラケット31を接着固定するために使用される製造装置を示す模式図である。ルーフトリム30(A-A断面)は、ベースプレート35上に設置された受け冶具35に載置されており、図中に示す装置によって、開口32の周りの所定位置にブラケット31が貼り付けられる。この際、開口32周辺のベース基材の表面にはホットメルトタイプの接着剤が塗布され、ブラケット31とルーフトリム30を接着する。
【0005】
また、受け冶具35の所定位置にはロケート33が配置されており、ルーフトリム30を載置した後に、セットされたブラケット31を貼り付け位置に案内する。さらに、ブラケット31をルーフトリム30に密着させるために、押圧ジグ42を降下させて、ブラケット31をルーフトリム30に押圧する。図中に示すように、押圧ジグ42は、支持アーム37に取り付けられた圧着シリンダ38のアーム39の先端部に取り付けられており、圧着シリンダの圧力によってブラケット31を押圧する。支持アーム37は、昇降シリンダ36によって上下動し、圧着シリンダ38を作業位置に移動させる。この装置を使用することにより、ルーフトリム30に傷や変形を生じさせることなく、ブラケット31を所定位置に正確に貼り付けることができる。
【0006】
特許文献1には、車両用ルーフトリムに部品を接着するための方法およびそれに使用する加工ユニットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−21515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の従来技術に係る車両用内装部品の製造装置、および特許文献1に記載された部品の接着方法を用いる製造装置においては、シリンダ駆動の支持アームやロボットアームを使用するため、接着する部品のサイズに比して、装置サイズが大きくなる。このため、装置を設置するために広い面積を確保する必要があり、また、装置の購入や維持のためのコストが高いという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、簡便な装置構成で、付属部品を確実に接着固定することができる車両用内装部品の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用内装部品の製造装置は、車両用内装部品の所定箇所に付属部品を接着固定する製造装置であって、車両用内装部品が載置される受け冶具と、受け冶具に設置される部品固定ユニットと、を備え、部品固定ユニットは、車両用内装部品の所定位置に、付属部品を案内するロケート部と、ロケート部の側面から突出して、付属部品を車両用内装部品に押圧する押圧部と、ロケート部の内部に収納された押圧部を突出させる駆動部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、受け冶具に装着した車両用内装部品に付属部品を押圧して接着する押圧部を、ロケート部に備える装置構成とする。これにより、支持アームやロッボトアームを必要とせず、簡便な装置構成で確実に付属部品の接着固定を行うことができる。
【0012】
さらに、本発明に係る車両用内装部品の製造装置において、ロケート部は、該ロケート部の少なくとも2つの対向する側面から突出する複数の押圧部を収納し、複数の押圧部は、ロケート部の側面から突出する方向に対して略垂直方向に並列に配置されて、ロケート部の内部に収納されていることを特徴とする。
【0013】
これにより、ロケート部から突き出される押圧部のサイズを、ロケート部内に収納できる最大の幅とすることができる。これにより、付属部品を広い幅で押圧することができ、安定した状態で車両用内装部品に接着することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡便な装置構成で、付属部品を確実に接着固定することができる車両用内装部品の製造装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る車両用内装部品の製造装置の動作を示す模式図である。
【図2】本発明に係る車両用内装部品の製造装置のロケート部の構成を示す模式図である。
【図3】本発明に係る車両用内装部品の製造装置の押圧部の駆動装置を示す模式図である。
【図4】本発明に係る車両用内装部品の製造装置のロケート部を示す模式図である。
【図5】本発明に係る車両用内装部品の製造装置の押圧部の別の実施態様を示す模式図である。
【図6】従来技術に係る車両用内装部品の製造装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の実施形態に係る車両用内装部品は、車両のルーフパネルに装着されるルーフトリムであって、前述したように、合成樹脂の成形体であるベース基材に表皮材を貼着したものである。また、ルーフパネルの所定箇所には、付属部品であるブラケットが接着固定される(図6(a)参照)。
【0017】
図1は、本発明に係る車両用内装部品の製造装置である接着装置10の動作を示す模式図である。接着装置10は、ルーフパネル4へブラケット12を接着するために使用する装置であり、ベースプレート2の上に受け冶具3が設置された構成となっている。
【0018】
また、図1(a)ないし(c)は、接着装置10の断面を模式的に示している。図1(a)は、受け冶具3の上にルーフパネル4が載置された状態を示す模式図である。図中には、ルーフパネルのA−A断面(図6(a)参照)が示されている。ベースプレート2の上に設置された受け冶具3の内部には、ロケート部5および押圧部8の駆動ユニット6、エアシリンダ7で構成される部品固定ユニットが設置されている。後述するように、ロケート部5は、受け冶具3に載置されたルーフトリム4の所定位置に、ブラケット12を案内する。駆動ユニット6は、ロケート部5の側面から押圧部8を突出させ、また、内部に収納する。エアシリンダ7は、ロケート部5および駆動ユニット6を図中の上下方向に昇降させる。
【0019】
図1(a)に示すように、ルーフトリム4を受け冶具3に載置する際には、ロケート部5は、エアシリンダ7によって上昇させられ、受け冶具3に設けられた開口から突出した状態となっている。また、ロケート部5は、ルーフトリム4に設けられた開口9に挿通されており、受け冶具3上においてルーフトリム4の位置決めを行う。
【0020】
次に、図1(b)に示すように、ブラケット12の開口をロケート部5に挿通させてセットし、ルーフトリム4の所定位置に位置決めする。この際、ルーフトリム4の開口9の周りのベース基材表面には、加熱されて軟化したホットメルト接着剤が塗布されている。さらに、図中に示すように、駆動ユニット6に駆動された押圧部8が、ロケート部5の内部から側面を通して突出する。
【0021】
次に、図1(c)に示すように、エアシリンダ7により、駆動ユニット6およびロケート部5が下降し、ロケート部5の側面から突出した押圧部8が、ブラケット12を押圧してルーフトリム4に密着させる。この状態でベース基材の表面に塗布された接着剤が冷却されて、ブラケット12の接着固定を完了する。
【0022】
ブラケット12のルーフトリム4への接着固定が完了すると、エアシリンダ7を駆動してロケート部5を再度上昇させ、駆動ユニット6により押圧部8をロケート部5の内部に収納する。次に、ロケート部5は、エアシリンダ7により再度下降させられ、受け冶具3の内部に収納される。これにより、ルーフトリム4を受け冶具3から取り外す作業を容易に実施することができる。
【0023】
図2は、駆動ユニット6の内部構成を示す模式図である。駆動ユニット6の内部には、2つのシリンダアーム14aと14bを有するエアシリンダ13が設置されている。エアシリンダ13は、エア供給孔17および18から供給される圧縮空気により駆動されて、図中の水平方向へシリンダアーム14aおよび14bを動かす。シリンダアーム14aおよび14bには、クランク形状に加工されたサポートアーム15aおよび15bが取り付けられている。さらに、サポートアーム15aおよび15bの先端部には、それぞれ押圧部8が一体加工されている。
【0024】
図2(a)は、押圧部8がロケート部5の内部に収納された状態を示す模式図である。また、受け冶具3の開口からロケート部5が突出した動作状態を示しており、ルーフトリム4およびブラケット12がセットされている。サポートアーム15aおよび15bの先端部は、駆動ユニット6からロケート部5へ挿入されて配置されている。エアシリンダ13のシリンダアーム14aおよび14bは、それぞれ対向する向きに移動した状態にあり、サポートアーム15aおよび15bが交差する状態となっている。サポートアーム15aおよび15bの先端の押圧部8は、図中に矢印で示す突出方向に対して垂直な方向に並列して、ロケート部5の内部に収容されている。
【0025】
図2(b)は、エアシリンダ13のシリンダアーム14aおよび14bが、それぞれ対向する向きの反対方向に移動して、押圧部8をロケート部5の側面から突出させ、ブラケット12を押圧してルーフトリム4に密着させた状態を示している。サポートアーム15aおよび15bが、交差状態から離れ、先端の押圧部8がロケート部側面から突出している。図2(a)に示した並列状態に収納した押圧部8を、図2(b)に示すように移動させて側面から突出させることで、突出した押圧部8の幅を最大にすることが可能となる。すなわち、図2(a)に示す並列状態に収容することにより、押圧部8のサイズを、ロケート部5の内部空間に収容できる限度内で最大とすることができる。さらに、サポートアーム15a、15bをクランク状の形状とすることにより、相互に干渉することなく移動させることができ、それぞれロケート部5の内部で許容される最大の移動幅を確保することができる。これにより、ロケート部5の側面からの突出部8の突出幅を大きくすることができるので、ブラケット12押圧する際に、均等に押圧力を加えることができる。
【0026】
図3は、駆動ユニット6内に設置されるエアシリンダ13およびサポートアーム15a、15bを模式的に示す斜視図である。エアシリンダ13の本体には、圧縮空気の供給口17a、18a、および排出口17b、18bが設けられている。エアシリンダ13の上面には、シリンダアーム14aおよび14bが配置されており、圧縮空気によって水平方向に駆動される。また、サポートアーム15a、15bは、シリンダアーム14a、14bにボルトで固定されており、加工する車両用内装部品およびブラケットの仕様に合わせて交換することができる。
【0027】
図3(a)は、シリンダアーム14a、14bが、それぞれ対向する内向き方向へ移動してサポートアーム15a、15bが交差した状態を示している。サポートアーム15a、15bのそれぞれの先端に設けられた押圧部8はコンパクトに並列し、ロケート部5の内部に収容できる状態になっている。
【0028】
図3(b)は、シリンダアーム14a、14bが、外向き方向へ移動し、押圧部8をロケート部5の側面から突出させる状態を示している。クランク状に形成されたサポートアーム15a、15bは、相互に干渉することなく移動することができる。
【0029】
図4は、エアシリンダ13およびサポートアーム15a、15bが、駆動ユニット6およびロケート部5に設置された状態を模式的に示す斜視図である。サポートアーム15a、15bは、駆動ユニット6からロケート部5へ挿通されて配置されている。図中には、押圧部8がロケート部5の側面から突出した状態が示されている。ロケート部の形状は、先端がテーパ状に加工された角柱となっているが、ルーフトリムの開口および接着固定されるブラケットの形状およびサイズに合わせて変更することができる。また、前述したように、サポートアーム15a、15bも、ルーフトリムの開口およびブラケットに合わせて交換されることは言うまでもない。
【0030】
図5は、押圧部の別の実施形体を示す模式図である。図5(a)に示すように、本実施形体では、2つの押圧部28が設けられたサポートアーム25aと、1つの押圧部28が設けられたサポートアーム25bが、それぞれシリンダアーム24a、24bに装着されている。エアシリンダ23が駆動されてシリンダアーム24a、24bが移動すると、図5(b)に示すように、並列した3つの押圧部28の内、両側の2つは、シリンダアーム24aによって同じ方向へ移動し、中央の押圧部28は、シリンダアーム24bによって反対方向へ移動する。
【0031】
上記の実施形態においては、図示しないロケート部の片側側面から2つの押圧部28が突出し、反対側の側面から1つの押圧部28が突出してブラケットに押圧を加えることになる。これにより、ブラケットに加わる押圧力のバランスを取ることができる。図5に示した3つの押圧部28のサイズは同じであるが、中央部の押圧部28の突出方向に垂直な方向の幅を広くし、両側の押圧部28の幅を狭くしてバランスを取っても良い。
【0032】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明に係る車両用内装部品の製造装置は上述した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
3 受け冶具
4 ルーフトリム
5 ロケート部
6 駆動ユニット
7 エアシリンダ
8 押圧部
10 接着装置
13 エアシリンダ
14a、14b シリンダアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用内装部品の所定箇所に付属部品を接着固定する製造装置であって、
前記車両用内装部品が載置される受け冶具と、
前記受け冶具に設置される部品固定ユニットと、を備え、
前記部品固定ユニットは、
前記車両用内装部品の所定位置に、前記付属部品を案内するロケート部と、
前記ロケート部の側面から突出して、前記付属部品を車両用内装部品に押圧する押圧部と、
前記ロケート部の内部に収納された押圧部を突出させる駆動部と、
を備えることを特徴とする車両用内装部品の製造装置。
【請求項2】
前記ロケート部は、
該ロケート部の少なくとも2つの対向する側面から突出する複数の押圧部を収納し、
前記複数の押圧部は、前記ロケート部の側面から突出する方向に対して略垂直方向に並列に配置されて、前記ロケート部の内部に収納されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装部品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−131476(P2011−131476A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292395(P2009−292395)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】