説明

車両用制御装置

【課題】地絡誤検知を検出することができる車両用制御装置を提供する。
【解決手段】パンタグラフ100を介して供給される電力を車両が走行するための駆動電力に変換する電力変換器105と、電力変換器105とパンタグラフ100の間に接続されパンタグラフ100から供給される電力の遮断を可能とする接触器104と、電力変換器105の筐体と前記筐体に取り付けられた接地点108との間に接続され電流を検出する電流検出器107と、電流検出器107に接続される電流検出器動作確認回路109に模擬電流を流す電流検出器異常検出手段1000と、を備え、電流検出器異常検出手段は、電流検出器異常検出手段の結果に基づき、接触器104を開放または投入させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両内に搭載されている主変換装置は、高電圧配線を介して車両外のパンタグラフと接続される。パンタグラフの電力は、高電圧配線を通して主変換装置に供給され、主変換装置は供給された電力を車両が走行するための電力に変換する。車両の走行中、上記の高電圧配線が何らかの原因によって、主変換装置の筐体に接触すると、その接触部分を介して短絡が起こり、地絡事故が発生することになる。車両には、このような地絡事故を地絡故障として検知する制御部を有する車両用制御装置が備えられている。車両用制御装置が地絡故障を検知すると、パンタグラフと主変圧器を接続する遮断器を開放するように制御する。遮断器を開放することで、主変圧器に接続されている主変換装置もパンタグラフから電気的に切り離され、地絡事故により主変換装置が故障することを防止していた。このような地絡事故発生に対する対策が取られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−41892号公報
【特許文献2】特開2009−225528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両用制御装置において、上記の開放動作または保護動作は地絡事故を誤って検出した場合にも発生してしまう。このような誤検知による主変換装置の切り離しが実行されると、車両走行のための走行力が低下し、車両の運行に支障が出るおそれがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、地絡誤検知を検出することができる車両用制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の車両用制御装置は、パンタグラフを介して供給される電力を車両が走行するための駆動電力に変換する電力変換器と、電力変換器と前記パンタグラフの間に接続され、パンタグラフからの供給される電力の遮断を可能とする接触器と、電力変換器の筐体と前記筐体にと取り付けられる接地点との間に接続され、電流を検出する電流検出器と、電流検出器に接続される電流検出器動作確認回路に、模擬電流を流す電流検出器異常検出手段と、電流検出器異常検出手段は、電流検出器異常検出手段の結果に基づき、前記接触器を開放または投入させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態の車両用制御装置の全体構成を示す図。
【図2】第1の実施形態の車両用制御装置の制御部の動作を示すフローチャート。
【図3】第1の実施形態の車両用制御装置の制御システムの動作を示すタイムチャート。
【図4】第2の実施形態の車両用制御装置の制御部の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の制御装置を図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について図を参照し、詳細に説明する。図1は、第1の実施形態の車両用制御装置の全体構成を示す図である。図2は、第1の実施形態の車両用制御装置の制御部の動作を示すフローチャートである。図3は、第1の実施形態の車両用制御装置の制御システムの動作を示すタイムチャートである。
【0010】
(構成)
まず、本実施形態の構成について説明する。図1は、パンタグラフ100、遮断器101、主変圧器102、主接地103、接触器104、電力変換器105、モータ106、電流検出器107、電力変換装置用接地108、電流検出器動作確認回路109、電力変換装置110、制御部1000、地絡検出演算部1001、模擬電流出力部1002、接触器状態検出部1003、CT故障検出部1004、開放指令出力部1005で構成される。
【0011】
パンタグラフ100は、遮断器101を介して主変圧器102と接続される。主変圧器102のパンタグラフ100と反対側には主接地103が接続される。主変圧器102の二次側には、主変換装置110が接続される。主変換装置110は、主変圧器102と反対側に接触器104を介して電力変換器105および、モータ106が接続される。電力変換器105には電流検出器107、電力変換器105の筐体を介して電力変換装置用接地108が接続されている。
【0012】
また電力変換装置110は、遮断器101、接触器104、電流検出器107、電流検出器動作確認回路109接続され、地絡検出演算部1001、模擬電流出力部1002、接触器開放状態検出部1003、CT故障検出部1004、開放指令出力部1005を内蔵する制御部1000を有している。
【0013】
制御部1000の地絡検出器1001は、電流検出器107、開放指令出力部1005、CT故障検出部1004、模擬電流出力部1002と接続される。模擬電流出力部1002は、電流検出器動作確認回路109、接触器状態検出部1003と接続される。接触器状態検出部1003は、接触器104、模擬電流状態検出部1002、電流検出器CT故障検出部1004と接続される。開放出力指令部1005は、地絡検出演算部1001、遮断器101、接触器104と接続される。
【0014】
このような構成を有する車両は、以下のように動作する。架線から送られてくる電力はパンタグラフ100及び、通常の走行時は投入状態にある遮断器101を通り、変圧器102へ送られ、変圧器102で降圧される。変圧器102で降圧された電圧は、通常列車の走行時には投入状態にある接触器104を介して電力変換器105に送られる。電力変換器105は、電力をモータ106が駆動可能な状態に変換し、モータ106に供給する。電力を得たモータ106は、駆動力を発生し、車両を走行させる。
【0015】
(動作)
このような車両の駆動時または走行時に、主変換装置110とパンタグラフ100を接続する高電圧配線が、主変換装置110の筐体と接触することで地絡事故が起きた場合、地絡検出システムが作動する。地絡事故が起きると、変圧器102から、電力変換器105、電力変換装置用接地108、主接地103という、地絡電流が流れる循環経路を形成する。地絡電流が発生すると、モータ106が駆動力を得られない、電力変換器105が破損するなど、車両の安全な走行の障害となる様々な問題が生じる。
【0016】
そのため、通常の地絡検出システムは、地絡事故が起きた場合には、電流検出器107によって検出されている電流(Ict)を地絡検出演算部1001で予め設定された所定値(α)を超えているかどうかを算出する。超えていると地絡事故と判断され、地絡検知信号が開放指令出力部1005に入力される。地絡検知信号を受け取った開放指令出力部1005は、遮断器101が開放するように開放指令を出力する。
【0017】
開放指令出力部1005からの開放指令信号を受けた遮断器101が開放すると、架線からパンタグラフ100を介して主変換装置110に流れる電流を遮断するため、地絡事故により電力変換器105の破損を防止し、出力が低下しながらも車両の安全な走行は保たれる。このように地絡検出システムが正常に動作している場合は、車両の安全は維持できる。
【0018】
しかしながら、電流検出器107が故障している場合は、地絡事故が起きていても地絡検出ができないケースや、または、地絡事故が起きていないにもかかわらず、地絡事故が検出してしまうケースがある。その場合、車両の安全で安定的な走行が損なわれる恐れがあった。そのため、以下に、地絡検出システムの正常な動作を維持するための本実施形態の車両用制御装置の電流検出器異常検出手段について図2、図3を参照して説明する。
【0019】
図2または図3(a)に示すように、電源をONにすると電流検出器異常検出手段の動作が開始する電源投入信号を模擬電流出力部1002が受け取る(S1)。電源投入信号を受け取った模擬電流出力部1002は、接触器開状態出力部1003からの接触器104の開放状態を示す信号を入力されているかどうかを判定する(S2)。電源投入信号を受け取り、さらに接触器104の開放状態を示す信号が入力されている場合、図3(b)に示すように模擬電流出力部1002は一定時間後、電流検出器動作確認回路109の接触器を投入し、電流検出器動作確認回路109に模擬電流が流れるようにする。模擬電流検出部1002では、模擬電流を電流検出器動作確認回路109に流すと同時に、この動作を行ったことを示す模擬電流出力信号を地絡検出演算部1001に出力する。また、地絡検出演算部1001には、電流検出器107により検出された電流値も入力される。図3(c)に示すように正常に動作している場合は、一定時間後に電流検出器動作確認回路109に模擬電流が流れるため、電流検出器107では0以上の電流値を検出することになる。このような模擬電流を流しているかどうかを判断するため、模擬電流出力部1002から地絡検出演算部1001へ模擬電流信号を入力し、地絡検出演算部1001では模擬電流出力信号が入力されるかどうかを判定する(S3)。また、接触器開放信号が無いと判定された場合は(S2)は、接触器に異常があるとする(S6)。
【0020】
図3のA点からB点のように模擬電流出力信号が入力されない期間において、地絡検出かあるかどうかは以下のように判断される。地絡検出演算部1001では、電流検出器107より検出される電流値(Ict)が0以上の値であるかどうかを判定する(S4)。検出された電流値(Ict)が0以上である場合、地絡検出演算部1001より接触器開放信号・有、模擬出力信号・無、Ict>0の情報を持った第1地絡検出信号がCT故障検出部1004へ入力される。第1地絡検出信号を受け取ったCT故障検出部1004は、第1パターンの電流検出器107の故障が発生していると判断する(S7)。図3(d)に示すように、電流検出器107が短絡等により地絡検出演算部1001に電流が送られる状態になることを第1パターンCT故障とする。CT故障第1パターンの信号を受け取ったCT故障検出部1004は、接触器104へ開放信号を出力し、接触器104を開放する。また、この時の地絡検出演算部1001で電流値(Ict)と比較する値は、予め設定する0以外の所定値でもよい。
【0021】
一方で、検出された電流値(Ict)が0以下である場合、地絡検出信号がCT故障検出部1004に入力されない。CT故障検出部1004で地絡検出信号を受けとらなければ接触器104の開放指令は出力されず、制御部1000では電流検出器107は正常に動作している判断される(S8)。
【0022】
また、図3のB点からC点のような模擬電流出力信号が入力される期間において、地絡検出かあるかどうかは以下のように判断される。一定時間経過後、模擬電流出力部1002から地絡検出演算部1001に模擬出力信号が出力される。また同時に、模擬電流出力部1001からの指令で電流検出器動作確認回路109の接触器は投入され、電流検出器動作確認回路109に模擬電流が流れるようになる。模擬電流が回路内を流れるようになると、電流検出器107から電流が検出されるようになる。その電流値(Ict)は、地絡検出演算部1001に入力される。検出電流値(Ict)を受け取った地絡検出演算部1001では、電流値(Ict)が所定の値(α)を超えているかどうかを判定する(S5)。検出された電流値(Ict)が所定の値を超えていない場合、地絡検出演算部1001より接触器開放信号・有、模擬出力信号・無、Ict<αの情報を持った第2地絡検出信号がCT故障検出部1004に入力され、第2パターンの電流検出器107の故障が発生していると判断される(S10)。図3(e)に示すように、電流検出器107が破損等により絶縁物となり地絡検出演算部1001に電流が送られない状態になることを第2パターンCT故障とする。地絡検出演算部1001よりCT故障第2パターンの信号を受け取ったCT故障検出部1004は、接触器104へ開放信号を出力し、接触器104を開放する。
【0023】
一方で、図3(c)に示すように、検出された電流値(Ict)が所定の値(α)を超えている場合、地絡検出演算部1001より地絡検出信号がCT故障検出部1004へ入力されない。CT故障検出部1004で地絡検出信号を受けとらなければ接触器104の開放指令は出力されず、制御部1000では、電流検出器107は正常に動作している判断される(S9)。
【0024】
このような電流検出器異常検出手段を有することで、故障している電流検出器104を検知し、接触器104を開放することで、車両の安全な走行が維持できる。
【0025】
また、ひとつの変圧器102に複数の主変換装置110が設置されているような場合には、各種変換装置110の電流検出器107の故障を検出することで、故障が発見された主変換装置110の接触器104のみを開放することができる。そのため、不必要な主変換装置110の切り離しを発生させることがなく、不必要な出力低下を防止できる。また、メンテナンス時には故障が発生している電流検出器を特定できるため、作業効率を向上させることが可能である。また、電流検出器故障第1パターン及び、電流検出器故障第2パターンと故障状態を特定することで、故障の原因を特定することに役立つ。また本実施形態は、電圧値を検出して動作させることも可能である。また、走行途中で確認ボタンにより電流検出器異常検出手段を動作させることもできる。
【0026】
(効果)
以上述べた少なくともひとつの実施形態の制御装置によれば、電流検出器異常判定手段により、地絡誤検知を検出することで、不必要な電力変換器の開放を防止することが可能となる。そのため、車両の安全な運行を維持することが可能である。
【0027】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について図を参照し、詳細に説明する。図4は、第2の実施形態の車両用制御装置の制御部の動作を示すフローチャートである。尚、図1乃至3と同一の構成をとるものについては、同符号を付して説明を省略する。
【0028】
本実施形態は、車両の走行途中に電流検出器107が地絡を検知した際に、電流検出器107の故障の有無を検出するためのものである。以下、その点について詳細に説明する。
【0029】
(作用)
図4に示すように、地絡検出演算部1001で地絡が検出されると(S200)、開放指令出力部1005より接触器104へ開放指令が出力される。開放指令受けた接触器104は開放され、その開放状態を接触器状態検出部1003が受け取る。接触器開放信号をct故障検出部1004に入力する。ct故障検出部1004では、接触器104が開放状態にあるかどうかを判断する(S201)。接触器開放信号があると判断されると、電流検出器107で電流値(Ict)が検知されるかどうかを判定する(S202)。電流値(Ict)が検知されると、第3パターンの電流検出器故障として電流検出器故障が検知される(S204)。電流検出器107が短絡等により地絡検出演算部1001に電流が送られる状態になることを第3パターン電流検出器故障とする。そのため、地絡事故が発生しないとして、電流検出器故障第3パターンの信号を受け取ったCT故障検出部1004は、地絡事故は発生していないが、電流検出器107が故障してるとし、接触器104を開放したまま遮断器101を再投入する。
【0030】
また、接触器開放信号が入力されなければ、接触器104が異常であると判断される(S203)。
【0031】
また、電流(Ict)が検出されなければ、電流検出器正常第3パターンが開放指令出力部1005に入力される(S205)。電流検出器正常とされ電流検出器107は正常状態で動作されていることが確認されたことになる。そのため、電流検出器故障第3パターンの信号を受け取ったCT故障検出部1004は、接触器104へ開放信号を出力し、接触器104の開放を継続することになる。このような動作は遮断器101でも適用可能である。
【0032】
(効果)
以上述べた少なくともひとつの実施形態の制御装置によれば、電流検出器異常判定手段により、地絡誤検知を検出することで、不必要な電力変換器の開放を防止することが可能となる。そのため、車両の安全な運行を維持することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
100 パンタグラフ
101 遮断器
102 主変圧器
103 主接地
104 接触器
105 電力変換器
106 モータ
107 電流検出器(電流検出器)
108 電力変換装置用接地
110 電力変換装置
1000 制御部
1001 地絡検出演算部
1002 模擬電流出力部
1003 接触器状態検出部
1004 電流検出器故障検出部
1005 開放指令出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンタグラフを介して供給される電力を車両が走行するための駆動電力に変換する電力変換器と、
前記電力変換器と前記パンタグラフの間に接続され、前記パンタグラフからの供給される電力の遮断を可能とする接触器と、
前記電力変換器の筐体と前記筐体に取付けられた接地点との間に接続され、電流を検出する電流検出器と、
前記電流検出器に接続される電流検出器動作確認回路に、模擬電流を流す電流検出器異常検出手段と、
前記電流検出器異常検出手段は、前記電流検出器異常検出手段の結果に基づき、前記接触器を開放または投入させる車両用制御装置。
【請求項2】
前記電流検出器異常検出手段は、主変換装置の起動前に行われる請求項1記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記電流検出器異常検出手段は、地絡事故発生時に動作する請求項1記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記電流検出器異常検出手段は、車両の走行中に手動により、動作を開始する請求項1記載の車両用制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate