説明

車両用前照灯の灯具ユニットおよび車両用前照灯

【課題】複数の光源ユニットを備えたプロジェクタ型の車両用前照灯の灯具ユニットにおいて、その各光源ユニットからの光によって形成される配光パターンを、明瞭な輪郭を有するとともに略均一な明るさあるいは特定の光度分布を有するものとする。
【解決手段】投影レンズ22の後側焦点面よりも後方側に、4つの光源ユニット24A、24B、24C、24Dを配置する。これら各光源ユニットは、発光素子32と、矩形形状の前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daを有する導光部材34A、34B、34C、34Dとを備えた構成とし、その発光素子32からの光を前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daまで導いて該前端出射口から前方へ向けて出射させるようにする。そして、各導光部材の前端出射口34A、34B、34C、34Dを、投影レンズ22の後側焦点面上において水平方向に互いに隣接させるようにして配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、車両用前照灯の灯具ユニットに関するものであり、特に、複数の光源ユニットを備えたプロジェクタ型の灯具ユニットに関するものであり、また、この灯具ユニットを備えた車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用前照灯に用いられるプロジェクタ型の灯具ユニットは、車両前後方向に延びる光軸上に投影レンズが配置されるとともに、その後側焦点よりも後方側に光源が配置されており、この光源からの光をリフレクタにより光軸寄りに反射させるように構成されている。
【0003】
その際、例えば「特許文献1」や「特許文献2」に記載されているように、このようなプロジェクタ型の灯具ユニットにおいて、その光源として発光ダイオード等の発光素子を用いたものも知られている。
【0004】
上記「特許文献1」に記載された灯具ユニットは、発光素子およびリフレクタからなる光源ユニットが水平方向に複数個配置された構成となっており、これら各光源ユニットからの光によって形成される配光パターンを合成することにより、車両用前照灯としての灯具配光パターンあるいはその一部の配光パターンを形成するようになっている。
【0005】
一方、上記「特許文献2」に記載された灯具ユニットは、その投影レンズの後側焦点面近傍に、複数の発光素子が水平方向に互いに隣接するように配置された構成となっており、これら各発光素子の反転投影像として形成される配光パターンを合成することにより、車両用前照灯としての灯具配光パターンあるいはその一部の配光パターンを形成するようになっている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−317226号公報
【特許文献2】特開2007−179969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記「特許文献2」に記載された灯具ユニットにおいては、複数の配光パターンが水平方向に並列的に形成されることとなるので、これら複数の配光パターンのうち、対向車の位置に形成されるべき配光パターンのみを順次形成しないように各発光素子の点消灯制御を行うようにすれば、対向車ドライバにグレアを与えてしまうことなく車両前方路面の視認性を高めることが可能となる。
【0008】
しかしながら、これら各配光パターンは、各発光素子の発光チップの反転投影像として形成されるので、その発光チップ自体の発光ムラをそのまま反映したものとなる。このため、これら各配光パターンを、略均一な明るさを有するものとすること、あるいは特定の光度分布を有するものとすることは困難である。
【0009】
一方、上記「特許文献1」に記載された灯具ユニットにおいては、その各光源ユニットのリフレクタで反射された発光素子からの光により投影レンズの後側焦点面上に形成される光源像の反転投影像として各配光パターンが形成されるので、これら各配光パターンを、略均一な明るさを有するものとすること、あるいは特定の光度分布を有するものとすることが可能である。
【0010】
しかしながら、これら各光源ユニットからの光によって形成される配光パターンは、その輪郭が不明瞭なものとなるので、各光源ユニットの点消灯制御により対向車の位置に形成されるべき配光パターンのみを順次形成しないようにしても、その両側の配光パターンの周縁部を形成する光が対向車ドライバの目に入ってグレアを与えてしまうこととなる。したがって、このような点消灯制御を行うこと自体が困難なものとなる。
【0011】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、複数の光源ユニットを備えたプロジェクタ型の車両用前照灯の灯具ユニットにおいて、その各光源ユニットからの光によって形成される配光パターンを、明瞭な輪郭を有するとともに略均一な明るさあるいは特定の光度分布を有するものとすることができる車両用前照灯の灯具ユニットおよびこれを備えた車両用前照灯を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、各光源ユニットの構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0013】
すなわち、本願発明に係る車両用前照灯の灯具ユニットは、
車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、この投影レンズの後側焦点面よりも後方側に配置された複数の光源ユニットと、を備えてなる車両用前照灯の灯具ユニットにおいて、
上記各光源ユニットが、発光素子と、所定形状の前端出射口を有し、上記発光素子からの光を上記前端出射口まで導いて該前端出射口から前方へ向けて出射させる導光部材と、を備えてなり、
上記各光源ユニットが、該光源ユニットにおける導光部材の前端出射口を上記後側焦点面の近傍において水平方向に互いに隣接させるようにして配置されている、ことを特徴とするものである。
【0014】
上記「発光素子」とは、略点状に面発光する発光チップを有する素子状の光源を意味するものであって、その種類は特に限定されるものではなく、例えば、発光ダイオードやレーザダイオード等が採用可能である。
【0015】
上記各「光源ユニット」は、その導光部材の前端出射口を投影レンズの後側焦点面近傍において水平方向に互いに隣接させるようにして配置されているが、その際、これら各光源ユニットにおける導光部材の前端出射口の、光軸に対する上下方向の位置関係については特に限定されるものではない。
【0016】
上記「水平方向に互いに隣接させるようにして配置されている」には、水平方向に互いに密着するようにして配置されている態様と、水平方向に互いに離間するようにして配置されている態様と、のいずれもが含まれる。
【0017】
上記「導光部材」は、所定形状の前端出射口を有する部材であって、発光素子からの光をこの前端出射口まで導いて該前端出射口から前方へ向けて出射させるように構成されたものであれば、その具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0018】
上記「前端出射口」の具体的な形状は、特に限定されるものではなく、例えば、矩形、平行四辺形、台形等が採用可能である。
【発明の効果】
【0019】
上記構成に示すように、本願発明に係る車両用前照灯の灯具ユニットは、車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、その後側焦点面よりも後方側に配置された複数の光源ユニットとを備えているが、その際、各光源ユニットは、発光素子と、所定形状の前端出射口を有し、発光素子からの光をこの前端出射口まで導いて該前端出射口から前方へ向けて出射させる導光部材とを備えており、そして、これら各光源ユニットは、その導光部材の前端出射口を投影レンズの後側焦点面近傍において水平方向に互いに隣接させるようにして配置されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0020】
すなわち、各光源ユニットからの出射光は、その導光部材の前端出射口まで導かれた発光素子からの光によって構成されることとなるが、この前端出射口に到達するまでの間に、導光部材の光学的な作用によって、発光素子からの光は、その分布が均一化し、あるいは特定の分布を有するものとなる。そして、これら各光源ユニットにおける導光部材の前端出射口は、投影レンズの後側焦点面近傍に位置しているので、その発光素子からの光により投影レンズの後側焦点面上に形成される光源像は、略均一な明るさを有する像あるいは特定の光度分布を有する像となる。したがって、この後側焦点面上の各光源像の反転投影像として形成される各配光パターンも、略均一な明るさを有する配光パターンあるいは特定の光度分布を有する配光パターンとなる。
【0021】
その際、後側焦点面上の各光源像は、各光源ユニットにおける導光部材の前端出射口の開口形状と略同じ輪郭を有しているので、その反転投影像として形成される配光パターンも明瞭な輪郭を有するものとなる。
【0022】
このように本願発明によれば、複数の光源ユニットを備えたプロジェクタ型の車両用前照灯の灯具ユニットにおいて、各光源ユニットからの光によって形成される配光パターンを、明瞭な輪郭を有するとともに略均一な明るさあるいは特定の光度分布を有するものとすることができる。
【0023】
そして、本願発明に係る車両用前照灯の灯具ユニットからの照射光により形成されるユニット配光パターンは、各光源ユニットからの光によって水平方向に並列的に形成される配光パターンの集合体としての配光パターンとなるが、このユニット配光パターンを構成する複数の配光パターンのうち、対向車の位置に形成されるべき配光パターンのみを順次形成しないように各発光素子の点消灯制御を行うようにすれば、対向車ドライバにグレアを与えてしまうことなく車両前方路面の視認性を高めることができる。
【0024】
なお、本願発明に係る車両用前照灯の灯具ユニットを、このような点消灯制御を行うことを前提として用いる用途以外の用途に用いること(例えば、複数の光源ユニットを同時に点灯させてその複数の配光パターンからなるユニット配光パターンを形成するための用途に用いること)も可能である。
【0025】
上記構成において、各光源ユニットにおける導光部材として、その前端出射口から後方へ向けて略錐体状に拡がるように形成されるとともに内周面に鏡面処理が施された筒状部材と、この筒状部材の後端部近傍に配置され、発光素子からの光をこの筒状部材の前端出射口へ向けて収束させる制御を行う光学部材とを備えた構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0026】
すなわち、発光素子からの光を、光学部材による収束制御および筒状部材の内周面での反射制御により効率良く前端出射口に導くことができ、かつ、この前端出射口からの出射光を効率良く投影レンズに入射させることができ、これにより光源光束の有効利用を図ることができる。
【0027】
また、光学部材による発光素子からの光の収束度合を適当に調整することにより、前端出射口に形成される光源像の光度分布を木目細かく制御することができ、これにより配光パターンの光度分布についても木目細かく制御することができる。
【0028】
この場合において「筒状部材」は、前端出射口から後方へ向けて略錐体状に拡がるように形成された中空の部材であれば、その具体的な断面形状や拡がり度合等は特に限定されるものではない。また「光学部材」の具体的な構成は特に限定されるものではなく、例えばリフレクタやレンズ等が採用可能である。
【0029】
一方、上記構成において、各光源ユニットにおける導光部材として、その前端出射口から後方へ向けて略錐体状に拡がるように形成された透光部材と、この透光部材の後端部近傍に配置され、発光素子からの光をこの透光部材の前端出射口へ向けて収束させる制御を行う光学部材とを備えた構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0030】
すなわち、発光素子からの光を、光学部材による収束制御および透光部材の外周面での内面反射制御により効率良く前端出射口に導くことができ、かつ、この前端出射口からの出射光を効率良く投影レンズに入射させることができ、これにより光源光束の有効利用を図ることができる。特に、透光部材からの出射光は、その前端出射口での屈折作用によって出射角が大きくなり、投影レンズに入射しにくくなるので、透光部材を、前端出射口から後方へ向けて略錐体状に拡がるように形成しておくことが極めて効果的である。
【0031】
また、光学部材による発光素子からの光の収束度合を適当に調整することにより、前端出射口に形成される光源像の光度分布を木目細かく制御することができ、これにより配光パターンの光度分布についても木目細かく制御することができる。
【0032】
この場合において「透光部材」は、前端出射口から後方へ向けて略錐体状に拡がるように形成された透明体であれば、その具体的な断面形状や拡がり度合等は特に限定されるものではない。また「光学部材」の具体的な構成は特に限定されるものではなく、例えばリフレクタやレンズ等が採用可能であり、さらに、この「光学部材」は、透光部材と別体で形成されたものであってもよいし一体で形成されたものであってもよい。
【0033】
上記構成において、各光源ユニットにおける導光部材の前端出射口をいずれも略矩形状に形成した上で、これら各前端出射口の左右幅を、光軸から離れた位置にある前端出射口ほど大きい値に設定すれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0034】
すなわち、車両前方に配置された仮想鉛直スクリーン上において、対向車は、自車に近づくに従って灯具正面方向から左右いずれかの方向(例えば左側通行であれば右方向)に変位し、その変位の度合は自車に近づくに従って徐々に大きくなる。
【0035】
そこで、略矩形状に形成された前端出射口の左右幅を、光軸から離れた位置にあるものほど大きい値に設定するようにすれば、各光源ユニットの点消灯を等時間間隔あるいはこれに近い時間間隔で行うことによっても、対向車の位置に形成されるべき配光パターンのみを順次形成しないようにすることができ、これにより点消灯制御を簡易なものとすることができる。
【0036】
また、このような構成とすることにより、車両前方路面における遠距離領域を照射する配光パターンを、左右幅が小さくて非常に明るい配光パターンとすることができるとともに、車両前方路面における近距離領域を照射する配光パターンを、左右幅が大きくてやや明るい配光パターンとすることができ、これにより車両前方路面を適正な明るさで照射して、その視認性を一層高めることができる。
【0037】
本願発明に係る灯具ユニットを備えた車両用前照灯の構成として、複数の光源ユニットが光軸の左右両側に跨るように配置されるとともに、これら各光源ユニットにおける導光部材の前端出射口がいずれも略矩形状に形成された構成とし、そして、これら各前端出射口の左右幅および各前端出射口相互間の隙間の左右幅が、光軸から離れた位置にあるものほど大きい値に設定されるとともに光軸に関して左右対称の位置関係となるように設定された灯具ユニットと、この灯具ユニットに対して光軸に関して左右対称の形状を有する灯具ユニットとを備えた構成とした上で、これら各灯具ユニットが、その光軸の向きを互いに揃えるようにして配置された構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0038】
すなわち、一方の灯具ユニットからの照射光により形成されるユニット配光パターンを構成する各配光パターン相互間の隙間に、他方の灯具ユニットからの照射光により形成されるユニット配光パターンを構成する各配光パターンが嵌め込まれるようにすることができる。そしてこれにより、対向車の位置に形成されるべき配光パターンのみを順次形成しないようにするための点消灯制御を簡易なものとした上で、これら2つの灯具ユニットからの照射光により形成される2つのユニット配光パターンを合成した配光パターンとして形成される灯具配光パターンあるいはその一部の配光パターンを、暗部のない一連の横長配光パターンとして形成することができる。
【0039】
一方、本願発明に係る灯具ユニットを備えた車両用前照灯の構成として、各光源ユニットにおける導光部材の前端出射口がいずれも略同一サイズの略矩形状に形成された灯具ユニットを2つ備えた構成とした上で、これら各灯具ユニットが、その光軸の向きを互いに水平方向に所定角度ずらすようにして配置された構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0040】
すなわち、本願発明に係る灯具ユニットは、その各光源ユニットにおける導光部材の前端出射口が互いに密着するようにして配置されていない場合には、その各光源ユニットにより形成される配光パターン相互間に隙間が形成されることとなる。
【0041】
そこで、各光源ユニットにおける導光部材の前端出射口がいずれも略同一サイズの略矩形状に形成された灯具ユニットを2つ備えた構成とした上で、これら各灯具ユニットを、その光軸の向きを互いに水平方向に所定角度ずらすようにして配置することにより、一方の灯具ユニットからの照射光により形成されるユニット配光パターンを構成する各配光パターン相互間の隙間を、他方の灯具ユニットからの照射光により形成されるユニット配光パターンを構成する各配光パターンによって覆うことができる。そしてこれにより、これら2つの灯具ユニットからの照射光により形成される2つのユニット配光パターンをさらに合成した配光パターンとして形成される灯具配光パターンあるいはその一部の配光パターンを、暗部のない一連の配光パターンとして形成することができる。
【0042】
この場合において、水平方向にずらす際の「所定角度」は、各灯具ユニットからの照射光により形成されるユニット配光パターンを構成する各配光パターン相互間の隙間が、互いに重ならないように設定された角度であれば、その具体的な値は特に限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0044】
図1は、本願発明の第1実施形態に係る車両用前照灯10を示す正面図である。
【0045】
同図に示すように、本実施形態に係る車両用前照灯10は、ランプボディ12と、このランプボディ12の前端開口部に取り付けられた素通し状の透光カバー14とで形成される灯室内に、2つの灯具ユニット20L、20Rが収容された構成となっている。
【0046】
この車両用前照灯10においては、2つの灯具ユニット20L、20Rからの照射光により、図5に示すような付加配光パターンPAを形成するようになっている。この付加配光パターンPAは、他の灯具ユニット(図示せず)からの照射光により形成される通常のロービーム用配光パターンPLに対して、付加的に形成されるようになっている。
【0047】
そして、このように付加配光パターンPAをロービーム用配光パターンPLに対して付加的に形成することにより、ハイビーム用配光パターンPHを形成するとともに、この付加配光パターンPAの一部を選択的にロービーム用配光パターンPLに対して付加的に形成することにより、車両前方路面の視認性を高めた特殊なロービーム用配光パターンを形成するようになっている。その詳細については後述する。
【0048】
図1に示すように、2つの灯具ユニット20L、20Rは、いずれもプロジェクタ型の灯具ユニットであって、両者は互いに左右対称の形状を有している。そして、これら各灯具ユニット20L、20Rは、その光軸Axの向きを互いに揃えるようにして(すなわち互いに平行に延びるようにして)配置されている。そこで、一方の灯具ユニット20Rについて、その具体的な構成を説明する。
【0049】
図2は、この灯具ユニット20Rを単品で示す正面図である。また、図3は、図2のIII-III 線断面図であり、図4は、図3のIV-IV 線断面図である。
【0050】
これらの図に示すように、この灯具ユニット20Rは、車両前後方向に延びる光軸Ax上に配置された投影レンズ22と、この投影レンズ22の後側焦点Fを含む焦点面である後側焦点面よりも後方側に配置された4つの光源ユニット24A、24B、24C、24Dと、これら投影レンズ22および4つの光源ユニット24A、24B、24C、24Dを固定支持するホルダ26とを備えた構成となっている。
【0051】
投影レンズ22は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、その後側焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影するようになっている。
【0052】
4つの光源ユニット24A、24B、24C、24Dは、それぞれ発光素子32と導光部材34A、34B、34C、34Dとからなり、光軸Axの左右両側に跨るように配置されている。その際、右端部(灯具ユニット正面視では左端部)に光源ユニット24Aが位置しており、その左隣りに光源ユニット24Bが配置されており、さらにその左隣りに光源ユニット24Cが配置されており、左端部に光源ユニット24Dが配置されている。そして、光軸Axは、右から3番目に位置する光源ユニット24Cの右端部近傍を通るようにして延びている。
【0053】
各光源ユニット24A、24B、24C、24Dの発光素子32は、いずれも同じ構成を有する白色発光ダイオードであって、1mm角程度の正方形の発光面を有する発光チップ32aと、この発光チップ32aを支持する基板32bとからなっている。その際、光源となる発光チップ32aは、その発光面を覆うように形成された薄膜により封止されている。
【0054】
これら各発光素子32は、その基板32bにおいて金属製の支持プレート40にそれぞれ固定支持されている。そして、これら各支持プレート40は、導光部材34A、34B、34C、34Dにそれぞれ固定支持されている。
【0055】
各光源ユニット24A、24B、24C、24Dの導光部材34A、34B、34C、34Dは、いずれも矩形状の前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daを有している。そして、これら各光源ユニット24A、24B、24C、24Dにおいては、各発光素子32からの光を各前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daまで導いて該前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daから前方へ向けて出射させるようになっている。
【0056】
これら各光源ユニット24A、24B、24C、24Dにおける導光部材34A、34B、34C、34Dの前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daは、投影レンズ22の後側焦点面上において水平方向に互いに隣接するようにして配置されている。その際、これら4つの前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daは、その上下幅については、いずれも4mmに設定されているが、その左右幅については、光軸Axから離れた位置にある前端出射口ほど大きい値に設定されている。
【0057】
すなわち、これら4つの前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daは、右から3番目に位置する前端出射口34Caが光軸Axに最も近く、右から2番目に位置する前端出射口34Ba、左端部に位置する前端出射口34Da、右端部に位置する前端出射口34Aaの順で、光軸Axから少しずつ離れるようにして配置されている。そして、光軸Axに最も近い位置にある前端出射口34Caおよび次に近い位置にある前端出射口34Baの左右幅は、いずれも2mmに設定されており、光軸Axからやや離れた位置にある前端出射口34Daの左右幅は、4mmに設定されており、光軸Axから最も離れた位置にある前端出射口34Aaの左右幅は、12mmに設定されている。
【0058】
その際、前端出射口34Caは、その右側面が光軸Axを含む鉛直面上に位置するように形成されており、前端出射口34Baは、前端出射口34Caから右側に2mm離れた位置に形成されており、前端出射口34Daは、前端出射口34Caから左側に2mm離れた位置に形成されており、前端出射口34Aaは、前端出射口34Baから右側に4mm離れた位置に形成されている。そしてこれにより、各前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daの左右幅と、これら各前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Da相互間の隙間の左右幅とが、光軸Axを含む鉛直面に関して左右対称の位置関係となるように設定されている。
【0059】
また、4つの前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daは、いずれも光軸Axを含む水平面上に対してやや下方寄りの位置に形成されている。具体的には、これら各前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daは、その上下方向の中心位置が光軸Axを含む水平面に対して1mm程度下方に位置するように形成されている。
【0060】
各光源ユニット24A、24B、24C、24Dの導光部材34A、34B、34C、34Dは、その前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daから後方へ向けて略錐体状に拡がるように形成されるとともに内周面に鏡面処理が施された筒状部材36A、36B、36C、36Dと、この筒状部材36A、36B、36C、36Dの後端部近傍に配置され、発光素子32からの光を前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daへ向けて収束させる制御を行う光学部材としてのリフレクタ38A、38B、38C、38Dとを、それぞれ備えてなっている。
【0061】
4つの筒状部材36A、36B、36C、36Dは、単一のブロック36として一体的に形成されている。そして、このように4つの筒状部材36A、36B、36C、36Dを単一のブロック36として一体的に形成することにより、各前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Da相互間の隙間を、該ブロック36の前面壁36aにより精度良く確保するようになっている。このブロック36は、その前面壁36aの下端面およびその後端部に形成された位置決め片36bにおいてホルダ26に位置決め支持されている。
【0062】
なお、このブロック36の構成として、各筒状部材36A、36B、36C、36Dの上面壁を構成する部分を、それ以外のブロック本体部分とは別体で形成しておき、これをブロック本体部分に取り付ける構成とすることも可能である。このようにすることにより、ブロック36の成形性を向上させて、その製造を容易化することができる。
【0063】
4つのリフレクタ38A、38B、38C、38Dは、いずれも回転楕円面に近い曲面からなる反射面を有している。
【0064】
そして、右端部に位置するリフレクタ38Aは、その右側に略左向きで配置された発光素子32からの光を、平行光に近い収束光として前端出射口34Aaへ向けて反射させるようになっている。また、右から2番目に位置するリフレクタ38Bは、その上方側に略下向きで配置された発光素子32からの光を、前端出射口34Baの近傍において収束する収束光として前端出射口34Baへ向けて反射させるようになっている。同様に、右から3番目に位置するリフレクタ38Cは、その上方側に略下向きで配置された発光素子32からの光を、前端出射口34Caの近傍において収束する収束光として前端出射口34Caへ向けて反射させるようになっている。そして、左端部に位置するリフレクタ38Dは、その前方側に略後ろ向きで配置された発光素子32からの光を、筒状部材36Dにおける光軸Ax側の側面壁内面へ向けて収束光として反射させ、この側面壁内面で正反射させることにより前端出射口34Daのやや前方において収束させるようになっている。
【0065】
その際、右から2番目および3番目に位置するリフレクタ38B、38Cは、その反射光を前端出射口34Ba、34Caの上端縁近傍において収束させるように、その反射面形状が設定されている。そしてこれにより、前端出射口34Ba、34Caを通過する反射光の光束密度が、その上端縁近傍において相対的に高くなるようにしている。また、これら各リフレクタ38B、38Cからの反射光は、その一部が筒状部材36B、36Cの上面壁内面において90°近い反射角で正反射するので、前端出射口34Ba、34Caの上端縁近傍を通過する反射光の光束密度はさらに高いものとなる。
【0066】
一方、右端部に位置するリフレクタ38Aおよび左端部に位置するリフレクタ38Dは、前端出射口34Aa、34Daを通過する反射光の光束密度が、略均一になるように、その反射面形状が設定されている。
【0067】
図5は、本実施形態に係る灯具ユニット20L、20Rから前方へ照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される付加配光パターンPAを、他の灯具ユニットからの照射光により形成されるロービーム用配光パターンPLと共に透視的に示す図である。
【0068】
この付加配光パターンPAについて説明する前に、ロービーム用配光パターンPLについて説明する。
【0069】
同図に示すように、このロービーム用配光パターンPLは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁に左右段違いのカットオフラインCL1、CL2、CL3を有している。
【0070】
このカットオフラインCL1、CL2、CL3は、灯具正面方向の消点であるH−Vを通る鉛直線であるV−V線を境にして左右段違いで水平方向に延びており、V−V線よりも右側が、対向車線側カットオフラインCL1として水平方向に延びるようにして形成されるとともに、V−V線よりも左側が、自車線側カットオフラインCL2として対向車線側カットオフラインCL1よりも段上がりで水平方向に延びるようにして形成されている。そして、この自車線側カットオフラインCL2におけるV−V線寄りの端部は、斜めカットオフラインCL3として形成されている。この斜めカットオフラインCL3は、対向車線側カットオフラインCL1とV−V線との交点から左斜め上方へ15°の傾斜角で延びている。
【0071】
このロービーム用配光パターンPLにおいて、対向車線側カットオフラインCL1とV−V線との交点であるエルボ点Eは、H−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置しており、このエルボ点Eをやや左寄りに囲むようにして高光度領域であるホットゾーンHZが形成されている。
【0072】
付加配光パターンPAは、灯具ユニット20Lからの照射光により形成されるユニット配光パターンPALと、灯具ユニット20Rからの照射光により形成されるユニット配光パターンPARとの合成配光パターンとして形成されるようになっている。
【0073】
これら2つのユニット配光パターンPAL、PARは、上述したように、2つの灯具ユニット20L、20Rが、互いに左右対称の形状を有しており、かつ、その光軸Axの向きを互いに揃えるようにして配置されているので、V−V線に関して左右対称の位置関係で形成される。そこで、まず、一方のユニット配光パターンPARについて説明する。
【0074】
このユニット配光パターンPARは、4つの光源ユニット24A、24B、24C、24Dからの光によって水平方向に並列的に形成される4つの配光パターンR1、R2、R3、R4の集合体として形成されるようになっている。
【0075】
これら4つの配光パターンR1、R2、R3、R4は、投影レンズ22の後側焦点面上において水平方向に離散的に配置された4つの前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daの反転投影像として、いずれも略矩形形状で水平方向に離散的に形成される。その際、上記仮想鉛直スクリーン上においては、投影レンズ22の後側焦点面上の1mm四方の大きさの像が、1°四方程度の大きさの像として形成されるようになっている。
【0076】
各前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daは、その上下方向の中心位置が光軸Axを含む水平面に対して1mm程度下方に位置しているので、各配光パターンR1、R2、R3、R4は、その上下方向の中心位置をH−Vを通る水平線であるH−H線に対して1°程度上方寄りに位置させるようにして形成される。
【0077】
一方、これら各配光パターンR1、R2、R3、R4は、水平方向に関しては次のように形成される。
【0078】
すなわち、前端出射口34Caは、上下幅4mm左右幅2mmの矩形形状を有しており、その右側面が光軸Axを含む鉛直面上に位置するようにして形成されているので、この前端出射口34Caの反転投影像としての配光パターンR3は、その左側面がV−V線上に位置するようにして、上下幅4°左右幅2°程度の略矩形形状で形成される。
【0079】
前端出射口34Baは、上下幅4mm左右幅2mmの矩形形状を有しており、前端出射口34Caから右側に2mm離れた位置に形成されているので、この前端出射口34Baの反転投影像としての配光パターンR2は、配光パターンR3の左側に該配光パターンR3の左右幅と同じ間隔(すなわち2°程度の間隔)をおいて、上下幅4°左右幅2°程度の略矩形形状で形成される。
【0080】
前端出射口34Daは、上下幅4mm左右幅4mmの矩形形状を有しており、前端出射口34Caから左側に2mm離れた位置に形成されているので、この前端出射口34Daの反転投影像としての配光パターンR4は、配光パターンR3の右側に配光パターンR2の左右幅(および配光パターンR3の左右幅)と同じ間隔(すなわち2°程度の間隔)をおいて上下幅4°左右幅4°程度の略矩形形状で形成される。
【0081】
前端出射口34Aaは、上下幅4mm左右幅12mmの矩形形状を有しており、前端出射口34Baから右側に4mm離れた位置に形成されているので、この前端出射口34Aaの反転投影像としての配光パターンR1は、配光パターンR2の左側に配光パターンR4の左右幅と略同じ間隔(すなわち4°程度の間隔)をおいて、上下幅4°左右幅12°程度の略矩形形状で形成される。
【0082】
その際、右から2番目および3番目に位置する光源ユニット24B、24Cにおいては、その前端出射口34Ba、34Caを通過する反射光の光束密度が、その上端縁近傍において相対的に高くなるように設定されているので、その反転投影像としての配光パターンR2、R3は、その下端縁近傍の光度が高い配光パターンとして形成される。
【0083】
これに対し、右端部に位置する光源ユニット24Aおよび左端部に位置する光源ユニット24Dにおいては、その前端出射口34Aa、34Daを通過する反射光の光束密度が略均一になるように設定されているので、その反転投影像としての配光パターンR1、R4は、略均一の光度分布を有する配光パターンとして形成される。
【0084】
上述したように、もう一方のユニット配光パターンPALは、このユニット配光パターンPARに対して、V−V線に関して左右対称の位置関係で形成される。
【0085】
すなわち、このユニット配光パターンPALは、灯具ユニット20Lにおける4つの光源ユニット24A、24B、24C、24Dからの光によって水平方向に並列的に形成される4つの配光パターンL1、L2、L3、L4の集合体として形成されるが、その際、これら各配光パターンL1、L2、L3、L4は、ユニット配光パターンPARにおける各配光パターンR1、R2、R3、R4に対して、それぞれV−V線に関して左右対称の位置関係で形成される。
【0086】
その結果、ユニット配光パターンPARを構成する各配光パターンR1、R2、R3、R4相互間の隙間に、ユニット配光パターンPALを構成する各配光パターンL1、L2、L3、L4が正確に嵌め込まれるようにして形成され、これにより付加配光パターンPAは、暗部のない一連の横長配光パターンとして形成されることとなる。
【0087】
この付加配光パターンPAは、その上下方向の中心位置がH−H線に対して1°程度上方寄りに位置しているので、その下端縁はH−H線に対して1°程度上方寄りに位置することとなり、これによりロービーム用配光パターンPLの対向車線側カットオフラインCL1と僅かに重複するように形成されることとなる。
【0088】
また、この付加配光パターンPAは、V−V線近傍に位置する配光パターンL2、R2、L3、R3が、その下端縁近傍の光度が高い配光パターンとして形成されるので、H−H近傍領域が特に明るくなる。
【0089】
したがって、この付加配光パターンPAとロービーム用配光パターンPLとの合成加配光パターンとして形成されるハイビーム用配光パターンPHは、H−V近傍にホットゾーンを有する遠方視認性に優れた配光パターンとなる。
【0090】
このように本実施形態においては、付加配光パターンPAを、これを構成する8つの配光パターンL1、L2、L3、L4、R1、R2、R3、R4をすべて形成した状態で、ロービーム用配光パターンPLに対して付加的に形成することにより、ハイビーム用配光パターンPHを形成するようになっているが、それ以外にも、この付加配光パターンPAの一部を選択的にロービーム用配光パターンPLに対して付加的に形成することにより(換言すれば、付加配光パターンPAの一部を形成しないようにすることにより)、車両前方路面の視認性を高めた特殊なロービーム用配光パターンを形成するようになっている。
【0091】
以下、この特殊なロービーム用配光パターンを形成する際の点灯制御の内容について説明する。
【0092】
図6は、この点灯制御の内容を説明するために、図5の一部を拡大して示す図である。
【0093】
同図(a)に示すように、車両前方路面の対向車線を走行する対向車2が存在し、この対向車2がまだ遠方にあるときには、灯具ユニット20Rの光源ユニット24Cのみを消灯することにより、付加配光パターンPAを構成する8つの配光パターンL1、L2、L3、L4、R1、R2、R3、R4のうち、対向車2の位置に形成されるべき配光パターンR3のみを形成しないようにする。
【0094】
その後、同図(b)に示すように、対向車2がある程度自車に近づいてきたら、灯具ユニット20Lの光源ユニット24Bを消灯するとともに、灯具ユニット20Rの光源ユニット24Cを点灯することにより、付加配光パターンPAを構成する8つの配光パターンL1、L2、L3、L4、R1、R2、R3、R4のうち、対向車2の位置に形成されるべき配光パターンL2のみを形成しないようにする。
【0095】
その後、同図(c)に示すように、対向車2がさらに自車に近づいてきたら、灯具ユニット20Rの光源ユニット24Dを消灯するとともに、灯具ユニット20Lの光源ユニット24Bを点灯することにより、付加配光パターンPAを構成する8つの配光パターンL1、L2、L3、L4、R1、R2、R3、R4のうち、対向車2の位置に形成されるべき配光パターンR4のみを形成しないようにする。
【0096】
その後、対向車2が、同図(c)に示す位置よりもさらに自車に近づいてきたら、灯具ユニット20Lの光源ユニット24Aを消灯するとともに、灯具ユニット20Rの光源ユニット24Dを点灯することにより、付加配光パターンPAを構成する8つの配光パターンL1、L2、L3、L4、R1、R2、R3、R4のうち、対向車2の位置に形成されるべき配光パターンL1のみを形成しないようにする。
【0097】
そしてこのように、対向車2の位置に形成されるべき配光パターンのみを順次形成しないように灯具ユニット20L、20Rにおける各光源ユニットの点消灯制御を行うことにより、対向車ドライバにグレアを与えてしまうことなく車両前方路面の視認性を十分に高めるようにする。
【0098】
なお、車両前方路面の対向車線を走行する対向車2の、上記仮想鉛直スクリーン上における水平方向の位置検出は、例えば、CCDカメラ等により車両前方の風景画像を撮像し、その撮像データに基づいて対向車2の点灯状態にある前照灯の位置を高濃度の画素として検出すること等により、簡易に行うことが可能である。
【0099】
以上詳述したように、本実施形態に係る車両用前照灯10においては、その灯具ユニット20L、20Rが、車両前後方向に延びる光軸Ax上に配置された投影レンズ22と、その後側焦点面よりも後方側に配置された4つの光源ユニット24A、24B、24C、24Dとを備えているが、その際、各光源ユニット24A、24B、24C、24Dは、発光素子32と、矩形形状の前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daを有し、発光素子32からの光をこの前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daまで導いて該前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daから前方へ向けて出射させる導光部材34A、34B、34C、34Dとを備えており、そして、これら各光源ユニット24A、24B、24C、24Dは、その導光部材34A、34B、34C、34Dの前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daを投影レンズ22の後側焦点面上において水平方向に互いに隣接させるようにして配置されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0100】
すなわち、各光源ユニット24A、24B、24C、24Dからの出射光は、その導光部材34A、34B、34C、34Dの前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daまで導かれた発光素子32からの光によって構成されることとなるが、この前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daに到達するまでの間に、導光部材34A、34B、34C、34Dの光学的な作用によって、発光素子32からの光は、その分布が均一化し、あるいは特定の分布を有するものとなる。そして、これら各光源ユニット24A、24B、24C、24Dにおける導光部材34A、34B、34C、34Dの前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daは、投影レンズ22の後側焦点面上に位置しているので、その発光素子32からの光により投影レンズ22の後側焦点面上に形成される光源像は、略均一な明るさを有する像あるいは特定の光度分布を有する像となる。したがって、この後側焦点面上の各光源像の反転投影像として形成される各配光パターンR1、R2、R3、R4も、略均一な明るさを有する配光パターンあるいは特定の光度分布を有する配光パターンとなる。
【0101】
その際、投影レンズ22の後側焦点面上に形成される各光源像は、各光源ユニット24A、24B、24C、24Dにおける導光部材34A、34B、34C、34Dの前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daの開口形状と同じ輪郭を有しているので、その反転投影像として形成される配光パターンR1、R2、R3、R4も明瞭な輪郭を有するものとなる。
【0102】
このように本実施形態によれば、4つの光源ユニット24A、24B、24C、24Dの各々からの光によって形成される配光パターンR1、R2、R3、R4を、明瞭な輪郭を有するとともに略均一な明るさあるいは特定の光度分布を有するものとすることができる。
【0103】
しかも、本実施形態に係る灯具ユニット20Rは、その各光源ユニット24A、24B、24C、24Dにおける導光部材34A、34B、34C、34Dとして、その前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daから後方へ向けて略錐体状に拡がるように形成されるとともに内周面に鏡面処理が施された筒状部材36A、36B、36C、36Dと、この筒状部材36A、36B、36C、36Dの後端部近傍に配置され、発光素子32からの光をこの筒状部材36A、36B、36C、36Dの前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daへ向けて収束させる制御を行う光学部材としてのリフレクタ38A、38B、38C、38Dとを備えているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0104】
すなわち、各光源ユニット24A、24B、24C、24Dにおいて、その発光素子32からの光を、リフレクタ38A、38B、38C、38Dによる収束制御および筒状部材36A、36B、36C、36Dの内周面での反射制御により効率良く前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daに導くことができ、かつ、この前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daからの出射光を効率良く投影レンズ22に入射させることができ、これにより光源光束の有効利用を図ることができる。
【0105】
また、各リフレクタ38A、38B、38C、38Dによる発光素子32からの光の収束度合を適当に調整することにより、前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daに形成される光源像の光度分布を木目細かく制御することができ、これにより各配光パターンR1、R2、R3、R4の光度分布についても木目細かく制御することができる。
【0106】
すなわち、右から2番目および3番目に位置する光源ユニット24B、24Cにおいては、その前端出射口34Ba、34Caを通過する反射光の光束密度が、その上端縁近傍において相対的に高くなるように設定されているので、その反転投影像としての配光パターンR2、R3を、その下端縁近傍の光度が高い配光パターンとして形成することができる。一方、右端部に位置する光源ユニット24Aおよび左端部に位置する光源ユニット24Dにおいては、その前端出射口34Aa、34Daを通過する反射光の光束密度が略均一になるように設定されているので、その反転投影像としての配光パターンR1、R4を、略均一の光度分布を有する配光パターンとして形成することができる。
【0107】
そして、本実施形態に係る車両用前照灯10においては、これを構成する2つの灯具ユニット20L、20Rが、互いに左右対称の形状を有しており、その光軸Axの向きを互いに揃えるようにして配置されているので、これら各灯具ユニット20L、20Rからの照射光によって形成されるユニット配光パターンPAL、PARは、V−V線に関して左右対称の位置関係で形成されるが、その際、ユニット配光パターンPALを構成する4つの配光パターンL1、L2、L3、L4とユニット配光パターンPARを構成する4つの配光パターンR1、R2、R3、R4とが、各配光パターンR1、R2、R3、R4相互間の隙間に各配光パターンL1、L2、L3、L4が正確に嵌め込まれるようにして形成されるので、付加配光パターンPAを暗部のない一連の横長配光パターンとして形成することができる。
【0108】
しかも、この付加配光パターンPAは、V−V線近傍に位置する配光パターンL2、R2、L3、R3が、その下端縁近傍の光度が高い配光パターンとして形成されるので、H−H近傍領域が特に明るくなり、したがって、この付加配光パターンPAとロービーム用配光パターンPLとの合成加配光パターンとして形成されるハイビーム用配光パターンPHを、H−V近傍にホットゾーンを有する遠方視認性に優れた配光パターンとすることができる。
【0109】
さらに本実施形態においては、この付加配光パターンPAを構成する8つの配光パターンL1、L2、L3、L4、R1、R2、R3、R4のうち、対向車2の位置に形成されるべき配光パターンのみを順次形成しない点灯制御を行うことにより、特殊なロービーム用配光パターンを形成するようになっているので、これにより対向車ドライバにグレアを与えてしまうことなく車両前方路面の視認性を高めることができる。
【0110】
その際、各灯具ユニット20L、20Rは、その各光源ユニット24A、24B、24C、24Dにおける導光部材34A、34B、34C、34Dの前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daの左右幅が、それぞれ2mm、2mm、4mm、12mmと光軸Axから離れた位置にある前端出射口ほど大きい値に設定されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0111】
すなわち、車両前方に配置された仮想鉛直スクリーン上において、左側通行で走行する対向車は、自車に近づくに従って灯具正面方向から右方向へ変位し、その変位の度合は自車に近づくに従って徐々に大きくなる。
【0112】
そこで、略矩形状に形成された前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daの左右幅を、光軸Axから離れた位置にあるものほど大きい値に設定するようにすれば、各光源ユニット24A、24B、24C、24Dの点消灯を等時間間隔あるいはこれに近い時間間隔で行うことによっても、対向車の位置に形成されるべき配光パターンのみを順次形成しないようにすることができ、これにより点消灯制御を簡易なものとすることができる。
【0113】
しかも、このような構成とすることにより、車両前方路面における遠距離領域を照射する配光パターンR3、L3および配光パターンR2、L2を、左右幅が小さくて非常に明るい配光パターンとすることができるとともに、車両前方路面における中距離領域を照射する配光パターンR4、L4を、左右幅がやや大きくてある程度明るい配光パターンとすることができ、さらに、車両前方路面における近距離領域を照射する配光パターンをR1、L1を、左右幅が大きくてやや明るい配光パターンとすることができ、これにより車両前方路面を適正な明るさで照射して、その視認性を一層高めることができる。
【0114】
なお、上記第1実施形態においては、発光素子32の発光チップ32aが、1×1mm角程度の正方形の発光面を有しているものとして説明したが、これ以外の形状や大きさの発光面を有する構成とすることももちろん可能である。
【0115】
また、上記第1実施形態においては、各光源ユニット24A、24B、24C、24Dにおける導光部材34A、34B、34C、34Dの前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daが、投影レンズ22の後側焦点面上に配置されているものとして説明したが、各灯具ユニット20L、20Rの構成を簡素化するために、投影レンズ22の後側焦点Fを含む焦平面上に配置されるようにした場合においても、上記第1実施形態の略同様の作用効果を得ることができる。
【0116】
すなわち、このようした場合には、投影レンズ22の後側焦点面上に形成される各光源像の輪郭が、前端出射口34Aa、34Ba、34Ca、34Daの輪郭とは若干異なったものとなり、その反転投影像として形成される配光パターンのうち、V−V線から離れた位置に形成されるL1、R1は、多少不明瞭なものとなるが、V−V線からさほど離れていない位置に形成されるL4、R4は、僅かに不明瞭なものとなる程度であり、V−V線近傍に位置する配光パターンL2、R2、L3、R3は、略明瞭なものとなる。したがって、車両前方路面における遠距離領域を照射する配光パターンR3、L3および配光パターンR2、L2の輪郭は、略明瞭なものとなり、車両前方路面における中距離領域を照射する配光パターンR4、L4の輪郭も、僅かに不明瞭なものとなる程度であり、車両前方路面における近距離領域を照射する配光パターンをR1、L1の輪郭が、多少不明瞭なものとなるに過ぎず、実用上支障が生じることはない。
【0117】
さらに、上記第1実施形態においては、各灯具ユニット20L、20Rが、4つの光源ユニット24A、24B、24C、24Dを備えているものとして説明したが、複数の光源ユニットを備えていれば、これ以外の個数に設定されている場合であっても、上記第1実施形態の同様の構成を採用することによりこれと同様の作用効果を得ることができる。
【0118】
図7は、上記実施形態の灯具ユニット120Rの変形例に係る灯具ユニット120Rを示す、図2と同様の図である。
【0119】
同図に示すように、本変形例に係る灯具ユニット120Rの基本的な構成は、上記実施形態の灯具ユニット20Rと同様であるが、その4つの光源ユニット124A、124B、124C、124Dにおける導光部材134A、134B、134C、134Dの構成が、上記実施形態の場合と異なっている。
【0120】
すなわち、本変形例の導光部材134A、134B、134C、134Dは、その前端出射口134Aa、134Ba、134Ca、134Daから後方へ向けて略錐体状に拡がるように形成された透光部材136A、136B、136C、136Dと、この透光部材の後端部近傍に配置され、発光素子32からの光を前端出射口134Aa、134Ba、134Ca、134Daへ向けて収束させる制御を行う光学部材としてのリフレクタ138A、138B、138C、138Dとを、それぞれ備えてなっている。
【0121】
その際、これら各導光部材134A、134B、134C、134Dは、無色透明の樹脂ブロックで形成されている。そして、各透光部材136A、136B、136C、136Dは、その外周面形状が、上記実施形態の筒状部材36A、36B、36C、36Dの内周面形状と同じ形状に設定されている。また、各リフレクタ138A、138B、138C、138Dの反射面は、上記樹脂ブロックの表面に鏡面処理を施すことにより形成されており、その反射面形状は上記実施形態のリフレクタ38A、38B、38C、38Dの反射面形状と同じ形状に設定されている。
【0122】
この灯具ユニット120Rにおいても、上記実施形態の場合と同様、各光源ユニット124A、124B、124C、124Dにおける発光素子32からの光を、リフレクタ38A、38B、38C、38Dによる収束反射制御および透光部材136A、136B、136C、136Dの外周面での全反射による内面反射制御により効率良く前端出射口134Aa、134Ba、134Ca、134Daに導くことができ、かつ、この前端出射口134Aa、134Ba、134Ca、134Daからの出射光を効率良く投影レンズ22に入射させることができ、これにより光源光束の有効利用を図ることができる。
【0123】
特に、透光部材136A、136B、136C、136Dからの出射光は、その前端出射口134Aa、134Ba、134Ca、134Daでの屈折作用によって出射角が大きくなり、投影レンズ22に入射しにくくなるので、透光部材136A、136B、136C、136Dを、前端出射口134Aa、134Ba、134Ca、134Daから後方へ向けて略錐体状に拡がるように形成しておくことが極めて効果的である。
【0124】
なお、本変形例に係る灯具ユニット120Rと左右対称の形状を有する灯具ユニットを、上記実施形態に係る灯具ユニット20Lの代わりに用いることももちろん可能である。
【0125】
本変形例に係る灯具ユニット120Rのように、各導光部材134A、134B、134C、134Dを樹脂ブロックで形成するようにした場合には、その前端出射口134Aa、134Ba、134Ca、134Daを互いに密着させるようにして配置することも可能である。
【0126】
その際、この灯具ユニット120Rにおいて、光軸Axの右側に配置された2つの導光部材134A、134Bを光軸Axの左側へ移動させて、その導光部材134Bの前端出射口134Baを、前端出射口134Caと前端出射口134Dとの間に配置するとともに、その導光部材134Aの前端出射口134Aaを、前端出射口134Dの左隣りに配置するようにすれば、この灯具ユニット120R単独で、図5の付加配光パターンPAにおいてV−V線の右側に形成される4つの配光パターンR3、L2、R4、L1を形成することができる。
【0127】
次に、本願発明の第2実施形態について説明する。
【0128】
図8は、本実施形態に係る車両用前照灯210を示す正面図である。
【0129】
同図に示すように、本実施形態に係る車両用前照灯210は、その基本的な構成は、上記第1実施形態に係る車両用前照灯10と同様であるが、その灯室内に収容された2つの灯具ユニット220L、220Rにおける4つの光源ユニット224A、224B、224C、224Dの構成および両灯具ユニット220L、220Rの光軸AxL、AxRの向きが、上記実施形態の場合と異なっている。
【0130】
すなわち、本実施形態においては、2つの灯具ユニット220L、220Rとして同一の構成を有する灯具ユニットが用いられている。そして、左側に位置する灯具ユニット220Lは、その光軸AxLが車両前方へ向けてやや右向き(具体的には1.5°程度右向き)に延びるようにして配置されており、右側に位置する灯具ユニット220Rは、その光軸AxRが車両前方へ向けてやや左向き(具体的には1.5°程度左向き)に延びるようにして配置されている。
【0131】
これら各灯具ユニット220L、220Rを構成する各光源ユニット224A、224B、224C、224Dは、上記実施形態の場合と同様、その導光部材の前端出射口234Aa、234Ba、234Ca、234Daが矩形状に形成されているが、これら4つの前端出射口234Aa、234Ba、234Ca、234Daがすべて同一サイズで形成されている点で、上記実施形態の場合と異なっている。
【0132】
すなわち、これら各前端出射口234Aa、234Ba、234Ca、234Daは、その左右幅が8mmに設定されており、各々2mm間隔をおいて形成されている。そして、前端出射口234Baと前端出射口234Caとの中央に光軸AxL、AxRが位置している。なお、これら各前端出射口234Aa、234Ba、234Ca、234Daは、その上下幅が4mmに設定されており、その上下方向の中心位置が光軸AxL、AxRを通る水平面に対して1mm程度下方に位置している点は、上記実施形態の場合と同様である。
【0133】
図9は、本実施形態に係る灯具ユニット220L、220Rから前方へ照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される付加配光パターンPBを、他の灯具ユニットからの照射光により形成されるロービーム用配光パターンPLと共に透視的に示す図である。
【0134】
この付加配光パターンPBは、灯具ユニット220Lからの照射光により形成されるユニット配光パターンPBLと、灯具ユニット220Rからの照射光により形成されるユニット配光パターンPBRとの合成配光パターンとして形成されるようになっている。
【0135】
これら2つのユニット配光パターンPBL、PBRは、上述したように、2つの灯具ユニット220L、220Rが、同一の構成を有しているので、同一の形状で形成されるが、左側に位置する灯具ユニット220Lの光軸AxLが1.5°程度右向きに延びるようにして配置されており、右側に位置する灯具ユニット220Rの光軸AxRが1.5°程度左向きに延びるようにして配置されているので、V−V線に関して左右対称の位置関係で形成される。そこで、まず、一方のユニット配光パターンPBRについて説明する。
【0136】
このユニット配光パターンPBRは、灯具ユニット220Rにおける4つの光源ユニット24A、24B、24C、24Dからの光によって水平方向に並列的に形成される4つの配光パターンR1、R2、R3、R4の集合体として形成されるようになっている。
【0137】
これら4つの配光パターンR1、R2、R3、R4は、投影レンズ22の後側焦点面上において水平方向に離散的に配置された4つの前端出射口234Aa、234Ba、234Ca、234Daの反転投影像として、いずれも上下幅4°左右幅8°程度の略矩形形状で水平方向に2°程度の間隔をおいて離散的に形成される。
【0138】
その際、灯具ユニット220Rの光軸AxRは、車両前方へ向けて1.5°程度左向きに延びているので、ユニット配光パターンPBRは、その配光パターンR2と配光パターンR3との隙間の中心線がV−V線の左側1.5°に位置するように形成される。
【0139】
一方、ユニット配光パターンPBLは、このユニット配光パターンPBRに対して、V−V線に関して左右対称の位置関係で形成されるので、これらを合成した付加配光パターンPBにおいては、ユニット配光パターンPBLを構成する4つの配光パターンR1、R2、R3、R4は、ユニット配光パターンPBLを構成する4つの配光パターンL1、L2、L3、L4とが、半ピッチずれた状態で形成される。
【0140】
この付加配光パターンPBは、その上下方向の中心位置がH−H線に対して1°程度上方寄りに位置するように形成され、その下端縁はH−H線に対して1°程度上方寄りに位置し、ロービーム用配光パターンPLの対向車線側カットオフラインCL1と僅かに重複するように形成される。
【0141】
本実施形態においても、この付加配光パターンPBを、これを構成する8つの配光パターンL1、L2、L3、L4、R1、R2、R3、R4をすべて形成して状態で、ロービーム用配光パターンPLに対して付加的に形成することによりハイビーム用配光パターンPHを形成するようになっているが、それ以外にも、この付加配光パターンPBの一部を選択的にロービーム用配光パターンPLに対して付加的に形成することにより(換言すれば、付加配光パターンPAの一部を形成しないようにすることにより)、車両前方路面の視認性を高めた特殊なロービーム用配光パターンを形成するようになっている。
【0142】
以下、この特殊なロービーム用配光パターンを形成する際の点灯制御の内容について説明する。
【0143】
図10は、この点灯制御の内容を説明するために、図9の一部を拡大して示す図である。
【0144】
同図(a)に示すように、車両前方路面の対向車線を走行する対向車2が存在し、この対向車2がまだ遠方にあるときには、灯具ユニット220Lの光源ユニット224Cおよび灯具ユニット220Rの光源ユニット224Cのみを消灯することにより、付加配光パターンPBを構成する8つの配光パターンL1、L2、L3、L4、R1、R2、R3、R4のうち、対向車2の位置に形成されるべき2つの配光パターンL3、R3のみを形成しないようにする。
【0145】
その後、同図(b)に示すように、対向車2がある程度自車に近づいてきたら、灯具ユニット220Lの光源ユニット224Bを消灯するとともに、灯具ユニット220Lの光源ユニット224Cを点灯することにより、付加配光パターンPBを構成する8つの配光パターンL1、L2、L3、L4、R1、R2、R3、R4のうち、対向車2の位置に形成されるべき2つの配光パターンR3、L2のみを形成しないようにする。
【0146】
その後、同図(c)に示すように、対向車2がさらに自車に近づいてきたら、灯具ユニット220Rの光源ユニット224Dを消灯するとともに、灯具ユニット220Rの光源ユニット224Cを点灯することにより、付加配光パターンPBを構成する8つの配光パターンL1、L2、L3、L4、R1、R2、R3、R4のうち、対向車2の位置に形成されるべき2つの配光パターンL2、R4のみを形成しないようにする。
【0147】
その後、対向車2が、同図(c)に示す位置よりもさらに自車に近づいてきたら、灯具ユニット220Lの光源ユニット224Aを消灯するとともに、灯具ユニット220Lの光源ユニット224Bを点灯することにより、付加配光パターンPBを構成する8つの配光パターンL1、L2、L3、L4、R1、R2、R3、R4のうち、対向車2の位置に形成されるべき2つの配光パターンR4、L1のみを形成しないようにする。
【0148】
そしてこのように、対向車2の位置に形成されるべき配光パターンのみを順次形成しないように灯具ユニット220L、220Rにおける各光源ユニットの点消灯制御を行うことにより、対向車ドライバにグレアを与えてしまうことなく車両前方路面の視認性を十分に高めるようにする。
【0149】
本実施形態の構成を採用することにより、次のような作用効果を得ることができる。
【0150】
すなわち、本実施形態に係る車両用前照灯210は、光源ユニット224A、224B、224C、224Dにおける導光部材234A、234B、234C、234Dの前端出射口234Aa、234Ba、234Ca、234Daがいずれも同一サイズの矩形状に形成された灯具ユニット220L、220Rを2つ備えた構成とした上で、これら各灯具ユニット220L、220Rを、その光軸AxL、AxRの向きを互いに水平方向に所定角度ずらすようにして配置されているので、一方の灯具ユニット220Lからの照射光により形成されるユニット配光パターンPBLを構成する各配光パターンL1、L2、L3、L4相互間の隙間を、他方の灯具ユニット220Rからの照射光により形成されるユニット配光パターンPBRを構成する各配光パターンR1、R2、R3、R4によって覆うことができる。そしてこれにより、これら2つの灯具ユニット220L、220Rからの照射光により形成される2つのユニット配光パターンPBL、PBRをさらに合成した配光パターンとして形成される付加配光パターンPBを、暗部のない一連の配光パターンとして形成することができる。
【0151】
また、本実施形態においても、8つの配光パターンL1、L2、L3、L4、R1、R2、R3、R4を順次2つずつ形成しないようにすることにより、対向車2の位置に対して光照射を行わないようにすることができるので、これにより対向車ドライバにグレアを与えてしまうことなく車両前方路面の視認性を高めることができる。しかも、これを1種類の灯具ユニットを用いて実現することができる。
【0152】
なお、上記第2実施形態においては、ユニット配光パターンPBLを構成する4つの配光パターンL1、L2、L3、L4と、ユニット配光パターンPBLを構成する4つの配光パターンR1、R2、R3、R4とが、半ピッチずれた状態で形成されるものとして説明したが、これら4つの配光パターンL1、L2、L3、L4同士が部分的に重複する範囲内であれば、半ピッチ以外のずれ量で形成されるようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本願発明の第1実施形態に係る車両用前照灯を示す正面図
【図2】上記車両用前照灯における一方の灯具ユニットを単品で示す正面図
【図3】図2のIII-III 線断面図
【図4】図3のIV-IV 線断面図
【図5】上記車両用前照灯における1対の灯具ユニットから前方へ照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される付加配光パターンを、他の灯具ユニットからの照射光により形成されるロービーム用配光パターンと共に透視的に示す図
【図6】上記第1実施形態における点灯制御の内容を説明するために図5の一部を拡大して示す図
【図7】上記一方の灯具ユニットの変形例に係る灯具ユニットを示す、図2と同様の図
【図8】本願発明の第2実施形態に係る車両用前照灯を示す正面図
【図9】上記第2実施形態に係る車両用前照灯における1対の灯具ユニットから前方へ照射される光により、上記仮想鉛直スクリーン上に形成される付加配光パターンを、上記ロービーム用配光パターンと共に透視的に示す図
【図10】上記第2実施形態における点灯制御の内容を説明するために図9の一部を拡大して示す図
【符号の説明】
【0154】
10、210 車両用前照灯
12 ランプボディ
14 透光カバー
20L、20R、120R、220L、220R 灯具ユニット
22 投影レンズ
24A、24B、24C、24D、124A、124B、124C、124D、224A、224B、224C、224D 光源ユニット
26 ホルダ
32 発光素子
32a 発光チップ
32b 基板
34A、34B、34C、34D、134A、134B、134C、134D 導光部材
34Aa、34Ba、34Ca、34Da、134Aa、134Ba、134Ca、134Da、234Aa、234Ba、234Ca、234Da 前端出射口
36 ブロック
36A、36B、36C、36D 筒状部材
36a 前面壁
36b 位置決め片
38A、38B、38C、38D、138A、138B、138C、138D 光学部材としてのリフレクタ
40 支持プレート
136A、136B、136C、136D 透光部材
Ax、AxL、AxR 光軸
CL1 対向車線側カットオフライン
CL2 自車線側カットオフライン
CL3 斜めカットオフライン
E エルボ点
F 後側焦点
HZ ホットゾーン
L1、L2、L3、L4、R1、R2、R3、R4 配光パターン
PA、PB 付加配光パターン
PAL、PAR、PBL、PBR ユニット配光パターン
PH ハイビーム用配光パターン
PL ロービーム用配光パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、この投影レンズの後側焦点面よりも後方側に配置された複数の光源ユニットと、を備えてなる車両用前照灯の灯具ユニットにおいて、
上記各光源ユニットが、発光素子と、所定形状の前端出射口を有し、上記発光素子からの光を上記前端出射口まで導いて該前端出射口から前方へ向けて出射させる導光部材と、を備えてなり、
上記各光源ユニットが、該光源ユニットにおける導光部材の前端出射口を上記後側焦点面の近傍において水平方向に互いに隣接させるようにして配置されている、ことを特徴とする車両用前照灯の灯具ユニット。
【請求項2】
上記各光源ユニットにおける導光部材が、上記前端出射口から後方へ向けて略錐体状に拡がるように形成されるとともに内周面に鏡面処理が施された筒状部材と、この筒状部材の後端部近傍に配置され、上記発光素子からの光を上記前端出射口へ向けて収束させる制御を行う光学部材と、を備えてなる、ことを特徴とする請求項1記載の車両用前照灯の灯具ユニット。
【請求項3】
上記各光源ユニットにおける導光部材が、上記前端出射口から後方へ向けて略錐体状に拡がるように形成された透光部材と、この透光部材の後端部近傍に配置され、上記発光素子からの光を上記前端出射口へ向けて収束させる制御を行う光学部材と、を備えてなる、ことを特徴とする請求項1記載の車両用前照灯の灯具ユニット。
【請求項4】
上記各光源ユニットにおける導光部材の前端出射口が、いずれも略矩形状に形成されており、
上記各前端出射口の左右幅が、上記光軸から離れた位置にある前端出射口ほど大きい値に設定されている、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の車両用前照灯の灯具ユニット。
【請求項5】
上記複数の光源ユニットが上記光軸の左右両側に跨るように配置されるとともに、これら各光源ユニットにおける導光部材の前端出射口の左右幅と、これら各光源ユニットにおける導光部材の前端出射口相互間の隙間の左右幅とが、上記光軸に関して左右対称の位置関係となるように設定された、請求項4記載の灯具ユニットと、この灯具ユニットに対して上記光軸に関して左右対称の形状を有する灯具ユニットとを備えてなり、
これら各灯具ユニットが、該灯具ユニットの光軸の向きを互いに揃えるようにして配置されている、ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項6】
上記各光源ユニットにおける導光部材の前端出射口が、いずれも略同一サイズの略矩形状に形成された、請求項1〜3いずれか記載の灯具ユニットを2つ備えてなり、
これら各灯具ユニットが、該灯具ユニットの光軸の向きを互いに水平方向に所定角度ずらすようにして配置されている、ことを特徴とする車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−70679(P2009−70679A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237792(P2007−237792)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】