説明

車両用合成樹脂部品および樹脂部品への部品取付構造

【課題】車両用合成樹脂部品等の射出成形後に、所定の切削工具(ドリル)を用いて精度良く二次的に孔開け加工を施すことが可能な技術を提供する。
【解決手段】所定のドリル112にて孔102cを形成可能な車両用合成樹脂部品100において、孔102cを形成する位置の中心であって意匠面の裏側に形成されたノッチ102aと、ノッチ102aの周囲を少なくとも部分的に包囲するよう壁状に立設されこのドリル112の外径より大きな内径を有する囲繞部102bと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形後に所定の切削工具(ドリル)を用いて二次的に孔開け加工が施される車両用合成樹脂部品および樹脂部品への部品取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等では、ライセンスプレートが義務づけられているか否かが仕向地によって異なる。また、ライセンスプレートの形体も仕向地によって異なる。一般に、フロントバンパーの意匠面の裏側には直径1.5mmほどのノッチ(エンボス)が設けられている。これは、例えばドリルの刃先をこのノッチにあわせて、フロントバンパーの射出成形後に二次的に孔開け加工を施してライセンスガーニッシュを取り付けることでライセンスプレートを取付可能とするため、且つライセンスプレートを要さない仕向地においてフロントバンパーの美観を損ねないためである。
【0003】
しかしながら、上記のようにして精度良く孔開け加工を施すのは作業者にとって難しく、しばしば正規の位置から外れた位置で孔開けが行われてしまっていた。正規の位置から外れた位置で孔開けが行われてしまうと、ライセンスガーニッシュが傾いたり、他の孔とのピッチがずれて変形したりするおそれがある。すると、ライセンスプレートを正確に取り付けることができないため、美観を損ねるおそれがある。
【0004】
これより、現状においては、工場の完成検査にて孔が正確に開けられているかどうかを調べ、不良品をはじく作業を実施している。そのため、余分な検査工程が発生していて、費用および労力の面で改善が求められる。一方、特許文献1には、バンパー表面のライセンスプレート取付用の取付孔穿設位置に、ターゲット用のピンホールを形成する技術が開示されている。また、特許文献1には、第3図等にピンホールの裏側に肉厚部を形成して予め孔を穿設しておくことで、このピンホールからの孔加工をスムーズに行うことができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平5−9252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の技術におけるピンホールは直径0.7mmと記載されているので、現状における直径1.5mmほどのノッチよりもドリルの刃先を正確に位置合わせしづらい。第3図等に記載されたピンホールの裏側に肉厚部を形成して予め孔を穿設しておく構成に関しても、ピンホールをターゲットとしてバンパー表面から孔開け(切削)する切削工具を受けるものでしかなく、孔開け加工の精度そのものを改善する効果は然程望めない。また、バンパー表面にピンホールが形成されるため、たとえピンホールが小さくとも外観品質(美観)の低下を招くこととなる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、車両用合成樹脂部品等の射出成形後に、所定の切削工具(ドリル)を用いて精度良く二次的に孔開け加工を施すことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、所定のドリルにて孔を形成可能な車両用合成樹脂部品において、孔を形成する位置の中心であって意匠面の裏側に形成されたノッチと、ノッチの周囲を少なくとも部分的に包囲するよう壁状に立設されドリルの外径より大きな内径を有する囲繞部と、を有することを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、ノッチに加え、その周囲を少なくとも部分的に包囲するよう壁状に立設された囲繞部によって、ドリルの位置あわせが補助される。したがって、車両用合成樹脂部品の射出成形後に、従来よりも精度良く二次的に孔開け加工を施すことが可能である。
【0010】
本発明の代表的な他の構成は、所定のドリルにて孔を形成可能な車両用合成樹脂部品において、孔を形成する位置の中心であって意匠面の裏側に形成されたノッチと、ノッチの周囲であって孔が形成される範囲に突出した突出部と、を有し、突出部の突出面は、ノッチに位置合わせされたドリルの先鋭な刃先の形状にほぼ合致する角度で傾斜していて、突出部は、孔の形成時に切削され消失することを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、ノッチに加え、突出面がドリルの刃先の形状にほぼ合致する角度で傾斜した突出部によって、ドリルの刃先が正しい孔開け位置へと案内される。したがって、車両用合成樹脂部品の射出成形後に、従来よりも精度良く二次的に孔開け加工を施すことが可能である。なお、この突出部は、ノッチの周囲であって孔が形成される範囲に備えられ、孔開け加工の際に切削され消失するため、加工後の製品は従来品(突出部を設けない製品)と全く違いがないものとなる。
【0012】
本発明の代表的な他の構成は、所定のドリルにて孔を形成可能な車両用合成樹脂部品において、孔を形成する位置の中心であって意匠面の裏側に形成されたノッチと、ノッチの周囲を包囲するよう壁状に立設されドリルの外径より大きな内径を有する円筒状のリブと、を有することを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、ノッチに加え、その周囲を包囲するよう壁状に立設された円筒状のリブによって、ドリルの位置あわせが補助される。したがって、車両用合成樹脂部品の射出成形後に、従来よりも精度良く二次的に孔開け加工を施すことが可能である。
【0014】
本発明の代表的な他の構成は、所定のドリルにて孔を形成可能な車両用合成樹脂部品において、孔を形成する位置の中心であって意匠面の裏側に形成されたノッチと、ノッチの周囲を部分的に包囲するよう壁状に立設されドリルの外径より大きな内径を有する円弧筒状のリブと、を有することを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、ノッチに加え、その周囲を部分的に包囲するよう壁状に立設された円弧筒状のリブによって、ドリルの位置あわせが補助される。したがって、車両用合成樹脂部品の射出成形後に、従来よりも精度良く二次的に孔開け加工を施すことが可能である。
【0016】
本発明の代表的な他の構成は、所定のドリルにて孔を形成可能な車両用合成樹脂部品において、孔を形成する位置の中心であって意匠面の裏側に形成されたノッチと、ノッチの周囲であって孔が形成される範囲に突出した円筒状のリブと、を有し、円筒状のリブの突出面は、ノッチに位置合わせされたドリルの先鋭な刃先の形状にほぼ合致する角度で傾斜していて、円筒状のリブは、孔の形成時に切削され消失することを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、ノッチに加え、突出面がドリルの刃先の形状にほぼ合致する角度で傾斜した円筒状のリブによって、ドリルの刃先が正しい孔開け位置へと案内される。したがって、車両用合成樹脂部品の射出成形後に、従来よりも精度良く二次的に孔開け加工を施すことが可能である。なお、この円筒状のリブは、ノッチの周囲であって孔が形成される範囲に備えられ、孔開け加工の際に切削され消失するため、加工後の製品は従来品と全く違いがないものとなる。
【0018】
本発明の代表的な他の構成は、所定のドリルにて孔を形成可能な車両用合成樹脂部品において、孔を形成する位置の中心であって意匠面の裏側に形成されたノッチと、ノッチの周囲であって孔が形成される範囲に突出した略十字状のリブと、を有し、略十字状のリブの突出面は、ノッチに位置合わせされたドリルの先鋭な刃先の形状にほぼ合致する角度で傾斜していて、略十字状のリブは、孔の形成時に切削され消失することを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、ノッチに加え、突出面がドリルの刃先の形状にほぼ合致する角度で傾斜した略十字状のリブによって、ドリルの刃先が正しい孔開け位置へと案内される。したがって、車両用合成樹脂部品の射出成形後に、従来よりも精度良く二次的に孔開け加工を施すことが可能である。なお、この略十字状のリブは、ノッチの周囲であって孔が形成される範囲に備えられ、孔開け加工の際に切削され消失するため、加工後の製品は従来品と全く違いがないものとなる。
【0020】
本発明の代表的な他の構成は、所定のドリルにて孔を形成可能な車両用合成樹脂部品に対し、この孔を利用して他の車両用の部品を取り付ける樹脂部品への部品取付構造において、車両用合成樹脂部品が、第1の孔を形成する位置の中心であって意匠面の裏側に形成された第1のノッチ、およびこの第1のノッチの周囲を部分的に包囲するよう壁状に立設されドリルの外径より大きな内径を有する円弧筒状のリブを含む第1取付部と、第2の孔を形成する位置の中心であって意匠面の裏側に形成された第2のノッチ、およびこの第2のノッチの周囲であって第2の孔が形成される範囲に突出し、その突出面がこの第2のノッチに位置合わせされたドリルの先鋭な刃先の形状にほぼ合致する角度で傾斜した円筒状または略十字状のリブを含む第2取付部と、を含み、他の車両用の部品が、第1の孔を通過して円弧筒状のリブが途切れた部分に嵌合する爪部と、第2の孔を通過して意匠面の裏側でナット締結されるボルトと、を含むことを特徴とする。
【0021】
かかる構成では、従来よりも精度良く車両用合成樹脂部品に二次的に孔開け加工を施す(第1の孔、第2の孔を形成する)ことが可能である。また、孔開け加工後には、第1の孔の周囲の円弧筒状のリブは残り、第2の孔が形成される範囲より突出した円筒状または略十字状のリブは消失する。第1の孔を通過して円弧筒状のリブが途切れた部分に他の車両用部品の爪部が嵌合し、第2の孔を通過して他の車両用部品のボルトがナット締結されるので、車両用合成樹脂部品に他の車両用の部品を好適に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、車両用合成樹脂部品等の射出成形後に、所定の切削工具(ドリル)を用いて精度良く二次的に孔開け加工を施すことが可能な技術を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態にかかる車両用合成樹脂バンパー、およびライセンスガーニッシュを示す図である。
【図2】図1の車両用合成樹脂バンパーの裏側を示す図である。
【図3】図2(b)の第1取付部にライセンスガーニッシュを取り付ける過程を示した図である。
【図4】図2(b)の第2取付部にライセンスガーニッシュを取り付ける過程を示した図である。
【図5】図4の第2取付部の変形例を示した図である。
【図6】図2(b)の第3取付部にライセンスガーニッシュを取り付ける過程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態にかかる車両用合成樹脂バンパー100(車両用合成樹脂部品)、およびライセンスガーニッシュ114(他の車両用の部品)を示す図である。図1(a)が車両用合成樹脂バンパー100の表側の斜視図である。図1(b)がライセンスガーニッシュ114の正面図である。図1(c)がライセンスガーニッシュ114の上面図である。
【0026】
図1(a)に示すように、ライセンスプレート120(図6(d)参照)が義務づけられている地域では、例えば所定のドリル112(図3等参照)にて車両用合成樹脂バンパー100に孔を開け、ライセンスガーニッシュ114を取り付ける。そして、ライセンスガーニッシュ114を介してライセンスプレート120を取り付ける。
【0027】
ライセンスガーニッシュ114は、左右対称の形状をなす。そして、それぞれの側には、ライセンスガーニッシュ114を車両用合成樹脂バンパー100に取り付けるための、背面方向へと延伸する爪部114aおよびボルト116aが備えられている。また、それぞれの側には、ライセンスプレート120を車体(車両用合成樹脂バンパー100)に取り付けるための、ボルト孔114bおよびこのボルト孔114bの背面に取り付けられたナット118b(スピードナット)が備えられている。
【0028】
図2は、図1の車両用合成樹脂バンパー100の裏側を示す図である。図2(a)では、車両用合成樹脂バンパー100の意匠面(表面)の裏側100a全体を図示していて、図2(b)では、図2(a)の部分Zを拡大して図示している。図2(a)および(b)に示すように、車両用合成樹脂バンパー100は、左右対称の形状をなす。そして、それぞれの側の意匠面の裏側100aには、第1取付部102、第2取付部104および第3取付部110が備えられている。
【0029】
図3は、図2(b)の第1取付部102にライセンスガーニッシュ114を取り付ける過程を示した図である。図3(a1)〜図3(d1)はその過程を順に図示したものであり、図3(a2)〜(d2)は図3(a1)〜図3(d1)の各断面図である。
【0030】
図3(a1)、(a2)に示すように、第1取付部102は、第1の孔102c(図3(c1)等参照)を形成する位置の中心であって意匠面の裏側100aに形成された第1のノッチ102a、および第1のノッチ102aの周囲を部分的に包囲するよう壁状に立設された円弧筒状のリブ102b(囲繞部)を含んで構成される。かかる第1のノッチ102aや円弧筒状のリブ102bはバンパーと一体成形が可能であり、コストの増大をほぼ招くことなく実現することができる。なお、第1のノッチ102aは、所定のドリル112の先鋭な刃先112aの形状にほぼ合致するように傾斜して凹んでいる。
【0031】
図3(b1)、(b2)に示すように、円弧筒状のリブ102bは、第1のノッチ102aにドリル112の刃先112aを位置合わせした際に、ドリル112の側面部112bに沿うように構築される。また、円弧筒状のリブ102bの内径が、ドリル112の外径よりも若干大きく(例えば0.5mm程度大きく)構築される。これより、円弧筒状のリブ102bがドリル112に対して狭くなりすぎることなく、成形公差で円弧筒状のリブ102bの内径が若干小さくなっても不具合なく孔開け可能である。
【0032】
上記より、第1のノッチ102aに加え、円弧筒状のリブ102bによってドリル112の位置合わせが補助される。特に、円弧筒状のリブ102bがドリル112の側面部112bを支持するため、切削時においてもこのドリル112の軸がぶれず、図3(c1)、(c2)に示すように精度良く二次的に第1の孔102cを開けることができる。
【0033】
図3(d1)、(d2)に示すように、第1の孔102cが開けられると、ライセンスガーニッシュ114の爪部114aが第1の孔102cに挿入され(第1の孔102cを通過して)円弧筒状のリブ102bが途切れた部分に嵌合する。爪部114aの両側には円弧筒状のリブ102bが立設する(爪部114aの両側が円弧筒状のリブ102bによって支持される)こととなるので、爪部114aの回転(嵌合部分の移動)が規制される。
【0034】
図4は、図2(b)の第2取付部104にライセンスガーニッシュ114を取り付ける過程を示した図である。図4(a1)〜図4(d1)はその過程を順に図示したものであり、図4(a2)〜(d2)は図4(a1)〜図4(d1)の各断面図である。
【0035】
図4(a1)、(a2)に示すように、第2取付部104は、第2の孔104d(図4(c1)等参照)を形成する位置の中心であって意匠面の裏側100aに形成された第2のノッチ104a、および第2のノッチ104aの周囲であって第2の孔104dが形成される範囲に突出した円筒状のリブ104b(突出部)を含んで構成される。かかる第2のノッチ104aや円筒状のリブ104bはバンパーと一体成形が可能であり、コストの増大を招くことなく実現することができる。なお、第2のノッチ104aは、所定のドリル112の先鋭な刃先112aの形状にほぼ合致するように傾斜して凹んでいる。
【0036】
図4(b1)、(b2)に示すように、円筒状のリブ104bの突出面104c(上面)は、ドリル112が第2のノッチ104aに位置合わせされると、ドリル112の先鋭な刃先の形状にほぼ合致するような角度で傾斜している。具体的には、円筒状のリブ104bの突出面104cの傾斜角度は、ドリル112の刃先112aの母線X(図5(b)等参照)とほぼ等しくなるように設定されている(テーパ形状になっている)。これより、円筒状のリブ104bの突出面104cによって、ドリル112の刃先が正しい孔開け位置へと案内されるため、正規の位置から外れた位置で孔開けされることを防止できる。なお、円筒状のリブ104bの突出面104cは、完全に刃先112aの曲面に沿わなくとも、母線Xと等しい傾斜角度を有すれば充分である。
【0037】
円筒状のリブ104bの内径は、所定のドリル112の外径よりも小さく構築される。そのため、図4(c1)、(c2)に示すように、円筒状のリブ104bは第2の孔104dの形成時に切削され消失する。よって、孔開け加工後の製品は従来品(円筒状のリブ104bを設けない製品)と全く違いがないものとなる。
【0038】
そのため、図4(d1)、(d2)に示すように、第2の孔104dにライセンスガーニッシュ110のボルト116aを挿入して、意匠面の裏側100aからナット118a締結することができる。これにより、ライセンスガーニッシュ114を車体(車両用合成樹脂バンパー100)に取り付けることが可能である。
【0039】
図5は、図4の第2取付部104の変形例を示した図である。図5(a)が第2取付部の第1の変形例(第2取付部106)を図示したものであり、図5(c)が第2取付部の第2の変形例(第2取付部108)を図示したものである。図5(b)が図5(a)のI−I断面図であり、図5(d)が図5(b)のJ−J断面図である。
【0040】
図5(a)、(b)に示すように、第2取付部106は、第2の孔104d(図4(c1)等参照)を形成する位置の中心であって意匠面の裏側100aに形成された第2のノッチ106a、および第2のノッチ106aの周囲であって第2の孔104dが形成される範囲に突出した略十字状のリブ106b(突出部)を含んで構成される。上述した円筒状のリブ104bと同様に、かかる略十字状のリブ106bも突出面106cが、所定のドリル112の先鋭な刃先の形状にほぼ合致するような角度で傾斜している。すなわち、略十字状のリブ106bの突出面106cの傾斜角度は、ドリル112の刃先112aの母線Xとほぼ等しくなるように設定されている。
【0041】
これより、略十字状のリブ106bの突出面106cによって、ドリル112の刃先112aが正しい孔開け位置へと案内されるため、正規の位置から外れた位置で孔開けされることを防止できる。円筒状のリブ104bと略十字状のリブ106bとを比較すると、円筒状のリブ104bでは、環状な突出面104cによりドリル112の刃先112aを高い精度で位置決めできる利点がある。一方、略十字状のリブ106bでは、ドリル先端に近い位置からその突出面106cが当接するため、切削時におけるドリル112の軸のぶれをより低減可能な利点がある。
【0042】
図5(c)、(d)に示すように、第2取付部108は、第2の孔104d(図4(c1)等参照)を形成する位置の中心であって意匠面の裏側100aに形成された第2のノッチ108a、および第2のノッチ108aの周囲であって第2の孔104dが形成される範囲に突出したすり鉢状のロケート108b(突出部)を含んで構成される。上述した円筒状のリブ104bと同様に、かかるすり鉢状のロケート108bも突出面108cが、所定のドリル112の先鋭な刃先の形状にほぼ合致するような角度で傾斜している。すなわち、すり鉢状のロケート108bの突出面108cの傾斜角度は、ドリル112の刃先112aの母線Xとほぼ等しくなるように設定されている。
【0043】
これより、すり鉢状のロケート108bの突出面108cによって、ドリル112の刃先112aが正しい孔開け位置へと案内されるため、正規の位置から外れた位置で孔開けされることを防止できる。なお、すり鉢状のロケート108bでは、円筒状のリブ104bや略十字状のリブ106bと比して、射出成形後に意匠面へヒケが生じる可能性がある。
【0044】
図6は、図2(b)の第3取付部110にライセンスガーニッシュ114を取り付ける過程を示した図である。図6(a1)〜図6(d1)はその過程を順に図示したものであり、図6(a2)〜(d2)は図6(a1)〜図3(d1)の各断面図である。
【0045】
図6(a1)、(a2)に示すように、第3取付部110は、第3の孔110c(図6(c1)等参照)を形成する位置の中心であって意匠面の裏側100aに形成された第3のノッチ110a、および第3のノッチ110aの周囲を部分的に包囲するよう壁状に立設された円筒状のリブ110b(囲繞部)を含んで構成される。かかる第3のノッチ110aや円筒状のリブ110bはバンパーと一体成形が可能であり、コストの増大をほぼ招くことなく実現することができる。なお、第3のノッチ110aは、所定のドリル112の先鋭な刃先112aの形状にほぼ合致するように傾斜して凹んでいる。
【0046】
図6(b1)、(b2)に示すように、円筒状のリブ110bは、第3のノッチ110aにドリル112の刃先112aを位置合わせした際に、このドリル112の側面部112bに沿うように構築される。また、円筒状のリブ110bの内径が、ドリル112の外径よりも若干大きく(例えば0.5mm程度大きく)構築される。これより、円筒状のリブ110bがドリル112に対して狭くなりすぎることなく、成形公差で円筒状のリブ110bの内径が若干小さくなっても不具合なく孔開け可能である。
【0047】
上記より、第3のノッチ110aに加え、円筒状のリブ110bによってドリル112の位置合わせが補助される。特に、円筒状のリブ110bがこのドリル112の側面部112bを支持するため、切削時においてもドリル112の軸がぶれず、図6(c1)、(c2)に示すように精度良く二次的に第3の孔110cを開けることができる。なお、円筒状のリブ110bではドリル112を完全に包囲するため、円弧筒状のリブ102bよりもさらに切削時のドリル112の軸のぶれを抑制可能である。
【0048】
図6(d1)、(d2)に示すように、第3の孔110cは、ライセンスプレート120を取り付ける際に、ライセンスガーニッシュ114のナット118bに締結されるボルト116bの逃げ孔として利用される。かかる逃げ孔のように利用される孔を開ける場合に、第3取付部110の構成は有用である。
【0049】
以上、上述した構成によれば、射出成形後にドリル112等を用いて二次的に孔開け加工が施される車両用合成樹脂バンパー100に対して、精度良く孔開け加工を施すことが可能である。そのため、かかる技術の利用により、工場の完成検査にて孔が正確に開けられているかどうかを調べる必要がなくなり、費用および労力の面で顕著な効果を奏する。
【0050】
上記実施形態では、車両用合成樹脂部品として車両用合成樹脂バンパー100を例示したが、本発明は車両用合成樹脂部品全般(例えば、樹脂サイドシルやバンパーエクステンション)に適用可能である。また、上記実施形態では、他の車両用の部品としてライセンスガーニッシュ114を例示したが、本発明はライセンスガーニッシュ114に限られず他の車両用部品の取付に利用することができる。また、上記実施形態では、囲繞部の例として円弧筒状のリブ102b、円筒状のリブ110bを挙げ、突出部の例として円筒状のリブ104b、略十字状のリブ106b、すり鉢状のロケート108bを挙げたが、本発明はこれに限られない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、射出成形後に所定の切削工具(ドリル)を用いて二次的に孔開け加工が施される車両用合成樹脂部品および樹脂部品への部品取付構造として利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
100…車両用合成樹脂バンパー、100a…意匠面の裏側、102…第1取付部、102a…第1のノッチ、102b…円弧筒状のリブ、102c…第1の孔、104、106、108…第2取付部、104a、106a、108a…第2のノッチ、104b…円筒状のリブ、106b…略十字状のリブ、108b…すり鉢状のロケート、104c、106c、108c…突出面、104d…第2の孔、110…第3取付部、110a…第3のノッチ、110b…円筒状のリブ、110c…第3の孔、112…ドリル、112a…刃先、112b…側面部、114…ライセンスガーニッシュ、114a…爪部、114b…ボルト孔、116a、116b…ボルト、118a、118b…ナット、120…ライセンスプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のドリルにて孔を形成可能な車両用合成樹脂部品において、
前記孔を形成する位置の中心であって意匠面の裏側に形成されたノッチと、
前記ノッチの周囲を少なくとも部分的に包囲するよう壁状に立設され前記ドリルの外径より大きな内径を有する囲繞部と、
を有することを特徴とする車両用合成樹脂部品。
【請求項2】
所定のドリルにて孔を形成可能な車両用合成樹脂部品において、
前記孔を形成する位置の中心であって意匠面の裏側に形成されたノッチと、
前記ノッチの周囲であって前記孔が形成される範囲に突出した突出部と、
を有し、
前記突出部の突出面は、前記ノッチに位置合わせされた前記ドリルの先鋭な刃先の形状にほぼ合致する角度で傾斜していて、
前記突出部は、前記孔の形成時に切削され消失することを特徴とする車両用合成樹脂部品。
【請求項3】
所定のドリルにて孔を形成可能な車両用合成樹脂部品において、
前記孔を形成する位置の中心であって意匠面の裏側に形成されたノッチと、
前記ノッチの周囲を包囲するよう壁状に立設され前記ドリルの外径より大きな内径を有する円筒状のリブと、
を有することを特徴とする車両用合成樹脂部品。
【請求項4】
所定のドリルにて孔を形成可能な車両用合成樹脂部品において、
前記孔を形成する位置の中心であって意匠面の裏側に形成されたノッチと、
前記ノッチの周囲を部分的に包囲するよう壁状に立設され前記ドリルの外径より大きな内径を有する円弧筒状のリブと、
を有することを特徴とする車両用合成樹脂部品。
【請求項5】
所定のドリルにて孔を形成可能な車両用合成樹脂部品において、
前記孔を形成する位置の中心であって意匠面の裏側に形成されたノッチと、
前記ノッチの周囲であって前記孔が形成される範囲に突出した円筒状のリブと、
を有し、
前記円筒状のリブの突出面は、前記ノッチに位置合わせされた前記ドリルの先鋭な刃先の形状にほぼ合致する角度で傾斜していて、
前記円筒状のリブは、前記孔の形成時に切削され消失することを特徴とする車両用合成樹脂部品。
【請求項6】
所定のドリルにて孔を形成可能な車両用合成樹脂部品において、
前記孔を形成する位置の中心であって意匠面の裏側に形成されたノッチと、
前記ノッチの周囲であって前記孔が形成される範囲に突出した略十字状のリブと、
を有し、
前記略十字状のリブの突出面は、前記ノッチに位置合わせされた前記ドリルの先鋭な刃先の形状にほぼ合致する角度で傾斜していて、
前記略十字状のリブは、前記孔の形成時に切削され消失することを特徴とする車両用合成樹脂部品。
【請求項7】
所定のドリルにて孔を形成可能な車両用合成樹脂部品に対し、該孔を利用して他の車両用の部品を取り付ける樹脂部品への部品取付構造において、
前記車両用合成樹脂部品が、
第1の孔を形成する位置の中心であって意匠面の裏側に形成された第1のノッチ、および該第1のノッチの周囲を部分的に包囲するよう壁状に立設され前記ドリルの外径より大きな内径を有する円弧筒状のリブを含む第1取付部と、
第2の孔を形成する位置の中心であって意匠面の裏側に形成された第2のノッチ、および該第2のノッチの周囲であって前記第2の孔が形成される範囲に突出し、その突出面が該第2のノッチに位置合わせされた前記ドリルの先鋭な刃先の形状にほぼ合致する角度で傾斜した円筒状または略十字状のリブを含む第2取付部と、
を含み、
前記他の車両用の部品が、
前記第1の孔を通過して前記円弧筒状のリブが途切れた部分に嵌合する爪部と、
前記第2の孔を通過して前記意匠面の裏側でナット締結されるボルトと、
を含むことを特徴とする樹脂部品への部品取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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