説明

車両用回転装置

【課題】軸受部材が固定部材から脱落するのを防ぐことが重要である。
【解決手段】この発明は、ブラケット部30と軸受部材4とには、相互に嵌合する嵌合凸部33と嵌合凹部44とが設けられている。軸受部材4の嵌合凹部44がブラケット部30の嵌合凸部33に嵌合して、軸受部材4が軸部材15の中心軸X回りに回転することが規制される。この結果、この発明は、軸受部材4の回転が規制されるので、軸受部材4をブラケット部30に確実に取り付けることができ、軸受部材4がブラケット部30から脱落するのを確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動装置により回転部材を固定部材に対して回転させる車両用回転装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用回転装置は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用回転装置について説明する。従来の車両用回転装置は、ブラケットと、回転軸を介してブラケットに回転可能に取り付けられているランプユニットと、ブラケットに固定保持されていて、ランプユニットをブラケットに対して回転させるアクチュエータと、回転軸をブラケットに回転可能に支持する軸受と、を備えるものである。アクチュエータを駆動させると、ランプユニットがブラケットに対して回転するものである。
【0003】
かかる車両用回転装置においては、軸受がブラケットから脱落するのを防ぐことが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−49861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする問題点は、この種の車両用回転装置においては、軸受部材(軸受)が固定部材(ブラケット)から脱落するのを防ぐことが重要である、という点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、固定部材と、軸部材が一体に設けられていて軸部材を介して固定部材に回転可能に取り付けられている回転部材と、固定部材に固定保持されていて軸部材の一端部が取り付けられていて軸部材を介して回転部材を固定部材に対して回転させる駆動装置と、軸部材の他端部を固定部材に回転可能に支持する軸受部材と、を備え、固定部材には、軸部材の他端部が位置する凹部と、軸部材の他端部を凹部に位置させるための開口部とが、それぞれ設けられていて、軸受部材には、軸部材および固定部材の凹部に軸部材の他端から一端に装着した際に、固定部材の凹部の軸部材の一端側の縁部に弾性係合する弾性係合部と、固定部材の凹部の軸部材の他端側の縁部に当接する当接部とが、それぞれ設けられていて、固定部材の凹部の縁部と軸受部材とには、軸部材および固定部材の凹部に軸部材の他端から一端に装着した際に、相互に嵌合して軸部材が軸部材の中心軸回りに回転するのを防止する嵌合部がそれぞれ設けられている、ことを特徴とする。
【0007】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、固定部材の嵌合部が嵌合凸部であり、軸受部材の嵌合部が嵌合凹部であり、軸受部材の一端部側には弾性係合部が設けられていて、軸受部材の他端部側には当接部および嵌合凹部がそれぞれ設けられていて、弾性係合部と嵌合凹部とが軸受部材の成形金型の抜き方向に対向して設けられている、ことを特徴とする。
【0008】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、固定部材が固定部とブラケット部とから構成されていて、ブラケット部には凹部および開口部および嵌合部がそれぞれ設けられていて、ブラケット部には、駆動装置が固定保持されていると共に、回転部材が軸部材および軸受部材を介して回転可能に取り付けられていて、ブラケット部が固定部に固定保持されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用回転装置は、前記の課題を解決するための手段により、回転部材と一体の軸部材を固定部材の開口部から凹部に位置させ、軸受部材を軸部材および固定部材の凹部に軸部材の他端から一端に装着する。すると、軸受部材の弾性係合部が固定部材の凹部の軸部材の一端側の縁部に弾性係合して、軸受部材が軸部材の一端から他端に移動することが規制される。また、軸受部材の当接部が固定部材の凹部の軸部材の他端側の縁部に当接して、軸受部材が軸部材の他端から一端に移動することが規制される。さらに、軸受部材の嵌合部が固定部材の嵌合部に嵌合して、軸受部材が軸部材の中心軸回りに回転することが規制される。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用回転装置は、軸受部材の3方向の移動および回転が規制されるので、軸受部材を固定部材に確実に取り付けることができ、軸受部材が固定部材から脱落するのを確実に防止することができる。
【0010】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用回転装置は、前記の課題を解決するための手段により、すなわち、軸受部材の弾性係合部と嵌合凹部とを軸受部材の成形金型の抜き方向に対向して設けてなるものであるから、スライド金型を使用せずに、軸受部材を製造することができるので、金型費を安価にすることができ、その分、製造コストを安価にすることができる。
【0011】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用回転装置は、前記の課題を解決するための手段により、すなわち、固定部材のブラケット部に駆動装置を固定保持し、かつ、固定部材のブラケット部に回転部材を軸部材および軸受部材を介して回転可能に取り付けて、固定部材のブラケット部と駆動装置と回転部材および軸部材と軸受部材とをサブアッシー(サブユニット)とすることができる。この結果、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用回転装置は、固定部材のブラケット部を固定部材の固定部に固定保持することにより、サブアッシーの駆動装置と回転部材および軸部材と軸受部材とをブラケット部を介して固定部にすなわち固定部材に簡単に取り付けることができるので、組付作業性を向上させることができ、かつ、組付工数を軽減することができ、その分、製造コストを安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、この発明にかかる車両用回転装置の実施例を示す要部の側面図である。
【図2】図2は、同じく、上側可動リフレクタおよび下側可動リフレクタが第1位置に位置するときの要部を示す斜視図である。
【図3】図3は、同じく、上側可動リフレクタおよび下側可動リフレクタが第2位置に位置するときの要部を示す斜視図である。
【図4】図4は、同じく、上側可動リフレクタおよび下側可動リフレクタが第1位置に位置するときの要部を示す正面図である。
【図5】図5は、同じく、上側可動リフレクタおよび下側可動リフレクタが第2位置に位置するときの要部を示す正面図である。
【図6】図6は、同じく、斜めカットオフラインと水平カットフラインとを有するロービーム用配光パターンを示す説明図である。
【図7】図7は、同じく、ハイビーム用配光パターンを示す説明図である。
【図8】図8は、同じく、軸受部材を示す正面図などである。
【図9】図9は、同じく、軸部材をブラケット部に軸受部材を介して回転可能に取り付ける状態を示す説明図である。
【図10】図10は、同じく、軸部材をブラケット部に軸受部材を介して回転可能に取り付ける状態を示す説明断面図である。
【図11】図11は、同じく、軸部材をブラケット部に軸受部材を介して回転可能に取り付ける状態を示す説明断面図である。
【図12】図12は、同じく、軸受部材を金型で成形している状態を示す説明断面図である。
【図13】図13は、同じく、軸受部材の成形後、金型を離している状態(離型状態)を示す説明断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明にかかる車両用回転装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。図面において、符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。なお、この明細書および特許請求の範囲において、「上、下、前、後、左、右」とは、この発明にかかる車両用回転装置を車両(自動車)に取り付けた際の車両の「上、下、前、後、左、右」である。
【0014】
図8(A)は、軸受部材の正面図である。図8(B)は、軸受部材の背面図である。図8(C)は、図8(A)におけるC−C線断面図である。図8(D)は、図8(A)におけるD矢視図である。図8(E)は、図8(A)におけるE−E線断面図である。図8(F)は、図8(A)におけるF矢視図である。図9(A)は、軸部材をブラケット部の凹部に位置させる前の状態を示す図8(A)に対応する説明断面図である。図9(B)は、軸部材およびブラケット部の凹部に軸受部材を装着させる前の状態を示す図8(A)に対応する説明断面図である。図9(C)は、軸部材およびブラケット部の凹部に軸受部材を装着させた状態を示す図8(A)に対応する説明断面図である。図10(A)は、軸部材をブラケット部の凹部に位置させる前の状態を示す図8(C)に対応する説明断面図である。図10(B)は、軸部材およびブラケット部の凹部に軸受部材を装着させる前の状態を示す図8(C)に対応する説明断面図である。図10(C)は、軸部材およびブラケット部の凹部に軸受部材を装着させた状態を示す図8(C)に対応する説明断面図である。図11(A)は、軸部材をブラケット部の凹部に位置させる前の状態を示す図8(E)に対応する説明断面図である。図11(B)は、軸部材およびブラケット部の凹部に軸受部材を装着させる前の状態を示す図8(E)に対応する説明断面図である。図11(C)は、軸部材およびブラケット部の凹部に軸受部材を装着させた状態を示す図8(E)に対応する説明断面図である。図12(A)は、軸受部材を金型で成形している状態を示す図8(C)に対応する説明断面図である。図12(B)は、軸受部材を金型で成形している状態を示す図8(E)に対応する説明断面図である。図13(A)は、軸受部材の成形後、金型を離している状態(離型状態)を示す図8(C)に対応する説明断面図である。図13(B)は、軸受部材の成形後、金型を離している状態(離型状態)を示す図8(E)に対応する説明断面図である。
【実施例】
【0015】
図1〜図5中、符号1は、この実施例における車両用回転装置であって、この例では、自動車用前照灯ある。以下、自動車用前照灯1について説明する。まず、自動車用前照灯1の構成について説明する。
【0016】
前記車両用前照灯1は、図6に示すすれ違い用配光パターン(ロービーム用配光パターン)、すなわち、エルボー点Eを境に、走行車線側(左側)に斜めカットオフラインCL1を有し、かつ、対向車線側(右側)に水平カットフラインCL2を有するロービーム用配光パターンLPと、図7に示す走行用配光パターン(ハイビーム用配光パターン)、すなわち、第1ハイビーム用配光パターンHP1および第2ハイビーム用配光パターンHP2および第3ハイビーム用配光パターンHP3および減光ロービーム用配光パターンLP1と、を切り替えて車両の前方に照射するものである。なお、前記斜めカットオフラインCL1とスクリーンの水平線HL−HRとのなす角度は、約15°である。
【0017】
前記車両用前照灯1は、パラボラ系の自由曲面(NURBS曲面)からなる上側反射面2Uおよび下側反射面2Dを有する前記固定部材の固定部としての固定リフレクタ3と、同じくパラボラ系の自由曲面(NURBS曲面)からなる上側反射面12Uを有する前記回転部材としての上側可動リフレクタ13Uおよび下側反射面12Dを有する同じく前記回転部材としての下側可動リフレクタ13Dと、平面矩形形状(平面長方形状)の発光チップ4を有する上側半導体型光源5Uおよび下側半導体型光源5Dと、前記固定部材の固定部としてのホルダ6およびヒートシンク部材7と、前記駆動装置14と、図示しないランプハウジングおよびランプレンズ(たとえば、素通しのアウターレンズなど)と、から構成されている。
【0018】
この実施例における車両用回転装置は、固定部材と、軸部材15が一体に設けられていて、前記軸部材15を介して前記固定部材に回転可能に取り付けられている回転部材と、前記固定部材に固定保持されていて、前記軸部材15の一端部が取り付けられていて、前記軸部材15を介して前記回転部材を前記固定部材に対して回転させる駆動装置14と、前記軸部材15の他端部を前記固定部材に回転可能に支持する軸受部材4と、を備えるものである。
【0019】
前記固定部材は、固定部と、ブラケット部30と、から構成されている。前記固定部は、主に、前記ヒートシンク部材7から構成されている。前記ヒートシンク部材7には、前記固定リフレクタ3および前記ホルダ6が適宜な固定手段により固定されている。前記回転部材は、前記上側可動リフレクタ13Uおよび前記下側可動リフレクタ13Dから構成されている。前記上側可動リフレクタ13Uおよび前記下側可動リフレクタ13Dには、前記軸部材15の一端部が一体に設けられている。
【0020】
前記ブラケット部30の一側部(図1と反対側の側部)には、前記駆動装置14が固定保持されている。また、前記ブラケット部30の他側部(図1側の側部)には、前記上側可動リフレクタ13Uおよび前記下側可動リフレクタ13Dが前記軸部材15および前記軸受部材4を介して回転可能に取り付けられている。前記ブラケット部30は、前記固定部の前記ヒートシンク部材7にスクリュー60などにより固定保持されている。
【0021】
図9〜図11に示すように、前記ブラケット部30の他側部には、前記軸部材15の他端部が位置する円形の凹31部と、前記軸部材15の他端部を前記凹部31に位置させるための方形の開口部32と、がそれぞれ設けられている。前記ブラケット部30の前記凹部31の縁部であって、前記軸部材15の他端側の縁部には、嵌合部としての方形の2個の嵌合凸部33が等間隔に一体に設けられている。
【0022】
前記軸受部材4は、図12および図13に示すように、スライド金型を使用せずに金型10、11により成形される。前記軸受部材4は、図8に示すように、前記軸受部材15が挿通する挿通孔40を有する円筒形状をなす。前記挿通孔40の一端部側の内径は、前記挿通孔40の他端部側の内径よりも大きい。なお、前記挿通孔40の内径を同一にしても良い。
【0023】
前記軸受部材4の一端部側には、切溝41を介してランス形状の2個の弾性係合部42が等間隔に一体に設けられている。一方、前記軸受部材4の他端部側には、鍔形状の当接部43が一体に設けられている。かつ、前記軸受部材4の他端部側すなわち鍔形状の前記当接部43には、嵌合部としての方形の2個の嵌合凹部44が、前記ブラケット部30の前記嵌合凸部33と対応して、設けられている。前記2個の弾性係合部42と前記2個の嵌合凹部44とは、前記軸受部材4の前記金型10、11の抜き方向に対向してそれぞれ設けられている。
【0024】
前記軸受部材4の前記弾性係合部42は、前記軸部材15および前記ブラケット部30の前記凹部31に前記軸部材15の他端から一端に(図9(B)、図10(B)、図11(B)中の実線矢印方向に)装着した際に、前記ブラケット部30の前記凹部31の前記軸部材15の一端側の縁部に弾性係合するものである(図10(C)を参照)。
【0025】
前記軸受部材4の前記当接部43は、前記軸部材15および前記ブラケット部30の前記凹部31に前記軸部材15の他端から一端に(図9(B)、図10(B)、図11(B)中の実線矢印方向に)装着した際に、前記ブラケット部30の前記凹部31の前記軸部材15の他端側の縁部に当接するものである(図11(C)を参照)。
【0026】
前記軸受部材4の前記嵌合凹部44は、前記軸部材15および前記ブラケット部30の前記凹部31に前記軸部材15の他端から一端に(図9(B)、図10(B)、図11(B)中の実線矢印方向に)装着した際に、前記ブラケット部30の前記嵌合凸部33に嵌合するものである(図9(C)を参照)。
【0027】
前記ホルダ6は、上固定面と下固定面とを有する板形状をなす。前記ホルダ6は、たとえば、熱伝導率が高い樹脂部材もしくは金属部材から構成されている。前記ヒートシンク部材7は、上部に上固定面を有する台形形状をなし、かつ、中間部から下部にかけてフィン形状をなす。前記ヒートシンク部材7は、たとえば、熱伝導率が高い樹脂部材もしくは金属部材から構成されている。
【0028】
前記固定リフレクタ3および前記上側可動リフレクタ13Uおよび前記下側可動リフレクタ13Dおよび前記上側半導体型光源5Uおよび前記下側半導体型光源5Dおよび前記ホルダ6および前記ヒートシンク部材7および前記駆動装置14は、ランプユニットを構成する。すなわち、前記固定リフレクタ3は、スクリュー60などにより前記ホルダ6に固定保持されている。前記上側可動リフレクタ13Uおよび前記下側可動リフレクタ13Dは、前記ブラケット部30および前記軸部材15および前記軸受部材4を介して、前記ホルダ6に水平軸X回りに回転可能に取り付けられている。前記上側半導体型光源5Uは、前記ホルダ6の上固定面に固定保持されている。前記下側半導体型光源5Dは、前記ホルダ6の下固定面に固定保持されている。前記ホルダ6は、前記ヒートシンク部材7の上固定面にスクリュー60などにより固定保持されている。前記駆動装置14は、前記固定部材のブラケット部30を介して前記ホルダ6および前記ヒートシンク部材7の上固定面に固定保持されている。
【0029】
前記ランプユニット3、5U、5D、6、7、13U、13D、14は、前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズにより区画されている灯室内に、たとえば光軸調整機構を介して配置されている。なお、前記灯室内には、前記ランプユニット3、5U、5D、6、7、13U、13D、14以外に、フォグランプ、コーナリングランプ、クリアランスランプ、ターンシグナルランプなどの他のランプユニットが配置されている場合がある。
【0030】
前記固定リフレクタ3の前記上側反射面2Uおよび前記上側可動リフレクタ13Uの前記上側反射面12Uおよび前記上側半導体型光源5Uは、前記発光チップ4の発光面が鉛直軸方向の上向きの上側のユニットを構成する。また、前記固定リフレクタ3の前記下側反射面2Dおよび前記下側可動リフレクタ13Dの前記下側反射面12Dおよび前記下側半導体型光源5Dは、前記発光チップ4の発光面が鉛直軸方向の下向きの下側のユニットを構成する。前記上側のユニット2U、5U、12U、13Uと、前記下側のユニット2D、5D、12D、13Dとは、点対称の状態になるように、配置されている。なお、前記上側反射面2U、12Uの反射面設計と前記下側反射面2D、12Dの反射面設計とは、単なる点対称(反転)ではない。
【0031】
前記固定リフレクタ3は、たとえば、光不透過性の樹脂部材などから構成されている。前記固定リフレクタ3は、前記点対称の点を通る軸を回転軸とするほぼ回転放物面形状をなす。前記固定リフレクタ3の前側は、ほぼ円形に開口されている。一方、前記固定リフレクタ3の後側は、閉塞されている。前記固定リフレクタ3の閉塞部の中間部には、横長のほぼ長方形の窓部8が設けられている。前記固定リフレクタ3の前記窓部8には、前記ホルダ6が挿入されている。前記固定リフレクタ3は、閉塞部の外側(後側)において、前記ホルダ6に固定保持されている。
【0032】
前記固定リフレクタ3の閉塞部の内側(前側)のうち前記窓部8の上側および下側には、前記上側反射面2Uおよび前記下側反射面2Dがそれぞれ設けられている。パラボラ系の自由曲面(NURBS曲面)からなる前記上側反射面2Uおよび前記下側反射面2Dは、基準焦点(擬似焦点)および基準光軸(擬似光軸)を有する。前記上側反射面2Uと前記下側反射面2Dとの間であって、前記固定リフレクタ3の閉塞部の内側(前側)のうち前記窓部8の左右両側には、無反射面9が設けられている。
【0033】
前記固定リフレクタ3の前記上側反射面2Uおよび前記下側反射面2Dは、前記ロービーム用配光パターンLPおよび前記減光ロービーム用配光パターンLP1を形成するロービーム用反射面と、前記第1ハイビーム用配光パターンHP1および前記第2ハイビーム用配光パターンHP2を形成する第1ハイビーム用反射面および第2ハイビーム用反射面と、から構成されている。
【0034】
前記駆動装置14は、モータ(図示せず)と、駆動力伝達機構16と、可動リフレクタ復帰用のスプリング(図示せず)と、から構成されている。前記モータは、前記ヒートシンク部材7の上固定面に直接固定保持されている。これにより、前記モータの通電時に発生する熱を前記ヒートシンク部材7で外部に放射(放熱)することができる。前記駆動力伝達機構16は、前記モータと前記上側可動リフレクタ13Uおよび前記下側可動リフレクタ13Dとの間に設けられている。前記駆動装置14は、前記上側可動リフレクタ13Uおよび前記下側可動リフレクタ13Dを、前記ホルダ6に対して、前記水平軸X回りに、第1位置(図2、図4に示す状態の位置)と第2位置(図3、図5に示す状態の位置)との間において、回転させるものである。
【0035】
前記上側可動リフレクタ13Uおよび前記下側可動リフレクタ13Dは、たとえば、光不透過性の樹脂部材などから構成されている。前記第2位置に位置する前記上側可動リフレクタ13Uおよび前記下側可動リフレクタ13Dは、前記点対称の点を通る軸を回転軸とするほぼ回転放物面形状をなす。前記第2位置に位置する前記上側可動リフレクタ13Uおよび前記下側可動リフレクタ13Dの前側は、ほぼ円形に開口されている。前記上側可動リフレクタ13Uおよび前記下側可動リフレクタ13Dの前方側の開口部の大きさすなわち開口面積は、前記固定リフレクタ3の前方側の開口部の大きさすなわち開口面積よりも小さい。
【0036】
前記上側可動リフレクタ13Uおよび前記下側可動リフレクタ13Dの中央部には、半円形の透孔17がそれぞれ設けられている。また、前記上側可動リフレクタ13Uおよび前記下側可動リフレクタ13Dの周辺部の中間部には、長方形の庇部18がそれぞれ一体に設けられている。前記上側可動リフレクタ13Uおよび前記下側可動リフレクタ13Dの前記上側半導体型光源5Uおよび前記下側半導体型光源5Dに対向する側の面には、前記上側反射面12Uおよび前記下側反射面12Dがそれぞれ設けられている。パラボラ系の自由曲面(NURBS曲面)からなる前記上側反射面12Uおよび前記下側反射面12Dは、基準焦点(擬似焦点)および基準光軸(擬似光軸)を有する。
【0037】
前記上側可動リフレクタ13Uの前記上側反射面2Uおよび前記下側可動リフレクタ13Dの前記下側反射面2Dは、前記第3ハイビーム用配光パターンHP3を形成する第3ハイビーム用反射面から構成されている。
【0038】
前記半導体型光源5U、5Dは、基板と、前記基板に設けられている前記発光チップと、前記発光チップを封止する封止樹脂部材と、から構成されている。前記発光チップ4は、複数個の正方形のチップを水平軸X方向に配列してなるものである。なお、1個の長方形のチップを使用しても良い。
【0039】
前記発光チップの中心は、前記反射面2U、2D、12U、12Dの基準焦点もしくはその近傍に位置し、かつ、前記反射面2U、2D、12U、12Dの基準光軸上に位置する。また、前記発光チップの発光面(前記基板と対向する面と反対側の面)は、鉛直軸方向に向いている。すなわち、前記上側半導体型光源5Uの前記発光チップの発光面は、鉛直軸方向の上向きに向いている。一方、前記下側半導体型光源5Dの前記発光チップの発光面は、鉛直軸方向の下向きに向いている。さらに、前記発光チップの長辺は、前記基準光軸および前記鉛直軸と直交する前記水平軸Xと平行である。前記水平軸Xは、前記発光チップの中心もしくはその近傍(前記発光チップの中心から前記発光チップの後方側の長辺までの間であって、この例では、前記発光チップの後方側の長辺上)、あるいは、前記反射面2U、2D、12U、12Dの基準焦点もしくはその近傍を通る。
【0040】
前記水平軸Xと、前記鉛直軸と、前記基準光軸とは、前記発光チップの中心を原点とする直交座標(X−Y−Z直交座標系)を構成する。前記水平軸Xにおいては、前記上側のユニット2U、5U、12Uの場合、右側が+方向であり、左側が−方向であり、前記下側のユニット2D、5D、12Dの場合、左側が+方向であり、右側が−方向である。前記鉛直軸においては、前記上側のユニット2U、5U、12U場合、上側が+方向であり、下側が−方向であり、前記下側のユニット2D、5D、12Dの場合、下側が+方向であり、上側が−方向である。前記基準光軸においては、前記上側のユニット2U、5Uおよび前記下側のユニット2D、5D共に、前側が+方向であり、後側が−方向である。
【0041】
前記固定リフレクタ3の前記反射面2U、2Dおよび前記可動リフレクタ13U、13Dの前記反射面12U、12Dは、パラボラ系の自由曲面(NURBS曲面)から構成されている。前記固定リフレクタ3の前記反射面2U、2Dの基準焦点と、前記可動リフレクタ13U、13Dの前記反射面12U、12Dの基準焦点とは、一致もしくはほぼ一致し、前記基準光軸上であって、前記発光チップの中心から前記発光チップの後方側の長辺までの間に位置し、この例では、前記発光チップの後方側の長辺に位置する。また、前記固定リフレクタ3の前記反射面2U、2Dの基準焦点距離は、前記可動リフレクタ13U、13Dの前記反射面12U、12Dの基準焦点距離よりも大きい。
【0042】
前記固定リフレクタ9の前記反射面2U、2Dの基準光軸と第2位置に位置するときの前記可動リフレクタ13U、13Dの前記反射面12U、12Dの基準光軸とは、一致もしくはほぼ一致し、また、前記水平軸Xと直交し、さらに、前記発光チップの中心もしくはその近傍を通る。なお、前記可動リフレクタ13U、13Dの前記反射面12U、12Dの基準光軸は、前記発光チップの中心のもしくはその近傍から前方に向かって、前記固定リフレクタ3の前記反射面2U、2Dの基準光軸に対して上向きである。
【0043】
前記可動リフレクタ13U、13Dが前記第1位置に位置するときには、前記発光チップから前記固定リフレクタ3の前記第1ハイビーム用反射面に放射される光、および、前記固定リフレクタ3の前記第2ハイビーム用反射面で反射された反射光が前記可動リフレクタ13U、13Dにより遮蔽される。この結果、前記固定リフレクタ3の前記ロービーム用反射面で反射された反射光が、図6に示す前記ロービーム用配光パターンLP(すれ違い用配光パターン)として車両の前方に照射される。
【0044】
前記可動リフレクタ13U、13Dが前記第2位置に位置するときには、前記可動リフレクタ13U、13Dの前記第3ハイビーム用反射面(前記反射面12U、12D)で反射された反射光が図7に示す前記第3ハイビーム用配光パターンHP3として、また、前記固定リフレクタ3の前記第1ハイビーム用反射面および第2ハイビーム用反射面で反射された反射光が図7に示す前記第1ハイビーム用配光パターンHP1、前記第2ハイビーム用配光パターンHP2として、さらに、前記固定リフレクタ3の前記ロービーム用反射面で反射される反射光が図7に示す前記減光ロービーム用配光パターンLP1として、それぞれ車両の前方に照射される。図7に示すように、前記第1ハイビーム用配光パターンHP1および前記第2ハイビーム用配光パターンHP2および前記第3ハイビーム用配光パターンHP3および前記減光ロービーム用配光パターンLP1により、ハイビーム用配光パターン(走行用配光パターン)が形成されて車両の前方に照射される。
【0045】
前記可動リフレクタ13U、13Dが前記第2位置に位置するときには、前記発光チップから前記固定リフレクタ3の前記ロービーム用反射面に放射される光の一部が、前記可動リフレクタ13U、13Dにより遮蔽され、かつ、前記可動リフレクタ13U、13Dの前記第3ハイビーム用反射面(前記反射面12U、12D)で反射光として反射される。すなわち、前記発光チップからの光の一部が前記減光ロービーム用配光パターンLP1から前記前記第3ハイビーム用配光パターンHP3に入れ替わる。このために、図7に示す前記減光ロービーム用配光パターンLP1の光量は、図6に示す前記ロービーム用配光パターンLPの光量よりも小さい。一方、前記可動リフレクタ13U、13Dが前記第1位置に位置するときに、前記可動リフレクタ13U、13Dにより遮蔽されていた前記発光チップからの光が前記第1ハイビーム用配光パターンHP1および前記第2ハイビーム用配光パターンHP2として利用される。このとき、可動リフレクタ13U、13Dの前記反射面12U、12Dは、前記発光チップのエネルギー分布中の高エネルギーの範囲に位置する。この結果、総合的に見て、図7に示すハイビーム用配光パターン(走行用配光パターン)HP1、HP2、HP3、LP1の光量が図6に示すロービーム用配光パターン(すれ違い用配光パターン)LPの光量より大きくなる。
【0046】
前記反射面2U、2Dは、鉛直軸方向に8個に分割され、かつ、中央の2個が水平軸X方向にそれぞれ2個に分割されたセグメント21、22、23、24、25、26、27、28、29、20から構成されている。中央部および周辺部の第2セグメント22、第3セグメント23、第4セグメント24、第5セグメント25、第6セグメント26、第7セグメント27は、前記ロービーム用反射面を構成する。また、両端の第1セグメント21、第8セグメント28は、前記第1ハイビーム用反射面を構成する。さらに、中心部の第9セグメント29、第10セグメント20は、前記第2ハイビーム用反射面を構成する。
【0047】
そして、前記ロービーム用反射面において、中央部の第4セグメント24は、第1反射面を構成する。また、中央部の第5セグメント25は、第2反射面を構成する。さらに、端部の第2セグメント22、第3セグメント23、第6セグメント26、第7セグメント27は、第3反射面を構成する。
【0048】
中央部の第1反射面の前記第4セグメント24および第2反射面の前記第5セグメント25は、前記発光チップの中心から経度角±40°以内の範囲に設けられている。なお、端部の第3反射面の前記第2セグメント22、前記第3セグメント23、前記第6セグメント26、前記第7セグメント27は、前記発光チップの中心から経度角±40°以上の範囲に設けられている。
【0049】
以下、自動車用前照灯1のランプユニットの組付工程について簡単に説明する。まず、前記ホルダ6と前記ヒートシンク部材7とをスクリュー60などにより固定保持させる。一方、前記ブラケット部30に前記駆動装置14を固定保持させる。前記駆動装置14に前記上側可動リフレクタ13Uと一体の前記軸部材15の一端部および前記下側可動リフレクタ13Dと一体の前記軸部材15の一端部をそれぞれ取り付ける。
【0050】
つぎに、前記軸部材15の他端部を前記ブラケット部30の前記開口部32を介して前記ブラケット部30の前記凹部31に位置させる(図9(A)、図9(B)、図10(A)、図10(B)、図11(A)、図11(B)を参照)。その状態で、前記軸部材15の他端部および前記ブラケット部30の前記凹部31に前記軸受部材4を、前記軸受部材4の前記弾性係合部42から、前記軸部材15の他端から一端に装着する(図9(B)、図10(B)、図11(B)参照)。このとき、前記軸受部材4の前記弾性係合部42は、前記ブラケット部30の凹部31の内周面を通過する際に、図8(C)中の実線矢印に示すように、内側に弾性変形する。ここで、前記軸受部材4の前記挿通孔40の一端部側の内径が前記挿通孔40の他端部側の内径よりも大きいので、前記軸受部材4の前記挿通孔40中に前記軸部材15が挿通されている状態であっても、前記軸受部材4の一端部側に設けた前記弾性係合部42が弾性変形するのに支障がない。すなわち、前記軸受部材4の前記挿通孔40の一端部側の内径は、前記弾性係合部42が弾性変形する撓み代分を有するものである。
【0051】
すると、前記軸受部材4の前記弾性係合部42が前記ブラケット部30の前記凹部31の前記軸部材15の一端側の縁部に弾性係合し(図10(C)を参照)、また、前記軸受部材4の前記当接部43が前記ブラケット部30の前記凹部31の前記軸部材15の他端側の縁部に当接し(図11(C)を参照)、さらに、前記軸受部材4の前記嵌合凹部44が前記ブラケット部30の前記嵌合凸部33に嵌合する(図9(C)を参照)。このとき、前記軸部材15の他端部は、前記軸受部材4の内径が小さい前記挿通孔40の内周面に回転可能に支持されることとなる。
【0052】
この結果、前記上側可動リフレクタ13Uおよび前記下側可動リフレクタ13Dが前記ブラケット部30に前記軸部材15および前記軸受部材4を介して回転可能に取り付けられることとなる。これにより、前記上側可動リフレクタ13Uおよび前記下側可動リフレクタ13Dと前記ブラケット部30と前記軸部材15と前記軸受部材4と前記駆動装置14とは、サブアッシー(サブユニット化)される。
【0053】
そして、前記ホルダ6および前記ヒートシンク部材7にサブアッシーした前記ブラケット部30をスクリュー60などにより固定保持させる。さらに、前記ホルダ6および前記ヒートシンク部材7に前記固定リフレクタ3をスクリュー60などにより固定保持させる。これにより、自動車用前照灯1のランプユニットの組付工程が完了する。
【0054】
以下、この実施例における車両用前照灯1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0055】
まず、上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13Dを第1位置(図2、図4に示す状態の位置)に位置させる。すなわち、駆動装置14のモータへの通電を遮断すると、スプリングの作用および図示しないストッパの作用により、上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13Dが第1位置に位置する。このときに、上側半導体型光源5Uおよび下側半導体型光源5Dの発光チップ4を点灯発光させる。すると、上側半導体型光源5Uおよび下側半導体型光源5Dの発光チップ4から光が放射される。
【0056】
この光の一部、すなわち、固定リフレクタ3の第1ハイビーム用反射面(第1セグメント21および第8セグメント28)に放射される光は、上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13Dにより遮蔽される。また、この光の一部、すなわち、固定リフレクタ3の第2ハイビーム用反射面(第9セグメント29および第10セグメント20)で反射された反射光は、上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13Dにより遮蔽される。さらに、残りの光は、固定リフレクタ3の上側反射面2Uおよび下側反射面2Dのロービーム用反射面(第2セグメント22、第3セグメント23、第4セグメント24、第5セグメント25、第6セグメント26、第7セグメント27)で反射される。この反射光は、図6に示すロービーム用配光パターンLPとして車両の前方に照射される。なお、上側半導体型光源5Uおよび下側半導体型光源5Dの発光チップ4からの直射光(図示せず)は、上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13D特に庇部18により遮蔽される。
【0057】
以上のようにして、図6に示すロービーム用配光パターンLPが車両の前方に照射される。
【0058】
つぎに、上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13Dを第2位置(図3、図5に示す状態の位置)に位置させる。すなわち、駆動装置14のモータに通電してモータを駆動させると、モータの駆動力が駆動力伝達機構16を介して上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13Dに伝達されて、上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13Dがスプリング力に抗して第1位置から第2位置に同期して回転し図示しないストッパの作用により第2位置に位置する。このときに、上側半導体型光源5Uおよび下側半導体型光源5Dの発光チップ4を点灯発光させる。すると、上側半導体型光源5Uおよび下側半導体型光源5Dの発光チップ4から光が放射される。
【0059】
この光の一部であって、固定リフレクタ3の上側反射面2Uおよび下側反射面2Dのロービーム用反射面(第2セグメント22、第3セグメント23、第4セグメント24、第5セグメント25、第6セグメント26、第7セグメント27)に放射される光の一部は、可動リフレクタ13U、13Dの第3ハイビーム用反射面(反射面12U、12D)で反射されて、その反射光が図7に示す第3ハイビーム用配光パターンHP3として車両の前方に照射される。また、固定リフレクタ3の上側反射面2Uおよび下側反射面2Dのロービーム用反射面(第2セグメント22、第3セグメント23、第4セグメント24、第5セグメント25、第6セグメント26、第7セグメント27)に放射される光であって、可動リフレクタ13U、13Dの第3ハイビーム用反射面(反射面12U、12D)に入射しなかった残りの光は、固定リフレクタ3のロービーム用反射面(第2セグメント22、第3セグメント23、第4セグメント24、第5セグメント25、第6セグメント26、第7セグメント27)で反射されて、その反射光が図7に示す減光ロービーム用配光パターンLP1として車両の前方に照射される。さらに、上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13Dが第1位置に位置していたときにその上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13Dにより遮蔽されていた固定リフレクタ3の第1ハイビーム用反射面(第1セグメント21および第8セグメント28)に放射される光は、固定リフレクタ3の第1ハイビーム用反射面(第1セグメント21および第8セグメント28)で反射されて、その反射光が図7に示す第1ハイビーム用配光パターンHP1として車両の前方に照射される。さらにまた、上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13Dが第1位置に位置していたときにその上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13Dにより遮蔽されていた固定リフレクタ3の第2ハイビーム用反射面(第9セグメント29および第10セグメント20)からの反射光は、第2位置に位置する上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13Dの透孔17を通って、図7に示す第2ハイビーム用配光パターンHP2として車両の前方に照射される。
【0060】
以上のようにして、図7に示すハイビーム用配光パターンHP1、HP2、HP3、LP1が車両の前方に照射される。
【0061】
この実施例における車両用前照灯1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0062】
この実施例における車両用前照灯1は、上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13Dと一体の軸部材15の他端部をブラケット部30の開口部32から凹部31に位置させ(図9(A)、図9(B)、図10(A)、図10(B)、図11(A)、図11(B)を参照)、その状態で、軸受部材4を軸部材15の他端部およびブラケット部30の凹部31に、軸部材15の他端から一端に装着する(図9(B)、図10(B)、図11(B)参照)。すると、軸受部材4の弾性係合部42がブラケット部30の凹部31の軸部材15の一端側の縁部に弾性係合して(図10(C)を参照)、軸受部材4が軸部材15の一端から他端に移動すること(図10(C)中の実線矢印参照)が規制される。また、軸受部材4の当接部43がブラケット部30の凹部31の軸部材15の他端側の縁部に当接して(図11(C)を参照)、軸受部材4が軸部材15の他端から一端に移動すること(図11(C)中の実線矢印参照)が規制される。さらに、軸受部材4の嵌合凹部44がブラケット部30の嵌合凸部33に嵌合して(図9(C)を参照)、軸受部材4が軸部材15の中心軸X回りに回転すること(図9(C)中の実線矢印参照)が規制される。この結果、この実施例における車両用前照灯1は、軸受部材4の3方向の移動および回転が規制されるので、軸受部材4をブラケット部30に確実に取り付けることができ、軸受部材4がブラケット部30から脱落するのを確実に防止することができる。
【0063】
たとえば、軸受部材4がブラケット部30に対して回転可能であれば、上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13Dと一体の軸部材15の回転に伴って、軸受部材4がブラケット部30に対して回転する場合がある。この場合、軸受部材4がブラケット部30に対して回転して、軸受部材4がブラケット部30の凹部31から開口部32を経てブラケット部30から脱落する場合がある。これに対して、この実施例における車両用前照灯1は、軸受部材4がブラケット部30に対して回転不可能であるから、上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13Dと一体の軸部材15が回転しても、軸受部材4がブラケット部30に対して回転することがなく、その結果、軸受部材4がブラケット部30の凹部31から開口部32を経てブラケット部30から脱落するようなことがない。
【0064】
また、この実施例における車両用前照灯1は、軸受部材4の弾性係合部42と嵌合凹部44とを軸受部材4の成形金型10、11の抜き方向に対向して設けてなるものであるから、スライド金型を使用せずに、軸受部材4を製造することができるので、金型費を安価にすることができ、その分、製造コストを安価にすることができる。すなわち、軸受部材4の弾性係合部42と嵌合凹部44とが軸受部材4の成形金型10、11の抜き方向に対向していない場合においては、ランス形状の弾性係合部42と鍔形状の当接部43との間の凹部を形成するためにスライド金型(成形金型10、11の抜き方向に対して直交する方向にスライドする金型)を必要となる。ところが、この実施例における車両用前照灯1は、軸受部材4の弾性係合部42と嵌合凹部44とを軸受部材4の成形金型10、11の抜き方向に対向して設けてなるものであるから、スライド金型が不要である。
【0065】
さらに、この実施例における車両用前照灯1は、ブラケット部30に駆動装置14を固定保持し、かつ、ブラケット部30に上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13Dを軸部材15および軸受部材4を介して回転可能に取り付けて、ブラケット部30と駆動装置14と上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13Dおよび軸部材15と軸受部材4とをサブアッシー(サブユニット)とすることができる。この結果、この実施例における車両用前照灯1は、ブラケット部30をホルダ6およびヒートシンク部材7に固定保持することにより、サブアッシーの駆動装置14と上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13Dおよび軸部材15と軸受部材3とをブラケット部30を介してホルダ6およびヒートシンク部材7に簡単に取り付けることができるので、組付作業性を向上させることができ、かつ、組付工数を軽減することができ、その分、製造コストを安価にすることができる。
【0066】
なお、前記の実施例においては、車両用前照灯1に使用した例を説明するものである。ところが、この発明においては、車両用前照灯1以外の車両用回転装置にも使用することができる。たとえば、光軸を上下方向や左右方向に調整する光軸調整装置、ランプユニットをスイブルさせるスイブル装置にも使用することができる。
【0067】
また、前記の実施例においては、上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13Dを回転させる例について説明するものである。ところが、この発明においては、上側可動リフレクタ13Uおよび下側可動リフレクタ13D以外の回転部材にも使用することができる。たとえば、光を遮蔽するシェードや光を透過させるレンズなどを回転部材として使用することもできる。
【0068】
さらに、前記の実施例においては、固定部材のブラケット部30を使用する例について説明するものである。ところが、この発明においては、ブラケット部30を使用せずに固定部材に回転部材を軸部材および軸受部材を介して回転可能に取り付けるものであっても良い。
【0069】
さらにまた、前記の実施例においては、固定部材の嵌合部を嵌合凸部33とし、軸受部材4の嵌合部を嵌合凹部44としたものである。ところが、この発明においては、固定部材の嵌合部を嵌合凹部とし、軸受部材4の嵌合部を嵌合凸部としたものであっても良いし、また、固定部材の嵌合部を嵌合凸部と嵌合凹部とし、軸受部材4の嵌合部を嵌合凹部と嵌合凸部としたものであっても良い。
【0070】
さらにまた、固定部材の嵌合部の嵌合凸部33と軸受部材4の嵌合部の嵌合凹部44の形状や個数や箇所などは、特に限定しなし。また、軸受部材4の弾性嵌合42や当接部43の形状や個数や箇所なども、特に限定しない。
【符号の説明】
【0071】
1 車両用前照灯
2U 上側反射面
2D 下側反射面
3 固定リフレクタ(固定部材、固定部)
30 ブラケット部(固定部材)
31 凹部
32 開口部
33 嵌合凸部
4 軸受部材
40 挿通孔
41 切溝
42 弾性係合部
43 当接部
44 嵌合凹部
5U 上側半導体型光源
5D 下側半導体型光源
6 ホルダ(固定部材、固定部)
7 ヒートシンク部材(固定部材、固定部)
8 窓部
9 無反射面
10 金型
11 金型
12U 上側反射面(第3ハイビーム用反射面)
12D 下側反射面(第3ハイビーム用反射面)
13U 上側可動リフレクタ(回転部材)
13D 下側可動リフレクタ(回転部材)
14 駆動装置
15 軸部材
16 駆動力伝達機構
17 透孔
18 庇部
21 第1セグメント(第1ハイビーム用反射面)
22 第2セグメント(ロービーム用反射面、第3反射面)
23 第3セグメント(ロービーム用反射面、第3反射面)
24 第4セグメント(ロービーム用反射面、第1反射面)
25 第5セグメント(ロービーム用反射面、第2反射面)
26 第6セグメント(ロービーム用反射面、第3反射面)
27 第7セグメント(ロービーム用反射面、第3反射面)
28 第8セグメント(第1ハイビーム用反射面)
29 第9セグメント(第2ハイビーム用反射面)
20 第10セグメント(第2ハイビーム用反射面)
60 スクリュー
E エルボー点
CL1 斜めカットオフライン
CL2 水平カットフライン
LP ロービーム用配光パターン
LP1 減光ロービーム用配光パターン
HP1 第1ハイビーム用配光パターン
HP2 第2ハイビーム用配光パターン
HP3 第3ハイビーム用配光パターン
HL−HR スクリーンの左右の水平線
VU−VD スクリーンの上下の垂直線
X 中心軸(水平軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置により回転部材を固定部材に対して回転させる車両用回転装置において、
固定部材と、
軸部材が一体に設けられていて、前記軸部材を介して前記固定部材に回転可能に取り付けられている回転部材と、
前記固定部材に固定保持されていて、前記軸部材の一端部が取り付けられていて、前記軸部材を介して前記回転部材を前記固定部材に対して回転させる駆動装置と、
前記軸部材の他端部を前記固定部材に回転可能に支持する軸受部材と、
を備え、
前記固定部材には、前記軸部材の他端部が位置する凹部と、前記軸部材の他端部を前記凹部に位置させるための開口部と、がそれぞれ設けられていて、
前記軸受部材には、前記軸部材および前記固定部材の前記凹部に前記軸部材の他端から一端に装着した際に、前記固定部材の前記凹部の前記軸部材の一端側の縁部に弾性係合する弾性係合部と、前記固定部材の前記凹部の前記軸部材の他端側の縁部に当接する当接部と、がそれぞれ設けられていて、
前記固定部材の前記凹部の縁部と前記軸受部材とには、前記軸部材および前記固定部材の前記凹部に前記軸部材の他端から一端に装着した際に、相互に嵌合して前記軸部材が前記軸部材の中心軸回りに回転するのを防止する嵌合部がそれぞれ設けられている、
ことを特徴とする車両用回転装置。
【請求項2】
前記固定部材の嵌合部は、嵌合凸部であり、
前記軸受部材の嵌合部は、嵌合凹部であり、
前記軸受部材の一端部側には、前記弾性係合部が設けられていて、前記軸受部材の他端部側には、前記当接部および前記嵌合凹部がそれぞれ設けられていて、前記弾性係合部と前記嵌合凹部とは、前記軸受部材の成形金型の抜き方向に対向して設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用回転装置。
【請求項3】
前記固定部材は、固定部と、ブラケット部と、から構成されていて、
前記ブラケット部には、前記凹部および前記開口部および前記嵌合部がそれぞれ設けられていて、
前記ブラケット部には、前記駆動装置が固定保持されていると共に、前記回転部材が前記軸部材および前記軸受部材を介して回転可能に取り付けられていて、
前記ブラケット部は、前記固定部に固定保持されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用回転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−43749(P2012−43749A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186473(P2010−186473)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】