説明

車両用情報提供装置

【課題】ワイパゴムの消耗状態を精度良く判定する車両用情報提供装置を提供すること。
【解決手段】車両に搭載され、ユーザにワイパゴムの交換時期を知らせる車両用情報提供装置において、ワイパ装置の駆動に関する情報(積算駆動時間、平均駆動速度)と、自車両が浴びた積算紫外線量に関する情報とに基づいて、ワイパゴムの交換時期が到来したか否かを判断する。積算紫外線量は、自車両が浴びた積算日射量を地域特性又は季節特性によって補正して算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、車両に搭載され、ユーザにワイパゴムの交換時期を知らせる車両用情報提供装置に係り、特に、ワイパゴムの消耗状態を精度良く判定する車両用情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載され、ユーザにワイパゴムの交換時期を知らせる車両用情報提供装置が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1には、紫外線を所定期間浴びると退色するインクを塗った台紙をワイパフレームに貼り、光によるワイパゴムの損傷の目安とする装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、「ワイパブレードを有するワイパ・・・の使用時間の計測や使用頻度の計測をおこな」い(段落番号0085)、「雨天時の走行が多いか否かによって」「ワイパブレードの補充交換推奨閾値」を「変動させ」(段落番号0077)、「消耗劣化状態と補充交換推奨閾値とを比較することで・・・補充交換を推奨するべきか否かを・・・判定する」(段落番号0079)ことを狙いとした、「消耗劣化品質管理装置」(発明の名称)が開示されている。
【特許文献1】特開2001−154585号公報
【特許文献2】特開2006−021570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の従来装置によれば、下層の表示が徐々に見えるようになってくるため、いつをもって視認可能と判断するのか、すなわち、いつが交換時期であるのか、明確な判断が難しい。
【0006】
上記特許文献2記載の従来装置によれば、自車両が浴びた紫外線量や外気温といった「ワイパブレード」の劣化に影響を与え得るパラメータについて何ら考慮していないため、「ワイパブレード」の交換時期を精度良く判断できない可能性がある。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、ワイパゴムの消耗状態を精度良くユーザに情報提供する車両用情報提供装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、車両に搭載され、ユーザにワイパゴムの交換時期を知らせる車両用情報提供装置であって、ワイパ装置の駆動に関する情報と、自車両が浴びた積算紫外線量に関する情報とに基づいて、上記ワイパゴムの交換時期が到来したか否かを判断する、車両用情報提供装置である。
【0009】
上記一態様において、上記ワイパ装置の駆動に関する情報は、例えば、当該ワイパ装置の積算駆動時間及び/又は平均駆動速度である。
【0010】
また、上記一態様において、上記積算紫外線量は、例えば、自車両が浴びた積算日射量を地域特性又は季節特性によって補正して算出される。
【0011】
上記一態様によれば、ワイパ装置の駆動のみならず、ワイパゴムが浴びた積算紫外線量をも考慮して、ワイパゴムの消耗の程度を推定し、ワイパゴムの交換時期を判断するため、ワイパゴムの消耗状態を精度良くユーザに情報提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワイパゴムの消耗状態を精度良くユーザに情報提供する車両用情報提供装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。なお、ワイパゴムを備えたワイパ装置の基本概念、主要なハードウェア構成、作動原理、及び基本的な制御手法等については当業者には既知であるため、詳しい説明を省略する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の一実施例に係る車両用情報提供装置100の概略構成図である。
【0015】
情報提供装置100は、自車両周辺環境に関する情報を収集する検出手段として、自車両のフロントガラス(図示せず)への雨滴量を計測する雨滴感知センサ101と、自車両のフロントガラスへ射し込む日射量を計測する日射センサ102と、自車両周囲の気温を計測する外気温センサ103とを有する。これらセンサは、当業者には既知であり、作動原理等の詳しい説明は省略する。換言すれば、本実施例においては、既存の雨滴感知センサ/日射センサ/外気温センサをそのまま流用することができる。
【0016】
情報提供装置100は、更に、各種テーブル(後述)を予め記憶保持する記憶部104を有する。記憶部104は、任意の形式・規格の記憶媒体でよい。
【0017】
情報提供装置100は、更に、ワイパゴムが備えられたワイパ装置(図示せず)を駆動する1以上のモータを含むワイパ駆動部105を有する。
【0018】
本実施例において、ワイパ駆動部105は、積算駆動時間と、駆動速度とを後述する演算・制御部107へ伝達するように構成される。
【0019】
情報提供装置100は、更に、後述する演算・制御部107によってワイパゴムの交換時期が到来したと判断されたときに、その旨をユーザ(典型的には運転者)へ情報伝達する情報提供部106を有する。
【0020】
本実施例において、情報提供部106は、例えば、a)インパネに設けられた専用の警告灯を点灯又は点滅させることによって、及び/又は、b)マルチインフォーメーションディスプレイ上又はカーナビゲーションシステムのディスプレイ上に所定の文字メッセージ及び/又は記号等を表示するによって、及び/又は、c)専用の又はカーオーディオシステムと兼用のスピーカから所定の音声メッセージ又は警告音を出力することによって、ユーザにワイパゴムを交換すべきである旨を知らせる。
【0021】
情報提供装置100は、更に、情報提供装置100の各構成要素を統括的に制御するとともに、後述するような各種演算を実行する演算・制御部107を有する。本実施例において、演算・制御部107は、例えば、ECU(Electronic Control Unit;電子制御装置)である。
【0022】
このような構成の情報提供装置100において、演算・制御部107は、ワイパ駆動部105から取得したワイパ装置の積算駆動時間に平均駆動速度を乗算して、ワイパゴムののべ摺動(移動)距離を算出する。
【0023】
演算・制御部107は、このワイパゴムののべ摺動距離からワイパゴムの駆動による劣化の程度を推定する際、ワイパゴムが駆動されたときの摺動抵抗値を考慮して、抵抗値が大きい状況下での摺動ほど劣化を早めるものとする。
【0024】
ここで、ワイパゴムの摺動抵抗は、ワイパ作動中に雨滴感知センサ101により取得されたフロントガラスへの雨滴量(換言すれば、フロントガラスの濡れ具合)と、ワイパゴムの長さ(換言すれば、ワイパ拭き取り面の面積)と、から推定する。
【0025】
このようなワイパゴム駆動による劣化の程度の推定が可能となるように、本実施例においては、a)ワイパゴムののべ摺動距離とワイパゴムの劣化の程度の関係、b)ワイパゴム駆動時の摺動抵抗値の大きさとそれによりワイパゴムの劣化の程度が促進される程度との関係、c)フロントガラスへの雨滴量とワイパゴム摺動抵抗値との関係、及び、d)ワイパゴム長さとワイパゴム摺動抵抗値との関係、などを予め実験的に調査しておき、テーブルとして記憶部104に記憶保持させておくものとする。
【0026】
また、演算・制御部107は、ワイパ作動の有無及び自車両走行の有無にかかわらず、日射センサ102により検出されたフロントガラスへの射し込み日射量の積算値から、ワイパゴムが浴びた紫外線量の積算値を予測し、この推定積算紫外線量から、紫外線によるワイパゴムの劣化の程度を推定する。
【0027】
このような紫外線によるワイパゴム劣化の程度の推定が可能となるように、本実施例においては、e)日射量(の積算値)と紫外線量(の積算値)との関係、及び、f)ワイパゴムが浴びた積算紫外線量とワイパゴムの劣化の程度との関係、などを予め実験的に調査しておき、テーブルとして記憶部104に記憶保持させておくものとする。
【0028】
なお、日射量(の積算値)と紫外線量(の積算値)の関係は、緯度・経度(又は、地域、国)ごとに、及び、季節ごとに、異なるものと考えられるため、各緯度・経度においていずれの季節であるとどのような関係になるか、予めテーブルとして保持しておくことが好ましい。
【0029】
また、演算・制御部107は、ワイパ作動の有無及び自車両走行の有無にかかわらず、自車両(特に、フロントガラス)が、のべ時間として、どのような気温下・湿度下に置かれたかに応じて、ワイパゴムの温度・湿度による劣化の程度を推定する。
【0030】
このような温度・湿度によるワイパゴム劣化の程度の推定が可能となるように、本実施例においては、g)自車両外気温とワイパゴム劣化の程度との関係、h)自車両外気温と自車両外湿度との関係、及び、i)自車両外湿度とワイパゴム劣化の程度との関係、などを予め実験的に調査しておき、テーブルとして記憶部104に記憶保持させておくものとする。
【0031】
なお、気温と湿度の関係は、緯度・経度(又は、地域、国)ごとに、及び、季節ごとに、異なるものと考えられるため、各緯度・経度においていずれの季節であるとどのような関係になるか、予めテーブルとして保持しておくことが好ましい。
【0032】
このようにして、1)駆動による劣化の程度、2)紫外線による劣化の程度、及び、3)温度・湿度による劣化の程度がそれぞれ推定されると、演算・制御部107は、これら3つの推定劣化程度から、ワイパゴムを交換するべき時期が到来したか否かを判断する。
【0033】
より具体的には、例えば、各推定結果を数値化し、それら数値の合計が所定の閾値以上のときに、ワイパゴムの劣化の程度がワイパゴムの交換が必要な程度にまで達したものと判断する。
【0034】
このような場合、演算・制御部107は、1’)駆動による劣化の程度を表す数値、2’)紫外線による劣化の程度を表す数値、及び、3’)温度・湿度による劣化の程度を表す数値、をすべて均等に扱ってもよく、或いは、何らかの重み付け処理を施して、1つ又は2つの数値(パラメータ)をより重視するようにしてもよい。さらには、各数値(パラメータ)ごとにも閾値を設定して、いずれか1つの数値(パラメータ)でも個々について設定された閾値を超えたときには他の数値(パラメータ)やその合計値にかかわらずワイパゴムの劣化の程度がワイパゴムの交換が必要な程度にまで達したものと判断するようにしてもよい。
【0035】
このようしてワイパゴムの交換が必要であると判断されたときには、演算・制御部107は、情報提供部106に指示して、ユーザにワイパゴムの交換時期が到来したことを伝える。
【0036】
このように、本実施例によれば、雨滴感知センサ、日射センサ、及び、外気温センサなどの既存のセンサ類を利用して、駆動による劣化のみならず、紫外線や気温・湿度による劣化も考慮してワイパゴムの交換時期を判断するため、駆動による劣化のみを考慮してワイパゴム交換時期を判断する場合と比べて、ワイパゴムの劣化の程度を簡易且つより高精度に判定することができる。
【0037】
なお、上記一実施例においては、一例として、フロントガラス用として搭載されたすべてのワイパゴムについて一括して交換時期を判断することを暗に前提としているが、当業者には明らかなように、本発明はそのような実施形態に限定されるものではなく、フロントガラス以外用のワイパについても併せて、交換時期を一括して判断するようにしてもよく、或いは、フロントガラス用ワイパ(及び/又は、フロントガラス以外用のワイパ)の各々について交換時期を独立に判断するようにしてもよい。この場合、外気温センサ及び日射センサは個々のワイパゴム近傍の外気温及び日射量を測定できるように構成・配置されることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、ワイパゴムを備えたワイパ装置を搭載したあらゆる車両に適用可能である。対象車両の動力源種類、燃料種類、外観デザイン、重量、サイズ、走行性能等はいずれも不問である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例に係る車両用情報提供装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0040】
100 車両用情報提供装置
101 雨滴感知センサ
102 日射センサ
103 外気温センサ
104 記憶部
105 ワイパ駆動部
106 情報提供部
107 演算・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、ユーザにワイパゴムの交換時期を知らせる車両用情報提供装置であって、
ワイパ装置の駆動に関する情報と、自車両が浴びた積算紫外線量に関する情報とに基づいて、前記ワイパゴムの交換時期が到来したか否かを判断する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用情報提供装置であって、
前記ワイパ装置の駆動に関する情報は、当該ワイパ装置の積算駆動時間又は平均駆動速度である、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用情報提供装置であって、
前記積算紫外線量は、自車両が浴びた積算日射量を地域特性又は季節特性によって補正して算出される、ことを特徴とする車両用情報提供装置。

【図1】
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