車両用断熱ルーフ
【課題】ヘッドクリアランスを小さくすることなく、直射日光による車室内の温度の上昇を抑制する車両用断熱ルーフを提供する。
【解決手段】この車両用断熱ルーフ1は、車両の天井部に取付けられる枠体2と、前記枠体の内部に移動可能に形成された移動天井部3と、前記移動天井部の外周を囲むように、前記移動天井部の外周部と前記枠体の内周部とを連結する蛇腹部4と、車両の天井部の外板ルーフと移動天井部との間に形成される密閉空間Sと、前記密閉空間内に空気が導入するための第1の孔5aと、前記密閉空間Sから空気を排出するための第2の孔5bとを備えている。
【解決手段】この車両用断熱ルーフ1は、車両の天井部に取付けられる枠体2と、前記枠体の内部に移動可能に形成された移動天井部3と、前記移動天井部の外周を囲むように、前記移動天井部の外周部と前記枠体の内周部とを連結する蛇腹部4と、車両の天井部の外板ルーフと移動天井部との間に形成される密閉空間Sと、前記密閉空間内に空気が導入するための第1の孔5aと、前記密閉空間Sから空気を排出するための第2の孔5bとを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用断熱ルーフに関し、直射日光による車室内の温度の上昇を抑制する車両用断熱ルーフに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、直射日光による車室内の温度上昇を抑制するために、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、車両のルーフにソーラーパネルを装着し、このソーラーパネルで得た電気を蓄電池に蓄え、冷却装置を動作せることにより室内を冷却するものが提案されている。
また、特許文献2には、自動車のルーフ板の上方に、スリット状の空気流路を介して覆ルーフ板を覆設し、停車中はその空気流路内の空気が断熱空気層として機能することにより、室内の温度上昇を防止するものが提案されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された発明にあっては、ソーラーパネル、蓄電池、冷却装置等の設備が必要となり、費用等が嵩むという課題があった。また、特許文献2記載の発明にあっては、自動車のルーフ板の上方に覆ルーフ板を覆設するため、車両の外観に影響を与え(車両の外観のデザイン変更となるため)、好ましくないという課題があった。
【0004】
これら課題を解決するものとして、特許文献3に車両用断熱ルーフが提案されている。
この特許文献3に記載された車両用断熱ルーフについて、図12、図13に基づいて説明する。
図12に示すように、この車両用断熱ルーフは、車両100の外装鉄板101と内装天井102との間に断熱材103を備えたものである。そして、この断熱材103は、図13に示すように、合成樹脂製のシート104に独立した空気嚢105を形成した空気層を有し、更に合成樹脂製のシート104の表面にアルミニウム材を蒸着又は接着したアルミニウム層106が設けられている。
【0005】
この特許文献3記載の車両用断熱ルーフにあっては、駐車時、走行時に拘らず、前記断熱材103によって太陽の輻射熱を遮断し、室内の温度上昇を防止することができる。
しかも、このような断熱材103は、一般的に安価に製作することができ、しかも車両の外観に影響を与えないため(車両の外観のデザイン変更とならない)、好ましいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−295509号公報
【特許文献2】特開平7−291145号公報
【特許文献3】特開2002−2407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3記載の車両用断熱ルーフは、車両の外装鉄板と内装天井との間に断熱材を収容されるため、車両の外形寸法に影響を与えないように前記断熱材を収容するには、内装天井を室内側に下げ、断熱材の収容空間を確保する必要があった。
その結果、車両の室内空間が狭くなり、特に搭乗者の頭部と内装天井との間のクリアランス(ヘッドクリアランス)が小さくなり、搭乗者に圧迫感を与えるという技術的課題があった。
【0008】
本発明は、上記の技術的課題を解決するためになされたものであり、ヘッドクリアランスを小さくすることなく、直射日光による車室内の温度の上昇を抑制する車両用断熱ルーフを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明にかかる車両用断熱ルーフは、車両の天井部に取付けられる枠体と、前記枠体の内部に移動可能に形成された移動天井部と、前記移動天井部の外周を囲むように、前記移動天井部の外周部と前記枠体の内周部とを連結する蛇腹部と、車両の天井部の外板ルーフと移動天井部との間に形成される密閉空間と、前記密閉空間内に空気が導入するための第1の孔と、前記密閉空間から空気を排出するための第2の孔とを備え、移動天井部を室内側に下げることによって、第1の孔から空気が導入され、空気層の厚さ寸法が大きい密閉空間が形成され、かつ、前記移動天井部を外板ルーフ側に上げることによって、第2の孔から空気が排出され、空気層の厚さ寸法が小さい密閉空間が形成されることを特徴としている。
【0010】
このように、移動天井部を室内側に下げることによって、第1の孔から空気が導入され、空気層の厚さ寸法が大きい密閉空間が形成される。そのため、降車する際、移動天井部を室内側に下げることによって、空気層の厚さ寸法が大きい密閉空間を形成でき、直射日光による車室内の温度の上昇を抑制することができる。
一方、乗車時に、前記移動天井部を外板ルーフ側に上げ、空気層の厚さ寸法が小さい密閉空間にすることができる。そのため、搭乗者の頭部と内装天井との間に十分なクリアランス(ヘッドクリアランス)を得ることができ、搭乗者に圧迫感を与えるという弊害を抑制することができる。
【0011】
ここで、前記第1の孔と第2の孔の夫々に弁が設けられ、前記第1の孔に設けられた弁は、前記第1の孔を常時閉じており、移動天井部が室内側に下げられることによって開き、前記第2の孔に設けられた弁は、前記第2の孔を常時閉じており、移動天井部が外板ルーフ側に上げることによって開くことが望ましい。このような弁を用いることにより、前記空間をより密閉性の高い空間とすることができる。
【0012】
また、前記移動天井部の中央部には、移動天井部を移動するためのグリップが取付けられていることが望ましい。このようにグリップが設けられている場合には、移動天井部の上下動を容易になすことができる。
【0013】
また、移動天井部を上下動するための操作部と、前記操作部に設けられた螺子部と、前記操作部を回転可能に保持するフレームと、前記移動天井部に形成され、前記操作部の螺子部と螺合する螺子部とを備え、前記操作部を回転させることにより、操作部の螺子部と螺合している移動天井部を上下動させることが望ましい。
このように操作部を回転させることにより、操作部の螺子部と螺合している移動天井部を上下動させる場合には、前記グリップの場合等と比較して無理な力が蛇腹部に作用しないため、蛇腹部等の破損を防止することができる。
【0014】
また、前記外板ルーフに設けられた、前記空間と連通する孔と、前記外板ルーフ上に設置される、前記孔と連通する排気口を有する排気口部材とを備えていることが望ましい。
このような排気口部材を備えた場合には、空間内の空気を外部に排気することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ヘッドクリアランスを小さくすることなく、直射日光による車室内の温度の上昇を抑制する車両用断熱ルーフを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施形態の車両用断熱ルーフを車内側から見上げた状態を示した概略構成図である。
【図2】図2は、図1のI−I断面図である。
【図3】図3は、蛇腹部の拡大図である。
【図4】図4は、車両用断熱ルーフの後部の概略構成図である。
【図5】図5は、図4のB方向からの矢視図である。
【図6】図6は、流入孔、流出孔を示す概略断面図であって、(a)は図5のII-II断面図、(b)は図5のIII-III断面図である。
【図7】図7は、移動天井部を引下げた状態を示す図である。
【図8】図8は、移動天井部を引上げた状態を示す図である。
【図9】図9は、空間内の空気を外部に排出する排気口部材の概略構成を示す断面図である。
【図10】図10は、図9に示す排気口部材の斜視図である。
【図11】図11は、移動天井部の他の移動機構を示す断面図である。
【図12】図12は、従来の車両用断熱ルーフを示す斜視図である。
【図13】図13は、図12に示す断熱部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の車両用断熱ルーフの構成について、図1乃至図6に基づいて説明する。尚、図1は、本発明の実施形態の車両用断熱ルーフを車内側から見上げた状態を示した概略構成図、図2は図1のI−I断面図、図3は蛇腹部の拡大図、図4は車両用断熱ルーフの後部の概略構成図、図5は、図4のB方向からの矢視図、図6は流入孔、流出孔を示す概略断面図であって、(a)は図5のII-II断面図、(b)は図5のIII-III断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の車両用断熱ルーフ1は、車両の天井部Aに取付けられる矩形の枠体2と、前記枠体2の内部に移動可能(上下動可能に)に形成された移動天井部3と、前記移動天井部3の外周を囲むように、前記移動天井部2の外周部と前記枠体2の内周部とを連結する蛇腹部4とを備えている。
また、図2に示すように、前記枠体2が車両の天井部Aに取付けられた状態にあっては、外板ルーフ(外装鉄板)10と車両用断熱ルーフ1との間には密閉した空間Sが形成される。
更に、前記移動天井部3の中央部には、移動天井部3を移動するためのグリップ6が取付けられている。尚、図中、符号11はリアガラス、符号12はフロントガラスを示している。
【0019】
この外板ルーフ(外装鉄板)10と車両用断熱ルーフ1との間に形成される密閉した空間Sは、枠体2に対して蛇腹部4を介して移動(上下動)することにより、前記空間Sの容積を変化させることができる。
また、前記空間Sの容積が増加する際に、この空間S内に空気を導入するための孔5aが設けられている。また、前記空間Sの容積が減少する際に、空間内の空気を排出するための孔5bが形成されている。
この孔5a、5bは、図4,図5に示すように、車両後方側の枠体2に湾曲部2aを形成することによって、枠体2と外板ルーフ10との間に形成される。
【0020】
この孔5a、5bは、図6に示しように弁7a,7bが設けられている。
図6(a)に示すように、空気が流入する側の孔5aに設けられた流入側弁7aは、流入側の孔5aを常時閉じ、空間Sの容積が増大して空間内が負圧になった状態で開き、外部の空気が前記空間内に導入するように構成されている。
また図6(b)に示すように、空気が流出する側の孔5bに設けられた流出側弁7bは、流出側の孔5bを常時閉じており、空間Sの容積が減少し、空間内が大気圧以上の圧力なった状態で開き、空間内の空気が外部に排出するように構成されている。
【0021】
このように、前記孔5a,5bが設けられているため、前記移動天井部3が室内側に下がった場合には、流入側の孔5aを介して空気が導入され、外板ルーフ10と車両用断熱ルーフ1との間に、空気層の厚い(高さ寸法が大きな)空間Sが形成される。
一方、前記移動天井部3が外板ルーフ10側に上げた場合には、孔5bを介して空間内の空気が排出され、外板ルーフ10と車両用断熱ルーフ1との間に、空気層の薄い(高さ寸法が小さな)空間Sが形成される。
【0022】
また、車両用断熱ルーフ1の枠体2は、車両の天井部Aに取付けられる、いわゆる基体となるため、硬質で変形しない材料が好ましい。また、前記移動天井部3は、車両内部の天井を構成する部材であるため、枠体2と同様に硬質で、変形しない材料が好ましい。これに対して、前記蛇腹部4は伸縮動作をなす必要性から軟質な材料が好ましい。
【0023】
具体的には、枠体2及び移動天井部3は、樹脂発泡シート、ウレタン樹脂、ポリプロピレン樹脂を用いることができ、蛇腹部4はシリコン、エラストマー、ポリプロピレン樹脂(薄肉)を用いることができる。
前記枠体2及び移動天井部3と、蛇腹部4とが異種の材料で成形される場合には、いわゆる二色成形により製作することができる。
また、同種の材料で形成する場合には、枠体2及び移動天井部3の板厚を厚くし、蛇腹部4の厚さを薄く形成することにより、蛇腹部4の伸縮性、柔軟性を確保することが望ましい。
【0024】
次に、このように構成された車両用断熱ルーフ1の動作、作用について、図7,8に基づいて説明する。
まず、駐車時、室内の温度上昇を抑制する必要がある場合には、降車時に、搭乗者はグリップ6を持ち、室内側に移動天井部3を引き下げる。これにより、図7に示すように、孔5aを介して空気が空間S内に導入され、外板ルーフ10と車両用断熱ルーフ1との間に、高さ寸法が大きな(空気層の厚い)空間Sが形成される。
外板ルーフ10と車両用断熱ルーフ1との間に、高さ寸法が大きな(空気層の厚い)空間Sが形成されるため、直射日光で外板ルーフ10が高温になっても、前記空気層の断熱効果で太陽の輻射熱を遮断することができる。この結果、駐車時における室内の温度上昇を抑制することができる。
【0025】
一方、乗車時には、搭乗者はグリップ6を持ち、外板ルーフ10側に移動天井部3を引き上げる(P方向に押し上げる)。これにより、図8に示すように、孔5bを介して空気が排出され(矢印W方向に排出され)、外板ルーフ10と車両用断熱ルーフ1との間に形成される空間Sは縮小し、高さ寸法が小さくされる。
即ち、移動天井部3を引き上げることにより、乗車時には、十分なヘッドクリアランスを確保することができる。尚、外板ルーフ10側に移動天井部3を押し上げた際、空間Sから排気された空気が室内の後方に流出する(矢印W方向に流出される)が、乗車時には車両の窓を開け、室内の空気を入れ替えることにより、外部に容易に排出することができる。
【0026】
また、図9、図10に示すように、外板ルーフ10に孔10aを設け、移動天井部3を押し上げた際、空間S内の空気を、前記孔10aを介して車外に排出するようにしても良い。即ち、外板ルーフ10に、前記空間と連通する孔10aを形成し、その上に排気口部材13を取り付ける。また、この排気口部材13には、前記孔10aと連通する排気口13aが形成されている。
【0027】
このように構成することにより、外板ルーフ10側に移動天井部3を押し上げた際、空気が室内の後方に排出することなく、外部に排出することができる。
尚、このように排気口部材13を設けた場合には、弁7a,7bを設けず、空間内の温められた空気が外部に自然に排出され、また外部の冷たい空気が前記空間内に流入するようにしても良い。
【0028】
また、上記実施形態にあっては、搭乗者はグリップ6を持ち、移動天井部3の押上げ、引下げを行う構成について説明したが、移動天井部3の押上げ、引下げは、グリップ6に限定されるものではなく、例えば、操作部を回すことにより移動天井部3の押上げ、引下げを行っても良い。
具体的には、図11に示すように、移動天井部22を上下動するための操作部21が回転可能にフレーム20に保持されている。この操作部21には螺子部21aが形成されている。また、移動天井部22にも螺子部22aが形成され、前記操作部21の螺子部21aと螺合している。
また、前記移動天井部22には貫通孔22bが形成され、フレーム20のガイド片20aが挿通している。
【0029】
このように構成されているため、前記操作部21を回転させることにより、螺子部21aと螺合している螺子部22aが上下動し、移動天井部3が上下動する。しかも、前記移動天井部22はガイド片20aに案内されながら上下動する。
このように、操作部21を回転させることにより、操作部21の螺子部21aと螺合している移動天井部22を上下動させるため、蛇腹部4に無理な力が作用しないため、蛇腹部等の破損を防止することができる。
【0030】
また、上記実施形態にあっては、弁7a,7bを設けた場合について説明したが、前記孔5a,5bが小径に形成されている場合には、前記空間を実質的に密閉空間とすることができるため、弁7a,7bを設けなくても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 車両用断熱ルーフ
2 枠体
3 移動天井部
4 蛇腹部
5a 流入孔
5b 流出孔
6 グリップ
7a 弁(流入側)
7b 弁(流出側)
10 外板ルーフ
10a 孔
11 リアガラス
12 フロントガラス
13 排気口部材
13a 排気口
20 フレーム
20a ガイド片
21 操作部
21a 螺子部
22 移動天井部
22a 螺子部
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用断熱ルーフに関し、直射日光による車室内の温度の上昇を抑制する車両用断熱ルーフに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、直射日光による車室内の温度上昇を抑制するために、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、車両のルーフにソーラーパネルを装着し、このソーラーパネルで得た電気を蓄電池に蓄え、冷却装置を動作せることにより室内を冷却するものが提案されている。
また、特許文献2には、自動車のルーフ板の上方に、スリット状の空気流路を介して覆ルーフ板を覆設し、停車中はその空気流路内の空気が断熱空気層として機能することにより、室内の温度上昇を防止するものが提案されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された発明にあっては、ソーラーパネル、蓄電池、冷却装置等の設備が必要となり、費用等が嵩むという課題があった。また、特許文献2記載の発明にあっては、自動車のルーフ板の上方に覆ルーフ板を覆設するため、車両の外観に影響を与え(車両の外観のデザイン変更となるため)、好ましくないという課題があった。
【0004】
これら課題を解決するものとして、特許文献3に車両用断熱ルーフが提案されている。
この特許文献3に記載された車両用断熱ルーフについて、図12、図13に基づいて説明する。
図12に示すように、この車両用断熱ルーフは、車両100の外装鉄板101と内装天井102との間に断熱材103を備えたものである。そして、この断熱材103は、図13に示すように、合成樹脂製のシート104に独立した空気嚢105を形成した空気層を有し、更に合成樹脂製のシート104の表面にアルミニウム材を蒸着又は接着したアルミニウム層106が設けられている。
【0005】
この特許文献3記載の車両用断熱ルーフにあっては、駐車時、走行時に拘らず、前記断熱材103によって太陽の輻射熱を遮断し、室内の温度上昇を防止することができる。
しかも、このような断熱材103は、一般的に安価に製作することができ、しかも車両の外観に影響を与えないため(車両の外観のデザイン変更とならない)、好ましいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−295509号公報
【特許文献2】特開平7−291145号公報
【特許文献3】特開2002−2407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3記載の車両用断熱ルーフは、車両の外装鉄板と内装天井との間に断熱材を収容されるため、車両の外形寸法に影響を与えないように前記断熱材を収容するには、内装天井を室内側に下げ、断熱材の収容空間を確保する必要があった。
その結果、車両の室内空間が狭くなり、特に搭乗者の頭部と内装天井との間のクリアランス(ヘッドクリアランス)が小さくなり、搭乗者に圧迫感を与えるという技術的課題があった。
【0008】
本発明は、上記の技術的課題を解決するためになされたものであり、ヘッドクリアランスを小さくすることなく、直射日光による車室内の温度の上昇を抑制する車両用断熱ルーフを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明にかかる車両用断熱ルーフは、車両の天井部に取付けられる枠体と、前記枠体の内部に移動可能に形成された移動天井部と、前記移動天井部の外周を囲むように、前記移動天井部の外周部と前記枠体の内周部とを連結する蛇腹部と、車両の天井部の外板ルーフと移動天井部との間に形成される密閉空間と、前記密閉空間内に空気が導入するための第1の孔と、前記密閉空間から空気を排出するための第2の孔とを備え、移動天井部を室内側に下げることによって、第1の孔から空気が導入され、空気層の厚さ寸法が大きい密閉空間が形成され、かつ、前記移動天井部を外板ルーフ側に上げることによって、第2の孔から空気が排出され、空気層の厚さ寸法が小さい密閉空間が形成されることを特徴としている。
【0010】
このように、移動天井部を室内側に下げることによって、第1の孔から空気が導入され、空気層の厚さ寸法が大きい密閉空間が形成される。そのため、降車する際、移動天井部を室内側に下げることによって、空気層の厚さ寸法が大きい密閉空間を形成でき、直射日光による車室内の温度の上昇を抑制することができる。
一方、乗車時に、前記移動天井部を外板ルーフ側に上げ、空気層の厚さ寸法が小さい密閉空間にすることができる。そのため、搭乗者の頭部と内装天井との間に十分なクリアランス(ヘッドクリアランス)を得ることができ、搭乗者に圧迫感を与えるという弊害を抑制することができる。
【0011】
ここで、前記第1の孔と第2の孔の夫々に弁が設けられ、前記第1の孔に設けられた弁は、前記第1の孔を常時閉じており、移動天井部が室内側に下げられることによって開き、前記第2の孔に設けられた弁は、前記第2の孔を常時閉じており、移動天井部が外板ルーフ側に上げることによって開くことが望ましい。このような弁を用いることにより、前記空間をより密閉性の高い空間とすることができる。
【0012】
また、前記移動天井部の中央部には、移動天井部を移動するためのグリップが取付けられていることが望ましい。このようにグリップが設けられている場合には、移動天井部の上下動を容易になすことができる。
【0013】
また、移動天井部を上下動するための操作部と、前記操作部に設けられた螺子部と、前記操作部を回転可能に保持するフレームと、前記移動天井部に形成され、前記操作部の螺子部と螺合する螺子部とを備え、前記操作部を回転させることにより、操作部の螺子部と螺合している移動天井部を上下動させることが望ましい。
このように操作部を回転させることにより、操作部の螺子部と螺合している移動天井部を上下動させる場合には、前記グリップの場合等と比較して無理な力が蛇腹部に作用しないため、蛇腹部等の破損を防止することができる。
【0014】
また、前記外板ルーフに設けられた、前記空間と連通する孔と、前記外板ルーフ上に設置される、前記孔と連通する排気口を有する排気口部材とを備えていることが望ましい。
このような排気口部材を備えた場合には、空間内の空気を外部に排気することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ヘッドクリアランスを小さくすることなく、直射日光による車室内の温度の上昇を抑制する車両用断熱ルーフを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施形態の車両用断熱ルーフを車内側から見上げた状態を示した概略構成図である。
【図2】図2は、図1のI−I断面図である。
【図3】図3は、蛇腹部の拡大図である。
【図4】図4は、車両用断熱ルーフの後部の概略構成図である。
【図5】図5は、図4のB方向からの矢視図である。
【図6】図6は、流入孔、流出孔を示す概略断面図であって、(a)は図5のII-II断面図、(b)は図5のIII-III断面図である。
【図7】図7は、移動天井部を引下げた状態を示す図である。
【図8】図8は、移動天井部を引上げた状態を示す図である。
【図9】図9は、空間内の空気を外部に排出する排気口部材の概略構成を示す断面図である。
【図10】図10は、図9に示す排気口部材の斜視図である。
【図11】図11は、移動天井部の他の移動機構を示す断面図である。
【図12】図12は、従来の車両用断熱ルーフを示す斜視図である。
【図13】図13は、図12に示す断熱部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の車両用断熱ルーフの構成について、図1乃至図6に基づいて説明する。尚、図1は、本発明の実施形態の車両用断熱ルーフを車内側から見上げた状態を示した概略構成図、図2は図1のI−I断面図、図3は蛇腹部の拡大図、図4は車両用断熱ルーフの後部の概略構成図、図5は、図4のB方向からの矢視図、図6は流入孔、流出孔を示す概略断面図であって、(a)は図5のII-II断面図、(b)は図5のIII-III断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の車両用断熱ルーフ1は、車両の天井部Aに取付けられる矩形の枠体2と、前記枠体2の内部に移動可能(上下動可能に)に形成された移動天井部3と、前記移動天井部3の外周を囲むように、前記移動天井部2の外周部と前記枠体2の内周部とを連結する蛇腹部4とを備えている。
また、図2に示すように、前記枠体2が車両の天井部Aに取付けられた状態にあっては、外板ルーフ(外装鉄板)10と車両用断熱ルーフ1との間には密閉した空間Sが形成される。
更に、前記移動天井部3の中央部には、移動天井部3を移動するためのグリップ6が取付けられている。尚、図中、符号11はリアガラス、符号12はフロントガラスを示している。
【0019】
この外板ルーフ(外装鉄板)10と車両用断熱ルーフ1との間に形成される密閉した空間Sは、枠体2に対して蛇腹部4を介して移動(上下動)することにより、前記空間Sの容積を変化させることができる。
また、前記空間Sの容積が増加する際に、この空間S内に空気を導入するための孔5aが設けられている。また、前記空間Sの容積が減少する際に、空間内の空気を排出するための孔5bが形成されている。
この孔5a、5bは、図4,図5に示すように、車両後方側の枠体2に湾曲部2aを形成することによって、枠体2と外板ルーフ10との間に形成される。
【0020】
この孔5a、5bは、図6に示しように弁7a,7bが設けられている。
図6(a)に示すように、空気が流入する側の孔5aに設けられた流入側弁7aは、流入側の孔5aを常時閉じ、空間Sの容積が増大して空間内が負圧になった状態で開き、外部の空気が前記空間内に導入するように構成されている。
また図6(b)に示すように、空気が流出する側の孔5bに設けられた流出側弁7bは、流出側の孔5bを常時閉じており、空間Sの容積が減少し、空間内が大気圧以上の圧力なった状態で開き、空間内の空気が外部に排出するように構成されている。
【0021】
このように、前記孔5a,5bが設けられているため、前記移動天井部3が室内側に下がった場合には、流入側の孔5aを介して空気が導入され、外板ルーフ10と車両用断熱ルーフ1との間に、空気層の厚い(高さ寸法が大きな)空間Sが形成される。
一方、前記移動天井部3が外板ルーフ10側に上げた場合には、孔5bを介して空間内の空気が排出され、外板ルーフ10と車両用断熱ルーフ1との間に、空気層の薄い(高さ寸法が小さな)空間Sが形成される。
【0022】
また、車両用断熱ルーフ1の枠体2は、車両の天井部Aに取付けられる、いわゆる基体となるため、硬質で変形しない材料が好ましい。また、前記移動天井部3は、車両内部の天井を構成する部材であるため、枠体2と同様に硬質で、変形しない材料が好ましい。これに対して、前記蛇腹部4は伸縮動作をなす必要性から軟質な材料が好ましい。
【0023】
具体的には、枠体2及び移動天井部3は、樹脂発泡シート、ウレタン樹脂、ポリプロピレン樹脂を用いることができ、蛇腹部4はシリコン、エラストマー、ポリプロピレン樹脂(薄肉)を用いることができる。
前記枠体2及び移動天井部3と、蛇腹部4とが異種の材料で成形される場合には、いわゆる二色成形により製作することができる。
また、同種の材料で形成する場合には、枠体2及び移動天井部3の板厚を厚くし、蛇腹部4の厚さを薄く形成することにより、蛇腹部4の伸縮性、柔軟性を確保することが望ましい。
【0024】
次に、このように構成された車両用断熱ルーフ1の動作、作用について、図7,8に基づいて説明する。
まず、駐車時、室内の温度上昇を抑制する必要がある場合には、降車時に、搭乗者はグリップ6を持ち、室内側に移動天井部3を引き下げる。これにより、図7に示すように、孔5aを介して空気が空間S内に導入され、外板ルーフ10と車両用断熱ルーフ1との間に、高さ寸法が大きな(空気層の厚い)空間Sが形成される。
外板ルーフ10と車両用断熱ルーフ1との間に、高さ寸法が大きな(空気層の厚い)空間Sが形成されるため、直射日光で外板ルーフ10が高温になっても、前記空気層の断熱効果で太陽の輻射熱を遮断することができる。この結果、駐車時における室内の温度上昇を抑制することができる。
【0025】
一方、乗車時には、搭乗者はグリップ6を持ち、外板ルーフ10側に移動天井部3を引き上げる(P方向に押し上げる)。これにより、図8に示すように、孔5bを介して空気が排出され(矢印W方向に排出され)、外板ルーフ10と車両用断熱ルーフ1との間に形成される空間Sは縮小し、高さ寸法が小さくされる。
即ち、移動天井部3を引き上げることにより、乗車時には、十分なヘッドクリアランスを確保することができる。尚、外板ルーフ10側に移動天井部3を押し上げた際、空間Sから排気された空気が室内の後方に流出する(矢印W方向に流出される)が、乗車時には車両の窓を開け、室内の空気を入れ替えることにより、外部に容易に排出することができる。
【0026】
また、図9、図10に示すように、外板ルーフ10に孔10aを設け、移動天井部3を押し上げた際、空間S内の空気を、前記孔10aを介して車外に排出するようにしても良い。即ち、外板ルーフ10に、前記空間と連通する孔10aを形成し、その上に排気口部材13を取り付ける。また、この排気口部材13には、前記孔10aと連通する排気口13aが形成されている。
【0027】
このように構成することにより、外板ルーフ10側に移動天井部3を押し上げた際、空気が室内の後方に排出することなく、外部に排出することができる。
尚、このように排気口部材13を設けた場合には、弁7a,7bを設けず、空間内の温められた空気が外部に自然に排出され、また外部の冷たい空気が前記空間内に流入するようにしても良い。
【0028】
また、上記実施形態にあっては、搭乗者はグリップ6を持ち、移動天井部3の押上げ、引下げを行う構成について説明したが、移動天井部3の押上げ、引下げは、グリップ6に限定されるものではなく、例えば、操作部を回すことにより移動天井部3の押上げ、引下げを行っても良い。
具体的には、図11に示すように、移動天井部22を上下動するための操作部21が回転可能にフレーム20に保持されている。この操作部21には螺子部21aが形成されている。また、移動天井部22にも螺子部22aが形成され、前記操作部21の螺子部21aと螺合している。
また、前記移動天井部22には貫通孔22bが形成され、フレーム20のガイド片20aが挿通している。
【0029】
このように構成されているため、前記操作部21を回転させることにより、螺子部21aと螺合している螺子部22aが上下動し、移動天井部3が上下動する。しかも、前記移動天井部22はガイド片20aに案内されながら上下動する。
このように、操作部21を回転させることにより、操作部21の螺子部21aと螺合している移動天井部22を上下動させるため、蛇腹部4に無理な力が作用しないため、蛇腹部等の破損を防止することができる。
【0030】
また、上記実施形態にあっては、弁7a,7bを設けた場合について説明したが、前記孔5a,5bが小径に形成されている場合には、前記空間を実質的に密閉空間とすることができるため、弁7a,7bを設けなくても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 車両用断熱ルーフ
2 枠体
3 移動天井部
4 蛇腹部
5a 流入孔
5b 流出孔
6 グリップ
7a 弁(流入側)
7b 弁(流出側)
10 外板ルーフ
10a 孔
11 リアガラス
12 フロントガラス
13 排気口部材
13a 排気口
20 フレーム
20a ガイド片
21 操作部
21a 螺子部
22 移動天井部
22a 螺子部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の天井部に取付けられる枠体と、前記枠体の内部に移動可能に形成された移動天井部と、前記移動天井部の外周を囲むように、前記移動天井部の外周部と前記枠体の内周部とを連結する蛇腹部と、車両の天井部の外板ルーフと移動天井部との間に形成される密閉空間と、前記密閉空間内に空気が導入するための第1の孔と、前記密閉空間から空気を排出するための第2の孔とを備え、
移動天井部を室内側に下げることによって、第1の孔から空気が導入され、空気層の厚さ寸法が大きい密閉空間が形成され、
かつ、前記移動天井部を外板ルーフ側に上げることによって、第2の孔から空気が排出され、空気層の厚さ寸法が小さい密閉空間が形成されることを特徴とする車両用断熱ルーフ。
【請求項2】
前記第1の孔と第2の孔の夫々に弁が設けられ、
前記第1の孔に設けられた弁は、前記第1の孔を常時閉じており、移動天井部が室内側に下げられることによって開き、
前記第2の孔に設けられた弁は、前記第2の孔を常時閉じており、移動天井部が外板ルーフ側に上げることによって開くことを特徴とする請求項1記載の車両用断熱ルーフ。
【請求項3】
前記移動天井部の中央部には、移動天井部を移動するためのグリップが取付けられている特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用断熱ルーフ。
【請求項4】
移動天井部を上下動するための操作部と、前記操作部に設けられた螺子部と、前記操作部を回転可能に保持するフレームと、前記移動天井部に形成され、前記操作部の螺子部と螺合する螺子部とを備え、
前記操作部を回転させることにより、操作部の螺子部と螺合している移動天井部を上下動させること特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用断熱ルーフ。
【請求項5】
前記外板ルーフに設けられた、前記空間と連通する孔と、
前記外板ルーフ上に設置される、前記孔と連通する排気口を有する排気口部材とを備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の車両用断熱ルーフ。
【請求項1】
車両の天井部に取付けられる枠体と、前記枠体の内部に移動可能に形成された移動天井部と、前記移動天井部の外周を囲むように、前記移動天井部の外周部と前記枠体の内周部とを連結する蛇腹部と、車両の天井部の外板ルーフと移動天井部との間に形成される密閉空間と、前記密閉空間内に空気が導入するための第1の孔と、前記密閉空間から空気を排出するための第2の孔とを備え、
移動天井部を室内側に下げることによって、第1の孔から空気が導入され、空気層の厚さ寸法が大きい密閉空間が形成され、
かつ、前記移動天井部を外板ルーフ側に上げることによって、第2の孔から空気が排出され、空気層の厚さ寸法が小さい密閉空間が形成されることを特徴とする車両用断熱ルーフ。
【請求項2】
前記第1の孔と第2の孔の夫々に弁が設けられ、
前記第1の孔に設けられた弁は、前記第1の孔を常時閉じており、移動天井部が室内側に下げられることによって開き、
前記第2の孔に設けられた弁は、前記第2の孔を常時閉じており、移動天井部が外板ルーフ側に上げることによって開くことを特徴とする請求項1記載の車両用断熱ルーフ。
【請求項3】
前記移動天井部の中央部には、移動天井部を移動するためのグリップが取付けられている特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用断熱ルーフ。
【請求項4】
移動天井部を上下動するための操作部と、前記操作部に設けられた螺子部と、前記操作部を回転可能に保持するフレームと、前記移動天井部に形成され、前記操作部の螺子部と螺合する螺子部とを備え、
前記操作部を回転させることにより、操作部の螺子部と螺合している移動天井部を上下動させること特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用断熱ルーフ。
【請求項5】
前記外板ルーフに設けられた、前記空間と連通する孔と、
前記外板ルーフ上に設置される、前記孔と連通する排気口を有する排気口部材とを備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の車両用断熱ルーフ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−192804(P2012−192804A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57370(P2011−57370)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]